• 闇光

【闇光】響け☆ロッソ

マスター:朝臣あむ

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/10/06 07:30
完成日
2015/10/14 09:53

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●サルヴァトーレ・ロッソ艦内
 人工的に作り出した風とそこにそよぐ緑を見ながら、雪子は手元に寄せられたチラシを握り締めた。
「こんなこと……したら、だめなのに……なんでわかってくれないんだろう……」
 そう零して目を落とした先に見えた『移住反対』の文字。
 ロッソの中の非戦闘員がどれだけ船のお荷物になっているのか、ここの人たちはわからないのだろうか。
 そりゃ怖いという思いはあるし、出なくていいのなら出たくない。それでも外の人たちはVOIDと戦っている。もちろん、ロッソから出て戦っている人もいる。
「……サルヴァトーレ・ロッソが動けば、外の人たちや……外に出て戦ってる、人たちの……力に……なれるのに……」
 どうして、わからないのだろう。そう考えて雪子は目を閉じる。
 彼女は元々地球圏内のコロニーに取り残されていた者の1人だった。そこをロッソに救われ、今は血の通わない兄妹たちと共に暮らしている。
 辛くないと言えば嘘になるが、それでも生きていることは何事にも変えがたい。
「っ、……恩返し、するなら、今……だよね……!」
 生かしてくれたのはロッソ、そしてこのクリムゾウェストだ。
 この地に生まれたわけでもない雪子だが、この地にいる以上手を取り合わなければいけないことだけはわかる。
 彼女は勢いよく立ち上がると、チラシに書かれている文字を確認した。
「……集会場所は……うん。ここなら、すぐだね……行こう……!」
 雪子はそう言うと一気に駆け出した。

●仮設演説会場
「移住反対ー!」
「外の奴なんか信用できるかー!」
「化け物に懐柔された軍はいらないぞー!!」
 口々にあがる非難の声に、リーゼロッテは予想以上の反応を見た気がした。
「こんなにも反対の方が……」
 外への移住を良く思わない人がいるのは知っている。それは思想を抱く人だからこそありえること。
 だが目の前の光景はそれだけで起こっているものだろうか。
「みなさん聞いてください! 私たちはみなさんを危険な目にあわせるために移住をお願いするわけではありません! これはみなさんの安全のためで――」
「なんだお前はッ!!」
「外の人間の言葉に惑わされるなー!」
「リーゼロッテさん、危ない!」
「!?」
 飛んできた空き缶に反応が間に合わない。
 リーゼロッテは咄嗟に腕で防御を敷く。だがその前に1人の少女が飛び出してくる。
 黒い髪の、小柄で可愛らしい少女。
 彼女は背中にスピーカーを背負ってやってくると、額に空き缶を受けながら大声で叫んだ。
「っ、ぅ……みんな、聞いてぇーー!」
 スピーカー越しに大音量で響いた声に、会場にいた全員が声を噤む。
 そして少女に目を向けると、口々に何かを騒ぎ始めた。
「お、おい、あれって」
「マジかよ! なんであんな」
 ザワツク会場に少女は凛とした姿勢で微笑むと、後ろに立つリーゼロッテを振り返った。
「……お怪我、ありません、か?」
「あ、はい……ですがあなたが……」
「私は、大丈夫、です。だって……魔法少女、ですから……!」
 グッと拳を握る少女は本気そのものだ。
 彼女はリーゼロッテから大衆を振り返ると、マイクを片手に叫ぶ。
「みんなの気持ちはわかる! でもこんなのだめだよ!! この人たちが本当に悪なの? みんな本気でそう思ってるの?」
 さっきとは打って変わって滑舌がよくなる少女。そんな彼女に目を瞬いていると、リーゼロッテを庇うように前に出た軍人が囁いた。
「転移前に地球圏内コロニーで流行っていたゲームのキャラクターです。愛と歌で悪を成敗する魔法少女『シンガースノウ』。人気急上昇中だったのですがあの騒ぎで完全に消えたゲームです。あの様子だと彼女はよほどのファンだったのでしょうね……」
 コソコソと耳打ちされる言葉。それを耳にしながらリーゼロッテは改めて少女を見た。
 真っ赤なドレス風のフリルワンピを着た彼女は、今も必死に大衆へ向けて語りかけている。
 その熱心な様子は単純に作品のファンだからというわけではなさそうだ。
 そう、彼女の熱心な姿はキャラクターの持つ平和と愛を彼女自身も持っている。そんな気にさせてくれる。
「……あの、申し訳ありませんが人を集めてきてくれませんか。それと、これを」
 リーゼロッテはそう言うと一枚の紙を手渡し、自身を防御する軍人の脇を通り過ぎて少女の隣に立った。
「人は時に恐怖心から判断を誤ることがあります。それを正すには正常な判断を下せる精神状態に置くというのが大切です」
「……お姉さん?」
「あなたの武器は愛と歌なのですよね? でしたらそれを使ってみなさんの心を正常に持っていきましょう。そして正常な精神状態になったところで改めて話を聞いてもらうんです」
 そのための準備はこちらでします。
 そう微笑むと、リーゼロッテは恥を掻き捨てて彼女の持つマイクを受け取った。そしてーー

 ぼえ~ぼええ~ほえ~~♪

「「「?!?!」」」
「ぅ……お姉さん……それ、歌……?」
 思わず耳を塞いだ少女に、リーゼロッテは歌いながら頬を染めて頷く。
 まさかここまで強烈な音痴がこの世にいようとは!?
 少女は痛む耳を押さえると、苦しい環境の中で大衆を見た。
 幸いなのかどうなのか。とりあえず大衆はリーゼロッテの歌声に悶絶必須で抗議どころではないらしい。このまま歌い続けてもらえば時間稼ぎは可能だろう。
(……何の、準備かわからない、けど……外の人が、言うんだ、もん……大丈夫……、大丈夫、だよね……っ)
 少女は懐にしまったチラシに手を添えると、祈る気持ちで耳を塞ぎ、リーゼロッテの準備が整うのを待つことにした。

リプレイ本文

●音痴の会場に到着☆
 サルヴァトーレ・ロッソの一角に響くズレた音。
 これに天竜寺 詩(ka0396)はドン引きして足を止めた。
「うわぁ」
 会場内は耳を塞ぐ人や、蹲る人などさまざま。ハッキリ言って地獄絵図に近いのだが、発生源を辿るとなんとも言えなくなる。
(ブリちゃんには言わないでおこう)
 音量の発信源であるリーゼロッテを見ながら心の中で手を合わせる詩。
 彼女は「武士の情け」と零すと、隣で呟くバレル・ブラウリィ(ka1228)を見た。
「……酷いな」
 まあ、そう言った感想が漏れるのが一般的だろう。と言うか、それで納めてくれるならまだ優しい方か。
 バレルは思案げに目を細めると、のんびり耳を塞いで遠くを見た。
「この歌ゆえの沈黙……とでも言うのか。一先ず騒ぎは終結しているようだが……」
「歌に関しては……なんて表現したら良いのかな。とりあえず、バレルの言うように騒ぎは収まってるみたいだけど」
「まさに斬新鮮烈な歌、だね!」
 バッと伸びてきた手に七夜・真夕(ka3977)が振り返る。
 その視線の先にあったのはイルム=ローレ・エーレ(ka5113)だ。
 彼女は感慨深げに息を吐くと、ステージ上で蹲る赤い衣装の少女を見て「あぁ」と声を零した。
「愛と歌で世界を救う……なんて素敵なんだっ。よき隣人たちのために、是非とも協力させて欲しいな!」
 初めて依頼内容を聞いたときから賛同していた想い。それがここに来てより一層強くなっているようだ。
 胸に手を当て、空いた手で空を仰ぐイルムにリュー・グランフェスト(ka2419)も同意する。
「ああ! 俺もそのつもりで来てるし、みんなだってそうだよな!!」
 そう。ここにいる皆は依頼主であるリーゼロッテの想いに同調した。
 リアルブルーの民として、クリムゾンウェストの民として。集会を開いた人たちの気持ちは理解できる。だからこそ――
「そうね、相手が話を聞く状況にしない事には何も始まらないわ。旋律が、各々の荒んだ心に染み渡る癒しの風になると言うなら、それにこしたことはないもの」
 頷く陶 凛華(ka5636)はクリムゾンウェストの出身、しかもエルフだ。
 それでも未知の世界に不安を抱く者の気持ちはわかる。
(誰もがみんな、見知らぬ土地で営む生活には不安にだってなるわ……でも)
 そればかりではないはず。それを思い出して欲しい。
 そう想いを込めて手にした竪琴を握り締める。と、そこにバレルの不思議そうな声が届いた。
「それにしても、珍しい楽器もあったもんだな」
 彼の言う楽器とは、ここにいるハンターが手にしている楽器を指す。
 依頼主であるリーゼロッテがマテリアル花火の余興として用意した物で、マテリアルで演奏するができる魔導機械楽器らしい。
「リーゼロッテさんのお手製……温かくて、優しい楽器……」
 歌は手にある楽器を見詰めて零すと穏やかな笑みを零す。
「不思議な楽器ね……作った人の想いが込められてるみたい」
 真夕が聞いた話では、どんな音痴でも高水準の音楽を奏でることが出来る楽器なのだと言う。
「きっと彼女の願いが込められているのだろうね」
 音楽をまともに奏でられない自分と同じ人にも音楽を楽しんで欲しい。
 そう、これはリーゼロッテの願いで作られた楽器。それをこの場で使うのはとても正しい使い道のように思える。
「ところで、それはなんて言う楽器なのかしら?」
「小鼓って言うんだよ。せっかくだからあまり練習したことない楽器にしてみたんだ」
 言って詩が見せた楽器は、雅楽では曲の進行を司る役目がある。
「緒の調節も本来なら私にはまだ無理だけど、リーゼロッテさんの作った楽器なら大丈夫……花火も凄かったし」
「信用してるんだね」
 詩は完全にリーゼロッテを信用しているようだ。
 ならば自分も信用しよう。
 頷く詩に微笑んで、真夕は携えた楽器を胸に抱く。その時だ。
「あれって……シンガースノウ?」
「やはり、彼女がシンガースノウですか」
 リーゼロッテの隣にいるのだから間違いないと思ったが、やはり。
 声を零すイルムに詩は言う。
「私は家が厳しくてゲームはやった事なくて友達にグッズとか見せてもらっただけだけど、どう見ても本物だよ!」
「なら早く行こう! リーゼロッテの声が枯れ始めてる!」
「そうだね」「行きましょう」
 リューの声に駆け出した面々。こうして奇妙なステージは開幕を迎えた――


●まずは静まりなさい!
(もう、限界……)
 リーゼロッテは喉に感じた痛みに眉を寄せて俯いた。
 ハンターに依頼を投げてからどれだけの時が過ぎただろう。元々歌を歌えないリーゼロッテはレパートリーも少ない。
 今は幼いころに育ての親である元錬魔院長が教えてくれた歌をエンドレスで歌い続けるだけだ。
「あ~~る~~はれた~~~~♪」
「リーゼロッテさん!」
 ぼえ~、っと広がる音痴なステージの袖に到着した詩は、自らを通り過ぎた真夕に願いを託して目を閉じた。

 シャン、シャン……!

 会場に突然響いた鈴の音。
 清浄にして、気高く響く音色に、会場が一気に静まり返る。
「この音……」
 思わず歌うことを止めたリーゼロッテも呆けて辺りを見回している。
 そこに現れたのは巫女の上衣を羽織る真夕だ。
 彼女はリーゼロッテに微笑みかけると、口の形で「おつかれさま」を紡いで袖を反す。
 ゆっくりと、淑やかに。けれど凛とした雰囲気を放ちながら舞うのはリアルブルーの神楽舞だ。
「ワォ! 素敵な舞だね!」
 声を上げたイルムに次いで、会場内が徐々に正気を取り戻してゆく。
 それを耳の片隅で受け止めながら、真夕はリーゼロッテの元に到着した。
「――後は任せて」
 背を押してステージ袖に促しながら、鈴を鳴らして舞い続ける。
 いつまでも静寂の舞が続くとは思えない。それでも彼女が下がりきるまでは舞い続けてみせる。
 この強さにリューが拳を握る。
「うん、いい感じだ!」
「ええ……でも、長くは持たないわ」
「うん。凛華君の言うとおりだ。ここからは手はず通りに行動しよう」
 行けそうかい? そう振り返るイルムに、バレルが頷く。
「出番の管理は任せてくれ」
 バレルは演奏に参加しない。その証拠に彼は楽器を持っていなかった。
 だが裏で支える役目と言うのも時には必要だ。
「任せたよ。では、魔法少女にはなれないけれど、蒼紅を繋ぐ騎士となろうっ」
 手を差し伸べて上げた声。これに全員の手と声が重なる。
「「「「おーーっ!!」」」」

●お待ちかねのステージだよ☆
「皆、お待たせ!」
 ステージに飛び出したバンドメンバーの1人。イルムはステージ上にいるシンガースノウの前に出ると、マイクを片手に大きく手を振って声を上げた。
「なかなかに独創的な声音の次は、リアルブルーとクリムゾンウェストのハーモニーをお聞かせしよう!」
 くるりと回転して見せた一礼。これに会場から困惑の声が漏れ出す。
「あなたたち……」
「俺はリュー。リュー・グランフェストだ。よろしくな」
「私は七夜・真夕。よろしくね」
 左右から差し伸べられたのはリアルブルーとクリムゾンウェストの手だ。
 シンガースノウはその手を交互に見比べると、少しだけ笑みを零して彼らの手を取った。
「これがお姉さんの言っていた準備なんだね……これが、外の世界で戦ってるハンター……」
「そう。私たちはハンターだよ。お待たせ♪ まさか魔法少女に協力できるなんて思わなかった!」
「あなた、シンガースノウを知ってるの?」
「遊んだことはないけどね」
 ニコッと笑った詩の手が額に添えられると「あ」と言う声が漏れた。
 徐々に消えてゆく傷。初めて感じるマテリアルの癒しに鳥肌が立つ。
(……嫌な感じは、しない……これが……クリムゾンウェストの……)
「立てますか?」
 後ろから支えるように伸びた手は凛華のものだ。
 彼女はシンガースノウをゆっくり立ち上がらせると、彼女の手を包むようにして囁いた。
「これからあなたの曲を弾きます……歌ってください」
「え、でも……」
「大丈夫だって! 俺たちにはこれがあるからさ!」
 見せた楽器に目を瞬く。
 どう見ても普通の楽器だ。それなのに彼らは自信満々にリアルブルーのゲームの曲を奏でると言う。
 その意志の強い瞳にシンガースノウの目が落ちた。
「まずは皆も知っている曲だよ! さあ、声を揃えて呼ぼう! 魔法少女の名前を! せーのっ!」
 イルムの声と同時に上がった前奏に「わぁ!」と声が上がった。
 さっきまで疑いの眼差しでステージを見ていた人たちの輝きが変わった瞬間だ。
「うーん、声が小さな! もう1度――せーのっ!!」
「シンガースノウー!」「シンガースノウ!!」
 歓声に種類の違う楽器たちが音色を響かせる。
「さあ、歌おう!」
 いつの間に着替えたのだろう。
 制服姿の真夕がシンガースノウの背を押す。
 良く見ればステージ上でリュートを奏でるリューも、小鼓を奏でる詩も、竪琴を奏でる凛華も、そしてフルートに唇を添えたイルムも。皆がシンガースノウの背中を押している。
『不安だってのは……わかるな』
 リューは依頼を受けた時、そう言って寂しそうに笑った。
 見知らぬ土地に来て、帰れる日を待っていたにも関わらず、いきなり外に出ろと言われたら不安になるのは当然だろう。
「けど、俺達は同じ人間なんだ。つきつめれば蒼も紅も関係ない。それは、俺が一番良く知っている」
「リュー……」
 リューはリアルブルーとクリムゾンウェストの混血だ。故に苦しむこともあっただろう。
 それでも、そんな中でも知り合った仲間がいる。
 リューは戸惑うシンガースノウを見てから、ここに来て知り合った真夕を振り返る。
「俺も歌いたい! 頼む!」
「うん!」
 前奏の雰囲気を崩さないように、リューのリュートと真夕の鈴が別の音を混ぜる。
 それに合わせて凛華や詩が音を変えると、彼は少しだけ頬を高潮させて音を紡ぎだした。
「蒼とか、紅とか、関係ないぜ! 蒼の母と紅の父、この両親から生まれた俺には二つの世界はどっちも家族! だからさ大変だとはわかるけど、紅で生まれたこの俺に、蒼のカッコいいとこ見せてくれ! そしたら誓う! この剣にかけて、護ってみせるッ!」
 激しくなるリュートの音にシンガースノウが瞼を閉じた。
(彼だけじゃない……まだ想いが、重なる……優しい……この想いは……)
 ハッと目を開けて振り返った先にいたのは詩。
 彼女はオーラで作った天使の輪と羽根を携えて楽を奏で続ける。
 知らない土地は怖いだろう、と。
 怪物のいる土地など怖いだろう、と。
 でも――
「……優しい人や精霊もたくさんいるの。だから、怖がらないで」
「そう。ここは安寧を求め、互いを思いやる心を持った、血の通った人々が済む世界なの……不安にならないで……大丈夫」
 詩の想いに凛華の想いが重なり、虹色の光がステージから飛び上がる。
 それを見たバレルが思わず声を上げた。
「怒りが……戸惑いが……全ての負の感情が、期待に変わっていく。これが……これは、魔導機械の効果なのか?」
「いえ、これは彼らの力です……彼らのマテリアルが、人のマテリアルに直接語りかけているんです」
 リーゼロッテはそう言って微笑むと、ステージ上で歌い続ける彼らをじっと見続けた。

●みんな、聞いてー!
「今この瞬間、ボクたちの心は確かに一つになった。世界の違いは確かにある。だけど、国を、言葉を、人種の壁を越えて手を取り合えた君たちだ。世界を超えたボクたちの手も取ってくれると嬉しいな!」
 大きく手を広げ、額に汗を浮かべて語りかけるイルムに会場全体が静まり返る。
 そこに凛華が進み出る。
「私は、こちらの世界の人間だから、あなた方の不安の全てを判るとは言えないかもしれない……それでも、あなた方が見知らぬ土地に根差す事に不安を感じている事ぐらいは分かるつもりよ。でも、不安ばかりじゃないはずよ……必ず新天地への希望があるはずよ、それを思い出して!」
「うん、そうだね。私もいきなりこちらに召還されてきた人間。リアルブルーに愛着はあるし、皆の気持ちもわからないじゃない。でも、この世界の人も好き」
 当然、化け物は怖いけど。と声を沈ませる真夕にどよめきが広がる。
「でもみんな今日を生きる為に頑張ってる! 化け物は怖いけどそれでも必死に抗ってるんだよ! だから力を合わせて生きたい!」
「だな! みんなが不安だって言うなら、俺が二つの世界の架け橋になる! だからさ、もう少し前に進もう!!」
「リューは欲張りだね。でも私もだよ? 私は我侭だから、何一つ譲りたくない。だから、だからぜんぶぜーんぶ護って見せるわ!」
 外に出たらハンターが守る。
 そう宣言する彼女に動揺が広がる。と、そこに新たなメロディーが流れ始めた。
「この曲って……」

 怯えないで 本当は皆誰だって
 愛も勇気も優しさも 心の奥に持ってるの
 どうかお願い その足を
 一歩前に踏み出して この世界の全てが今 貴方の事を待ってるから

 聞こえて来た歌声は詩のものだ。
 不安な気持ちを溶かすように、みなの想いを届けようと響く歌。楽器から流れるマテリアルに乗って、普通では届ききらない感情が会場全体に広がってゆく。
 それを見た他のメンバーも楽器を奏で始める。
 今口にした言葉を音に。今想っていることを音に。どうか怖がらないで欲しい。
 私たちを信じて欲しい――と。

●みんなー! ありがとうー!!
「みなさん、ありがとうございました……!」
 頭を下げたシンガースノウに、後片付けの準備に入っていたバレルが動きを止める。
 それに次いで真夕と詩が動きを止めると、気になっていたことを聞いた。
「あの……本当に本物のシンガースノウですか?」
「声がすごくそっくり、って会場から聞こえたんだけど」
「ああ……それ、ですか……。えっと、実は――」
 ええ!? と聞こえる驚きの声を片隅に、イルムはフルートを拭きながら呟く。
「リーゼロッテ君。今回の件もだけれど暴動も起きているそうだね。種は蒔かれていたにせよ、少し過激すぎると思うんだ……歪虚が扇動していた可能性も考えておいた方がいいよ」
 今までの傾向を考えるとなくはないだろう。
 そう語るイルムに、リーゼロッテは少し視線を落として頷きを返した。

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MVP一覧

  • 征夷大将軍の正室
    天竜寺 詩ka0396
  • 巡るスズラン
    リュー・グランフェストka2419
  • 轟雷の巫女
    七夜・真夕ka3977

重体一覧

参加者一覧

  • 征夷大将軍の正室
    天竜寺 詩(ka0396
    人間(蒼)|18才|女性|聖導士
  • 堕落者の暗躍を阻止した者
    バレル・ブラウリィ(ka1228
    人間(蒼)|21才|男性|闘狩人
  • 巡るスズラン
    リュー・グランフェスト(ka2419
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • 轟雷の巫女
    七夜・真夕(ka3977
    人間(蒼)|17才|女性|魔術師
  • ブリリアント♪
    秋桜(ka4378
    人間(蒼)|17才|女性|魔術師
  • 凛然奏する蒼礼の色
    イルム=ローレ・エーレ(ka5113
    人間(紅)|24才|女性|舞刀士
  • 厳かなる鳴弦
    陶 凛華(ka5636
    エルフ|25才|女性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/10/04 22:39:59
アイコン 相談卓だよ
天竜寺 詩(ka0396
人間(リアルブルー)|18才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2015/10/06 01:11:19