• 東征

【東征】気紛れな雷

マスター:朝臣あむ

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~7人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/09/15 07:30
完成日
2015/09/23 05:52

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 憤怒の歪虚王・九蛇頭尾大黒狐 獄炎――九尾が人類に倒された。
 全くもって予想外で楽しい顛末を見届けた紫電の刀鬼(kz0136)は、上機嫌のままエトファリカの空を自力で飛んでいた。
「面白いものが見れましたネ~♪ アイちゃんは怒ったままデスが、まァ問題ないでショ~♪」
 アイゼンハンダーの襲撃を邪魔した事で以前以上に嫌われてしまったが、その辺は如何でも良い。彼にとって重要なのは「東方が如何なったのか」だ。
 元々オルクスの命で東方の様子を偵察するだけの予定だった。だが色々と思う所があり、結局は手を出してしまった。
「救世主は見事東方を護りぬきました。“貴方”も嬉しいデスよね……エトファリカのking」
 フッと空を見上げて腕を伸ばす。
 そろそろこの地を離れる頃合いだろう。オルクスの命である偵察は終了したし、何より今の東方に興味を惹かれるモノはない。
「次は何処にGoしましょ~かネ~♪」
 そう言って首を捻った時、彼の視界に見覚えのある影が飛び込んで来た。
「っ、……なんで、ここに……!」
 和風装束を翻し、祀は必死の思いで妖孤の攻撃を避けた。
 膝を着き、改めて効き足に力を込めて立ち上がる。そして一気に駆け出すと納めた刀を抜き取った。
「当たれっ!!」
 思いのほか早い攻撃が妖孤に迫る。だが刃が敵に触れる直前、妖孤は狐火を放って彼を牽制した。
 これに祀の視線が逸らされる。
「あつっ、……ッ?!」
 俯いた隙を突いて体当たりしてきた妖孤に幼い体が吹き飛ばされる。
 成犬と似た大きさの妖孤は、倒れた祀を見止めると直ぐにトドメを刺すべく迫って来た。
(ダメだ、避けれない……!)
 サッと脳裏を過った危険信号に立ち上がろうとする。しかし祀の足は動かなかった。
 ハンターとの戦闘経験で少しは肝が据わったようだが、自身が窮地に陥るとその経験はなかった事になるらしい。
「――」
 咄嗟に瞑った目が彼の覚悟を表していた。
 だが衝撃の瞬間は訪れない。恐る恐る開けた瞳に映ったモノに彼の目が盛大に見開かれた。
「あなたは……」
「奇遇デ~ス。ナニしてるデスか~?」
 驚く祀の前に立った刀鬼は、妖孤の首を掴んだまま彼に問い掛けた。これに彼の息が呑み込まれる。
「……憤怒の歪虚の残党を狩りに……」
 ジリッと足を下げて警戒を示す。
 その様子にクツリと笑って、刀鬼は手にしていた妖孤を地面に叩き付けた。
 祀がいるのは廃墟寸前の村だ。村民の姿はなく、荒れた家々が建っているだけの地。
 恐らくは天ノ都へ向かう歪虚に壊されたのだろう。
「ユーだけデスか~? だとしたらkillされますヨ~?」
「き、きる? えっと……」
「殺される、って意味デス」
 そう囁き、刀鬼の顔が周囲を見回す。それにつられる様に祀の目が動くと、彼は何度目かの驚きを示して立ち上がった。
「妖孤がこんなに……まさか、歪虚の残党の住処は、ここ?」
 依頼ではこの村の近くに歪虚の住処があると聞いていた。故にこの村で他のハンターと合流する予定だったのだ。
 だが予定外だ。
 こんなにも多くの妖孤がいる事も、ここが歪虚の巣だったことも。
「っ……、なんとか持ちこたえないと!」
 ここで自分が傷付けば仲間に迷惑をかける。
 祀は急ぎ印を刻むと意識を集中した。その姿に刀鬼の首が傾げられる。
「why? 宗野家の術デスか? ユーの術は最弱の弱の弱の弱デスよ?」
 祀には簡易の妖怪除けの術を使う能力がある。もし出来るならこの術を使ってこの場を凌ごうと言うのだろう。
 だが刀鬼は知っている。彼の術は殆ど効果を持っていないと言うことを。
 けれど祀もそのことは承知していたようだ。
「わかっています。それでも使わなければ覚えられませんし、強くもなれません。それにこのままでは確実に勝てませんし生き残れません。だからこの術に賭けてみようと思うんです」
 言葉を紡ぎながら構築されてゆく術式。それを眺めていた刀鬼の首が傾げられた。
「無謀な賭けに挑むのも血、デスかね……」
「え、今――」
 やれやれ。そんな溜息が聞こえ顔を上げた瞬間、祀の耳に凄まじいまでの音が響いた。
 大地を揺らし、草を焦がすのは雷だ。
「なにを」
「ユーのfightに感服して手を貸しマース♪ 仲間が来るまでkillされたらダメデスよ~?」
 言って刀鬼は拳を握った。
 そこから生まれる稲妻は彼の体に纏わり付き拡大してゆく。そして迫り来る妖孤の群を吹き飛ばすと、彼は僅かな鼻歌を零し人差し指を立てた。

リプレイ本文

 東方の少年、祀がいると言う廃村に向かう途中。トラックから下ろして貰った魔導バイクに跨ったメル・アイザックス(ka0520)は、目に飛び込んで来た廃村の広間に見えた人影に目を瞬いた。
「人影が2つ……?」
 事前の情報では合流相手は祀だけだったはず。だが、彼の他にもう1人いる。
 雷撃を纏い、巨大な機械刀を振り降ろすその人は――
「――紫電の刀鬼!?」
 思わず上がったナハティガル・ハーレイ(ka0023)の声にメルの目が更に瞬かれる。
「歪虚が人を守る、だと? ……まァ、刀鬼だしな。何が何だか分から無ェが、考えるのは後だ!」
 驚くのも一瞬、祀の置かれている状況に気付くとナハティガルとメルはアクセルを踏み込んだ。
 加速する2台のバイクが祀と刀鬼、そして刀鬼と妖孤の間に滑り込む。
「――よう、奇遇だな? ライジングソルジャーさんよ……!」
 妖孤と刀鬼の間に割って入ったナハティガルは、そう流し目を送ると双眼の色を変化させてバイクを唸らす。
 そして彼と共に祀の前にバイクを停車させたメルは、彼の負傷を確認する。
「大丈夫?」
「……、はい」
「さっすが男の子、強いねっ」
 頷く彼に微笑んで手を差し伸べると、後方にいる刀鬼を見た。
 自分らの登場と同時に武器を下げようとする彼に、メルは落ちかけた視線を上げると告げた。
「彼はバックさせて貰います。それと……今来る皆がお話しあるみたいです」
「Why?」
 振り返った刀鬼に口角を上げ、祀をバイクに引き上げる。
「後でサインくださいね。それでは!」
「sine??」
 更に意味不明。そんな雰囲気を醸し出す刀鬼を他所にバイクを再発進させると、メルは到着した仲間を通り過ぎるようにして後方に下がった。
「やっぱバイクには敵わねぇな」
 愛馬を走らせ2人に遅れて到着したクィーロ・ヴェリル(ka4122)はそう零して祀を見る。
 状況から見て祀の護衛はメルで問題なさそうだ。となれば自分は戦闘に集中すれば良い。だがその前に気になる事がある。 
「ぅえ?! 何で戦闘……って、なんで刀鬼さんがいるんですか?!」
 到着一番に全身で困惑を示すミィリア(ka2689)。その後ろからは呆れ半分の秋桜(ka4378)も見える。
「帝国に帰ったと思ったら、またこんな所で道草を……」
 本当にわからない人ですねぇ。そう零して後方に退いた祀を見た。
 以前にも祀を助けていた刀鬼。やはり何かあるのだろうか。
「わかりませんねぇ……」
「……本当に意味が分からん。紫電の刀鬼がこんな所で一体何を……まさか、祀を守っていたのか? ならば今回は敵ではないというのか……」
 誰もが状況を理解できない。当然アデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)も現状を理解できていない状態だ。
 それでもわかる事がある。
「この敵を倒すのが先だと思います。当初の通り作戦目標を実行しましょう」
 妙に冷静な花厳 刹那(ka3984)に誰もが頷く。だが刀鬼だけは違った。
「ミーはこれでgoodbyeデース♪ アトはユーたちにpleaseしマース♪」
「戦いはこれからだってのに、まさか帰るとか言わねーよな?」
「気紛れなのか、理由があるのかわかんないけど……最後まで面倒見てってくれてもいーんじゃないっ? それに昨日の敵が今日の友~みたいの燃えなーい? だめ??」
 ナハティガルとミィリアの言葉に刀鬼の肩が竦められる。
「ミーの役割は終わりデース。main dishはユーたちに――」
「なんだ、随分優しいんだな。メインディッシュを俺たちに譲ってくれるなんてな! いいぜ、おめぇの代わりに大立ち回りして目立ってやるよ! お前さんは遠くで指くわえてみてな!」
 挑発なのか、それとも素なのか。胸の刺青に呼応して緋色に変じた瞳を細めると、クィーロは一気に駆け出した。
(敵の数は……8体か。悪くねぇ)
 ニッと口角を上げて日本刀を引き抜く。その姿に刀鬼の背が向けられた時、刹那が一歩を踏み出した。
「What?」
 コホンッと目立つ咳払いをした彼女を見る刀鬼。それを見上げて髪を掻き流すと、刹那は凛とした表情で言い放った。
「この左目の疼き……宿敵(とも)よ、この戦場にお前も前世からの宿縁を感じるだろう?」
 片目を押さえるようにして不敵に笑む彼女に「Wow♪」と声が漏れる。
 刹那の狙いは刀鬼との共闘。それを他の面々も期待している。だからこそ恥ずかしさを押して彼が好みそうな挑発を繰り出そう!
「宿敵よ、蒼界の炎で我らの闘いを阻む愚か者を退けようではないか。さあ、宿縁の時を!」
 リアルブルーの中学生が罹患すると言われている病をなぞらえ台詞を紡ぐ。ハッキリ言ってこれで無視でもされようものなら女子高生なハートがbreakしてしまうだろう!
(え……ノッて、来ない……?)
 まずい。そんな言葉が脳裏を過った瞬間、大きな仕草で刹那の手が取られた。
「beautiful Japanese girl ♪ 大和撫子の申し出は受け取るのが礼儀デース♪」
「ははは! 結局残るのか! いいぜ! そういう性格俺は嫌いじゃねぇよ! なぁ序でに俺らと一緒に遊ばねぇか! 強ぇんだろ?」
「それはまた今度デース♪」
 チュッと刹那の手の甲に口付ける仕草を見せてから、刀鬼は周囲を見回す。
 不思議な事にハンターたちは刀鬼の共闘を容認してくれるらしい。その事に懐かしい感覚を覚えながら刀鬼は機械刀を改めて構えた。
「It's show time♪」


「すごい……」
 目の前で繰り広げられる妖孤とハンターの闘いに声を上げた祀は、自身の治療をしてくれているメルを見た。
「何であんな風に闘えるんですか……怖く、ないんですか?」
 先日初めて歪虚を倒した祀は、いまだに闘いは怖いと言う。
「たぶん経験の差だとは思うけど、それ以外にも理由はあるかもね。それじゃ、少しづつ攻勢に出よっか!」
「え」
 思わぬ言葉だったのだろう。足を下げた祀にメルは言う。
「私も偉そうな事言えるほど得意な訳じゃないんだけどね……だからこそこんな機会見逃せないよ。経験豊富な人達を間近で観察して一緒に戦い方のお勉強したいって思う」
 メルの視線は既に戦場に向いている。
 直線状に攻めてくる妖孤の攻撃を受け流すようにして回避したアデリシア。その彼女が華麗に反転すると、黒と銀のグラデーションへ変化した髪が風に流れた。
「ちょろちょろと鬱陶しい!」
 軸足に力を込めて踏み込んだ足。そこから繰り出したのは突きだ。
 妖孤の素早さは見ての通り。加えて今放った旋風撃は素早さに磨きをかけて斬り込んでくる技だ。
 それを受け止めるのは並大抵の動体視力では無理。加えて迎え撃つ心構えと、踏み込む勇気が必要のはず。
「危ない!!」
 アデリシアは妖孤の背に打撃を打ち込んだ状態で祀の叫びを聞いた。だが慌てない。
 チラリと視線を流した先に見えた別の妖孤の姿をそのままに、彼女は更なる攻撃を目の前の妖孤に注ぐ。
『キュァァアア……』
 声を上げ崩れ落ちる妖孤。しかし彼女にはもう一体――否、2体の妖孤が迫っている。
「これが連携攻撃……確かに速くはあるけど刀鬼さんに比べれば!」
 身を低くして滑走するミィリアに添うように桜の花びらが舞う。
 彼女はアデリシアに向かって左右から駆け込む妖孤に迫ると、手にしている大太刀を強く握り締めた。
「ミィリア式突撃――春一番! いざッ!!」
「援護しますよー!」
 攻撃を仕掛けるミィリアに聞こえるよう叫んで、秋桜が杖を振るう。
 雷の中に舞い散る花びらが幻想的に荒々しく妖孤を襲う。そしてこの攻撃に表情を引き締めたアデリシアが大地を蹴った。
「まさに春の嵐デスネ~♪」
 ミィリアの擦れ違いざまの薙ぎと、アデリシアの雷を纏う棍の一撃。その双方が同時に妖孤を打つと、刀鬼は感心したように口笛を吹いて拍手を零した。そこにナハティガルの操縦するバイクが近付いてくる。
「折角の機会だ。俺とタンデムしてみないか?」
 乗れ、と後部座席を叩いてアクセルを吹かす彼に刀鬼の見えない目が瞬かれる。そして僅かな間の後に飛び上がると、刀鬼は彼のバイクの後部座席に立った。
「goodな見晴らしデース♪ Goデ~ス♪」
「何故貴様が指図をする!」
 巨大な機械刀で前を示す彼にスタッフに持ち替えたアデリシアが呟く。その姿に「まあまあ」となだめてミィリアは前を見た。
 そう、この間にも戦闘は続いている。
「あちらは何やら楽しそうですね……っと!」
 妖孤の放った炎をバク転の要領で回避した刹那は、その真下を潜るようにして飛び出したクィーロを見た。
「前衛の敵の数は2……連携の動きが見えますね」
 まるで獣のように駆け行く彼の先を見遣って1人零す。
 この場で彼を追って戦闘に参加できるのは自分だけだろう。
 刹那は片膝を着く様にして着地を果たすと、真っ直ぐに妖孤へ向かう彼の背を追い駆けた。
「逃げるんじゃねぇぞ! 真正面から闘え! 俺を楽しませろ!!」
 鋭い切れ味を伺わせる刀が怪しく光る。
 クィーロは迷う事無く妖孤の間合いに飛び込むと、白い歯を覗かせてニィッと笑んだ。そして踏込みの勢いのまま刃を突き入れる――
『キィキキイイッ!』
 甲高い声を上げ妖孤の腕が裂ける。だが逃げる気配はない。
 刃を滑るように首を伸ばした敵の牙がクィーロの腕に喰らい付いた。
「ッ、はは……はははは! いいぜ! いいぜ!」
 痛みは感じているはずなのに、クィーロは狂気すら感じる笑いを上げて妖孤の首を掴んだ。
「もっと俺を熱くさせろよッ!」
 退き剥がすと同時に上がった血飛沫に瞳が妖しく光る。そして彼は手にした妖孤を振り上げると、迫る刹那に向かって放った。
「斬れぇッ!」
「――参ります」
 努めて冷静に、彼の勢いに呑まれないよう息を整える。
 そうして移動中に鞘に納めた刀を抜き取ると、目の前に放られた妖孤を据え、一気に裂いた。
 だが彼女の動きは止まらない。
「もう一丁!」
「承知致しました」
 言葉は不要だった。
 同時に斬り込んだクィーロと刹那が、狐火を放とうとしていた妖孤の喉を貫く。そして互いに視線を合わせると、2人は別々の方向に向かって駆け出した。
「凄い……」
 前に見た時よりも遥かに連携の取れた動きのハンター。それに感心した声を上げた祀に危機が迫る。
「祀君、よそ見はダメ!」
「!」
 ハッとした時には遅かった。
 ハンターの戦闘に見惚れていた祀の前に、残る妖孤が飛び出してくる。
「こんなことも予測済み……ううん、予測不能だからこそ対処するんだよ!!」
 メルは瓢箪型の魔導機械にマテリアルを注ぐと、祀目掛けて飛び込んで来る妖孤に向けて破壊のエネルギーを放った。
「――ッ」
 扇状に広がる炎が妖孤と祀を襲う。しかし彼が目を閉じている間に戦況は変化した。
「刀鬼、そのガキを落とすなよ!」
「仕方がありませんネ~」
 半分以上が面倒そうに言いつつも、ナハティガルのバイクに立った刀鬼は拾い上げた祀を肩に乗せたまま落とす気配はない。
 それどころか片手で器用に機械刀を握り直すと、そこにある引き金らしき物に指を添えた。
「service shotデス♪ nice boy、Goデース♪」
「ボーイ? まあ良い。即席の合体技だ。――行くぜ……!!」
 刀鬼が引き金を引くと同時に放たれた雷撃。それを追うように加速したナハティガルは、手にしていた戦用の槍で地面を掻き雷を掬うように振り上げた。
『イィィイイッ!!』
 耳を劈く悲鳴が上がり、妖孤が硬直する。
「祀!」
「祀君、いっちゃえ!」
 先の攻撃で固まったままだった祀の手を引いて駆け出したメルが彼の武器叩く。
 それに意識を引き戻したのだろう。
 息を呑むようにして表情を引き締めた祀が、メルの動きに合わせて踏み込んだ。
「スペシャル援護ですよー!」
 祀とメルが到着するよりも早く妖孤の硬直が解けそうになる。しかしそれを見越した秋桜の雷が改めて妖孤の体を貫くと、メルに導かれた祀の刀が敵の胴を貫いた。


 戦闘終了後。秋桜の上げるファイアーボールとサンダーボルトの花火を見上げていた刹那は、聞こえて来た声に空から刀鬼へと視線を向けて目を瞬いた。
「さて……貴様はこれでどうするつもりだ? 消耗した我々を蹂躙するか? 骨の数本は代償としてもらっていくが」
 あくまでも共闘は今だけのこと。そう告げるアデリシアに刀鬼の肩が竦められる。
「ミーは弱い者いじめは好きくアリマセーン。なのでー、ユーたちとのBattleは次回にオアズケデス♪」
「ならば早々に失せるがいい。次回は、この前のようにはいかぬ」
「What?」
 この前? そう聞き返して首を捻る。そう言えば先の大きな戦いの最中で刃を交えたような……。
「貴様ッ、よもや忘れたなどと言わんだろうな!?」
「Oh! ボーリョク反対デース!」
 降って来た棍をヒラリと避けて抗議する刀鬼。そんな彼に花火を上げ終えた秋桜が声を掛けた。
「刀鬼さん。刀鬼さんがアイちゃんを止めてくれなければ、きっと違う結果になっていたでしょう」
 ありがとうございます。そう言葉を添えた彼女に刀鬼の肩が竦められる。
 それを見て笑みを零すと、秋桜は表情を引き締めて彼の顔を見た。
 ヘルメットの向こうにある顔は想像できないし、もしかしたら何もないのかもしれない。それでもこれから語る決意を告げるには、彼の目にあたる部分を見て言いたかった。
「……東方が難局を乗り越えた今、刀鬼さんは何がやりたいのでしょうか……何にせよ歪虚になっている刀鬼さんを倒し、この東方の地にお墓を建てる事が、私からのせめてもの弔いです! ネクストタイムは、覚悟していて下さいネー!……あ、伝染った」
 慌てて口を押える秋桜に刀鬼の口から高笑いのような大きな笑い声が漏れた。
「ブリリアントはspecialにniceなGIRLデース! But、ユーは1つ勘違いをしていマース」
「勘違い……?」
「Yes、ミーはここの出身ではアリマセ~ン」
 刀鬼はそう言うと、地面を蹴って飛び上がった。
 軽々と重力を無視して空に浮かぶ姿はやはり普通ではない。
「ではミナサーン、see you♪」
 刀鬼は大きく手を振るると、何処か楽しげに背を向けた。
 その姿にクィーロが声を上げる。
「貴重な体験をさせて貰えたかな? ありがとうね」
 戦闘の時とはまるで違う柔らかな物腰と胡散臭い笑みに、周囲の驚いた目が向かう。しかしそれを気にした風もなく手を振り切ると、彼は消えゆく刀鬼を見送った。

依頼結果

依頼成功度成功
面白かった! 4
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

  • 紅花瞬刃
    花厳 刹那ka3984

重体一覧

参加者一覧

  • 一刀必滅
    ナハティガル・ハーレイ(ka0023
    人間(紅)|24才|男性|闘狩人
  • 「ししょー」
    岩井崎 メル(ka0520
    人間(蒼)|17才|女性|機導師
  • 戦神の加護
    アデリシア・R・時音(ka0746
    人間(紅)|26才|女性|聖導士
  • 春霞桜花
    ミィリア(ka2689
    ドワーフ|12才|女性|闘狩人
  • 紅花瞬刃
    花厳 刹那(ka3984
    人間(蒼)|16才|女性|疾影士
  • 差し出されし手を掴む風翼
    クィーロ・ヴェリル(ka4122
    人間(蒼)|25才|男性|闘狩人
  • ブリリアント♪
    秋桜(ka4378
    人間(蒼)|17才|女性|魔術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼相談板
秋桜(ka4378
人間(リアルブルー)|17才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2015/09/15 01:04:44
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/09/13 18:58:44