ブラストエッジ鉱山攻略戦:封印編2

マスター:神宮寺飛鳥

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/08/12 12:00
完成日
2015/08/23 04:05

このシナリオは3日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 シュレーベンラント州で起きたヴルツァライヒによる反乱はブラストエッジ鉱山駐留部隊にも影響を及ぼした。
 部隊の一部が反乱鎮圧に割かれ、治安維持部隊である第一師団所属であるシュシュ・アルミラ上等兵もまた戦地へ赴く事になった。
 その間、ブラストエッジ鉱山に纏わる作戦進行は滞っていたのだが……。
「実は、ブラストエッジ鉱山の近くに剣機型の研究施設が見つかったそうなんだ」
 帰還を果たしたテントの中、カルガナ・ブアナ兵長は資料と共にシュシュへ告げる。
「君たちが先の威力偵察で遭遇した個体はヴァナルガンド型というらしい。コボルドベースの新型剣機だ」
「コボルドベース……という事は、ブラストエッジ鉱山から?」
「恐らくはそこから素体を調達し、実戦配備していると見て間違いないだろうね」
 不機嫌そうに目を細めるシュシュ。
 ヴルツァライヒとの戦いでも敵として現れたのはゾンビばかり。そのゾンビがどこから調達されたのか、想像に難しくない。
「皆利用されてるんだ……歪虚に」
 コボルドが歪虚の力を借りて人間を追い払ったとして、後に残るものは何だ?
 皆死んでしまって、何一つ生きた者は残らなくて。そんなの、コボルドの為の戦いじゃない。
「早くブラストエッジから歪虚を追い出さないと、誰も救われない結末になってしまうだよ」
「そうだね。実は君が不在の間、我々も部隊を送り込んで調査を試みたのだが、突入した部隊は一つも戻らなくてね……」
 前回離脱できたのは本当に偶然、運がよかったのだ。
 あの入り組んだ地形の中で、原因は不明だがとにかく道に迷い、しかも敵には直ぐに感知される。
 最早ただのコボルドはいない。特殊な呪術を身につけた者か、それ以外はすべてが不死の軍勢と化している。
「正直、もう少数精鋭を送り込んだ所でどうにもならないと僕は考えている」
「それは……」
「うん。大部隊を送り込み、一挙に制圧する。少数部隊では各個撃破され被害が広がるばかりだよ」
 カルガナの判断は実に正しい。
 あそこは最早歪虚の巣窟で、それも恐らくそれなりに力のある歪虚が背後で糸を引いている。
 コボルド達と和解しようにも、話のできる相手がいないのでは何の意味もないのだ。
 それにシュシュも考えていた。放置する事で歪虚に利用され、何もかもが無駄になるくらいなら、いっその事……と。
「あの……お邪魔します」
 その時、背後から声が聞こえた。
 そこに立っていたのはこの駐屯地では見かけない儚げな雰囲気の少女で、背中には大型の機導兵器を背負っている。
「ここは関係者以外立ち入り禁止だよ?」
「すみません。私は……ワルプルギス錬魔院、ナサニエル・カロッサ院長の勅令により救援に参りました」
 少女が懐から取り出したのは確かにナサニエル直筆の勅令書である。
「……困るなあ。何も聞いてないよ」
「すみません……ですが、有意義な情報をご提供できると思います。あの鉱山に……いいえ。“城”に住まう吸血鬼について」
 振り返り首を傾げるシュシュに少女は目を細め笑いかける。
「イルリヒト機関所属、ベルフラウ二等兵です。どうぞ、よろしく」
 すっと差し伸べられた手をシュシュは迷わず握り返す。
「シュシュ・アルミラ上等兵だよ。よろしく、ベルフラウ」
「え……!? その若さで上等兵ですか……すごいですね」
「う~ん……シュシュの活躍というよりは皆の力だけんど……。それで、吸血鬼って?」
「はい。吸血鬼は特定の閉鎖空間を自らの領地とし、結界を作る能力があります。これを“築城”と呼ぶのはご存知ですか?」
 最高位の吸血鬼であるオルクスであれば、自らの周囲の空間を切り取り無理やり城にしてしまう事さえ可能だという。
 しかし一般的な吸血鬼である場合、例え高位であっても“城”は閉鎖空間である事が殆どだ。
 そしてブラストエッジ鉱山という空間は“城”とするのにこの上なく適切な場所であり……。
「この城を支配しているメイズという吸血鬼を討たない限り、勝機はありません」
「しかし、吸血鬼の城に乗り込むのは圧倒的に不利がつく。今回の場合、大量のコボルドという駒もある」
「メイズの性質を理解すれば対策は可能です。彼女の事は良く知っていますから……」
 訝しむような視線を向けるのも無理はない。
 メイズという名の吸血鬼がどれほどのものかは知らないが、少なくとも一般兵が知るような露出度の敵ではないはずだ。
 それに詳しいという目の前の少女は一体どういった存在なのか……。
「ブアナ兵長! 敵襲です!」
「またか……。連中、こっちが別件で浮き足立っていると見て攻勢に出てきている。シュシュ君、迎撃をお願いできるか?」
 テント内に飛び込んできた兵士の報告にカルガナはうんざりした様子で指示を出す。
「私もお供します。これでも覚醒者ですから」
「そんならシュシュと来るだよ。シュシュは正規編成ではないので、丁度いいだ。往くだよ、ホロン!」
 テントの隅で丸くなっていたコボルドが起き上がるとベルフラウが背筋を震わせる。
「コ……コボルドですか?」
「噛まないから安心するだよ」
「……すごいところですね、ここは」



 駐屯地へ続く荒れた道にコボルドの雄叫びが響き渡る。
 部下を率いて駆け寄った大型のコボルドは四本足から大きく跳躍し、背負っていた片手斧で帝国兵を薙ぎ払う。
 慌てて銃で迎撃するが、素早すぎて照準が追いつかない。そうこうしている間に距離が縮まり牙が喉笛を引き裂いた。
「弱い……弱いぞ、軟弱者が!」
 他のコボルドよりも大柄で、二本足で立つ姿は人と同等。
 ジャ族の長であるイサ・ジャは突破口を開くと部下を進ませる。目指すは麓の帝国軍駐屯地だ。
「この程度の連中、あのような怪しげな連中の力など借りずとも蹂躙できる。それを王とラシュラに示してくれるわ……」
 歪虚とマハ王が結託し何をしようとしているのか、イサは良く知らなかった。
 だからこそ気に食わない。人間はコボルドの力だけで追い払わなければ何の意味もない。そう考えるから。
「行くぞ! ジャ族の武人は恐れを知らぬ! 進め、怨敵を一匹残さず殲滅するのだ!」
 イサの遠吠えに呼応しコボルド達が空に吠える。
 シュシュとハンターらはその声を目指し、駐屯地を後にした。

リプレイ本文

 ジャ族のコボルドは通常の個体よりも屈強だ。
 その戦闘力は非覚醒者では太刀打ち出来ない。銃撃で応戦する帝国兵の狙いをかわし、距離を詰めれば刃が振り下ろされる。
 そこへ後方より飛来した弾丸が飛びかかるコボルドを打ち払う。
 馬上で長銃を構えたアメリア・フォーサイス(ka4111)が引き金を引いたのだ。
「どうやら比較的被害が少ない段階で間に合ったようですね。全員騎馬で移動したのは正解でした」
「まず突っ込む! 兵士様と敵の間に溝を作る! 然る後にリーダーを抑える! よろしいですね!」
 愛馬を疾走らせながらメリエ・フリョーシカ(ka1991)が叫ぶと、同乗したシュシュが頷く。
 距離を詰め馬上から太刀を振るうメリエからコボルドは大きく距離を取る。飛び降りたシュシュとホロンが追撃するも、敵は様子を伺うように体勢を整えている。
「素早いですね……それに、強襲攻撃に動じていない……」
 レイ・アレス(ka4097)は東方での戦いで深手を負ったままの参戦となり、馬を預けたベルフラウに同乗して現場を訪れた。
 傷を庇いながら馬から降りると、ベルフラウが労るように傍らで支える。
「レイさん、あまり無理しないでくださいね」
「す、すみません……ご迷惑をおかけします」
「それはベル君も同じでしょ? 吸血鬼殴るんならこんな前哨戦で怪我してられないからね」
 バイクから降りたオキクルミ(ka1947)の言葉にベルフラウは苦笑を浮かべ。
「大丈夫です。今日は調子……いいですから」
 ハンターの介入によりコボルド達は攻撃を中止。その間に帝国兵を後方へ下がらせ、ハンターが前に出る。
 その間コボルド達は静かに様子を伺っていたが、その中でもひときわ巨体のコボルドが鋭く眼光を光らせる。
「あれがジャ族の頭……なんてデカさだ。本当にコボルドか、こいつ?」
「ジャ族……亜人ですか。歪虚とは違うようですが、確かに異形ですね」
 帝国兵を背にダガーを抜くユズ・コトノハ(ka4706)。近衛 惣助(ka0510)は乗ってきた乗用馬を帝国兵に預けつつ敵を吟味する。
「多少の犠牲を払ってでもここで仕留めておきたいが……」
 ジャの族長、イサ。その視線は人類側についたコボルドであるホロンへ向けられている。
「貴様か、裏切りの王子とやらは。何故ヒトにつく。彼奴らは我らの故郷と誇りを蹂躙した悪辣ぞ!」
「貴殿こそ何のつもりだ。どうやら独断専行のようだが……少数でヒトに勝てるとは思い上がったな」
「黙れ痴れ者が! 貴様を八つ裂きにし、その血をゾエル神への償いとさせてもらう!」
 二体のコボルドの会話は人間にはさっぱり理解できなかったが、険悪なムードだという事くらいはわかる。
「あれがイサ・ジャ……族長自身が出張るとは、なるほど!」
 笑みを作り太刀を両手で構えるメリエ。イサはぐっと牙を剥き出し。
「大義は我らにあり! この地で“殺戮王”に蹂躙されし血族の為にも、ヒトを駆逐してくれるわ!」
 イサの遠吠えに呼応するようにコボルド達が吠え、獣達は矢のように一斉に駆け出した。
「来るか……!」
 惣助が空に銃口を向け引き金を引くと、光を帯びた弾丸は軌道を変えて降り注ぐ。
 しかしジャ族のコボルドは攻撃に怯まず突撃。一気に距離を詰めてくる。
「ダメージは与えている筈……くっ」
 銃を構え直す間もなくコボルドの剣が迫るが、それはシュシュの斧に弾かれた。
 メリエは接近する敵集団目掛け大きく太刀を振り抜くが、小柄なコボルド達はそれをすり抜け、そのままメリエの背後へ走る。
「……後衛狙いか!」
 アメリアは接近する敵集団を制圧射撃で足止め。その間にレイは帝国兵に指示を出す。
「み、皆さん……落ち着いてよく狙ってください。命中させるのは難しいかもしれませんが、横列から一体への集中射撃なら、足止めになります……」
 五人の帝国兵と共にレイも銃を構える。今のレイではまともな命中は期待できないが、それは帝国兵とて同じことだ。
 要は頭数の問題。何もせずにじっとしているよりは幾らかマシな筈。
「まずはこっちに気を引かないとね……思いっきりいっちゃうよ!」
 アメリアの攻撃で足が止まった敵集団へ駆け寄りながら体ごと回転し、オキクルミは槍で敵を薙ぎ払う。
 回避性能の高いコボルド達だが、これは避けきれず複数個体が吹き飛ばされ、大きく陣形が崩れた。
「い、今です……一斉射撃ですよ!」
 レイが指示した敵へ五人の帝国兵が同時に引き金を引く。
 攻撃を受け足が止まった今なら固定物への射撃と変わらない。それでも命中したのは二人分ではあったが、銃の威力は十分だ。
「くそ、あいつら本当にコボルドか!? 銃で撃たれてピンピンしてやがる!」
「第二射装填急げ!」
 ユズは銃撃を受けなかった個体へ距離を詰めダガーを振るう。手応えは確かだったが、しかしやはりコボルドは倒れない。
「通常のコボルドより、肉体的強度が高い……?」
 前衛を突破してきたのは全十五体のうち、十二体。その数は多く、頑強さも考えると手が足りていない。
「ベルフラウさん、前に出られますか? 勿論、無理にとは言いません。前衛を努められるのならば、ですが」
 ベルフラウは頷き、聖機剣を変形させながら走る。
 マテリアルを放出し光の刃と成した一撃は見た目よりパワフルで、十分な攻撃力がありそうだ。
「それが聖機剣ですか」
「はい。元々この武器は、前衛での支援攻撃を目的として作られた物ですから」
「二人共、次が来るよ!」
 押し返された敵は体勢を立て直し次々に襲い掛かってくる。
 オキクルミは仲間に声をかけながら二連続で攻撃を回避。更に三度目はカウンターで槍を突き入れ、その衝撃で大きく背後へ吹き飛ばす。
「固くて早いけど、まあ高位歪虚ってほどじゃないね。右側の奴はボクが纏めて相手するから、左側のフォローよろしく!」
 四体の集中攻撃を次々にいなすオキクルミ。そこを迂回して後方へ向かおうとする敵へユズが走る。
「あまり出し惜しみしている余裕もなさそうです」
 走る敵へ側面から回り込み、マテリアルを帯びたダガーを突き刺す。
 しかし別個体に狙われ、その斬撃を避けきれない。一対一ならともかく、手数が多く囲まれると厄介だ。
「ユズさん!」
 ベルフラウは聖機剣からセイクリッドフラッシュを放出。その光に怯んだ隙にユズはダガーをコボルドの喉元に差し入れる。
「このくらいの傷なら大丈夫です。それより……」
 後方へ抜けた敵が三体、帝国兵達へ走っている。
 レイ含め四人で弾幕を張るが、コボルド達は傷を恐れず突撃してくる。
「うぅ……身体が満足に動けば……」
 焦った様子でレイが呟いたその時、斜め後方からアメリアの放った弾丸がコボルドの身体を吹き飛ばした。
「この距離……狙撃の技術を試すには持ってこいですね」
 更に放たれた弾丸が青い軌跡を描きコボルドに命中。マテリアルが冷気となって氷を散らす。
「目標への直線移動中とは言え、実戦投入可能な精度は確保できていますね……っと」
 帝国兵まで辿り着いてしまったコボルドが剣で襲いかかろうとしている。
「役に立てない僕でも、皆さんの壁になるくらいなら……!」
「馬鹿野郎! 怪我人のガキは下がってろ!」
 帝国兵を庇おうとしたレイをむしろ抱きかかえるようにして庇った帝国兵がその背中に剣を受ける。
 更に追撃を放つ為剣を振り上げた所で、アメリアの放った銃弾がその手から剣を弾いた。
 両手で拳銃を放ちながら距離を詰めたアメリアはコボルドを蹴り飛ばす。そこへ帝国兵がこぞって銃撃すると、コボルドは痙攣しつつ息絶えた。
「命に係るほどの負傷ではないようですが……下がった方が良いでしょうね」
「ああ……悪いがそうさせてもらう」
 後方へ下がる帝国兵を見つめ、レイは落ち込んだ様子で肩を落とす。
「す、すみません……」
「起きてしまった事は仕方ありません。今はそれより敵を攻撃しなくては」
 アメリアの言う通り。前衛三人は多数の敵の攻撃を受け続けている。
 ベルフラウのヒーリングスフィアがあるので一気に押し切られる事はないだろうが、戦力不足は否めない。
「それと、自分の命は大切にした方が良いですよ。お節介だとは思いますが、死んでしまっては任務も遂行できませんから」

 一方、イサの側にはまだ三体のコボルドが残っている。
 シュシュ、ホロン共に実力的には負けていない。だがイサへの攻撃は妨害されてしまう。
「こいつらイヲのコボルドと全然違うだよ!」
「ジャ族は武人の系譜だと聞いています。銃を恐れぬ突撃、連携のとれた立ち回り、確かにコボルドと侮るべきではありません」
 メリエは片手で握った太刀の切っ先をイサに向ける。
「力で語る者に言葉は意味を成さぬ。ならば我を見よ! こちらも力で語ろう!」
 これを挑発……いや、挑戦と見たイサは目を細め、大地に突き刺していた斧を引き抜く。
「ククク、いいぞ……我が望んでいた闘争はこのようなもの。闇の力や怪しげな呪いではなく、一族の力を示してくれる!」
「……“メリエ”! いざ!」
 イサの外見はコボルドというより狼男のそれに近い。
 長柄の片手斧は力強くメリエの刃と激突する。その力は覚醒者の中でも膂力に優れた部類に入るであろうメリエに全く引けを取らない。
「純粋な武の鍛錬でここまで……実に天晴だ」
 小さく呟きメリエは笑みを浮かべる。激突する二人の側面から攻撃しようとする惣助だが、そこへコボルドが三体迫る。
「やはり邪魔をしてくるか……!」
「惣助、こいつらはシュシュ達で相手するだ! イサ・ジャを何とかしないと、後方の方が持たない!」
 シュシュの判断は正しい。後方の友軍はうまく敵を抑えているが、戦力比では劣勢にある。
 一般人である帝国兵や負傷しているレイが倒れれば被害は拡大する。今は敵の狙いが明らかなので妨害する形で防戦が成立しているが、守るべき者が落ちればそうもいかなくなる。
「……わかった! だが二人共気をつけるんだぞ。ここで倒れてはコボルドとヒトの共生は果たせない!」
 頷くシュシュ。ホロンと連携すれば三体相手でも遅れは取らない。むしろ圧倒している程だ。
 イサは攻撃を受ける能力もそうだが、2メートル近い巨体でありながら非常に俊敏であり、メリエの攻撃を直感的に回避する。
 大きく胴を狙い薙ぎ払うような一撃。これをイサは背後に倒れるように回避し、大地に片手を突いて逆立ちする勢いで踵でメリエの顎を打つ。
「おいおい、曲芸か!?」
 惣助の銃弾をイサは斧で弾くが、弾いた斧が凍りつく。
 その冷気が手に届く前に放し、追撃の銃弾をかいくぐりながら惣助へ迫る。
「銃か……卑怯者の武器ぞ!」
 繰り出される爪を前に咄嗟に銃を縦に構え背後に飛ぶ惣助。だが爪は惣助の肩を抉る。
「近衛さん!」
 背後から駆け寄り刃を振るうメリエ。その一撃をイサは膝と肘で挟み込むようにして止め、即座に牙を繰り出す。
 噛み付きにメリエは武器を手放し右腕で受け、左手で顎を殴り上げた。
「これのどこが蛮族か……!」
 互いに落とした得物を拾い、同時に繰り出す。それぞれの身体を刃が掠める。
 仰向けに転んでいた惣助はそのまま上体だけ起こし、アサルトライフルを連射。これで動きが鈍った所をメリエの刃が捉えた。
 脇腹を切り裂かれたイサだが、怯むどころかメリエの襟首に掴みかかる。そのまま吼えつつ地べたに叩きつけると、少女の身体が跳ね上がった。
「悪いが、それ以上はやらせない!」
 よく狙いを絞り、惣助は引き金を引く。メリエへの追撃の為斧を振り上げていたイサは咄嗟に斧を下ろして攻撃を防ぐが、弾かれた弾丸はイサの顔を引き裂いた。
「グォオッ!?」
 その隙にメリエは立ち上がりながら下段から刃で切り上げる。
 斬撃を浴びたイサは背後へ跳び、牙を剥き出し惣助を睨んだ。
「おのれ……! その武器さえなければ、ヒトにコボルドが破れる事もないというのに……!!」
 血の流れる顔を片手で押さえつつイサは吠える。それに伴いコボルド達は戦闘を停止、後退していく。
「おっとと……鮮やかな引き際で~」
 斧に噛み付いていたコボルドを払い除け、オキクルミは小さく息をつく。
 コボルド達はハンターの追撃は無視してイサの元に集う。
「……よもや精鋭を六体も屠ろうとは。成る程、貴様らがラシュラの言う光の加護を得し者……ポポルでは相手にならぬわけだ」
 イサの指示に従い撤収するコボルド。背を向けようとするイサにメリエは護符を投げ渡す。
「それは人からの挑戦状だ。貴様にコボルトの誇りがあるのなら、次見える時まで肌身離さず持っておけ」
 ホロンに翻訳するように伝えると、メリエはイサを見つめる。
 狼は一息鼻を鳴らすと、猛然と大地を駆け出した。



「なんとか撃退できたようですが、敵の判断の早さに救われましたね」
 アメリアの言う通り、あのまま泥沼の消耗戦になっていたならこちらの被害も避けられなかった。
「これまで戦ったイヲ族のコボルドとはわけが違うな……いてて」
 傷を負ったハンター達をベルフラウが纏めて治療する。これでスキルも打ち止めだ。
「しかし、歪虚の気配は感じませんでした」
「そうみたいだね~。彼らもこういう境遇になかったら、別の関わり方もあったのかもしれないけど」
 ユズの言葉にオキクルミは頭の後ろで手を組みながら溜息を零す。
「彼らも守りたい物があるのですね。どちらが先かと問答した所で、今更意味はありませんが」
 目を瞑り呟くユズ。一方、ベルフラウはレイの傷を労っていた。
「早く戻ってゆっくり休んでくださいね」
「あ、ありがとうございます……あんまり役に立てませんでしたけど……」
「そんな事はありませんよ。ヒトは色々なハンデを背負っているものだけど、その時自分にできる事を探すというのは、尊い事だと思います」
 優しく笑いかけるベルフラウの横顔をじっと見つめるオキクルミ。
「そういえば話の途中だったよね。ブラストエッジにいる吸血鬼だっけ? それがベル君の殴りたい奴なの?」
「ああ……そうだったな。良かったら事情を聞かせてくれないか? 何か力になれるかもしれない」
 惣助の言葉に頷き、ベルフラウは口を開く。
「ブラストエッジは、非常にマテリアルが豊富な鉱山です。それそのものがひとつの霊場であり……そうですね。皆さんも“龍脈”という言葉は耳にしたことはあるでしょうか」
「龍脈……丁度東方で聞いた言葉ですね」
 頷くメリエ。ベルフラウは胸に手を当て。
「ブラストエッジにはオルクス様……いえ、オルクスが派遣したメイズという吸血鬼が巣食っています。その事について、皆さんに伝えに来たんです」
「で、そのメイズって吸血鬼は何者なの?」
「……古い知り合いです。昔の……オルクスが選んだ、契約者の一人。私とは違って、オルクスに本物の力を与えられた、完成形の“ベルフラウ”です」

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MVP一覧

  • 双璧の盾
    近衛 惣助ka0510
  • 答の継承者
    オキクルミka1947

重体一覧

参加者一覧

  • 双璧の盾
    近衛 惣助(ka0510
    人間(蒼)|28才|男性|猟撃士
  • 答の継承者
    オキクルミ(ka1947
    エルフ|16才|女性|霊闘士
  • 強者
    メリエ・フリョーシカ(ka1991
    人間(紅)|17才|女性|闘狩人
  • 内に潜めし覚醒毒
    レイ・アレス(ka4097
    人間(紅)|10才|男性|聖導士
  • Ms.“Deadend”
    アメリア・フォーサイス(ka4111
    人間(蒼)|22才|女性|猟撃士
  • 満月の夜の静かな宴
    ユズ・コトノハ(ka4706
    人間(紅)|12才|女性|霊闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
近衛 惣助(ka0510
人間(リアルブルー)|28才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2015/08/11 23:30:38
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/08/08 22:36:21