ゲスト
(ka0000)
未来の英雄達、その回顧録 第四編
マスター:ムジカ・トラス
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
- 1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/11/30 07:30
- 完成日
- 2015/12/07 04:22
みんなの思い出
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オープニング
●
『賢明なる読者諸君には既知の事柄に過ぎるため、是より先は全て、自己満足の為の駄文に過ぎぬ。
しばしお付き合い願いたい。
グラムヘイズ王国で、庶民の娯楽として広く愛されているものを一つ挙げるとなると……さて、何を挙げるだろうか。
ある者は、劇場での観劇というかもしれない。またある者は、酒場で耳にする吟遊詩人の詩歌というかもしれない。
文化を愛する心。嗚呼、素晴らしい事だ。文化的素養は人生を豊かにする。
さて。賢明なる読者諸君。あなた方なら、きっとこういうことだろう。
たとえどれだけ下劣でも、どれだけ愚昧でも、どれだけ低俗でも、どれだけ醜穢でも、どれだけ猥雑だとしても。
ヘルメス情報局の『号外』こそが我々の娯楽だ、と。
――勿論、我々の記事が斯様に下劣で愚昧で低俗で醜穢で猥雑であるというのは仮定に過ぎない事もまた、賢明なる読者諸君ならご理解いただける事と思う』
●
昨今、サルヴァトーレ・ロッソなる紅い方舟の出現に呼応するように登録されたハンターの数が激増している。
覚醒者とは、何か。
覚醒者とは一定量以上のマテリアルを保有し、それを任意で行使出来る者を指す。
通常であれば、素養のあるものが覚醒者の高み――それすらも常人には計り知れない程の高みなのだ――に至るためには、筆舌に尽くし難い修練を要する。
そのため、現在は精霊との契約により、短期間で覚醒者に至る方法論が採択されている。
人の身で、精霊に触れる。
――そのことが何を意味するかは、触れた者にしか分かるまい。
読者諸君の中には、その邂逅について既に聞いたことがある者もいるかもしれない。筆者もその一人だ。
「もう一人の自分が、語りかけてきた」
そんな話を耳にした事がある。
今回、当情報局では精霊との接触――即ち契約について取材し、記事にした。
極めて個人的な内容も含まれるため、取材を快く受けてくれたハンター達に敬意を表するためにも、匿名性の高い記事になっている。
それでも、読者諸君らの知的好奇心をくすぐるに違いない。
何より――この世界の守護者であり、反抗の象徴である覚醒者達の物語だ。
未来の英雄達の、始まりの物語。
心行くままにに、お楽しみあれ。
―『未来の英雄達、その回顧録』序文―
●
親愛なる読者諸君。再びこの序文を掲載出来たことを嬉しく思う。
幸いにしてこの企画は上層部の覚え目出度く、企画継続の誉れを頂いており、さらに二度に渡って記事とした。
その後は王国内で騒動が続き、中々記事とすることは出来なかった。
道行く諸君らの声を聞く限りにおいても、やはり希求されているのは――What's happened.それに尽きた。
とはいえ、だ。
事件は収束した。してしまった。亜人騒動は加速度的に収束に向かい、同時に、王国の大敵である黒大公ベリアルの側近、クラベルの討伐の報せが王家より正式に成された。そのことは、先だっての『号外』にて詳しい。
……筆者自身としては、より踏み込んだ取材をしたい所ではあるのだが、生憎聖堂教会に睨まれている身の上であるからして、自重する旨を上司から頂戴したため、涙を呑んで最前線から退いたのである。
勤め人の立場は何時だって弱い。
さて。過日の記事をご覧になられた読者諸君に於いては、その中で多大なる尽力を果たした者達の存在について、お気づきになられた者も多いことと思う。
そう。ハンターだ。
ハンターズソサエティに覚醒者が増えたのが昨年の六月であったことを思えば、その躍進ぶりたるや目を見張るものがある。今回の騒動の中でも、一部のハンターには王家から直々に勲章も授与される事となっているようだ。
――そして、それ故に筆者に改めて声が掛かったのだ。
改めて、記させて頂こう。
この世界の守護者であり、反抗の象徴である覚醒者達の物語。
未来の英雄達の、始まりの物語。
心行くままにに、お楽しみあれ、と。
『賢明なる読者諸君には既知の事柄に過ぎるため、是より先は全て、自己満足の為の駄文に過ぎぬ。
しばしお付き合い願いたい。
グラムヘイズ王国で、庶民の娯楽として広く愛されているものを一つ挙げるとなると……さて、何を挙げるだろうか。
ある者は、劇場での観劇というかもしれない。またある者は、酒場で耳にする吟遊詩人の詩歌というかもしれない。
文化を愛する心。嗚呼、素晴らしい事だ。文化的素養は人生を豊かにする。
さて。賢明なる読者諸君。あなた方なら、きっとこういうことだろう。
たとえどれだけ下劣でも、どれだけ愚昧でも、どれだけ低俗でも、どれだけ醜穢でも、どれだけ猥雑だとしても。
ヘルメス情報局の『号外』こそが我々の娯楽だ、と。
――勿論、我々の記事が斯様に下劣で愚昧で低俗で醜穢で猥雑であるというのは仮定に過ぎない事もまた、賢明なる読者諸君ならご理解いただける事と思う』
●
昨今、サルヴァトーレ・ロッソなる紅い方舟の出現に呼応するように登録されたハンターの数が激増している。
覚醒者とは、何か。
覚醒者とは一定量以上のマテリアルを保有し、それを任意で行使出来る者を指す。
通常であれば、素養のあるものが覚醒者の高み――それすらも常人には計り知れない程の高みなのだ――に至るためには、筆舌に尽くし難い修練を要する。
そのため、現在は精霊との契約により、短期間で覚醒者に至る方法論が採択されている。
人の身で、精霊に触れる。
――そのことが何を意味するかは、触れた者にしか分かるまい。
読者諸君の中には、その邂逅について既に聞いたことがある者もいるかもしれない。筆者もその一人だ。
「もう一人の自分が、語りかけてきた」
そんな話を耳にした事がある。
今回、当情報局では精霊との接触――即ち契約について取材し、記事にした。
極めて個人的な内容も含まれるため、取材を快く受けてくれたハンター達に敬意を表するためにも、匿名性の高い記事になっている。
それでも、読者諸君らの知的好奇心をくすぐるに違いない。
何より――この世界の守護者であり、反抗の象徴である覚醒者達の物語だ。
未来の英雄達の、始まりの物語。
心行くままにに、お楽しみあれ。
―『未来の英雄達、その回顧録』序文―
●
親愛なる読者諸君。再びこの序文を掲載出来たことを嬉しく思う。
幸いにしてこの企画は上層部の覚え目出度く、企画継続の誉れを頂いており、さらに二度に渡って記事とした。
その後は王国内で騒動が続き、中々記事とすることは出来なかった。
道行く諸君らの声を聞く限りにおいても、やはり希求されているのは――What's happened.それに尽きた。
とはいえ、だ。
事件は収束した。してしまった。亜人騒動は加速度的に収束に向かい、同時に、王国の大敵である黒大公ベリアルの側近、クラベルの討伐の報せが王家より正式に成された。そのことは、先だっての『号外』にて詳しい。
……筆者自身としては、より踏み込んだ取材をしたい所ではあるのだが、生憎聖堂教会に睨まれている身の上であるからして、自重する旨を上司から頂戴したため、涙を呑んで最前線から退いたのである。
勤め人の立場は何時だって弱い。
さて。過日の記事をご覧になられた読者諸君に於いては、その中で多大なる尽力を果たした者達の存在について、お気づきになられた者も多いことと思う。
そう。ハンターだ。
ハンターズソサエティに覚醒者が増えたのが昨年の六月であったことを思えば、その躍進ぶりたるや目を見張るものがある。今回の騒動の中でも、一部のハンターには王家から直々に勲章も授与される事となっているようだ。
――そして、それ故に筆者に改めて声が掛かったのだ。
改めて、記させて頂こう。
この世界の守護者であり、反抗の象徴である覚醒者達の物語。
未来の英雄達の、始まりの物語。
心行くままにに、お楽しみあれ、と。
リプレイ本文
●役犬原 昶(ka0268)
その男は中々に印象深かった。筆者を吹き飛ばしかねないほどの声量で、彼は快活にもこう言ってのけた。
「精霊と契約時ねぇー? わりぃな! 覚えてねぇわ!」
相手が彼でなければ即刻立ち去っていたかもしれない。そうしなかったのは中々の快男児であった事と彼がすぐにこう言ったからだ。
「悪いとは思ってるんだぜ? まー……そうだな、ハンターになった経緯っつーなら、話せるぜ!」
―・―
俺には師匠がいてな!
あ? なんの師匠かって?
はっはー! もちろん建築の師匠だぜ!
毎日師匠の技術を『め』の当たりにして感動しまくりだったなぁ。
そしたらあれだよ、宇宙人だか何だかが攻めて来た。
んで、師匠と一緒に命からがらカニバトーレ・リゾット……だったか?(筆者注:サルヴァトーレ・ロッソ)に乗ってこの世界に来たんだわ。
んで、師匠がハンターなるものがある、っていうか一緒に受けに行ったんだ。
そしたらめでたくハンターになったっつー訳だ!
儀式?
覚えてねぇよ! っつーか師匠のほうが心配だったぜ。
ほら、上半身裸とかにされたしな。(筆者注:ソサエティに確認したところ、そのような事実はないとの事であった。この点は筆者の眼前で彼が“サイドチェスト”をしはじめた点と合わせて判断していただきたい)
―・―
およそ原文そのままである。なに、爽やかな人となりなのだ。他意はない。
さて。この世界は決して、優しくはない。
彼もその師匠も元は建築、特に設計を生業にしていた人間だという。荒事の多いハンター業を選ぶ事は常人には難しかっただろうが、昨今のあの艦での騒動を思えば、師匠なる人物の判断は慧眼だったと言えよう。
最後に、彼にとっての『師匠』について紙面を割きたい。
叶うならば、その師なる人物に、彼の想いが届くように。
―・―
俺にとって師匠?
そりゃ師匠は師匠だろ? それ以上何があるんだ? 可笑しな事聞くなぁ……まあいいか。
俺は師匠のモンだし、師匠の為なら命だって差し出すぜ!
だって俺は弟子だからな!
師匠は自分の為に、弟子は師匠の為に。それが師弟ってもんだろ!
―・―
彼は、過剰に過ぎるほどに師を敬う。
――彼が本取材の報酬として望んだのは、師匠が関心を持ち得る建築物だった。
大聖堂を初めとして王都の数々の建築物を薦めたが、さて、いかがだっただろうか。
●クレール(ka0586)
握手に差し出された少女の手は硬かった。武器を握るものとは少し趣が違う。
筆者の訝しげな気配に、少女は爛漫と笑いこう言った。
「鍛冶師、なんです。私!」
自らの手を見つめる眼差しは、とても温かく誇らしげである。しかし、その表情はすぐに照れくさそうなものに変わる。
「号外、いつも楽しみにしてましたので……緊張、しますね!」
中々に善い人物であるようであった。
彼女は、脈々と受け継がれる鍛冶師一族の出である。
家族は彼女を愛したのだろう。彼女もまた家族を愛した。
それ故に自らの道を探すべく彼女は隠れて家を出て、契約に望んだ。
――少女は両の手を堅く組みながら、語り始めた。
―・―
目を閉じて、開けたら……何も無い空間に、大きなカラスが一羽居ました。
黒い烏はふるりと翼を揺らして、こう言ったんです。
『触れられたら、力をやる』
手を伸ばしたら、すぐにカラスの四方を高く分厚い壁が覆いました。
壁はとても堅くて、叩いてもびくともしません。
すると、カラスはこう言いました。
『上は、脆くて薄い』
もちろん、登りました。
登って、上の壁を見下ろして……私は。
怒りに、震えました。
―・―
静かな声で語る少女の手は震えていた。
壁は薄かったという。脚を踏み出せば、すぐに割れそうなほどに。
ただ。その壁には、少女の家族が描かれていたのだ。最愛の家族がだ。
踏み出せば割れる。
そうすれば、契約は成る。
精霊は覚悟を求めたのだろうと筆者は思う。
だが。
かの精霊も、肝を冷やしたのではなかろうか。
少女が示したのは――。
―・―
私は、降りました。
私が力が欲しかったのは、家族を捨てるためなんかじゃなかったから。
……だから。
目の前の分厚い壁を、殴りつけました
痛かった。それでも。何度も。何度も何度も何度も拳を叩きつけて。
気絶しかける自分を痛みで起こして、叩いて、叩いて叩いて叩いて――やがて、小さな穴が空きました。
狂喜しました。
でも、手は通らない。小さな穴、だったから。
だから『小さくした』んです。
穴を通して、そうやって、カラスを突き刺しました。
――瞬間。壁が、空間が崩れて……気付いたら、元の場所に立っていたんです。
―・―
本当に痛かった。でも、あれで良かったのだと、彼女は語った。
鍛冶師たる少女は、契約から多くを得たのだろう。
彼女は今、その小さな胸の裡に芯鉄を抱き、自らが往くべき道を、思う様に歩いているようであった。
●ジャック・J・グリーヴ(ka1305)
かつて兄弟全てが覚醒者という祝福されし一族の少年を取材したが、この度その家族の取材をする機会に恵まれた。
弟氏は好人物であった。さて、その兄はと言うと。
「フッ、ヘルメス情報局もようやくこの世界の中心たる俺様を取材する気になったか」
匿名性を高めるのがこの記事の旨ではあるのだが――今回ばかりは難しいかもしれない。「べ、別に他の奴を羨ましいとか思ってなんかなかったんだからな!」と言い募った彼は、筆者ではなく筆者の相棒ばかりを見つめていた。
そのまま我々は酒場へと足を運んだ。取材費には限りのある身の上である。懐に優しい場末の酒場で安堵した。どうやら、この取材の為に良い店を見繕ってくれていたようだ。
――成程、こうしてみると、確かに兄弟であるらしい。
どこか貴族らしからぬ人の良さが滲んでいた。
―・―
精霊との契約時の話か。
正直うろ覚えなんだよなぁ、前の晩しこたま酒飲んで二日酔いだったし。
儀式場に行って「契約してぇ〜」って思ったらいつの間にか契約してた……的な感じでな。
―・―
チーズを細かく割いて味わい酒を流し込んだ彼は、「我ながらクソみてぇな契約だったと思うぜ」と笑った。
何故か彼は筆者から視線をそらしてばかりであり、途方にくれた筆者には気づかなかったのだろう。
だが、その後の話は興味深かった。
彼にとって、契約そのものには意味はなかった。
貴族である彼だが、なんと通商をしているらしい。故に彼にとってハンターとは護衛に雇う某かであった。雇うとなると銭がかかる。『成上り』である彼の家にとっては苦しい出費だ。
畢竟、動機は銭だった。自前で守れば懐も潤う、と。
「普段見栄張ってノブレス・オブリージュだの何だの言っちゃいるが、実際はこんなもんだ」
微かな吐息と共に、彼はそう言った。
―・―
……そいや精霊に「どう在りたいか」とだけ聞かれたな。
そん時は何て答えたっけなぁ――ああ、そうだ。
俺は、俺である事を貫きたい、何回何十回何百回絶望に襲われても、俺のままでありたい。
そう、答えたぜ。
―・―
暫し静かな酒が続いた後、その口元から零れたのはそんな言葉だった。
仕事柄、戦場での彼の噂を聞くこともある。彼は誰よりも前に立つ。盾と鎧とその身体をもって。
彼は精霊に応えた通り、彼らしく在り続けているのだろう。
「でないとあの世のダチに申し訳立たねぇんだ」
彼にとってのノブレス・オブリージュの根本は、そんな所にあるのだろう。
●エアルドフリス(ka1856)
不思議な香りのする人物だった。聞けば薬を扱っているのだそうだ。
「俺は遥か北で育った。あんた方が辺境と呼ぶ場所――そう、近頃話題の戦場さ」
濡れたような癖のある金髪や、無骨な銀飾りは、どこか超然としたその男の雰囲気によく似合っていた。それだけに辺境の薬師としては些か洒脱にも見える。
辺境は特に精霊と近しい土地だ。そんな彼の精霊との関わりは、幼い頃にまで遡る。
―・―
俺は巫女になる事を望まれていた。
素質があるってんでね。7つやそこらから只管修行に明け暮れた。
髪を伸ばし、他の子供みたいに遊んだり狩りや細工を覚える事も許されず、祈りと舞と歌、儀式と部族の歴史を仕込まれた。
――向いてなかったのかね。精霊との接触は叶わなかったよ。
俺だけじゃない。部族の皆もそう思ってただろう。
しかし婆様が……偉い巫女が後継者は俺だと言って譲らなくてね。
拾ってもらった恩義もあった。
『時来たらば巫女として、その命で部族を贖え』と言われても、俺は修行に励んでいたよ。
―・―
巫女、あるいは、巫覡として見出された彼は、その生の全てを捧げた。
そして。少年であった彼が、修行から戻った時のことである。
確かに彼は精霊と交感することが出来た。
だが――それは決して、始まりなどではなかった。
―・―
燻る炎、消えた森、枯れた川――そして、見知った人達の亡骸。
受け入れてくれた地を、人々を俺は護れなかった。
地に落ちた金の鍵も拾えず。炎に煽られながら、俺はなにも出来なかった。
死にたかった。
なのに、確かに聞こえたのさ。
今も覚えているよ。
『生きよ
生きて円環を巡れ
雨の如く巡り流れよ
汝、地に落ちた一滴』
そう、語りかけられた。
―・―
今の彼は巫女ではなく、旅の薬師である。
そんな彼と契約した精霊は、『水』――円理を示すように環を成し巡り、時に蛇のようにも見えるという。
「巫女としちゃ落ち毀れだったがね、俺の中の何かが今も故郷と繋がってるんだと思う」
彼はそう言って、パイプを咥えた。その拍子に、脇に挿した小振りなナイフの柄には雨と炎の紋章が目に入り、合点がいった。
――なるほど。どうやら彼は、正しく巫女であるらしい。
水は大海へ至り、空に還り、降り注ぐ。
彼はその中の、まさに一滴として生きているのだ。
実に、かの精霊が望む姿であるように筆者には思えた。
●ネイハム・乾風(ka2961)
この取材も長い。通りすがりの某かがハンターかもしれない、と思えるようになってきた。
痩身の彼も、王国の往来で捕まえた。白髪の青年は見上げる程に大きいが気弱さの滲む――しかしながら、その印象がどこか『揺れている』。
そんな不思議な青年だった。
「契約時……? そんなに面白いものじゃないと思うよ?」
―・―
俺の祖父は覚醒者でね。その人に育てられたんだ。
祖父は猟師でね。俺も猟師として生きていくと思ったんだけれど……今所属している所が、祖父の腕が欲しかったらしい。
けれど、その頃には祖父も良い年だったし俺が紹介されたんだ。
契約に臨んだのは、そんな理由だった。
儀式は単純だった。
精霊は狼でね。白い毛色で赤紫色の瞳の、立派な体躯をした狼の様相だった。
問われたのは一言だけだ、それが必要なものだったのか形式美だったのかは知りえないけれども。
精霊はこう言った。
『躊躇いもなく引鉄を引けるか』、ってね。
――ま、言うまでもないものだよね。すぐに頷いたよ。
そして俺は、狼の目を貰って契約したって訳だ。
俺の行動をその選択を見届ける気でいるのかな……?
―・―
青年はいつしか、薄く笑っていた。酷薄にすら見える笑顔で。
引鉄を引くのは好きかと問うと、勿論と頷きが返った。だからこそ契約をすることを決めたのだ、と。
青年は、気づいているのだろうか。この話題に触れるときだけ、彼の言葉と瞳に、熱が籠るのを。
明快な変化は、銃の扱いを教えた祖父の影響とは筆者には思えなかった。聞けば聞くだけ、氏については常識的な答えが返ってくるからだ。
だとするならば。
それは、彼自身の気質なのだろう。恐らくは、その過去に起因する何か。
筆者の前で、彼はこう結んだ。
―・―
祖父は良い機会だから外の世界も見て来いとか行ったけれど、どうだろうね。
俺は俺の願望を未だ抱えたままだし……それが人と触れて何か大きく変わったとは思えない。
―・―
「でも、まぁ……俺より生について考えている、ギルドの彼らの事を見るのはそう嫌いではないよ」
声色が、明らかに変じていた。玻璃の向こうから響くようなその声を聞くに至り筆者は漸く思い至った。
――獲物を撃つ。あるいは、引鉄を引く。
それこそが、この少年の本質なのだろうと。
●ルシール・フルフラット(ka4000)
まさしく『女騎士』を体現している女性であった。所作の全てに芯があり、何よりも洗練されている。
母方が騎士の家系という。豊かな金髪や、均整のとれた肢体は、脈々と受け継がれてきた血筋を――何より歴史を感じさせる。
凛然たる様子の彼女は、その雰囲気を保ったまま、柔らかく微笑んだ。
「さて、ハンター登録の際の精霊契約の話、だったか」
―・―
私が大精霊との契約時に感じたのは、そうだな……熱、だった。
暖かく、熱く、安らぎと高揚をもたらす熱。
身体の奥底から、湧き上がるそれが、前へ進む力になるのを感じたよ。
特に試されたりはしなかった、が……そうだね。
……これは、恥をひけらかすような話になるのだが。
―・―
話しながら、小さく咳払いをした彼女は、その生い立ちを語ってくれた。
彼女が剣を取り、騎士となった頃のことだ。彼女は、自らの浅慮によって窮地に追いやられた。
恐らくは、人死にもあったのだろう。悔悟の表情と共に、彼女は語っていた。
覚醒者になる以前に、精霊と契約を結ぶ以前に――彼女は、喪っていたのだろう。
「この身を剣として、死ぬ覚悟で戦わねばならない、と息巻いていたんだ」
それは、ある意味で間違いではないのだろう。
ただ、彼女は誤ってしまった。分水嶺を越えた戦場で、彼女は死の淵に立った。
そして――。
―・―
そしてそれを、命懸けで救ってくれた人が居たんだ。
その時に、叱られたのさ。
『死ぬ覚悟なんてのは騎士サマの綺麗事だ。生き抜く覚悟の無い奴は戦場に立つな』
……あの時の言葉は……痛かったなぁ。
――ああ、すまん話が逸れたか。
私の未熟さゆえに失った仲間、護ることの叶わなかった命。
そうしたものたちと共にあり、そうしたものたちのために今私はここにいる。
それゆえに、私の覚醒時には熱を得るのやもしれないな。
―・―
今の彼女は、非の打ち所のない素敵な女性であり、弟子を抱えた騎士である。
……彼女の『熱』はその胸の内から湧き、安らぎを抱くのだという。
生きることを諦めない、その為に剣を振るう彼女は、精霊に、赦されたのかもしれない。
護るべきを護り、生き抜くために彼女は契約を結んだ。
それを認めたのは、あるいは彼女に故在るものかもしれない、と。
覚醒者ならぬ筆者は――些か少女じみてはいるが――期待も込めて、そう思った。
その男は中々に印象深かった。筆者を吹き飛ばしかねないほどの声量で、彼は快活にもこう言ってのけた。
「精霊と契約時ねぇー? わりぃな! 覚えてねぇわ!」
相手が彼でなければ即刻立ち去っていたかもしれない。そうしなかったのは中々の快男児であった事と彼がすぐにこう言ったからだ。
「悪いとは思ってるんだぜ? まー……そうだな、ハンターになった経緯っつーなら、話せるぜ!」
―・―
俺には師匠がいてな!
あ? なんの師匠かって?
はっはー! もちろん建築の師匠だぜ!
毎日師匠の技術を『め』の当たりにして感動しまくりだったなぁ。
そしたらあれだよ、宇宙人だか何だかが攻めて来た。
んで、師匠と一緒に命からがらカニバトーレ・リゾット……だったか?(筆者注:サルヴァトーレ・ロッソ)に乗ってこの世界に来たんだわ。
んで、師匠がハンターなるものがある、っていうか一緒に受けに行ったんだ。
そしたらめでたくハンターになったっつー訳だ!
儀式?
覚えてねぇよ! っつーか師匠のほうが心配だったぜ。
ほら、上半身裸とかにされたしな。(筆者注:ソサエティに確認したところ、そのような事実はないとの事であった。この点は筆者の眼前で彼が“サイドチェスト”をしはじめた点と合わせて判断していただきたい)
―・―
およそ原文そのままである。なに、爽やかな人となりなのだ。他意はない。
さて。この世界は決して、優しくはない。
彼もその師匠も元は建築、特に設計を生業にしていた人間だという。荒事の多いハンター業を選ぶ事は常人には難しかっただろうが、昨今のあの艦での騒動を思えば、師匠なる人物の判断は慧眼だったと言えよう。
最後に、彼にとっての『師匠』について紙面を割きたい。
叶うならば、その師なる人物に、彼の想いが届くように。
―・―
俺にとって師匠?
そりゃ師匠は師匠だろ? それ以上何があるんだ? 可笑しな事聞くなぁ……まあいいか。
俺は師匠のモンだし、師匠の為なら命だって差し出すぜ!
だって俺は弟子だからな!
師匠は自分の為に、弟子は師匠の為に。それが師弟ってもんだろ!
―・―
彼は、過剰に過ぎるほどに師を敬う。
――彼が本取材の報酬として望んだのは、師匠が関心を持ち得る建築物だった。
大聖堂を初めとして王都の数々の建築物を薦めたが、さて、いかがだっただろうか。
●クレール(ka0586)
握手に差し出された少女の手は硬かった。武器を握るものとは少し趣が違う。
筆者の訝しげな気配に、少女は爛漫と笑いこう言った。
「鍛冶師、なんです。私!」
自らの手を見つめる眼差しは、とても温かく誇らしげである。しかし、その表情はすぐに照れくさそうなものに変わる。
「号外、いつも楽しみにしてましたので……緊張、しますね!」
中々に善い人物であるようであった。
彼女は、脈々と受け継がれる鍛冶師一族の出である。
家族は彼女を愛したのだろう。彼女もまた家族を愛した。
それ故に自らの道を探すべく彼女は隠れて家を出て、契約に望んだ。
――少女は両の手を堅く組みながら、語り始めた。
―・―
目を閉じて、開けたら……何も無い空間に、大きなカラスが一羽居ました。
黒い烏はふるりと翼を揺らして、こう言ったんです。
『触れられたら、力をやる』
手を伸ばしたら、すぐにカラスの四方を高く分厚い壁が覆いました。
壁はとても堅くて、叩いてもびくともしません。
すると、カラスはこう言いました。
『上は、脆くて薄い』
もちろん、登りました。
登って、上の壁を見下ろして……私は。
怒りに、震えました。
―・―
静かな声で語る少女の手は震えていた。
壁は薄かったという。脚を踏み出せば、すぐに割れそうなほどに。
ただ。その壁には、少女の家族が描かれていたのだ。最愛の家族がだ。
踏み出せば割れる。
そうすれば、契約は成る。
精霊は覚悟を求めたのだろうと筆者は思う。
だが。
かの精霊も、肝を冷やしたのではなかろうか。
少女が示したのは――。
―・―
私は、降りました。
私が力が欲しかったのは、家族を捨てるためなんかじゃなかったから。
……だから。
目の前の分厚い壁を、殴りつけました
痛かった。それでも。何度も。何度も何度も何度も拳を叩きつけて。
気絶しかける自分を痛みで起こして、叩いて、叩いて叩いて叩いて――やがて、小さな穴が空きました。
狂喜しました。
でも、手は通らない。小さな穴、だったから。
だから『小さくした』んです。
穴を通して、そうやって、カラスを突き刺しました。
――瞬間。壁が、空間が崩れて……気付いたら、元の場所に立っていたんです。
―・―
本当に痛かった。でも、あれで良かったのだと、彼女は語った。
鍛冶師たる少女は、契約から多くを得たのだろう。
彼女は今、その小さな胸の裡に芯鉄を抱き、自らが往くべき道を、思う様に歩いているようであった。
●ジャック・J・グリーヴ(ka1305)
かつて兄弟全てが覚醒者という祝福されし一族の少年を取材したが、この度その家族の取材をする機会に恵まれた。
弟氏は好人物であった。さて、その兄はと言うと。
「フッ、ヘルメス情報局もようやくこの世界の中心たる俺様を取材する気になったか」
匿名性を高めるのがこの記事の旨ではあるのだが――今回ばかりは難しいかもしれない。「べ、別に他の奴を羨ましいとか思ってなんかなかったんだからな!」と言い募った彼は、筆者ではなく筆者の相棒ばかりを見つめていた。
そのまま我々は酒場へと足を運んだ。取材費には限りのある身の上である。懐に優しい場末の酒場で安堵した。どうやら、この取材の為に良い店を見繕ってくれていたようだ。
――成程、こうしてみると、確かに兄弟であるらしい。
どこか貴族らしからぬ人の良さが滲んでいた。
―・―
精霊との契約時の話か。
正直うろ覚えなんだよなぁ、前の晩しこたま酒飲んで二日酔いだったし。
儀式場に行って「契約してぇ〜」って思ったらいつの間にか契約してた……的な感じでな。
―・―
チーズを細かく割いて味わい酒を流し込んだ彼は、「我ながらクソみてぇな契約だったと思うぜ」と笑った。
何故か彼は筆者から視線をそらしてばかりであり、途方にくれた筆者には気づかなかったのだろう。
だが、その後の話は興味深かった。
彼にとって、契約そのものには意味はなかった。
貴族である彼だが、なんと通商をしているらしい。故に彼にとってハンターとは護衛に雇う某かであった。雇うとなると銭がかかる。『成上り』である彼の家にとっては苦しい出費だ。
畢竟、動機は銭だった。自前で守れば懐も潤う、と。
「普段見栄張ってノブレス・オブリージュだの何だの言っちゃいるが、実際はこんなもんだ」
微かな吐息と共に、彼はそう言った。
―・―
……そいや精霊に「どう在りたいか」とだけ聞かれたな。
そん時は何て答えたっけなぁ――ああ、そうだ。
俺は、俺である事を貫きたい、何回何十回何百回絶望に襲われても、俺のままでありたい。
そう、答えたぜ。
―・―
暫し静かな酒が続いた後、その口元から零れたのはそんな言葉だった。
仕事柄、戦場での彼の噂を聞くこともある。彼は誰よりも前に立つ。盾と鎧とその身体をもって。
彼は精霊に応えた通り、彼らしく在り続けているのだろう。
「でないとあの世のダチに申し訳立たねぇんだ」
彼にとってのノブレス・オブリージュの根本は、そんな所にあるのだろう。
●エアルドフリス(ka1856)
不思議な香りのする人物だった。聞けば薬を扱っているのだそうだ。
「俺は遥か北で育った。あんた方が辺境と呼ぶ場所――そう、近頃話題の戦場さ」
濡れたような癖のある金髪や、無骨な銀飾りは、どこか超然としたその男の雰囲気によく似合っていた。それだけに辺境の薬師としては些か洒脱にも見える。
辺境は特に精霊と近しい土地だ。そんな彼の精霊との関わりは、幼い頃にまで遡る。
―・―
俺は巫女になる事を望まれていた。
素質があるってんでね。7つやそこらから只管修行に明け暮れた。
髪を伸ばし、他の子供みたいに遊んだり狩りや細工を覚える事も許されず、祈りと舞と歌、儀式と部族の歴史を仕込まれた。
――向いてなかったのかね。精霊との接触は叶わなかったよ。
俺だけじゃない。部族の皆もそう思ってただろう。
しかし婆様が……偉い巫女が後継者は俺だと言って譲らなくてね。
拾ってもらった恩義もあった。
『時来たらば巫女として、その命で部族を贖え』と言われても、俺は修行に励んでいたよ。
―・―
巫女、あるいは、巫覡として見出された彼は、その生の全てを捧げた。
そして。少年であった彼が、修行から戻った時のことである。
確かに彼は精霊と交感することが出来た。
だが――それは決して、始まりなどではなかった。
―・―
燻る炎、消えた森、枯れた川――そして、見知った人達の亡骸。
受け入れてくれた地を、人々を俺は護れなかった。
地に落ちた金の鍵も拾えず。炎に煽られながら、俺はなにも出来なかった。
死にたかった。
なのに、確かに聞こえたのさ。
今も覚えているよ。
『生きよ
生きて円環を巡れ
雨の如く巡り流れよ
汝、地に落ちた一滴』
そう、語りかけられた。
―・―
今の彼は巫女ではなく、旅の薬師である。
そんな彼と契約した精霊は、『水』――円理を示すように環を成し巡り、時に蛇のようにも見えるという。
「巫女としちゃ落ち毀れだったがね、俺の中の何かが今も故郷と繋がってるんだと思う」
彼はそう言って、パイプを咥えた。その拍子に、脇に挿した小振りなナイフの柄には雨と炎の紋章が目に入り、合点がいった。
――なるほど。どうやら彼は、正しく巫女であるらしい。
水は大海へ至り、空に還り、降り注ぐ。
彼はその中の、まさに一滴として生きているのだ。
実に、かの精霊が望む姿であるように筆者には思えた。
●ネイハム・乾風(ka2961)
この取材も長い。通りすがりの某かがハンターかもしれない、と思えるようになってきた。
痩身の彼も、王国の往来で捕まえた。白髪の青年は見上げる程に大きいが気弱さの滲む――しかしながら、その印象がどこか『揺れている』。
そんな不思議な青年だった。
「契約時……? そんなに面白いものじゃないと思うよ?」
―・―
俺の祖父は覚醒者でね。その人に育てられたんだ。
祖父は猟師でね。俺も猟師として生きていくと思ったんだけれど……今所属している所が、祖父の腕が欲しかったらしい。
けれど、その頃には祖父も良い年だったし俺が紹介されたんだ。
契約に臨んだのは、そんな理由だった。
儀式は単純だった。
精霊は狼でね。白い毛色で赤紫色の瞳の、立派な体躯をした狼の様相だった。
問われたのは一言だけだ、それが必要なものだったのか形式美だったのかは知りえないけれども。
精霊はこう言った。
『躊躇いもなく引鉄を引けるか』、ってね。
――ま、言うまでもないものだよね。すぐに頷いたよ。
そして俺は、狼の目を貰って契約したって訳だ。
俺の行動をその選択を見届ける気でいるのかな……?
―・―
青年はいつしか、薄く笑っていた。酷薄にすら見える笑顔で。
引鉄を引くのは好きかと問うと、勿論と頷きが返った。だからこそ契約をすることを決めたのだ、と。
青年は、気づいているのだろうか。この話題に触れるときだけ、彼の言葉と瞳に、熱が籠るのを。
明快な変化は、銃の扱いを教えた祖父の影響とは筆者には思えなかった。聞けば聞くだけ、氏については常識的な答えが返ってくるからだ。
だとするならば。
それは、彼自身の気質なのだろう。恐らくは、その過去に起因する何か。
筆者の前で、彼はこう結んだ。
―・―
祖父は良い機会だから外の世界も見て来いとか行ったけれど、どうだろうね。
俺は俺の願望を未だ抱えたままだし……それが人と触れて何か大きく変わったとは思えない。
―・―
「でも、まぁ……俺より生について考えている、ギルドの彼らの事を見るのはそう嫌いではないよ」
声色が、明らかに変じていた。玻璃の向こうから響くようなその声を聞くに至り筆者は漸く思い至った。
――獲物を撃つ。あるいは、引鉄を引く。
それこそが、この少年の本質なのだろうと。
●ルシール・フルフラット(ka4000)
まさしく『女騎士』を体現している女性であった。所作の全てに芯があり、何よりも洗練されている。
母方が騎士の家系という。豊かな金髪や、均整のとれた肢体は、脈々と受け継がれてきた血筋を――何より歴史を感じさせる。
凛然たる様子の彼女は、その雰囲気を保ったまま、柔らかく微笑んだ。
「さて、ハンター登録の際の精霊契約の話、だったか」
―・―
私が大精霊との契約時に感じたのは、そうだな……熱、だった。
暖かく、熱く、安らぎと高揚をもたらす熱。
身体の奥底から、湧き上がるそれが、前へ進む力になるのを感じたよ。
特に試されたりはしなかった、が……そうだね。
……これは、恥をひけらかすような話になるのだが。
―・―
話しながら、小さく咳払いをした彼女は、その生い立ちを語ってくれた。
彼女が剣を取り、騎士となった頃のことだ。彼女は、自らの浅慮によって窮地に追いやられた。
恐らくは、人死にもあったのだろう。悔悟の表情と共に、彼女は語っていた。
覚醒者になる以前に、精霊と契約を結ぶ以前に――彼女は、喪っていたのだろう。
「この身を剣として、死ぬ覚悟で戦わねばならない、と息巻いていたんだ」
それは、ある意味で間違いではないのだろう。
ただ、彼女は誤ってしまった。分水嶺を越えた戦場で、彼女は死の淵に立った。
そして――。
―・―
そしてそれを、命懸けで救ってくれた人が居たんだ。
その時に、叱られたのさ。
『死ぬ覚悟なんてのは騎士サマの綺麗事だ。生き抜く覚悟の無い奴は戦場に立つな』
……あの時の言葉は……痛かったなぁ。
――ああ、すまん話が逸れたか。
私の未熟さゆえに失った仲間、護ることの叶わなかった命。
そうしたものたちと共にあり、そうしたものたちのために今私はここにいる。
それゆえに、私の覚醒時には熱を得るのやもしれないな。
―・―
今の彼女は、非の打ち所のない素敵な女性であり、弟子を抱えた騎士である。
……彼女の『熱』はその胸の内から湧き、安らぎを抱くのだという。
生きることを諦めない、その為に剣を振るう彼女は、精霊に、赦されたのかもしれない。
護るべきを護り、生き抜くために彼女は契約を結んだ。
それを認めたのは、あるいは彼女に故在るものかもしれない、と。
覚醒者ならぬ筆者は――些か少女じみてはいるが――期待も込めて、そう思った。
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/11/29 09:51:06 |