☆ハロウィンナイトパーティへようこそ☆

マスター:星群彩佳

シナリオ形態
イベント
難易度
易しい
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
1~25人
サポート
0~0人
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/10/18 12:00
完成日
2015/10/28 19:28

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

☆ハンターのみのハロウィンナイトパーティ

「う~ん……。やっぱり夜になっちゃうわよね」
「はい。スケジュール上、夜しか時間が取れませんので」
 魔女の衣装を着ているルサリィ・ウィクトーリア(ka1333)と、女悪魔の衣装を着ているフェイト・アルテミス(kz1334)は、先程まで貴族の子供達と共にハロウィンパーティに参加していた。
 パーティ会場は数ヶ月前に没落貴族が残した屋敷をイベント会場にリフォームした所で、その後は様々な季節のイベントを行うことで、このイベント会場屋敷のことは有名になっている。
 おかげで十月になると、「このイベント会場屋敷でハロウィンパーティを行いたい」と言い出す者は多く、毎日ぎっちりと予定が入っているほどだ。
 一般市民に貸すこともあれば、貴族が慈善事業として施設の子供達を招いてパーティを開いたりもする。
 しかしパーティのほとんどは早くても昼過ぎからはじまり、遅くても夜が更ける前までには終わるのだ。
 このイベント会場屋敷は健全に使われることを前提としているので、子供達が寝泊まりするのは良いとしても、大人達が宿泊することをルサリィは認めていない。うっかりすると貴族がスキャンダルを起こしそうになるので、その前に強制的に帰ってもらうことにしている。
「まさかハロウィンパーティを朝っぱらから行うわけにもいかないしね」
「雰囲気というものがその……微妙になりますから。ハンターの方達は成人しておりますし……」
 二人は渋い顔付きで並びながら、使用人達に片付けられているパーティ会場を見つめていた。
 今回のパーティは昼間から夕方にかけて行われ、既に子供達は帰っている。会場は片付けられているものの、今から貴族の大人達が開催するハロウィンパーティが行われるのだ。
 その為に二人は衣装を脱がずにいるのだが、考えていることはハンター達のことだった。
「衣装は貸衣装屋と提携しているから、どんなものだって用意できるし、メイクだってできるわ」
「お料理や飲み物の方も、秋の味覚をふんだんに使ったものを用意させましたからね。後はハンターの方々の予定次第……と言うところでしょうか?」
 実はハンター達にもハロウィンパーティを楽しんでほしいと思っているのだが、イベント会場屋敷のスケジュールを何度見直しても、夜にしか空いていない。
 本来ならば夕方あたりから夜に行いたいと考えていたルサリィだが、どうしても空かないのだ。
「……しょうがないわね。夜になっちゃうけど、ハンター達をハロウィンナイトパーティに招待しましょう。やらないよりは、マシだわ」
「ですね。その代わりと言っては何ですが、できるだけ彼らの要望を取り入れましょう。それなら充分に楽しんでいただけると思います」
「そうね。それじゃあ早速招待状を書くわよ!」

リプレイ本文

 夜、イベント会場屋敷のホールに、龍崎・カズマ(ka0178)が仮装した姿で現れた。
「いっつみー、ゆぐでぃら仮面、OK?」
 気取って言うものの彼は『まるごとゆぐでぃら』を着用しており、空いた顔の部分には魔道面・白狐をつけている。
「仮面はハロウィンパーティらしくて良いだろう。今宵はゲストではなく、キャストの『ゆぐでぃら仮面』になるぞ。中の人などいないように、な?」
 カズマは茶目っ気たっぷりに言うと、使用人達にまざってパーティの準備をはじめた。
 ホールに手作りのパンプキンケーキを運びに来た白水燈夜(ka0236)は、着ぐるみ姿のカズマを見ると驚いて足を止める。
「……大きなユグディラがいると思ったら、着ぐるみを着たカズマさんだったか」
 燈夜は頭に茶色の猫耳、体には白い水干に紫色の指貫袴を着用して、腰の辺りには茶色の猫尻尾をつけていた。猫又の仮装をしてるその肩には、ペットの猫の伊織がのっている。
「パーティで仮装することをさっきまで忘れていたから、慌ててウィクトーリア家の人達に猫又の衣装を用意してもらったんだけど、どうやらこういう格好で良いみたいだ」
 正確には依頼書に眼を通す時に半分眠っていた状態だったので、頭に入っていなかったと言う方が正しい。
 燈夜はパンプキンケーキをテーブルの上に置くと、長机にズラッと並べられているいろいろな種類の紅茶の缶を見て、眼を輝かせる。
「うわー、色んな種類の紅茶が用意されているな。まあ俺がリクエストしたからだろうけど、これだけあると飲み比べするだけでお腹いっぱいになりそうだ。ああ、でも料理やお菓子も美味しそう。伊織にも食べられる物を用意してくれるように頼んであるし、一緒に食べような」
 燈夜が喉を撫でると、伊織は気持ち良さそうに鳴いた。
 その横を、燈夜が作ったパンプキンケーキを頬張りながら、背中に作り物のコウモリの羽をつけた最上風(ka0891)が通り過ぎる。
「みなさん、気合の入った仮装をしていますねー。イベントは全力で楽しむ――うんうん、青春ですねー」
 パンプキンケーキを食べ終えて「げふっ」と息を吐いた姿を、給仕をしているカズマに見られた。
「おいおい、嬢ちゃん。口元汚れているぞ」
 カズマは言いつつ、テーブルナプキンで風の口元を拭く。
「ん~、ありがとうです。ちなみに紅茶を淹れてくれると、風のあなたに対する好感度がアップしますよ?」
「へいへい」
 カズマはティーカップに紅茶を注ぎ入れて、ソーサーと共に風に渡す。
 紅茶を冷ましながら一口飲んだ風は、ふわっと表情を緩めた。
「この紅茶、スッゴク美味しいですー。お土産に、葉っぱを頂けないですかねー?」
 上目遣いで見られて、カズマはため息を吐きながら近くにいた使用人に話を通す。すると使用人は笑顔で、帰り際に紅茶の缶を渡してくれると言った。
「感謝しますー。あと残り物があったら、それも頂きたいですねー。出された料理を残したら、ウィクトーリア家に失礼ですから」
 笑顔で料理をパクパク食べている風を見て、カズマは呆れた眼差しを向ける。
「嬢ちゃんがそのまま食べ続けたら、逆に足りなくなりそうだな」
「なっ何ですとーっ!?」
 そんな二人の様子を、壁際のソファに座りながら天央観智(ka0896)がニコニコしながら見ていた。
「みなさん、楽しそうで何よりです。今まであまりハロウィンのイベントには参加してきませんでしたが、まさか依頼として参加することになるとは思いませんでした。楽しまないと、損ですね」
 魔法使いの仮装をしている観智は、皿にのせたモンブランケーキを一口食べる。
「やっぱり秋といえば、モンブランケーキですね。栗が甘くて、とても美味しいです」
「ふふっ、観智様は本当に美味しそうにお食べになりますね」 
 そこへ頭にはナースキャップをかぶり、小悪魔風の黒いセクシードレスを着て、救急箱を手に持ったミルベルト・アーヴィング(ka3401)が声をかけてきた。
「お隣に座ってもよろしいですか?」
「ええ、どうぞ」
 観智はミルベルトが膝に載せた救急箱を見て、首を傾げながら問いかける。
「その救急箱は仮装の小道具ですか?」
「いえ、本物です。元軍医なので、医療はそれなりに。こういうイベントではうっかりはしゃぎすぎて怪我をしたり、具合が悪くなってしまう人が出てしまうことがありますから、医療道具を持ち歩くことにしています。でも今のところは平和ですし、とりあえずこの雰囲気を楽しんでおります」
 優雅に微笑むミルベルトは、優しい眼差しをホールへ向けていた。
「みなさんにはこの楽しい夜を、幸せな気持ちのままで過ごしてほしいですね。でもまあ暴れる方には、ちょっとしたお仕置きをいたしますけど★」
 含みがあるミルベルトの言葉を聞いて、観智の背中に冷たい汗が流れる。
 二人の間に微妙な温度差が生まれつつあった時、黒い帽子と黒いマントを身に着けて、吸血鬼の仮装をした鳳凰院ひりょ(ka3744)が声をかけた。
「あの、ウィクトーリア家のご令嬢を見かけなかったかな? ご挨拶をしておこうと思ったんだけど……」
「ああ、ルサリィさんはこういう場にはいらっしゃいませんよ。フェイトさんが言うには、『依頼人の自分がいると、ハンターの方達が気を使ってしまうから』という理由らしいです」
 以前にも何度かルサリィの依頼に参加したことのある観智が答えると、ひりょは残念そうに肩を落とす。
「そっそうなんだ……」
「残念ですね。ルサリィ様の仮装した姿、見たかったです」
 ミルベルトも残念そうに、ため息を吐いた。
 ひりょは顔を上げたが、落ち着かなげに視線を泳がしながらも声を高くする。
「あっあの、俺の名前は鳳凰院ひりょと言うんだ。まだこの土地に来て日が浅くて知り合いが少ないから、よければ話し相手になってくれないかな?」
「ええ、いいですよ。あっ、僕は天央観智といいます」
「わたくしはミルベルト・アーヴィングと申します。これからよろしくお願いしますね、ひりょ様」
「うんっ!」
 そこでようやく、ひりょの顔に笑みが浮かぶ。
 三人から少し離れた所では、海賊の船長の仮装をしたシャルル=L=カリラ(ka4262)が真面目な表情で壁に向かっていた。両手で海賊旗を広げながら、ブツブツと呟いている。
「憧れの海賊の船長になったついでに海賊旗も作ったんだけど、やっぱり壁に貼りたいネ。……ああ、そこの巨大ユグディラ、この壁に旗を貼っても良いと思うかい?」
 呼び止められたカズマは仮面の下で微妙な顔付きになったものの、使用人に声をかけて旗を壁に貼ってもらう。
「帰りには回収しろよ」
「分かっているヨ。さて、せっかく大人数が集まっていることだし、僕自らキャスト役をしながら声をかけていこう。僕の大好きな美しい人がたくさんいるこの場は、たまらないナ」
「勝手にしろ」
 カズマは関わるまいと思いながら背を向けようとしたが、シャルルが先に前へ回った。そして真剣な眼つきで、じぃ~っとカズマの顔を見つめる。
「キミ……その仮面の下に、美しい顔を隠していないかい?」
「知るかよ」
 言葉では強気だが、身の危険を感じ取ったカズマは慌てて仮面を押さえた。
「僕は老若男女問わず、美しい人が大好きなんだ。だからこの手の勘も鋭くてネ。ちょっとその仮面を外してくれないかい?」
「断固拒否する!」
 カズマは言い放つと、アクティブスキルの瞬脚を発動しながら走り出す。
「あっ、待ってくれ! 美しいお方!」
 ――こうして、カズマとシャルルの追いかけっこがはじまった。
 その光景を見ていたナーディル・K(ka5486)は、呆気にとられる。
「この依頼、ワクワクできそうだから参加したんだけど……、ドキドキの間違いだったかもしれないわね」
 背中が空いた黒いドレスを着ているナーディルの手には、愛用品である竪琴があった。
「洋風のパーティだから普段はあまり着ないドレスを着てきたんだけど、ちょっと照れ臭いわ」
 慣れない洋装に、少し苦戦している。
「今夜の私は、ハロウィンパーティの楽器演奏者。舞台に上がって、私の演奏で場を盛り上げなくちゃ」
 ナーディルは使用人の案内で舞台に上がり、ハロウィンパーティに相応しい曲を演奏し始めた。
 美しい音色がホールに響き渡り、参加者達や使用人達が一斉にナーディルへ視線を向ける。
「ナーディル様の演奏、素敵ですね」
 ミルベルトがうっとりした表情を浮かべていると、ひりょがおずおずと声をかけた。
「あっあの、ミルベルト。良ければ俺と、ダンスを踊ってくれないかな?」
「アラ、わたくしでよろしければ喜んで」
「ではミルベルトさんが持っている救急箱は、僕が預かっておきましょう」
「お願いします、観智様」
 そしてダンススペースで、ひりょとミルベルトは踊りだした。
 二人に釣られたように、短足のパンダマウスの着ぐるみを着たCapella(ka2390)もダンススペースに出て、踊り始める。
「レッツダーンス! リゲルも踊ろう♪」
 Capellaの頭の上には、魔女帽子をかぶったペットで鼠のリゲルがいた。
 Capellaとリゲルは長い尻尾を揺らしながら、楽しく踊る。
「今夜のハロウィンパーティは楽しいね♪ 美味しい料理や飲み物がたくさんあって、リゲルも食べられる物を用意してもらったから、一緒に食事ができたし。美味しいご馳走に、楽しいダンスは最高だよ!」
 はしゃいでいるCapellaから少し離れた所では、ミューレ(ka4567)と来未結(ka4610)が照れながら踊っていた。
「結の今夜の姿、その……とても綺麗だよ」
「えへへ……、ありがとうございます。ミューレさんもいつもより……素敵に見えます」
 恋人である二人の周りには、甘い空気が流れている。
 ミューレはヴァンパイアの仮装をしており、結はミューレから贈られた水色の生地に銀色の糸で刺繍がしてあるドレスを着ていた。
「でも私、こういうドレスを着るのははじめてで……。ダンスもあまり経験がないですし……」
「大丈夫。僕に任せて、身を委ねて。こういう所では、男性が女性を優しくリードしないとね」
 頼りがいのあるミューレの顔を見て、結は表情を和らげる。
「ふふっ、何だか夢みたいです。ハロウィンにまつわるお料理や飲み物を美味しくいただきましたし、先程は燈夜さんにミューレさんとわたしの相性占いをしてもらいました。良い結果が出て、凄く嬉しいです……! わたし、今この時が一番幸せです」
「僕もだよ、結」
 二人は熱く見つめ合いながら、音楽に合わせて踊る。
 やがて曲が終わり、二人はダンススペースから離れた。そしてベランダに出て、体の熱を冷ます。
「ふぅ……。何とか無事に踊り終えて、ほっとしました」
「寒くないかい? 結」
「今は気持ち良いぐらいです。ミューレさん、一緒に踊ってくださってありが……ふえっ!」
 突然ミューレに抱き締められて、結は眼を丸くした。
「結、大好きだよ」
「あっ、はい。あの……わっ私もミューレさんのことが、大好き……です」
 秋の風にふかれて肌寒いはずなのに、結は真っ赤な顔から湯気が出るほど熱を発している。
「くすっ……。本当に初々しいね、僕のプリンセス」
 ミューレは甘く微笑みながら、結の小さな唇にキスをした。
「……えっ? 今、キスを……はわわっ!?」
 眼を白黒させた結はとうとう緊張の糸が切れたのか、くてっとミューレにもたれかかったまま意識を手放してしまう。
「おやおや。ちょっといきなり過ぎたかな?」
 少しだけ苦く笑いながら、ミューレは結をお姫様抱っこする。気絶した結だったが、それでも顔は微笑みを浮かべていた。 


 ホールの壁際のソファに、黒燿(ka5677)は腰を下ろす。
「ハロウィンというイベントは、なかなか面白いものですね。オバケの仮装をして、大人数で楽しむとは……実に興味深いものです」
 頭には白い三角頭巾を逆に着けて、体には白い着物を着用した幽霊の仮装をしている黒燿は、ホール内を見回しながらクスクスと笑う。
 片方の手にはワイングラス、もう片方の手にはパンプキンシチューの皿がある。サイドテーブルに皿を置いて、ワインを一口飲む。
「……うん、流石貴族が出すワインですね。良いものを出しています。普段はあまりこういったイベントには参加しませんが、良いお酒を飲めるのなら、たまにはいいかもしれません」
 上機嫌にグラスを置くと、今度は皿とスプーンを手に取る。
「パンプキンシチューもいつもならあまり口にしませんが、コレもなかなか……。洋食もたまには良いですね。それに……」
 黒燿が顔を上げて視線を向けた先には、パーティを楽しんでいる仲間達の姿があった。みな、色々な仮装をしながら、それぞれ笑顔を浮かべている。
「仲間達の笑顔を肴に飲む酒は、いつもより美味しく感じられるものです。少々人酔いをしてしまいますが、悪くない気分ですね」
 語っている黒燿の顔にもまた、笑みが浮かんでいた。
 ほのぼのした空気が流れるホールに、玄間北斗(ka5640)が駆け込んでくる。
「ハロウィンパーティなのだぁ! 仲間達と一緒に、はしゃぎまくろうなのだぁ~」
 たれたぬきの着ぐるみを身に着けて、その上から赤いマントを羽織った北斗は、踊り終えてダンススペースから出てきたCapellaを見て眼を光らせた。
「Capellaさん、お疲れのようなのだぁ。リンゴジュースを差し入れるのだぁ。あっ、もちろんリゲルさんの分も」
 北斗はテーブルに置いてあったリンゴジュースのグラスを二つ持って、Capellaへ近付く。
「お疲れ様なのだぁ。リンゴジュースをどう……うをっ!?」
 しかし北斗は躓いて、その場に倒れてしまった。
「北斗さん、大丈夫?」
 驚いたCapellaが駆け寄って心配そうに声をかけると、顔を上げた北斗はニコッと笑って二つのグラスを差し出す。
「大丈夫! ジュースはこぼしていないのだぁ」
「あっありがとう……」
 Capellaは頭の上にいたリゲルを近くのテーブルに下して、グラスを少し傾かせて見せる。するとリゲルは両手でグラスを抱え込み、美味しそうに夢中になってジュースを飲んだ。
「……うん、このリンゴジュース美味しい。ありがと、北斗さん」
「どういたしまして、なのだぁ♪ ……でも本音を言うと、子供達と一緒に楽しみたかったのだぁ」
 しょぼん……と落ち込む北斗を見て、Capellaは少し困り顔になる。
「今夜はハンター限定のハロウィンパーティだからね。ところでその着ぐるみはどうしたのかな? 既製品じゃないよね?」
 問われた北斗はにぱっと笑うと、その場でピョンピョンと飛び跳ねた。
「ウィクトーリア家の使用人の人達と一緒に、今夜の為に作ったのだぁ! 今日できたばかりだけど、スッゴク着心地が良いのだぁ♪」
「僕もこの着ぐるみ、手作りなんだよ。ホラ、お腹にはポケットも作ったんだ♪」
「おいらのお腹にも、ポケットはあるのだぁ」
 Capellaはポケットの中から、お化けカボチャ型のチーズ入りクッキーを取り出す。小さなビニール袋に入ったクッキーを、たれたぬきのお腹のポケットに入れた。
「北斗さん、ハッピーハロウィン☆」
「トンビがぁアスリートォー!」
「惜しいわね。発音は似ているわよ」
 Capellaに続くようにして叫んだのは、ピンク色の大きな水玉模様のキノコ帽子をかぶり、バルーンスカートを履いて、ペットのパルムの仮装をしているベル(ka1896)だ。
 彼女の後ろを歩いているのは、ピンク色の水玉模様のシルクハットにスーツを着ているルキハ・ラスティネイル(ka2633)。彼もまた、パルムの仮装をしていた。
「こんやのわたしはパルムなの♪ うっれしーな、たのしーな♪」
 首に下げているカウベルを激しく鳴らしながら、ベルはスキップをする。
「ベルのパルム姿、とっても似合ってて可愛いわよ。たまにはこういうイベントに参加するのも良いわね」
 ホールに満ちる楽しげな雰囲気に釣られて、ルキハの表情も柔らかくなった。
 ルキハは手に持っている小さなカゴから、ラッピングされたクッキーを一つ取り出す。
「ベル、ハロウィンらしくお菓子をあげるわ」
「わーい♪ ありがとー」
 ベルはルキハからクッキーを貰うと、早速開ける。
「あのね、このお菓子はフォーチューンクッキーといって……ってもう食べてる!?」
「んむ? なんかヘンなはごたえとのどごしが……」
「それはメッセージペーパー入りだからよ……。んもう、しょうがないわね」
 ルキハは再びクッキーを取り出すと、今度はベルの目の前で真っ二つに割って見せた。
「ホラ、この紙を広げて見て」
 言われた通りにベルは紙を広げて、書かれているメッセージを見る。
「ほえっ!」
「うふふっ。『お誕生日おめでとう、ベル。あなたが生まれてきてくれて、あたしはとっても嬉しいわ』ってね♪」
 メッセージペーパーに書かれた内容をルキハは読み上げて、ウインクをした。
「ルキハぁ……。わたしもうれしーよぉ!」
 感情が高ぶったベルは、勢いよくルキハに抱き着く。
「がはっ!? よっ喜んでくれたようで……何よりよ」
 ルキハは引きつった笑みを浮かばせながらも震える手で、ベルの頭を優しく撫でる。
「ルキハ殿はおねぇでありながらも、やっぱり中身は男じゃのう」
 ベルとルキハを見ていた叢雲輝夜(ka5601)は、うんうんと頷く。
 輝夜は体の至る所に白い包帯を巻き、ミイラ女の仮装をしている。
「あっあの、叢雲様。『がおーっ』、なのです。どうでしょうか?」
 少しおどおどしながら声をかけてきたのは、狼女に仮装したエリス・カルディコット(ka2572)。服装はいつものだが、狼耳と尻尾は髪と同じ銀色、両手両足には肉球付きのグローブとブーツを着用している。
「おー、可愛い狼少女やねぇ。うちはどお?」
「はっはい、とても素敵です!」
「アハハ、あんがと。さて、せっかく豪華な料理が目の前にあるんやし、ありがたく頂こうか」
「そうですね。……あっ」
 輝夜はワイングラスを片手に持ち、もう片方の手ではフォークを持ってパンプキングラタンを食べ始めた。
「ん~、美味いのぉ。貴族はいっつもこんなに美味い料理を食べているのじゃろうか」
「……あのぉ、叢雲様。『トリックオアトリート』といえば、本来の意味は『イタズラをされるか、おもてなしをするか』ですよね?」
「うん? まあそうじゃが……って、ははぁーん。なるほど」
 輝夜はエリスの両手を見て、すぐに察する。大きなグローブを着用しているせいで、何も手に持つことができないのだ。
 エリスが赤く染まった頬で困り顔になるのを見て、輝夜はため息を吐きながら手に持っていた物をテーブルに置く。
「そら、どれから食べたい?」
「叢雲様と同じ、パンプキングラタンを……」
 そしてエリスは、輝夜に『おもてなし』をしてもらう。お腹いっぱいになると、ようやくエリスは笑顔になった。
「もう大丈夫です。ありがとうございました、叢雲様」
「どういたしまして。さて、次はうちの番じゃ。トリックオアトリート!」
「ふえっ!? えっと……おもてなしはこの手ではできませんので、……お手柔らかなイタズラの方をお願いします」
「よっしゃ! 覚悟しんさいね♪」
 眼をギラッと光らせた輝夜は、いきなり正面からエリスを抱き締める。
「ほわあぁっ!」
「コラコラ、暴れたらくすぐったいじゃけぇ。じっとしんさい」
 輝夜は顔を真っ赤にしてジタバタと暴れるエリスを、イタズラッ子らしい笑顔で拘束するのであった。


 ホールの一角では、三人の兄弟が集まっている。
「しかしアル兄さん、洋風のイベントに和風の仮装で良かったんでしょうか? はじめて着る衣装なので、ちょっと落ち着かないのですが……」
 少し不安そうな表情と声を出したのは、弟のロイ・I・グリーヴ(ka1819)。
「大丈夫そうだよ、ロイ兄様。他にも和風の仮装をしている人がいるみたいだし、そんなに難しく考えなくても良いようだよ」
 シメオン・E・グリーヴ(ka1285)はロイを励ますように、笑みを浮かべて見せた。
「二人とも、良く似合っているから大丈夫よ」
 アルバート・P・グリーヴ(ka1310)は鱗模様の白い狩衣を身に着けて、肌には白い蛇の鱗柄をメイクで描き、口には作り物の牙を入れている。
 ロイは黒い山伏姿をしており、頭には天狗面をつけて、腰には日本刀・石切を差して、カラス天狗の仮装をしていた。
 シメオンは緑色の水干を身に着けて、頭には狐の耳、腰には狐の尻尾をつけている。
「ところで二人とも、お菓子を用意してきたかしら?」
 アルバートの問いかけに、弟二人は当然と言うように頷いて見せた。
 三人の兄弟はハロウィンパーティを盛り上げる為に、各々お菓子を用意していたのだ。
「じゃあまずは、シメオンのお菓子から頂ましょうか。トリックオアトリート」
「愛らしいお前からなら、お菓子だろうがイタズラだろうが喜んで受け取るけどな。とりあえずトリックオアトリート」
「ふふっ、どうぞ。兄様達」
 シメオンは手に持っていたカゴから、魔女帽子をかぶったオバケカボチャ型のお菓子を二つ手に取り、兄達に配る。
 二人はシメオンから貰ったお菓子を食べて、キョトンとした。
「砂糖を入れずに作った、甘くないマジパンだよ」
「お菓子のイタズラとはやるわね。でもあんまり感心はできないわよ。相手が子供や妹だったら、泣いちゃうかもしれないからね」
 アルバートは苦く笑いながら、シメオンの額を軽くデコピンする。
「してやられた感はあるが、他ではやらないでくれ」
 ロイも困り顔で、シメオンの後頭部を軽く小突く。
「だっ大丈夫だよ。作ってきた中で今の二つだけが砂糖抜きだから、他のは甘いよ」
「それじゃあお口直しに、私のお菓子をどうぞ」
 アルバートはカゴの中から二つのお菓子を取り出して、弟二人に手渡す。
 ピンク色のオバケの形をしたお菓子は、食べてみると桃味のマシュマロだ。
「桃は魔除けになるという話を聞いたことがあったから、季節外れの人工甘味料で悪いんだけど、このお菓子を作ってみたの」
「でも美味しいですよ」
「うん! 甘くて柔らかくて、優しい味がするよ」
「ロイとシメオンに喜んでもらえて、良かったわ」
「それじゃあ最後は俺の番だな」
 ロイもカゴに手を入れて、赤紫色のコウモリ型のペロペロキャンディーを二人に渡す。
 アルバートとシメオンはアメを舐めてみると、ストロベリーの味がした。しかしお互いの舌を見た時、お菓子の仕掛けに気づく。
「くすっ。実はこのアメ、通称・ドラキュラキャンディーと言って、舐めると舌が赤くなるんだ」
「アラアラ」
「面白いアメだね。でもこういうの、僕達の家族は大好きだよ。ハロウィン当日には今夜みたいに仮装をして、それぞれまたお菓子を用意するというのはどうかな?」
 弟の提案を聞いて、二人の兄は柔らかく微笑む。
 彼らの頭の中には、ハロウィンを楽しく過ごす家族の姿が浮かんでいた。


 吸血鬼の仮装をしたヴォルテール=アルカナ(ka2937)と、赤い絵の具をつけて血を演出している包帯とナース服を身に着けているキョウカ=アルカナ(ka3797)は、ワインを飲みながらあたたかな眼差しで一緒に来た子供達を見つめている。
「子供達、楽しそうで何よりですね。かわいい仮装をしていますけど、流石にイタズラは怖そうです」
「ふふっ、きっとイタズラもかわいらしいものですよ」
 二人の視線の先にいるのは、白いヴェールを頭にかぶり、純白のワンピースを着ているシャーロット=アルカナ(ka4877)と、黒いゴスロリのドレスを身に着けて、包帯を体に巻いているケルネシア=アルカナ(ka5099)、そしてオバケの顔が描かれた真っ白な大きな布を全身にかぶっているハティ=アルカナ(ka5213)だ。
 三人は二人と眼が合うと、笑顔で走り寄ってくる。しかしハティは布を踏んでしまい、その場で転んでしまう。
「いったー! んもう、誰だよ?」
「誰でもありませんよ。ハティさんが自分で転んでしまったんです」
 すぐさまヴォルテールが駆け付けて、ハティを起こして衣装の埃を払う。
「あう……、ヴォルテール兄様、ありがとう。と言うことで……」
「「「トリックオアトリート!」」」
 三人に囲まれながら言われたヴォルテールは、腕にかけていたカゴからオバケカボチャ型のクッキーを三枚取り出して渡した。
「はい、どうぞ。俺の手作りクッキーで、パンプキン味ですよ」
「「「わーい♪」」」
 次に三人はキョウカの所へ行き、先程と同じく「トリックオアトリート!」と叫ぶ。
「仲良く食べてくださいね。ちなみにわたくしのお菓子は、リンゴのクッキーです。リンゴもカボチャに負けないぐらい、ハロウィンに強く関わっている食べ物なんですの」
 説明しつつキョウカは、リンゴクッキーを三人に手渡した。
「ではお返しに、このクッキーをどうぞ♪ このクッキーはお料理上手のお母様と一緒に作ったんですの!」
 シャーロットはコウモリの形をしたココア味のクッキーを、ヴォルテールとキョウカに渡す。
「ボクは白いお化け型クッキーなのですの。クッキーにかかっている白いのはお砂糖なので、安全に食べられますなの」
 ケルネシアも笑顔で二人にお菓子を渡すが、何故かハティだけは少し暗い表情で三日月形のクッキーを差し出してくる。
「ハティ様、先程転んだところが痛みますの?」
 キョウカが心配そうに尋ねると、答えたのは呆れ顔をしたシャーロットとケルネシアだ。
「キョウカお姉さま、そうじゃありませんの」
「さっきハティ様にお菓子をあげようとしたら、すぐにイタズラをしてきたんですの」
 二人が言うにはお菓子を取り出す途中で、ハティがお腹をくすぐってきたり、膝をカックンさせてきたらしい。
 なのでシャーロットは特別仕様の辛味クッキーをハティの口の中に入れて、ケルネシアはハロウィン柄のシールをハティがかぶっている布にベタベタと貼り付けた。
「……二人は天使の顔をした、小悪魔なんだよ」
 愛らしい容姿をした二人から思わぬ反撃をされて、ハティは少々トラウマになったようだ。
 そこへナーディルが明るいダンス曲を演奏しはじめ、シャーロットは眼を輝かせてキョウカの手を取る。
「お姉さま、一緒に踊りましょう!」
「良いですわね。ですがその前に、ヴォルテール様、どうぞ」
 キョウカはリンゴクッキーを、ヴォルテールにも渡す。
「たまには童心に返るのも、良いと思いますよ」
「お兄さまもせっかくのイベントなんですから、楽しんでくださいませ♪」
 二人はカゴをテーブルの上に置くと、ダンススペースに移動する。
「ねぇ、シア。もうイタズラしないから、ボクと一緒に踊ってくれないかな?」
「仕方ないですの。ボクも今ちょうど、踊りたいと思っていたところでしたの」
 そしてハティとケルネシアも手をつなぎながら、ダンススペースへ向かった。
「ヤレヤレ……。女性には敵いませんね」
 ヴォルテールはテーブルに置かれたマグカップにハンプキンスープを注ぎ入れて、一口飲むと深く息を吐く。
「はあ……。秋の夜は冷え込みますから、こういったあたたかいスープがありがたいですね。……こういう賑やかな夜もいいですが、俺には暗く静かな夜の方が合っている気がします」
 少しだけ悲しそうに微笑むヴォルテールの視線の先には、ハロウィンを楽しんでいる仲間達の姿があった。
 ――ところがそこへ、カズマとシャルルが追いかけっこをしている姿が視界に入る。
「いつまで追いかけてくるんだ、テメェはっ!」
「むろん、その仮面の下の顔を見るまで……ハッ!? 何と美しい女性だ」
 シャルルは急に方向転換すると、キョウカに近付き薔薇を差し出す。
「お美しい方、名前は? よければ僕とダンスを踊ってくれないカナ?」
「えぇっと……、申し訳ありませんが、こちらの素敵なレディとの約束が先なんですの」
 キョウカはシャーロットの手を引いて、そそくさとシャルルから離れた。
「はっはっは、照れ屋な女性だナ。おおっ、あちらには美少年がっ!」
 次にシャルルが目を付けたのは、よりにもよって兄二人から離れていたシメオンだ。
 シメオンは突然シャルルに声をかけられると、困り顔になる。
 その光景を見たアルバートとロイの顔に、影が差す。
「……ロイ、人を困らせる行動をする者を懲らしめてきなさい」
「了解です、アル兄さん。ただのイタズラならば、アクティブスキルのスローイングを発動してアメを口の中に入れるところですが……。今回の場合、俺の愛刀の錆にしてもいいですよね?」
「いえ、それは流石にマズイから……」
「この辛味クッキーを口の中に入れるといいですの!」
 二人に声をかけてきたのは、怒り顔のシャーロットだ。イタズラっ子用に作ったクッキーは、一見は普通にしか見えない。
「キョウカお姉さまを困らせた罰ですのよ! ハティさまが涙目になるほどの威力はございます!」
 キョウカは何とも言えない表情で、シャーロットに手を引かれていた。
「ではありがたく頂こう」
 ロイはシャーロットから辛味クッキーを受け取ると、気配と音を消しながらシャルルに近付く。
 ――そしてシャルルの悲鳴がホールに響き渡った。


★終わり★

依頼結果

依頼成功度大成功
面白かった! 9
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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 虹の橋へ
    龍崎・カズマ(ka0178
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • お茶会の魔法使い
    白水 燈夜(ka0236
    人間(蒼)|21才|男性|魔術師

  • 最上 風(ka0891
    人間(蒼)|10才|女性|聖導士
  • 止まらぬ探求者
    天央 観智(ka0896
    人間(蒼)|25才|男性|魔術師
  • 護るべきを識る者
    シメオン・E・グリーヴ(ka1285
    人間(紅)|15才|男性|聖導士
  • 全てを見渡す翠眼
    アルバート・P・グリーヴ(ka1310
    人間(紅)|25才|男性|魔術師
  • 名誉騎士
    ロイ・I・グリーヴ(ka1819
    人間(紅)|18才|男性|疾影士
  • えがおのまほうつかい
    ベル(ka1896
    エルフ|18才|女性|魔術師
  • マウス、激ラブ!
    Capella(ka2390
    人間(紅)|15才|女性|機導師
  • ピロクテテスの弓
    ニコラス・ディズレーリ(ka2572
    人間(紅)|21才|男性|猟撃士
  • 真実を包み護る腕
    ルキハ・ラスティネイル(ka2633
    人間(紅)|25才|男性|魔術師
  • Savior
    ヴォルテール=アルカナ(ka2937
    人間(紅)|19才|男性|聖導士
  • 慈愛の守り手
    ミルベルト・アーヴィング(ka3401
    人間(蒼)|23才|女性|聖導士
  • うら若き総帥の比翼
    ひりょ・ムーンリーフ(ka3744
    人間(蒼)|18才|男性|闘狩人

  • キョウカ=アルカナ(ka3797
    人間(紅)|28才|女性|霊闘士
  • 麗しい海賊
    シャルル=L=カリラ(ka4262
    人間(蒼)|17才|男性|機導師
  • 共に紡ぐ人を包む風
    ミューレ(ka4567
    エルフ|50才|男性|魔術師
  • そよ風に包まれて
    来未 結(ka4610
    人間(蒼)|14才|女性|聖導士
  • 分け合う微笑み
    シャーロット=III(ka4877
    ドワーフ|15才|女性|機導師
  • イタズラミイラ娘★
    ケルネシア=アルカナ(ka5099
    エルフ|10才|女性|魔術師
  • オバケ少女はいじられる?
    ハティ=アルカナ(ka5213
    人間(紅)|11才|女性|疾影士
  • 美しき演奏者
    ナーディル・K(ka5486
    エルフ|27才|女性|疾影士
  • 鬼の賭博師
    叢雲 輝夜(ka5601
    鬼|20才|女性|舞刀士
  • 芸達者なたぬきさん
    玄間 北斗(ka5640
    人間(蒼)|25才|男性|霊闘士
  • 千の符を散らして
    黒耀 (ka5677
    鬼|25才|女性|符術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/10/20 16:01:46