• 深棲

【深棲】タングラムの憂鬱

マスター:神宮寺飛鳥

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/07/25 07:30
完成日
2014/07/25 11:40

みんなの思い出

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オープニング

●皇帝の思惑
「……私はてっきりまた、帝国軍をリゼリオに派兵する物と思っていましたよ」
 リゼリオにある帝国ユニオンAPV。タングラム(kz0016)はそこでヴィルヘルミナ・ウランゲル(kz0021)と対峙していた。
 表ではハンター達の賑やかな声が響いているが、タングラムの表情は硬い。ヴィルヘルミナは壁に背を預け、腕を組んだまま笑みを浮かべている。
「帝国は人類の守護者、それがあなたの言い分でしょう? どういうお考えですか?」
 海から出現した狂気の歪虚に晒された同盟の受難に対し、ヴィルヘルミナは帝国の意志決定装置である騎士議会を開廷した。
 騎士議会とは軍事国家である帝国における権力者、即ち皇帝と一部首脳陣、そして“十師団”と呼ばれる十名の師団長により開かれる会議の事だ。
 そこでヴィルヘルミナは、まさかの戦闘介入に消極的な姿勢を示した。それはタングラムにとって納得のいかない事だった。
「全ての国、全ての人類を歪虚から守護する、それが帝国の方針の筈です。国民も兵もそのつもりであなたの後ろにいます。それが弱腰な方針を打ち出せば、反政府組織に付け入る隙を与えているようなものです」
「だろうな」
「この時の為に兵達も鍛錬を重ねて来た筈です。納得しない師団長も多かったのでは?」
「うちは変わり者が多いからな。ま、五分五分って所だろうか」
「あなたはこの国をけん引する存在です。その支持率が50%では足りないでしょう」
「……今回の事件への対応は師団長単位の判断に任せてある。無論、同盟からの支援要請には応じる。が、こちらからの積極的介入は行わない」
 これが普通の国ならば当たり前の対応だが、帝国はワケが違う。
 帝国は全ての国に軍事介入する事を望んでいた筈だ。この女はあのサルヴァトーレ・ロッソですら、本気で自分の物にしようとしていたのに。
「また何か悪巧みですか?」
 ニヤリと口元を緩ませ皇帝は目を細める。その視線は恐ろしく冷たく、一切の感情を感じさせない。
「タングラム。新米ハンターはもう使い物になるかい?」
「え?」
「君が大事に育てているハンター達にとって、今回の事件は丁度良い経験になるだろう?」
「彼らは水中戦闘に慣れていません。それにどれも低級とは言え眷属です。新米が相手をするには荷が重く……」
「今の彼らに足りないのは経験、ただそれだけだ。今回の事件は彼らにこそ相応しい。タングラムのやり方に異論はないが……君は彼らに優しすぎるよ」
 ごくりと生唾を飲み込む。ヴィルヘルミナの声はとても優しく穏やかなのだが、何故か背筋を冷たくさせた。
 時折この女から感じる違和感。純粋で、真っ直ぐで、それが一回りして狡猾になったような瞬間がタングラムは苦手だった。
「大丈夫だよ。彼らは強い。きっと君が思っている以上に、ね」
 ポンとタングラムの頭を帽子の上から撫で、女はまたにこりと笑う。そうして大きく体を伸ばすと首をコキコキ鳴らしながら歩き出す。
「では、また近いうちにな。せっかくここまで来たのだ、ハンター達の様子でも伺って帰るとしよう……フフフ」
 裏口から出て行った皇帝を見送りタングラムは仮面を外す。その瞳は憂いを湛え、闇の中からハンター達を見つめていた。


●戦場へ
「……今回の事件発生に伴い、APVは帝国軍に成り代わり、各地の歪虚事件への対処を行います。これは帝国政府からの正式な協力要請です」
 APVにて指令書を片手にハンター達に語り掛けるタングラム。帝国軍はジェオルジやヴァリオスに派兵する事を決定しているが、これはあくまで同盟軍の留守を守る程度の防衛部隊であり、歪虚に対する積極的なカウンターにはAPVが起用される事になるだろう。
「敵は水中でも万全に活動出来る狂気の眷属なのですね。海から出現する性質上、水中戦や船上戦も想定されます。詳しくは各依頼書に目を通してほしいのですよ」
 帝国軍関係の依頼はAPVに協力要請がかかる可能性が高い。これは帝国の師団とユニオンのハンターが大々的に協同を張る、最初の戦場になるだろう。
「相手は下級も下級ですが、狂気の眷属です。中には強力な個体も混じっているでしょうし、不慣れな状況下での戦闘を強要される可能性もあります。いいですか? くれぐれも自身の実力と相談し、決して無理な戦いには挑まない事。必ず仲間と協力する事。生き残る為にこの二つを忘れないで下さい」
 ハンター達を眺め、一度目を伏せるタングラム。昨晩のヴィルヘルミナの様子が引っかかっているが、その真意がわからない以上、今は戦うしかない。
「――今回の依頼には私も同行します。皆、気合を入れてしっかりいくですよ! APVの実力を帝国軍に見せつけてやるのです!」
 発破をかける言葉は自分自身にも向けられていた。もしかしたらこの中から未帰還者が出るかもしれない。それを思うと戦いが嫌になってしまう。
 だから出来る限り自分が共に行こうと思う。彼らの傍にいて、彼らがいつか自分を超えるその時まで、友として戦場に立とう。
「……それが今の私の生き方です、“陛下”」
 “もう仲間は見捨てない”。そんな事はずっと前に、“彼”と出会った時から決めていた事だから……。

リプレイ本文

 砂浜に響く銃声。防衛隊の一人が繰り出された銛の一撃を盾で受け突き飛ばされる。
「く、くそ! 数が多い!」
 非覚醒者の一般兵でも歪虚を倒せないわけではないが、人数的優位を確保しなければ厳しいのが現実。半魚人達に対し足止めが精いっぱいであった。
 再び襲い掛かろうとする半魚人。その時、側面から放たれた弾丸が半魚人を貫いた。
「間に合った!」
 猟銃を降ろして状況を確認するゼル・アーガイア(ka0373)。ラルフ・ウェンダー(ka1108)がマジックアローを放ち、マルク・D・デメテール(ka0219)がそれを追うように駆け寄り短剣の一撃を加える。ハンター達の乱入を受け、半魚人達は様子を見るように一度距離を取った。
「やれやれ、最近きな臭ぇとは思っていたが今度は生臭さが追加ってか?」
「おっちゃん達は無事みたいだな」
 短剣を手の中でくるりと回し構え直すマルク。ラルフは杖を振りながら兵士達の無事を確認する。
「ハ、ハンターか……助かった」
「ちっ、俺達だけでも倒せた物を、余計な事をしやがって……」
 同盟兵と帝国兵の反応は正反対だ。助けてもらっておいてのこの態度にマルクは呆れたように肩を竦めている。
「ハンターの手助けは不要だ! 帝国兵の意地と誇りに賭けて歪虚は我々が殲滅するぞ!」
 帝国兵は果敢に半魚人に襲い掛かるが、さっきまで苦戦していたのが急に押し返せるようになるはずもない。
「ちょっとちょっと!? 急に突っ込んだら危ないって!」
 慌てるゼルの制止も聞かず半魚人を剣で攻撃する兵士。四人の兵士で力を合わせて一体の半魚人を撃破するが、そこへヤドカリが接近する。
 ヤドカリの腕の一振りで二人の兵士が吹っ飛ばされる。続け素早くもう一度鋏を振るおうとした所へパープル(ka1067)の放った矢とカルロ・カルカ(ka1608)のマジックアローが命中する。
「……止めとけ。闇雲に突っ込んでどうにかなる状況じゃねぇ」
 倒れた兵士に手を貸すカルロ。オキクルミ(ka1947)は兵士に近づいていた半魚人をバトルアックスで牽制しつつ背後を一瞥する。
「まったくも~、今は揉めてる場合じゃないでしょ?」
「中には危険な相手も混じっているからね……。きみ達が歪虚を倒せる力を持っている事はわかった。だから、ここからは共闘できないかな……?」
 リン(ka0721)の説得に顔を見合わせる帝国兵。むすっとした様子で剣を振り。
「お前たちのようなハンパ者と共闘できるか! 我々は我々でやらせてもらう! 例えここで散ろうとも既に覚悟は出来ている!」
「何言ってんだよ……! お前らは俺らが嫌いかも知んないけどさ、ここはそういう時じゃないだろ!」
 腕を振るい声を張り上げるゼル。青年は躊躇なく真っ直ぐな言葉をぶつける。
「守れなかったらお前らは死ぬし、それは国民や皇帝も困るんだろ? こんな所で意地張って死んじゃったら、一体誰が国民を守るんだよ!?」
「そっちは命捨てる覚悟だろうが……目の前で彼奴等に誰かが殺されんの、もう嫌だ。気乗りしねぇとは思うけど……俺等の事、利用するつもりで良い、アテにしてくれねぇか」
 ゼルに続きカルロも説得に参加する。更にパープルも兵士へ歩み寄り。
「力には責任が伴う。俺達は歪虚と戦う力を持っている。戦う力を持たぬ人々の生命という自由を守らなくてはならない」
 フードを目深に被り、その陰で紫の文様を輝かせつつ、パープルは兵士達を見つめる。
「ハンターに対してあまり良い感情を持っていないのかもしれないが、今この場で俺達は同じ“歪虚を倒す”という目的の為に戦う同志だ。俺はそう信じているよ」
「ボク達だけだとどうしても手が足りないから。手を貸して! ダメ……かな?」
 胸に両手を当て上目遣いに声をかけるオキクルミ。兵士達はどうするべきか判断に迷った様子。そこへタングラムが苦笑を浮かべ。
「こいつらはただ守れる物を守りたい、ただそれだけですよ。陛下は崇高な死より無様な生をお望みです。ここは提案に乗ってみるべきでは?」
「何だこいつ? 偉そうなチビだな」
「た、隊長、この方は……」
 なにかごにょごにょ相談した後、悔しそうに兵士は舌打ちする。
「……仕方ない。今回だけ貴様らを手助けしてやる。今回だけだぞ!」
 頷くタングラムを見つめ詐欺屋さん(ka0541)は覚醒し骸骨の幻影を纏って一人頷く。
「……驚愕」
『いやまったく、貴様のイメージは手錠と仮面しかなかったからな。本体も吃驚よ。帝国兵に顔も利くとは、まるで真面目なユニオンリーダーのようだ』
「元々真面目なユニオンリーダーだから! そして相変わらずお前はどうやって喋ってるですか?」


 防衛部隊の協力を取り付けたハンター達は改めて歪虚の殲滅を開始する。既にここまでの流れで三体の半魚人が撃破されたが、もう既に増援が四体海から上がってきている。
「……増援」
『廃棄予定がまた増えた! ああまったく、煩わしい!』
「これは……いつもより少し頑張らないといけないかな」
 詐欺屋さんの独り言? にリンが頷く。半魚人は数が多く、そしてヤドカリは一個体が強力な歪虚だ。
「ヤドカリは俺とパープルさんで足止めをしておくから……その間に兵士達と一緒に半魚人をお願いするね……」
「タングラムは兵士達を守ってやってくれ」
 パープルの言葉に頷くタングラム。リンとパープルは二体のヤドカリへそれぞれ駆け寄り交戦を開始する。
「……全く、これだから権力に依存した奴らはよ。……かといって、見殺しにするのも後味が悪いからな」
「いよっし! 古き盟約により歪虚滅ぼすべし! ガンガンいこっか!」
 鼻を鳴らしながら構えるマルク。オキクルミはウィンクしつつ歪虚を指差し、バトルアックスを担いで走り出す。
「防衛部隊の人達、半魚人の相手出来そう?」
「ふん、我らは人類の守護者! 盾となるのは得意中の得意よ!」
「それは頼もしいね! じゃあ剣と盾持ってる人は半魚人を押さえて、銃を持ってる人は俺と一緒に攻撃だ!」
 マルクがナイフを投げつけ注意を引き付けると、ゼルと共に兵士達が魔導銃を放つ。魔導銃の威力は中々の物で、兵士達の命中精度はハンターに及ばないものの、数が多いので撃破に成功する。
「ほお……意外とやるじゃねぇか」
 ニヤリと口元を歪ませるマルク。盾を持った帝国兵は半魚人の攻撃を誘発し、生まれた隙にオキクルミが斧を振り下ろす。両断された上半身が砂浜に転がると、兵士の一人が素早く剣を突き立てた。
「うん、ちゃんと止めも刺してるね! かっこい~! 終わったら一緒にお酒でも飲もうよ、ねっ?」
 でれっとした様子の兵士にため息を零す隊長。そこへ半魚人が迫るが、ラルフがマジックアローで足止めする。
「ぜってー助けてやる、だからおっちゃん達もがんばれ」
「……狂気の、異形……今はもう逃げるだけの俺じゃねぇ、全部、食い尽くす……!!」
 杖を掲げたカルロ。手脚に纏った水のオーラが杖に収束し、強力なマジックアローの一撃が半魚人の胸を貫いた。
「もう何も奪わせねぇ……今度は俺が狩る側、だ……!」
「誰も死なせたくねぇからな。バンバン撃つぜ!」
 防衛部隊と共に攻勢に転じたハンター達の勢いは止まらない。詐欺屋さんもそれに乗じてマギスタッフで殴る……が、さほど効果的な攻撃にはなっていない。
「……疑念?」
 そこへ突然タングラムの投擲した短剣が半魚人へ突き刺さった。
「杖は魔法を使う時以外はただの棒ですよ! そいつを貸してやるから使うと良いですね!」
『なんと、そうであったか……』
 突き刺さったタングラムの剣で半魚人を引き裂く詐欺屋さん。杖で戦うより大分戦いやすいのでこのまま借りておこう。
「良かったのか? 得物を貸しちまってよ」
「御心配には及ばず。他にも持ってるですからね。投げる用と手持ち用くらいは常備する物でしょう?」
「そいつは同感だな」
 半魚人の繰り出す銛をかわし、同時に短剣を振るうマルクとタングラム。息の合った動きで半魚人を倒すと背中合わせに構えた。
「権力を翳す連中は鼻持ちならねぇが、同じ短剣使いとしておまえには興味がある。折角だ、見極めさせてもらうぜ」
「ご期待に沿えるように努力はするですが……」
「ああ。こいつらをさっさと片付けちまわねぇとな。鼻が曲がっちまう前に……よ!」
 人数差もあり半魚人達を圧倒しているが、増援は更に出現する。その処理に仲間が追われている間、リンとパープルは一対一で強敵との戦闘を強いられていた。
 ヤドカリは見た目以上に素早く、二本の鋏で連続攻撃を仕掛けてくる。リンは攻撃は牽制に留め、回避に集中して凌いでいた。
 手数の多さと正面からの対峙故に攻撃を全てかわす事は難しい。避けきれない攻撃はクローで受け流すが、傷は増える一方だ。
「ふふふ……案外やるじゃあないか。……少し……頑張ってみようか」
 仮面を装着し笑みを浮かべるリン。身をかわし、クローで弾き、背後に跳んで手裏剣を投げる。距離を詰めたヤドカリの鋏で傷を負い、血を流しながらリンは努めて冷静に対処する。
 一方、パープルはどっしりと構え、鋏の攻撃を剣で防いでいた。やはりヤドカリの手数で無傷とは行かないが、元々の頑丈さもあり体力には余裕が見える。
 ヤドカリの殻が頑丈と言っても隙間はある。その甲殻の間に剣を繰り出すパープルだが、ヤドカリも鋏でそれを受け止める。二人は交互に攻め、受け、膠着状態を続けていた。
 鋏と剣とでじりじりとせめぎ合うパープル。その視界の端でリンが鋏を避け損ね、脇腹を切り裂かれた所が見えた。
「……リン!」
 助けに行きたいがこちらも手が離せない。そこに素早く反応したのはマルクで、リンに追撃を加えようと迫るヤドカリに駆け寄ると素早く短剣を振るう。
「……ちっ、堅ぇな」
 だが予想通り致命傷には程遠い。鋏の一撃をやり過ごしつつナイフを投げつけ注意を引く。
「リン、無事か?」
「……ありがとう。皆に怪我をさせたくなかったんだけど……自分が負傷するとはね」
 傷口を押さえながら苦笑を浮かべるリン。マルクは首を横に振り。
「お蔭で魚共は殆ど片付けられた」
「マルク君、右から仕掛けるよ!」
 斧を手に駆け寄るオキクルミ。マルクを狙うヤドカリの鋏をかわすと、オキクルミは思い切り力を込めて斧を振り上げる。
「祖霊よ、導きを!」
 叩き付けられた斧はマテリアルの輝きを放ちヤドカリの殻を粉砕する。羽のように広がる衝撃と光の余波。拉げた殻にリンはクローを突き刺し、殻を引きはがす様に振り抜いた。
『魚は刺身だ。刺身は美味い!』
「……可食?」
 首を傾げながらヤドカリに剣を突き刺す詐欺屋さん。更にラルフがマジックアローを放つと、漸くヤドカリは力なく倒れ込んだ。
 残りはパープルが相手をするヤドカリ。パープルは背後から駆け寄る仲間たちを一瞥し、剣を片手に呟く。
「この鋏が邪魔だな……!」
 繰り出された鋏を左手で掴み、右手に持った剣を間接に突き立てると、そのまま強引に鋏を切断する。
「これで本体を狙いやすくなった……」
 杖を振るいマテリアルを収束させるカルロ。ゼルが兵士たちと共に銃を構えると、射線を通す為パープルは横に跳んだ。
「よし、一斉射撃だ!」
 カルロの魔法とゼル達の銃弾がヤドカリに命中する。更にパープルが弓を構え矢を放つと、二体目のヤドカリも僅かに前進した後、沈黙するのであった。


「コレで終わりか? おっちゃん達が食い止めてくれたおかげだな、サンキューだぜ」
 暫く様子を見たがもう歪虚が出現する気配はない。ラルフは無邪気に笑って兵士達に礼を言う。
「こちらこそ助かった。ありがとう」
 同盟兵に求められた握手に応じるラルフ。一方帝国兵はまだむすっとした様子だ。
「今回も……精霊に助けられたな。それに、皆にも。感謝する……ありがとう」
 リンの言葉に片目を瞑り鼻を鳴らすマルク。タングラムは慌てた様子でリンの応急処置をしている。
「痛むですか? 戻ったら直ぐヒーラーに診てもらうですからね!」
「大げさだなぁ……タングラム君は心配しすぎじゃない?」
「傷口から変な菌が入ってリンがキズモノになったらどうするですか!?」
 苦笑するリンとオキクルミ。カルロは腰に手を当て頷く。
「……だが、何が起こるかなんて誰にもわからねぇからな。守れる仲間なら……守れるうちに大切にした方が、いい……」
『カルロの言う通り。それだけ大事なのだろう』
 無表情に様子を眺める詐欺屋さんの覚醒変化が彼の言葉を代弁する。仲間を守る為に戦うタングラム。少し真面目な一面を目撃し、その想いに過去を振り返る。
『我らは守れなかった側の存在だからな……』
 一方、ゼルは帝国兵に歩み寄ると笑顔で手を差し伸べていた。
「手を貸してくれてありがとな! お蔭で助かったよ!」
「……お、俺達は……」
 ゼルは握手のつもりだが中々手を取る気配がない。そこへパープルが歩み寄り、フードを脱いで笑みを浮かべる。
「打ち上げに、飯でも食いにいきますか?」
「賛成~! 兵隊さん達も一緒に行こうよ! ボクのおごりでいいよ~!」
「い、いや……」
「ボクは君達と仲良くしたいんだ。文句があるなら聞くよ? ほら、握手握手~」
 無理矢理兵士の手を取りゼルとの握手を取り持つオキクルミ。笑うゼル、照れくさそうな兵士。その両者の肩を叩きパープルは穏やかに微笑む。
「タングラム君もおいでよ! 一緒に仕事をして飲む、そして幸せ!」
「いや、傷の手当てが先ですね! ていうかパープル、お前もなんでケロっとしてるですか!?」
「このくらいはかすり傷だよ?」
「あれだけ殴り合っててそんなわけあるか! 脱げ! 今すぐ傷を見せるですね!」
 鼻息荒くにじり寄るタングラムを冷や汗を流しつつ制すパープル。マルクは呆れたように肩を竦める。
 こうして無事、被害者もなく事態を収める事に成功。ハンター達は兵士達も連れ、近くの町で打ち上げに興じるのであった……。

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MVP一覧

  • 孤高の憧憬
    マルク・D・デメテールka0219

  • ゼル・アーガイアka0373

重体一覧

参加者一覧

  • 孤高の憧憬
    マルク・D・デメテール(ka0219
    人間(紅)|20才|男性|疾影士

  • ゼル・アーガイア(ka0373
    人間(蒼)|19才|男性|猟撃士
  • ゴシッピー・ゴースト
    詐欺屋さん(ka0541
    人間(蒼)|26才|男性|霊闘士

  • リン(ka0721
    人間(紅)|20才|男性|疾影士
  • 紫色の狩人
    パープル(ka1067
    人間(蒼)|30才|男性|闘狩人

  • ラルフ・ウェンダー(ka1108
    エルフ|10才|男性|魔術師
  • 優しき氷牙
    カルロ・カルカ(ka1608
    エルフ|23才|男性|魔術師
  • 答の継承者
    オキクルミ(ka1947
    エルフ|16才|女性|霊闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
ゼル・アーガイア(ka0373
人間(リアルブルー)|19才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2014/07/25 03:53:30
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/07/24 00:19:45