幻獣の森を巡る争いは、『歪虚連合軍』と『幻獣王親衛隊』の激突という形へ発展した。
　幻獣を守るべく動き出した親衛隊は歪虚に対して有利な戦いを繰り広げ、敵をヤオト渓谷へ撤退させるまでに至った。
　ここで幻獣王チューダは敵の追撃を命じ、幻獣の戦士ツキウサギがこれに従って敵を追撃した。
　しかし、この撤退が敵の計略だと判明する頃には、ツキウサギら追撃部隊の退路は伏兵によって断たれていた。

　敵の計略で形勢が逆転する状況。
　危機的状況を招いた王チューダは、頭を掻きながら言い放つ。
「あー。えーっと……後はみんなで何とかすであります」

　●ヤオト渓谷
「来たか」
　ベアットの眼前に見えるのは救援に向かったハンター達だ。
　救援のためにベアットの左翼と対峙するはめになったハンタ―達。
「あの時の仕返しが出来る」
　幻獣の森での敗北――苦い記憶だ。
「それにだ――これもある」
　ベアットの目の前には捕らえられた幻獣――人質だ。
「コレを盾にすれば容易に攻撃もできないだろう」
　渓谷は岩も多い、そして準備も万端だ。
「森のようには行かないが――代わりにコレもあるしな」
　積まれているのは多量の岩――投石して攻撃するつもりだ。
　遠距離の攻撃には投石。
　遠距離の攻撃に対しては人質の盾。
　ベアットが取れる限りの対策をした結果だ。
「ここで奴らは死ぬ。俺達に倒されて」
　余裕を持ったベアットの態度、ハンター達の得意な戦術を封じ込めれたからという思いからだ。
「さて、奴らはどんな表情を見せてくれるのか」
　準備万全の状況、ベアットは余裕綽々の様子だ。
　
　●　ハンター達　
　救援に向かっているハンター達は幻獣と共同して戦いっていた。
　リーリーと言う足が長い巨大な鳥の背に乗っている。
　彼らの眼前にはベアットの部隊が見える。
「奴らがこちらに向けているのは――幻獣」
　幻獣を盾にしている事に気がついた
　大量ではないにしろ共同して戦っているリーリの仲間も見える。
「それに何やら岩も見える――厄介だな」
　もしかしたら投石して攻撃してくる可能性もある。
「コレをどうにかしないと拙いな」
　自分達のいる場所はほぼ何もない――ベアット側は身を隠れるほどの岩場が多い。
「リーリや森の仲間たちが人質だ――どうにかして助ける必要がある」
　だが、状況は至難だ。
「幻獣たちとこれからも共に戦うためにも、助けるのは必須だろうな」
　人質が殺されるようなことがあればリーリ達、ハンター達に協力している幻獣達の士気は悪化するだろう。
「でなければ――幻獣達の協力も難しいかもしれない」
　ベアット達を倒し、人質を無事に解放する――そんな困難な事態にハンター達が置かれた。
　だが、それはハンター達と幻獣達が協力して戦うためには必要なことだ。
　
　こうして、ハンター達とベアットの戦いが始まる。

●　降り注ぐ石
　正面の敵へ向けて前進をするハンター達。
　正面の敵は人質を盾にしている様子が遠くからでもわかる。
　前進するハンター達に対して正面と両翼から石が飛んでくる。
　投石の石といえども当たればダメージを受ける。
「人質というか獣質というのか……。ともかく人質を助けつつ倒さないといけないってのがまた厄介なことだ」
　石が降り注ぐ中リーリーと共に進むアルト・ハーニー(ka0113)。
「あの岩を打ち返してホームランにでもシてみたい所だが……無理だろうな、というか打った所に人質がいたら笑い話にもならんか」
　『アンカーハンマー』で飛んでくる石を叩き落とすが、如何せん数が多くて石が当たる事もある。
「……あの熊歪虚、人質を取るなんてやってはいけない事をやってくれたわね」
　遠くから見える幻獣の人質を見てリーリーに騎乗したユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)は憤る。
「戦いにおいて人質を取るのは戦術としては悪いとは言わない……。けど、それは外道の取る手段だ……」
（歪虚に倫理観を説くつもりは無いけど……あの熊だけは……確実にここで仕留める）
　数多く飛んで来る石を避けるが、避けきれない石に当たる。
「かなり厳しいわね……猟師が射撃を封じられて、できあがるのは亀のスピードでしか歩けないウサギよ」
　そうぼやく犬養　菜摘(ka3996)――心強い味方、リーリーに騎乗しているおかげで皆について行けている。
（森の番人、狩人として、幻獣の保護は自分のアイデンティティそのもの……）
　皆とは違って大きく迂回しているお陰で飛んでくる石は若干少ないものの、時々当たってしまう。
（故郷で因縁のある強い狂い熊に勝つ目標と、打倒ヴォイドが完全に重なったその場所にベアットはいる）
「さっさと終わらせて幻獣達を解放してあげないとね」
　アルファス(ka3312)は先にいる人質を見据えて石の雨の中、リーリーに騎乗して前進する。
　正面へ接近しつつあるハンター達ーーそれに比例してハンター達に当たりダメージを与える石の数も増えてくる。
　
●　接近するハンター達
　石が降り注ぐ中、ダメージを受けながらも前進するハンター達。
「一寸無理をしてでも突破して陣形を崩して地形の不利をなんとかしないと……」
（乱戦だと囲まれる可能性も高くなるから危険なんだけど他に方法が……）
　ザレム・アズール(ka0878)は降り注ぐ石の中を前進する。
「奴等お仲間を盾に投石で此方をなぶるつもりらしい。助けるには寄って倒す必要がある」
　前進しながらリーリーへ語りかけるクリスティン・ガフ(ka1090)。
「私は奴等を斬りたい故盾を持ち守りを頑張る。君にはその足の機動力がある。仲間を助ける為に協力しよう。よろしいな？」
　クリスティンの言葉にコクリと頷く、リーリー。
　投石攻撃から『シールド「エスペランサ」』と己の体を使い守るクリスティン。
　だが、全てを防ぎきることは出来ない。
　
　接敵――ハンター達は正面の熊型雑魔と接敵する。
　雑魔に対して攻撃をしようとするハンター達だが、何時もと違って両翼からの投石攻撃に気を取られていつも通りの戦闘ができない状態だ。
　人質を盾にして魔法攻撃を警戒する熊型雑魔。
「人質に危害を加えさせません！　レクイエム」
　ミルベルト・アーヴィング(ka3401)が敵の行動阻害をする。
「ベアットへ行くために邪魔な障害は排除しないとな、と。その人質から離れて貰おうか！」
　『強打』を使ってハンマーを人質から離れるように吹き飛ばす形で振りかざすアルト。
　吹き飛びはしなかったものの、人質から離すことに成功する。
　投石により邪魔されて本来のダメージは出なかったものの、当たった胴体にダメージを与えことが出来た。
「いくわよ！」
　『試作振動刀「オートMURAMASA」』を振りかざすユーリ。
　本来の攻撃が出来なかったものの、人質から離れた雑魔を斬り伏せて倒すことが出来た。
　人質の側へ向かうユーリ。
「いくよ！」
　『試作振動刀「オートMURAMASA」』をリーリーの背からサーベルのように騎乗戦闘を応用するアルファス。
　熊型雑魔に対して胴体に刺突や撫で斬りを行って攻撃するが投石に邪魔され本来のダメージを与えられない。
「手早くさせてもらう！」
　『バーンブレイド』と『強打』で熊型雑魔の頭部を狙って振り下ろすクリスティン。
　頭部を狙う筈だったが、投石に邪魔され胴体へと当る。
　熊型雑魔の胴体へ致命的なダメージを与えて倒すことは出来た。
「人質を解放しないとな」
　グレイブ(ka3719)は『ミラージュグレイブ』で『渾身撃』によって上段から敵に向けて振り下ろす。
　振り下ろされた薙刀は脳天にではなく肩にかけて袈裟懸けのような形で振り下ろされた。
　肩から胴体にかけて深い傷を負わしてダメージを与えた。
「ここからなら行けるわね」
　大きく迂回してきた犬養は横サイドから熊型雑魔に対して『猟銃』で『依託射撃』を使い射撃を行う。
　対熊用の一粒弾が敵の胴体へと当る――スキルにより外すことはなかったものの邪魔をされ的の大きい胴体への射撃となった。
　銃撃を受けた熊型雑魔はダメージを受けた。
「突破する！」
　ザレムは『魔導大剣「ブルトガング」』を突破のために前にいる敵に対して振りかざす。
　胴体に当る斬撃――邪魔されて本来よりも低いダメージを受けるものの『幸運』により体勢を崩す敵。
　そのまま体勢を崩した敵と行動阻害された敵を横目にベアットへ向かう。
　ミルベルトの行動阻害スキルが解ける――スキルの残り3回。
　傷ついたものの未だ熊型雑魔は健在だ――本来なら何体かは倒せいていたのだが。
「早くしないと――」
　人質の側で戦うユーリ。
「纏めてなぎ払う！」
　人質を盾にとられる事も無くなったので『薙ぎ払い』で攻撃するクリスティン。
　複数の敵の胴体に横一文字に傷を与える――本来なら致命傷だったのだが。
　ハンター達は両翼からの投石攻撃より本来のパフォーマンスを出せなくて正面の敵に対して苦戦しながら掃討していく。
　いつもの倍近い時間を掛けて正面の敵を掃討することが出来た。

　ベアットヘ向かうのはユーリ、クリスティン、ミルベルト。
　左翼の敵にはアルファスと犬養。
　右翼にはアルト、グレイブが向かう。

●　ベアット戦
「ここまでありがとう。逃げてくれていい」
　先行したザレムはベアットとの戦いにリーリーを巻き込ませないために逃がした。
「さて、行くか」
　一人突破したザレムは障害物を利用してベアット達の後方へと全速力で移動した。
　味方はまだ正面との敵に戦っているためザレムには投石が来ていない。
「とにかく減らさないとな」
　複数の熊型雑魔と戦闘になるザレム。
『エレクトリックショック』を使い、行動阻害して敵の胴体に斬撃するも、多勢に無勢だ。
「何しに来やがった」
　戦闘をしていると、其処へベアットがやってくる。
「人質？　その前にお前を仕留めりゃ問題無いだろ」
　ベアットに向くザレム。
「一人でどうにか出来るかと思ったのか？　馬鹿が」
　周りの熊型雑魔と連携して得意の爪攻撃をしてくるベアット。
「チッ」
　なんとか回避するものの複数の攻撃のためにダメージは免れない。
「ほらほら、どうした？」
　得意気にザレム攻撃しながら煽るベアット。
「くっ」
　スキルの使用を考えるが相手が多すぎる。
「おらおら、どうしたんだ？　かかって来いよ」
　囲まれるのを回避しながらも嬲られる状態に近いザレム。
「ふんっ」
　無論、ザレムも反撃するが多勢に無勢だ。


　そこへ正面の敵を苦労して掃討したハンター達の一部がやってきた。
　両翼の敵にもハンター達が向かっているおかげで投石攻撃はそちらに向かっている。
「ここで待っててくれ」
　リーリーから降りたクリステン。
　ベアット達はザレムと対峙して気がついていない。
「レクイエム！」
　ミルベルトがスキルで行動阻害をする。
「クソっ！　まだいたのか！」
　行動阻害により、正面から来たハンターに気がつくベアット。
「一気に行く」
　ベアットと雑魔に対して薙ぎ払いで攻撃をするクリスティン。
　取り巻きの雑魔に対しては胴体に深い傷を負わして倒した。
　ベアットに対しては胴体にダメージを与えた。
「糞が！　やりやがったな！」
　ダメージを受けて本気になるベアット。
「絶対に倒すわ」
　クリスティンと同時に陣風と雷切でベアットに斬りかかるユーリ。
　マテリアルの効果もあってクリスティンに続けてベアットの胴体にかなり深い傷を負わすことが出来た。
「ちぃ！　やりやがったな！」
　激怒しているベアット。
「雑魚を減らさないと」
　先ほどの戦闘で傷ついてる雑魔の胴体へ斬撃をするザレム。
　蓄積ダメージもあり、胴体への新たな傷とともに倒される雑魔。
「良くもやってくれたな！」
　行動阻害が切れたベアットが軽いフットワークで凶悪な爪で残った雑魔と共にユーリ達へ攻撃をしてくる。
「させるか！」
　後方のザレムがエレクトリックショックでベアットの行動阻害をする。
「がああああああああ！　糞！　糞！」
　攻撃を阻害されたベアットが叫ぶ。
「先ず、雑魚を片付けましょう」
「そうだな」
　ベアットと共にる熊型雑魔を攻撃するユーリ。
　一撃で縦に両断する。
　クリスティンは薙ぎ払いを使い、纏めて雑魔を攻撃して倒す。
　こうして、ベアットの周りの雑魔は倒されてベアットのみとなった。
「糞が！　コイツがどうなってもいいのか！」
　人質を盾に取るベアット。
「横暴な振る舞いもここまでです！」
　三度目のレクイエム――後1度だけだ。
「またか！　糞！」
「離れてもらうぞ」
　クリスティンが人質から離れる様に『強撃』を使ってベアットに斬りかかる。
　胴体に深い傷を負い、人質から離れる形なったベアット。
「ぐぁっ！」
　苦しそうなベアット。
「利用させないわ」
　人質のそばに行くユーリ。
　そこからスキルを使ってベアットを攻撃するユーリ。
「ぐっ！」
　見るからに動きが緩慢なベアット。
「ついでだ！」
　後方から人質から離れたベアットの背を斬るザレム。
　ベアットの背に傷をつける。
「ちぃ……逃げ……」
　息も絶え絶えの弱り切ったベアットが逃げようとする。
「絶対逃がさない。お前はここで死ぬんだよ！　剣に不退転の決意込め、仲間達と共に奴を討つ！」
　エレクトリックショックを放つザレムによって逃亡を阻止されたベアット。
「……糞が……覚えてやがれ……」
「トドメよ」
　行動阻害されたベアットにスキルを使って攻撃するユーリ。
　ベアットにダメージを与え、蓄積されたダメージによりベアットが前に倒れる。
　倒れたまま動かないベアット。
　ベアットはユーリ達によって倒された。
「残党の殲滅だな」
　アルファス達が戦っている様子を見て言うクリスティン。
「次はお前らの番かな」
　残党を睨みつけるように言うザレム。

　ハンター達は残党を掃討するために向かう。

●対熊型雑魔
　一方、ミルベルト達がベアットへ向かっている時、アルファス達も周囲の熊型雑魔へと向かっていた。

　左翼のアルファスと犬養。
「幻獣達は返してもらうよ」
「さぁ、頑張るわよ」
　リーリーから降りたアルファスは投石の中、敵の群れに突撃する。
　犬養は大回りでアルファスに続く。
「喰らえ！」
　『エレクトリックショック』を浴びせて１体の熊型雑魔の行動阻害をする。
「今だ！」
　行動阻害された敵を横から銃撃する犬養。
　放たれた銃弾は投石の妨害を受けているため、胴体へと当たりダメージを与える。
　投石攻撃に晒されながらも二人は連携して攻撃を続ける。
「もう一度！」
「分かったわ」
　アルファスは『青龍』やエレクトリックショックを使い行動を阻害。
　犬養は行動が阻害された敵を攻撃していく。
　しかし、投石による妨害もあり、本来のパフォーマンスが出ずに苦戦している。
「人質を盾に」
「卑怯ね」
　人質を盾にする雑魔。
　二人の行動に対して危害を加えようとする。
　危害を加えたその瞬間の隙――アルファスがスキルで行動阻害させる。
　犬養が敵を攻撃する。
　解けた瞬間、アルファスは『試作振動刀「オートMURAMASA」』で攻撃する。
　犬養から受けたダメージもあって倒される雑魔。
　人質に負傷が出たものの救出が出来た。
「これでおもいっきり出来るね」
「人質さえいなければこちらのものね」
　相変わらず投石攻撃が続くが『デルタレイ』を放って複数の敵を攻撃する。
　犬養もスキルを使って攻撃をする。
　まだまだ敵は多い――苦戦しながら戦闘は続く。

　一方、右翼のアルトとグレイブ。
　投石攻撃が続く中、右翼の一団に対して攻撃を開始していた。
「熊が埴輪に勝とうなんて１０万年早いんだぞ、と。俺の埴輪魂……貴貴様程度でどうにか出来ると思わないことだな」
　『踏込』からの『渾身撃』でハンマーを振りかざすアルト。
　振りかざしたハンマーは邪魔にあい、雑魔の胴体へと当る。
　ハンマーの打撃を胴体に受ける敵。
「石が鬱陶しいが……悪くない連携だ。一気に畳み掛けるとしよう」
　『チャージング』からの『薙ぎ払い』で複数の敵をなぎ払うグレイブ。
　薙刀による薙ぎ払いは威力が多少落ちたものの複数の敵にダメージを与える。
「埴輪、渾身の一撃で吹き飛ばしてやるさ」
「纏めて相手してやる」
　アルトがハンマーを思いっ切りハンマーを振りかざして敵を攻撃する。
　グレイブは勢いをつけて複数の敵を薙ぎ払ってダメージを与える。
　投石によって邪魔をされてパフォーマンスが落ちている為、苦戦している。
　何時も以上に時間がかかる。
　人質を盾にとる熊型雑魔。
「人質は無駄だ」
　グレイブの動きを見て人質を危害を加えようとする敵。
「卑怯だな」
　敵が人質に危害を加えた隙に『チャージング』で移動して薙刀で攻撃するグレイブ。
　そこに人質から離れるようにハンマー振りかざすアルト。
　攻撃によって人質から離れる雑魔。
　アルトとグレイブによって人質から離れた敵を倒す。
「……しかし、幻獣で埴輪とかおらんのかね、この世界に」
「これで、人質は解放だな」
　二人は投石の妨害を受けながら数の多い敵を苦戦しながら戦う。

　両翼のハンター達が苦戦している途中、ベアットが倒される。
　統率を失う敵集団――投石攻撃もまばらになる。
　ベアットを倒したハンター達が合流する。
　ユーリとザレムが左翼へ、クリスティン、ミルベルトが右翼へと合流する。
　合流したハンター達によって両翼の敵集団を掃討する。
　しかし――数はまだ多いので苦戦しながらの時間のかかる掃討になった。
　苦戦しながらもベアットを倒し部隊を掃討することが出来た。
　祈りのマテリアルの力も大きかった。

　【幻森】ベアットの逆襲　Fin