【AN】初ライブは打ち上げと共に!

マスター:旅硝子

シナリオ形態
イベント
難易度
やや易しい
オプション
  • relation
参加費
500
参加制限
-
参加人数
1~25人
サポート
0~0人
報酬
普通
相談期間
7日
締切
2014/07/28 22:00
完成日
2014/08/02 18:01

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●作戦成功――と、後日のお話
 皇帝ヴィルヘルミナ・ウランゲル(kz0021)はご満悦であった。
「というわけで、第二次掃討作戦は各所の雑魔を掃討、観測装置の設置と下水の採取もつつがなく終了しています。全体的に見ても成功と……姉上、聞いておられますか?」
 報告書をまとめて説明に来ていたカッテ・ウランゲル(kz0033)に、にこにこと皇帝は頷いて。
「ああ、聞いているぞ。ハンターの潜在力というのはやはり素晴らしいと思ってな。依頼して正解だった」
「そうですね。大体把握していただけたようで何よりです」
 皇帝の自由奔放な発言にも動じないカッテである。
 伊達にこの皇帝と十何年も姉弟やっていない。
「……さて。それでは、折角だからハンター達をねぎらってやらねばな」
「はい、この間収穫したばかりのとっておきの新じゃがを提供しますか?」
「あー、うん……そうだな。やはり戦いの後の飯は芋に限る」
 突然の素晴らしい思いつきに即座に対応されて、ちょっとしょんぼりするヴィルヘルミナ。
 だが、再び顔を輝かせてぽん、と手を打つ。
「そうだ。あの新規発足したアイドル部隊にも出動を要請しよう」
「あいどる……ですか?」
 流石にこちらは意外だったのか首を傾げるカッテに、嬉しそうに頷いて。
「戦士の為の歌い手の初舞台は、戦士の慰問であるべきだ。……そうだ、錬金術師組合が何か下水道に設置する新たな装置を開発したと聞くし、よしまとめて頼もう」
「では、手続きしておきますね」
 再び上機嫌に戻った姉に、カッテも笑みを浮かべて執務室を後にするのだった。

●はじめてのお仕事!
 ゾンネンシュトラール帝国第一師団兵営。
 帝国歌舞音曲部隊の一室は、グリューエリン・ヴァルファー(kz0050)を迎えてから急速に華やかさを増していた。
「あー、あ、あ、あー……らー、ら、ら、らー……」
 事務仕事の音と共に、歌声とステップの足音が響く。
 歌いながら踊るというのは技術も肺活量も必要になるから、発声とダンスを同時に行う練習が繰り返されていた。
 広くない上に仕事中のこの部屋で練習しているのは、部隊員達のたっての希望である。

 不意にばたん、と扉が開く。
「グリューエリンの初仕事が決まったぞ!」
 飛び込んできたクレーネウスの言葉に、一瞬の間を置き、歓声が上がる中。
 一番ぽかんとしていたのは、当のグリューエリンだった。
「グリューエリン、不満かな?」
「あ、いえ。そういうわけではありませんわ。ただ……実感が、ありませんの」
 その言葉に、良かった、とクレーネウスは笑って。
「実感はこれから出ればいいさ。嫌じゃないならありがたい、説明に移ろう」
 ほっとしたように、グリューエリンが頷いて勧められた椅子に座る。
 けれど、説明された仕事は――相当に過酷なものであった。

「下水道で、歌いながら、お掃除……ですの?」
 唖然とするグリューエリンに、クレーネウスは頷く。
「雑魔が発生するのは、負のマテリアルが蔓延しているせいだからね。今回は歌を通じて楽しい気持ちを下水道内に響き渡らせることによって、正のマテリアルを強め、負のマテリアルを抑制するという狙いだ」
 その説明に、グリューエリンはきゅっと眉を寄せる。
「……なるほど。単に歌を聴かせるというだけではない、重要なお仕事なのですね」
 覚悟を決めた顔で、グリューエリンは呟いた。
「あ、ああでも! それだけじゃないんだ!」
 その表情に、思わず慌ててクレーネウスは付け加える。
「その後で、今回のAN作戦に参加したハンター達への慰問として、中央広場に舞台を用意してもらい、ライブを行うんだ!」
「らいぶ……?」
「要するに、ステージで歌ってもらうってことだな。おめでとう、初舞台だ!」
 わっと上がった部隊員達の喝采の中で、ぱちぱちと瞬きを繰り返していたグリューエリンが、はっと目を見開く。
「では……私が、舞台に……? 1人で?」
「いや、中心になるのはもちろん君だが、ハンターの皆に協力を要請しておこう。実際、俺もこういうのは初めてだからね」
「ハンターの皆様に……」
 一度深呼吸し、顔を上げたグリューエリンは深く頷く。
「はい、よろしくお願いいたします。粉骨砕身の覚悟で初舞台に挑ませていただきます!」

●錬金術とアイドルが合わさって世を救う!
 リーゼロッテ・クリューガー(kz0037)が大きな箱を抱えて兵営に姿を現したのは、その翌日のことである。
「初めまして、噂のアイドルさんですね」
「う、噂……なのでしょうか?」
 真っ赤になって自己紹介を済ませたグリューエリンは、箱の中身を見て目を丸くした。
「あの……これは、魔導機械ですか?」
「はい。離れた場所の音声をこの機械から流すことができるんです。これをいくつか下水道に設置して……」
 箱の中から機械の1つを持ち上げて、にっこりとリーゼロッテは笑う。
「中央広場の音声を流すんです。広場でお祭りなどを行って、みんなで楽しく騒げば、その音を流すだけでも正のマテリアルが活性化するはずなんですよ。まだ、実験段階なんですけど」
「だからこそ、中央広場でライブをやることに意味があるんだ」
 リーゼロッテの言葉に、クレーネウスが口を挟む。
「そうなんです。出来れば定期的に継続して、楽しい音を作っていただければありがたいのです」
「……歌に、そんな効果があるんですのね」
 ぎゅっと拳を胸の前で握り、感慨深げに呟いたグリューエリンに、リーゼロッテは嬉しそうに頷いた。
「錬金術は素晴らしい技術ですけど、それだけでは出来ないこともたくさんあって……でも、他の何かと結びつくことで、もっと素敵なものを生み出すことが出来るんです。今回は、錬金術とアイドルの融合ですね」
「……はい!」
 リーゼロッテの言葉を噛み締めるように聞いていたグリューエリンは、嬉しそうに大きく頷いた。

●アイドルと吟遊詩人
 そして、当日。
「君が噂のアイドル君だね。同じ歌を仕事にする者同士、仲良くしてくれたら嬉しいな♪」
 はい、と右手を差し出すシャイネ・エルフハイム(kz0010)に、グリューエリンはぱちぱちと瞳を瞬かせた。
「ええ、よろしくお願いいたしますわシャイネ殿。……え、えっと……?」
「おや? 人気者にはこうやって握手しておくと幸せになれるって、誰かに聞いた気がしたんだけど……照れ屋さんなのかな?」
 シャイネの笑顔と『人気者』という言葉にぱっと赤くなる顔が、彼の言葉を明白に肯定しているのだけれど。
「い、いえ! まだ人気者、と言うのもおこがましい身ですが、『ふぁん』の期待にはお応えするのがアイドルですもの」
 そう言ってグリューエリンは、すっと差し出された手に己の手を重ね、そっと握る。
「今日は、君の歌を聞くのを楽しみにしているよ♪」
「ありがとうございます。ご期待に沿えるよう、全力で挑みますわ」
 さあ、初ライブの開幕まであと少し。

リプレイ本文

「ふむ、掃除が残ってるのは構わないよ?」
 フワ ハヤテ(ka0004)がモップを手にしながら肩を竦め、問う。
「でもなんで歌いながらなんだい?」
 まったくである。
「掃除や魔道具の設置はわかるのですけれど……歌うのですか?」
 摩耶(ka0362)もきょとんとした顔である。
「楽しい歌声によって負のマテリアルの発生を抑えるそうですわね。少しでも多くの人に歌って頂きたいとのことで、このような形になったそうですの」
 炎色の髪を後ろでシニョンにスカーフで覆ったグリューエリン・ヴァルファー(kz0050)が、真顔で答える。
「……え、ボクも歌わないといけないのかい? ……嘘だよね?」
「戦闘兼設置やるんで歌わなくてもいいですか?」
 フワに続けて、キヅカ・リク(ka0038)もそっと問う。
「え? 皆で歌うのではありませんの?」
 思いっきり邪気のない瞳から、そっとフワとリクは目を逸らした。
「だめですか? そうですか……や、歌うとかカラオケ以外卒業式くらいなんだけど」
「……まぁ頑張ります」
 一方覚悟を決めて、摩耶が頷き掃除用具を手にする。
「……アッハイ」
 その流れにやっぱり諦めてモップを掴むリクであった。
「汚れているからこそ、負のマテリアルが生み出されやすいのならば、ここは徹底的に掃除しておくに越したことはないな。微力ながら、俺も手伝わせてもらおう」
 そう言って榊 兵庫(ka0010)が、袖をまくって逞しい腕を露わにし、モップを手に進み出る。
「貴女がグリューエリンちゃん?」
「はい、お初にお目にかかりますわね?」
「ええ、私はナナート=アドラーよ。今日は1日宜しくね♪」
 中性的な美貌に浮かんだ笑顔に、グリューエリンがよろしくお願いします、と口元を綻ばせる。
「衣装を作っていただいたと聞いておりますわ。皆の意見を取り入れて頂いたとも」
「ええ、期待しててね?」
 笑顔で話していた2人の間に、ふわりと薔薇の花びらが舞う。不思議に思って振り向くと、そこには。
「おーっほっほっほ! 見事アイドルになられたようですわね」
 パルム達に薔薇を持たせて画像効果を演出して現れたベアトリス・ド・アヴェーヌ(ka0458)である。
「お久しぶりですね、お元気にしていらっしゃいましたか?」
 さらにちょうどグリューエリンを見つけたこなゆき(ka0960)も、微笑みと共に声を掛けていた。
「ベアトリス殿、こなゆき殿、お久しゅうございますわ。今日を迎えられたのは、貴女様方のおかげでもありますものね」
「当然ですわ。わたくしが発破をかけて差し上げたんですもの」
 さらに舞う薔薇。胸を張るベアトリス。頑張るパルム。その様子にくすりと笑むこなゆき。
「しかしいくら多芸な方が多いとはいえ、手伝いがこちら任せとは無体なことを」
 肩を竦めたベアトリスは、けれどやる気満々な様子でグリューエリンに微笑む。
「ふん、本当ならわたくしの美声をと考えていましたが……ピアノを用意なさい」
「ピアノ、ですか?」
 グリューエリンが目を丸くすると、近くにいた帝国歌舞音曲部隊員が呟く。
「ピアノ……確か、近くに旧帝国時代の劇場があったな」
「丁度いいですわ。本来低俗な曲を弾くつもりはないのですが、今回ばかりはどのような曲にでも合わせてさしあげましょう」
 ですからグリューエリンさんが観客に伝えたいものを素直にお選びなさいな、と。
「ノウハウも無い今は下手に狙った曲を歌っても仕方ありませんから」
 その言葉は辛辣なようで、けれど口調は何だか優しい。
「あ……ありがとう存じます! では、お願いしたい曲がございますの……」
 ピアノを調達しに行った部隊員達を見送ってから、グリューエリンがめいっぱい背伸びしてそっとベアトリスに耳打ちする。
 その様子に、グリューエリンの表情に、こなゆきは内心で安堵していた。
 緊張はしているようだが、グリューエリンは楽しげでもあった。無理はしていないようだと、安心した面持ちでこなゆきは優しく目を細める。
「2人の関係が本当に2つの世界を繋ぐ絆となれば良いです、ね」
 恋人である瀬織 怜皇(ka0684)の言葉に、幸せそうにUisca Amhran(ka0754)は微笑む。怜皇――レオとの関係を通じて、アイドルとなったグリューエリンに、2つの世界の新しい絆の形とアイドルの可能性を示したいと。
 その、少し離れた場所では。
「……興味深い」
 箱から魔導機械を取り出したオウカ・レンヴォルト(ka0301)は、構造を把握しようというかのように、興味深げにそれを弄り回す。
 それぞれの思惑を乗せて――出発の時は、近づきつつあった。

 下水道には既に上泉 澪(ka0518)がやや先行し、雑魔が現れないかどうか確認を始めていた。
 す、と深呼吸して歩き出そうとしたグリューエリンは、後ろから肩を叩かれて振り向き、あ、と思わず声を上げた。
「貴方様は……」
「……言っただろう。機会は回ってくる、と」
 ニヤリと笑ったのは、蘇芳 和馬(ka0462)。グリューエリンがアイドルとなる切っ掛けを作った1人。
「護衛は任せておけ。貴女の歌を邪魔する者はこちらで全て切り裂く」
 そう言って掃除用具の代わりに刀の柄に手を置いた和馬は、グリューエリンを先導するように歩き出す。
「……はい!」
 嬉しそうに、グリューエリンは頷いて、その後に続く。
「……長居は遠慮したい場所ね。さっさと済ませてしまいましょ?」
 ぱちりとウィンクしたナナートがLEDライトで視界を確保しながら進み出て、こなゆきがそっとグリューエリンを守るように、邪魔にならぬように歩き出した。
 響きだすのは、明るい歌声。
「さぁおいでよ Welcome to world♪ そう行こう Let's go together♪」
 暗く淀んだ空気を、歌で振り払うかのように。
 歌声を先導するのは、以前のアイドル文化研究交流会でこの歌を歌ったUiscaだ。
(イスカが2つの世界を繋ぐアイドルになれると良いのですが……)
 その隣では恋人の歌に耳を傾けながら、怜皇が魔導機械の設置に取り掛かる。
 やはり興味があるのか取りつけも積極的に手伝うオウカ。
「さぁおいでよ 君と一緒に♪」
 マスクと皮手袋でしっかり装備を整えた如月 紅葉(ka2360)が、歌いながら重曹を使い丁寧に汚れを落としていく。
 掃除は割と真面目にやるフワ。だが、歌の方は当然のように口パクであった。
(なんで歌わないといけないんだい? 歌いたい人が歌ってればいいじゃないか)
 そう肩を竦めるフワである。
「雑魔が!」
 上がった声に、フワはどこか投げやりにフレアアローを投げつけた。
 既に澪が向かい、斬れるだけ斬って掃除担当の皆を仕事に集中させようと戦闘を繰り広げている。摩耶がそれを支えるように、華麗な動きで鞭を叩き込む。
 軽くグリューエリンを庇うように前に出て、ナナートがデリンジャーの引き金を引いた。反対側にはこなゆきがすっと白炎の如きオーラを纏い、グリューエリンの傍らを支える。
「……邪魔だ、消え失せ、ろ」
 オウカが銃の引き金を引き、雑魔を消し飛ばす。なお、視線は手に持った次の魔導機械は向けたまま。
 もしかしたら当たったのも偶然かも知れない。
「ヴァルファー、止めを」
 適度に弱った雑魔を指し、和馬がグリューエリンへと視線を向ける。今後を考えれば、武勲を積ませでおくべきだろうと。
「ありがとうございます、和馬殿」
 頷いたグリューエリンは雑魔との距離を詰め――左右の長剣の一撃ずつで、雑魔を屠った。

 邂逅を楽しみにしていた天竜寺 詩(ka0396)は、次の歌にクリムゾンウェストの民謡をリクエストする。グリューエリンが選んだのは、帝国軍人を愛した少女が己も剣を取り戦うという内容の歌だ。
 本来は軍人の帰りを待ち続ける悲恋の、忘れられていた歌。けれど革命を境に新たな歌詞が作られ、愛唱歌になったのだという。
 リアルブルーの家で覚えさせられた神楽歌を、次に詩が歌う。神事の歌でもあるから、効果があるかもしれないと。
 魔導機械を設置しせっせと掃除しながら、やがて辿り着いたのは入ったのとは反対側の、下水道と地上を繋ぐ階段。
 ここに魔導装置を設置すれば、下水道での仕事は終了である。
「ささっと設置しますかね……」
 怜皇がすぐに作業に移る間に、Uiscaはグリューエリンに笑顔で話しかけた。
「アイドルって、きっと2つの世界の架け橋になれると思うんです」
 だって、歌が互いの想いを繋いでくれるから。
「2つの世界の……?」
 まだそこまでは考えていなかったと、素直にグリューエリンは言う。
「けれど……それは、とても素晴らしい事だと思うのです。帝国に属する身が、どこまで実現できるかわかりませんけれど」
 そして――グリューエリンはまだ自分の目標に捉われている。他のことを考える余裕は、ないかもしれない。
 けれど、いつか叶うならば――。

 丁度その頃、広場の入り口にアルトリコーダーを手にした岩井崎 旭(ka0234)と鍵盤ハーモニカとカスタネットを用意したシルヴィア=ライゼンシュタイン(ka0338)が立った。
「せーの!」
 アルトリコーダーが爽やかな音を奏でる。右手で鍵盤ハーモニカの深い和音を、左手でカスタネットの軽快なリズムをシルヴィアが叩き出す。
 集まって来た人達の熱気に当てられ、演奏は大加速。
 愛馬サラダも高らかにいななき、いつの間にか木箱の簡素なステージができる。ヒートアップを続ける旭。元狙撃兵らしく正確なテンポを作り出し、それでいてアレンジを加えていくシルヴィア。
 乱入歓迎の演奏は、人々の期待を高めていく――!

 下水道からハンター達とグリューエリンが戻ってきたのを確認し、ベアトリスはほっと胸を撫で下ろす。彼らが帰ってくる寸前に、何とか形にした曲の練習を終えたのだ。
 彼女にとって、努力は見られないようにするものである。そっちの方が優雅だもの。
「熱狂した観客がどう動くか、あちらと違って勝手が違う分難しいが……」
 下水道から出てきた兵庫は、帝国歌舞音曲部隊員を集めて警備計画の確認を行っていた。
「せっかくのライブで怪我人でも出たら興ざめもいいところだしな。万全の警備で皆を楽しませようじゃないか!」
「おー!」
 部隊員達が拳を突き上げる。初ライブを成功させたいという思いの強さは、彼らも同じだ。
 そしてステージ裏では――帰ってきて着替えたグリューエリンに、リクが冷たい水を差し出した。
「ああ、ありがとうございます、リク殿……沁み渡りますわね……」
 心底美味しそうに水を飲み干したグリューエリンに、ふとリクは尋ねる。
「なんで、アイドルになろうと思ったの?」
「家名復興のためですわね。……武勲を挙げるもアイドルとして名を上げるも尊いと、教えてくれた方々がいらっしゃいましたの」
 真剣な顔で言ったグリューエリンは、少し考えて、それと、と付け加える。
「歌を楽しんでもいいのだとも、教えていただきましたわ」
 その様子に、頑張り屋の彼女に、14歳の頃の自分はどうだっただろうとリクは考える。
 ――やはり、自分は違う世界に来たんだなと、実感して。
「ありがとう、ライブ、楽しみにしてるよ」
「ええ、ありがとうございます。ご期待に沿えるよう努力いたしますわ」
 頷いたグリューエリンに手を振って、リクは客席へと向かう。
「ありゃ、グリューエリンちゃん、初ライブなんだって?」
 そう言って顔を出したのは、Jyu=Bee(ka1681)である。
「じゃあ最高のライブにしないとね!!」
 緊張してたら筋肉が硬くなっちゃうからね、とJyu=Beeは後ろに回って肩を揉む。
「だ、大丈夫ですわ、ジュウベエ殿」
「いいからー♪」
 最初は慌てていたグリューエリンも、その絶妙な力加減にほっと肩の力を抜く。
「初めまして、グリューエリンさん。摩耶と申します」
「初めまして。ご丁寧にありがとう存じます」
 摩耶に声をかけられ、グリューエリンは振り向いて頭を下げた。
 微笑もうとした口元が、まだ少しぎこちない。緊張しているのだろう。
「よろしければ、こちらをどうぞ」
「まぁ……いただいて良いのですか?」
 ぱちりと瞬きしたグリューエリンの前に差し出されたのは、用意してきたチョコで作ったアイスチョコレート。
 ひんやりとした甘さが口の中に広がり、思わず綻ぶ表情。
「私も、バックコーラスで支えさせていただきますね」
 その言葉に微笑んだグリューエリンは、少し緊張の解けた顔をしていて、摩耶はほっと胸を撫で下ろす。
「マリエルと言います。よろしくお願いしますね」
「まぁ、お初にお目にかかります。よろしくお願いいたしますわね」
 ほぼ同じ年頃、ほぼ同じ身長のマリエル(ka0116)の存在も、安心するのに一役買っただろう。
「会場の準備とライブ活動について、私に出来る事があればなんでもしますね」
「ありがとうございます。私もわからないことばかりで、皆様に助けて頂いておりますわ」
 ウェイトレス仕事の途中から依頼を請けメイド服で駆けつけてくれたマリエルは、グリューエリンの言葉に大きく頷く。
「まあ大船に乗ったつもりで、デーンと構えていてくれてオーケーだ。かつて1万人のアイドルをスターダムへとのし上げた超プロデューサー! それがこのデスドクロ様だからな」
 そう言って胸を張るのはデスドクロ・ザ・ブラックホール(ka0013)。アイドルたるもの何より重大なのはそのイメージだとデスドクロはにやりと笑う。
「『ファンの期待に応えたい』というその意気込みや良し。下水道のマテリアル正常化を兼ねたところといい、一般市民の生活に直結したところも良し」
 それはプロデューサーらしい目の付け所。
「なればこそ、目指すべきは孤高の歌姫ではなく、皆から愛されるシンガーに他ならない」
 そしてまた、プロデューサーらしい目標設定。
「そんなグリューエリン・ヴァルファーに今必要なものはただ一つ」
 注目を集めながら、ゆっくりとデスドクロは口を開く。
「ニックネームだ」
「ニックネーム……?」
「グリューエリンでは心の距離が遠すぎる。グリりん……そう、グリりんで決まりだ!」
「え、え!? ちょ、ちょっと待って下さいまし!?」
 慌てるグリューエリンの横で、ドリルかな、と誰かが呟く。
 最後にオチを持って行ったなんかすごいニックネームだった。
「ふふ、ゆっくりと考えてもいいのですよ。まだ、活動の始まりなのですからね」
 どうしようという顔だったグリューエリンの肩を、そっとこなゆきが支える。
「よろしければ私にもお手伝いをさせてください。弦・管楽器だったら一通りは扱えますので」
「まぁ、心強いですわ。ありがとうございます」
 以前聞かせてもらった横笛の響きを思い出したのか、こなゆきの申し出にぱっと顔を輝かせるグリューエリン。
 ――ちょうどその時、ステージに音楽が流れる。
 前座を務めると申し出ていたのは、ピュアアルケミーのメンバーだ。
 アナスタシア・B・ボードレール(ka0125)はグリューエリンとは見知った仲であったし、時音 ざくろ(ka1250)のことも記憶にしっかりと刻まれていた。
 そして、今日からはもう1人が加わる。
「あいどる、ねぇ……面白そうじゃん」
 そう言って笑ったのは、レベッカ・アマデーオ(ka1963)。
「や、あたしはレベッカ・アマデーオ。よろしくね。ざくろに誘われてね」
「よろしくお願いしますわ。同じ日の『でびゅー』ですわね」
 嬉しそうにしながらも、流石にステージを前に緊張した面持ちのグリューエリンの肩を、ぽんとアナスタシアが叩く。
「見本とまではいかないけど。ピュアアルケミーから貴女に勇気をプレゼント、ですよっ☆」
「場をあっためておくからね!」
「任せろよ!」
 反対側からざくろがウィンク。正面からレベッカがにっこり笑う。
 そして3人は、ステージへと飛び出していく――。

 ステージの前には、AN作戦に参加した者達、料理を作ったハンター達、それにバルトアンデルスの一般市民たちもわいわいと集まって来ていた。
 警備に回った兵庫がしっかりと指揮を取っているため、落ち着いた雰囲気で、けれど空気は期待を孕んでいる。
「何だかアイドルが歌うってね?」
「ライブ、だっけ?」
 そう言葉を交わし合うところに、音楽が流れ始める。
 舞台へと目を向けた観客達の目に入ったのは、鮮やかな紅、蒼、黄の衣装を纏った3人の少女達……もとい少年少女。
「音量大丈夫? チェック1、2……よし」
 マイクとは多少異なる形状の、新開発の音を増幅する装置を手にし、アナスタシアはざくろへと視線を飛ばす。
 一つ頷いて、ざくろは満面の笑顔で客席へと手を振った。
「みんなー、元気してるー! グリューエリンの準備が整うまで、まずはピュア紅ことざくろ達ピュア・アルケミーの歌と踊りで熱くなってね☆」
「ピュアアルケミーのピュア蒼ですっ☆ライブよろしくねーっ!」
 アイドル文化交流会で舞台に立ったお馴染みの2人だけあって、わあっと客席から歓声が起こる。
「今日はなんと、新メンバーも!」
 そしてざくろの紹介で前に出たのは、新メンバーとして加入したレベッカ。
「よ、あたしはピュア黄。海賊だ」
 揃いの衣装に海賊風のモチーフを取り入れて、びしりと親指で己を指さすレベッカの勇ましさと可愛らしさに、観客達は声援と拍手を送る。
「きっちりステージ温めるよ! ついてきな!」
「聞いてください、新曲」
「『夢☆未来機導――トリニティ――』!」
 音楽が変わり、それに合わせて3人が踊り出す。拍手が徐々に、曲に合わせた手拍子になっていく。
「♪響け機導の歌声☆ 舞え機導の剣♪」
 ダンスの途中で、機導剣を生かした剣舞が入る。一瞬の輝きを華麗に打ち合わせる様子に、わっと客席が盛り上がる。
 そして最後は――曲の終わりに合わせて、決めポーズ!
 巻き起こる歓声と拍手。ステージの熱狂は本番に十分!
「さあ、本番はこれから!」
 ステージに、グリューエリンを迎え入れて。
「ライブ本番、いきますよー!」
「楽しんでいってねー!」
「最後まで楽しんでってくれよな!」
 そしてグリューエリンを温かく迎えてくれるよう、観客達へと言い残して、3人はステージを去っていく。

 見渡した観客席では、料理を楽しみながら、じっと品定めするように、純粋に音楽を楽しみに――さまざまに、けれど誰もがステージを見つめている。
 心臓が跳ね続ける。緊張はしていたけれど――これだけの人に注目され、その名を知らしめることができると。
 そして――誰にも遠慮せず、歌うことが出来ると。
「グリューエリン・ヴァルファー、この帝国でアイドルとして『でびゅー』させていただきます! どうか、ご清聴お願いいたしますわ!」
 その言葉、そして上がる歓声と同時に現れたのは、ギターを持った鈴木悠司(ka0176)とベースに指を走らせるヤナギ・エリューナク(ka0265)。
 最初の曲は、悠司の提案でリアルブルーのロックソング風のアレンジをした、帝国で良く知られた歌だ。耳慣れない伴奏と、けれど馴染みある歌とメロディ。バックダンサーを買って出た紅葉や和馬にナナート、バックコーラスを担当する摩耶やマリエルそれに詩が、舞台へと現れて華やいだ雰囲気を作る。
 統一感をと揃えた衣装は、ナナートが全員分必死に作ったもの。けれど、そんな疲れを全く見せず、得意の舞踏を繰り広げるナナート。
 悠司のギターは明るいコードを奏で、それにヤナギのベースが絡み付くようなプレイを魅せる。
 グリューエリンと視線を交わし、すっと動いて背中合わせに。リアルブルーではお馴染みのアクションは、帝都の人々には珍しかったようでわっと歓声が上がる。

 ――時間は、少し遡る。
「私、【AN】作戦に参加してなかったのよね……打ち上げだけ出てもいいものなのかしら?」
 そう首を傾げた松岡 奈加(ka0988)は、けれどぶんぶんと首を振る。
「いえっ、やっぱりダメな気がするわ! ……お仕事だしね」
 そんなわけで、奈加は打ち上げが盛り上がるようにテンションアゲアゲで全力で楽しむことにしたのだ。
 それにつられて盛り上がってくれる人がいることを信じて。

 曲はサビに入り、ますます盛り上がろうというところで。
「ウェーイ♪」
 歓声を上げて、ぱぁっと奈加がシャインを放つ。まるでサイリウムの輝きのように!
 それと合わせて、わぁっと会場が盛り上がる。
 曲が終われば温かな拍手が満ちる。グリューエリンの歌はまだ素人の域を出ないが、後ろに立つのは豪華メンバー。彼女の懸命に歌う様子も、初々しい。
 2曲目、ヤナギと悠司に代わってステージに出たのは、オウカである。
「三味線なら経験がある」
 曲の合間に舞台裏でオウカが手にしたのは、アコースティックギターに似たクリムゾンウェストの楽器だ。
「似ているからな」
「やはりこの世界は、リアルブルーとのつながりが深いのですね」
 瞳を輝かせて調弦するオウカの様子に見入るグリューエリン。
 でも多分あんまし似てない。
 しかし不思議な親和性で、見事演奏をこなしてみせるオウカ。さらにこなゆきが横笛を合わせ、どこかリアルブルーの和風といったアレンジが為された音楽に、紅葉が日舞風の動きで静かに、時に華やかにダンスを支える。グリューエリンの高音が皆に支えられて帝都の空に響き渡った。

 蒼を基調とした服の怜皇と、紅のドレスを纏ったUiscaは、仲睦まじく食事に舌鼓を打っていた。
 聞こえてくる音楽は、ノリのいい曲からこなゆきの竪琴が伴奏するしっとりとしたバラードに移っている。
「レオ、これってリアルブルーの食べ物?」
「ん、そうですね。それはリアルブルーの食べ物ですよ」
 2種類のカレーを食べながら尋ねるUiscaに、怜皇は優しく頷く。
「はい、あーんして♪」
 Uiscaが楽しげに差し出す料理に怜皇はそっと口を開く。ふわり、と広がる懐かしい香辛料の味。
「ありがとうございます、イスカもどうぞ?」
「うん♪ あ~ん……」
 そんな食べさせ合いをしているうちに、また曲は移り変わる。今度は威勢のいいパンキッシュなロックに。
「また一緒に依頼に行こうね♪」
「はい、また行きましょうね。一緒に」
 満面の笑顔を輝かせるUiscaの頭を、怜皇はそっと撫でるのだった。

 数曲ごとに休憩を入れるのは、Jyu=Beeが提案した事だ。初めてゆえに、体調管理はしっかりと。
「ほい、パス」
「えっ!?」
 突然ぽんと投げ渡されたパックを、慌ててグリューエリンが受け取る。
「ジュースだよ。歌いっぱなしだと喉がかれるから、こまめに水分補給しないとね」
 常に最高の歌声を届けるのもアイドルのお仕事。そう言って笑うJyu=Beeに、グリューエリンは真剣に頷いて美味しそうにジュースを飲み干すのだった。

 マリエルが高らかに歌声を響かせる。歌には自信がある、と言った通り、綺麗に澄んだ声であった。
(皆さんに『お疲れさま』という気持ちを伝えて、少しでも労わってあげたいですね……)
 その思いで、マリエルはグリューエリンとハーモニーを奏でた。
 詩の確かな技術と歌が好きという気持ちがこもった歌声が、まだ拙いグリューエリンの歌声を優しく支える。さらにそこに、摩耶の落ち着いた声が重なった。
 数曲のポップソングを終え、曲はバラード。Jyu=Beeのギターが、静かに優しい伴奏を奏でる――。

 力を覚醒させた状態で、フワはテーブル席でのんびりと寛いでいた。
 様々な人や物が入り混じるこの広場は、マテリアルに対して過敏な彼には辛い場所だ。覚醒してしまえば、『酔い』を起こすことがなくなる。
「疲れた体に歌と食事が染み渡るねえ」
 くすりと笑って、フワは様々な料理を堪能する。今テーブルの上にあるのはシャンピリアンステーキに肉じゃが、それにツナを使ったガレット。リンゴソースを使ったポテトパンケーキやアップルクランブルといったデザートも楽しみだ。
 打ち上げの準備を担当していたメンバーが、酒を注ぎに来てくれる。ちょうど、次の歌も始まりそうなタイミング。

 跳ね回るような元気なポップスに、和馬と澪がアクロバティックにバックダンスを務める。
 あくまで添え物として、と意識した和馬のダンスは、目立ち過ぎずかえってグリューエリンの存在感を高める。
 注目が集まったところで――バランスを崩してこけるグリューエリン。
 けれどそこをすかさずJyu=Beeと和馬が両手を取って一気に引っ張り上げる。まるで、そういうダンスだった、というかのように。
 再びコードを鳴らすJyu=Beeと背中を合わせ、和馬と掌を合わせてグリューエリンが笑顔。決めポーズ!

 あとで謝罪と礼を述べたグリューエリンに、和馬はニヤリと笑って頷き、Jyu=Beeはぽんと肩を叩く。
「初めてで1回しかこけなきゃ大したもんだよ。さ、フォローは任せて怖がらずいきなよ!」

(……皆賑やかでいいなぁ)
 オウカは隅の方で、大人しくひっそりと料理を摘まんでいた。
 やたらと怖い視線になかなか近づく者もいないが、本来の彼は24歳の普通のゲーム好きの青年なのである。
「あら~、1人で来てるの? ねぇねぇご一緒させてよ!」
 そこにやってきたのは、料理の皿を両手に持ってきた奈加である。
「え、あ、ああ」
 歴戦の兵士の如きオーラが一気に膨れ上がる。
 実は緊張してるだけなのだが。
「じゃ、失礼しま~す♪」
 けれどお構いなしに向かいに座り、料理を頬張る奈加。
「美味しぃ~! ねぇねぇコレ美味しいよ?」
「そう、か」
 料理を食べるのも忘れて必死に頷くオウカ。
「ハイ、ア~ン♪」
「!?」
 そんな彼に全く臆せずスプーンを差し出してくる奈加に、ついに思考停止。
「食・べ・て?」
 ガッチガチになりながら、もはや無意識で口を開ける。
 スプーンと一緒に、ジャーマンポテトの香ばしさが流れ込んでくる。いい材料だ美味しいな、なんて感想ばかりがぐるぐる頭をめぐる。
「美味しいよね~♪」
「あ、ああ」
 ガッチガチに緊張して、上手く話せないくらいだけど。
 それでも怖がらないでくれる奈加のことが、嬉しかったりするのである。

 ベアトリスがピアノの前に座り、奏で始めたのはややポップにアレンジされた――あの、帝国軍人を愛し戦う少女の恋歌。
 グリューエリンが、歌いたいと願った歌だ。
「恋というものは、まだわかりませんけれど。目的の為に武具を取り、待つのではなく自ら獲りに行く姿勢に、憧れたのです」
 そう、ベアトリスにグリューエリンは言った。短い練習時間だったが、ベアトリスは伴奏を弾きこなして見せる。
 ここまで助けてもらったから、今度はソロで歌ってみます。そう言ったグリューエリンは、堂々と歌声を響かせていた。
 まだ時折高音が掠れる。音程は少しだけ不安定。けれど、視線に臆せず、歌を楽しみ、胸を張って歌うことが、できたのだ。
 やがて訪れる終幕。拍手の音に――支えてくれた皆を、そして見つめてくれた、聴いてくれた皆を見渡して、グリューエリンは手を振りながら瞳を潤ませたのだった。

 出番を終えた詩が、姉の作った料理を食べに行く。仲間達の料理を手伝い忙しくしていたようだったが、メインで作ったリンゴの形のコロッケを見つけて満足げに頬張った。
 同じく出番を終えて酒と煙草を楽しみに繰り出したのは、悠司とヤナギである。
「ほら、焼けたよ。どんどん食べて飲みな」
 そう威勢よく言いながら屋台を開いていた紅葉から、ほかほかの鉄板焼きをつまみにいただいて。
「いやぁ、リアルブルーどころか此方の世界でも会えたなんて、運命感じちゃうよねー」
「男と運命感じても嬉しくねェよ」
 乾杯、と打ち合わせたジョッキのビールを煽りながら、軽口を叩き合う。軽妙なやりとりはもちろん、音楽の話をも忌憚なくでき、盛り上がることのできる仲でもあるのだ。
「おっと、お嬢さん。一緒に飲まないかい、奢るぜ?」
「いいのぉ? やったぁ~カッコいいお兄さんと美味しいお酒~!」
 通りかかった奈加をナンパするヤナギの様子に、相変わらずだなーと笑った悠司は、ちょっと胸を撫で下ろした。
「あっつ~い、もう脱いじゃえ……」
「え、え、いやそりゃまずいって!」
「大丈夫よ? 水着着てるし~♪」
 ウィンクする奈加に翻弄されて、思わず椅子にぐったり沈み込む悠司である。
「ま、酒飲んでりゃ暑くもなるわな」
 言いながら、不快にならない程度に煽情的なビキニに身を包んだ奈加を眺めるヤナギ。
「さて、これ飲んだらどうするよ? ストリートでちょっと演るかい?」
「あ、いいんじゃない? 付き合うよ!」
「あらぁ、私踊っちゃおうかしら♪」
 ライブは、最後の全員総出、観客席にも拍手や合いの手を求める楽しい歌を奏で出す。
 終わったら今度は、路上でロックでもやってみようか、と思う彼らであった。

「え、とっくにライブ始まってるって?」
「むしろもうすぐ終わるみたいですよ、旭さん」
 熱狂的な演奏を終えた旭とシルヴィアが、力尽きた様子でぼんやりと広場を見つめる。
「マジかー……」
「結局ライブ見れませんでしたね……」
 けれどなんだか、不思議な充足感が2人を満たしていたのだった。

「お疲れ様。良かったよ」
 ステージ裏でまだ肩で息をするグリューエリンに、掛けられた声。
 振り向き、リクの姿を認めてから、ようやく彼女は言葉の意味を噛み締める。
「ありがとうございます、リク殿!」
 一つ頷いて、リクはステージ裏を後にする。
 そして集まって来た共演者達と、グリューエリンは笑顔で初ライブ成功の喜びを分かち合うのだった。

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MVP一覧

  • 亜竜殺し
    榊 兵庫ka0010
  • 白き流星
    鬼塚 陸ka0038
  • ピュアアルケミーピュア蒼
    アナスタシア・B・ボードレールka0125
  • 缶ビールマイスター
    鈴木悠司ka0176
  • ブラッド・ロック・ブルー
    ヤナギ・エリューナクka0265
  • 薔薇色の演奏者
    ベアトリス・ド・アヴェーヌka0458
  • 蘇芳神影流師範代
    蘇芳 和馬ka0462
  • 放浪せし華やぎの巫女
    松岡 奈加ka0988
  • Beeの一族
    Jyu=Beeka1681

重体一覧

参加者一覧

  • THE "MAGE"
    フワ ハヤテ(ka0004
    エルフ|26才|男性|魔術師
  • 亜竜殺し
    榊 兵庫(ka0010
    人間(蒼)|26才|男性|闘狩人
  • 完璧魔黒暗黒皇帝
    デスドクロ・ザ・ブラックホール(ka0013
    人間(蒼)|34才|男性|機導師
  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • 聖癒の奏者
    マリエル(ka0116
    人間(蒼)|16才|女性|聖導士
  • ピュアアルケミーピュア蒼
    アナスタシア・B・ボードレール(ka0125
    人間(紅)|14才|女性|機導師
  • 缶ビールマイスター
    鈴木悠司(ka0176
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人
  • 戦地を駆ける鳥人間
    岩井崎 旭(ka0234
    人間(蒼)|20才|男性|霊闘士
  • ブラッド・ロック・ブルー
    ヤナギ・エリューナク(ka0265
    人間(蒼)|24才|男性|疾影士
  • 和なる剣舞
    オウカ・レンヴォルト(ka0301
    人間(蒼)|26才|男性|機導師
  • 凶獣の狙撃手
    シルヴィア=ライゼンシュタイン(ka0338
    人間(蒼)|14才|女性|猟撃士
  • 光の水晶
    摩耶(ka0362
    人間(蒼)|15才|女性|疾影士
  • 征夷大将軍の正室
    天竜寺 詩(ka0396
    人間(蒼)|18才|女性|聖導士
  • 薔薇色の演奏者
    ベアトリス・ド・アヴェーヌ(ka0458
    人間(蒼)|19才|女性|機導師
  • 蘇芳神影流師範代
    蘇芳 和馬(ka0462
    人間(蒼)|18才|男性|疾影士

  • 上泉 澪(ka0518
    人間(紅)|19才|女性|霊闘士
  • 聖なる焔預かりし者
    瀬織 怜皇(ka0684
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 緑龍の巫女
    Uisca=S=Amhran(ka0754
    エルフ|17才|女性|聖導士
  • アイドルの優しき導き手
    こなゆき(ka0960
    人間(紅)|24才|女性|霊闘士
  • 放浪せし華やぎの巫女
    松岡 奈加(ka0988
    人間(紅)|17才|女性|聖導士
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • ミワクノクチビル
    ナナート=アドラー(ka1668
    エルフ|23才|男性|霊闘士
  • Beeの一族
    Jyu=Bee(ka1681
    エルフ|15才|女性|闘狩人
  • 嵐影海光
    レベッカ・アマデーオ(ka1963
    人間(紅)|20才|女性|機導師
  • 粋な若女将
    如月 紅葉(ka2360
    人間(蒼)|26才|女性|闘狩人

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/07/26 20:17:30
アイコン 初ライブの打ち合わせ
蘇芳 和馬(ka0462
人間(リアルブルー)|18才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2014/07/27 14:40:48