• 深棲

【深棲】狂気の海魔と禁断の果実

マスター:稲田和夫

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/07/25 19:00
完成日
2014/08/02 17:38

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 異例の声明と共に戦闘警戒に入った自由都市同盟は、多数の軍船を海上封鎖のために送り込んだ。
 名高い同盟海軍であっても、この広大な海を守るにはやはり数に頼るしかない部分もある。かくして海上封鎖に送られた船の何隻かは、リゼリオその他から急遽集まったハンターたちを乗せて、初夏の海へ漕ぎ出すことになった。

 その船もまた、複数のハンターを戦闘員として乗船させていたが、その中に同盟の兵士たちと他のハンターの眼を一際ひきつける少女の姿があった。
 一目でそれとわかる長い耳に、様々な国の人間の基準に当てはめても見目麗しいといえる外見。
 いかにも、エルフらしい独特な雰囲気の衣装の上半身と、対照的に人間用と思しき下半身はいわゆるショートパンツ。
 だが、何より目を引くのは知っている者ならリアルブルーのものと解るであろう巨大なリュックサックだった。
「これが海なんですね……」
 いつ現れるかも解らない狂気の歪虚に神経を尖らせている同盟兵やハンターたちとは対照的に、少女は初めてみるらしい大海原に顔を強調させ、瞳を輝かせていた。
「……お前、エルフの癖に船が平気なのか?」
 と、そんな少女に話しかけたのは、それなりにハンターの経験が長そうな中年の男性だった。
 その顔色は今にも吐きそうな土気色である。
「お加減、悪いのですか?」
「ああ、昔から船は苦手でな……おえっ……自由都市同盟は俺の故郷でな……今回ばかりはと依頼を受けてみたが、やはり駄目だ……」
 すると、少女はリュックに手を入れてごそごそやっていたかと思うと、何かを取り出し男に差し出した。
「はいっ、どうぞ! きっと気分が良くなるはずですっ♪」
 それは、真っ赤に熟した大粒の林檎であった。
「こりゃあ……エルヴィンバルト界隈でもこんな見事なのは滅多にお目にかかれんぞ……」
 エルヴィンバルトとは、帝国の南部にあるエルフハイムの帝国側の呼称である。
 正確にはニーダーエルヴィンバルト、ミッダーエルヴィンバルト、オーバーエルヴィンバルトの三つの州に跨ってエルフハイムが広がっているのだ。
 そして、ハンターとしてその界隈を訪れた男性は知っていた。
 エルフにとって、林檎は森の恵みの象徴であり特にエルフハイムで産されるそれは生食は勿論、シードルやカルヴァドスなどの酒、あるいはジャムなどの材料としてその味が良く知られている事。
 そして、保守的なエルフたちはエルフハイムの林檎を人間が消費することを嫌い、果樹園での栽培すら、単一の作物で大地を占有するのは自然に反する行為として蔑視している事。
 一方で一部のエルフたちはこれを積極的に交易品として扱う道を模索している事。
「はい、お母さんは私がハンターになって外の世界を見て回ることに凄く怒りました。だけど、お爺ちゃんは選別代わりに持って行けって、こっそり庭で作っていたものを持たせてくれたんですっ」
「成る程……エルフも色々あるようだな」
 男性は正直何かを食べたいという気分ではない。だが、林檎の甘酸っぱさは少しは気分を爽快にしてくれるかもしれないという期待もあった、何より、少女の行為をむげにするのも申し訳ない。
「かたじけない」
 そんな訳で、男性が手を伸ばした瞬間――船が大きく揺れた。
「何だ!?」
「きゃあっ!」
 直後、海中から巨大な影が跳躍し、甲板に着地した。
 それは、巨大な蛸、ただしその足の半分が丁度人間の手足をそのまま巨大化させたような悍ましい物になっている歪虚であった。
「出やがった!」
「総員、戦闘準備!」
 兵士や、ハンターの怒声が飛び交う。どうやら歪虚は一匹では無いらしく、小型の歪虚が船腹を這い上がって来ていた。
 咄嗟に戦闘に備える男性。だが、エルフの方は悲鳴を上げた。
「あっ! お爺ちゃんの林檎が!」
 船が揺れた拍子に転んだ少女のリュックから林檎が零れ甲板中に広がって行く。
 あるいは、それを得物だと勘違いしたのか。蛸の歪虚は触手、あるいは手足を伸ばし、それを掴む。
 そして、それを食べようと持ち上げた伝説のメドゥーサの頭の様に触手と手足に囲まれた体の下には――何と巨大な人間の顔があり、それが吐き気を催すほど人間に似た構造の口を開いて林檎を齧った。
「……!」
 涙目にななった少女は素早く短剣を抜いた。旅先で出会った人間に林檎を振る舞うのは良くても、生きる者の敵である歪虚に奪われるのは耐え難かったようだ。
「落ち着け! 弓使いが突っ込んでどうする!」
 男性は怒鳴って少女を制止すると、それぞれに戦闘態勢に入っているであろうあなたたちの方を振り向いた。
「兵隊さんたちは、雑魚の相手で精一杯だ。こいつは俺たちで何とかするしかないな……頼むぞ!」
 海を守るための戦いが始まった。

リプレイ本文

「クソっ!? まるで効いていないってのか!?」
 焦燥感と共に怒鳴ったのは、ナガレ・コールマン(ka0622)である。
「見た目通りタフなようですが……損傷は確実に増大しています。もう少しの筈です!」
そう叫び返すセレスタ・レネンティア(ka0874)もやはり不安を隠せない。
 ナガレとセレスタの放つ弾丸は、間違いなく蛸の触手に命中している。その証拠に蛸の脚の表皮が一部剥げ、白い肉が覗いてさえいた。
 にも関わらず、触手は一向にそのダメージを気にしている様子が無い。蛸の脚は甲板を自由にうごめき、蛸の本体に攻撃を加えようとする他のハンターを迎撃、あるいは甲板に転がっている林檎をその吸盤に吸い付けるのだ。
「こっちの攻撃が多少なり注意を引きゃ良いんだがな……」
 とコールマン。だが、幸か不幸か彼の願いは次の瞬間最悪の形で叶えられる事となった。
「ぐっ!?」
「なっ……あっ……!?」
 ナガレとセレスタが同時に叫んだ。蛸の触手が突然凄まじい速さで伸ばされ、瞬く間に二人に巻き付いたのだ。
「ナガレさん! セレスタさんっ!」
 この事態に、二人と同様に後衛で触手の牽制に当たっていたシト・レウィス(ka2638)は咄嗟に剣で触手を切断して二人を助けようと、脚部にマテリアルを集中させ、一気に二人を捕えている触手の方へ接近を試みる!
 だが、幾らシトが影と同化しているような風貌でも、幾ら歪虚みたいな雰囲気でも蛸を欺くには至らなかったようだ。
 シトの死角から伸びてきた触手が、彼の体に巻き付いて持ち上げる。
「し、しまった……!」
 だが、シトの武器はナガレとセレスタのような銃ではなく剣だ。まだ、上手くすれあ触手を切り落として逃げるチャンスがある。
「……!」
 剣をくるりと逆手に持ち替え、触手に一撃を加えんとするシト。しかし、その瞬間蛸は触手を大きくしならせ、シトを海面に放り投げた。
 彼らしい、か細い悲鳴が長く尾を引き、水柱が船のすぐ横に上がった。
「シトっ! これに捕まれ!」
 これを見たザレム・アズール(ka0878)は攻撃を中止すると、咄嗟に船に備え付けてあった浮き輪を引っ掴んで甲板の縁に駆け寄ると、それを放り投げた。
 今度は、そのザレムを狙って蛸の「手」が彼の方に伸ばされる。しかし、それは直前で巨大な金棒によってしたたかに撃ち返される。
「よくも、人間さんたちを……!」
 怒りに燃える目で蛸を睨み付けるデュプロ(ka0046)。彼女は、八島 陽(ka1442)と目配せするとシトがそうしたようにナガレとセレスタを捕えている触手の方に向かって走る。
その二人に対してタコが繰り出した攻撃は、肥大化し歪めらてはいるが、間違いなく人間の手足にしか見えない器官によるキックやチョップであった。
「これ以上好き勝手させてたまるかよ!」
 陽はそう叫ぶと、眼前に迫って来た巨大な握り拳に向かって、ギュイギュイと回転するドリルを突き出した。真正面から拳とドリルが衝突。
 拳を覆う表皮は意外なほ硬く、火花を散らしながらドリルと拮抗する。しかし、最後には回転するドリルが手を粉砕し、甲板に不気味な白い肉片が飛び散り、拳は破壊された。
「ざまあみやがれ!」
 勝ち誇る陽。しかし、引っ込められる手と入れ替わるように、触手が背後から陽に伸びる!
「仲間も、マテリアルに満ちた林檎も、俺が守って見せる!」
 これもドリルで、迎え撃とうとする陽。しかし、触手は先ほどの「腕」よりは遥かに柔軟な動きで、巧みに回転する刃を避けると、陽の体に絡みつく!
 一方、デュプロには「足」が踵落としを仕掛けていた。頭上からドワーフの少女に迫るそれは、よく見れば死体のように蒼褪めた皮膚にフジツボや藻がこびりつき、極めて気色悪い。
 だが、少女は全く動じた様子も無く、むしろ感情の籠らない目でそれを見据えると、フルパワーで棍棒を振り抜いた。
 重量があり、かつ硬い物体同士が激突する重低音が甲板を揺るがして、デュプロの踏みしめていた甲板の板がめきっと音を立てて砕ける。
 そのままお互いに相手を押し切ろうと、拮抗が続く。だが、その隙にまたもや触手が少女の足元に忍び寄っていた。
「お前なんかの浅知恵でっ!」
 だが、デュプロは先ほどの無表情から一変。普段の彼女の愛らしさを知る者が見たら信じられないような凄まじい形相で、触手を踏みつける。
 少女のか細い足とはいえ、マテリアルを纏ったハンターのそれだ。しかも、デュプロの攻撃はそれで終わりではない。
 その動作を「踏み込み」として勢いをつけ、渾身の力で棍棒を触手に叩き付けた。
「このまま、へし折ってやる……」
 確かに、デュプロの宣言はそのまま現実となってもおかしくはなかった。
「矢は一本に集中させろ! とにかく触手の数を減らせ!」
「は、はいっ……!」
 背後から聞こえてきた会話にデュプロが振り向く。
「おじさまたちっ!?」
 そこには味方を助けようと、矢を射るエルフの少女と彼女を援護すべく触手を剣で切り払うハンターの男性の姿があった。
「ありがとう……やっぱり人間も、エルフも、ドワーフも関係ないんだね……」
 目を潤ませるデュプロ。しかし、次の瞬間彼女の表情が険しくなる。二人に向かっていた触手の背後から「腕」がエルフに向かって掴み掛ったのだ。
「え……きゃあっ!」
 未熟さゆえか、足が竦み為す術も無く目を閉じてしまうエルフ。だが、幾ら待っても何も起きない。恐る恐る目を開けたエルフが見たのは……。
「大丈夫、私は一人でも多く、皆の笑顔を、お友達の彼の故郷を、おじさまの故郷を守るから……」
 「腕」に摘み上げられたデュプロであった。
「あ……ぐっ……」
 蛸は掴み上げたデュプロを巨体相応の握力で締め上げる。デュプロの顔が苦悶に歪む。
「そんな……どうしよう……っ」
 途方に暮れるエルフ。彼女の腕でも「手」に当てることは出来るだろう。しかし、捕えられているデュプロに当てないように、となる話は別だ。
 その時、男性は気付いた。船縁の方で収束したマテリアルが燦然と輝くのを。
「シト! デュプロをっ!」
 自らの武器に砲撃のためのマテリアルをチャージしつつ叫ぶザレム。
「任せて下さい……」
 猛然と駆けるシト。海水を吸った服が重く纏わりつくのにもかかわらず、更に加速!
 やがて、限界まで圧縮されたマテリアルの閃光がザレムより発射される。
 閃光はデュプロを捕えている「腕」の根元に命中し、光の粒子が迸る。彼の機導砲は、「腕」の根元に大穴を穿ち、そのまま吹き飛ばす!
「あぶない!」
 くるくると回転する「腕」がデュプロを掴んだままなのを見て男性が悲鳴を上げる。
「デュプロさん、掴まって下さい!」
 その男性の横から、今度はシトがロープを投擲。それを見たデュプロは渾身の力で腕だけを伸ばすと、その先端を素早くつかんだ。
「ありがとう、シトさんっ」
 あやうい所で、海面への落下を免れるデュプロ。「腕」は直も。未練がましくデュプロに纏わりついていたが、彼女が力を込めると遂にその指が開き、それでも恐るべきことになおももがきながら海へと沈む。
 一方、シトはそのまま釣りの要領で一気にデュプロを引っ張り上げた。
「……俺も、いつまでも無様な姿を晒すわけにはいかねえか」
 この光景に、未だ触手に捕えられたままのナガレは自嘲気味に呟くと、ナガレは腕を伸ばす。その手には銃、ではなく鉤付きの手甲がはめられている。
「砲撃の威力の底上げに持参して来たのが、役に立ったな」
 直後、人間の耳には微かにしか聞き取れない振動音が甲板の大気を震わせる。ナガレが振動する爪を一閃させると、蛸の触手の先端の、細い部分が綺麗に切断された。
「さっきはグロテスクだと思ったがこうして輪切りにしてみれば何てことはねえ。ただの刺身だな!」
 爪を一閃させつつ空中で一回転して着地するナガレ。彼の背後では切断された触手が重い音と共に甲板に叩き付けられていた。
「いつまでも……掴んでるんじゃねえっ!」
 陽が叫ぶ。彼はドリルを握り締めるが、巨大なドリルは触手に拘束され動きを封じられたこの状態では上手く取回せないかに思われた。
「ぶった切ってやる!」
 しかし、陽はドリルを媒介として自身のマテリアルを集中させ、輝く光の刃を一瞬だけ形成した。
 その光景を見ていた仲間たちからは光が瞬いただけに見えただろう。次の瞬間には見事に脚が斬られてた。
「あ……くぅっ……? こ、この……っ」
 一方、セレスタは未だ触手に捕獲されてもがいていた。除隊後もまめに手入れしていたと思われる連合宇宙軍の制服が、脈動する触手や吸盤にくちゃくちゃにされていく様子は中々に痛々しい。
「少尉!」
 ナガレがそう呼んだのは部署は違えど、古巣は同じである故か。とにかく、ナガレはクローで触手を切断しようとする。だが、散々触手を破壊されたタコは残った「足」を回し蹴りのように振り回し、攻撃の隙を伺うハンターたちを牽制し始めた。
(どこを狙えばいい?)
 ザレムが逡巡する。その時、ふと目に入ったのは黄色く濁ったタコの巨大な「目」。これはタコの体の側面についている物であり、さきほど少しだけ見えた体の下の「顔」の人間の目とは異なる。
 だが、ザレムは決断した。
「セレスタ! 眼だ! そこから目を狙え!」
 そう叫んでセレスタに指示を出すと、ザレムは自身もタクトにマテリアルを収束させる。
「……!」
 持ち前の冷静さを取り戻したセレスタは、オートマチックピストルを構えた。両腕で銃床を支え、砲身を固定する。
 眼鏡の奥の紫紺の瞳孔が細まり、彼女の視界にはただ目標のみが映し出される。
「こんな所で、足踏みするわけにはいかない……私は必ず故郷へ帰るのですから」
 振り回されているせいで、照準を合わせるのは困難な状況下であるにもかかわらず、セレスタは焦らなかった。
 神経を研ぎ澄まし、集中すればほど体感時間がスローになってゆくのを彼女は感じていた。
 やがて、セレスタの銃口と蛸の眼球を結ぶ線が彼女には……。
「見えた!」
 パン、という乾いた銃声が甲板に響いた瞬間、蛸の眼球が破裂し体液が飛び散る。
「よし!」
 続いて、セレスタが吹っ飛ばしたのとは反対側の目を狙うべく、ザレムがマテリアルを纏ったタクトを構えた。だが、そこに蛸の「足」が襲い掛かる。
「くっ!」
 回避を優先したため、攻撃の機を逸するザレム。しかし、その背後に同じくクローによる砲撃の用意をしたナガレが。
「俺がやる……目を狙えば良いんだな?」
 ザレムのクローから迸った以上の閃光は、見事に反対側の眼球を貫いた。この連続攻撃により大蛸に変化が生じた。奪われた視力を補うためか蛸は遂にその巨体を持ち上げ巨大な人面を露わにした!
 だが、これこそザレムたちが待ち望んでいた瞬間である。
「皆、行くぞ!」
 真っ直ぐ蛸に突撃するザレム、陽、そしてデュプロ。
 一方の蛸は、人間が痰を吐くのにそっくりな仕種で、汚らしい墨をハンターたちに吹きかける。だが、デュプロは棍棒を盾にして目に墨が入るのを防ぐ。ザレムと陽もゴーグルと水中眼鏡で墨を防ぐ。
デュプロが、可愛らしい洋服が澄に塗れるのも気にせずそのまま蛸の前に立つと棍棒を振り上げた。
「……おまえたちを滅して皆の笑顔、取り戻さなくちゃ……」
 冷たい表情で、棍棒を振り下ろすデュプロ。肉片が飛散し顔面のあちこちが無残に陥没していく。
 蛸は苦痛か敵意か、歯をむき出しにしてデュプロを睨む。だが、その歯の一本にも棍棒が炸裂。歯の一本にぴしりとひびが入った。
「林檎も食えなくしてやるっ!」
 その歯を狙って、陽がドリルを突き出す。金属の回転する甲高い音と共に、歯がガリガリを削られ根元からへし折れた。
 蛸の「顔面」は無表情であったが、残った触手を振り回して彼らを撃退しようとする。しかし、シトや、エンフォーサーの男性、エルフに阻まれてしまう。
「ここまでだ」
 歯の欠けた部分から、口の中にタクトを突っ込んだザレムの視線と蛸の虚ろな視線が重なる。
 直後、マテリアルの光が蛸の口の中で弾けた。そして、ハンターたちが見守る中大蛸の体は力が抜けたように長々甲板に伸びていった。


「この蛸さん、お土産にするには気持が悪いわね」
 普段の様子に戻ったデュプロが、蛸の死体を眺めながら呟いた。その直後、歪虚の体は黒い霧状のものになって消滅し始める。
「……それに比べて、こっちは美味しそうだね。はいっ」
 それを見届けたデュプロはにっこり笑うと、少女に拾った林檎を差し出した。
「……大切な物があるというのは、良いことだと思います……どうぞ」
 とシト。
 しかし、少女はそれを受取ろうとはしなかった。
「いいえ! それはもともと旅先で色んな人たちと食べようと思ってもってきたんですからっ……おじいちゃんもそう言うに決まっています」
「……いいおじいさんだったんだな。解った。俺に任せてくれ」
 そう言うとザレムは林檎を受け取り、それを切り分け始める。
「こうすれば、皆で食べられるからな」
 林檎を一口食べた陽が、感心したように呟く。
「流石に、欲求不満の歪虚が狙うだけの事はあるな。やっぱりマテリアルが詰まってるのか? ……きみのじーちゃん、凄いな」
「ん……甘い。美味しいですね。これならジャムやアップルパイにしても良さそうです」
 甘い物に目が無いセレスタも感心したようにしゃくしゃくと林檎を頬張る。
 男性のハンターも、船酔いが収まったと笑った。
「ありがとうございますっ」
「そうだ、君の名前はなんていうんだい?」
「え?」
 ザレムの質問に一瞬きょとんとする少女。だがすぐに笑顔になって。
「あ、私はエーブルグリューネと言います。よろしくおねがいしますねっ。ザレムさん!」
 そう少女は会釈した。

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MVP一覧

  • カナイオ・スイーパー
    デュプロka0046
  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズールka0878

重体一覧

参加者一覧

  • カナイオ・スイーパー
    デュプロ(ka0046
    ドワーフ|14才|女性|闘狩人

  • ナガレ・コールマン(ka0622
    人間(蒼)|27才|男性|機導師
  • 飛ぶ鳥を落とす
    セレスタ・レネンティア(ka0874
    人間(蒼)|23才|女性|猟撃士
  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師
  • 真実を見通す瞳
    八島 陽(ka1442
    人間(蒼)|20才|男性|機導師

  • シト・レウィス(ka2638
    人間(紅)|18才|男性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
デュプロ(ka0046
ドワーフ|14才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2014/07/25 22:00:01
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/07/20 20:29:10