ブラストエッジ鉱山攻略戦:封印編3

マスター:神宮寺飛鳥

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/08/30 19:00
完成日
2015/09/07 04:10

みんなの思い出

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オープニング

 ブラストエッジ鉱山最奥の地、マハの領域。
 その奥深くに存在する巨大な竪穴は、豊富なマテリアルの源泉であり、そして今は歪虚による闇の力の源でもあった。
 吸血鬼メイズの特殊能力は防戦に特化している。
 基礎戦闘能力は低く、感知・探知能力に優れたその性質は、陣地防衛に置いて最大限に発揮された。
「だいぶ死が満ちてきやがったな。ま、これだけ長く殺し合ってりゃ当然か」
 布で視界を遮ったメイズにもマテリアルの流れは感知できる。
 巨大な竪穴にはベノ族の術者達が同胞の亡骸を放り込む。ここはいつしか墓穴となり、呪いの貯蔵庫となっていた。
「我らが守護神、ゾエル・マハ……その復活の時は近いのだな?」
「ああ。長年の祈りと竪穴から回収したこの触媒……聖剣カルマヘトンがあればな」
 刀身に布を巻かれたその大剣は、嘗てある英雄が神殺しに使った聖剣の一つだという。
 その者は偉大な光の力を以ってヒトに仇成す獣を狩り、騎士を率いてゾエル・マハを討った。
「――騎士皇ナイトハルトが遺した武具の一つ。こいつには亜人の怨嗟がたっぷりだ」
 チリンと、メイズのイヤリングが鈴の音を鳴らす。
「それにしても爺さん、本当にいいのか? ゾエル神を復活させたが最後、この山もコボルド族も……」
「……とうに承知の上よ。我らに他に道はない」
 肩を竦めるメイズの隣、老いぼれたコボルドは大穴を見下ろす。
「我らをこの辺境の穴蔵に追いやり、ヒトは繁栄を遂げた。そしていよいよ、この最後の安住の地さえも奪おうとしている……。この際、救いの手ならばどんなものであれ縋る事に迷いはない」
「ま、今更嫌がってもやるけどな」
 頬を引きつらせるように笑い、メイズはカルマヘトンを竪穴の側に突き刺す。
「さって、始めるかね。こっからが大仕事だぜ、爺さん」
 儀式を始めたメイズの姿をラシュラ・ベノは物陰から伺っていた。
「あの二人の口ぶり……そう。やっぱりこの山の一族には、どちらにせよ未来はないのね」
 ある意味においてイサ・ジャは正しかったのだ。闇の者の力を借りての勝利は、全てを無にするという事に他ならない。
 人間の間では歪虚が加勢した反政府組織があっけなく崩壊したと聞いた。ここに足繁く通っていたカブラカンという男は、そんな素振りはみせなかったが。
「何のために戦っているのかしらね。私達は……」

「ベルフラウ、なにしてるだか?」
 瞼を擦りながらテントから出たシュシュは、真夜中に空を見上げているベルフラウを見つけた。
 最初は便所かと思っていたのだが、テントを出て行ってから戻らないのが気になって探しにきてしまった。
「あ……ごめんなさい、起こしてしまいましたか」
「別にいいけんども」
「なんだか眠れなくて……ううん。眠るのが勿体無いというか……」
 首を傾げるシュシュ。シュシュ的には、食う寝るが至福の瞬間なのだが。
「私が居なくても世界はすごい早さで動いてる。きっと眠っている間にも……そう思うと、いたたまれなくて」
「夜は皆寝てるかんな? 別にベルフラウだけじゃないかんな?」
「そうですけど……いえ、そうですね。でも、眠ってしまったらそのまま目覚めないんじゃないかって思う時、ないですか?」
「ない。お天道様は必ず昇んだよ」
 きっぱりと言い放つシュシュにベルフラウは苦笑する。
「シュシュさんは強いですね。私は迷ってばかりです」
「迷うことの何が悪いだ? シュシュだって迷うことはある。だけど、それは一つ一つ答えを出せば良いことだべ」
 俯いて曖昧に笑うベルフラウにシュシュはずっと違和感を覚えていた。
 彼女からはなにか切羽詰まった感情が見え隠れする。焦りは惑いを産み、蜃気楼のように彼女の道を隠しているのではないか。
「コボルドとの和解……本当にできると信じていますか?」
「信じてるだよ。まず信じる。全てはそこからだかんな」
 そう言ってシュシュは小さな胸を叩き。
「シュシュはコボルドとヒトを和解させる。そして……いずれは辺境と帝国もって思い始めただよ。そんなシュシュだからこそ、ベルフラウがどんな人であれ、友達になれると思う」
「友達……ですか?」
「ベルフラウに変わった事情があるのはなんとなくわかるだ。だけんど、人と違う事は悪いことじゃない。少数だから切り捨てられていいわけじゃない」
 真っ直ぐに目をそらさず、少女は右手を差し伸べる。
「だから、この戦いが終わるまで……この戦いが終わっても、シュシュ達は友達だよ」
 差し出された手を取り、少し照れ臭そうに笑う。そうしてベルフラウは頷いた。
「ありがとう、シュシュさん……」



 ――メイズの特殊能力は“音”だ。
 彼女は元々目が見えなかった。だから必然、それ以外の感知能力を極める必要があった。
 通常状態でもメイズは何百メートルも離れた場所の些細な音を感知する。それは今や自らの領域となったブラストエッジの中ならば尚の事。
 そして同時に、その音の力は外部にも向けられる。
 音を、つまり聴覚を誤認させる能力は、領域内であれば五感までも大きく蝕む。
 幻覚は吸血鬼の基本能力の一つだ。その媒介が超スピード、不可視の音であるという事が厄介な点となる。
「でも、音であるという事がわかっていれば対策は打てる筈です。それに彼女の感知も完璧ではないから……」
 勿論、道を阻むのはメイズだけではない。
 歪虚の力を得たコボルド達への対処は必要となる。だが恐らくこの戦いは、メイズを倒せば人類側の有利に傾くだろう。
「感知と巡回を掻い潜り、なんとかして奥へ進む方法を考えましょう」
 作戦会議の為に集まったテントの中、ベルフラウは説明する。
 吸血鬼の作り出す迷宮。これを踏破しなければ、未来は開かれないのだ。

リプレイ本文

 ブラストエッジ鉱山、ベノの領域。
 そこはコボルドの墓地であったが、今や亡霊型歪虚の彷徨う迷宮と化していた。
 シュシュ達と共に潜入したハンター達は最深部、マハの領域を目指すことを目的とし、戦闘避けながら前進していく。
 ベノの領域は吸血鬼メイズによる音響結界の影響下にある。彼らはその対策として、耳栓で聴覚を封じる事で挑んだ。
 曲がり角から顔を覗かせたディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271)の目の前を巡回霊が通り過ぎる。
 これはその名の通り決まったルート上を移動しているだけだ。故にパターンは記録できた。
 時折その後を追跡したりして地図を作成する近衛 惣助(ka0510)。この調子で行けば次回以降の探索がずっと楽になるだろう。
 問題はマハの領域がどこにあるか。こればかりはじっくりと歩きまわってみる他確かめる術はなかった。



「ゾエル・マハの復活までどれだけの時があるかわからない。なんとか今回でマハの領域までのルートを確保しなければ」
 突入前、ブラストエッジ鉱山の麓にある駐屯地に集まったハンター達は作戦の相談を行っていた。
 惣助の言う通り残された時間に不安は付きまとうが、今回は東方での戦いの結果、癒えきらぬ傷を負った者が二人参加している。
「う~、前回あんな事言っといてこの体たらく。なるべく足手まといにならないようにするね……」
「皆さんにはご迷惑をおかけします……。そんな自分が提案するのもなんですが、今回はマハの領域を目指してはどうでしょうか?」
 肩を落としたオキクルミ(ka1947)に続き火椎 帝(ka5027)が頭を下げる。今回、この二名が重傷状態である。
「そうですね……今回は慎重に事を運ぶべきです。戦闘は最小限、多少遠回りになっても安全な道を確保しましょう」
 ユズ・コトノハ(ka4706)だけではなくハンター全員が今回はマハの領域を目指す事で一致している。
 確かに大きな戦闘を避けていけば、負傷者が居ても状況の前進が期待できるだろう。
「おそらく一筋縄ではいかないのだろうな。だが安心するが良い! 大王たるボクがいるのだから、必ずや辿り着けるであろう!」
 胸を張りながら堂々と宣言するディアドラ。微妙な太鼓判ではあるが、少なくとも負傷者の気は少し紛れたようだ。
「ありがとう、ディアドラさん。自分にできることを精一杯頑張るよ!」
 帝の感謝の言葉に高笑いするディアドラ。一方神楽(ka2032)はベルフラウへ向き合い。
「確か前に暴れてた子っすよね。ここにいるって事は疑いがはれたんすね。よかったっす」
「あなたは、あの時の……。ありがとうございました。あなた達がいなければ私は友達を殺していたかもしれない……」
「あ、斬り倒した奴にちゃんと謝ったっすか? 気まずいのは解るけどちゃんと謝りにいかなきゃダメッス」
 曖昧な様子で頷くベルフラウ。シュシュは首を傾げ。
「神楽、ベルフラウとも知り合いだべか?」
「まあちょっと。そういえば昇進おめ~っす。この調子で偉くなればコボルドと和解するって我儘も通せるようになるっすね」
「……あ、ありがとだよ。なんだか神楽に素直に褒められると変な感じがするだ……ん?」
 神楽はシュシュの手を引き、少し仲間とは離れた場所で耳打ちする。
 その言葉にシュシュは表情を変え、何故かむしろ安心したように溜息をついた。
「シュシュ君は前に会った時に迷ってたのが嘘みたいに吹っ切れたよね。うんうん」
「彼女は立派な軍人だと思います。私より年下みたいなのに……」
「ベル君は難しく考えすぎなんだよ。大丈夫、世界って意外と簡単だよ。なんならお姉さんが色々教えてあげるよ」
 ベルフラウに迫るオキクルミだが、何だかよくわかっていない様子である。
「うーん、純真だね……」
「なかなか余裕があるようだな、オキクルミ。その調子なら問題あるまい」
 レイス(ka1541)の言葉に振り返ると、ホロンを抱き抱えたマリアン・ベヘーリト(ka3683)と共に歩いてくるのが見える。
「少し遅くなったな。すまない」
 そう言ってレイスは幾つかの封筒を取り出す。どうやらホロンの協力は得られたようだ。
「しかしこうして見るとでかいぬいぐるみにしか見えんな」
「ホロンは触っても全然嫌がらないので」
 冷や汗を流す惣助にマリアンは真顔で返す。
「ところで今回の注意点ですが、音対策に耳栓をするのは勿論、なるべく坑道内で会話はしないようにしましょう」
「盲目で聴覚に特化した歪虚だというのなら、坑道内での会話は筒抜けだろうからな」
 ユズに同意するレイス。そう、今回に関しては内部で大声を出したりするのはNGだ。
「覚醒に関しても、戦闘状態になるまでは切っておくべきだな。生体マテリアルを感知しているのだとすれば、これで素通りできるかもしれんぞ!」
 ディアドラの言葉に頷くハンター達。巡回霊が死角、聴覚ではなくマテリアル感知で動いているのは前回の報告で判明している。
 前回の経験を踏まえた打ち合わせを十分に終えてから、ハンター達は領域を目指した。



 実際問題、内部で音を立てないように気をつける事は非常に効果的だと言えた。
 巡回霊に見つかりさえしなければ、他の歪虚の襲撃は殆どやり過ごす事ができる。
 そうして慎重に、しかし確実に歩みを進めていくと、ハンター達を異変が襲った。
 これまで何事もなく進んでいたオキクルミとユズが二人揃ってきた道を引き返し始めたのだ。
 後方警戒の為に最後尾に立っていた惣助が気づき、それぞれの腕を掴んで静止するが二人共きょとんとした様子である。
 が、これは計画的な事。二人はわざと耳栓をつけず、音響結界の影響を受けやすくしていたのだ。
『もしかして変なことしてた?』
 持ち込んだPDAに文字を入力するオキクルミ。ハンター達は同時に頷く。
 帝はユズから受け取った手帳を開き、ペンを走らせる。
『僕のペットのフクロウも少し前から様子がおかしくなっています。結界の効果が強くなっているのかもしれません。それはつまり、敵中枢に迫っているという事ではないでしょうか?』
 メイズの位置に関しては分かっていないが、その可能性は高い。
 帝の言うように、敵の警戒の厚い方向、そしてこの結界の効果を辿っていけば少なくとも方角はわかるはず。
 神妙な面持ち(真顔)で足を止めたハンター達の最中、マリアンはホロンの顎の下を撫でている。
『そういえば、ホロンに影響はないんでしょうか?』
 言われてみると誰もホロンに耳栓はしなかったが、ケロリとしている。
『ベノのコボルド族が平気なように、人間以外には効果が薄いのかもしれません』
 ページをめくり筆を走らせるユズ。もしかしたら巡回霊の感知すらホロンは対象外かもしれない。

 そこから先へ進むには耳栓を外した状態では非常に危険であると判断し、代わりにオキクルミは音叉を取り出した。
 音の呪詛は洞窟内の壁を反響し、隅々まで響き渡っている。耳で捉える事は難しいが、壁に音叉を当てれば振動を感じる事ができた。
 その多寡で進行方向を設定する事もできる。そうして進んでいくと、道中でハンター達は足を止めた。
 壁の中に核を埋め込んだ亡霊による罠、ゴーストハンドだが、壁を掘り返しているのではないかという帝の指摘通り、注視すれば察知する事ができた。
 とは言え迂回する道もないので突っ込むしかないのだが……。
 任せろと言わんばかりに胸を叩いたディアドラはわざと範囲内に飛び込む。
 直ぐ様無数の亡霊の腕がディアドラを捉えるが、そこへ神楽とユズがファミリアアタックを放つ。
 特に神楽が発射したパルムはロケット弾のように霊体を粉砕する。
 出てくるのを待ち構えての攻撃なので、ディアドラにダメージはないまま解放する事ができた。
 後は霊体が復活するまでの間に全員で通り抜けるだけ。今後もこのパターンで問題なく踏破できそうだった。

 地図面上でもいよいよ深部へ進んだ頃、通路の奥に大きく開けた空間が見えた。
 そこには複数の巡回霊がうろつき、更にあからさまにコボルドの兵が見張りに付いている。
 守りの厚さからしてマハの領域、或いはそれに準ずる重要施設の入り口であると予想できた。
 入口付近は三体の巡回霊が交互に行き交っており、そこで敵と戦闘になれば増援は必至。
『まずボクが突っ込む。要はあそこで戦わず奥に行ってしまえばいいのだ。敵がボクを追いかけて来たら、巡回霊をかわしてついてきてほしい!』
 ユズのメモにそう書いてディアドラは剣を抜く。
 巡回霊を誘導する、という方法もあるにはあったが、帝の提案したマテリアル鉱石を利用する方法は効果がなかった。
 狙いは良いのだが、ここはマテリアル鉱山なのでそれに反応はしないだろう。となると誰かが生体マテリアルで誘導するしかない。
 それでは結果的に発見されることに違いはないのだ。よって、ディアドラは危険を承知で突破を試みる。
 覚醒して走り出し、巡回霊の不在が重なったタイミングでコボルドの集団へ飛び込む。
 察知した敵は黒い光を杖に宿らせ放つが、ディアドラの突撃を止める事はできない。
 盾を構えたまま敵を素通りして入り口を抜けた彼女の目の前には、巨大な竪穴が広がっていた。
 その外周を這うように作られた螺旋状の通路を下っていく。
(竪穴……マハの領域は地下にあるのか?)
 敵は当然中枢への侵入者を追撃する。が、丁度ここは一本道。ディアドラは惹きつけた敵へ剣を構え突撃する。
 刃を突き出し大地を蹴り、立ちふさがる敵を蹴散らし反転。そこへ遅れて仲間たちが駆け付ける。
(行きますよ、ホロン! クリスちゃんの言った通りなら、私とでも連携できる筈です!)
 ホロンにホーリーセイバーを付与しマリアンは駆け出す。ホロンは迎撃の魔法攻撃を盾で受け、その間に接近したマリアンが太刀を繰り出した。
(ホロン……やはり並のコボルドとは違うな)
 惣助は笑みを浮かべつつ引き金を引く。人間との連携もそうだが、個としての戦闘力も大したものだ。
 こうして入り口を守っていた五体のコボルドをあっけなく撃破すると、ハンター達は竪穴を駆け下りていく。

 竪穴の底には青く光る水に満たされた幻想的な光景が広がっていた。
 周囲の壁から突き出した無数の高純度のマテリアル結晶が光を放ち、地下深くだというのに光源には困らない。
 コボルドが作ったとは思えない巨大な石造りの扉を開けると、奥からはむせ返るような負のマテリアルが雪崩れ込んでくる。
(なんだ……この息苦しさは……)
 胸に手を当て眉を潜めるレイス。見れば他にもディアドラとユズ、ベルフラウとシュシュも気分悪そうに膝を折っている。
(うぐ……き、気持ちが悪いぞ。なんなのだ、これは……)
(これは……強烈な殺意?)
 冷や汗を拭い呼吸を整えるユズ。神楽は不思議そうに首を傾げている。
(レイス達の様子がおかしいっすけど、何かあったんすか?)
(私もホロンも何も感じませんけど……)
 マリアンも意味がわからないという様子だ。三人も慣れてきたのか、やがて動けるようになった。
 敵の気配はない。慎重に進んでいくと、光に照らされた通路には壁画が描かれているのがわかった。
 それは大勢の人間と、大勢の亜人達の戦争を描いたものらしい。
 亜人の中にはコボルドもゴブリンもジャイアントも、エルフもドワーフも含まれているようだった。
 それらの背後には巨大な怪物が描かれ、そこへ無数の剣を持った騎士が挑む姿が見て取れる。
(これって……)
「――勇者ナイトハルトの伝説を知っているかい?」
 通路の奥からの声に視線を向けると、そこには黒い拘束衣に身を包んだ吸血鬼の姿があった。
「流石にここまで来たら足音でわかる」
「メイズ……」
「その声、兄弟か? カブラカンからは聞いてたが、生きていたとはな」
 ベルフラウの声に驚いた様子で、しかしメイズは指を鳴らす。
 足音を響かせながら駆けてきたヴェアヴルフ型剣機の攻撃からハンター達は飛びのく。
「お前らに興味はないが、もう少しってところを邪魔されるのは癪だからな。丁度いいし、邪神の力を少し試してみるか」
 通路の奥から飛来した赤黒い霧が剣機を覆う。その様子にレイスは目を見開く。
「なんだこのプレッシャーは……!?」
「え……レイス君がびびるレベル?」
「剣妃かそれ以上だぞ!」
 先程影響を受けていたハンター達も同様に本能的な怯えを抱いているらしい。
 一方、別になんの反応も見せないハンターもおり、どうにも危機感が食い違う。
「良くわからんが、もう十分だ! 引くぞ!」
 惣助が放った弾丸が剣機の足を凍結させるのを合図にハンター達は一斉に来た道を引き返していく。
 螺旋階段のような竪穴を駆け上がるハンター達へ、剣機は壁を這い上がりながら追撃してくる。
「こっちっす! 急ぐっすよ!」
 覚醒者の全力移動についていけないオキクルミはベルフラウが、帝は神楽が支えて移動する。
 惣助は銃撃で時間を稼ぐ。黒い霧を放つ攻撃から逃れるレイスだが、やはり本能的な危機感が強い。
「ユズ、ディアドラ! アレに触るな!」
「わかってる! くそ、こんな時こそボクが皆を守らないといけないのに……」
 霧を纏った爪の一撃を神楽は盾を構え弾き飛ばす。
「……んん? 俺には普通の剣機にしか見えないっすけど……」
 更にマリアンがホーリーライトを放ち、ホロンがタックルして転倒させると、惣助が銃を連射し仲間を誘導する。
「皆、耳栓を忘れるな! 迷わなければ脱出は容易い!」

 マッピングはほぼ完璧だった為、負傷者を連れての脱出であったが大怪我をするものも出さず逃げ切る事ができた。
「なんだったのでしょうか、あの感覚は……」
 肩を上下させ呼吸を整えるユズ。帝は顎に手をやり。
「僕は何も感じませんでした。危険を感じた人とそうでない人がいる……その違いはなんでしょう?」
 もしかしたらそれがゾエル・マハの能力を解明するヒントになるかもしれない。
 ハンター達は互いの情報を共有し、そして直ぐに答えに至る。
「ううむ。間違いないな。ボク達の共通項と言えば……」
「クリムゾンウェスト人であること……ですか?」
 ユズの言葉にディアドラはゆっくりと頷いた。



「……ベノの領域に落ちていた?」
 部下から渡された封書に首を傾げるラシュラ。
 歪虚の力に操られつつある部下たちは先にメイズに報告したらしく、封は切られていたが……。
「メイズ様は、コボルドの文字は読めぬと……」
 この地方のコボルド族に伝わる文字はとても古いもので、一部の特別な役職についているコボルドでなければ解読できない。
 ならば神官でもあるラシュラに手紙が回ってくるのは当然の事と言えた。

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MVP一覧

  • 愛しい女性と共に
    レイスka1541

重体一覧

参加者一覧

  • 大王の鉄槌
    ディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271
    人間(紅)|12才|女性|闘狩人
  • 双璧の盾
    近衛 惣助(ka0510
    人間(蒼)|28才|男性|猟撃士
  • 愛しい女性と共に
    レイス(ka1541
    人間(紅)|21才|男性|疾影士
  • 答の継承者
    オキクルミ(ka1947
    エルフ|16才|女性|霊闘士
  • 大悪党
    神楽(ka2032
    人間(蒼)|15才|男性|霊闘士
  • うさぎ聖導士
    マリアン・ベヘーリト(ka3683
    ドワーフ|20才|女性|聖導士
  • 満月の夜の静かな宴
    ユズ・コトノハ(ka4706
    人間(紅)|12才|女性|霊闘士
  • ブリーダー
    火椎 帝(ka5027
    人間(蒼)|19才|男性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 鉱山攻略戦(封印編3)相談卓
神楽(ka2032
人間(リアルブルー)|15才|男性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2015/08/30 16:50:02
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/08/27 06:41:25