要塞都市であった見合い騒動

マスター:四月朔日さくら

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/10/11 07:30
完成日
2015/10/18 22:17

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 開拓地ホープ。
 希望の名を持つその場所は、歪虚との大規模な戦闘で大打撃をおったが、いまは随分と復興が進んでいる。
 それを指示してくれているのは白龍の巫女でガーディナリーダーであるリムネラ(kz0018)、そして開拓地に駐留して何かと手をこまねいてくれる帝国の軍属医ゲルタ・シュヴァイツァー(kz0051)のふたりの力が大きいと言って過言ではないであろう。
 そんなゲルタは相変わらず我が道を行くタイプであるが、さてさて。


「――は?」
 素っ頓狂な声を上げたのは久しぶりにノアーラ・クンタウに戻ってきていたゲルタ本人だ。侍女のマチルダ――一番信頼できるハンナはリゼリオに今いるので、しぜんマチルダがそば付きになっていた――が、持ってきた書簡。
「ええ、ですから本家のほうでゲルタ様に見合いの話が出ていらっしゃるとかで……釣書まで送られてきていますが」
 マチルダも優秀だが、どちらかというとお家の為、と言う雰囲気の強い侍女である。正直、ゲルタとしては苦手なタイプだ。
「その見合い話、破棄できないの?」
「出来なくはないですが、お父上の面目がつぶれてしまうでしょうね」
 父、と聞いてゲルタはげっそりした顔になる。折角辺境まできたというのに、ここでまで父の言うなりでは意味が無い。
 ただ、彼女の実家は一応それなりの名門だ。ちゃんとした理由がないと、理解して貰えないだろう。それなら……と、ゲルタはふとひらめいた。
「……彼氏作ればいいんだ」
「は?」
「だからさ、ハンターに、それっぽく振る舞ってもらうの。まだ結婚してとか、そんなこと出来ないから、ホープもまだまだの状態なんだし!」
「しかしそれでは、ハンターの方にご迷惑が掛かるのでは」
「そもそもあたしを政治の道具にするって言う方がおかしいのよ……!」
 自分は自由でありたいのに。
「兎に角! その見合い話を断る口実の為にも、ハンターに彼氏役をお願いしたいの! いいわね!」
 ゲルタの剣幕に気圧されて、マチルダは小さく頷くほか出来なかった。

リプレイ本文


 ――ノアーラ・クンタウへ訪れたハンターたちは、まず互いに話し合う。
「いやはや……なにぶん療養中の身なので、たいしたことはできないのが口惜しいのですが」
 申し訳なさそうに、身体のあちこちに巻かれた包帯を見せているのは真田 天斗(ka0014)。先日の歪虚との戦いで手ひどい傷を負っているが、言葉ははっきりとしており、正義感の強さが垣間見える。
「でも……お見合いねぇ。逢ってみないままで断ってしまうのも、なんだかゲルタさんらしいと言うか、らしくないというか」
 くすくす笑みを浮かべているのは、これまでにもゲルタ、そして彼女が何かと諸々任されることの多い開拓地ホープとも縁深いエイル・メヌエット(ka2807)。その横ではエルバッハ・リオン(ka2434)が、
「そういえば私も、ゲルタさんと会うのは確か二回目ですね。以前あったときは辺境にある故郷の話をするという依頼の時だったと思いますが」
 そう言って、その時のことを思い出そうとする。
 基本的にゲルタという人間は、医師ではあるものの全体的に学者肌で、好奇心旺盛なタイプである。確かにあっさり家庭に収まるというタイプではないが――
「それでも、ゲルタさんの趣味や意見を尊重してくれる方かも知れないのにね」
 ハンターとしても長く生活しているエイルとしては、そう言う人物を折々に見かけるのだろう。そんなことを思いながら、ゲルタの待っているという部屋へと向かった。


「ゲルタさん、はじめまして」
 ハンターになってまだ日も浅いミノル・ユスティース(ka5633)が、深々と礼をする。やや緊張気味なのは、ここに集まった五人の中で『ゲルタの彼氏』を演じるからだ。緊張するなと言う方が無理な話である。
 同様にまだまだ駆け出しハンターといって差し支えのないユピテール・オーク(ka5658)は、しかし根っからの姉御肌と言うこともあってか、
(これからが大事って時に親の都合で縁談なんて、そりゃ戸惑うにきまってるだろうさ。いまの状況で幸せになれって言われても、ねぇ……本人の希望に添わないんじゃ、『良縁』とは言えないし)
 そんなことを心中で思いながら、ぺこりと挨拶をする。
 その一方でゲルタと面識のある面々は
「久しぶりです」
 とにっこり微笑んだ。
「私はいまこんな状態なのでたいしたことはできないのですが……」
 申し訳なさそうに天斗が言うと、ゲルタは否とばかりに首を横に振った。
「むしろそんな身体で来てくれたのは申し訳ないくらいね。皆さんの気持ちが本当にありがたいのよ。何しろまだ辺境のことも知りたいことは山のようにあるし、ホープのほうもまだまだ拠点とするには時期尚早だもの」
 ゲルタはため息交じりにそう言って、苦笑した。無論あそこは部族だけのものではなく、全てのハンターたちが使えるように、と言うもくろみで各地の権力者たちの力添えもある状態だ。ゲルタだけのものではない――が、彼女があの場所にいることが多い為、気づけば半ば責任者のような立場に立つことも多いのが現状。辺境に帝国式の医療を届けることで助かる命もあると信じている。
 それが医師としての役目でもあるからだ。
「でも、案外逢ってみたらいい人かも知れないわよ?」
 エイルはそう言ってみるが、その一方でユピテールも言う。
「でもま、本人の意思を尊重することも大事だからね」
 二人の意見はもっともな話だ。ゲルタも頷きながら、くすりと笑う。
「まあ、でも確かに、社会勉強のの為に外の世界に出させて貰っているという身の上なのは私も同様ですから、ゲルタさんのお気持ちも分からなくはないです。それに、直接関わったことはないですが、被災者達の為に精力的に活動している姿勢は、私にとっては十分魅力的ですから」
 ミノルがそう言って柔らかく微笑むと、ゲルタは少しばかり顔を赤くしてうつむいた。こういう風にまっすぐに褒めてくれる人がなかなかいないこともあって、褒め慣れていないらしい。
「しかしミノルさんの言うのももっともな話ですよ。伝え聞く話ではかなり頑張っておられるとか」
 天斗までそんなことを言うものだから、ゲルタはすっかり顔を染めてしまっている。
「……あらあら、ゲルタ様がすっかり照れておしまいの様子」
 そば付き侍女のマチルダが、クスクスと笑いながらハンターたちに茶を振る舞う。さらに壁沿いには鼻にそばかすのある少女と三つ編みの少女が、マチルダと同じお仕着せ姿で控えている。おそらくあれがニーナとリリアであろう。
「ああ、そうそう。侍女の紹介をしてなかった」
 今現在のそば付きである背の高いマチルダ、ハンナという侍女の妹でそばかすのニーナ、そしてゲルタのもと家庭教師のの娘だという三つ編みのリリア。
 三人は紹介されるとぺこりと頭を下げる。
「あー……うん。ちょっと三人には席を外して貰えるかな」
 ユピテールがそう言うと、ハンターたちは目配せをする。
 さあ、作戦開始だ。


「一応確認するけど、マチルダしか今回の作戦は知らないね? 侍女付きでここにいるってことはそれなりの身分なんだろうけど」
「ええ、そこは気を付けてる」
 ゲルタがユピテールに問われて答えると、エルバッハが満を持したかのように尋ねた。
「不躾ですが質問よろしいですか。……今回の件で、侍女達のなかに監視役のような方がいると思いますか?」
 その質問に、ゲルタは小さく頷く。
「さっきの三人のなかに、少なからず実家に報告をするものはいるでしょうね。家への忠義かも知れないけれど、あたしとしては困っちゃうかな」
「……わかりました。それなら、そちらの監視を主にしたいと思います」
 エルバッハは小さく礼をする。天斗は申し訳なさそうに、
「私はこの身体ではろくに調査もできませんからね。ゲルタさんに看病してもらって、折を見て侍女にも話を聞かせてもらうとします」
 そう言いながら苦笑を浮かべた。ここに来るのも大変だっただろうに、そう言う気遣いもして貰えるのはありがたい話だ。
「で、俺が彼氏役担当です。一応、そこだけは相談してきましたから……よろしくお願いします」
 ミノルが柔らかく微笑む。
「でも、そうですね。『今すぐは結婚するつもりがない』と言うより、『結婚して身を固める気持ち自体はあるが、時間が必要なだけである』ということを示した方が、ご両親も納得がいかれるのではと思います」
 確かにそれはもっともな話。周囲も似たような認識だ。
「そういえば、ファナはここにはいないのね。うちの飼い犬がまた逢いたがっていたのだけれど」
「あの子にはもっと広い世界をみて貰いたいからね」
 エイルが少し寂しそうに言うと、
「リゼリオにいるからそのうち逢えるよ」
 ゲルタもようやく柔らかな笑みを浮かべた。
「――そうね。でもとりあえず、はいっ」
 エイルはバサリとなにかをゲルタに突きつける。それはきれいなワンピースだった。
「恋人と一緒の時は、女性らしい格好をしていた方が説得力もあるでしょう?」
 正論である。とはいえあまり女性らしい服装に身を包む機会も少なかったゲルタは照れくさそうに慌てて着替えに向かった。


 着替えを終えたゲルタは、随分いつもと印象が違った。
 普段は手入れも適当な髪や肌もセッティングして、なるほど確かに名家の令嬢とわかる装いである。しかしその上には白衣をゆるく羽織っていた。彼女のアイデンティティであると言うこともあるのだろう、手放せないということらしい。
 エイルも白衣姿でそんな彼女を出迎えた。
「ここでもホープ関連の資料はあるのよね? それをアピールするのも大事ね。親御さんじゃないにしろ、誰かが今のゲルタさんの様子を見に来るでしょうし」
 たしかに、手紙一枚で返事というわけにも行くまい。聞けば、ゲルタの家の家令が数日後に様子見に来るのだという。
 つまり勝負はその日までと言うことだ。

「しかし、今回は面白いと言えば面白いですが、役になりきる楽しみがないのは残念です」
 天斗がそう言いながらゲルタの治療を受けている。急ごしらえの野戦病院なども経験してきたゲルタにしてみればこの位は朝飯前だ。今は要塞都市の療養所で治療を受けつつ、同室の患者にもゲルタの印象を聞いてみる。
「ゲルタさんは荒っぽい治療もあるけど、腕は確かだね。一応帝国の有名な医者の家の出らしいよ」
「なるほど。要塞都市も、いい人材に恵まれたのですね」
「もともと変わりもんの先生だからね。軍人だけじゃなく、辺境部族の治療も厭うことなく引き受けるし、最近はホープにいることのほうが長いくらいだし」
 患者達の言葉は真実味が強い。こんなことで偽りを言ってもどうしようもないからだろうが、逆に歯に衣着せぬ言葉を聞くことができる。そう言う言葉を聞く方が今回は大切だろう。


 エルバッハは侍女達の様子を確認して回っていた。もし何か問われても、道に迷ったなど、言い訳はいくらでもできる。
 三人の侍女達はそれぞれゲルタの仕事の手伝いをしていたが、こまめにメモを取っているのはニーナとリリアだ。仕事にまだ慣れていないらしく、作業メモを取っているらしい。
 ――ただ、ニーナはそのメモを何度も読み返すところを目撃したが、リリアについてはメモを取るだけで読み返すことはほとんどしていなかった。
(……報告をする価値はありそうです)
 エルバッハは小さく頷く。

「でも、ゲルタさんもなかなかすごいと思いますよ。こういう依頼をさっくりとだせてしまうんですから」
 ミノルは目を細める。もし誰が来てもおかしくないように、ノーネクタイのスーツ姿でいるが、なかなか様になっている。卑しい身分ではないのが一目瞭然だ。
「そうだね、肝っ玉の座ったお医者さんだ。……ま、戦場ではそういう人が重宝されるんだろうけど、さ」
 ユピテールもゆるく頷いた。
「まあ、さっきエルバッハから来た情報を考えると、怪しそうな侍女はずいぶん絞られたからね。探りを入れて話しに行こうと思うよ」
 そう言ってすっと立ち上がる。そして、ミノルに艶然と微笑んだ。
「あんた、いい笑顔してるよ。自信もちな」


「ええと……ハンターさんたちは、一体私にどんな……」
 お仕着せ姿の侍女を囲んで、女ハンターたちはにっこりと微笑む。……こわいくらいに。
「うーんとね。実家の進める好条件が、本人にとっての幸せとは限らないしさ。心配する気持ちも分かるけど、本人の幸せを思うのなら、やっぱり自分で好きな人を見つけなきゃだめだよね」
 ユピテールがそう言うと、エルバッハも、そしてエイルもうんうんと頷く。
「こんなことを言うのは、貴方がもしかしたら実家に実情を伝えてしまう可能性があるからです。貴方はゲルタさんのここまで辺境で培ってきた実績を分かっていますか? 辺境に作られつつある拠点・ホープで医師として頑張っていたり、辺境ユニオンや各国の考えを踏まえた上で、さらにあの土地から広げることのできるものはないかを模索しています。ゲルタさんがホープを離れることになれば、この地の医療体制にも支障が出るでしょう……その悪評は、お家にとってもデメリットなのではないですか?」
 エルバッハもそう言ってじっと侍女の顔を見やる。強気そうに見えた侍女だが、今はまるで袋のネズミだ。
「それに。私はゲルタさんとは幾度か救命医療に携わりました。人類の希望の地は、彼女の尽力で保たれていると言って過言ではありません。患者や地元の人からも慕われていますし、帝国にも辺境にも十分働きを認められる、素晴らしい活動をされています」
 一緒に仕事をしたことのある立場として、エイルもそう口添えする。
「私たちハンターにも、そしてこの辺境にも、彼女の存在はなくてはならないんです。そこをどうか、理解してください。――お願いします」
 説得はとても切実。しかし、事実である。ゲルタの存在がなければ、おそらくホープという存在はもっとうらびれたものになっていただろう。一時は壊滅寸前だったのを立て直せたのも、そこに彼女がいた、と言う理由もきっと一つにはあるのだ。
「……皆様の仰いたいことは分かりました……」
 三つ編みの侍女――リリアは小さく頷いた。これで彼女が密偵だとしても、悪し様なことは告げないだろう。
「私はお嬢様の幸せを、最優先にしたいです」
 姉と慕う相手の幸せ。たしかにそれは願ってもないことだが、それが結婚だけとは限らないのだと、このハンターたちは告げている。
 そしてそれをねじ曲げてまで、リリアもゲルタに無理強いをしたくなかったのだ。


 そして数日後――
 シュヴァイツァー家の家令が、要塞都市を訪れた。
「お嬢様、お久しぶりです。随分と女らしゅうなられました」
 エイルの用意してくれたワンピースはシンプルなデザインだが、よく似合っている。
「ところで話は届いていると思いますが、実は――」
「それなんだけれど」
 男の言葉を遮り、ゲルタはにっこり笑った。
「紹介する人がいるの。ミノルさん」
 呼ばれて、ミノルはわずかに緊張した面持ちで挨拶をする。フリとはいえ、恋人の家族――厳密には代理人だが――似合うのは、やはり緊張しない方がおかしい。
「おや、これはなかなかしっかりした若者ですな。この方は……?」
「ゲルタさんとは、結婚を前提としたお付き合いをさせ頂いております」
 そう言いきると、そっと笑みを浮かべる。
「彼女はこの地にとって復興を担うかけがえのない存在ですし、私も家を継ぐにあたっての修行中の身。お互いすぐに身を固めるというわけにはいきません……ですので、今しばらく見守っていては頂けませんでしょうか?」
 真摯な視線、そして口調。
 それを見て――家令の男性は口元をほころばせた。
「いやはや、お嬢様には敵いませんな。この話はそれなら、こちらからもそうお伝えしておきます。……いいえ、おそらくもうその旨は伝わっております。お嬢様、幸せを見つけて下さいませとの旦那様からのお言葉です」
 ゲルタの真摯な行動、そしておそらく――リリアの報告の効果なのだろう。ゲルタも、そしてミノルもぽかんとしている。そのうち家令は満足そうに部屋をあとにしていた。

「――よかった……」
 一部始終を近くの部屋から確認していた仲間たち――天斗も容態が大分良くなっていたので病院を抜け出していた――が二人に握手を交わす。作戦の成功に、満足といった感じだ。
「ミノルさんも、ありがとう。今度は、こんな面倒をかけないようにするね」
 するとミノルは小さく首を横に振る。
「これからのことは分かりませんが――」
 少なくとも私は好意を持っていますよ?
 ゲルタの耳元で囁かれた言葉。
 一瞬きょとんとしたあと、真っ赤になって青年の顔を見つめ返すばかりだった。

 さあ、これからどうなるだろう?
 

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MVP一覧

  • ゲルタの彼氏?
    ミノル・ユスティースka5633

重体一覧

参加者一覧

  • Pクレープ店員
    真田 天斗(ka0014
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 愛にすべてを
    エイル・メヌエット(ka2807
    人間(紅)|23才|女性|聖導士
  • ゲルタの彼氏?
    ミノル・ユスティース(ka5633
    人間(紅)|25才|男性|闘狩人
  • 蠱惑的な肉体
    ユピテール・オーク(ka5658
    人間(紅)|25才|女性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/10/10 19:48:10
アイコン 仕事の時間です
真田 天斗(ka0014
人間(リアルブルー)|20才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2015/10/10 23:15:13