• 幻森

【幻森】幻獣ヲ狩ル者

マスター:蒼かなた

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/10/20 22:00
完成日
2015/10/26 16:33

みんなの思い出

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オープニング

●幻森
 幻獣達が隠れ住む安息の地――幻獣の森。
 一時は歪虚から逃れて、平穏な生活が訪れると信じていた。

 だが、現実はあまりに無慈悲で残酷だ。
 白龍が消滅した結果、幻獣達を守っていた結界は綻び始める。
 そこへ忍び寄るは、幻獣のマテリアルを狙う影の群れ。

 その時、ハンター達は――。

●狩りをする魔人
 幻獣と呼ばれる生き物が住むと噂されていた幻獣の森。
 彼らは今でこそ幻獣の森の結界の中で隠れ住んでいるものの、個体としては人間以上のポテンシャルを持ちパワフルな者達も多い。
 しかし今、そんな幻獣達を震え上がらせる恐ろしい敵が彼らのことを狙っていた。
「急げ。早く逃げろ!」
 1匹の猫型幻獣の戦士がレイピアを振るいながら大声で叫ぶ。
 森の中で今、数匹の猫型幻獣達が走り続けていた。その顔は一様に険しく、怯えている者もいる。
 十数分前まで彼らは幻獣の森の外で食料の調達を行っていた。幻獣の森は広いが、多くの幻獣が住んでいることもあり食べ物には限りがある。それに加えてこれから訪れる冬に備えての貯えも必要だったのだ。
 最初は順調だった。皆で和気藹々と山菜やきのこを採っていたのだが、気付くと仲間が1匹見当たらなくなっていた。
 暫くすれば帰ってくるだろうと思っていたが、帰る間際になっても姿が見えない。そしてその時始めて、仲間がさらにもう1匹いないことに気付いた。
 猫型幻獣達はいなくなった仲間を探そうとしたが、そこで護衛として着いて来ていた一匹の戦士が今すぐ幻獣の森まで走れと言った。
 仲間達が戸惑う中で、猫型幻獣の戦士はレイピアを構えて殿を務める。
 幻獣の野生の勘か。果たしてそれは見事に的中していた。皆が走り出すと同時に、周囲の草むらから大きな狼が飛び出してきたのだ。それも1匹や2匹ではない。10匹以上の群れである。
 そしてすぐにこの狼達が野生の動物ではないことが分かった。その口は限界以上に大きく開き、吐く息は毒々しい紫色をしている。
 最初に狼に腕に噛み付かれた猫型幻獣は何とかその牙から逃れたが、再び走りだそうとしたところでその場で倒れ伏した。
 そうして仲間が1匹、また1匹と失われていく中で猫型幻獣達は何とか幻獣の森の入り口近くまで逃げてきた。
「よし、もう少しだ。急いで結界の中に――」
「うわああぁぁ!?」
 猫型幻獣の戦士が必死に仲間を逃がす中で、突然悲鳴が上がった。それは逃げていた猫型幻獣達の一番先頭を走る一匹が上げたものだった。
「どうした!?」
「足が、足に何かがぁ!」
 仲間が駆け寄るとそこには倒れ伏した猫型幻獣がいた。そしてその足には2本のギザギザの刃がガッチリと食い込んでいる。
「これは、しまった! 罠だ! 奴がいるぞ! ルプナートルだ!」
 その罠に見覚えのあった猫型幻獣が声を上げる。
 そしてルプナートルという言葉を聞いた途端、猫型幻獣達はパニックに陥った。
「逃げろ、逃げないと殺される!」
「待て、無闇に――」
 猫型幻獣の戦士が止めようとしたが、その猫型幻獣は聞く耳を持たずに走り出してしまう。
 そして、数メートル走ったところで逃げだした猫型幻獣の頭に矢が突き刺さった。その瞬間まで全くの無音で、気付いた時にはもうその猫型幻獣は地面へと倒れこんでいた。
「くそ、どこにいるんだっ。出てきて戦え! ルプナートル!」
 怯え竦む仲間達を庇いながら、猫型幻獣の戦士が咆えた。

 森の中、全ての状況を把握している男は静かに背負った矢筒に手を伸ばす。
 そして音もなく弓を構え、一言だけこう言った。
「さあ、狩りの時間だ」

●ハンター達の行動
「今、何か聞こえなかったか?」
 そう言いながらハンターのブレアは背中にあるグレートソードに手を伸ばした。
 幻獣の森の周辺調査の依頼を受けてやってきていた他のハンター達と共に周囲を見渡す。
 だが、何かが襲ってくる様子もなければ何か生き物が動く気配もない。気のせいか、とブレアは剣から手を離す。
「……ぁぁ!」
「おい、今のは聞こえたよな?」
 しかし安心したのも束の間。今度は小さいながらもしっかりと悲鳴らしき声が聞こえた。
 聞こえた声の小ささからして少し遠い。だが、相当不味い状況なのか断続的に悲鳴や怒声のような声が聞こえてくる。
「俺達はあくまで調査に来ただけなんだが……どうする?」
 ブレアは一度ハンター達へ視線を向けた。そして1人1人、視線を合わせた上で小さく笑う。
「まあ、決まってるよな」
 その言葉と共に、ブレアとハンター達は声のするほうへと走り出した。

リプレイ本文

●猫と狼とハンターと
 木々の間を縫い、ハンター達は声の聞こえてきた方向へと走った。
「あれか! って、何だあいつらは?」
 そして先頭を走るブレアが狼型歪虚に囲まれている一団を見つけた。
 ただ、その姿は想像していたものではなく。服を着てレイピアを携えた二足歩行する猫であった。
「もしや、あの方達も幻獣の一種なのでしょうか?」
 春陰(ka4989)はここが幻獣の森の傍だということを思い出して呟く。
「どちらにせよ、歪虚に襲われているとなれば助けなくては!」
 アクセル・ランパード(ka0448)は剣と盾を手にすると、それを打ち鳴らす。
「ほら! 敵はこっちにいますよ!」
 その音に数匹の狼が反応した。しかし、警戒するだけでハンター達へと襲い掛かろうとはしない。
「妙に冷静な。いや、これは機械的と言うべきか。随分と厳しく躾けられておるようじゃのぅ」
 狼達の動きの不自然さに星輝 Amhran(ka0724)は眉を顰める。恐らく命令された以外の行動は取らないよう躾けられているのだろう。
「こうなったら無理矢理介入するしかないな。数が厄介だが……とにかく、片付けるぞ」
 龍崎・カズマ(ka0178)は腕に装着した魔導銃の銃口を狼に向け発砲する。
 直接的に攻撃してくるのなら流石に反応するのか、狼はカズマの攻撃をひらりと避けると一度距離を取り茂みの中へと逃げた。
 それに合わせる様に、他の狼達も動きを変えてその場から突然姿を消していく。
「逃げた? どういうことだ……」
 野生の狼ならば多勢に無勢と逃げることは間々あるが、歪虚がそう簡単に逃げるとは思えない。釈然としない状況にカズマは警戒を解かずに周囲に目を配る。
「それで、君達は何者かな?」
 そこで初めて、二足歩行をする猫。彼らのうちの1匹がハンター達に声をかけてきた。ただ、手にしたレイピアをこちらに向けている。
「ああ、ボクらは怪しいものじゃないヨ。ハンターって聞いたコトないかナ?」
 警戒する猫に対してシャルル=L=カリラ(ka4262)は敵意がないことを示す為に何も持たず両手を上げながら話をする。
 しかし、ハンターという言葉は知らないのか猫達は揃って訝しげな目を返してきた。
「大丈夫です。私は幻獣王さんのおともだちなんですから!」
「幻獣王? さて、誰のことを言っているのか分からないのだが」
 Uisca Amhran(ka0754)の言葉にも猫達は心当たりがないのか、余計に警戒の目を向けてくる。
「歪虚に襲われていたようだから救助に来ただけよ。そもそもどういう状況なんです?」
 エルバッハ・リオン(ka2434)はとにかく現状を教えて欲しいと猫達に言う。
 と、そこで怯えた様子の猫が1匹、ハンター達と対峙する猫の肩を叩く。
「な、なあ。早く逃げよう。今なら逃げられるかもしれない」
「逃げるとは、先ほどの狼からです?」
「違うっ! いや、そうだ。だが違う。あの狼はアイツの道具に過ぎないんだ」
 怯える猫は矢継ぎ早に話す。正直要領を得ないが、どうやらあの狼を操る大元がいるのは感じ取れた。
「よく分かりませんが、場所を移したほうがいいみたいですね。それに怪我した人の手当もしないと……」
「待てっ」
 ユキヤ・S・ディールス(ka0382)がそう提案しようとしたところで、カズマが片手を上げてそれを制した。
「おっと、こいつは……お喋りしてる間に囲まれたようだな」
 ブレアもそれに気付いたのか、姿は見えないが周囲の茂みから複数の気配を感じられる。恐らく先ほどの狼達だろう。
「こうなれば一蓮托生。同じ大地に生きるものとして、協力しないか?」
「そうだな……私達からお前達を襲うことはないと誓おう」
「なるほど。それで構わないさ。なら、今は共に抗おう」
 カズマはそう言って長剣を抜いた。
「とにかく今の内にその傷を癒します」
 アクセルがマテリアルを癒しの力に換え、怪我を負った猫達を柔らかい光で包み込む。
 と、次の瞬間。そのアクセルの側面を襲うように影が走った。アクセルは咄嗟に盾を構えてそれを防ぐが、予想以上の衝撃に腕が痺れる。
「何です。今のは!?」
「っ! こちらも来ましたよ」
 飛来した何かを確認する間もなく茂みから狼達が飛び出してきた。大きく裂けた口から牙を剥きだしに、四方八方から一斉に襲い掛かってくる。
 あわや混戦状態に陥りそうになるところを、ハンター達と猫戦士はすぐさま円陣を組んで狼を外側へと追い出す。
「俺の剣が届く範囲は……誰も傷つけさせません」
 春陰は刀を地面と水平に構えると飛び掛ってきた狼へタイミングを合わせその顎を捉える。そのまま振りぬけば両断できるかといった所で、春陰の体が突然後ろに引き戻された。
「突然何を?」
 自分の襟首を掴んで引っ張った猫戦士に春陰は問いかける。
「気をつけたまえ。奴等の唾液には毒がある」
 猫戦士の目配せした先の地面に狼の紫色の唾液が垂れていた。よく見ればその唾液のかかった草は萎れてしまっている。
「なるほど。手助け感謝します」
「礼は全てが終わってからにするといい」
 春陰の礼の言葉を碌に受け取らず、猫戦士はレイピアを構えなおし狼の対応に戻る。
「これならどうです!」
 Uiscaがワンドを掲げると同時にその背中にある光の白き翼が大きく揺れた。
 そこから放たれた波動は仲間達や周囲の草木には何の危害も与えずにすり抜け、しかし周囲を囲っていた狼達に触れた途端に大きな衝撃となりその体を弾き飛ばした。
 だが、その隙を狙ったかのようにまたしても影が飛来する。
「ぐっ!?」
 その影はUiscaの胸元を捉え、その衝撃でUiscaは背中から地面へ転倒した。
「イスカよ。大丈夫か?」
「何とか……それより何が当たったんです?」
 丁度装甲の厚い部分に当たったのかダメージはそれほどでもない。
 Uiscaは起き上がりながら転がるそれに目を向ければ、それは矢の形をしていた。しかし、それは数秒とせず空気に溶けるようにして消えてしまう。
「あれ、消えてしまいましたね」
「俺の時もそうでしたが、これは一体どういうことでしょう?」
 同じく一番最初にそれの攻撃を受けたアクセルも共に首を捻る。
「ねえ、猫さん達。何か知ってる?」
「君達、知っていて加勢に来たわけじゃないのか?」
 Uiscaの言葉に猫戦士の一匹がやや呆れたような口ぶりで返してきた。
「生憎とこの辺りの事情は知らんのじゃ。教えてくれんかのぅ?」
「撫でるんじゃない。緊張感がないな、まったく」
 何か知っている様子の猫戦士に、星輝はそれを聞きだそうと言葉だけは丁寧に質問する。ただ、頭を撫でようとしたのは余計だったようでその手は払われてしまったが。
「まあいい。奴はルプナートル。この狼達を操っている卑怯者だよ」
 そのルプナートルというのは勿論歪虚で、何でもハンター達と同じ大きさで人の姿をしているらしい。
 奴は狼型歪虚を操って獲物を駆り立て、そして自分は影に隠れながら弓矢で狙撃してくるのみで戦闘中にその姿を現すことはまずない。
 そして猫戦士がルプナートルを卑怯者と言う所以は、奴がまず狙うのが弱者だということだ。武器も持たず戦う術のない女や子供、老人などを真っ先に狩るのがルプナートルという歪虚のやり方なのだ。
「つまり、そのルプナートルを仕留めればいい訳ですね」
「待て。奴を探しに行こうなんて考えてはいけない」
 ユキヤの言葉に猫戦士がすかさず待ったをかける。
「ここは既に奴の領域になっている……罠だよ。あちこちに仕掛けられているんだ」
 その言葉にハンター達は森に視線を向ける。しかし、罠が仕掛けられているような様子は見えない。それが今いる位置からでは単に見えないだけの可能性もあるが。
「そんなことより弱者を狙うなんて許せません。それに私、そんなに弱くありません!」
 憤慨、といった様子のUisca。弱者を狙うというのは勿論として、自分を狙ってきたことにも不満があるようだ。
「君やそこの彼が狙われたのはまた別。奴の狩りに邪魔だと判断されたからだろうね」
 猫戦士がUiscaとアクセルの顔を見てそう言う。これまでにもあったことらしく、著しく邪魔だと判断されたら狙撃の対象となるらしい。
「でも今はそのルプ何トカよりも、目の前の狼をドウにかしないトネ!」
 猫戦士の話を聞いている間も狼達は手を緩めたりはしない。シャルルは魔導機械を片手に、狼に向けて集束させたマテリアルの光を放つ。
 しかし、走り回る狼達はそれをひらりと避けた。そもそも狼達はただ只管にハンターと猫達の周囲を走り回り包囲するだけで率先して攻撃を仕掛けてこないのだ。
「ウーン、避けるのに徹されるとヤッパリ当たらないネ」
「こっちも同じです。スリープクラウドもこう動き回られてると複数巻き込むのは無理ですね」
 敵を無効化するという意味でスリープクラウドは重宝される魔法であるが、エルバッハはその魔法を使うタイミングを計り損ねていた。
 複数を巻き込もうと意識すると素早い狼達が相手ではどうも相性が悪く、おまけに森というこのフィールドでは木々の後ろや茂みなど死角となってしまう場所が多くそこに隠れられたらそもそも狙うことすら出来ない。
 苦戦を強いられるハンター達。その戦いは予想以上の長期戦へと突入するのだった。

 森の奥から一対の目がその戦いを見つめていた。
 初めて見るその姿には驚いたが、それ以上に中々の手練というのが実に厄介であった。
 簡単な狩りのはずであったが、中々どうして上手くいかない。
「幻獣ではないな。さて、一体何者だ?」
 狩人は息を潜め、その力を試さんとまた弓に矢を番えた。

●狩りをする魔人
 戦闘が始まってどれだけ時間が経っただろうか?
 攻めず退かずを徹底する狼達をハンター達は中々捉えることができないでいた。
 それに加えて時折飛んでくる矢がハンター達の動きを的確に邪魔をしてくるのだ。
「くそっ! 何処から撃ってきてるんだ!」
 飛んできた矢から猫達を守る為、ブレアは大剣を振るってそれを叩き落す。
「今のは左の茂みから飛んできたのじゃが……」
「その前は右のほうから飛んできていましたね」
 更に1つ分からないことがあった。それはルプナートルの狙撃位置だ。
 星輝とユキヤは飛来するその矢に注意を払っていたが、どうにも飛んでくる方角がばらけすぎている。正面だと思ったら後ろ、左だと思ったら右。同じところから飛んでくることがまずないのだ。
「そもそも。こんなに木が密集してる中でどうやって射線を取ってるんですかね?」
 Uiscaの言う事ももっともだ。しっかりとこちらが見えているように精確に当ててくるのに、こちらからは影も形も見えないのだ。
「打って出るにしてモ、敵の位置ガ分からないとお手上げダネ」
 シャルルもマテリアルを使った跳躍から周囲を偵察してみようとしたが、跳んだ傍から撃ち落されてしまっていた。
「それならば今出来ることを。この狼達を倒せれば活路は見出せるはずです!」
「こちらが削り落とされる前に。やるしかないようですね」
 アクセルは剣を構え、そしてエルバッハは杖を構える。
「光よ!」
「風よ!」
 その言葉と共に光の波動が近づいてきていた狼達を弾き飛ばし、風の刃がそれで怯んだ1匹の首を刎ねた。
 そしてやはりその攻撃の隙を狙って2本の矢が2人の死角を突いて飛来する。
「そう何度もやらせません!」
「右に同じです」
 その矢をUiscaと春陰がそれぞれの武器を振るって弾き返す。
 ハンター達の攻撃により、狼の数が半数を切ろうとしたその時だった。
「こいつら、またっ!」
 狼達は走り回るのを止め、それぞれ別方向の茂みの中へと逃げ出したのだ。
「どうする? 追うか?」
「罠の可能性ハ捨てきれないケド。コノママ見逃すのも癪だネ。ルプ何トカの顔くらいは拝みたいヨ」
 シャルルの言葉ももっともだ。やられっぱなしというのは性に合わない。
「最後の矢はこちらから来ていたのぅ。賭けじゃな」
「分の悪い賭けは嫌いじゃないぜ」
 カズマはそう言うと一度靴を踏み鳴らし森の中へと走った。それに続くように星輝は手にした鋼糸を木の枝に絡め、軽い身のこなしで飛び上がりその後を追う。
 しかし、その森を少し進んだ瞬間。地面から黒い槍が数本星輝に向かって射出された。
「ちぃっ!」
 星輝は身を捻りそれを何とか回避する。だが罠の発動はそれだけに留まらなかった。
「くそっ! どうなってんだ!?」
 地上ではカズマが数歩進む度に突然トラバサミがその足に噛み付き、地面から黒い槍が突き出てその体を貫き、さらに急に地面が消失し穴の中へと落ちそうになる。
 2人とも罠にかかった覚えはない。しかし確実に罠は発動して2人に襲い掛かる。
「カズマよ、この罠はどうやら普通のものではないようじゃ」
「じゃあどうする!」
「分からん。兎も角目で見えない場所に触れるな。そこに罠の発動体があるはずじゃ!」
 星輝にはある程度の罠の知識があるが、このような罠は見たことがなかった。何せ発動するまでトラバサミも槍も見えていなかったのだ。
 星輝が言ったのも完全な勘だ。しかし、自分ならそこに仕掛けるという場所を避けることで罠の発動する数は減った。
 そんな罠地帯を駆けること数十メートル。そこで木に背を預けた人影が見えた。
 黒い肌をした男は毛皮の装束に身を包み、その手には小ぶりの弓を持ち、背中には革の矢筒を背負っている。
「見つけたぜ、ルプナートル!」
 カズマが咆える。殆どの罠を避けきれず血塗れになりつつも、それでも手離さなかった長剣を振りかぶる。
 そんなカズマをルプナートルは一瞥すると弓を構え、そして一矢放った。
 弾き返す。これまでの矢の軌道を見ていたカズマはそう行動しようとしたが、しかしそれは叶わなかった。これまで手加減でもされていたのか、その矢は速度も威力も段違いだったのだ。
 気付けば矢はカズマの肩を貫き、バランスを崩した体はそのまま地面に転倒してしまった。
 そこに木の上から星輝が奇襲をかけるが、ルプナートルは腰から抜いたナイフでそれを受け止めた。
 星輝の振動刀はルプナートルのナイフを僅かな抵抗の後に両断するが、その僅かな間にルプナートルの振るった拳が星輝の腹を捉えそのまま地面へと叩きつけられる。
「ふむ、いい武器だな。それは」
 ルプナートルはどこか感心したような様子で咳き込む星輝の持つ刀に目を向ける。しかしすぐにその視線を星輝とカズマへと向け、そして唸った。
「さて、しかし耳がないのではな。どうしたものか」
 ルプナートルは突然そう口にした。耳がないとはどういう意味なのか。
 しかしそれを問う暇もなく。ルプナートルはそのまま背を向けて、惜しいと口にしながら森の奥へと消えていった。

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MVP一覧

  • 【魔装】の監視者
    星輝 Amhranka0724

重体一覧

参加者一覧

  • 虹の橋へ
    龍崎・カズマ(ka0178
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • 遙けき蒼空に心乗せて
    ユキヤ・S・ディールス(ka0382
    人間(蒼)|16才|男性|聖導士
  • 救世の貴公子
    アクセル・ランパード(ka0448
    人間(紅)|18才|男性|聖導士
  • 【魔装】の監視者
    星輝 Amhran(ka0724
    エルフ|10才|女性|疾影士
  • 緑龍の巫女
    Uisca=S=Amhran(ka0754
    エルフ|17才|女性|聖導士
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 麗しい海賊
    シャルル=L=カリラ(ka4262
    人間(蒼)|17才|男性|機導師
  • 開拓者
    春陰(ka4989
    人間(紅)|25才|男性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/10/19 14:18:52
アイコン 【相談卓】幻獣ヲ狩ル者を狩る
Uisca=S=Amhran(ka0754
エルフ|17才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2015/10/20 19:38:37