【初夢】 ここ一番の雪遊び

マスター:天田洋介

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • duplication
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
無し
相談期間
5日
締切
2016/01/06 22:00
完成日
2016/01/14 08:54

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 グラズヘイム王国は温暖な気候で知られている。
 山岳部を除けば大雪が降ることはなかった。わずかに積もることはあっても春まで雪が溶けないような状況は普通あり得ない。
 だが大精霊の気まぐれがあれば別だ。その意図を人が知る由もないが、青白く輝いた雪花の『ホワイトフラワー』によって王都イルダーナ周辺に雪が降り積もる。
 郊外の丘陵は雪の斜面と化す。局地的な寒風により湖に氷が厚く張った。スキーやスノーボード、それにスケートで遊ぶには十分すぎるほどの場が用意される。
 絶好の機会だと商人達は奮起した。わずかな期間に各地から道具を取り寄せて商う。王国内の鍛冶屋や木工職人もこぞって道具を作り上げた。
 おそらくは今回のみで次の冬にこうしたことは起こらない。それ故に思い切り遊ぼうと多くの民は考えていた。様々な危険が伴う山岳部ではなく、治安がよいイルダーナ周辺なのも盛り上がった要因の一つだ。
「なんだかすごいらしいぜ。王都の周辺は」
「屋台まであって賑わっているらしいな」
 噂は瞬く間に冒険都市リゼリオまで届く。
 転移門が使えるハンターにとって王都は隣町と似たようなもの。さっそく声掛け合って出かけるのだった。

リプレイ本文


 転移門を利用する際、たまたま一緒になったハンター達は意気投合した。一緒に王都を訪れて、防寒具や遊具を整えてから郊外にでる。
 一面の銀世界に一同の心は躍った。すで多くの人々が丘陵の斜面でスキーやスノーボードを楽しんでいる。平地に並んでいるたくさんの屋台の料理はどれも美味しそうだ。
 再会の約束を交わして一時解散。スキーやスノーボードで遊ぶ者達は瞳を輝かせて丘陵を目指す。
 平地での雪遊びを選んだシャルア・レイセンファード(ka4359)と恭牙(ka5762)は誰一人いない雪原に足を踏み入れる。
「真っ白! ふわふわ! 雪ってこんなにきれいだったのですね~」
「こんなに積もるのは珍しいらしいな」
 平らな雪面に足跡をつけながら前へと進んだ。後ろを振り向けば自分達の足跡だけが続いている。積もっているにもかかわらず雪面はそれなりに固い。幅広の靴を履いているおかげもあるが雪に沈むことはなかった。
 適当なところで持ってきた荷物を雪面に降ろす。
「ここなら存分に雪遊びができそうです♪ あまりやる機会がなかったので楽しみにしていたのですよ♪」
「それじゃあ、こいつからやるか」
 まずはシャルアのリクエストに恭牙がつき合う。火鉢の炭に火を熾し、雪を詰めた薬缶をかけておく。
 それから二人してスコップで雪を掬って木箱に詰める。体重をかけてつつ押し固めた。薬缶の水をかけることでより強固な雪のブロックができあがる。水をかけてからブロックを積むとがっちりくっついてくれた。そうやって少しずつ並べていき、カマクラを完成させる。
「思っていたよりも本格的なものができたな。この広さなら六人ぐらいは余裕だろう」
「次は雪だるまでも作りましょう♪」
「雪ウサギもよさそうだが……その前に、流石に手が冷えたからな……」
「そうですね。休憩しましょうか」
 火鉢をカマクラの中に運び込んで二人はしばし温まる。聞いていた通り、カマクラの中はとても暖かい。
 指の感覚が戻り、充分に休んだところでカマクラからでた二人は小さな雪玉を握ってコロコロと転がす。そこら中を押して回り、やがて二つの大きな雪玉ができあがる。それを重ねて炭で目鼻をつけたら雪だるまの完成だ。
「何だかへんてこな顔だな。変えた方がいいか?」
「このままでいいのですよーっ♪ 泣きそうなところがかわいいのです♪」
 雪だるまに続いて作ったのが雪ウサギ。雪だるまが寂しくないよう周囲にたくさん置いた。小さな雪だるまも作って雪ウサギと一緒にカマクラの中へ。
 カマクラの中で再び休憩する。出入り口の穴から野外を眺めると、雪だるまがこちらを眺めていた。
「結構作ったな。人が集まれば雪合戦でも……どうかしたのか?」
「あとね。お花、探してみたいのですよ。写真では、白い小さな可愛い花でした」
 小枝を手にしたシャルアが足元の雪面に絵を描く。それがユーフォルビアだという。
 恭牙もカマクラを離れてシャルアと一緒に雪原を歩いた。小川周辺の雪が溶けていて、沿って探してみるとそれらしき花が見つかる。
「ほ、本当にありましたっ! すごいのですよっ!♪」
「ほう、これがそうなのか。こんなに寒いのに元気そうだ」
 シャルアが恭牙の手を取って踊りだす。あまりきはしゃぎように転んでしまうが、すぐ笑顔で起き上がった。
「えへへ、別名もとってもかわいくて、雪華草なんですって♪」
「なるほどな。これはいいものを見させてもらった」
 しばし鑑賞した後、シャルアは悩んだ末にユーフォルビアを根元の土ごとバケツに移す。住処に持ち帰って鉢植えにするつもりである。
 カマクラの中から眺める雪景色はとても綺麗。火鉢で焼いた餅を食べながら、仲間がやって来るまでの時間を過ごすのだった。


(偶にはこういう風に過ごすのも悪くないな)
 柊 真司(ka0705)はスノーボードを抱えて丘陵をのぼる。白い息を弾ませながらやがて頂に到達。最初は人が少ない麓を目指して普通に滑ってみた。
「やっぱ雪が積もった時はスノボだよな」
 以前に滑ったときの感触が蘇っている。二度目のときにはシュプールを描いて雪煙をあげながら滑降。徐々に興が乗って少しずつ高度な技を試していく。
 二つの丘陵が狭まった場所がちょうど円筒の内側のようになっていた。
「久しぶりだからなぁ、身体が覚えていてくれてりゃいいけど」
 左右に揺れつつ、大きくジャンプ。さらにその先のコブの部分に乗り上げて大きく跳ねた。着地も難なくこなす。
 それより少し前、鳳凰院ひりょ(ka3744)は別の丘陵でスキーを始めていた。
(はて、スキーをやったことがなかった気がするが……、案外あっさりやれるものなのだな)
 初心者用として選んだ斜面を滑ってみたが全然物足りない。前を滑る全員をあっと言う間に追い越して下まで辿り着いてしまった。
(これなら上級者コースもいけるんじゃないか?)
 そう思って上級者用の丘陵へ向かうと、柊真司が他のスノーボーダーと競っていた。先に麓へ辿り着いて柊真司の勝ちが決まる。
 近づいて声をかけると柊真司が片手をあげた。
「鳳凰院さんのスキーはどうだい?」
「あちらでは物足りなくなってきまして。それでこちらへ来てみたのですが」
 二人でもっと人の少ない超上級者用の丘陵で滑ってみることにする。丘陵の一部が崖になっていてまるでジャンプ台のようだ。
「よしっ!」
 柊真司はジェットブーツを併用。加重を雪面にかけることでスノーボードではあり得ない急角度でのターンを成功させる。その上で崖上からジャンプ。捻りと回転で舞いながら見事な着地を決めた。
 鳳凰院もその気になって崖から飛んでみる。
「いいな。まるで鳥になったようだ」
 そのときはよかった。まもなく迫る雪面にスキー板を這わせようとするが、わずかな凹凸で姿勢を崩す。その後はパッカーンと転倒してゴロゴロと。
(参ったな。止まる気配が……?!)
 雪玉になって転がりつつも冷静沈着に状況判断。回転する景色の中、麓付近で雪遊びをしている子供の姿が眼に飛び込んできた。
 これはまずいと両の掌に力を込めると急激な熱が発する。水蒸気の勢いは馬鹿にできない。内部で膨張し、もの凄い勢いで雪玉が弾け飛んだ。
 そして十数mほどでんぐり返しをしながら子供の前に膝をつく。
「大丈夫だったかい?」
「う、うん。お兄ちゃんこそ怪我してないの?」
 大事にならずに済んで、鳳凰院はほっと胸をなで下ろす。子供は去っていき、入れ替わるように柊真司が近づいてきた。
「驚いたぜ。さっきの技なんだあれ?」
「いやなに、これぞハンターの底力! なんてね。ゴロゴロ転がるのも、ちょっと楽しかったり」
 二人で大いに笑うと小腹が空いてことに気がつく。屋台が並ぶ一帯へ戻り、品定めをした。どれも美味しそうでついつい目移りしてしまう。
「どれもすっごい美味そうだな。んっ? これは!」
 柊真司が選んだのはダブルースープの魚介ラーメン。そのスープの味わい深さにリアルブルーを思いだす。
 鳳凰院も頼もうとしたが、ふと風に乗ってきたにおいに気づく。辺りを見回し、見当をつけた屋台まで駆けつけて覗き込んだ。その屋台では好物の料理が振る舞われていた。
(このスパイシーなかおり。屋台でカレーがあるだと?!)
 即座に注文した鳳凰院はカレー皿を持って、早速柊真司が待つテーブルへ戻る。
「う、うまい。またこの味にまた会えるなんて……」
「ここの屋台、どれもうまいな。リアルブルーそのまんまの味っていっても過言じゃないな。一体どうなっているんだ?」
 人心地ついた後、柊真司はもう一度スノーボードを滑りに行く。鳳凰院は残ってカレーの屋台を再び訪ねた。
「屋台でカレーなんて、結構斬新ですね。なかなかやり手だ」
「おー、兄ちゃん、嬉しいこといってくれるな」
「せっかくだ、店主。カレーの作り方を教えて欲しい。こっちではなかなか作れなくてね。材料だとかどうとか、いろいろ足りないんだ」
「そういわれてもな。へい、いらっしゃい!」
 鳳凰院は混み出してきた状況に目をつける。屋台の主人に手伝いを申し出た。
(これで、俺も一からカレーを作れるようになったぞ!)
 客が引いた後、店主は明日の仕込みを手伝わせてくれる。こうしてカレーの作り方を教えてもらうのだった。


「さあ着きましたよ。ここなら大丈夫ですよね」
「それにしてもたくさんの人がいるんだな。しかも、この状況は……」
 黒沙樹 真矢(ka5714)と葛音 水月(ka1895)がスノーボードを抱えて足を運んだ先は初心者用の練習場であった。
 非常になだらかな雪の斜面で多くの人々で賑わう。しかも周囲を見渡せばカップルだらけ。誰もがイチャイチャしていて周囲の雪が熱で溶けてしまいそうである。
「ふむ。それにしてもボードかー……。面白そうだな」
「あれ、もしかしてー? 滑ったことはっ?」
「滑ったこと? ない!」
「自信満々だったからてっきり。よかった。ここを選んで正解でしたねー」
「みんな転んでばかりだな。不甲斐ない奴らばかりだ」
「では早速」
 ここは自分がリードして黒沙樹に男らしいところを見せたいと葛音水月は心に決めた。雪面にスノーボードを置いて教え始める。
「こんなもん簡単だと思ったが……む、これは、なかなか。こうか?」
「そうですよー、その調子ですっ」
「そそ、そこの女どけ、いや、どいてくれ!」
「こっち。こっちですよっ」
 普段と違ってリードされている状態に弱冠の不満を覚えつつも、黒沙樹は葛音水月のいうことを聞く。
「それでもニヤニヤすんなっつーの……」
「何かいいましたか?」
「いや、何にも。次はどうしたらいいんだ?」
「えっと、今度はもう少し離れて――」
 二人の練習は続いた。何度も転びそうになる黒沙樹を葛音水月が抱きしめて支える。
「ぬぉう!? 少し坂がきつくなっただけなのに。ん、ぐー……難しいなこれは……」
「そうです。そのままですよ。真矢さん」
 黒沙樹が斜面の下に立つ葛音水月に向けてゆっくりと滑りだす。しかし途中で転んでしまった。
「むぅ……すまんな水月。………笑うなよ」
「大丈夫ですか?」
 雪の中に沈む黒沙樹に葛音水月は自然と笑みを浮かべてしまう。
「うるさいうるさい、後で覚えておけよ」
 黒沙樹が差し伸ばした手を葛音水月は引っ張ろうとしていた。しかし黒沙樹が大きく身体を揺らしたせいで葛音水月も雪中へと倒れ込んだ。
「なんてことだ。二人とも雪の中だなんて」
「いいじゃありませんか?」
「どうして?」
「だって……雪にまみれている真矢さんが可愛らしかったから……」
「ん、むっ……!? この、何を、する……」
 黒沙樹の頬に手を当てながら葛音水月は顔を近づけて唇を奪う。周囲を覆う雪は葛音水月と黒沙樹を優しく包み込んでくれた。
「ん……えへ……♪ 好きです、真矢さん♪」
「…………お前、なぁ………」
 怒ってみせた黒沙樹だが彼女から強く抱きしめたのも確かなこと。しばし雪の中で転がってじゃれつき合う。
 しばらくして練習を再開。黒沙樹の滑りはさまになってきた。
「うーし、こんなもんか…! 流石にずっとお前にでかい顔させ続けるワケにはいかんなあ? くかか、残念だったなー」
「それでは斜面のほうはどうですか?」
「うーし、じゃあ普通のとこにでてみるか!」
「行ってみましょー」
 それなりの斜面を登り、二人揃ってスノーボードで滑降する。最初は無理をせず、しかし三度目からは雪煙を巻き上げて滑りを楽しんだのだった。


 暮れなずむ少し前。全員がカマクラへと集まった。
「屋台の主人が持っていっていいといってくれたんだ。さぁ、じゃんじゃん食べてくれ。何故か一向になくなる気配ないしな。俺もじゃんじゃん食べるし」
 最後に現れた鳳凰院はカレーを持ってきてくれた。ズンドウの中にはカレーがいっぱい。土鍋で炊いたばかりの御飯もある。
「カマクラの中でくつろぎながらのカレーか。これも風流ってやつだな」
 柊真司は雪見をしながらカレーライスを味わう。とても本格的な味で文句の付けようがなかった。
「これがカレーライス……って食べ物なんですね?」
「変わった食いもんだな」
 シャルアと恭牙は独特な香りと色にかなり悩みつつも、柊真司と鳳凰院に勧められて一口ずつ頬張ってみる。二人とも両目を大きく開いて見つめ合う。その後は綺麗に食べ尽くしてしまった。
「やけに面妖な料理だな」
「これがね。真矢さん、とても美味しいんですよー♪」
 訝しむ黒沙樹の目の前で葛音水月がスプーンで食べて見せた。そこまでいうのならと葛音水月も口にする。その辛さに驚きつつもかなり気に入っていた。
 誘ったみんなが食べる様子に満足したところで鳳凰院も本格的に頂く。
(これだけあれば、持ち帰って妹たちにも食べてもらえるな。懐かしい味に喜んでくれるだろう)
 すでにカレーライス四杯目だが飽きることはなかった。
 二つの組に分かれて雪合戦もする。全員が覚醒者だけあって、凄まじい勢いの雪玉が飛び交ったのはいうまでもない。
「あ、ごめんなさいっ。味方なのに」
 シャルアが投げた雪玉が恭牙の後頭部に命中。
「気にするな。ほら、敵が攻めてくるぞ」
 笑顔で雪を払った恭牙がシャルアに新しい雪玉を渡した。
「はい、真矢さん」
「この剛速球を受けてみるがよい!」
 葛音水月が渡した雪玉を黒沙樹が豪快なフォームで投げる。
「カレーは美味かったが、ここは敵同士だ。覚悟しろよ」
「こちらこそ負けるつもりはありませんからね」
 柊真司と鳳凰院の攻防も激しかった。
 やがて日が暮れる。リゼリオへ帰る者、王都の宿に泊まる者などその後は様々だ。柊真司は一晩宿で過ごして翌日もスノーボードを楽しむ。
「どうなっているんだ?」
 ところが崖から飛んだとき、いつまでも上昇を続ける。ようやく落ち始めたと思ったら今度は落下の勢いが増すばかり。はっと気がつくと自室の部屋で寝ていた。
「……なんだ夢かよ、せっかく楽しいところだったのに。それにしても夢の中での俺も宿で寝てたよな。一体どれが本当なんだ?」
 そう呟きながら毛布に包まる。こうして二度寝した柊真司はもうしばらく夢の世界を楽しんだのだった。

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重体一覧

参加者一覧

  • オールラウンドプレイヤー
    柊 真司(ka0705
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • 黒猫とパイルバンカー
    葛音 水月(ka1895
    人間(蒼)|19才|男性|疾影士
  • うら若き総帥の比翼
    ひりょ・ムーンリーフ(ka3744
    人間(蒼)|18才|男性|闘狩人
  • 想い伝う花を手に
    シャルア・レイセンファード(ka4359
    人間(紅)|18才|女性|魔術師
  • 月に繋がれし矢
    葛音 真矢(ka5714
    鬼|22才|女性|格闘士
  • 修羅鬼
    恭牙(ka5762
    鬼|24才|男性|格闘士

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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/01/06 15:11:40