湧泉と蜻蛉と謎の妖精

マスター:蒼かなた

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/10/01 22:00
完成日
2015/10/05 06:23

みんなの思い出

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オープニング

●マテリアルの泉
 クリムゾンウェストの世界には時々、マテリアルが湧きだす泉が現れる。
 何時、何処で、どれだけの間沸きだすかなどは今のところ予測すら出来ない。
 中々巡り合えないという理由で、旅人の間ではその泉を見つけることが出来れば幸運が訪れるとも言われている。
 そしてマテリアルの泉を見つけた時に、更に運がよければ特別な存在に出会える時がある。
 そう、妖精だ。

●雑魔被害と噂話
 リゼリオに程近い場所にある村に、とある旅人が担ぎこまれてきた。
 あちこちに傷を負っていたが深い傷はなく、1日もすればすぐにベッドから起き上がれるようになった。
「無事で良かったよ。しかし、蜻蛉の雑魔か……もうそんなのが出る季節になったんだな」
 旅人を助けてやった猟師の男はそう呟く。
 秋になれば秋特有の生物の雑魔が現れる。どういう理由なのかは知らないが、昔からそうであったのだからそこには誰も疑問を挟まない。
「いや、本当に助かりました。けど折角マテリアルの泉を見られたのにこんな目に遭うとは」
「ははは、不幸中の幸いって奴だ。マテリアルの泉を見てなかったらそのまま死んでたかもしれないぞ?」
 気落ちする旅人に猟師は慰めの言葉を掛ける。
「しかしマテリアルの泉か。ここらに出るのは久しぶりかもしれないな」
「そうなんですか。いや、けど本当に綺麗でしたよ……こう、柔らかい光が溢れてて、宝石が散らばっているみたいに水面も光ってて」
 旅人はその時の情景を思い出したのか、体の痛みを忘れて思わず笑みを零す。その様子に猟師も小さく笑った。
「知ってるか? マテリアルの泉にはな。妖精が集まってくるんだそうだ」
「妖精って、あの妖精の?」
 妖精は幻獣の中でもとても賢いことで知られている存在だ。その中でも蝶の羽を持つ小人フェアリーなどが有名だろう。
 彼ら、あるいは彼女らは滅多に人前には姿を現さない。個体数が少ないというのもあるが、総じて人と生活圏が重なることがないからだ。
 だが、そんな妖精達が時折姿を見せることがあるのがマテリアルの泉なのだと言う。
 マテリアルに高い親和性を持つ妖精だからこそ、泉の存在に気付いて何かを求めてやってきているのではないかと語る専門家もいる。
「あれ? そう言えば襲われてる時に妖精っぽい姿を見た気も……」
「ははは、気絶している間に夢でも見てたんだろう」
「いや、本当なんですって。光る羽の生えた何かを見たんです」
 頑なに見たと言い張る旅人に、猟師は水の入ったコップを差し出して一言だけ告げた。
「まっ、何にしてもハンター達が雑魔を退治に向かったそうだ。もしかしたら今頃出会ってるかもな、その妖精に」

●少女と白猫
 森林の奥深く、普段は人が立ち入らないような獣道を白猫の先導を受けながら1人の少女が歩いていた。
「マテリアルの泉……まだあるかな?」
 噂を聞きつけてその場所へと向かう茜色の髪をした少女――シャルは何かを求めてその場所へと向かう。
 このところは外れ続きであった為に、少しの焦りがシャルの足を早くさせた。
 そしてようやく辿り着いたその場所には、地面から沸き立つように光を放つマテリアルの泉と、その上空を旋回するように飛ぶ大きな蜻蛉の姿があった。
「邪魔はさせない」
 シャルが背中に背負った大剣を抜いたその時、泉を挟んだ奥の森の茂みから数人の人影が姿を現した。

リプレイ本文

●偶然の出会いと共同戦線
 強いマテリアルの力に導かれるようにして林を抜けたその先には、光り輝く大樹と大きな蜻蛉、そして浅黒い肌をした少女と白猫が待っていた。
「何だ、あのオンナは?」
 蜻蛉雑魔を警戒して杖を構えながら、予想外の『お客さん』にデルフィーノ(ka1548)は僅かに眉を顰める。
「迷子かな。それとも人型の雑魔?」
 リアリュール(ka2003)も同じく弓に矢を番えて木の傍を飛ぶ蜻蛉とその奥にいる少女へと視線を巡らせる。
「ちょっと待った。話を聞いてくれ。俺達は怪しいものじゃない!」
 仲間の警戒度が高まるのを感じてザレム・アズール(ka0878)は一歩前に出て慌てて少女に向けて声を掛ける。
 蜻蛉の儚い命を哀れみ、そしてそれでも雑魔は倒さなければならないと決意を固めたところでの少女の登場に少しパニックになったが、ここは努めて冷静に対処するべきだという考えが彼を行動させた。
 しかし戦場となる場所に現れた武器を持つ少女に一体どんな声をかけるべきか。
 難しい選択を迫られた時、そんなザレムの背中から向こう側を覗いたネムリア・ガウラ(ka4615)の目には久しぶりに出会う友人の姿が映っていた。
「わあ、シャル! それにセインも!」
「ネムリア?」
 これから戦場になる場所で上がる声とは思えない喜色を含んだネムリアの声に、少女――シャルもその声で相手が誰であるのか気付いたようだった。
「あれ、知り合いかい?」
「はい。えへへ、嬉しいなあ。シャルとセインにここで会えたのも、泉のお陰かな?」
 ザレムの言葉にネムリアは頷き、ひらひらと手を振って自分の存在をアピールする。それにシャルに手は振り返さなかったものの、一度だけ頷いて応えた。
 と、そこでこれまでマテリアルの泉の周囲を飛んでいた蜻蛉達の様子が変わりだした。
 羽を大きく震わせはじめ、その音が甲高く段々と大きくなって行くのが分かる。
「シャルもセインも久しぶりだなぁ……って、今はそれどころじゃないね」
 同じく顔見知りである時音 ざくろ(ka1250)は話すのは後回しと気持ちを切り替え、手にした大剣を担ぐようにして構える。
 ハンター達が臨戦態勢に入ったのを見計らったかのようにして、蜻蛉達の羽音は最高調に達し、目には見えない衝撃がばら撒かれた。
「来たよ。皆、散開して!」
 アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)の言葉を受けてハンター達は今立っているその場から飛び退るようにして離れる。それから数瞬遅れて地面に生える草が舞い散り、土の地面が僅かにへこむ。
「森での修行……開始だ」
 ユーリ(ka5364)がその一言を呟くと、その頭髪が突然逆立ち、口元には獣のような牙は伸びる。
 それからは黙して語らず。ユーリは腰の刀を抜くと、特徴的な刃紋を持つその刃を目の前の低空飛行している蜻蛉目掛けて真横に振りぬく。
 しかし、蜻蛉はその攻撃を垂直上昇することであっさり避けるとそのまま高度を上げて刀の射程圏外へと逃げる。
「虫型なら……大丈夫だ。いけるぜっ」
 デルフィーノは自らを奮い立たせ、足元のマテリアルの噴射を機動力に変えユーリの後ろまでやってくると空に向けて手にした杖を掲げる。
 杖先にトライアングルを描くように三つの光る線が走ると、それぞれの角の頂点から光の帯が真っ直ぐに蜻蛉達に向かって放たれる。
 だが、これでも蜻蛉達は機敏な動きを武器に飛び回り、デルフィーノの攻撃はその体を掠めた程度に終わる。
「素早い敵だな。これは連携が必須かな」
「そうみたいだね。それじゃあ同時攻撃だ。ざくろと合わせて!」
 ざくろと同じく、ザレムは機械的な装飾の施された大剣を構えるとその切っ先を空を飛ぶ蜻蛉達へと向ける。
 2人のマテリアルが高まり、その剣先に集められた力は破壊の力となって空を舞う蜻蛉達に向けて放たれた。
 しかし、放たれた攻撃の数は3つ。ざくろから放たれたものだけだった。蜻蛉達はその攻撃を不規則な動きで避けると、そのまま2人に向かって突撃してくる。
「カバー、入ります」
 そこにリアリュールの放った矢が2人に迫っていた蜻蛉の胴体を射抜いた。そのダメージからか蜻蛉はすぐに急上昇し、ざくろとザレムの頭上のすれすれを飛び去り上空へと戻る。
「危なかったぁ。って、ザレム。さっき何で攻撃しなかったの?」
 一先ずの危機を脱して、ざくろはザレムに振り返る。するとザレムは眉を顰め、少し顔を青くしているのが目に入った。
「悪い。どうやらスキルの調整が不十分だったみたいだ」
「えっ? ええっ!? まさかそれって……」
 ハンターの扱う強力な力であるスキル。それは武器や防具と同じく、装備しなければ使えない。そしてそれは日々本人が管理するもので依頼前にはしっかり確認しておくべきものなのだ。
 だが弘法も筆の誤りと言うべきか、ミスとは不意に突然起きてしまうこと。そしてどうやらそれが今日ザレムに起きてしまったようだ。
 勿論そんなことを蜻蛉達は知るよしもなく、よしんば知っても手を抜いてくれるはずもない。
「早速アクシデント発生ですね。先が思いやられますわ」
 その様子に僅かに溜息を吐いたエルバッハ・リオン(ka2434)は手元に編みこんだ魔法陣を空に掲げる。魔法陣が僅かに光ると、その中心から青白い靄があふれ出して大樹の周囲の空を覆い始めた。
 蜻蛉達はそれに巻き込まれまいと素早く高度を上げて避けてしまうが、エルバッハとしてはそれで十分であり、ゆっくりと歩いて大樹の根元まで向かう。
 そしてそこから自分達が来たのとは反対側の、そこでまだ剣を握ったまま立ち続けているシャルに視線を向けた。
「お久しぶりです、シャルさん」
「……エルバッハ?」
 シャルは僅かな間を置いてからエルバッハの名を呼んだ。
「よければエルと呼んで欲しいわ。っと、いろいろとお話ししたいこともありますが、まずはあいつらを斃さないといけないですね」
 響く銃声に激しい羽音。それに一度振り向いたエルバッハは、肩に掛かった髪を後ろへと払いながらシャルへと向き直る。
「いきなりですみませんが、一緒に戦いましょう」
「……分かった。協力する」
 頷いたシャルにエルバッハは微笑む。と、そこに薄靄が消えたところで頭上からエルバッハに向かって蜻蛉が急降下してくる。
 エルバッハはそれを迎撃しようと杖を構えるが、それよりも早く僅かな姿しか見えない細い影が走り蜻蛉の尾の部分を切り裂いた。
 その痛みに蜻蛉はすぐさま体を捻り、上空へと戻っていく。
「早速助けられたわね。ありがとう、シャルさん」
「構わない。1つ、貸し」
 シャルは左腕のグローブを払う動作をして再び大剣を両手で掴むと、冗談なのか分からない顔色1つ変えない表情でそう告げた。

●蜻蛉殲滅戦
「やはり空を飛ぶ敵は厄介だ」
 アルトは振動刀を下段に構えながら上空を睨む。
 蜻蛉達は自分達の戦い方の利を理解しているのか上空から中々降りてこない。只管その羽を振動させ、衝撃波によって地表にいるハンター達を吹き飛ばしにかかる。
「何、俺らを守っててくれりゃそれで十分だぜ」
 デルフィーノはそう言っていると上空を飛ぶ1匹の蜻蛉目掛けて雷撃を放つ。蜻蛉は身を捻りそれを避けるが、その回避した位置を狙いすますようにして鋭い鏃がそれを制する。そして続けざまに放たれた風の刃がその体を捉えた。
 蜻蛉は羽をやられたのか急速に高度を落とす。それを見たアルトは一瞬のうちに数メートルの距離を縮めると、地面すれすれまで降りてきた蜻蛉の首を跳ね飛ばした。
「あと、トドメも任せてよさそうだな」
 ニィッと笑うデルフィーノにアルトは僅かに微笑み返す。そして頭を失ってなお羽を動かそうとする蜻蛉の体に改めて刀を突き立てた。
「セイン」
 シャルが小さくそう呟くと、その傍らにいた白猫が大樹を駆け上り、枝へ飛び移り、そこから蜻蛉目掛けて飛び掛った。
 蜻蛉は木の葉々から突然飛び出してきたそれに余裕を持って回避する。
「スズメにツバメ、今だよ!」
 だがそれも作戦の内だ。本命であるネムリアのペットである2匹の柴犬が地面を蹴って飛び上がる。
 その攻撃が蜻蛉の胴体と足の数本を千切りとると、蜻蛉は一度地面へと落ちた。
 蜻蛉はすぐさま再び飛び上がろうとするが、羽ばたかせようと動かした羽が突然切断されて宙を舞う。
「逃がさない」
 シャルが左腕を振るうと更にもう片側にある羽にも大きな傷が走った。それでも尚もがく蜻蛉の頭に影が差す。
「お前は食えそうにねェな」
 ユーリは蜻蛉の姿を一瞥してそう口にし、その頭を踏み潰した。
「よーし、これであと2匹だけだね。それじゃあざくろのとっておき見せちゃうよ!」
 駆け出したざくろはその正面に蜻蛉を捉えると、強く地面を踏みつけると同時に跳躍する。勿論それだけで空を飛ぶ蜻蛉には届かない。
 そこでざくろは足元からマテリアルを噴射して推進力を得て、残り数メートルあった蜻蛉との距離を一気に縮める。だが、それでも後僅かに届かない。
「いや、これで十分! 剣よ、今一度元の姿に……超・重・斬!」
 ざくろの両腕から迸ったマテリアルがその手に握る大剣に注ぎ込まれると、形はそのままに剣が巨大化する。まさに巨人の一振りとなったその武器をざくろは思いっきり上段から振り下ろす。
 その刃は蜻蛉に届き、そのまま頭から腹の部分までを引き裂くと勢いのままにその体を地面へと叩きつけた。
「あと1匹。それでもやはり逃げないのね」
 リアリュールが番えた矢を残った最後の蜻蛉に向ける。
「歪虚だからね。だから早めに殺してあげよう」
 それしか方法はないのだから。ザレムはその思いを胸に同じく拳銃の銃口を蜻蛉へと向けた。
「そうですね。歪虚に手加減は無用です。だから、躊躇わずに」
 エルバッハはそう言って魔法陣を編む。薔薇棘の紋様を絡ませた指先でそれを作り上げると、最後にそれを指で叩いた。
「これでお終いです」
 矢と弾丸と風の刃。次々と飛んでくる破壊の力に蜻蛉は飲み込まれ、その体はばらばらになり大地へと散らばった。

●噂の真偽
 後始末も終わったところで、未だに淡い光を生み出すマテリアルの泉をザレムはじっと眺める。
「美しいな。何とか採取出来ないかな」
 ザレムは持ってきていた小瓶の蓋を開けて光る球を中に入れようとしてみるが、瓶の中に入った光る球はそのまま瓶をすり抜けふわふわと上を目指す。
「ふふっ、どうやら持って返るのは無理みたいだね」
 ザレムが瓶での採取に失敗した様子にアルトは小さく笑う。そんな彼女の肩にはいつの間にか小さな妖精が座っていた。
「おい、それって妖精か? こいつァすげえ、御伽噺だと思ってたぜ」
 それに気付いたユーリがたまげたとやや大げさに声を上げる。
「いや、この子――アリアは噂の妖精とは別だよ。ボクの友達」
 ユーリの言葉にアルトは苦笑すると、アリアと呼ばれた妖精はその羽を動かしてふわりと浮き上がった。
「探してみる? 分かった。遠くに行ったら駄目だよ」
 アルトは友人である妖精の言葉に頷くと、そのまま大樹の中へと飛んでいくその姿を見送った。
「何だ。ということは、やっぱり噂は噂でしかなかったってことか」
「さあ、それはどうだろうね」
 アルトは少なくとも友達であるアリアという妖精を知っている。それならば、可能性がないわけではない。
「実は姿が見えないだけで、私達のすぐそばにいるのかもしれないわ」
 大樹に寄り添うようにしてその手を当てていたリアリュールは、荷物袋からオカリナを取り出すとそっと口に元に当てる。奏でられる音は美しく響く柔らかな曲だ。
 アルトはその音楽を聞きながら、リアリュールの言ったことに「そうだといいな」と思いながらは光が溢れる大樹の根元に腰掛けた。

「マテリアルの泉、ほんと凄く綺麗……って、そう言えばシャルはどうしてここに?」
 舞う燐光に目を奪われていたざくろはふと思い出してシャルのほうを向いた。
 シャルは丁度何かチェーンのついた時計のようなものを見つめていたが、少し残念そうな表情を浮べた後にすぐにそれを懐に仕舞う。
「シャル?」
「……何?」
 心ここに在らずといった様子にネムリアが再び声をかける。そこでシャルはやっと気付いたのか顔を上げた。
「うん。シャルは何しにここに来たのかなって。あっ、勿論言えないことなら無理に言わなくてもいいからね!」
 シャルはそれを聞いて僅かに考える仕草をして、そして首を横に振った。
「シャルさん、ちょっといいでしょうか?」
 そこでエルバッハがシャルに声をかけた。シャルは返事はしなかったが視線をエルバッハに向けたままなのを見ると、話をするのは大丈夫なようだ。
「別にかしこまることはありません。ただの雑談です」
 エルバッハは笑みを浮べると、最近のハンター事情を掻い摘んで話す。勿論簡潔に、一般人に話しても問題ない程度の情報に限ってだが。
 シャルはそれを殆ど黙って聞いて、ある情報で少し目を見開き少し考える仕草をした。
「東方、鬼……新たな力」
「ええ、一進一退を続ける中で新しいものが次々に出てきています」
 そこまで話したところで、シャルは一度瞳を閉じた。その様子にハンター達は不思議に思いつつも少しの間反応を待つ。
「……探しに行かないといけない」
 目を開いたシャルはそう口にした。
「シャル、もう行くの?」
 その言葉の意味を正しく受けとめたネムリアは残念という気持ちを隠さずに表情にだす。
「おおっと。そうだぜ、折角雑魔退治も手伝ってくれたんだ。礼くらいしないとなぁ。どうだ、街に戻って一杯」
 くいっとグラスを呷る仕草をしたデルフィーノがシャルの前に立った。軟派な笑みを浮べていた彼だったが、シャルの肩に乗るソレの姿に気付いた途端にその笑顔が固まる。
「っ!? って、猫じゃねーか! 嫌、いや、やっぱり、な。急いでるところを引き止めちゃいけねーよな」
 デルフィーノは白猫のセインにまるで猛獣と出くわしたかのような態度でゆっくりと後ずさっていく。
 ――ニィ
「はぁっ!?」
 そしてセインが鳴いた瞬間、デルフィーノの姿が消えた。正確には垂直に飛び上がり大樹の枝葉の向こうへと飛んでいったのだ。
「変な人」
 シャルはそう一言口にしてから、改めてマントを羽織り直した。
「またどこかでお会いしましょう」
 エルバッハの言葉にシャルは視線だけ向けると、少し間を開けてから頷く。
 そして背中を向けて森の中へ向かおうとしたところで、その背中にネムリアが声をかけた。
「シャル、またね」
 小さく手を振るネムリアに、頭だけ振り返ったシャルはそっとその手を上げた。
「……またね」
 一度だけ手を振り、そのまま森の奥へと消えていった。

依頼結果

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MVP一覧

  • 誘惑者
    デルフィーノka1548
  • よき羊飼い
    リアリュールka2003
  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニka3109

重体一覧

参加者一覧

  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 誘惑者
    デルフィーノ(ka1548
    エルフ|27才|男性|機導師
  • よき羊飼い
    リアリュール(ka2003
    エルフ|17才|女性|猟撃士
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニ(ka3109
    人間(紅)|21才|女性|疾影士
  • 希望の火を灯す者
    ネムリア・ガウラ(ka4615
    エルフ|14才|女性|霊闘士
  • 刀士料理人
    ユーリ(ka5364
    人間(紅)|24才|男性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/10/01 21:14:46