ゲスト
(ka0000)
百年旅~草原の井戸
マスター:深夜真世
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
- 1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~7人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/12/29 22:00
- 完成日
- 2016/01/11 18:34
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●極彩色の街のフラ
ここは同盟領。極彩色の街「ヴァリオス」の一角。
「うわあ……」
フラ・キャンディ(kz0121)が馬車の中で目を見張っていた。
「どうかの、フラ。同盟領一番の都会を見た感想は」
隣に座るフラの後見人、ジル・コバルトが破願しつつ聞いた。
「建物がぎゅっと詰まってて人がたくさん……しかもみんな綺麗……」
立ち並ぶ二階建てや三階建ての住居が壁のようにそそり立ち、その間をすらりとした服装の紳士やふんわりと花のように揺らぐドレスを着た淑女が行き交う。
「なんて高い建物なんだろう、何となく争い事がないような……白は真っ白で赤は真っ赤……美味しそうなものも売ってる。飾りも素敵だし、人もたくさん……」
あれもこれも、と目移りしてうわごとのように呟いているのでどれの何を言っているのか判然としない状態だ。
「人ばかりで息苦しくはないかの?」
「ううん……ジェオルジのお祭りとかで慣れた……すごい。みんな生活してる……みんな生きてる……。ここの生活って、森に食べ物を取りに行くんじゃなくて、畑で雑草抜きをするんじゃなくて……何をしてるんだろう」
ジルに聞かれても振り向きもしない。
「主には物を売ったり、作ったり、運んだり、じゃの。人から人に託すことで生活が成り立っておる」
「人から人に、託す……」
フラはこの言葉をいたく気に入った様子だった。
今回、ジルがジェオルジに来たのはフラの社会見学のためではなかった。
「どこかの森の中に隠れ住んでたと聞いてたが、息災で何よりだ」
「災いを避けて森の中に隠れ住んでたわけだから、息災でないとおかしかろう」
ジル、どこかの酒場で知人と会っていた。フラは同席していない。クリスマスで出掛けているのだ。
「そりゃそうだが、ならばなぜ危険を冒してここに来る?」
「資金の現状は?」
逆に問いつつ身を乗り出すジル。
「緩やかに減少してるな。あんたへの仕送りは安心してくれ。十年は大丈夫だ」
「新たに娘を養っておる。資金運用計画は白紙じゃ。緩やかに増えるようにするんじゃ」
「何?」
壮年の知人は機嫌を傾けた。
「あんた、信用していた家族に裏切られて今の立場になったのに……それなのに養子か?」
「純真無垢なエルフの娘じゃ。彼女には後ろ盾が必要なんじゃ」
必死に訴えるジルを見て、知人はため息をついて諦めた。
「もともとあんたの金だし、こっちゃ金に困ってないから別にいいが……確実な投資先はないぞ?」
「テニス道具販売組合『テニスラボ』に出資するが良い。後は……困った時の『ベンド商会』じゃが……」
「テラボ? ……ああ、あそこか。悪くない。……が、ベンドはあんたが失脚した理由の一つだろ?」
「華やかな立場であれば闇の商人との取引はマイナスじゃが……いまは同じ穴の狢じゃろ?」
「つくづく恐ろしい爺さんだ」
知人は顔をしかめて納得した。今の立場であればまたとない妙手ということか。
と、ここで何かを思い出したように身をただした。
「そうだ。もう一つ有力なところがあるんだが、一つ恩を売る必要があってね」
「ふむ?」
聞けば、田舎での怪奇現象の解決依頼だった。
★
とある田舎村の近くの草原で、ある日突然煉瓦で囲まれた井戸が出現したという。
面妖な、と村人が近付くと、井戸から触手が出てきて引きずり込まれた。もちろん、井戸の底からは断末魔の悲鳴しか響かなかった。もっとも、叫びは痙攣したように途中でぴたっと止まったらしいが。
雑魔であろう、と判断し誰も近寄らなくなった。
今ではたまに不審に思った動物が近寄り犠牲になっているという。
一度、埋めてしまおうと戸板をかぶせ石を置いたこともあった。
すると、井戸から離れた全周の地面から紫の濃霧が噴き出し視界がなくなり、逃げ遅れた数人がいなくなっていた。井戸とは別の場所に新たな穴が開いていたともいう。もっとも、そこは数日すると塞がり、井戸の石と戸板は吹き飛ばされていたが。
大ミミズなど、ワーム状の姿を毒霧の中に見たという話もある。
★
「ハンターオフィスに取り次いで稼ごうとしたが、村からはかなり離れていて用心しさえすれば人畜無害なので首を縦に振らんらしい。とはいえ、不安は不安。……だから、荷馬車の護衛として雇ったハンターに、ついでに倒してもらうという筋書きで信用を押し付けたいわけ」
「いいじゃろう。その娘はちょうどハンターじゃ」
というわけで、井戸の中の怪物退治をしてくれる人、求ム。
ここは同盟領。極彩色の街「ヴァリオス」の一角。
「うわあ……」
フラ・キャンディ(kz0121)が馬車の中で目を見張っていた。
「どうかの、フラ。同盟領一番の都会を見た感想は」
隣に座るフラの後見人、ジル・コバルトが破願しつつ聞いた。
「建物がぎゅっと詰まってて人がたくさん……しかもみんな綺麗……」
立ち並ぶ二階建てや三階建ての住居が壁のようにそそり立ち、その間をすらりとした服装の紳士やふんわりと花のように揺らぐドレスを着た淑女が行き交う。
「なんて高い建物なんだろう、何となく争い事がないような……白は真っ白で赤は真っ赤……美味しそうなものも売ってる。飾りも素敵だし、人もたくさん……」
あれもこれも、と目移りしてうわごとのように呟いているのでどれの何を言っているのか判然としない状態だ。
「人ばかりで息苦しくはないかの?」
「ううん……ジェオルジのお祭りとかで慣れた……すごい。みんな生活してる……みんな生きてる……。ここの生活って、森に食べ物を取りに行くんじゃなくて、畑で雑草抜きをするんじゃなくて……何をしてるんだろう」
ジルに聞かれても振り向きもしない。
「主には物を売ったり、作ったり、運んだり、じゃの。人から人に託すことで生活が成り立っておる」
「人から人に、託す……」
フラはこの言葉をいたく気に入った様子だった。
今回、ジルがジェオルジに来たのはフラの社会見学のためではなかった。
「どこかの森の中に隠れ住んでたと聞いてたが、息災で何よりだ」
「災いを避けて森の中に隠れ住んでたわけだから、息災でないとおかしかろう」
ジル、どこかの酒場で知人と会っていた。フラは同席していない。クリスマスで出掛けているのだ。
「そりゃそうだが、ならばなぜ危険を冒してここに来る?」
「資金の現状は?」
逆に問いつつ身を乗り出すジル。
「緩やかに減少してるな。あんたへの仕送りは安心してくれ。十年は大丈夫だ」
「新たに娘を養っておる。資金運用計画は白紙じゃ。緩やかに増えるようにするんじゃ」
「何?」
壮年の知人は機嫌を傾けた。
「あんた、信用していた家族に裏切られて今の立場になったのに……それなのに養子か?」
「純真無垢なエルフの娘じゃ。彼女には後ろ盾が必要なんじゃ」
必死に訴えるジルを見て、知人はため息をついて諦めた。
「もともとあんたの金だし、こっちゃ金に困ってないから別にいいが……確実な投資先はないぞ?」
「テニス道具販売組合『テニスラボ』に出資するが良い。後は……困った時の『ベンド商会』じゃが……」
「テラボ? ……ああ、あそこか。悪くない。……が、ベンドはあんたが失脚した理由の一つだろ?」
「華やかな立場であれば闇の商人との取引はマイナスじゃが……いまは同じ穴の狢じゃろ?」
「つくづく恐ろしい爺さんだ」
知人は顔をしかめて納得した。今の立場であればまたとない妙手ということか。
と、ここで何かを思い出したように身をただした。
「そうだ。もう一つ有力なところがあるんだが、一つ恩を売る必要があってね」
「ふむ?」
聞けば、田舎での怪奇現象の解決依頼だった。
★
とある田舎村の近くの草原で、ある日突然煉瓦で囲まれた井戸が出現したという。
面妖な、と村人が近付くと、井戸から触手が出てきて引きずり込まれた。もちろん、井戸の底からは断末魔の悲鳴しか響かなかった。もっとも、叫びは痙攣したように途中でぴたっと止まったらしいが。
雑魔であろう、と判断し誰も近寄らなくなった。
今ではたまに不審に思った動物が近寄り犠牲になっているという。
一度、埋めてしまおうと戸板をかぶせ石を置いたこともあった。
すると、井戸から離れた全周の地面から紫の濃霧が噴き出し視界がなくなり、逃げ遅れた数人がいなくなっていた。井戸とは別の場所に新たな穴が開いていたともいう。もっとも、そこは数日すると塞がり、井戸の石と戸板は吹き飛ばされていたが。
大ミミズなど、ワーム状の姿を毒霧の中に見たという話もある。
★
「ハンターオフィスに取り次いで稼ごうとしたが、村からはかなり離れていて用心しさえすれば人畜無害なので首を縦に振らんらしい。とはいえ、不安は不安。……だから、荷馬車の護衛として雇ったハンターに、ついでに倒してもらうという筋書きで信用を押し付けたいわけ」
「いいじゃろう。その娘はちょうどハンターじゃ」
というわけで、井戸の中の怪物退治をしてくれる人、求ム。
リプレイ本文
●
「あれが井戸か……妙なところにあるよね」
現場近くの森で、ネーナ・ドラッケン(ka4376)が振り向いた。
横にはフラ・キャンディ(kz0121)が屈んで潜んでいた。
「住み着いてるのはワームみたいだよね?」
「ここまで擬態するなんて見事ねぇ」
フラが言ったところで、のっしり、と上からキーリ(ka4642)が覆いかぶさった。
「私も枝かと思ってナナフシ握っちゃった事あるのよ?」
「うーん、立派な擬態……もしかして、頭は良いのかな?」
いたずらっぽい笑みを浮かべるキーリの横から、霧雨 悠月(ka4130)も身を乗り出しふーむと草原を見詰める。隣のフラは「悠月さん、上のキーリさん何とかしてよぅ」とか泣きついているが。
「本能的に効率良く狩る術を知っている……か。低知能のやつも進化するのは怖いな」
さらに横で、擬態とも少し違う気もするが、と前置きして神奈 碧(ka5994)が静かに言った。隣では「あんもう、ユッキー」、「はいはい。フラさんが重たがってますから」と悠月がキーリをどけてフラを助けていたり。
「平原に井戸が一つ…。…確かにあれは覗きたくなりますねぇ」
今度はそう言って、弓月・小太(ka4679)がやって来た。フラの上にいたキーリがいなくなったので、代わりにのしかかってみようかなぁとか思ったのは内緒だ。大人しくフラの横に陣取ると、逆にフラが「えいっ」と小太の上にのしかかるのだが。
「わわっ。フラさん……」
「フラ? 下手に覗き込まないようにね?」
これを見てネーナが釘を差す。
「ええっ。そんなことしないよ」
「準備も無くいきなり顔をつっこむ慌てモノじゃない……とは思いたいんだけどね」
少なくとも、ノリで人の上にのしかかるようなところがあるし、とネーナは言いたいらしい。
――むぎゅり。
「わっ!」
フラが突然悲鳴を上げたのは、上からさらにむぎゅりと誰かがのしかかって来たから。
「お、重いですよぅフラさん…」
「誰?」
フラが振り向くと……。
「あなたが新しい生贄の子? やわらかくておいしそうね」
何と、血まみれで蒼白な霧崎 灯華(ka5945)の――生気がなくこの世の恨みを無言で訴えているかのような切迫した顔が、頬もつかんとばかりにどアップで迫っていたのだ!
「ひいいっ!」
「重い、重いですっ…」
フラ、涙目になって死に物狂いでじたばた。が、新たな人物と小太にサンドイッチ状態で逃げるに逃げられず。もちろん一番下の小太が最もひどい目に遭っているのだが。
「はいはい。小太さんが死にそうですから」
「ユッキー、何気に世話好きね?」
見かねた悠月が、フラを驚かせた灯華をよいしょと立たせる。なんだかんだ言いつつキーリも悠月に習いフラをどけて小太を助けるのだが。
「なかなかいい子じゃない……ただの化粧だから安心して」
灯華、にまり。フラのノリの良さが気に入ったらしい。ぐすん、と目尻の涙をぬぐうフラの唇に自分の指で拭った血のりを塗ってやる。
「にぎやかだね。……敵に動きがないからいいが」
「まあ、こっちから近寄らなければ何もなさそうではあるね」
碧は騒ぎをよそに一人観察を続けていたようで、クールに井戸周りの様子を伝える。静かにしろ、というよりこの状況を楽しんでいるみたいだ。ネーナもこの騒ぎで敵に動きがないのが確認できたと前向きである。
「でもでもっ、井戸以外も危ないかもなのっ…」
一番後ろからそんな声が響く。
振り返ると、ディーナ・フェルミ(ka5843)がいた。地面の枝を手にしてがりがり地図を書き始める。
「えーと、井戸がここで、前濃霧が噴き出たのが分かってる範囲がこの辺で、穴が開いたのがこの辺? らしいの。そこはまたワームが穴をあけやすい場所だから、避けて位置取りした方がいいかなぁって思ったの」
被害に遭った村人から事前に聞き込んだ情報を示すディーナ。
「手っ取り早く体に縄付けて井戸の中覗き込んでみようかしら?」
「いや、敵本体を誘き出すため遠距離攻撃で井戸を破壊した方が安全だろう」
面倒くさそうに言う灯華に、碧が待ったをかける。
「もし、地中を移動するようなら超感覚で音を拾えるかどうかやってみます」
「決まりだね」
悠月の提案。頷くネーナ。
「ネーナさん、なんでボクを見るの?」
「自分が分かってるのかしらね?」
「ひぃぃ」
不満そうなフラに、再び灯華が屍のような表情をしてアップで迫る。
「と、とりあえず井戸を撃ってみて反応を見ましょうかぁ? 壊されそうになって出て来てくれればいいですけどぉ」
横で小太が手筈を確認するため皆を見た。
「井戸を破壊すれば出てくるだろう。そこを捕まえて引きずり出す」
ぐっ、と拳を固めた碧。
これで方針は固まった。
●
「い、いきますぅ」
隠れたまま膝立ちした小太、魔導銃「魔弾」発射。
ディーナのリボルバー「グラソン」も同時に火を噴いた。
「か、堅いみたいなの」
「まあ、簡単には壊れないだろう」
う~、と皆を見上げるディーナ。碧は井戸を注視したまま手短に。
「派手にやろうかしら」
キーリ、魔杖「スキールニル」を振るいファイヤーボールをたたみ込む!
どぉん、と命中爆発しても井戸はそのまま。ライフラインでもあるため総じて井戸は堅い。
「それでもしつこくいきますよぉ」
連射する小太。ディーナも続く。
その射撃に交り、灯華が動いた!
「埒、明かないわね」
「あっ、灯華さん!」
「……ほら、やっぱり」
灯華の動きにつられて出たフラをネーナが追う。
「壊すのに手間取るならむしろいい」
碧もぽふりと被った帽子「シュヴェルマー」を手で押さえて出た。
「もう一発いけるかしらね?」
「うん……誰かが誰かを助けられる距離を保って!」
キーリの声に頷いて悠月も走った。前を行く四人への声掛けとともに伸ばす手。その横をキーリのファイヤーボールが走り抜ける。
「あのお嬢さん、一口で食べられちゃうかもっ」
「え? 僕もフラさんを守りますよぉ!」
ディーナも射撃を中止し急いで前線へ。小太も慌ててついて行く。
――どぉん!
この時、井戸にファイヤーボール着弾。
そして何と!
「新しい生贄が来たわよ」
灯華が被害を受けつつも爆風の中からぬっと井戸の傍に憑りつ……もとい、取り付いた。
そして中を覗くっ!
『ぐもっ?』
井戸の底の方で、何かがびくっとうごめいた。
陽の光が遮られ反応したのだが、爆撃直後で防御に専念していたのだろう。明らかに敵の反応は鈍かった。
結果、灯華はいきなり引きずり込まれることなく敵をしっかりと視認。
『ぐもももっ!』
土佐衛門もかくやの醜い人の顔がぐわっ、と底から湧き上がっても身を引く余裕があった。
「襲われてもいいんだけどね」
井戸の傍からバックステップするとほぼ同時に、多数の触手がどぱーん、と湧き出てきた。
「カードはやっぱりテーブルを挟んだくらいの距離で使わないとね」
カードバインダー「ルーンマジック」からドローする灯華。彼女のターンは、胡蝶符。光の蝶が襲い来る触手に体当たりする。
「わっ!」
むしろ虚を突かれたのは、直後に到着したフラだった。リボルバーを持った利き手をからめ取られたが……。
「ま、これは仕方ないね」
ネーナが抱き着き引き込まれるのを止めると、ウィップ「カラミティバイパー」で触手を弾き上げる。
「引き上げられないか?」
碧も到着すると、一番太い溺死者の顔がついている触手に怪力無双で掴み掛る。
「はっ!」
碧にからもうとする触手はワンテンポ遅れて入った悠月が日本刀でぶった切り。このころには灯華とネーナが完全フリーに。碧の周りを固めて触手のちょっかいを完全シャットアウトしていた。
「ひゃっ」
「フラ嬢、こっちで濃霧に備えるの」
フラは突然背後から抱き着かれてびっくり。ディーナと一緒にそのまま後方に。
「んー、触手攻撃受けると絵的にマズい人がチラホラ……」
最後尾ではキーリがウインドスラッシュに切り替え触手切断攻撃を繰り出している。
「小太さん、こっちです」
最前線で悠月、触手に絡まれつつも井戸に取り付くと底に向かって八方手裏剣を叩き込みつつ仲間を呼ぶ。
「鞭のように弾いてきたり絡んできたり……」
小太も井戸の底にぶっ放す。
「よし、いける!」
両手で太い触手を抱える碧、びくっと敵の手ごたえがなくなったのを感じ、再び剛腕スキルで一本釣りに挑戦だ。
が、しかしっ!
「わっ!」
どうやら死人の顔つきの触手はトカゲのしっぽのように切り捨てができるらしい。
碧、尻餅をつく。
「はっ!」
ここでネーナ、周りを見る。
あれだけくねっていた触手がすべて井戸の底へと引き上げているではないか。
ハンターたちの流れだった戦闘が、完全に途切れた瞬間だった。
次の展開が読めない。
「はわっ。あ、あぶないですよぅ、灯華さん」
小太が慌てたのは灯華がまたも思い切りよく井戸の底を覗いたから。
「何だ、つまんない」
灯華の呟き。今度は先のような気配がない。
「まさか」
悠月も取り付いた。
そして耳を澄ませる。超感覚だ。
直後、気付く。
勢いよく顔を上げて叫んだッ!
「地下を移動している。僕たちの背後だっ!」
振り向く方向で、ディーナとフラが目を丸めていた。キーリは目を細めている。
その、刹那だった!
●
――ぶしゅう……。
「や、やっぱり来ましたの!」
振り向くディーナ。
視線の先では……。
「私なのね……」
キーリの立っている付近から紫色の毒霧が噴き出していた。
「見るからに吸いたくない色してる濃霧よねー。ウミウシみたい。ウミウシの煙幕」
「キーリさん、いいからこっちに!」
フラ、慌てて駆け寄り……というか、その行動でフラも毒霧を食らうのだが。
「ウミウシは治せないけど……えい」
ディーナがキャンディスタッフを振るいキーリのバッドステータスを回復。最初に構えていた拳銃は「我慢なの」、とか言ったわけではないが納めてしまって回復支援に徹している。
「来るよ!」
悠月の叫び。すでに地鳴りは伝わっている。
「避けれそうにないかもねー」
キーリ、魔杖を回して構えストーンアーマーを纏いフラをかばう。
――どごっ!
ここで、地面が破裂した。
どぉん、と姿を現す巨大ワーム。鎌首をもたげ垂直にそそり立つ。
と、思った瞬間だった。
ゆら、と力を抜いて前方に倒れてきた。
どしん、と大地に自らの身体を叩きつけた。一直線に敵を潰す攻撃だ。
が、すでにハンターたちは回避している。
「結果的に同じことになったな」
碧が旋棍「疾風迅雷」を構え改めて大地に長い体を横たえた敵に向かっていく。
「少しは楽しませてくれるかしら?」
灯華もカードバインダーを開き向かっていく。
井戸の傍では、ネーナが碧の背後に走り、小太と悠月が左右に分かれた。
井戸に戻ると思われる敵に対し、遠近双方での挟撃陣が完成した瞬間だ。
ところがっ!
「うわっ」
ワーム、一直線に進むのではく体を大きく左右に波打たせながら移動してきた。左右への体当たりで、完全に打点を外された碧、灯華が吹っ飛ばされる。
毒霧をまき散らしながらワーム、井戸に戻った。
「もう一度……いや、今度はあっちに行きました」
悠月、今度は別の大地を指差した。キーリ、フラ、ディーナが動いていた方向の背後である。
――どごっ!
毒切りとともに、またも姿を現す巨大ワーム。ぶよぶよの身体が再びそそり立ち、大地を叩くように着地する。
その口先に、碧と灯華が回り込んでいた!
「体は波打たせても頭の位置は動かなかったからな」
「とりあえず襲われるのがやっぱいいわよね」
瞬間、大量の触手が碧と灯華を襲った。
「これに絡むといい」
碧の目の前で金色の円が煌いた!
構えたトンファーを回して触手をまとめて絡めとったのだ。
一方の灯華は腕を守りつつ絡められた。
「う……」
毒針を食らった時だけは真剣な表情をしたが、そこは覚醒者。一般人に利く程度の毒で動けなくなるなどはない。もっとも、そのままワームの口腔に引き込まれるが。
そこに、何かが絡んだ。
「いきなり丸呑みはさせないよ」
瞬脚でやって来たネーナが灯華に鞭を絡め完全に飲み込まれる事態から救っていた。
「ディーナさん、撃とう!」
「あ、あれなら誤射はないよ……ね?」
後方側面で慌ててデリンジャーを構えるフラ。ディーナもあれだけ大きな体なら、と銃を抜いて撃つ。
「必ず助ける」
余裕のできた碧は先のトンファーを捨てた動きからナックル「セルモクラスィア」を嵌めた拳を構え力を貯めていた。
「灯華さん!」
後方から悠月がやって来て……。
「月牙!」
飛び込むと同時に青白い霊力を纏った日本刀を大きく振って敵の巨体を斬りつけた。牙をむく獣の幻影が浮かび、バッサリと敵の表皮を切り裂いた。
敵の口では、ごおぅ、と炎が上がる。
食われつつ灯華が火炎符を放っていたのだ。
「ふふ、喰いついて来たのはそっちでしょ? 後悔したなら死になさい!」
毒にやられて脱力した目をしていたが動ける様子。至近距離のカード攻撃の次はバインダーの角でげしりと殴打をかます。
「吐き出すがいい」
そこへ、力を溜め込むだけ溜め込んだ碧の……最短距離で真っ直ぐ打ち込む震撃が口元にヒットした。いや、めり込んだと言っていい。体重の乗った一撃で敵は横を向き、灯華を思いっきり吐き出した。
「い、いまですの!」
ディーナの期待の声が響く。
「井戸に戻らせませんよぉ」
「尻尾を狙って、と……火に風に土。これぞ魔術師って感じよね」
小太も援護射撃。キーリはまたもファイアーボールどーんでどやっ。
もちろん、悠月が斬りや碧の突きがもう一度入り……。
――びくっ、どさ……。
ワームの井戸への逃避行はもう一歩のところで止まり、息絶えた。
●
戦闘終わって。
「居場所が分かっていて出て来てくれない敵を倒すの、難しかったの~」
「そうだね」
ふう、と一息つくディーナに、緑が静かに頷いている。
「私、弱いから生贄にならなくて良かったわ」
「……夏だと更に犠牲者が出たかもしれない、厄介な擬態だったね」
「何よユッキー、失礼ね。あからさまに話題を変えなくてもいいじゃない」
キーリは悠月に絡んでいたり。
そして生贄になりかけた灯華。
ディーナに回復してもらったはずだが、座ったままうなだれているぞ?
「その、灯華さん大丈夫?」
「ふ、フラちゃん、おつか……」
「ひぃぃん!」
不用意に近寄ったフラ、また特殊メイクした灯華にどアップで迫られだれかに泣きつく。
「フラさん、だ、大丈夫ですかぁ」
抱き着かれたのは小太だった。よしよしなでなで。
「あれ、どうしようか?」
そんな騒ぎをよそに、ネーナが井戸を指差す。
「後々邪魔にならないよう埋めておこう」
碧の言葉の通り、後で依頼主の商人たちが埋めた。
村人は感謝し、商人たちは新たな商いが始まり喜んだという。
「あれが井戸か……妙なところにあるよね」
現場近くの森で、ネーナ・ドラッケン(ka4376)が振り向いた。
横にはフラ・キャンディ(kz0121)が屈んで潜んでいた。
「住み着いてるのはワームみたいだよね?」
「ここまで擬態するなんて見事ねぇ」
フラが言ったところで、のっしり、と上からキーリ(ka4642)が覆いかぶさった。
「私も枝かと思ってナナフシ握っちゃった事あるのよ?」
「うーん、立派な擬態……もしかして、頭は良いのかな?」
いたずらっぽい笑みを浮かべるキーリの横から、霧雨 悠月(ka4130)も身を乗り出しふーむと草原を見詰める。隣のフラは「悠月さん、上のキーリさん何とかしてよぅ」とか泣きついているが。
「本能的に効率良く狩る術を知っている……か。低知能のやつも進化するのは怖いな」
さらに横で、擬態とも少し違う気もするが、と前置きして神奈 碧(ka5994)が静かに言った。隣では「あんもう、ユッキー」、「はいはい。フラさんが重たがってますから」と悠月がキーリをどけてフラを助けていたり。
「平原に井戸が一つ…。…確かにあれは覗きたくなりますねぇ」
今度はそう言って、弓月・小太(ka4679)がやって来た。フラの上にいたキーリがいなくなったので、代わりにのしかかってみようかなぁとか思ったのは内緒だ。大人しくフラの横に陣取ると、逆にフラが「えいっ」と小太の上にのしかかるのだが。
「わわっ。フラさん……」
「フラ? 下手に覗き込まないようにね?」
これを見てネーナが釘を差す。
「ええっ。そんなことしないよ」
「準備も無くいきなり顔をつっこむ慌てモノじゃない……とは思いたいんだけどね」
少なくとも、ノリで人の上にのしかかるようなところがあるし、とネーナは言いたいらしい。
――むぎゅり。
「わっ!」
フラが突然悲鳴を上げたのは、上からさらにむぎゅりと誰かがのしかかって来たから。
「お、重いですよぅフラさん…」
「誰?」
フラが振り向くと……。
「あなたが新しい生贄の子? やわらかくておいしそうね」
何と、血まみれで蒼白な霧崎 灯華(ka5945)の――生気がなくこの世の恨みを無言で訴えているかのような切迫した顔が、頬もつかんとばかりにどアップで迫っていたのだ!
「ひいいっ!」
「重い、重いですっ…」
フラ、涙目になって死に物狂いでじたばた。が、新たな人物と小太にサンドイッチ状態で逃げるに逃げられず。もちろん一番下の小太が最もひどい目に遭っているのだが。
「はいはい。小太さんが死にそうですから」
「ユッキー、何気に世話好きね?」
見かねた悠月が、フラを驚かせた灯華をよいしょと立たせる。なんだかんだ言いつつキーリも悠月に習いフラをどけて小太を助けるのだが。
「なかなかいい子じゃない……ただの化粧だから安心して」
灯華、にまり。フラのノリの良さが気に入ったらしい。ぐすん、と目尻の涙をぬぐうフラの唇に自分の指で拭った血のりを塗ってやる。
「にぎやかだね。……敵に動きがないからいいが」
「まあ、こっちから近寄らなければ何もなさそうではあるね」
碧は騒ぎをよそに一人観察を続けていたようで、クールに井戸周りの様子を伝える。静かにしろ、というよりこの状況を楽しんでいるみたいだ。ネーナもこの騒ぎで敵に動きがないのが確認できたと前向きである。
「でもでもっ、井戸以外も危ないかもなのっ…」
一番後ろからそんな声が響く。
振り返ると、ディーナ・フェルミ(ka5843)がいた。地面の枝を手にしてがりがり地図を書き始める。
「えーと、井戸がここで、前濃霧が噴き出たのが分かってる範囲がこの辺で、穴が開いたのがこの辺? らしいの。そこはまたワームが穴をあけやすい場所だから、避けて位置取りした方がいいかなぁって思ったの」
被害に遭った村人から事前に聞き込んだ情報を示すディーナ。
「手っ取り早く体に縄付けて井戸の中覗き込んでみようかしら?」
「いや、敵本体を誘き出すため遠距離攻撃で井戸を破壊した方が安全だろう」
面倒くさそうに言う灯華に、碧が待ったをかける。
「もし、地中を移動するようなら超感覚で音を拾えるかどうかやってみます」
「決まりだね」
悠月の提案。頷くネーナ。
「ネーナさん、なんでボクを見るの?」
「自分が分かってるのかしらね?」
「ひぃぃ」
不満そうなフラに、再び灯華が屍のような表情をしてアップで迫る。
「と、とりあえず井戸を撃ってみて反応を見ましょうかぁ? 壊されそうになって出て来てくれればいいですけどぉ」
横で小太が手筈を確認するため皆を見た。
「井戸を破壊すれば出てくるだろう。そこを捕まえて引きずり出す」
ぐっ、と拳を固めた碧。
これで方針は固まった。
●
「い、いきますぅ」
隠れたまま膝立ちした小太、魔導銃「魔弾」発射。
ディーナのリボルバー「グラソン」も同時に火を噴いた。
「か、堅いみたいなの」
「まあ、簡単には壊れないだろう」
う~、と皆を見上げるディーナ。碧は井戸を注視したまま手短に。
「派手にやろうかしら」
キーリ、魔杖「スキールニル」を振るいファイヤーボールをたたみ込む!
どぉん、と命中爆発しても井戸はそのまま。ライフラインでもあるため総じて井戸は堅い。
「それでもしつこくいきますよぉ」
連射する小太。ディーナも続く。
その射撃に交り、灯華が動いた!
「埒、明かないわね」
「あっ、灯華さん!」
「……ほら、やっぱり」
灯華の動きにつられて出たフラをネーナが追う。
「壊すのに手間取るならむしろいい」
碧もぽふりと被った帽子「シュヴェルマー」を手で押さえて出た。
「もう一発いけるかしらね?」
「うん……誰かが誰かを助けられる距離を保って!」
キーリの声に頷いて悠月も走った。前を行く四人への声掛けとともに伸ばす手。その横をキーリのファイヤーボールが走り抜ける。
「あのお嬢さん、一口で食べられちゃうかもっ」
「え? 僕もフラさんを守りますよぉ!」
ディーナも射撃を中止し急いで前線へ。小太も慌ててついて行く。
――どぉん!
この時、井戸にファイヤーボール着弾。
そして何と!
「新しい生贄が来たわよ」
灯華が被害を受けつつも爆風の中からぬっと井戸の傍に憑りつ……もとい、取り付いた。
そして中を覗くっ!
『ぐもっ?』
井戸の底の方で、何かがびくっとうごめいた。
陽の光が遮られ反応したのだが、爆撃直後で防御に専念していたのだろう。明らかに敵の反応は鈍かった。
結果、灯華はいきなり引きずり込まれることなく敵をしっかりと視認。
『ぐもももっ!』
土佐衛門もかくやの醜い人の顔がぐわっ、と底から湧き上がっても身を引く余裕があった。
「襲われてもいいんだけどね」
井戸の傍からバックステップするとほぼ同時に、多数の触手がどぱーん、と湧き出てきた。
「カードはやっぱりテーブルを挟んだくらいの距離で使わないとね」
カードバインダー「ルーンマジック」からドローする灯華。彼女のターンは、胡蝶符。光の蝶が襲い来る触手に体当たりする。
「わっ!」
むしろ虚を突かれたのは、直後に到着したフラだった。リボルバーを持った利き手をからめ取られたが……。
「ま、これは仕方ないね」
ネーナが抱き着き引き込まれるのを止めると、ウィップ「カラミティバイパー」で触手を弾き上げる。
「引き上げられないか?」
碧も到着すると、一番太い溺死者の顔がついている触手に怪力無双で掴み掛る。
「はっ!」
碧にからもうとする触手はワンテンポ遅れて入った悠月が日本刀でぶった切り。このころには灯華とネーナが完全フリーに。碧の周りを固めて触手のちょっかいを完全シャットアウトしていた。
「ひゃっ」
「フラ嬢、こっちで濃霧に備えるの」
フラは突然背後から抱き着かれてびっくり。ディーナと一緒にそのまま後方に。
「んー、触手攻撃受けると絵的にマズい人がチラホラ……」
最後尾ではキーリがウインドスラッシュに切り替え触手切断攻撃を繰り出している。
「小太さん、こっちです」
最前線で悠月、触手に絡まれつつも井戸に取り付くと底に向かって八方手裏剣を叩き込みつつ仲間を呼ぶ。
「鞭のように弾いてきたり絡んできたり……」
小太も井戸の底にぶっ放す。
「よし、いける!」
両手で太い触手を抱える碧、びくっと敵の手ごたえがなくなったのを感じ、再び剛腕スキルで一本釣りに挑戦だ。
が、しかしっ!
「わっ!」
どうやら死人の顔つきの触手はトカゲのしっぽのように切り捨てができるらしい。
碧、尻餅をつく。
「はっ!」
ここでネーナ、周りを見る。
あれだけくねっていた触手がすべて井戸の底へと引き上げているではないか。
ハンターたちの流れだった戦闘が、完全に途切れた瞬間だった。
次の展開が読めない。
「はわっ。あ、あぶないですよぅ、灯華さん」
小太が慌てたのは灯華がまたも思い切りよく井戸の底を覗いたから。
「何だ、つまんない」
灯華の呟き。今度は先のような気配がない。
「まさか」
悠月も取り付いた。
そして耳を澄ませる。超感覚だ。
直後、気付く。
勢いよく顔を上げて叫んだッ!
「地下を移動している。僕たちの背後だっ!」
振り向く方向で、ディーナとフラが目を丸めていた。キーリは目を細めている。
その、刹那だった!
●
――ぶしゅう……。
「や、やっぱり来ましたの!」
振り向くディーナ。
視線の先では……。
「私なのね……」
キーリの立っている付近から紫色の毒霧が噴き出していた。
「見るからに吸いたくない色してる濃霧よねー。ウミウシみたい。ウミウシの煙幕」
「キーリさん、いいからこっちに!」
フラ、慌てて駆け寄り……というか、その行動でフラも毒霧を食らうのだが。
「ウミウシは治せないけど……えい」
ディーナがキャンディスタッフを振るいキーリのバッドステータスを回復。最初に構えていた拳銃は「我慢なの」、とか言ったわけではないが納めてしまって回復支援に徹している。
「来るよ!」
悠月の叫び。すでに地鳴りは伝わっている。
「避けれそうにないかもねー」
キーリ、魔杖を回して構えストーンアーマーを纏いフラをかばう。
――どごっ!
ここで、地面が破裂した。
どぉん、と姿を現す巨大ワーム。鎌首をもたげ垂直にそそり立つ。
と、思った瞬間だった。
ゆら、と力を抜いて前方に倒れてきた。
どしん、と大地に自らの身体を叩きつけた。一直線に敵を潰す攻撃だ。
が、すでにハンターたちは回避している。
「結果的に同じことになったな」
碧が旋棍「疾風迅雷」を構え改めて大地に長い体を横たえた敵に向かっていく。
「少しは楽しませてくれるかしら?」
灯華もカードバインダーを開き向かっていく。
井戸の傍では、ネーナが碧の背後に走り、小太と悠月が左右に分かれた。
井戸に戻ると思われる敵に対し、遠近双方での挟撃陣が完成した瞬間だ。
ところがっ!
「うわっ」
ワーム、一直線に進むのではく体を大きく左右に波打たせながら移動してきた。左右への体当たりで、完全に打点を外された碧、灯華が吹っ飛ばされる。
毒霧をまき散らしながらワーム、井戸に戻った。
「もう一度……いや、今度はあっちに行きました」
悠月、今度は別の大地を指差した。キーリ、フラ、ディーナが動いていた方向の背後である。
――どごっ!
毒切りとともに、またも姿を現す巨大ワーム。ぶよぶよの身体が再びそそり立ち、大地を叩くように着地する。
その口先に、碧と灯華が回り込んでいた!
「体は波打たせても頭の位置は動かなかったからな」
「とりあえず襲われるのがやっぱいいわよね」
瞬間、大量の触手が碧と灯華を襲った。
「これに絡むといい」
碧の目の前で金色の円が煌いた!
構えたトンファーを回して触手をまとめて絡めとったのだ。
一方の灯華は腕を守りつつ絡められた。
「う……」
毒針を食らった時だけは真剣な表情をしたが、そこは覚醒者。一般人に利く程度の毒で動けなくなるなどはない。もっとも、そのままワームの口腔に引き込まれるが。
そこに、何かが絡んだ。
「いきなり丸呑みはさせないよ」
瞬脚でやって来たネーナが灯華に鞭を絡め完全に飲み込まれる事態から救っていた。
「ディーナさん、撃とう!」
「あ、あれなら誤射はないよ……ね?」
後方側面で慌ててデリンジャーを構えるフラ。ディーナもあれだけ大きな体なら、と銃を抜いて撃つ。
「必ず助ける」
余裕のできた碧は先のトンファーを捨てた動きからナックル「セルモクラスィア」を嵌めた拳を構え力を貯めていた。
「灯華さん!」
後方から悠月がやって来て……。
「月牙!」
飛び込むと同時に青白い霊力を纏った日本刀を大きく振って敵の巨体を斬りつけた。牙をむく獣の幻影が浮かび、バッサリと敵の表皮を切り裂いた。
敵の口では、ごおぅ、と炎が上がる。
食われつつ灯華が火炎符を放っていたのだ。
「ふふ、喰いついて来たのはそっちでしょ? 後悔したなら死になさい!」
毒にやられて脱力した目をしていたが動ける様子。至近距離のカード攻撃の次はバインダーの角でげしりと殴打をかます。
「吐き出すがいい」
そこへ、力を溜め込むだけ溜め込んだ碧の……最短距離で真っ直ぐ打ち込む震撃が口元にヒットした。いや、めり込んだと言っていい。体重の乗った一撃で敵は横を向き、灯華を思いっきり吐き出した。
「い、いまですの!」
ディーナの期待の声が響く。
「井戸に戻らせませんよぉ」
「尻尾を狙って、と……火に風に土。これぞ魔術師って感じよね」
小太も援護射撃。キーリはまたもファイアーボールどーんでどやっ。
もちろん、悠月が斬りや碧の突きがもう一度入り……。
――びくっ、どさ……。
ワームの井戸への逃避行はもう一歩のところで止まり、息絶えた。
●
戦闘終わって。
「居場所が分かっていて出て来てくれない敵を倒すの、難しかったの~」
「そうだね」
ふう、と一息つくディーナに、緑が静かに頷いている。
「私、弱いから生贄にならなくて良かったわ」
「……夏だと更に犠牲者が出たかもしれない、厄介な擬態だったね」
「何よユッキー、失礼ね。あからさまに話題を変えなくてもいいじゃない」
キーリは悠月に絡んでいたり。
そして生贄になりかけた灯華。
ディーナに回復してもらったはずだが、座ったままうなだれているぞ?
「その、灯華さん大丈夫?」
「ふ、フラちゃん、おつか……」
「ひぃぃん!」
不用意に近寄ったフラ、また特殊メイクした灯華にどアップで迫られだれかに泣きつく。
「フラさん、だ、大丈夫ですかぁ」
抱き着かれたのは小太だった。よしよしなでなで。
「あれ、どうしようか?」
そんな騒ぎをよそに、ネーナが井戸を指差す。
「後々邪魔にならないよう埋めておこう」
碧の言葉の通り、後で依頼主の商人たちが埋めた。
村人は感謝し、商人たちは新たな商いが始まり喜んだという。
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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面白かった! | 4人 |
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MVP一覧
- 灯光に託す鎮魂歌
ディーナ・フェルミ(ka5843)
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/12/28 09:03:42 |
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相談卓 神奈 碧(ka5994) 人間(リアルブルー)|16才|男性|格闘士(マスターアームズ) |
最終発言 2015/12/29 18:36:16 |