ゲスト
(ka0000)
Pクレープのクリスマス
マスター:深夜真世
- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
- 500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~50人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/12/22 19:00
- 完成日
- 2016/01/05 02:01
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
ここは同盟領。極彩色の街ヴァリオスの一角です。
「今度の休みの昼過ぎは~、街に出ましょう、そうしましょう~♪」
ふんふんと鼻歌交じりに街角屋台「Pクレープ」で働いているのは、Pクレープ店員の南那初華(kz0135)です。
「今日の風はやけにしみるねぇ~」
その横で自転車パンク修理屋を開いて腰掛けているおっさんは、戦場詩人のダイン・グラマン。
「ほへ? 冷たい、じゃないの?」
「んん? なんだかこう、年の瀬って感じがしないかい?」
侘び寂びにはちょっと疎い初華が手を止めて声を掛けると、ダインは優しくそう言います。
「いよう」
ここで、柄の悪い禿頭の兄ィちゃんがやってきました。付近を締めるならず者たちのヘッドです。
「いらっしゃいませ。今日は何の難癖ですか?」
「……お前、ぽややんとしてる割にいい度胸してるよな?」
「ほへ? ……んあっ! ご、ごめんなさいっ」
対応した初華、兄ィちゃんに凄まれ自分が何を言ったか理解したようです。慌ててぺこぺこ謝罪。
「まったく……これだからほっとけねぇんだよ」
「でもでもっ! 最初に来た時も『誰の許可があって』とか難癖つけたし、それからも私の焼いたクレープ食べては『生地の生きが足りねぇ』とか絶対文句言うじゃない~」
「グダグダ言わずに注文を取れ。今日はメロンジャムのクレープに白茶だ」
「あ、はぁい。ありがとうございます~」
やれやれ、と屋台に肘をつく兄ィちゃんです。
「荒れてるねぇ……最近、子分たちもそんな感じゃないのかねぇ?」
そんな兄ィちゃんに、横からダインがそれとなく声を掛けてみました。
「お前らがここに居座ってから付近で悪さができねぇんでイライラしてんだよ。適当に暴れさせりゃいいんだが、平和すぎてなぁ」
「そりゃ妙な気苦労だ。親分も大変だねぇ」
ここで兄ィちゃん、クレープを焼く初華の方に向き直りました。
「というわけでお前、クリスマスにここで何かやらねぇのか?」
「ほへ?」
「ぱあっと気分の張れるようなことしないのかって聞いてんだ。子分どももにぎやかにやりゃ気分も晴れるだろ?」
「んあっ! そういうことね」
こういうことには初華、敏感なようです。
というわけで、Pクレープのある通りでクリスマスイベントをすることになりました。
Pクレープも普段はやらない夜間営業です。この季節ですし、イベントなので生クリームも迷うことなく使えるでしょう。
それはそれとして。
「おっと。……それと、お前は今何をもらったら嬉しい?」
「何かくれるの?」
「ばぁか。子分から自分の彼女に何をプレゼントしていいか相談受けてんだよ」
「私に聞いてどうするのよぅ」
「ははぁ。踊れるような雰囲気と……彼女と楽しめるようなイベントが良さそうだねぇ」
ぶーたれる初華の横からダインがうんうん。
「あ。それなら私、知ってる人に声掛けるよ。それに、私も特別にお好み焼き、焼いちゃう♪」
というわけで、Pクレープと自転車修理露店のほか、お好み焼きが加わりました。
で、初華が誰に声を掛けたかというと。
「あら。初華さんの所でクリスマスイベント? まあ、ぜひおじいさんも初華さんたちと作った『パルムハウス』の見本を持って盛り上げに行くわ」
大工のおばあさんがにこにこして約束してくれました。
「良かろう。君には恩義がある。この占い小路の占い師も特別に占い卓を立てようじゃないか」
占い小路の妖しい占い師も腰を上げました。
というわけで、クリスマスイブにPクレープの手伝いや各種屋台の手伝い、そして何か屋台を出したり盛り上げてくれるハンターの募集をオフィスに出すのです。
もちろん、純粋に来場者として楽しんだり恋人達と過ごしたりする人も、求ム。
ここは同盟領。極彩色の街ヴァリオスの一角です。
「今度の休みの昼過ぎは~、街に出ましょう、そうしましょう~♪」
ふんふんと鼻歌交じりに街角屋台「Pクレープ」で働いているのは、Pクレープ店員の南那初華(kz0135)です。
「今日の風はやけにしみるねぇ~」
その横で自転車パンク修理屋を開いて腰掛けているおっさんは、戦場詩人のダイン・グラマン。
「ほへ? 冷たい、じゃないの?」
「んん? なんだかこう、年の瀬って感じがしないかい?」
侘び寂びにはちょっと疎い初華が手を止めて声を掛けると、ダインは優しくそう言います。
「いよう」
ここで、柄の悪い禿頭の兄ィちゃんがやってきました。付近を締めるならず者たちのヘッドです。
「いらっしゃいませ。今日は何の難癖ですか?」
「……お前、ぽややんとしてる割にいい度胸してるよな?」
「ほへ? ……んあっ! ご、ごめんなさいっ」
対応した初華、兄ィちゃんに凄まれ自分が何を言ったか理解したようです。慌ててぺこぺこ謝罪。
「まったく……これだからほっとけねぇんだよ」
「でもでもっ! 最初に来た時も『誰の許可があって』とか難癖つけたし、それからも私の焼いたクレープ食べては『生地の生きが足りねぇ』とか絶対文句言うじゃない~」
「グダグダ言わずに注文を取れ。今日はメロンジャムのクレープに白茶だ」
「あ、はぁい。ありがとうございます~」
やれやれ、と屋台に肘をつく兄ィちゃんです。
「荒れてるねぇ……最近、子分たちもそんな感じゃないのかねぇ?」
そんな兄ィちゃんに、横からダインがそれとなく声を掛けてみました。
「お前らがここに居座ってから付近で悪さができねぇんでイライラしてんだよ。適当に暴れさせりゃいいんだが、平和すぎてなぁ」
「そりゃ妙な気苦労だ。親分も大変だねぇ」
ここで兄ィちゃん、クレープを焼く初華の方に向き直りました。
「というわけでお前、クリスマスにここで何かやらねぇのか?」
「ほへ?」
「ぱあっと気分の張れるようなことしないのかって聞いてんだ。子分どももにぎやかにやりゃ気分も晴れるだろ?」
「んあっ! そういうことね」
こういうことには初華、敏感なようです。
というわけで、Pクレープのある通りでクリスマスイベントをすることになりました。
Pクレープも普段はやらない夜間営業です。この季節ですし、イベントなので生クリームも迷うことなく使えるでしょう。
それはそれとして。
「おっと。……それと、お前は今何をもらったら嬉しい?」
「何かくれるの?」
「ばぁか。子分から自分の彼女に何をプレゼントしていいか相談受けてんだよ」
「私に聞いてどうするのよぅ」
「ははぁ。踊れるような雰囲気と……彼女と楽しめるようなイベントが良さそうだねぇ」
ぶーたれる初華の横からダインがうんうん。
「あ。それなら私、知ってる人に声掛けるよ。それに、私も特別にお好み焼き、焼いちゃう♪」
というわけで、Pクレープと自転車修理露店のほか、お好み焼きが加わりました。
で、初華が誰に声を掛けたかというと。
「あら。初華さんの所でクリスマスイベント? まあ、ぜひおじいさんも初華さんたちと作った『パルムハウス』の見本を持って盛り上げに行くわ」
大工のおばあさんがにこにこして約束してくれました。
「良かろう。君には恩義がある。この占い小路の占い師も特別に占い卓を立てようじゃないか」
占い小路の妖しい占い師も腰を上げました。
というわけで、クリスマスイブにPクレープの手伝いや各種屋台の手伝い、そして何か屋台を出したり盛り上げてくれるハンターの募集をオフィスに出すのです。
もちろん、純粋に来場者として楽しんだり恋人達と過ごしたりする人も、求ム。
リプレイ本文
●
「きゃーっ、しまったーっ!」
突然ですが、暮れなずむ街角でそんな悲鳴が響きます。
「まさかこんなに手間取るなんて―っ!」
Pクレープの屋台で南那初華(kz0135)がきゃーきゃー言いながらクレープ生地の準備とかしてますね。
「……こんなことじゃないかと思ったのよねぇ」
「桃華さんっ!」
やれやれ、といった感じでPクレープ店員の東雲 桃華(ka4914)がやってきました。落ち着いた様子ですが……。
「ちょっと初華、そんなことしてる場合じゃないでしょ」
初華にがしー、と抱き着かれむぎゅむぎゅわたわた。
そこへもう一人。
「いつもと変わらない、という意味では良いことですね」
「天斗さんっ!」
同じく真田 天斗(ka0014)です。
初華がすかさずがしー、と抱きつ……。
「んあぅ!?」
「作業を急ぎましょう」
天斗、指先一つで初華の突撃を止めて白茶の在庫確認に取り掛かるのです。
そこへ、アルバ・ソル(ka4189)が来店。
「こんにちわ。調子はどう?」
「アルバさん、恋人さんと一緒なんだ?」
「まあ。素敵なお知合いですね、お兄様」
アルバの腕にぴとっとくっついてくるエステル・ソル(ka3983)は、初華の誤解にご機嫌です。
「妹なんだけど……ちょっとバイトさせてもらっていいかな?」
アルバ、軽やかにエプロンを身に着け鉄板の前に立ちます。
「何のクレープがいい?」
「苺とチョコのクレープさんが良いです!」
妹の希望に、いいよ、とお玉を手にするアルバ。鉄板で生地を丸く伸ばします。
「すごいです、魔法みたいです。……ぴろってしてくるくるってしてクレープさん出来ました!」
「言うほど簡単じゃないさ。はい、どうぞ」
兄の手つきに胸キュンするエステル。アルバの方は簡単に言いつつチョコと苺をくるんで三角形にして、出来上がり。
「じゃ、頑張って」
「ほへ? それだけ?」
「ああ、お兄様が私だけのために焼いてくれた……」
エステル、幸せそうに兄に寄り添い歩いて行きました。
他に屋台を出す人もいます。
「こういう行事の時なんかを利用して稼ぐ必要があるもので……」
神父のアルバ=ティアーレイン(ka5871)がよいしょ、と屋台に看板を立てましたよ。どうやらローストビーフの屋台を出すようで。
「神父殿、我はどうすればよかろうか?」
しゃがみ込んだ悪鬼羅刹(ka5831)が眼帯をしてない方の目でぎらりと見上げました。
「では羅刹さんは次に蒸す牛肉の用意を……」
「お父さん、セラはっ?!」
アルバ、羅刹の横で期待に瞳を輝かせるセラ=ティアーレイン(ka5832)を見てちょっと考えます。
「セラはほかの孤児たちと一緒に屋台を巡って……」
「えーっ。セラもお父さんのお手伝いするっ!」
「それじゃ、まずは添え物を用意しようか」
「うんっ!」
そんなこんなで一緒に準備をするアルバなのです。
●
「あ、あっちに何かあるわよ?」
賑わいは遠くからも分かるようで、近くを通り掛かった叢雲・咲姫(ka5090)が連れの手を取り……というか、ほぼ有無を言わさず連行してますね?
「いらっしゃいませ!Pクレープへようこそ♪」
すかさず桃華が接客。
「本日は生クリームをたっぷり使ったクレープを販売してますよ。もちろんジャムのクレープも」
てきぱきと勧められますが、いつも男勝りの咲姫、珍しく迷ってます。
「じゃあボクは生クリームをたっぷりと使ったクレープを」
咲姫の連れていたのは、弟の叢雲 伊織(ka5091)でした。姉を尻目にあっさりと注文したり。
「……あんなに男らしく決断するなんて、随分立派になったじゃない♪」
ジャムのクレープを手にした咲姫が感心します。
「そうです? あ、こっちも味見させてあげます」
余裕な感じの伊織、姉が自分の持つクレープも気になっていると見抜いて一口食べたところを差し出してみます。
「生意気ね」
咲姫、差し出されたクレープにがぶり。
「どうです?」
「ふわふわで……甘いわね」
「……本当ですね」
伊織、咲姫のほっぺについた生クリームを指の腹で優しくすくって、ペロリ。
「あ……」
「占いもあるみたいですよ。行ってみませんか?」
虚を突かれ固まる咲姫。伊織は先手を取ってエスコート。
「ふうん……いいわ。2人で手を繋いで楽しく過ごしましょう」
すっかり弟を見直し、安心したような笑顔を見せる咲姫でした。
「お・ま・つ・りー♪ フロー姉、ブリスちゃん、思いっきり楽しもうなのだ♪」
Pクレープには新たに、ネフィリア・レインフォード(ka0444)がやってきました。
「いらっしゃませ♪」
「僕、右から左まで全種類食べるのだ♪」
無茶言ったネフィリアのあとから姉のフローレンス・レインフォード(ka0443)が三女のブリス・レインフォード(ka0445)とともにやってきましたよ。
「ネフィ。無理だけは駄目よ? ブリスは何がいい?」
「フロー姉様とは違うもの」
「結局全種類なのだ!」
ネフィリアの言う通り、三種類全部お買い上げです。
「ええと……白茶もいかがですか?」
店員の桃華が聞きます。
「いただくのだ~♪」
「では、今の季節は寒いですがこれを飲んで温まっていって下さい」
ささっと天斗がやって来て白茶の実演販売。
「ふわぁ……ゆらゆらしてる……」
読書好きのブリスが、白茶の茶葉がゆらゆらする様子に目を輝かせていたり。
「おや、興味がおありで?」
「……」
天斗の存在に改めて気付いたブリス、ここで人見知りっぷりを発揮。同じくかぶりついて見ていたネフィリアにだきゅりして顔をうずめるのです。
ともかく、これで時間に余裕ができました。桃華、この隙にささっとクレープを焼くのです。
「うわあ、生クリームたっぷりなのだ~」
かぷっ、と一気にクレープにかぶりつくネフィリア。
「あらあら、こんなに汚して。じっとしていなさい」
口の端っこをクリームだらけにした次女を見て、フローレンスがつつつと指の腹でゆっくりと撫でるように掬い取るのです。
この時、ブリスはジャムのクレープを食べていました。
「…ん、甘くて、美味し……ん?」
ここで姉二人の様子に気付きましたよ。
「ん、美味しい」
「んふー、美味しかったー♪ ふや、フロー姉ありがとうー♪」
ちゅっ、と指に絡んだクリープを舐めるフローレンス。
ブリスの瞳は大きく見開かれます。
「ネフィ姉様、ブリスも……」
「ブリスちゃん、まだついてるのだ?」
ネフィリア、ブリスに向かって首を傾げます。またクレープにかじりついたので新たについてますね。
その時でした。
「……んちゅ……」
あらあら。
ブリスったら唇でネフィリアのクリームを掃除してあげたようですね。
「…ん、ネフィ姉様の味もする…♪」
この後、お代わりするネフィリア。フローレンスとブリスはお互いのクレープを食べさせ合うなど甘たる~いひと時を過ごすのです。
●
もちろんクレープ以外もにぎやかです。
「まあ、こういう日は串揚げや味の染みた煮物なんかもいいもんだ」
一品料理屋台を構えたビスマ・イリアス(ka1701)が手際よくうずら卵を串に刺して下ごしらえします。
「ビスマの料理は美味しいから、どんなお酒にも合うのだけど……身体が温まるお酒がいいかしらね?」
屋台ではリューナ・ヘリオドール(ka2444)もほどよく温めたワインを並べるなどいそいそ働いています。
「やってるかい?」
そこへ、百鬼 雷吼(ka5697)がふらっとやってきました。手にした徳利をひょいと掲げて酒を飲んでたり。すでにいい気分です。
「ああ、いらっしゃい」
「うまそうだな」
雷吼、応じたビスマの手元に釘付けです。
「こういう日には温まる料理が一番だからな」
「こいつの肴に適当に頼むわ」
「あら、料理に合う酒もあるわよ」
リューナが絶妙のタイミングでホットワインを勧めます。
「こう、息が合ってちゃもらうしかねぇな。……夫婦ってのはいいね」
「いや、そういうわけではないのだが」
気が乗って褒め言葉を口にした雷吼だが、すぐさまビスマに否定された。
「いえあの、そういうわけじゃ……」
雷吼、そりゃ悪かった、と返そうとしたが、リューナが何だか慌てているのに気付いた。まんざらでもない慌て方に、これ以上野暮を言うのは憚られる、と微笑し勘定して辞した。
残った二人。
「……その、迷惑掛けたな」
「え?! み、店先だったから困っただけで別に……」
「いや、決して誤解不快なわけではないぞ」
そんなやり取りでわたわた。温かな感じで。
賑やかなのは人だけではありません。
「どのクレープが良いかなあ……ん? お前達も食べたいのかい」
Pクレープでザレム・アズール(ka0878)がペットのパルム二匹に聞いています。
こくこく頷くのでクレープ三つお買い上げ。
「きゃ~。パルタちゃん、パルパルちゃん、久し振り~」
こちらに戻っていた初華が手を振ります。
「覚えててくれたのか?」
「楽しそうに遊んでたから覚えたよぅ」
ザレム、嬉しそう。で、クレープをもう一枚購入。
「ほへ? もう一枚?」
「実はパルキチが留守番しててな。お土産だ」
何だか大所帯のようで。
その後、パルムハウスでパルタたちが滑り台で遊んでいるのを見ながら食べていると、客に名前を聞かれたり可愛いと言われたりしました。
「楽しんでいるのを見るとやっぱり和むんだなぁ」
先の初華の反応も何となく分かったような気になりほんわかするザレムなのです。
●
「冷やかしに来たぞ。真面目に働いているか?」
次にPクレープに来たのは、イレーヌ(ka1372)です。
「イレーヌお姉ちゃん!」
反応したのは、店員で働いていたメルクーア(ka4005)。
「うん、これなら大丈夫……ほへ?」
焼き方指導をしていた初華、メルクーアの姉の登場にビックリです。
「メルクーアを注文みたいよ?」
「桃華さん、あとお願いっ」
メルクーア、桃華から生クリームを受け取り果実と一緒にたっぷり載せて香り付けのブランデーをちょっと振りかけて折り畳み。メルクーアのスペシャルクレープ完成です。
「あらら、お出掛け?」
「うんっ。ラヴラヴなの~」
桃華に聞かれイレーヌの腕につかまって、にぱっ♪
「はしゃぎすぎだ、メル」
こちん、とイレーヌからおでこを小突かれるも笑顔は壊れません。
「しかし、メルがこんなにしっかり焼くとは……」
「お姉ちゃん、串揚げだって」
そのまま感慨深げに歩くイレーヌですが、メルはほかの屋台で買い物しながらうふふん♪です。
「まぁ、今日くらいは特別に奢ってやるかな」
「お姉ちゃん、今度はローストビーフ……」
ごちん☆
「調子に乗りすぎだ」
その後。
「はい、お姉ちゃん。あ~ん」
「まあ、鉄拳制裁がきつく入ったからな」
椅子に二人で仲良く座ってスペシャルクレープの食べさせ合いです。
メルクーアが鉄拳制裁を痛がってなく、むしろいちゃいちゃできてうふふん♪なのは内緒です。
場面はPクレープに戻ります。
「メリー、クリスマス……今日はお客さんだよ」
「んあっ。紅葉さんと真夕さんも?」
初華が驚いたのは、雪継・紅葉(ka5188)が七夜・真夕(ka3977)と一緒にやって来たから。
「うんうん♪ 私、イチゴにするわ。紅葉は何がいい?」
真夕、初華が一目で恋人同士と気付いてくれて満足そうです。
「ええと……」
「じゃ、ブルーベリーをお勧めするね」
レッドコメットジャムクレープを探していた紅葉を制し、ぱぱっと決めてしまう真夕。
まあ、それもそのはず。
だって真夕、ブルーベリーも気になってたんだから。
「味見したい? はい…。あ~んて、してね」
察した紅葉、食べてたところ差し出します。
「あー、ん」
真夕、ぱくっ。
「それじゃ、こっちも」
「あ……ん」
紅葉、ぱくっ。
思わず見つめ合い、くすっ。
で、屋台巡りに出発。
「聖夜にはね、プレゼント交換もするのよ? 一緒に選びましょ」
が、飲食屋台がほとんどでした。
「プレゼント買えなかったけど、ま、いっか。今年は思いがけず特別な年になったから」
ぽーん、と足を投げ出し椅子にベンチに腰掛ける真夕。横にそっと紅葉が腰掛けました。
その時真夕、頬に恋人の手を感じ目を見開きます。
で、ちゅ☆
「ふふふ…。こういうプレゼントも良い物、でしょ?」
淡い悪戯笑顔とともに、そんな言葉。
「それなら…紅葉。誕生日おめでとう」
二つのベリーの甘味に、二つの喜び、二人の喜び。
「ベリー、メリー、クリスマス♪」
あ。
真夕さん押し倒しちゃダメ……おっと、無粋でした。肩を寄せ合い遠くのイルミネーションに見入っていますね。
「クレープか…東方では見たことが無いね…ふむ…甘味、に、なるのかな?」
今度はウェグロディ(ka5723)がPクレープに。
「ん?」
期待していた反応がないようで、きょろ。
ちょうどその時、お好み屋台で。
「真さん、お待たせさまっ!」
「久しぶりだけど、忙しそうだね。……一枚お願いするよ」
鞍馬 真(ka5819)がPクレープから戻って来る初華を待っていたのでした。
で、焼き上がるのを待っていると、誰かが傍に。
「へえ、こういうのもあるのね」
アマリリス(ka5726)です。悪戯そうな視線を真に投げましたよ。
「リアルブルーじゃよく見掛ける」
「そーなんだ? 詳しそうじゃない?」
飄々と答える真に、うふふと話を盛り上げるアマリリスです。
その時でした。
「リリス、此方の方は、お知り合いかな?」
クレープ屋店頭からウェグロディがすかさずやって来て割って入りましたよ。
「あら。楽しくお話してるだけよ?」
「ありえない事だが、連れが何か?」
軽く応じるアマリリスを放って真に聞くウェグロディ。
「お好み焼きについて聞かれただけだ」
真、淡々と答えるだけ。
「真さん、お待たせしました~」
ここで初華からの声。駆け寄る真。
一件落着です。
「……忙しいようなら手伝うが」
「あん。そんなことより味は?」
腰掛けて食べながら淡々と聞く真に、大ベラでひっくり返す初華が聞いてきます。
「……懐かしい味だ」
思わず笑みのこぼれる真でした。
さて、まだ微妙な表情のウェグロディ。
結局、うやむやのままアマリリスの望むままにクレープを購入したのですが……。
「ロディ。はい、アーン」
「ん……」
不意にアマリリスからクレープを口元に押し付けられました。生地と生クリーム、そして果実の甘さが口内に広がります。
そして、口元にぺろっとした感触。
「ごちそうさま」
アマリリス、背伸びして舐め取ったようですね。
「ん…美味だね。リリスは気に入ったかい?」
ようやく、いつもの調子に戻ったウェグロディです。
「ええ。…ふふ。さっきはごめんね。……ても嬉しかったわ。さ、行きましょう。今日の私は貸し切りよ?」
メリークリスマス、といろいろ満足そうに腕に抱き着いてくるアマリリスなのでした。
●
「世界が異なっても賑やかな雰囲気は変わらないものだな…」
身を寄せる二人とすれ違ったのは、鳳凰院ひりょ(ka3744)です。
で、クレープ屋台が目の前にあるのに気付きました。
「ありがとうございました♪」
「久し振りに食べるのもいいだろう」
桃華の声を背に、ぱくりとクレープにかじりつくひりょ。
そして足が止まります。
「ホントにこちらの世界か?」
まさかお好み焼き屋台まであるとは、と凝視。気付いた初華に勧められるまま、購入。
(こういう雰囲気、いいな)
もぐ、とお好み焼きを食べながら盛況な会場を見ます。
「どひー」
盛況すぎて初華はてんてこ舞いですが。
「これも何かの縁、かもしれないしな。よければ手伝おう」
店を手伝うことにしました。
妹達への土産は無理だが今度焼いてやろう、と思いつつ大ベラを返すひりょなのです。
「良い匂いがするな……」
そんなお好み焼き屋台に、雷吼がふらり登場。早速注文しました。
「…それと嬢ちゃん、ちと聞きたいことがあるんだが、良いか?」
「ほへ?」
「嬢ちゃん達はリアルブルーだろ? 俺の祖先は平安って時代からこっちに来てたらしいんだが、何年くらいたってんだ?」
「ええと、いいくにつくろうだから……」
「違うよ、初華」
聞いてたひりょが初華を止めた。
「正確かどうかは別にして約千二百年前」
「そういや諸説でたんだっけ?」
「そうか。ありがとさん」
実際、古すぎることは不明のことも多いようです。初華の勘違いは別にして。
「はい、お待たせです~」
「いや~。まさかこっちでこれを食べられるとな」
初華からお好み焼きを手渡された阿部 透馬(ka5823)、懐かしさもありほくほくです。
「ん?」
おや。
クレープ屋台できゃっきゃしている子供たちに気付きましたよ?
「ふぅん、孤児院から来たのか~」
「あっちで神父さまが屋台やってるからよろしくね」
いろいろ話すと、子供はそんなことを。
これは行くしかない、と足を向ける透馬です。
「聖夜を共に過ごす家族や仲間たちと一緒に、おいしいローストビーフはいかがでしょうかー!」
屋台の前ではセラが張り切って客寄せをしています。
「良かったら見に来てくれ」
「パルムハウスねぇ…私に買ってやれる経済力があればよかったのですが…」
セラが振り向くと、店主のアルバは客のザレムと会話中。
「ほら、羅刹にーにも大きな声出そ!」
「しかしセラ、我が声を張り上げようものなら客たちが怯えたりはせぬであろ……うぬ……」
セラ、羅刹に頼ります。強気ですが少し不安そう。
これを見てしまっては羅刹、手伝うしかありません。
「聖夜を共に過ごす者と共に、ローストビーフはいかがであろうか」
覚悟を決めて声を張る羅刹。でもその表情、怖いですよ?
不慣れなことこの上なく、周囲は怖がって一歩引きました。
ところが。
「食べたいけど……怖い」
「ま、任せとけ。あの程度でびびってここら締めれるかい!」
チンピラが堅気の娘風彼女に頼られ、のっしのっしとやってきました。
ぎろり、とつい睨んでしまう羅刹。チンピラの腰が少し引けます。
「う、うまいローストビーフ。二人分だ」
ほっ。無事に購入。
「素敵。頼りになるわ」
彼女は大喜びです。チンピラ、株を上げて気分良さそう。
「まあ、良かったな」
見守っていた透馬もほっとして、羅刹ではなくセラからローストビーフを購入するのでした。
時は少し遡ります。
「フラさん。少し時間あるようなら、い、一緒に会場を見て回りませんかぁ?」
会場に来たばかりの弓月・小太(ka4679)が振り返りました。
「う、うん」
連れのフラ・キャンディ(kz0121)は出した横笛を仕舞います。
「うわあ……人がいっぱい」
「そうだ。一応、その、迷ったりしないように、ということでぇ」
小太、フラの手を取りエスコート。
「フラさん…元気ないです?」
「ううん。ボク、こういうの初めてだから……小太さん、物知りだよね」
「ええと……あ、何かいい匂いがぁ?」
小太、見上げるフラの瞳から逃げるようにPクレープの方へ。実は小太もこういうのは初めてなのは内緒です。
「うん」
フラ、小太の腕にしっかり抱き着くのです。
すっかり周りのラブラブぶりにあてられたようですね。
●
「そろそろやろう」
真は小太とフラを発見し、リラ・ゼーレとして演奏を始めました。騒いでいたチンピラカップルも大人しくなります。
「いい感じですね、こんばんは。まずは白茶を下さい」
緩やかな音楽の中、Gacrux(ka2726)がやってきました。
「ガクさん、来てくれたのね」
「いらっしゃいませ。……まずは挨拶からですよ」
がた、と前に回って来る初華に、天斗が冷静に指導。そして白茶をうやうやしく淹れるのです。
「あまりお気になさらず。こちらは差し入れです。……珍しいパイが手に入ったので」
戦闘依頼中には見せない笑顔で、シャンパンと花籠パイを差し出します。
「生クリームのクレープでいいかしら?」
「ええ、是非。この機会にデザートクレープを楽しみたいですね」
桃華の声に頷くGacrux。
「よ」
そこへ、チンピラリーダーの禿頭の兄ィちゃんがやってきました。
がた、と立ち上がるGacrux。普段の表情です。
天斗も前に。丁寧ですが、先と違って挨拶の言葉もなしです。
その後ろから。
「いつも初華とPクレープがお世話になってます」
桃華が出て来て中央に。初華の前に立ちふさがります。
「何だ、やんのか?」
「これは感謝の気持ちです。どうぞ♪ 私の特製クレープなんですよ?」
ぺこりとお辞儀して、焼き上がったばかりのクレープを差し出しました。
「……俺たちゃ町の嫌われモンだ。表向きは喧嘩してなきゃ周りから変な目で見られっぞ?」
兄ィちゃん、受け取って背を向けます。
が、クレープをかじって足を止めました。
「今日は特別だ。ありがとな」
背中越しにそれだけ言って去ります。
口にした、桃のジュレと生クリームをふんだんに使った『桃華すぺしゃる(非売品)』が美味しかったようですね。
でもって、新たなお客様。
「うわあ、これ美味しそうですっ」
「ここはざくろに任せておいて!」
きゃいきゃいやってるのは白漣(ka4703)と、時音 ざくろ(ka1250)です。
で、購入したクリームたっぷり苺チョコクレープ二つを食べながら……。
「あ、占いだ!」
発見した白漣がちら、とざくろを見る。
「いらっしゃい」
そんなこんなで入店。倉敷 相馬(ka5950)の占い卓です。
「時音さんとの相性を占ってください!」
白漣は期待に瞳をキラキラさせています。
「じゃ、スリーカード方式で。左から過去・現在・未来を……」
相馬、並べた三枚に手を掛けます。
(※以下、ガチ占いでお送ります)
【隠者(逆)】
「良くないカードだけど、むしろこれまでとてもいい関係、かな?」
ちら、と二人をうかがいつつそう告げます。
【教皇】
「これはびっくり。こうきたか……」
「え?」
相馬の様子の変化に、チラッとざくろを見る白漣。真剣に見ていたざくろの表情にどきっとしたりも。
【運命の車輪(逆)】
「【今】がとてもいいね……。お互いが一緒に過ごしていて楽しい、と好ましい印象を抱いているなら、今の感覚を大切に。相手を思いやるときっといい結果になるよ」
「相手を思いやる……」
占いの結果に、もしかしてと不安になっていたところもあった白漣が深々と感謝するのです。厳しいカードでしたが今の様子を加味した占いで、日ごろ酒場で卓を立ててる経験が生きましたね。
「今の感覚を大切に……だって…なんか、照れちゃうね」
白漣、ざくろのこの言葉に嬉しそうな様子を見せるのです。
占い小屋から出て。
「今日もすごく楽しかったです! 時音さんは…?」
「うん、楽しかった。白漣、これざくろからクリスマスプレゼント……モミの木ネックレスだよ」
星空の下、ぎゅっとざくろの腕に抱き着き感謝する白漣です。
●
場面はPクレープに戻ります。
「色々あるもんだな」
クレープ屋台を遠くに見つつ、柊 真司(ka0705)がぽそりとこぼしていますね。
「いろんな屋台があって楽しいわね~」
腕を絡めているリーラ・ウルズアイ(ka4343)は、クレープ屋台に行こうとしている真司に逆らいさらに先へと連行します。
「おい……」
「たくさんおごってもらったしもういいかな。それにしても珍しいよね?」
「たまにはそういう気分になるんだよ」
やれやれだ、と手を額にやる真司。これまでホットワインやローストビーフなどねだられるままお金を出していたのです。
やがて辻占いで再び立ち止まりました。
「占いか。未来でも……ん?」
真司、ちょっと占ってもらおうかと思ったのですが。リーラのつかまる左腕に異変が。
「おい」
「……いいじゃない、減るもんじゃないし。寒いんだもの」
振り向くと、むぎゅりと腕を抱きしめられていました。腕をしっかり絡めてぎゅうぎゅう胸を押し付けてますね。
「そ、そうか。風があるな。しのげるところでも……」
真司が風避けに人目のあまりない場所に入った時でした。
思いっきり首根っこに両手を掛けられたのです。
「風じゃなく、自分の照れ隠しだったでしょ?」
んちゅ、と何かをしたリーラがいたずらっぽく聞いてきたり。
「……寒くなくなったなら何よりだな」
そっぽを向いてあしらう真司ですが、頬が赤くなってますね。
その目に、イルミネーションが美しく。
「ふうん」
リーラも気付き、二人で眺めるのでした。
カップルはほかにも。
「これが町のクリスマス」
「身分など関係なく自由に楽しんでいるようですね」
エリス・カルディコット(ka2572)とクルス・ルナ・フレア(ka4723)です。
「ふうん……」
エリス、Pクレープにふらっと近寄りクレープを購入したようです。
クルスはついて行きませんでした。
「もしもついて行って恋人同士と勘違いされ……ではなくわたくしが坊ちゃまにその、その、そのッ! はしたない思いを抱いていると見抜かれてしまったら……」
両手を頬に添え身をくねらせてもだ……えたのはあくまで一瞬で言葉も口からは一切出していません。
そこにエリスが戻ってきました。
手には、二種類のクレープ。
「まさかそれはわたくしの分……」
内心、小躍りするクルスです。
「ほら、美味しそうだよ。ずっと屋敷に居たら、食べられなかったんだろうなぁ……」
一つをクルスに手渡し、改めてクレープにときめきかぷっと頬張るエリス。
「そうですね。こうしたものを食べるのもまた、自由に生きているという証ですから」
クルスは平静を装ったまま受け取り食べますが、その背後では。
――ふる、ふるん……。
お尻が微妙に揺れてます。
仮に尻尾があればわんこのように全力で振ってるに違いありません。
その時でしたッ!
「ねぇ、クルスのと交換しない? そっちも食べてみたいんだ」
ぎくっ、としたクルス、内心を悟られないよう快く交換に応じます。
「酸っぱくて甘いんだ」
爽やかにクルスのクレープを味わうエリス。
「こちらはねっとりと甘いです……はっ!」
同じくエリスのクレープをかじりまったりした甘さにくらっとしたクルスですが、ある事実に気付きましたよっ!
「こ、これはまさか、あぁ、この味、この味は坊ちゃまのぉぉ!?」
もちろん口に出してないですし全身はそのままですが、全霊でシャウトしています。誰にも聞こえません。
「ん?」
さすがに微妙に身悶えるクルスに気付くエリスですが、よく分からずぱくつくのでした。
●
クリスマスですから、奇跡も起こります。
「ん…? あそこにいるのは…」
ローストビーフをかじりつつ会場をぶらついていたゼクス・シュトゥルムフート(ka5529)は、見覚えのある顔に思わず立ち止まりました。
「あれ?」
眺めていると、その人物もゼクスに気付いたようです。
「えーっ! お義兄ちゃん?!」
驚く姿は間違いありません、ゼクスの婚約者の妹、シェルミア・クリスティア(ka5955)です。
「何やってんだ、こんなところで?」
思わず駆け寄って聞いてみます。
「クリスマスに決まってるじゃない。お義兄ちゃんは何してるの?」
「クリスマスだよ」
ぷっ、と二人とも笑ってしまいました。
そんなこんなで、クレープを買ってベンチに座って。
「しかし、シェリィとこんな所で再会するとは思わなかったな…。本当に大きくなったものだ」
甘味を食べて気持ちの落ち着いたゼクスがしみじみ言います。
「最後に会った頃がもっと小さい頃だったから、わたしも見た目は少し変わっちゃったね」
同じくぱくつくながら答えるシェルミア。
「それにしても……ゼクスお義兄ちゃんの消息が分からなくなってたのはコッチに来てたからなんだね」
こてん、とゼクスの方に倒れかかって身を預けるシェルミアです。「お姉ちゃんもこっちに居るのかな」という呟きは口の中に消えました。
「ん? 何か欲しいものがあるなら買ってやるからな」
「誰かにもたれかかるって、しばらくしてなかったから……少しこのままにしてほしい」
ゼクス、しっかりとシェルミアを支えるべくしっかりと身構えて座り直します。
「遠慮なく甘えてくれて構わないぞ……」
優しく言った、その時でした。
「うん、元気出た。せっかくのクリスマス、楽しもう!」
「……本当に大きくなったものだな」
ばっと身を起こし立ち直ったシェルミアを見て、改めて心身ともに成長した姿に目を見張るゼクスなのです。
この後、楽しく二人で回遊するのです。
●
そんなこんなで、会場には雪がちらつき始めました。
ホワイトクリスマスですね。
「ホットワインを出して正解ね」
居酒屋屋台ではリューナがビスマを振り返ってにっこり。
屋台は無事に売り切れです。
「お茶にしよう」
で、残り物で乾杯。
「その、こういう屋台二人で出すの、良いな」
「ええ。青薔薇亭でもこういうの出したいわね。私も食べたいしまた作ってくれる?」
控えめに話を振ったビスマに、にっこり答えるリューナです。
「さて、雪が映える曲を一曲やるか」
Pクレープ前では、酒を飲んでいい気分の雷吼が龍笛で朗々と。
「ロイヤルミルクティー、ウインナーコーヒーもございます」
白茶を完売した天斗は、ほかにも用意していたようですね。
「サンタさんがプレゼントしてくんないかな?」
戻って来たザレムは、値札をぴらり。パルムハウスは欲しくても高いようです。ここは大人しく、ロイヤルミルクティーで我慢我慢。
「さて、小銭も稼いだし。……客の食べてたクレープ、美味そうだったな」
相馬も占い小屋から戻ってきました。
すっかり懐も温かくなったので、せめてクリスマス気分でも、と桃華に生クリームのクレープを注文です。
「一口シフォンをお兄様のために焼きました! お兄様、あーんです」
エステルは自転車修理屋台に自分の自転車を持ち込んでましたが、そこに居ついてアルバに迫っています。
「賑やかでとっても楽しいですねぇ」
「イルミネーション、綺麗だったよねっ」
小太とフラも帰って来ました。演奏を終えていた二人は一緒に会場を回って来たようです。フラはツリーを見たのが良かったようで。
「あ、何かいい匂いがぁ?」
「ガクさん、お土産のお好み焼き、焼けたよっ」
鼻を利かせた小太の先で、屋台から初華が出て来ました。
「祝いの日は俺も料理は楽がしたいのでね……それじゃ、メリークリスマス。グッドナイト」
ひらりと身を翻すGacrux。
そうですね。もう帰宅する人も多くなりました。
「ぼくも大好きだよ。エステル。メリークリスマス」
アルバはあーん・ぱくっとした後、エステルに猫の小物をプレゼントしています。
恋人達も、いよいよ用意していた贈り物を渡したり肩を寄せ合ったりの時分です。
「クリスマスですか…良いものですね」
天斗は、何処か遠い目で呟いてますね。
「どうしたの、天斗さん? 何か辛い思い出でもあるの?」
初華、独り者への質問がどストレートですね。
でも天斗、動じません。
「大人用ですが、味が分かるならどうぞ」
「んあっ。馬鹿にしたっ! いいもん、ちゃんと飲むもん」
天斗が差し出したのは、生クリームにスライスしたアーモンドを乗せた特別製のロイヤルミルクティーです。
香り付けしたブランデーで、初華は酔ってしまうのはご愛敬。
このクリスマスパーティーのおかげで町のチンピラたちは大満足。よそからのチンピラの防波堤として機能しているのですが、しばらくしっかりと人知れず、町の秩序を守ったそうです。
「きゃーっ、しまったーっ!」
突然ですが、暮れなずむ街角でそんな悲鳴が響きます。
「まさかこんなに手間取るなんて―っ!」
Pクレープの屋台で南那初華(kz0135)がきゃーきゃー言いながらクレープ生地の準備とかしてますね。
「……こんなことじゃないかと思ったのよねぇ」
「桃華さんっ!」
やれやれ、といった感じでPクレープ店員の東雲 桃華(ka4914)がやってきました。落ち着いた様子ですが……。
「ちょっと初華、そんなことしてる場合じゃないでしょ」
初華にがしー、と抱き着かれむぎゅむぎゅわたわた。
そこへもう一人。
「いつもと変わらない、という意味では良いことですね」
「天斗さんっ!」
同じく真田 天斗(ka0014)です。
初華がすかさずがしー、と抱きつ……。
「んあぅ!?」
「作業を急ぎましょう」
天斗、指先一つで初華の突撃を止めて白茶の在庫確認に取り掛かるのです。
そこへ、アルバ・ソル(ka4189)が来店。
「こんにちわ。調子はどう?」
「アルバさん、恋人さんと一緒なんだ?」
「まあ。素敵なお知合いですね、お兄様」
アルバの腕にぴとっとくっついてくるエステル・ソル(ka3983)は、初華の誤解にご機嫌です。
「妹なんだけど……ちょっとバイトさせてもらっていいかな?」
アルバ、軽やかにエプロンを身に着け鉄板の前に立ちます。
「何のクレープがいい?」
「苺とチョコのクレープさんが良いです!」
妹の希望に、いいよ、とお玉を手にするアルバ。鉄板で生地を丸く伸ばします。
「すごいです、魔法みたいです。……ぴろってしてくるくるってしてクレープさん出来ました!」
「言うほど簡単じゃないさ。はい、どうぞ」
兄の手つきに胸キュンするエステル。アルバの方は簡単に言いつつチョコと苺をくるんで三角形にして、出来上がり。
「じゃ、頑張って」
「ほへ? それだけ?」
「ああ、お兄様が私だけのために焼いてくれた……」
エステル、幸せそうに兄に寄り添い歩いて行きました。
他に屋台を出す人もいます。
「こういう行事の時なんかを利用して稼ぐ必要があるもので……」
神父のアルバ=ティアーレイン(ka5871)がよいしょ、と屋台に看板を立てましたよ。どうやらローストビーフの屋台を出すようで。
「神父殿、我はどうすればよかろうか?」
しゃがみ込んだ悪鬼羅刹(ka5831)が眼帯をしてない方の目でぎらりと見上げました。
「では羅刹さんは次に蒸す牛肉の用意を……」
「お父さん、セラはっ?!」
アルバ、羅刹の横で期待に瞳を輝かせるセラ=ティアーレイン(ka5832)を見てちょっと考えます。
「セラはほかの孤児たちと一緒に屋台を巡って……」
「えーっ。セラもお父さんのお手伝いするっ!」
「それじゃ、まずは添え物を用意しようか」
「うんっ!」
そんなこんなで一緒に準備をするアルバなのです。
●
「あ、あっちに何かあるわよ?」
賑わいは遠くからも分かるようで、近くを通り掛かった叢雲・咲姫(ka5090)が連れの手を取り……というか、ほぼ有無を言わさず連行してますね?
「いらっしゃいませ!Pクレープへようこそ♪」
すかさず桃華が接客。
「本日は生クリームをたっぷり使ったクレープを販売してますよ。もちろんジャムのクレープも」
てきぱきと勧められますが、いつも男勝りの咲姫、珍しく迷ってます。
「じゃあボクは生クリームをたっぷりと使ったクレープを」
咲姫の連れていたのは、弟の叢雲 伊織(ka5091)でした。姉を尻目にあっさりと注文したり。
「……あんなに男らしく決断するなんて、随分立派になったじゃない♪」
ジャムのクレープを手にした咲姫が感心します。
「そうです? あ、こっちも味見させてあげます」
余裕な感じの伊織、姉が自分の持つクレープも気になっていると見抜いて一口食べたところを差し出してみます。
「生意気ね」
咲姫、差し出されたクレープにがぶり。
「どうです?」
「ふわふわで……甘いわね」
「……本当ですね」
伊織、咲姫のほっぺについた生クリームを指の腹で優しくすくって、ペロリ。
「あ……」
「占いもあるみたいですよ。行ってみませんか?」
虚を突かれ固まる咲姫。伊織は先手を取ってエスコート。
「ふうん……いいわ。2人で手を繋いで楽しく過ごしましょう」
すっかり弟を見直し、安心したような笑顔を見せる咲姫でした。
「お・ま・つ・りー♪ フロー姉、ブリスちゃん、思いっきり楽しもうなのだ♪」
Pクレープには新たに、ネフィリア・レインフォード(ka0444)がやってきました。
「いらっしゃませ♪」
「僕、右から左まで全種類食べるのだ♪」
無茶言ったネフィリアのあとから姉のフローレンス・レインフォード(ka0443)が三女のブリス・レインフォード(ka0445)とともにやってきましたよ。
「ネフィ。無理だけは駄目よ? ブリスは何がいい?」
「フロー姉様とは違うもの」
「結局全種類なのだ!」
ネフィリアの言う通り、三種類全部お買い上げです。
「ええと……白茶もいかがですか?」
店員の桃華が聞きます。
「いただくのだ~♪」
「では、今の季節は寒いですがこれを飲んで温まっていって下さい」
ささっと天斗がやって来て白茶の実演販売。
「ふわぁ……ゆらゆらしてる……」
読書好きのブリスが、白茶の茶葉がゆらゆらする様子に目を輝かせていたり。
「おや、興味がおありで?」
「……」
天斗の存在に改めて気付いたブリス、ここで人見知りっぷりを発揮。同じくかぶりついて見ていたネフィリアにだきゅりして顔をうずめるのです。
ともかく、これで時間に余裕ができました。桃華、この隙にささっとクレープを焼くのです。
「うわあ、生クリームたっぷりなのだ~」
かぷっ、と一気にクレープにかぶりつくネフィリア。
「あらあら、こんなに汚して。じっとしていなさい」
口の端っこをクリームだらけにした次女を見て、フローレンスがつつつと指の腹でゆっくりと撫でるように掬い取るのです。
この時、ブリスはジャムのクレープを食べていました。
「…ん、甘くて、美味し……ん?」
ここで姉二人の様子に気付きましたよ。
「ん、美味しい」
「んふー、美味しかったー♪ ふや、フロー姉ありがとうー♪」
ちゅっ、と指に絡んだクリープを舐めるフローレンス。
ブリスの瞳は大きく見開かれます。
「ネフィ姉様、ブリスも……」
「ブリスちゃん、まだついてるのだ?」
ネフィリア、ブリスに向かって首を傾げます。またクレープにかじりついたので新たについてますね。
その時でした。
「……んちゅ……」
あらあら。
ブリスったら唇でネフィリアのクリームを掃除してあげたようですね。
「…ん、ネフィ姉様の味もする…♪」
この後、お代わりするネフィリア。フローレンスとブリスはお互いのクレープを食べさせ合うなど甘たる~いひと時を過ごすのです。
●
もちろんクレープ以外もにぎやかです。
「まあ、こういう日は串揚げや味の染みた煮物なんかもいいもんだ」
一品料理屋台を構えたビスマ・イリアス(ka1701)が手際よくうずら卵を串に刺して下ごしらえします。
「ビスマの料理は美味しいから、どんなお酒にも合うのだけど……身体が温まるお酒がいいかしらね?」
屋台ではリューナ・ヘリオドール(ka2444)もほどよく温めたワインを並べるなどいそいそ働いています。
「やってるかい?」
そこへ、百鬼 雷吼(ka5697)がふらっとやってきました。手にした徳利をひょいと掲げて酒を飲んでたり。すでにいい気分です。
「ああ、いらっしゃい」
「うまそうだな」
雷吼、応じたビスマの手元に釘付けです。
「こういう日には温まる料理が一番だからな」
「こいつの肴に適当に頼むわ」
「あら、料理に合う酒もあるわよ」
リューナが絶妙のタイミングでホットワインを勧めます。
「こう、息が合ってちゃもらうしかねぇな。……夫婦ってのはいいね」
「いや、そういうわけではないのだが」
気が乗って褒め言葉を口にした雷吼だが、すぐさまビスマに否定された。
「いえあの、そういうわけじゃ……」
雷吼、そりゃ悪かった、と返そうとしたが、リューナが何だか慌てているのに気付いた。まんざらでもない慌て方に、これ以上野暮を言うのは憚られる、と微笑し勘定して辞した。
残った二人。
「……その、迷惑掛けたな」
「え?! み、店先だったから困っただけで別に……」
「いや、決して誤解不快なわけではないぞ」
そんなやり取りでわたわた。温かな感じで。
賑やかなのは人だけではありません。
「どのクレープが良いかなあ……ん? お前達も食べたいのかい」
Pクレープでザレム・アズール(ka0878)がペットのパルム二匹に聞いています。
こくこく頷くのでクレープ三つお買い上げ。
「きゃ~。パルタちゃん、パルパルちゃん、久し振り~」
こちらに戻っていた初華が手を振ります。
「覚えててくれたのか?」
「楽しそうに遊んでたから覚えたよぅ」
ザレム、嬉しそう。で、クレープをもう一枚購入。
「ほへ? もう一枚?」
「実はパルキチが留守番しててな。お土産だ」
何だか大所帯のようで。
その後、パルムハウスでパルタたちが滑り台で遊んでいるのを見ながら食べていると、客に名前を聞かれたり可愛いと言われたりしました。
「楽しんでいるのを見るとやっぱり和むんだなぁ」
先の初華の反応も何となく分かったような気になりほんわかするザレムなのです。
●
「冷やかしに来たぞ。真面目に働いているか?」
次にPクレープに来たのは、イレーヌ(ka1372)です。
「イレーヌお姉ちゃん!」
反応したのは、店員で働いていたメルクーア(ka4005)。
「うん、これなら大丈夫……ほへ?」
焼き方指導をしていた初華、メルクーアの姉の登場にビックリです。
「メルクーアを注文みたいよ?」
「桃華さん、あとお願いっ」
メルクーア、桃華から生クリームを受け取り果実と一緒にたっぷり載せて香り付けのブランデーをちょっと振りかけて折り畳み。メルクーアのスペシャルクレープ完成です。
「あらら、お出掛け?」
「うんっ。ラヴラヴなの~」
桃華に聞かれイレーヌの腕につかまって、にぱっ♪
「はしゃぎすぎだ、メル」
こちん、とイレーヌからおでこを小突かれるも笑顔は壊れません。
「しかし、メルがこんなにしっかり焼くとは……」
「お姉ちゃん、串揚げだって」
そのまま感慨深げに歩くイレーヌですが、メルはほかの屋台で買い物しながらうふふん♪です。
「まぁ、今日くらいは特別に奢ってやるかな」
「お姉ちゃん、今度はローストビーフ……」
ごちん☆
「調子に乗りすぎだ」
その後。
「はい、お姉ちゃん。あ~ん」
「まあ、鉄拳制裁がきつく入ったからな」
椅子に二人で仲良く座ってスペシャルクレープの食べさせ合いです。
メルクーアが鉄拳制裁を痛がってなく、むしろいちゃいちゃできてうふふん♪なのは内緒です。
場面はPクレープに戻ります。
「メリー、クリスマス……今日はお客さんだよ」
「んあっ。紅葉さんと真夕さんも?」
初華が驚いたのは、雪継・紅葉(ka5188)が七夜・真夕(ka3977)と一緒にやって来たから。
「うんうん♪ 私、イチゴにするわ。紅葉は何がいい?」
真夕、初華が一目で恋人同士と気付いてくれて満足そうです。
「ええと……」
「じゃ、ブルーベリーをお勧めするね」
レッドコメットジャムクレープを探していた紅葉を制し、ぱぱっと決めてしまう真夕。
まあ、それもそのはず。
だって真夕、ブルーベリーも気になってたんだから。
「味見したい? はい…。あ~んて、してね」
察した紅葉、食べてたところ差し出します。
「あー、ん」
真夕、ぱくっ。
「それじゃ、こっちも」
「あ……ん」
紅葉、ぱくっ。
思わず見つめ合い、くすっ。
で、屋台巡りに出発。
「聖夜にはね、プレゼント交換もするのよ? 一緒に選びましょ」
が、飲食屋台がほとんどでした。
「プレゼント買えなかったけど、ま、いっか。今年は思いがけず特別な年になったから」
ぽーん、と足を投げ出し椅子にベンチに腰掛ける真夕。横にそっと紅葉が腰掛けました。
その時真夕、頬に恋人の手を感じ目を見開きます。
で、ちゅ☆
「ふふふ…。こういうプレゼントも良い物、でしょ?」
淡い悪戯笑顔とともに、そんな言葉。
「それなら…紅葉。誕生日おめでとう」
二つのベリーの甘味に、二つの喜び、二人の喜び。
「ベリー、メリー、クリスマス♪」
あ。
真夕さん押し倒しちゃダメ……おっと、無粋でした。肩を寄せ合い遠くのイルミネーションに見入っていますね。
「クレープか…東方では見たことが無いね…ふむ…甘味、に、なるのかな?」
今度はウェグロディ(ka5723)がPクレープに。
「ん?」
期待していた反応がないようで、きょろ。
ちょうどその時、お好み屋台で。
「真さん、お待たせさまっ!」
「久しぶりだけど、忙しそうだね。……一枚お願いするよ」
鞍馬 真(ka5819)がPクレープから戻って来る初華を待っていたのでした。
で、焼き上がるのを待っていると、誰かが傍に。
「へえ、こういうのもあるのね」
アマリリス(ka5726)です。悪戯そうな視線を真に投げましたよ。
「リアルブルーじゃよく見掛ける」
「そーなんだ? 詳しそうじゃない?」
飄々と答える真に、うふふと話を盛り上げるアマリリスです。
その時でした。
「リリス、此方の方は、お知り合いかな?」
クレープ屋店頭からウェグロディがすかさずやって来て割って入りましたよ。
「あら。楽しくお話してるだけよ?」
「ありえない事だが、連れが何か?」
軽く応じるアマリリスを放って真に聞くウェグロディ。
「お好み焼きについて聞かれただけだ」
真、淡々と答えるだけ。
「真さん、お待たせしました~」
ここで初華からの声。駆け寄る真。
一件落着です。
「……忙しいようなら手伝うが」
「あん。そんなことより味は?」
腰掛けて食べながら淡々と聞く真に、大ベラでひっくり返す初華が聞いてきます。
「……懐かしい味だ」
思わず笑みのこぼれる真でした。
さて、まだ微妙な表情のウェグロディ。
結局、うやむやのままアマリリスの望むままにクレープを購入したのですが……。
「ロディ。はい、アーン」
「ん……」
不意にアマリリスからクレープを口元に押し付けられました。生地と生クリーム、そして果実の甘さが口内に広がります。
そして、口元にぺろっとした感触。
「ごちそうさま」
アマリリス、背伸びして舐め取ったようですね。
「ん…美味だね。リリスは気に入ったかい?」
ようやく、いつもの調子に戻ったウェグロディです。
「ええ。…ふふ。さっきはごめんね。……ても嬉しかったわ。さ、行きましょう。今日の私は貸し切りよ?」
メリークリスマス、といろいろ満足そうに腕に抱き着いてくるアマリリスなのでした。
●
「世界が異なっても賑やかな雰囲気は変わらないものだな…」
身を寄せる二人とすれ違ったのは、鳳凰院ひりょ(ka3744)です。
で、クレープ屋台が目の前にあるのに気付きました。
「ありがとうございました♪」
「久し振りに食べるのもいいだろう」
桃華の声を背に、ぱくりとクレープにかじりつくひりょ。
そして足が止まります。
「ホントにこちらの世界か?」
まさかお好み焼き屋台まであるとは、と凝視。気付いた初華に勧められるまま、購入。
(こういう雰囲気、いいな)
もぐ、とお好み焼きを食べながら盛況な会場を見ます。
「どひー」
盛況すぎて初華はてんてこ舞いですが。
「これも何かの縁、かもしれないしな。よければ手伝おう」
店を手伝うことにしました。
妹達への土産は無理だが今度焼いてやろう、と思いつつ大ベラを返すひりょなのです。
「良い匂いがするな……」
そんなお好み焼き屋台に、雷吼がふらり登場。早速注文しました。
「…それと嬢ちゃん、ちと聞きたいことがあるんだが、良いか?」
「ほへ?」
「嬢ちゃん達はリアルブルーだろ? 俺の祖先は平安って時代からこっちに来てたらしいんだが、何年くらいたってんだ?」
「ええと、いいくにつくろうだから……」
「違うよ、初華」
聞いてたひりょが初華を止めた。
「正確かどうかは別にして約千二百年前」
「そういや諸説でたんだっけ?」
「そうか。ありがとさん」
実際、古すぎることは不明のことも多いようです。初華の勘違いは別にして。
「はい、お待たせです~」
「いや~。まさかこっちでこれを食べられるとな」
初華からお好み焼きを手渡された阿部 透馬(ka5823)、懐かしさもありほくほくです。
「ん?」
おや。
クレープ屋台できゃっきゃしている子供たちに気付きましたよ?
「ふぅん、孤児院から来たのか~」
「あっちで神父さまが屋台やってるからよろしくね」
いろいろ話すと、子供はそんなことを。
これは行くしかない、と足を向ける透馬です。
「聖夜を共に過ごす家族や仲間たちと一緒に、おいしいローストビーフはいかがでしょうかー!」
屋台の前ではセラが張り切って客寄せをしています。
「良かったら見に来てくれ」
「パルムハウスねぇ…私に買ってやれる経済力があればよかったのですが…」
セラが振り向くと、店主のアルバは客のザレムと会話中。
「ほら、羅刹にーにも大きな声出そ!」
「しかしセラ、我が声を張り上げようものなら客たちが怯えたりはせぬであろ……うぬ……」
セラ、羅刹に頼ります。強気ですが少し不安そう。
これを見てしまっては羅刹、手伝うしかありません。
「聖夜を共に過ごす者と共に、ローストビーフはいかがであろうか」
覚悟を決めて声を張る羅刹。でもその表情、怖いですよ?
不慣れなことこの上なく、周囲は怖がって一歩引きました。
ところが。
「食べたいけど……怖い」
「ま、任せとけ。あの程度でびびってここら締めれるかい!」
チンピラが堅気の娘風彼女に頼られ、のっしのっしとやってきました。
ぎろり、とつい睨んでしまう羅刹。チンピラの腰が少し引けます。
「う、うまいローストビーフ。二人分だ」
ほっ。無事に購入。
「素敵。頼りになるわ」
彼女は大喜びです。チンピラ、株を上げて気分良さそう。
「まあ、良かったな」
見守っていた透馬もほっとして、羅刹ではなくセラからローストビーフを購入するのでした。
時は少し遡ります。
「フラさん。少し時間あるようなら、い、一緒に会場を見て回りませんかぁ?」
会場に来たばかりの弓月・小太(ka4679)が振り返りました。
「う、うん」
連れのフラ・キャンディ(kz0121)は出した横笛を仕舞います。
「うわあ……人がいっぱい」
「そうだ。一応、その、迷ったりしないように、ということでぇ」
小太、フラの手を取りエスコート。
「フラさん…元気ないです?」
「ううん。ボク、こういうの初めてだから……小太さん、物知りだよね」
「ええと……あ、何かいい匂いがぁ?」
小太、見上げるフラの瞳から逃げるようにPクレープの方へ。実は小太もこういうのは初めてなのは内緒です。
「うん」
フラ、小太の腕にしっかり抱き着くのです。
すっかり周りのラブラブぶりにあてられたようですね。
●
「そろそろやろう」
真は小太とフラを発見し、リラ・ゼーレとして演奏を始めました。騒いでいたチンピラカップルも大人しくなります。
「いい感じですね、こんばんは。まずは白茶を下さい」
緩やかな音楽の中、Gacrux(ka2726)がやってきました。
「ガクさん、来てくれたのね」
「いらっしゃいませ。……まずは挨拶からですよ」
がた、と前に回って来る初華に、天斗が冷静に指導。そして白茶をうやうやしく淹れるのです。
「あまりお気になさらず。こちらは差し入れです。……珍しいパイが手に入ったので」
戦闘依頼中には見せない笑顔で、シャンパンと花籠パイを差し出します。
「生クリームのクレープでいいかしら?」
「ええ、是非。この機会にデザートクレープを楽しみたいですね」
桃華の声に頷くGacrux。
「よ」
そこへ、チンピラリーダーの禿頭の兄ィちゃんがやってきました。
がた、と立ち上がるGacrux。普段の表情です。
天斗も前に。丁寧ですが、先と違って挨拶の言葉もなしです。
その後ろから。
「いつも初華とPクレープがお世話になってます」
桃華が出て来て中央に。初華の前に立ちふさがります。
「何だ、やんのか?」
「これは感謝の気持ちです。どうぞ♪ 私の特製クレープなんですよ?」
ぺこりとお辞儀して、焼き上がったばかりのクレープを差し出しました。
「……俺たちゃ町の嫌われモンだ。表向きは喧嘩してなきゃ周りから変な目で見られっぞ?」
兄ィちゃん、受け取って背を向けます。
が、クレープをかじって足を止めました。
「今日は特別だ。ありがとな」
背中越しにそれだけ言って去ります。
口にした、桃のジュレと生クリームをふんだんに使った『桃華すぺしゃる(非売品)』が美味しかったようですね。
でもって、新たなお客様。
「うわあ、これ美味しそうですっ」
「ここはざくろに任せておいて!」
きゃいきゃいやってるのは白漣(ka4703)と、時音 ざくろ(ka1250)です。
で、購入したクリームたっぷり苺チョコクレープ二つを食べながら……。
「あ、占いだ!」
発見した白漣がちら、とざくろを見る。
「いらっしゃい」
そんなこんなで入店。倉敷 相馬(ka5950)の占い卓です。
「時音さんとの相性を占ってください!」
白漣は期待に瞳をキラキラさせています。
「じゃ、スリーカード方式で。左から過去・現在・未来を……」
相馬、並べた三枚に手を掛けます。
(※以下、ガチ占いでお送ります)
【隠者(逆)】
「良くないカードだけど、むしろこれまでとてもいい関係、かな?」
ちら、と二人をうかがいつつそう告げます。
【教皇】
「これはびっくり。こうきたか……」
「え?」
相馬の様子の変化に、チラッとざくろを見る白漣。真剣に見ていたざくろの表情にどきっとしたりも。
【運命の車輪(逆)】
「【今】がとてもいいね……。お互いが一緒に過ごしていて楽しい、と好ましい印象を抱いているなら、今の感覚を大切に。相手を思いやるときっといい結果になるよ」
「相手を思いやる……」
占いの結果に、もしかしてと不安になっていたところもあった白漣が深々と感謝するのです。厳しいカードでしたが今の様子を加味した占いで、日ごろ酒場で卓を立ててる経験が生きましたね。
「今の感覚を大切に……だって…なんか、照れちゃうね」
白漣、ざくろのこの言葉に嬉しそうな様子を見せるのです。
占い小屋から出て。
「今日もすごく楽しかったです! 時音さんは…?」
「うん、楽しかった。白漣、これざくろからクリスマスプレゼント……モミの木ネックレスだよ」
星空の下、ぎゅっとざくろの腕に抱き着き感謝する白漣です。
●
場面はPクレープに戻ります。
「色々あるもんだな」
クレープ屋台を遠くに見つつ、柊 真司(ka0705)がぽそりとこぼしていますね。
「いろんな屋台があって楽しいわね~」
腕を絡めているリーラ・ウルズアイ(ka4343)は、クレープ屋台に行こうとしている真司に逆らいさらに先へと連行します。
「おい……」
「たくさんおごってもらったしもういいかな。それにしても珍しいよね?」
「たまにはそういう気分になるんだよ」
やれやれだ、と手を額にやる真司。これまでホットワインやローストビーフなどねだられるままお金を出していたのです。
やがて辻占いで再び立ち止まりました。
「占いか。未来でも……ん?」
真司、ちょっと占ってもらおうかと思ったのですが。リーラのつかまる左腕に異変が。
「おい」
「……いいじゃない、減るもんじゃないし。寒いんだもの」
振り向くと、むぎゅりと腕を抱きしめられていました。腕をしっかり絡めてぎゅうぎゅう胸を押し付けてますね。
「そ、そうか。風があるな。しのげるところでも……」
真司が風避けに人目のあまりない場所に入った時でした。
思いっきり首根っこに両手を掛けられたのです。
「風じゃなく、自分の照れ隠しだったでしょ?」
んちゅ、と何かをしたリーラがいたずらっぽく聞いてきたり。
「……寒くなくなったなら何よりだな」
そっぽを向いてあしらう真司ですが、頬が赤くなってますね。
その目に、イルミネーションが美しく。
「ふうん」
リーラも気付き、二人で眺めるのでした。
カップルはほかにも。
「これが町のクリスマス」
「身分など関係なく自由に楽しんでいるようですね」
エリス・カルディコット(ka2572)とクルス・ルナ・フレア(ka4723)です。
「ふうん……」
エリス、Pクレープにふらっと近寄りクレープを購入したようです。
クルスはついて行きませんでした。
「もしもついて行って恋人同士と勘違いされ……ではなくわたくしが坊ちゃまにその、その、そのッ! はしたない思いを抱いていると見抜かれてしまったら……」
両手を頬に添え身をくねらせてもだ……えたのはあくまで一瞬で言葉も口からは一切出していません。
そこにエリスが戻ってきました。
手には、二種類のクレープ。
「まさかそれはわたくしの分……」
内心、小躍りするクルスです。
「ほら、美味しそうだよ。ずっと屋敷に居たら、食べられなかったんだろうなぁ……」
一つをクルスに手渡し、改めてクレープにときめきかぷっと頬張るエリス。
「そうですね。こうしたものを食べるのもまた、自由に生きているという証ですから」
クルスは平静を装ったまま受け取り食べますが、その背後では。
――ふる、ふるん……。
お尻が微妙に揺れてます。
仮に尻尾があればわんこのように全力で振ってるに違いありません。
その時でしたッ!
「ねぇ、クルスのと交換しない? そっちも食べてみたいんだ」
ぎくっ、としたクルス、内心を悟られないよう快く交換に応じます。
「酸っぱくて甘いんだ」
爽やかにクルスのクレープを味わうエリス。
「こちらはねっとりと甘いです……はっ!」
同じくエリスのクレープをかじりまったりした甘さにくらっとしたクルスですが、ある事実に気付きましたよっ!
「こ、これはまさか、あぁ、この味、この味は坊ちゃまのぉぉ!?」
もちろん口に出してないですし全身はそのままですが、全霊でシャウトしています。誰にも聞こえません。
「ん?」
さすがに微妙に身悶えるクルスに気付くエリスですが、よく分からずぱくつくのでした。
●
クリスマスですから、奇跡も起こります。
「ん…? あそこにいるのは…」
ローストビーフをかじりつつ会場をぶらついていたゼクス・シュトゥルムフート(ka5529)は、見覚えのある顔に思わず立ち止まりました。
「あれ?」
眺めていると、その人物もゼクスに気付いたようです。
「えーっ! お義兄ちゃん?!」
驚く姿は間違いありません、ゼクスの婚約者の妹、シェルミア・クリスティア(ka5955)です。
「何やってんだ、こんなところで?」
思わず駆け寄って聞いてみます。
「クリスマスに決まってるじゃない。お義兄ちゃんは何してるの?」
「クリスマスだよ」
ぷっ、と二人とも笑ってしまいました。
そんなこんなで、クレープを買ってベンチに座って。
「しかし、シェリィとこんな所で再会するとは思わなかったな…。本当に大きくなったものだ」
甘味を食べて気持ちの落ち着いたゼクスがしみじみ言います。
「最後に会った頃がもっと小さい頃だったから、わたしも見た目は少し変わっちゃったね」
同じくぱくつくながら答えるシェルミア。
「それにしても……ゼクスお義兄ちゃんの消息が分からなくなってたのはコッチに来てたからなんだね」
こてん、とゼクスの方に倒れかかって身を預けるシェルミアです。「お姉ちゃんもこっちに居るのかな」という呟きは口の中に消えました。
「ん? 何か欲しいものがあるなら買ってやるからな」
「誰かにもたれかかるって、しばらくしてなかったから……少しこのままにしてほしい」
ゼクス、しっかりとシェルミアを支えるべくしっかりと身構えて座り直します。
「遠慮なく甘えてくれて構わないぞ……」
優しく言った、その時でした。
「うん、元気出た。せっかくのクリスマス、楽しもう!」
「……本当に大きくなったものだな」
ばっと身を起こし立ち直ったシェルミアを見て、改めて心身ともに成長した姿に目を見張るゼクスなのです。
この後、楽しく二人で回遊するのです。
●
そんなこんなで、会場には雪がちらつき始めました。
ホワイトクリスマスですね。
「ホットワインを出して正解ね」
居酒屋屋台ではリューナがビスマを振り返ってにっこり。
屋台は無事に売り切れです。
「お茶にしよう」
で、残り物で乾杯。
「その、こういう屋台二人で出すの、良いな」
「ええ。青薔薇亭でもこういうの出したいわね。私も食べたいしまた作ってくれる?」
控えめに話を振ったビスマに、にっこり答えるリューナです。
「さて、雪が映える曲を一曲やるか」
Pクレープ前では、酒を飲んでいい気分の雷吼が龍笛で朗々と。
「ロイヤルミルクティー、ウインナーコーヒーもございます」
白茶を完売した天斗は、ほかにも用意していたようですね。
「サンタさんがプレゼントしてくんないかな?」
戻って来たザレムは、値札をぴらり。パルムハウスは欲しくても高いようです。ここは大人しく、ロイヤルミルクティーで我慢我慢。
「さて、小銭も稼いだし。……客の食べてたクレープ、美味そうだったな」
相馬も占い小屋から戻ってきました。
すっかり懐も温かくなったので、せめてクリスマス気分でも、と桃華に生クリームのクレープを注文です。
「一口シフォンをお兄様のために焼きました! お兄様、あーんです」
エステルは自転車修理屋台に自分の自転車を持ち込んでましたが、そこに居ついてアルバに迫っています。
「賑やかでとっても楽しいですねぇ」
「イルミネーション、綺麗だったよねっ」
小太とフラも帰って来ました。演奏を終えていた二人は一緒に会場を回って来たようです。フラはツリーを見たのが良かったようで。
「あ、何かいい匂いがぁ?」
「ガクさん、お土産のお好み焼き、焼けたよっ」
鼻を利かせた小太の先で、屋台から初華が出て来ました。
「祝いの日は俺も料理は楽がしたいのでね……それじゃ、メリークリスマス。グッドナイト」
ひらりと身を翻すGacrux。
そうですね。もう帰宅する人も多くなりました。
「ぼくも大好きだよ。エステル。メリークリスマス」
アルバはあーん・ぱくっとした後、エステルに猫の小物をプレゼントしています。
恋人達も、いよいよ用意していた贈り物を渡したり肩を寄せ合ったりの時分です。
「クリスマスですか…良いものですね」
天斗は、何処か遠い目で呟いてますね。
「どうしたの、天斗さん? 何か辛い思い出でもあるの?」
初華、独り者への質問がどストレートですね。
でも天斗、動じません。
「大人用ですが、味が分かるならどうぞ」
「んあっ。馬鹿にしたっ! いいもん、ちゃんと飲むもん」
天斗が差し出したのは、生クリームにスライスしたアーモンドを乗せた特別製のロイヤルミルクティーです。
香り付けしたブランデーで、初華は酔ってしまうのはご愛敬。
このクリスマスパーティーのおかげで町のチンピラたちは大満足。よそからのチンピラの防波堤として機能しているのですが、しばらくしっかりと人知れず、町の秩序を守ったそうです。
依頼結果
参加者一覧
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マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談事はこちらで アルバ=ティアーレイン(ka5871) 人間(クリムゾンウェスト)|28才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2015/12/21 20:12:56 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/12/22 10:34:33 |