• 郷祭1015

【郷祭】東方との親善試合

マスター:大林さゆる

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/11/14 09:00
完成日
2015/11/20 02:55

このシナリオは1日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 自由都市同盟、農耕推進地域ジェオルジ。
 とある小さな村でも、祭りが行われていた。
「お姉ちゃん、この村では東方との親善試合があるんだって」
 笹川家の次女である響(ひびき)は、姉の藤乃(ふじの)を強引に誘って、やってきていた。
「まったく、あんたって子は…仕方ないわね」
 藤乃が溜息をつくと、三女の唯(ゆい)が姉にすり寄ってきた。
「……姉様……お腹、すいた…」
 唯はボーっとした表情だった。妹の視線を辿ると、野菜スープの屋台があった。
「地元で取れた野菜のスープがあるわ。あれで良い?」
 藤乃の問いに、唯はコクリと頷く。
 3姉妹が屋台まで行くと、魔術師のスコットとメガスが声をかけてきた。
「君達、新顔だね。東方から来たのかな?」
 スコットがそう言うと、響は怪訝な顔をした。
「ナンパは御断りだよ」
「ち、違うよ。僕たち、屋台でスープを配ってるんだ。今回は特別な祭りだから、無料だよ」
 メガスは少し慌てていたが、屋台の奥では黙々とマクシミリアン・ヴァイス(kz0003)がスープを作っていた。
 客の相手はスコットとメガスの役目だった。
「ふーん、そうなんだ。だったら食べようかな~」
 響がそう言っている間、すでに唯と藤乃は美味しそうにスープを食べていた。
「異国のスープは初めて食べたけど、味も食感もなかなか良いわね」
 藤乃の言葉に、唯は無言で頷いていた。
「二人とも、ずるーい。アタシも食べる」
 響が頬を膨らませると、スコットが笑いを堪えながらカップに入れたスープを手渡した。
「はい、どうぞ。召し上がれ」
「あ、ありがとう。それじゃ、お言葉に甘えて頂くわよ」
 少し気まずい表情をしながらも、響はスープを一口飲むと、幸せそうな笑みを浮かべた。
「やだー、美味しいじゃない。良い味で、ヤバいわ~」
 そんな響の態度に、マクシミリアンは内心『嫌なのか良いのか、どっちなんだ』と疑問に感じながらも、テキパキとした動きでスープを作っていた。客は他にもいるからだ。
「そうだ、東方との親善試合が行われるのは、この村だったよね」
 響が尋ねると、スコットが応えた。
「その通りだ。東方出身のハンターたちを迎えて試合をやることになったんだけど、魔術師協会も協力してくれることになったんだ」
 試合会場を見ると、数人の魔術師たちが準備をしていた。
「試合って、どういう形式? 私たち、まだ新米だから誰かと対戦しても、勝つのは難しいわよ」
 藤乃の疑問に、メガスが身を乗り出して言った。
「僕も新米だから、大丈夫だよ。ハンターはペアを組んで、ベテラン魔術師が作った『アースウォール』3体を敵に見立てて、時間内に叩き潰すっていうシンプルな形式だから、誰でも参加できるよ」
「……なら、ボクでも…できる、かな」
 唯は普段、大人しい性格だったが、闘いになると格闘士としての血が騒ぐのか、虎のようになる少女だった。
 藤乃はしっかり者の長女で、舞刀士。父の腕を引き継いで、精進の毎日だった。
 響は次女で、符術師だった。亡くなった母の意思を継ぎ、姉妹と一緒に旅をしていた。
「他にも参加するハンターはいるのかな。だったら試合、見てみたいな。指名があれば、アタシも参加できるかも」
 村には東方からの人々も集まっていたが、地元のハンターたちの姿もあった。
「これを機に、アタシにもチャンスが……」
 響の独り言が聴こえたのか、藤乃は首を傾げていた。
「チャンスって、なにが?」
「え? やだなー、お姉ちゃんったら、チャンスって言ったら素敵な人との出会いに決まってるじゃなーい」
 響は夢心地だったが、現実はそんなに甘くないと藤乃は思っていた。
 言わないのは、響が騒ぐからだ。

 果たして、今年の親善試合はどうなることやら。
 ドメニコ・カファロの計らいで、魔術師協会からも人材が派遣されることになったが、試合の結果が気になるところだ。
「うまいことやるが良い」
 それがドメニコからの助言だった。




●試合形式
 東方との交流を進めるため、東方出身のハンターたちを迎え入れる

【原則】東方出身のハンターと西方出身のハンターがペアを組み、互いに協力して『アースウォール』3体を時間内に叩き潰す

1.参加者4人以上が東方出身ハンターの場合、出身に関係なく、PC同士でペアを組むことができる。希望があれば西方NPCから一人指名することもOK

2.リアルブルー出身者は、東方出身者クラスのハンターとペアを組むことが可能

3.参加者全員が西方出身のハンターの場合、東方出身NPCハンターから一人指名してペアを組む(NPCは重複して参加することになる)

リプレイ本文

 自由都市同盟、とある小さな村。
 東方との交流をさらに進めるため、東方出身者たちを招いた親善試合が行われることになった。
 ユーリ(ka5364)もまた、東方出身のハンターだった。
「少し気になって来てみたが、東方が解放されてから、自由都市同盟でも同朋を見かけるようになったな」
「これを機会に東方の人達と仲良くなることができれば、妾も凄くうれしいですし、そのためなら、なんだってお手伝いしちゃいます!」
 黒曜 葵璃瑚(ka3506)は東方での戦いにも参加していたこともあり、これも何かの縁だと張り切っていた。
「それにしても、ドメニコさんの助言はシンプル過ぎるわね。アドバイスするなら、何に対して言いたいのか、具体性が欲しかったわね」
 そう突っ込みをいれたのは、リアルブルー出身の八原 篝(ka3104)。
 ドメニコ・カファロが出向先で大きなクシャミをしていたのは、きっと篝が噂していたからだろう。
 会場の周辺には、続々と観客たちが集まってきた。
 村人たちにとって、ハンターの技を間近で見るのは滅多にないこともあり、そのせいか興味津々であった。
 観客の中には東方出身の商人たちもおり、賑わってきた。
 まずは前座試合として、スコットと響のペアが制限時間内にアースウォール3体を破壊すると、拍手が巻き起こった。
 続いての試合は、ユーリと篝のペアだ。二人は互いにランダム宣言していたが、試合前に打ち合わせしていたこともあり、会場の雰囲気に呑み込まれることもなく、落ち着いた物腰だった。
 会場の中央に土壁が3体並ぶと、審判の声が響いた。それが合図となり、まずはユーリが覚醒し、日本刀「白狼」で『円舞』を発動させた。舞のごとく円を描きながら機敏に体を動かし、刀を自在に操りながら土壁を切り裂く。
 篝は右側の土壁に狙いを定めてチャクラムによる『ダブルシューティング』を放った。二つのチャクラムを同時に投げつけると、土壁一体が砕け散る。
 それを見たユーリが、ふと呟く。
「なかなかやるじゃねぇか」
 ユーリは舞を意識しながら、さらに日本刀による『円舞』で左側の土壁に攻撃をしかけた。満月のごとく線を描きながら刀を繰り出すと、土壁は衝撃に耐えきれず、崩れ去った。
 篝はチャクラムを構え、別の土壁に狙いを定めて『高加速射撃』で突き刺す。あまりの速さに、まるで流れ星のようにも見えた。
「残りは一体」
 ユーリは手筈通りに『納刀の構え』を取った。刀を一度収め、先程とは打って変って『静』の姿勢になった。かと思いきや、一陣の風のごとく、刀が煌く。
「紫電一閃の一太刀、喰らいやがれ」
 土壁は斜めに切り裂かれ、上段の部分が崩れ落ちると、篝が止めとばかりに『寒夜』を放った。青い冷気を纏ったチャクラムが土壁の下段に命中し、ダメージを受けたと同時に冷気が舞い散り、まるで氷の破片が会場に降り注ぐ様にも見え、次第に『それ』は消滅していった。
 ユーリと篝は制限時間内に全ての土壁を破壊し、観客から盛大な拍手が巻き起こった。中には立ち上がる者もおり、ユーリの刀さばきに感心する者、篝の演出と技に酔い痴れる者までいた。
 観客の歓声の中、篝はチャクラムをリロードした後、指でクルクルと回したり、涼しげな顔でジャグリングをしていた。
「これくらいのサービスなら、お手の物よ」
 対象の土壁を破壊することができたため、試合の合間に観客たちを楽しませていた。




 次の試合は、葵璃瑚と唯のペア。
「クォークリオ族出身、巫女と蒼き戦士の子、黒曜葵璃瑚です!」
 巨大なバルディッシュを掲げ、挨拶する葵璃瑚の姿に、観客たちは「おおーっ?!」と驚きの声を上げていた。少女が全長180cmもある斧を軽々と持ち上げているのだ。一般人ならば驚きを隠せないだろう。
 対して、唯は無言で御辞儀をしていた。合図が鳴り、試合が始まると、唯の態度が豹変する。気合いに満ちた声を発しながら、唯は『震撃』で強烈な一撃を放ち、左側の土壁に拳を叩きつけた。ひび割れたが、完全に破壊できなかった。だが、葵璃瑚が数珠で『ホーリーセイバー』を発動させ、自分の斧に強化を施す。光り輝く斧を両手で持ち上げ、振り下ろすと、土壁が叩き割れて崩れ落ちた。
 ハンターとは言え、少女たちの技に、感嘆の声が湧き起こった。
 唯は練気と震撃の攻撃で、中央の土壁を拳で打ち付け、葵璃瑚は術が施されて光に包まれた斧で、さらに土壁を叩き割っていく。
 ホーリーセイバーの効果が切れた頃には全ての土壁を壊すことができ、観客たちの歓声が会場を包み込む。
「やりました!」
 観客の声に応えるように、葵璃瑚は斧を掲げた。唯はまた大人しくなり、小さく頷くように礼をする。
 少女たちの連携攻撃を見た観客たちは、改めてハンターたちの強さに感心していたようだった。


 続いての試合は、アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)と藤乃のペアだ。
 会場の中心部に土壁3体が出現すると、試合が始まった。
 ラウンド開始時にアルトが『縮地』を発動させ、気が付けば彼女は土壁のすぐ近くまで高速移動していた。
 人によっては、瞬間移動したようにも見えただろう。
 アルトは東方の剣術に興味があり、藤乃の闘い振りを近くで見たかったのだ。
 続け様、『踏鳴』でアルトの足にマテリアルが込められ、地を強く踏み込む。
 刹那、試作振動刀「オートMURAMASA」による『連華』が繰り出された。剣閃連華とも呼ばれるアルトの技は、ハンターたちですら一目置くとも言われている。
 観客たちは固唾を飲んで、静まり返っていた。緊張が走る……と思いきや、会場が静まり返ったおかげで、藤乃はリラックスすることができた。これもアルトの気遣いだろう。
「それでは、基本から」
 藤乃は『剣心一如』で呼吸を整え、刀で『疾風斬』を繰り出した。土壁は斜めに切り裂かれ、上部が落ちていくが、破壊するまでには至らなかった。だが、その切口はアルトも感心するほどだ。
「やるじゃない。藤乃さんは他にも指名があったから、スキルは無駄にできないよね。ボクが残りを片づけるよ」
 アルトはさらに『連華』を放ち、瞬く間に全ての土壁を破壊してしまった。
 観客が我に返った頃には、会場の土壁は無くなっており、何が起こったのかとザワザワとまた会場が騒がしくなった。
 制限時間内に土壁を壊すことができて、藤乃は安堵していた。それを見て、アルトは微かに笑っていた。



 休憩が入った後、次の試合となった。
 今度はリュー・グランフェスト(ka2419)と藤乃のペアである。
「剣は人の姿を映す鏡だ。どれだけ打ち込んできたか、剣にどんな想いを込めてるのか。それが分かるからな」
 リューは父と母の血を受け継ぎ、二つの世界を繋ぐ懸け橋になりたいと願っていたが、もちろん東方の人々も含まれていた。
「それじゃ、指示通りに頼むぜ。俺がフォローするから安心してくれ」
 無邪気な笑みで言うリュー。試合開始後、『攻めの構え』でリューは藤乃を見守っていた。
「ありがとう」
 そう言って、藤乃は先へと走り、刀を構えると『疾風斬』を放った。土壁は半分ほど壊れたが、リューが援護に入り『爆進』を発動……背には爆音と共に炎を模した印が輝き、マテリアルを放出して爆発的に加速移動した勢いで、土壁が飛び散るように砕けた。
 二人の連携技に、観客たちは「燃えてるぞ、すげー」などと騒いでいた。
 藤乃は緊張気味に別の土壁を刀で打ち込み、リューが北側に廻ると、試作振動刀「オートMURAMASA」による『竜貫』が二つの壁を一直線上に貫いていく。大量のマテリアルと共に刀を前方に突き出す姿は、竜が迸るようにも見えた。この技は紋章剣『天槍』とも呼ばれている。
 2ラウンドで全ての土壁を破壊することができたこともあり、観客たちは大いに燥ぎ回るように歓声をあげていた。
 藤乃はリューの技に感心しきりであった。
「凄いわ。リューさんの技、素晴らしい」
「藤乃の技にも、何か願いが込められているように感じたぜ」
 リューの言葉に、藤乃は懐かしむように言った。
「父上から学んだことを想い出しての。そしたら、自然と体が動いていたわ」
「そっか。その想いが技に込められたのか」
 リューもまた、父と母の教えを思い出していた。



 最後はブリュンヒルデ・ゲンドゥル(ka5812)の出番だ。
 試合前、藤乃に声をかけ、彼女から助言を聞き、ブリュンヒルデは自分の技について話すことにした。
「藤乃様、私は女性ならではのしなやかさを生かした『蹴り』の威力に拘りがあります。零から百へと瞬時に動きを加速させ、斬撃の様な斬れ味を持たす事が理想……ですが、そうした技法には刀のような素早さと打ち込みの角度……つまり、高度な動作が要求されます」
 藤乃はじっくりと聞いた後、こう告げた。
「私の祖母が格闘士なの。祖母の言葉を借りるなら『己の本質を知り、努力する者は理想の技に辿り着ける』……ブリュンヒルデさんは、もう答えが出てるじゃない」
「……私の理想……それは……」
 ブリュンヒルデはすでに気が付いていた。そうだ。自分の拘りである『蹴り』を生かした技を鍛錬すれば良いのだと。出番を最後にしたのも、客席から藤乃の刀さばきを観察して、それを自らの技に生かせないかと考えていたからだ。
「そろそろ試合開始よ」
 藤乃の声で、ブリュンヒルデが頷く。
「何事もやってみなければ分かりませんよね。私、やってみます」
 審判の合図が響き、試合開始となった。
 ブリュンヒルデは脛を保護するレガース「コンヘラシオン」を装備し、蹴りの威力を高めることに専念した。
「それでは参ります」
 『突構え』の態勢を取り、ブリュンヒルデは『螺旋突』で抉るように蹴りを繰り出した。土壁に命中すると、蹴りの衝撃で中段部分が土砂のように崩れ落ち、その拍子に上部の壁がドサリと地に落ちた。
 藤乃は『疾風斬』で切り裂き、二人の攻撃で土壁一体が粉砕された。残りの土壁も、ブリュンヒルデの『突構え』からの『螺旋突』による蹴りに合わせて、藤乃の『疾風斬』が炸裂し、制限時間内に全ての土壁を破壊することに成功した。
 観客たちはブリュンヒルデの蹴り技を見て、格闘士には人によって得意技があるのだと感心していた。会場からは惜しみない拍手が巻き起こり、藤乃とブリュンヒルデが丁寧に御辞儀すると、さらに観客たちの拍手が大きく変わった。盛大な拍手の中、二人は互いに顔を見合わせて、微笑んでいた。
「ブリュンヒルデさんの蹴り技、私の祖母が見たら驚くわ」
「藤乃様のおかげです。これからも、理想に少しでも近付けるように精進します」
 ブリュンヒルデの心は、晴れ渡っていた。高い山でも、一歩ずつ登っていけば、いずれは頂点に辿り着ける……鍛錬も、それと似たようなものだと感じていた。




 そして。
 試合が終わり、それぞれが祭りを楽しんでいた。
 リューが笹川三姉妹に声をかけると、響が突っかかってきた。
「アタシの目が黒いうちは、お姉ちゃんは渡さないから!」
「勘違いすんなって。俺はだな、同じ刀使いとして、藤乃を指名しただけだ」
 思わず少しうろたえるリュー。
 アルトと言えば、ワインの出店を見つけて、何杯も飲んでいたが、酔うことはなく、けろりとしていた。
 その頃、ユーリは出店の料理を一つ一つ吟味しながら、ふと閃いた。
 葵璃瑚はマクシミリアン・ヴァイス(kz0003)とユーリが東西料理対決をすると聞き、調味料と食材集めに奔走していた。付近の農家から貰うことができたため、食材費は無料だった。
 屋台でスープを作っていたマクシミリアンは、ユーリの申し出を受けて立つことにしたが、その事は村中に広まり、客が大勢集まってきた。
「できたぜ、茸と魚介類の東風焼きだ」
 ユーリは東方ならではの料理を作り、テーブルの上に置いた。
 対して、マクシミリアンは。
「野菜スープだ。今回は、この一品だけと決めていた」
 屋台で好評だったスープを少しアレンジして、皆の前に差し出した。
 リューは響を宥めながら、笹川三姉妹と一緒に試食していた。
「東方の料理は新鮮な味がするな。美味いぜ」
 食が進むにつれて、リューと三姉妹は次第に打ち解けていた。
「せっかくだから、食べ比べしてみるわね」
 篝はパルムたちを連れて、食べ歩いていた。
「どっちの料理も美味しいけど、ユーリの東風焼きは懐かしさも感じるわ」
「あ、妾にもスープと東風焼き、頂けますか?」
 葵璃瑚が言うと、ユーリとマクシミリアンは無言で頷いていた。
「それじゃ、いただきます!」
 篝の言う通り、甲乙付け難い美味しさだったが、葵璃瑚もまた、郷愁の想いに駆られた。
「マクシミリアンさん、妾の父は…リアルブルーの人だったそうです。あまり覚えてないけど、強い男だと聞かされました。妾の母は、父を受け入れて……だから、妾も遠くから来た人達に優しくしたいと思ってます」
「そうか。葵璃瑚がそう願っているのなら、俺も信じよう」
 マクシミリアンは無表情だったが、どことなく瞳が柔らかくなっていた。
 その場を和ませるような笛の音が聴こえてきた。
 アルトが獣の角笛を吹いていたのだ。一曲終ると、アルトがこう告げた。
「ボクのご先祖は元々はリアルブルーから来た音楽家だったらしいんだよね。それを忘れないためにって、ボクの一族は小さい時に楽器演奏を習う慣わしがあるんだ。葵璃瑚さんの願いも、きっと代々受け継がれていくんだろうね」
「はい、妾も母を見習って、子孫たちに伝えていきたいです」
 葵璃瑚がそう言うと、アルトが朗らかに笑った。
「そのためにも、相手を見つけないとね」
「相手、ですか。うみゅー、相手?」
 今の葵璃瑚には意味が分からなかったが、いずれ分かる時が来るだろう。
 アルトは笹川三姉妹と他のハンターたちに言った。
「東方の楽器はなかなか手に入らないけど、歌は万国共通だよね。ボクがまず歌うから、後から同じように歌ってみて」
 アルトが歌い、それを真似て、葵璃瑚と唯が歌い始めた。
 ブリュンヒルデも藤乃に促されて、一緒に歌っていた。
 それはやがて輪唱となり、天高く飛ぶ旋律へと昇華していく。

 歌が、広がっていく。
 どこまでも、果てしなく。
 どうか、それぞれの想いが、誰かの元へと届きますように……。

 

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MVP一覧

  • 弓師
    八原 篝ka3104
  • 刀士料理人
    ユーリka5364

重体一覧

参加者一覧

  • 巡るスズラン
    リュー・グランフェスト(ka2419
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • 弓師
    八原 篝(ka3104
    人間(蒼)|19才|女性|猟撃士
  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニ(ka3109
    人間(紅)|21才|女性|疾影士
  • 頑張り屋さん
    黒曜 葵璃瑚(ka3506
    人間(紅)|14才|女性|聖導士
  • 刀士料理人
    ユーリ(ka5364
    人間(紅)|24才|男性|舞刀士
  • ライジングファイター
    ブリュンヒルデ・ゲンドゥル(ka5812
    人間(紅)|18才|女性|格闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/11/13 13:41:20
アイコン 親善試合相談卓
黒曜 葵璃瑚(ka3506
人間(クリムゾンウェスト)|14才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2015/11/14 01:49:22
アイコン ヴァイスさんへの質問
ブリュンヒルデ・ゲンドゥル(ka5812
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|格闘士(マスターアームズ)
最終発言
2015/11/13 11:20:49