秘密夜会の星

マスター:紡花雪

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/08/26 09:00
完成日
2015/09/14 01:48

みんなの思い出

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オープニング

●紅の星と蒼の星
 同盟領、極彩色の街「ヴァリオス」――カルメリーオ宝飾商会の女主人は、新作披露展示会の準備に追われていた。
「奥様、出席者名簿ができました」
「あら、ありがとう。変更は?」
「えっと……ジャメーロ夫人が、御自宅の階段で怪我をされたそうで、欠席に。あと、ダレーマ氏が奥方様と一緒にいらっしゃるそうです」
 女主人は、秘書から手渡された名簿を眺めながら、最終の確認をしていた。
 今回の展示会は、この商会にとって大きな意味がある。先代から受け継いだこの宝飾商会は、今年で三十年を迎えるのだ。そのため、展示会の目玉となる、ふたつの首飾りを用意している。
「――『紅の星』と『蒼の星』、大丈夫でしょうか?」
「え? 大丈夫って、何がよ」
「だって、時価総額、結構な代物ですよ? それなのに、ろくな警備もなしで……」
「警備といっても、上得意の方だけを招待した秘密の展示会なのよ? 仰々しい警備なんてしてごらんなさい、一瞬で怪しまれるじゃないの」
「それは、そうなんですが……」
 カルメリーオ夫人は類稀な美的感覚と商運を持ってはいるが、どうにも体裁を気にしがちだ。そしてそれを補う秘書は心配性で、うまく主人を助けている。
「でももし何かあったら、『銀林檎館』に迷惑がかかりますよ?」
 展示会の会場は、いつもと同じ『銀林檎館』という貴族風の喫茶室で、女主人ももちろん常連だ。
「――わかった。あなたがそう言うなら、検討してみるわ」
 夫人にはひとり、相談相手に心当たりがあった。『銀林檎館』で働くメイドだ。彼女に相談すればあるいは、大袈裟な警備を張らずにするかもしれない、と――。

●『銀林檎館』のメイド
「――首飾りの警護、でございますか」
 磨きあげた銀器をティーカップに添えながら、その若いメイドは言った。
「そうなのよ。脅迫状や盗難の予告状でもあればハンターオフィスに行くのだけれど、そういうわけでもないし。……レイメ、あなたも覚醒者なのよね? だったら、あなたがいれば大丈夫かしら」
 早口でまくしたてる女主人にも顔色を変えず、そのメイド――レイメ・ルアンスールは、穏やかな笑みのままティーポットを傾けた。
「カルメリーオさま、申し訳ありません。ここでのわたしの役目は給仕ですので、とても警備まで目が行き届くとは……。ここはやはり、ハンターオフィスに頼られては?」
「でも、仰々しいのは困るの。それに、実際に現れるかどうかもわからない泥棒のために、あの方達の手を煩わせるのも嫌なのよねぇ……」
「そこはご心配なさらなくても、ハンターの皆様は多方面の依頼をこなされている方ばかりですから。ある程度の要求には対応してくださると思いますよ。――お客さまに紛れての警備もきっと可能です」
 レイメの言葉に、宝飾商会のカルメリーオ夫人はふと考える表情を見せた。
「――そうだわ! 新作のアクセサリーを身につけて会場に立ってくれないかしら? 『紅の星』と『蒼の星』は中央の据え付けケースの中だけれど、他の新作を紹介するモデルになってもらいたいわ」
「それは素敵ですね。カルメリーオ宝飾商会には紳士物もたくさんございますし、よろしいのではないでしょうか」
 カルメリーオ宝飾商会は首飾りや指輪のような婦人向けだけではなく、マントを止めるブローチ、タイピン、カフスボタンといった紳士物も揃えている。依頼を引き受けてくれるハンターが女性だけとは限らない以上、ぜひ男性ハンターたちにも新作の紳士向け宝飾品の宣伝に一役買ってもらいたいところだ。
「それはそうと、泥棒が侵入するとしたら、どこからだと思う?」
「そうでございますね……展示会の会場は2階の『マスケラーデの間』ですので、お客さま階段通路、店員通用階段、テラス窓、でしょうか。窓はテラス以外にもありますが、嵌め殺しや滑り出し窓ですので、侵入は難しいかと思います」
「1階からはどうなの?」
「展示会中、1階の喫茶室はお客さまのお付きの方の控え室となりますので、常に大勢がそこにいることになります。ですが、テラス下の掃き出し窓は裏庭と出入りが可能ですので、庭の警備は必要かと思います」
 新作披露展示会の出席者は20人程度で、ほとんどの客が秘書や執事、侍女を連れている。彼らは、不都合がない限りは主人と別の部屋で待機し、呼ばれた際にのみ主人のもとに赴くことになる。だが、出席客についてはすべて名簿に載っているが、どの客が誰を何人、付き人を連れてくるかまでは主催側では把握していない。
「それじゃあ、上の階は?」
「銀林檎館の上階は、当館主人の居室となっておりまして、個人的なものを置いている関係もあり、厳重な警戒設備が導入されております。侵入はおそらく無理でしょう。銀林檎館で働く者はわたしが把握しておりますし、店員に変装というのも考えにくいかと思います」
「ふぅん、なるほどね。それじゃあ、『マスケラーデの間』と庭を中心に警備すれば良さそうね」
「はい。それでは、わたしからハンターオフィスに依頼を出しておきますね」
 レイメは一礼し、ティーポットを手に厨房へと下がっていった――。

リプレイ本文

●準備は入念に
 極彩色の街「ヴァリオス」の喫茶室『銀林檎館』、2階マスケラーデの間――。
 今宵この場所で開かれるのは、秘密の夜会。選ばれた上得意客だけが招待された、カルメリーオ宝飾商会主催の新作披露展示会である。
 会場では、主催者であるカルメリーオ夫人や商会職員、『銀林檎館』のメイドであるレイメが会場設営に動き回っていた。そしてその中に、ハンターたち6人もいる。
 まず、給仕を装っているのは、エアルドフリス(ka1856)だ。品のいいスーツを纏い、メイドのレイメと何やら話をしている。
「場違いもいい処だな。礼儀を知らんのでなあ」
「大丈夫です。わたしたちメイドや給仕は、目立つものではありませんから」
 仕事とはいえ服装や振る舞いに一抹の不安があったエアルドフリスだが、レイメの答えは端的であった。ついでエアルドフリスは会場内を確認し、物が隠せる場所がないかなどを調べて回った。
 そして、新作アクセサリーを身につけて披露するモデルを努めるのは、ジュード・エアハート(ka0410)、アルマ・アニムス(ka4901)、イルム=ローレ・エーレ(ka5113)の三人である。ジュードは男性でありながら、その顔立ちと細身を活かしてつややかな風合いのシルクドレスを着こなし、メイクとウィッグで魅惑の女性モデルに変身していた。キラキラとしたパンプスが、胸元を飾る新作アクセサリー――ダイヤモンドとパールの首飾りとイヤリングによく合っている。真っ直ぐ伸びた背筋や歩き方、立ち居振る舞いを見ても違和感はまったくない。
 アルマは上下揃いの黒のスーツを纏い、エナメル風のグローブを嵌めていた。彼に任せられた新作アクセサリーは、マント留めのブローチ、そしてラペルピンとブレスレットである。どれも黒蝶貝にクリスタルを合わせた上品なものだ。アルマはマントを翻し、一階の入口が見える位置で招待客の迎え入れをすることにした。
「僕が泥棒さんなら、まず目視で脱出経路を確認しますっ」
 彼の言うとおり、建物に入るなり窓や出入口、建物の構造を確認する者には警戒すべきだろう。
 シフォンブラウスにパンツ、レースアップブーツという中性的な装いなのは、イルムだ。腰に提げたデファンスレイピアは特注品で護拳が白百合を模しており、優雅さを演出している。彼女が身につける新作アクセサリーは、精緻な細工の銀の首飾りとブローチだ。イルムは設営中の会場を見回り、事前に細工がされていないか入念に調べている。そして、付き人控え室や化粧室の様子も確認していた。
「この数日、店に新客が来たことはない?」
 またイルムは、レイメに新客の有無を確認していた。レイメが言うには、たまに旅商人が立ち寄るくらいで、目立った新客はないようだ。
 スーツに黒革のマントという装いをしているのは、アルヴィン = オールドリッチ(ka2378)である。彼には、新作アクセサリーの指輪とマント留めが預けられている。彼は場内を歩き回っても不審に思われないよう、賑やかしの芸人役を務める。帝国貴族の彼は、上流階級の立ち居振る舞いも身についており、自然と夜会に馴染めるだろう。
「ふふふ。面白くなりソウダネ」
 楽しげな様子のアルヴィンは、エアルドフリスと連絡用の合図の打ち合わせをしていた。これで、ある程度の情報がやり取りできるだろう。
 会場の端で楽器の調整をしているのは、ルナ・レンフィールド(ka1565)である。清楚なフリルのワンピースドレスがとても愛らしい。
「お客様に素晴らしいひとときを過ごしてもらえるよう、想いを込めて演奏しますね」
 演奏者とモデルを兼ねる彼女には、ピンクや水色、薄紫が淡く輝く首飾りと、揃いのイヤリングが任された。ルナが持参した楽器は、クレセントリュート、ミューズフルート、ゴールデンハープである。楽団一家の末娘である彼女は、あらゆる楽器の扱いを心得ているのだ。
 会場設営が終わった頃、今度は建物の外から声が聴こえ始めた。お客様方の到着である。6人のハンターたちも、それぞれに自分の選んだ配置についた。
 まず、招待客の出迎えに一階へと降りたのは、エアルドフリス、アルマ、イルムの3人である。エアルドフリスは店員として客の手荷物や上着を預かり、出席者名簿で来賓と同行者を確認している。イルムもまた軽やかな微笑みで客を迎えながら、客と付き人の顔や人数を把握しようとしている。アルマは入口が見える位置で、連れられている付き人の行動を注視していた。
 会場に残ったのは、ジュード、アルヴィン、ルナである。ジュードは、続々と会場に入ってくる招待客たちに身につけたアクセサリーの紹介を兼ねて挨拶し、挙動不審な者や逃走経路になりそうな場所に注意を向けている。アルヴィンは手品を披露しながら会場全体に目を配っていた。そして会場に、ルナが奏でる穏やかで優雅なハープの曲が流れ始める。
 いよいよ、秘密夜会――そして密やかな、夜会の『星』警備の幕開けだ。

●星を取り巻く人々
 マスケラーデの間に、軽やかな笑い声と展示品を賛美する感嘆の声が満ちていく。部屋の中央のガラスケースふたつには、それぞれ『紅の星』と『蒼の星』が納められている。『紅の星』は剣と翼を模した金の首飾りで、その剣先に大きな深紅の宝石が輝いており、対する『蒼の星』は、大きなまるい蒼の宝石が嵌め込まれた白金の首飾りで、その左右にはダイヤを散りばめた白金の三日月と星が象られていた。そして、ふたつの星やハンターたちが身につけている他にも、様々なアクセサリーがガラスケースに並んでいた。
 乾杯で開会した展示会の中、ハンターたちは密やかに視線を交わしている。
 エアルドフリスはテラス窓の脇で給仕をし、部屋の中とテラスの様子を監視している。室内からでは柵が邪魔になって庭までは見えない。テラスには3人の客人が出ているが、特に怪しい動きはない。エアルドフリスはアルヴィンに視線を向け、そのことを伝えた。
 ジュードは視線を集めながら、マスケラーデの間を歩いている。微笑みを絶やさないその姿は、まるで妖精のようだ。たまに、アクセサリーなのか彼自身なのかを堂々と値踏みするような視線を向けてくる客もいるが、それにもにっこり微笑みを返して魅力を振り撒いている。それは、彼が身につけるアクセサリーをより価値の高いものに見せ、ともすれば『紅の星』と『蒼の星』に向きがちな視線や注意を自分に向けるためだ。
 手品を披露しながら歩き回るアルヴィンは、花をパッと取り出して御婦人を驚かせ、そのついでに似合いそうな新作アクセサリーを紹介していた。そして彼はエアルドフリスとルナに視線と身振りで合図を送ると、付き人控え室である1階喫茶室の様子を確認しに降りた。付き人たちは職務時間内であるためか、静かに過ごしているようだ。すると、裏庭に繋がる掃き出し窓から、一人の執事らしき男が部屋に戻ってきた。何か用事があったのかもしれないが、要注意である。
 アルマは、窓の近くに移動していた。1階出入り口扉の真上あたりである。仲間と連携して警備の目を分散するための位置取りだ。
「これ、きらきらしててとってもきれいですよねぇ」
 物腰が柔らかくおっとりとした彼は、ガラスケースを指差しながら中年の御婦人と話をしていた。大型犬のような人懐こさがほわほわした雰囲気を醸し出している。だがこれは、客人の中に紛れているだろう泥棒にわざと隙を見せているだけで、警備網を隠す演出だ。
 イルムもまた、客との会話を弾ませていた。御婦人のドレスの色や着飾り方から、似合いそうなアクセサリーを見立てている。そして、会場の端々にも目を配っている。特に注意しているのは、客人の連れた付き人だ。会場には数人、付き人を連れたままの客がいる。それは老齢の主人への付き添いや若い御令嬢のお目付役、注文の多い主人の世話に奔走する執事と様々であるが、警戒するに越したことはない。何より、主人の言い付けで動き回る彼らによって死角を作られないよう、イルムは立ち位置を変えて彼らにも視線を合わせて笑顔を見せた。盗みを働きにくくするだけでも、警備の効果は高い。
 ルナは、店員通用階段が近い方の窓を背にして、『紅の星』と『蒼の星』を視界に収める位置で演奏をしている。得意とするハープの奏楽から、歓談が盛り上がっている場に合わせて、弾むようなフルートの楽曲に移行していた。うっとりと聴き惚れてしまう演奏をしながらも、客の視線の向きを伺っている。もちろん、ルナを観ている客もいるが、ふたつの星に釘付けになっている客もいる。その視線は、鑑賞しているのか、観察しているのか、見分ける必要がある。そして、ふたつの星ではなく他のものに狙いをつけている可能性もあった。挙動の怪しい不審人物を探すと、若い御令嬢のお目付役が主人から離れて展示品のガラスケースに近付いているのが見えた。長く主人の傍を離れている人物は、不審とも言える。
 秘密夜会は、華やかな盛り上がりを見せている。レイメは給仕に勤しみ、カルメリーオ夫人はすでに数件の商談にかかっている。そしてハンターたちは、客人の知らないところで夜会の星とその周囲に目を光らせていた。

●泥棒は捕まえて
 すれ違うたび、視線が合うたび、ハンターは仲間同士で情報を交換している。これまで不審だと思われたのは、主人の命令で動き回る執事、若い御令嬢のお目付役、そしてひとりで庭に出ていた執事である。
 ジュードは談笑しながら、ガラスケースに見入っている付き人の気を引くべくアルマに合図を送った。周囲との会話を誘導し、宝石の話題に持っていく。
「――ほら、ご覧になって。あの方、まるで御伽噺の石像の王子みたいに、燕に宝石を運ばせたいのかしら」
 少し声高に、アルマが隙だらけだということを周囲に知らしめる。それにガラスケースの新作アクセサリーに見入っていたお目付役も反応し、アルマに視線を向けた。
 ジュードの言葉を受けたアルマは、会話に夢中になっている風を装い、自身が身に付けているアクセサリーのことなど忘れてしまっているように見せた。更に彼は、お目付役の男だけではなく複数犯の可能性を考え、展示品に手をつけられていないかにも気を配っていた。
 アルヴィンは、演奏を終えてふたつの星の前を離れたルナに代わり、見張りのない時間ができないようにとカードでの手品を披露している。彼が芸人に扮しているのには、もうひとつ理由がある。実際に窃盗が行われた場合、手品の消失マジックとしてその場を繋ぎ、最終的にはマジック成功として金品を元に戻すつもりなのだ。
 給仕として会場に立つエアルドフリスは、主人の命令で動き回る執事が何度も客人やガラスケースにぶつかり、触れながら移動していることに気が付いた。そして男はまた、すれ違う御婦人に道を譲るようにして、ガラスケースを背後に隠す。エアルドフリスが動いた。
「お困りですか?」
「う……いや、あの……」
 歯切れの悪い男の背後を覗きこむと、ケース内の展示品がわずかに乱れていた。エアルドフリスは、客たちの死角でエンブレムナイフの柄を男の背中に押し当てる。
「――話は外で聞こうか」
「え……!?」
 男の声に周囲が振り返ったが、エアルドフリスが色気のある微笑を向けると、不思議と人々は会話に戻っていった。エアルドフリスは、その不審な付き人を会場の外に連れ出すことにした。
 その様子を見ていたのか否か、若い御令嬢の付き人である男が、急にそわそわとして近くのガラスケースに手を伸ばした。それを見咎めたのは、イルムだ。
「おや、手にゴミが付いているよ」
 イルムは男の手を軽く掴み、手袋に付いた埃でも払うようにして、ガラスケースから遠ざける。
「あ……ありがとう、ございます」
 驚いた様子の男は困惑の表情でイルムに言葉を返すが、その目は血走っている。イルムが男を引きとめようとした瞬間、男は後ずさって突如駆け出した。後ろの男性客が突き飛ばされ、近くの御婦人から悲鳴が上がる。展示品や客人の持ち物を強奪したり、か弱い御婦人を人質に取る可能性もある。イルムが脚部と神経にマテリアルを巡らせようとしたとき、男はテラスの方へと逃げ出していった。
 演奏の合間の休憩として会場を見渡していたルナが、それに気付いた。男はまだ何かを盗んだわけではないようだが、イルムに阻まれて目的を果たせなかったのだろう。ルナは静かに、自らを覚醒に導いていく。音符や音楽記号がルナの周囲に湧き上がり、光の螺旋となって彼女を包んだ。テラスに出て行った男を素早く追い、右手をかざす。すると、現れた青白いもやのようなガスが男を包んだ。テラスの柵から近くの樹木に飛び移ろうとしていた男は、すうっと眠りの波に飲み込まれて柵の内側にずるりと落ちた。
 混乱の中、事態を収拾すべくアルヴィンが、指輪を使った消失マジックを披露して客たちの気を引いている。そしてジュードもそれに手を貸すように、随分とお酒を召し上がった方がいるのね、と嘯いた。すると、客たちの視線は自然とアルヴィンの手元へと戻り、その数十秒には手品に対する喝采の声を上げていた。

●守られた星
 展示会は盛況のまま終わり、客人たちはそれぞれに銀林檎館を引きあげていった。銀林檎館の店員とカルメリーオ商会の職員たちが撤収作業をする中、レイメが片付けの手を止めてハンターたちの元へとやってきた。
「今夜は、本当にありがとうございました。皆様の目端の行き届いた警備体制に、泥棒たちもとても困惑したことでしょう。『紅の星』と『蒼の星』には、近付くことさえできなかったのですから。転倒したお客様にも大事ありませんでしたし、他の窃盗もありませんでした。泥棒を二人捕まえて、それも演出のひとつとして楽しく無事に展示会が終えられましたのは、本当に皆様のおかげです。カルメリーオ夫人もとても喜んでおられました」
 レイメは深々を頭を下げて、ハンターたちに大きな謝意を示している。逮捕された二人の男は窃盗仲間で、数ヶ月前より別々の屋敷で働きながら主人の伝手で盗みを働いていた常習犯らしい。双方の主人の周囲でもそれぞれ金品が盗まれる事件が起こっており、余罪が追求されるのは間違いない。
「いやはや肩が凝った。やっぱり柄じゃあないな」
 ハンターたちは、それぞれの表現で達成感と喜びを示している。肩が凝ったと眠たげな者もいれば、楽しかったと喜んで笑顔を見せている者もいた。
 こうして、『紅の星』と『蒼の星』という秘密夜会の星は堅固に守られ、夜会の幕は下ろされた。泥棒たちにとって、ふたつの星どころか何も盗めなかったことより、ひっそりと、だが厳重な警備を実行できるハンターたちがその場にいたことが、一番の不幸だったに違いない。

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MVP一覧

  • 赤き大地の放浪者
    エアルドフリスka1856
  • 凛然奏する蒼礼の色
    イルム=ローレ・エーレka5113

重体一覧

参加者一覧

  • 空を引き裂く射手
    ジュード・エアハート(ka0410
    人間(紅)|18才|男性|猟撃士
  • 光森の奏者
    ルナ・レンフィールド(ka1565
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • 赤き大地の放浪者
    エアルドフリス(ka1856
    人間(紅)|30才|男性|魔術師
  • 嗤ウ観察者
    アルヴィン = オールドリッチ(ka2378
    エルフ|26才|男性|聖導士
  • フリーデリーケの旦那様
    アルマ・A・エインズワース(ka4901
    エルフ|26才|男性|機導師
  • 凛然奏する蒼礼の色
    イルム=ローレ・エーレ(ka5113
    人間(紅)|24才|女性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 於・銀林檎館【相談卓】
エアルドフリス(ka1856
人間(クリムゾンウェスト)|30才|男性|魔術師(マギステル)
最終発言
2015/08/26 02:21:56
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/08/22 20:04:46