• 東征

【東征】鬼の子らとフッコーとあめだま

マスター:狐野径

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~10人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
寸志
相談期間
5日
締切
2015/09/15 09:00
完成日
2015/09/20 20:42

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●甘いのが恋しい
 今後がどうなるか分からない。
 エトファリカ連邦国での歪虚との戦いは一応の決着はついた。歪虚王にだって勝てるという勢いもあり明るい一方、それまでに失った命の多さに気付かされ目を覚ますまで時間は迫っていると言ってもいい。
 間で揺れ動いた鬼たちにとっては、世の中は明るくなるかもしれないと思えるほど楽観できるか、人間による断罪が待っているのだろうかと不安を抱いた未来を見るか分かれるところだ。
 西方に行くか。
 このまま東方にとどまり、贖罪をするか。
「俺たちは甘いものが食べたい!」
「そう、そんな難しいことは大人が考えればいい」
 頭を寄せて相談する鬼の子――といっても大人に足を踏み入れている年齢ではあるが――は、大人たちが話していることから本能と言える甘い物が欲しいということまで幅広くしゃべる。
 経験不足による思考の幼さは残っても、体格は人間に比べれば立派である彼らは、戦うにも未熟で日々時間を持て余していた。
「どうしよう」
「どうしようってどうしよう?」
 他人が聞けば会話になっていないが、本人たちは共通の情報を持っているため会話として成立はしていた。
「行ってみようよ」
「うん。フッコーのお手伝いすればいいんだよね? 甘いの欲しい」
「前、助けてくれたお姉さんも会えたらいいな」
「美人だったよね」
「あのお兄さんはかっこよかった」
「小さい子とはお友達になれるかな……」
 小さい子と言っても彼らにとって大きい人の方が少ないのではあるが。
「あ、あの妖怪もいないんだろうなぁ。人間だったら良かったのに」
 サルハネは角を触ってきた男装の少女を思い出していた、妖怪だけれども。威張っていたが、友達になれそうな気がしてしまうという恐ろしい所を持っていた。
「お前が見たっていうやつ?」
「タケノコもらって喜んだって……」
「もう、竹だよね」
 時が経つのは早い。
 大きな戦いは終わり、食料も腹八分目まで毎日食べられる。そんな幸せが来るとは思っていなかった。
「やっぱり遊びに行きたい」
「フッコーのお手伝い」
「甘いの食べたい」
 五人はそわそわする。
 もう妖怪の見張りはいない。
 だから堂々と出かけることにした。

●悲鳴を上げる大人たち
「大変だ、大変だっ!」
「どうしたんだい?」
 あわてる男に作業の手を止め女が応えた。彼の声を聞きつけ、別の鬼も集まってくる。
「何がどうしたんだよ」
「あの、悪がきども……人間の集落に出かけた」
 沈黙が漂い、続いて溜息が漏れた。
「追いかけるか」
「下手に刺激できないし」
 人間と手を結ぶとしても、殺してきたことは現実である。大人が追いかけて子らが逃げた場合、たぶん行先は人間の集落。そうなると襲撃だという印象を与え、険悪になるかもしれない。大人たちは推測した。
 ひとまず、書置きを見に大人たちは移動する。書置きは地面にたどたどしく記されている。
『ニンゲンのフコーのてつだいはいってきます』
 一瞬で分からない言葉に首をかしげるが、あわてていた者が言っていた内容がしっくりくる。本人たちがいないので答えとして正しい。
「うん、なんか、あいつらにもう少し読み書き教えるべきじゃないか」
 追いかけるわけにもいかないので、あきれてそこを指摘する。
「皆を信じるしかないよっ」
 行った中に兄がいる女の子が涙目で言う。
 何もできないからといって、目の前のどうでもいいことで現実逃避していた大人たちははっとした。下手をすれば怨みということで人間に殺されるかもしれないのだ。
 大人たちは「あいつらを呼びに行こう」と相談を始めようとした。
「あたしも行ってみたかった」
 女の子が顔を上げて告げた一言に、大人たちは動きを止めた。
「だから! どうして無理か説明しただろう」
 泣きそうな意味が異なっていたため大人たちは説教に入った。
 出かけた子らがどうなるか、何かに祈るしかなかった。

●どうする、これから
 不安は不安。
 鬼の子たちはほっかむりやら帽子で頭を隠して集落に入る。
 壊れた家屋を直し、道を直す。人々が忙しく動く。働くに小さい子らも、何かしらの役割を持って動き回っていた。
「どうするんだ」
 そわそわと五人は頭を突き合わせる。
 人間の子なら小さいけれど、大人でも大きい部類の彼らがいるのは非常に目立った。
 視線が集まり、警戒が生じてくる。
「あ、あの!」
 サルハネは意を決して大きな声を出して、視線を向けてきた人たちを向いた。
「お金はありません。でも、甘いお菓子が食べたくて。あの、働くから、お願いします」
 頭を下げるサルハネに、他の子らも同じく頭を下げる。
 頭を下げた拍子に帽子がとれる。

 ザワリ。

 あわてて頭をかくす。
 いや、サルハネの青白いを通り越した青い肌に、すでに彼らの正体はばれはじめていたのだ。
「お、鬼の世話にならないよ!」
「そうだ、出ていけ」
 武器を持って攻撃はしてこないが、否定される。
「俺たち、力はあるよ。だから、柱立てるのだって早くできるよ」
 人手が欲しい集落の人間たち。
 敵でもあった彼らの手を借りるのも癪。
 どうしたらいいのだろうか?
「以前、こっそりもらってしまったのも謝ります」
 集落の者たちは腹が立った。飢え死にするとか人が食べ物が盗まれたことで人が死んだことはなかったが、集落にいる者の中に不和が生じる寸前になったのは事実だった。
「てめえらが犯人か」
 一人が鎌を持って近づいてくる。
 別の者もそれにつられて武器を手にやってくる。
「ご、ごめんなさい」
「人間の食べ物おいしくて」
「食べ物なくて……ごめんなさい」
 必死に頭を下げる。
 集落の人間の怒りは収まるどころか、殺してしまってもかまわないかも知れないという空気が漂い始めている。
 鬼は敵だった。
 遠い昔に人間との意思の疎通のミスで始まった敵対だと噂にもなってはいる。
 鬼は食料を育てられない環境にいた。
 だから盗んでいいのだろうか。
 彼らは謝罪し、働いて何とかしようとしている。
 実力で排除しようとする者が動く中、無理に追い返さなくてもという声も小さいがある。武器を持つ者に対しては非常に弱かった。

リプレイ本文

●制止
「みなさん、武器を下して! ここで鬼を手に掛けるのは互いのためにならない」
 キヅカ・リク(ka0038)はあわてて割って入った。報復が報復を呼び、誰かが死ぬのは悲しいと説得する。
「あら、リク君どうしたの? サルハネ君?」
 エイル・メヌエット(ka2807)は復興のためにとこの地に入っていた。知り合いのハンターと鬼の子を見つけ、声をかけ近付く。
 名前を呼ばれたことで鬼の子の一人が顔を上げる。サルハネは目を大きくして、嬉しそうな顔になる。
「お姉さん……」
 知っている人を見て安堵したようだ。
「やあ……というべきですか? それと、みなさん、俺たちはハンターです。中立の立場から、この騒ぎを治めたいです」
 雪ノ下正太郎(ka0539)はサルハネに声をかけて後、民衆を説く。騒ぎを聞きつけて走ってきたが、少し治まってきているため交渉に持って行こうと考える。
「ああ? お前ら……」
 人ごみの中、しばらく考えた後シャトン(ka3198)は前に出る。鬼の子に見覚えがあったが、大声で言うのもはばかれる状態ではあったので近寄ってから話をすべきだった。
 四人の鬼の子が「あっ」と言う顔になり、そわそわする。
「人手がいるなら、僕も手伝いますよ?」
 ノーマン・コモンズ(ka0251)は前に出て、鬼の子を観察する。集落の者たちとのやり取りを見て、力はあるが直情的な行動が気になった。彼らは素直なのだが、気づかないうちに罪に触れるのは問題だろう、と考える。
 子らはどうして来たのかということをハンターに今一度告げた。
 復興のためより甘い物欲しさが目立つのが気になるところであるが、人間と鬼が互いを知るきっかけにもハンターたちは思えた。
「鬼を許せない気持ちを消せと言えないけど、手伝うと言うのだから少し……少しだけ交流して見ていいんじゃないかな?」
 リクの説得に武器を持っていた集落の者たちは困惑する。
「嫌われていると知りながらも復興の手伝いに来たのだから、少し大目に見てもらえないかしら?」
 エイルは首をかしげつつ、民衆を見た。
「力仕事ができる彼らだけでなく、ハンターである俺たちもいるんです。少しでも助けになると思います」
 正太郎は少しでも怖がる気持ちを消そうと説得した。
「手伝おうって言ってるんだろ? ひとまず、オレ達が監視って事で手伝わせようぜ?」
「さあ、何をすればいいんです?」
 シャトンがテキパキとまとめてしまい、ノーマンが民衆を促した。
 顔を見合わせて何か話をしている者から一人やってきた。
「では……お願いします」
 鬼の子をちらりと見つつ、人手が欲しい所を上げた。特に多いのがやはり力仕事が多い所だ。
 鬼の子らは手伝えるそして甘いものがもらえるかもと単純に喜んでいる。
 それを見ると悦びに浸るが、危うい部分も見え隠れしているように思えていた。
 ハンターたちは小声で意見交換をし、交流を持つこと、鬼の子らには人間関係を学ぶことが必要だろうとまとまった。
 鬼の子の分担は鬼の子に決めさせ、それぞれの所に移動した。

●見回り
 ノーマンがヒウチを連れ見回り組についていく。薪拾いや木の実があるちょっとした茂みで、人気が少ない所見回りはを通る。
 鬼が一緒ということで警戒しているが、ノーマンは温厚な雰囲気を前面に出して応対する。
 敏感に周りの空気を嗅ぎ取り、ヒウチはノーマンから離れないようにする。他は二人ずつだが、鬼が一人という心細さもあるだろう。
「ねえねえ、お兄さんはあちこち見て回っているの?」
 ノーマンも決して背が低いわけではないが、ヒウチはそれより大きく子どもじみている。
「あなたに比べれば」
「そっか……」
 ヒウチは良くしゃべった、不安や好奇心がそうさせるのかもしれない。
「見回りをしよう。今はそれが仕事だ」
「うん」
 見回りの折り返し地点にやってきた。ノーマンや集落の人の一部は茂みの先の雑魔に気付いた。
「雑魔だ……」
 見回りの男たちは武器を握り締める。
 ヒウチは困惑するが、戦うために身をかがめる。
「僕一人いいでしょう。君はもしものため皆を守ってください」
「え、あ、うん」
 ヒウチは困惑しながらも、言われたように人間たちの前に立ち周囲を見た。
 ノーマンはマテリアルを活性化し、間合いを詰める。動物だったらしい雑魔は二体に武器をふるう。敵からの攻撃もあるが難なく回避し、再び攻撃を仕掛けた。とどめを刺すまでに時間はかからなかった。
 終わって振り返ると、ヒウチは人間たちの前でじっと敵を目で追っていたようだった。そのためノーマンと目が合うとほっと息を吐いた。
「終わりましたよ」
 人間の見回り隊はノーマンとヒウチに声をかけて、先に戻り始める。
 その言葉は優しかったが、ヒウチは居心地が悪そうな様子を見せる。
「どうしました? 休んでいきましょう」
 うなずく鬼の子にノーマンは水とマカロンを渡した。
「なにこれ!」
 マカロンを見てヒウチは驚く。カラフルで小さい菓子に見せられている様子だ。
「うわー、ふわとして溶けるみたい」
「喜んでもらって光栄です」
「もっと頑張ればもらえる?」
「少し、考えましょう」
「うん?」
「罪と罰です」
「え?」
「労働と奉仕」
「ううー」
 難しい言葉はいけないとノーマンは言葉を探した。
「お菓子が欲しいから手伝わせてはいけません。もちろん、手伝うことは悪くありません。ほかの人を助けたい、と思うことが大切なのです。助けたときにたまたま何かくれるかもしれません」
「じゃあ、いつまでたっても何もえないの?」
「仕事という物もあります」
 ノーマンはヒウチに根気よく話す。易しい言葉を選んで、知らずに罪を起こさないように。幼い様子を見せているが、話して分からないわけではないので教えればいいのだと分かるから。

●建物
 正太郎は設計図を見つつ、その場にいる人から必要なことを聞いていた。
 鬼が来たということで、作業の手が止まる。
「みなさん、手を休めたらいつまでたっても終わらないわよ」
 エイルが目ざとく注意した。人間が鬼の子の働きを見るのはいいが、意識しすぎればあら捜しに走るかもしれない。自然に適度な距離で付き合うのが理想だろう。
 柱を立てる事、材木を運ぶことが鬼の子二人がやるにはちょうどいい。技術よりも体力が必要だ。
「このくらいなら簡単だよ」
「弱いサルハネが持てるのに、俺が持てないわけない」
 二人が競うように運び始めたところで正太郎が慌てて止める。
「周りをよく見ないとだめですよ!」
 正太郎が声を掛けるときには、材木を人に当てる寸前であった。
「安全第一を心がけてください。土台を作るのも、柱を立てるのも、一人ではできません。ここにこれだけいる人たちと協力してできるのです。ここで怪我してしまったり、怪我をさせてしまったら、その分時間がかかり作業は遅れます。互いに気をつければ、早く建つのです」
「はい」
 正太郎に諭されて、小さくなったサルハネとアミは返事をした。
「今日は医者であり、聖導士である私がいるから多少の怪我なら問題ないけれど、怪我をしない事には越したことはないわ」
 エイルにも言われ、二人は神妙にうなずいた。
 競争は止まらないが、それでも他人を蹴散らすようなことはなくなった。それに彼らの働きは大きかった。
 なるべく鬼から離れていた作業の人達も、ハンターの二人に言い聞かされ理解し後から、距離が縮まったようだ。

●がれき
 シャトンはホタギとトチオを連れてがれき処分の手伝いにやってきた。
 年長者で体も大人の鬼とそん色ないホタギはがれき運びを主に手伝う。
「がれきを麻袋に詰める、誰かの大切なモノは入れない」
「うわー終わるかな」
 シャトンの説明を聞いていたか分からないが、トチオは悲鳴を上げる。
「全部終わらなくても、終わる日は来る。お前が頑張るとその分終わる」
「分かった」
 せっせとトチオは麻袋に詰める。
 ホタギは急いで持って運び、人とぶつかり麻袋が開き、中身が飛び散る。それらは人に当たる。
「おい、手前、前見てやりやがれ」
「散らかっただろう」
 作業中の大人たちが怒った。
「知らないよ! 俺の前にいたお前が……いたっ」
 シャトンはホタギを拳で殴った。
「ちゃんと見ていないお前が悪い。いいか、ここは広くない、急げばいいってもんじゃない。周りを見てやらないといけないんだ」
「う」
「ほら、謝れ」
「ごめんなさい」
 大人たちは溜息交じりに怒りを鎮めた。
「怪我してんなら、新倉庫建築現場にいるハンターに頼めば治してくれるから」
 シャトンはエイルの事を教えておいた。
「おう、ありがとよ。そこまではないから」
 男は手を振って作業に戻る。
「……なんでお礼を言うの?」
「オレがあのおっさんの心配をしたから。お前だって言うだろう?」
「……言うよ。でも言う機会がなかったから」
 ホタギは寂しそうに笑った。
「これからは違うだろう」
「ああ」
 トチオは詰め込み過ぎているため、一部抜いて麻袋が閉るようにする。
「これは入れるな」
 がれきとは異なる小さな人形のようなものだった。
「誰かの大切なモノかもしれないから」
 トチオは神妙にうなずいた。
 しばらくホタギとトチオは作業を理解し、人一倍働いた。
 休憩時にシャトンは炭酸飲料を渡した。
「うわっ、なにこれ」
「しゅわしゅわする、げぷ」
 二人は初めての飲み物に驚き楽しそうだ。
「キャンディーはいるか?」
 さすがに今はいらないと首を振り作業に戻った。

●食事
 リクは食事を作っている女子供に混じる。
「わざわざすまないね」
「いえ、独り暮らしで家事の大変さを知っているので、むしろ手伝わせてください」
 リクは低姿勢を取りつつ話し、リアルブルーからこちらに来たときのことを思い出した。親に感謝しないといけないと思ったこと、この世界に来て色々なところに目が向くようになったこと。
 今回のことだって、目を向けたからこその出会いである。
 女たちは楽しそうに雑談しながら作る。
「それより、鬼って怖くないのかい?」
「子どもみたいだけど大きいわよね」
 話しながらちらりちらりとリクを見るのは、ハンターであり、中立と言うことで鬼をかばったから情報を話せと言っているようだ。
「人間と同じで、悪いやつもいいやつもいるんだ」
「そうなのかい? まあ、盗みはしたみたいだけど」
 人を傷つけていたわけでもなく、謝ってもいた。次やったら許されはしないだろう。
「最小限にとどめようということはしていたみたいで、植物も育たない所では食事もままならない状態だったんだよ」
 リクの解説に女たちは同情的な会話になっていく。
「鬼の大人たちも子ども達は助けたいと必死だったんだ」
 人間と変わらないということを前面に出していく。そして本題にかかる。
「手伝いの報酬くれるといったけどいらないから、鬼の子たちも手伝ったということで食事上げることはできないだろうか?」
 丁寧に、探るように尋ねた。
 女性たちは仕方がないねと明るく笑った、働く者に食事を与えるのが仕事だからと。

●子ども
 食事は共にとる事が出来た。
 人間としては程よくても鬼の子にしてみれば量が少ないが、もらえて嬉しい。人間と同じ物を食べることは新鮮だった。
 人間との距離はあるが、エイルは建物の陰に人間の子がいるのに気付いた。声を掛けずに様子を見ることにする。
「うわー、本当に角がある」
「どうやって生えてるのかな」
 三人の子の声が届く。
「普通に頭に生えているんだよ」
 トチオが首をかしげる。
 人間の子らはきゃと言い陰に隠れた。
「ええー」
 再び陰から顔を出して、不満そうな顔を見せた。
「そうだ、クッキーがあるんだけど、君たちも来て一緒に食べないかい?」
 リクは荷物にあったクッキーを取り出した。これは自然に交流するチャンスだと思ったのだ。
 子どもたちは人間のお兄さんが言ったということもあり、近くでお姉さんも優しく微笑んでいる、集落の大人もいる為、安全だと理解し近づいてきた。
「小さい」
「大きい」
 鬼の子と人間の子は同時に笑った。
「人間って小さい……三歳くらい?」
「え? 違うよ! 僕は八歳。三歳だとこのくらいだよ」
「嘘っ!」
 クッキーをつまみ子供たちは互いの事を知ろうと話をした。
 大人たちは見守る。
「ヒラツが見たら喜ぶだろうな」
 リクは使者として命を懸けてやってきた鬼を思い出す。
「腰を抜かすでしょう」
 正太郎は最初に鬼に会ったときは考えられない光景だ。これが当たり前になるように、と願わずにいられない。
「お前ら、帰る時間は考えなくていいのか?」
「手伝いをやって野宿だと君たちが強くても、危ないでしょう?」
 シャトンとノーマンが心配げに言うと、鬼の子らは空を見上げ、「あと少ししたら」と答えた。

●じゃあ、また!
 鬼の里まで送ることは難しいようだが、途中までは一緒に行こうとハンターは集落を出た。
「お前達!」
 大人の鬼が二人と出会った。
 子供たちは小さくなる。いや、大人たちもハンターを見て小さくなっている。
「別に彼らが悪さをしたから連れているわけではないですよ」
 正太郎が慌てて事情を話す。
「役に立ったか?」
「もちろんですよ」
 ノーマンの返答に、他のハンターもうなずいたので大人たちはほっと息をついた。
「ここでお別れですね」
 正太郎は名残惜しそうに鬼の子らを見る。
「サルハネ君、これ」
 エイルが四神護符を取り出して渡す。
「平穏と未来を願うお守りよ」
「……いいの?」
 サルハネは手の中にある護符にぬくもりを感じた。
「ありがとう……でも、何も返す物はない……」
「別にいらないわ。ううん、他人を慈しむ……他人に優しくすること、弱い者を助ける事……それをしてくれれば嬉しいわ」
 エイルの言葉にサルハネはうなずいた。
「そうだな。売られても喧嘩は買わない。買ったらそいつと同じ駄目な奴に成り下がるからな」
 シャトンに言われ「できるかな」とぼそぼそと子らは言う。
「できなかったら、今日だって盗みを働いていただろう? 以前会った人たちに説教され、理解したから手伝おうとした」
 リクを見て、子らはうなずいた。 
「下心が大きかったですがね。奉仕すること、それに見合った報酬がもらえること……分かってくれたと信じますよ?」
 ノーマンは少し噛み砕いて易しい語で言うと、鬼の子たちは照れたような困ったような顔をした。
 ハンターの目から見て、ここまで迎えに来た大人たちは人間と感覚は近いようであった。教えるという時間があれば、大人から社会の事を伝授されるに違いない。
「ありがとう」
 大人たちは子らを連れて立ち去った。
 何度も何度も彼らは振り返っては頭を下げる。見送るハンターたちは人と鬼が共存できる未来を祈り、自分たちの行動がその実現のための一歩になってほしいと願った。

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参加者一覧

  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • まめしの伝道者
    ノーマン・コモンズ(ka0251
    人間(紅)|24才|男性|疾影士
  • 人と鬼の共存を見る者
    雪ノ下正太郎(ka0539
    人間(蒼)|16才|男性|霊闘士
  • 愛にすべてを
    エイル・メヌエット(ka2807
    人間(紅)|23才|女性|聖導士
  • 小さな望み
    シャトン(ka3198
    人間(蒼)|16才|女性|霊闘士

サポート一覧

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依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/09/11 14:46:48
アイコン 鬼の子と復興と【相談卓】
エイル・メヌエット(ka2807
人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2015/09/14 22:05:12