幽明

マスター:水貴透子

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/07/24 19:00
完成日
2014/08/01 00:24

みんなの思い出

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オープニング


あの世は死んじゃう人達がいる場所。
この世は生きてる人達がいる場所。

だったら、常に死と隣り合わせの危険な今の世は……何?
まるで、この世界そのものがあの世とこの世の境であるみたいに思える。

※※※

「本当なんだってば! じいちゃんは生きてるんだよ!」

問題は、1人の少年の言葉から始まった。
雑魔に襲われ、死んだはずの祖父が生きていると言い始めたのだ。

「じいちゃんは死んじゃっただろ? ……雑魔に、殺されたじゃないか」

少年の兄が必死に弟をなだめるけど、少年は納得しようとはしない。
それもそのはずだ。
確かに少年は祖父が生きているのを見ているのだから。

「何でみんな信じてくれないんだよ! 俺、じいちゃんを連れてくる!」

「あっ、おい! 馬鹿、戻れって!」

少年は大人達、そして兄を納得させるために集落を飛び出した。

「……俺、連れ戻してくる!」

兄は大人達に言葉を残して、弟を追いかける。
大人達、そして兄は少年の言葉を信じなかったのではない。
全員が信じているからこそ、少年に【祖父は死んだ】と言い聞かせていたのだ。

「……雑魔に襲われた者が、雑魔になって襲ってくるなんて、あの子に言えるはずがない」
「それに、あの子はじいちゃんっ子だっただろう? ……残酷な現実を誰があの子に伝えられるんだ」

それから30分後、子供達が戻ってこない事を不審に思い始めた頃――……。

「大変だ! あの子達が外に出てしまった!」

集落の入り口で見張りをしていた若い男性が血相を変えてテントの中に入ってきた。

「……! 誰か、あの子達を探せ! これ以上の悲劇はもうごめんだ……!」

その時、依頼を受けたハンター達が集落に入ってきていた――……。

リプレイ本文

●雑魔退治と、少年達救助

 雑魔退治の依頼を受け、ハンター達が集落を訪れると何やら慌ただしい雰囲気を感じた。
「要請を受けて来たハンターです、何か緊急事態でも?」
 天竜寺 舞(ka0377)が住人に問い掛ける。
「雑魔がこっちに来ちまった――……ってわけでもねぇよな、何があったんだ?」
 ヴィルナ・モンロー(ka1955)は眉根を寄せながら、天竜寺と共に住人に声を掛けた。
 そこで子供達2人が雑魔のいる場所へ向かってしまったという事を知った。
「……あの子がじいちゃんっ子だったのは皆が知ってる、だからこそ言えなかったんだ」
 けど、住人の言葉を聞き、雲類鷲 伊路葉 (ka2718)は小さく舌打ちをする。
(優しさのつもりかしら、けど本当は『自分が子供を傷つけたくなかった』からじゃないの?)
 雲類鷲は心の中で呟きながら、侮蔑の眼差しを住人に向ける。
「事情は分かったわ、今回のは完全に大人の責任ね。まぁ、他人事だけど」
 エリシャ・カンナヴィ(ka0140)はため息混じりに呟く。
「子供だから、傷つくから真実を癒えない――……なんて自分が傷つきたくない言い訳よね。真実を伝えない事が、一番相手を傷つけるって知らないのかしら」
 ちらり、と住人達を見ながらエリシャが辛口の言葉を呟く。
 けど、彼女の言う事は正しいので、誰も反論する者はいなかった。
「とりあえず、もう1度確認するよ? 少年2人が墓地へ行った、理由は雑魔と化したおじいさんの元に行くため――……で間違いない?」
 天竜寺の言葉に、住人達は力なく頷く。
「1分1秒が惜しいです、少年達が向かった墓地までの距離を教えてください」
 上泉 澪(ka0518)が男性に話しかけ、集落から墓地までの距離、少年達の祖父が埋葬された場所などを聞きだす。
(気楽に受けた依頼だったはずなのに、のんびりしてる場合じゃなくなっちゃいました~)
 スノゥ(ka1519)は心の中で呟き「すみません~、乗用馬をお借り出来ますか~?」と集落の住人に問い掛ける。
 ここから歩きで行けば、最悪の状況になりかねない。
 そう考えたハンター達は集落にいる乗用馬を貸し出してもらえるよう考えた。
「子供を助けるために必要な事よ、出来れば……なんて、言葉は言わない。貸しなさい」
 マリーシュカ(ka2336)はにっこりと微笑みながら、男性へと言葉を投げかける。
「愛した者に殺される……なんて悲劇はお子様には早すぎるわ。けど、甦ると分かっていたなら、きちんと白木の杭を心臓に打ち付けて、或いはその身をしっかり灰にして滅ぼさなきゃ。でないと、2度も喪う羽目になるのよ、今回みたいに」
 マリーシュカの言葉に、住人達は複雑そうな表情を浮かべる。
「乗馬、ねぇ……。家畜としては飼ったことがあるんだがなぁ、その時も嫁に任せてたから……どうも苦手なんだよなぁ」
 沖本 権三郎(ka2483)はガリガリと頭を掻きながら、苦笑気味に呟く。
 けれど、苦手と言っている場合じゃないのは理解しているので、住人達が連れて来た馬にまたがる。
「ソサエティから馬の貸し出しを受理されていれば、少年達が墓地に向かう前に到着出来たかもしれないんだけどね、結果論を話しても仕方ない事だけど」
 エリシャはため息を吐きながら、馬に乗り、他のハンター達と共に墓地へと急いだ。

●2つの現実

(子供の事を考えて何も言えなかった大人、お兄ちゃんの気持ちが分かるから……だからこそ、2人を不幸な目に遭わせたくない……どうか、間に合って!)
 天竜寺は馬を走らせながら、必死に心の中で祈っていた。
「あそこにいるのが、例の子供達ではありませんか?」
 上泉の声に、ハンター達が一斉にその方向を見る。
 すると、3体の雑魔に追いかけられている子供達を発見した。
「私が雑魔と子供の間に入るから、その間に子供を避難させてちょうだいね」
 エリシャが呟き「分かった」と天竜寺が答える。
「では~、私は~、エリシャさんと上泉さんに強化を使いますね~」
 スノゥはのんびりとした口調で呟き、エリシャに『攻性強化』を、そして上泉には『防性強化』を使用した。
「雑魔3体に対して1人はキツいだろ、私も行くよ」
 ヴィルナはエリシャと共に雑魔と少年の間に入る役割をする事を告げ、エリシャと足並みをそろえる。
「あたしも雑魔組に行くわ、子供の方は他の皆さんが何とかしてくれるでしょ。まずは雑魔を倒す、これが優先事項だものね」
 マリーシュカは馬から降りて『クレイモア』を構える。
「じゃあ、俺は子供の方に向かおう。注意一秒、怪我一生……ってな、俺ぁ、先行くぞ!」
 沖本はそう告げて、少年達の方に向かって駆けだす。

「貴方の相手はこっちよ」
 エリシャは『瞬脚』と『ランアウト』を使用して、少年達と雑魔の間に割り込む。
「ほら! ここから逃げるよ!」
 天竜寺が弟を抱え、沖本が兄の方を抱える。
「やめろっ! あれはじいちゃんなんだ! じいちゃんに剣を向けるなっ!」
 天竜寺の腕の中、弟は激しく暴れ回り、さすがの天竜寺も困ったような表情を見せている。
「やっぱり~、簡単には納得してくれそうにないですね~」
 スノゥはマリーシュカと上泉に『攻性強化』を使用する。
「私達が雑魔を足止めしますから、早くその子達をここから逃がして下さい」
 上泉は雑魔の攻撃を『太刀』で受け止め、天竜寺と沖本に告げる。
「兄ちゃんの方は納得してくれてるみたいなんだけどなぁ……」
 自分が抱えている兄を見ながら、沖本が苦笑気味に呟く。
「弟くんよ、まーだ現実は見えねぇのかい? お前さんの腕の怪我、誰がつけた? それすらも分からないほど馬鹿じゃねぇだろ?」
「……」
 沖本の言葉に弟の方は強く唇を噛みながら涙を堪えている。
「よく見なさい! 君のおじいさんは誰かを平気で傷つけるような人だったの? 違うでしょ? あれは君のおじいさんの死体に憑りついて悪い事をさせてる雑魔なんだ。このままだとおじいさんの魂も汚されちゃう、君はそれでもいいの?」
 天竜寺が必死に弟を説得している時、少し離れた場所で舌打ちをする雲類鷲の姿があった。
「何を悠長に説得なんか……!」
 2人の祖父は死んだ。その事実は変わらないはずだ、と雲類鷲は心の中で毒づく。
「いっその事、さっさと祖父の亡骸を葬ればあの子供も現実が見えるはずだ」
 そう呟き、雲類鷲は『猟銃』を少年の祖父らしき雑魔に向けるが引き金を引けずにいた。
「ちっ、甘いのは私も同じか……だが、危険と判断すれば躊躇わずに撃つぞ、私は」
 雲類鷲は呟きながら、前衛達の援護をするように雑魔の足を狙って引き金を引いた。
「後ろ! 気を付けなさい!」
 エリシャの声が響き、マリーシュカは間一髪で雑魔の攻撃を避ける。
「助かったわ、そろそろ引きつけるだけがキツくなってくるわね。早くあの子達をここから引き離して欲しいのだけど……」
 マリーシュカがため息混じりに呟いた時、天竜寺と沖本の声が響き渡った。
「この子達を少し離れた場所まで送って行く! すぐ戻ってくるから!」
 つまり少年達の説得に成功したという事だろう。
 天竜寺の言葉を聞いて、それまで避ける事に徹していたハンター達の空気が変わる。
「2度も家族を悲しませて、悪い人ね。3度目は無しよ、もうお眠りなさい」
 マリーシュカは『クラッシュブロウ』を使用して、雑魔に強力な一撃を食らわす。彼女の攻撃を受け、ぐらりとよろめいた時、上泉が『闘心昂揚』と『クラッシュブロウ』を使用して追撃する。
「一刀両断するには、まだ力が足りませんか……ですが、深手は与えました」
 上泉は『太刀』にこびりついた血を払い、次の攻撃態勢を取る。
「そこを退けぇぇっ!」
 ヴィルナは『攻めの構え』『踏込』『強打』、自分が持つすべての力を込めて『リボルビングソー』を雑魔に食らわし、1匹目の雑魔は地面に倒れ、そのまま動かなくなった。
「待たせた! あの子達は安全な場所に連れて行ったから大丈夫だよ!」
 天竜寺と沖本が合流して、それぞれ戦闘態勢を取る。
「俺はここから動かねぇ、こっから先に雑魔が行こうとしたら身体で止めるつもりだからな」
 沖本は『竹刀』を構え、子供達がいる場所へ雑魔を行かせないよう仁王立ちをしている。
「あの子達を悲しませた罪、それは重いよ……!」
 天竜寺は『ショートソード』を構えて『スラッシュエッジ』を使用して攻撃を行う。
「みなさん~、気をつけて下さい~」
 スノゥは『機導砲』で雑魔を攻撃しながら、仲間であるハンター達に声を掛ける。
 それとほぼ同時に雲類鷲が射撃で雑魔の足を撃ち抜く。
 雑魔がよろめいた瞬間、エリシャが雑魔の胸を突き、上泉が勢いよく武器を振りかぶって足を斬り落とす。
「はい、これで2匹目終了っと。私はあの子達と違って、そんな身体で向かってくるやつを『人間』とはみなさない、だから躊躇いなんかないからね」
 ヴィルナは既に動かなくなった雑魔に向けて言葉を放ち、残る雑魔は1匹、少年達の祖父らしき雑魔のみだった。
「あいつを倒せば、私達の仕事は終了だ」
 全員無傷とは言わないが、まだそれでも動けないほどの傷を負ったハンターはいない。既にボロボロになっている雑魔1匹に遅れを取るほど、ハンター達は弱くない。
「せめて、少しでも早めに終わらせるわ。別にあの子達のためってわけでもないのだけど」
 マリーシュカは自嘲気味に呟いた後、スノゥに『攻性強化』を使用してもらい『クラッシュブロウ』で一気に攻撃を仕掛ける。
「今を生きている者を生かす方が先決、妙な情に流されてしまえばあの子達のためにもならない――……だから、早くお眠り下さいな」
 淡々とした口調で上泉が呟き、愛用の『太刀』を胸に突き刺し、マリーシュの攻撃と共に最後の雑魔を無事に退治し終えたのだった――……。

●現実を見た少年

「ほら、飲んどきなさい。落ち着くわよ」
 戦闘終了後、エリシャは少年に『ミネラルウォーター』を投げ渡す。
「……余計な手間を掛けさせちゃって、ごめんなさい」
 弟を抱きしめながら、兄も震えてハンター達に頭を下げる。
「……弟を傷つけたくなかったんだよね、分かるよ、あたしにも妹がいるから」
 天竜寺は兄を抱きしめながら「よく頑張ったね」と背中を擦って言葉を投げかける。
 兄とは言っても、まだ幼い子供。天竜寺の言葉で張りつめていた糸が切れたらしく、ぼろぼろと涙を流しながら泣き始めた。
(とりあえず~、雑魔も退治して……あの子達も無事で良かったです~)
 スノゥはホッと安堵のため息を吐きながら、少年達に視線を向けた。
「事情が事情とはいえ、雑魔は事情なんか分かっちゃくれない。これに懲りたら、もう危ない真似はするな、分かったな?」
 ヴィルナは少年2人の頭をぐりぐりと撫でながら、笑って言葉を投げかける。
 少年達はヴィルナの言葉に頷き「本当に、ごめんなさい」と再度謝ってくる。
(まだ弟の方は納得してないみたいだけど……いいえ、納得しかけてるのかしら。だからこそ複雑な心境に理性がついていかないのかもしれないわね)
 マリーシュカは俯く弟の姿を見つめながら、小さなため息を零す。
 祖父が生きていると信じて雑魔の前に飛び出すくらいだから、簡単に納得出来るとは思っていないが、それでも少しずつ納得してくれれば、と心の中で呟く。
(私にも助けてくれる大人がいたら、今頃は違う生き方を……いや、仮定の話をするのはやめよう、願うならあの子達がこれから不幸な目に遭わない、ただそれだけだ)
 雲類鷲は緩く頭を振りながら、少年達の幸せを願う。

 そして、集落に戻った後、心配していた住人達が少年2人に駆け寄ってくる。
「ちょっと待った!」
 住人が少年達に何かを言いかけた時、沖本の大きな声が響き渡る。
「お説教は散々してやった。どうか2度の説教はしないでくれねぇか。お前さん方にも黙っていた責任がある、だからガキんちょどもだけを責めるのだけはやめてくれ」
 沖本の言葉を聞き「説教なんて考えてなかったですよ」と男性の1人が呟く。
「実際、貴方達の言う通り……伝えなかった俺達に責任がある。だからこの子達が戻ってきた時、その責任を忘れて怒る事だけはやめようと話し合っていたんですよ」
「そうか、良かったな! 優しい人達で良かったな!」
 沖本は少年達の頭を撫でながら、豪快に笑う。
 そしてハンター達は借りた馬の礼を言った後、報告のために帰還していった――……。

END

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重体一覧

参加者一覧

  • 優しさと厳しさの狭間
    エリシャ・カンナヴィ(ka0140
    エルフ|13才|女性|疾影士
  • 行政営業官
    天竜寺 舞(ka0377
    人間(蒼)|18才|女性|疾影士

  • 上泉 澪(ka0518
    人間(紅)|19才|女性|霊闘士
  • 支援のタクト
    スノゥ(ka1519
    エルフ|14才|女性|機導師
  • 紫暗の刃
    ヴィルナ・モンロー(ka1955
    エルフ|23才|女性|闘狩人

  • マリーシュカ(ka2336
    エルフ|13才|女性|霊闘士
  • 刃なき武器、折れぬ信念
    沖本 権三郎(ka2483
    人間(蒼)|35才|男性|霊闘士

  • 雲類鷲 伊路葉 (ka2718
    人間(蒼)|26才|女性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/07/19 10:08:40
アイコン 相談卓
エリシャ・カンナヴィ(ka0140
エルフ|13才|女性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2014/07/24 00:42:54