【刻令】がんばれ、ささえる君(仮)

マスター:ムジカ・トラス

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/01/20 22:00
完成日
2016/01/28 20:02

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 アダム・マンスフィールド。
 ゴーレムを動かす為の喪われた魔術『刻令術』を不完全ながらも復活させた魔術師の名である。
 未完の刻令術は、迷宮で見かけるそれとは比べるのもおこがましい程。
 出力は至らず、機能も未熟。
 されど、その術式はかつて禁術足りえた魔術に他ならず。

 ヘクス・シャルシェレット、フリュイ・ド・パラディに見出され、非才故に行き詰まり、ナサニエル・カロッサ(kz0028)に機導術を学んだ男は今、酒の街デュニクスでその力を振るっている。
 彼が作っているのはヒトガタではなく、ゴーレムでもなく、兵器でもない。

 ――農具であった。

 そんな折のことだった。
「それじゃ、そろそろ作ったらどう?」
「……む」
 大貴族にして商会の主ヘクスの言葉をきっかけに、おもむろに、唐突に、それは始まったのだ。
 兵器としての、ゴーレム開発が。



 デュニクスの街は、農業と醸造で栄えた街である。
 王国北西部に位置するこの街は、事実上、王国を狙う歪虚達にもっとも近しい位置にある。
 それ故にこの街は戦場となり畑は壊れ人が離れ、と衰退の一途をたどっていた。
 状況が変わったのは、王国騎士団、青の隊の介入に端を発する。現地雇用を中心とした戦力拡充、活動支援に始まり、より北西、北部に位置する寒村――彼らはまさに生存を脅かされてもいた――から人々を受け容れると、産業復古に取り組んだのだ。

 アダムは周囲を見渡した。曇天だ。暗く重い灰色の空の下に、それが広がっていた。
 畑だ。遠く、遙か遠くまで、広がっている。
 種まきを終えた畑は、今もどこかで拡大されているのだろう。畑の彼方此方では、薄ら頭の団長が指示された団員が監視櫓の建築をおこなっている。
 それが成されたのは、この地に喚ばれたアダムの尽力が大きい。もちろん現地の職人達の働きあってこそだが、人力に依らぬ再興は加速度的な農地開発を可能にした。
「おーー、こりゃまた、思ってたよりも立派だね」
 それを茫と眺めているアダムに、傍らのヘクスが言う。寒風を払う陽気な声に、アダムは返事を返さない。
 ヘクスは神出鬼没な男だ。しばらく見かけないと思ったら、突然この街に現れ、アダムをここに連れてきた。したり顔で、こう問うた。
「この街に住み、職人たちとも付き合いがあるんだったら、彼らの声は聞いてるんだろう? 一応聞いてみるけど、感想は、どうだい」
「……さて、な」
 広大な土地。それよりも果てなき空。感じたのは、ただただ茫漠な先の先。
 アダムとて人の子である。熱に浮くこの街の住民達に水を掛けるような真似をするつもりはなかった。

 ただ。
 ――ただ。限りなき焦燥が胸の裡を灼いているだけだと、どうして明かすことができようか。
 手が届かぬ先を、まざまざと見せつけられているだけなのだ、などと。
 だから。
「それじゃ、そろそろ作ったらどう?」
 そう言われた時、心底仰天したのだった。
「……む」
 驚いて振り返ると目に入ったにやけ面が、全てを見通しているようで、それよりもとにかく腹立たしく、二つ返事で頷こうとしたのを何とか踏みとどまった。
 それにしても、殴りかからないための自制と比べれば、遥かにマシだったのだが。
 兎角、こうして、アダムはその本懐であるゴーレム作成に大手を振ってとりかかる事が出来るようになったのだった。


●幕間
「第一の顧客は王国じゃなくてハンターとか外国の人らだから」
「む?」
「此処の人たちは頭固いからさー」
「……そうか」
「前のめり気味にやりたがってる人にも声を掛けておいたけど、アダム、君にやってもらいたいのは……」
「ふむ……」
「それで……」
「む……」



「おはよう諸君。忌々しい朝だ」
 言いながら、去っていった男の背中を思い出した。仕事だけ押し付けられた事を、心底憎らしく思う。
 あれやこれやと喋り倒して行った事を思えば、元々腹案としては有ったのだろう。ならば自分でやれ、と言いたい所だったが、「色々忙しい身分でね、悪いとは思ってるんだよ!」と、のらりくらりとかわされてしまった。
「……」
 慨嘆ひとつを大きく吐き零して、鬱屈した思いを呑み下し、見回した。

 デュニクス郊外、デュニクス騎士団が頻用する会議室に集うた面々はそう多くはない。
 この街の技術者であるヴェルドに、第六商会から派遣された紳士達。それから、ハンター達。
 実質的には、この場で最も重要な意見役はハンター達である。だからアダムは、残る二人は無視して、彼らへと向かって口を開いた。

「さて、それでは、意見交換といこう」
 話すべきは多い。必要な事も。
 徹夜して作った資料を配布しながら、重い口を開いたのだった。

リプレイ本文


 殺気が、現場を焦がす。槍を抱え、椅子を軋ませて座るウィンス・デイランダール(ka0039)がその源である。向かう先は振り返って睨み返すジャック・J・グリーヴ(ka1305)。 場外での諍いを引きずっているらしいが二人共にマスカレード持参なのはなぜか。
「仕様のないのぅ」
「カリカリすんなよ、もー」
 二人の様子に紅薔薇(ka4766)が苦笑を落とす中、持参した資料を配るレオーネ・インヴェトーレ(ka1441)は険悪な空気の中でも笑顔だった。『此処から』始まる事に興を覚えているのだろう。険悪さよりも期待のほうが大きい。
「まぁまぁ、その辺にしておいてさ」
 頃合いと見て立ち上がったキヅカ・リク(ka0038)が二人の間に入った。
「刻令術……本当にこっちの世界の技術は面白いものばかりねー」
 若人達のイチャコラはそっと置いておき、ロベリア・李(ka4206)はアダムの資料を眺めてそう言った。元CAM整備士の目には、果たしてどう映ったか。そこに、コントラルト(ka4753)が頷きを返す。
「確かにこの術は鉱業、農業、医療にも応用出来るわ……でも」
 憂いを帯びているのは、重い傷を負っている為――ではないのだろう。懸念が少女の胸に落ちていた。
「あ、おねえさん、おねえさん。お酒はでるんだっけぇ?」
「ご用意ならできますけど……いいですか、アダムさん?」
 通りがかったメイド服の女中に声を掛けた鵤(ka3319)の声が呑気に響く。メイドはアダムを見やると、男は苦虫を噛み潰したような顔で首を振った。
「後にしてくれ」


 空気が締まった頃合いを見て、コントラルトが口を開いた。
「最初に聞いてもいい? 刻令術は変わらず魔術師協会指定の禁呪なのよね? 報告するつもりはないけど、余りに多機能にしたら協会から待ったが入るんじゃない?」
「可能性は限りなく低いな」
「……理由を聞いても?」
「禁呪指定には理由がある」
 アダムの声は厳粛で、揺るぎはない。指折りながら言う。
「死者の復活、虚無への接触、無限性の獲得……今の、私の『これ』がその域に到達出来得る筈がないと彼らは断じているんだろう。そうでなければ、私などとうに暗殺されているさ」
「そう」
 内容に比して自嘲の色はない。その事が技術を扱うものとして気になりはしたが、了解を返す。
(刻令術、初めて聞いた技術だ)
 リクは資料を眺めながら、ふと、疑問を覚えた。
「これ、動力はどうなるんですか?」
「魔術を展開するマテリアル源となる素材さえ何処かに設置できればいい。そういう意味では構造上の制限は少ないのが特徴だな」
「へえぇ……」
 となるとRBの常識とはすこしばかり勝手が異なる。リクは暫し、思索した。


 レオーネが準備した資料はCAMと魔導アーマーの性能比較のためのもの。見比べるアダムに、レオーネは小さく歯を見せて笑った。
「コイツらと同じことをやっても勝てねェぜ?」
「そうだな。戦闘機動は現状では夢のまた夢なのは間違いない」
「だよな! なら話は早い」
「今回、ささえる君(仮)を検討するにあたって、見て欲しいものがあるんだけど……いいかしら」
「ふむ?」
 人好きのする笑みを浮かべるレオーネに、ロベリアが続いた。手には持参したPDA端末――映像資料である。急遽慌ただしくなった、そんな時のことだった。
「――まず、だ」
 ウィンスが口を開いた。自信溢れる、張りのある声だった。

「力が必要だ」
「「「力」」」

 告げられた言葉に面々の理解が追いつかない。少年は一切を気にせず拳を強く握る。彼の脳内では一体何が繰り広げられているのだろうか。
「敵をなぎ倒す力、攻撃を寄せ付けない鎧、遠距離に対応するビーム」
「「「ビーム」」」
「これらを兼ね備えたパワーアタッカーを量産し」
「「「量産」」」
「敵陣に突撃――」
 不敵な笑みは、諍いの相手であるジャックへ向けられる。ドヤ顔である。
「分かるか。これが『最強』だ」
「オ、オゥ……」
 ジャック――と書いて被害者と読む――はドン引きしながら助けを求めて周囲を見渡すが、ハンター達はさらりと視線を逸らし、紅薔薇は手元の紙に描き込み続けていた。
 ――これじゃ不戦勝じゃねぇか。
 いっそそんな思いがこみ上げてきて、ジャックは哀れみと共に『見下ろし』た。
「こいつは戦闘用の機体じゃないぜ?」
「あァァァァんッ!?」
「「「……」」」
 重たい沈黙に、ウィンスは。
「……上等だ。別に、なんだ、その……一例の話だからな……」
(これ、絶対解ってなかったよねって言っちゃいけない奴だ)
 騒々しいやり取りをよそに、リク。ツッコムと巻き添えを喰らうと早くも悟っていた。
「……成程、興味深かった。ありがとう」
「いえ、お役に立てたのなら嬉しいわ」
 混沌など露程も知らぬといった顔でアダムはPDAをロベリアに返却した。そうして。
「さて、話はまとまったかね。それじゃあ、改めてはじめよう」
 漸く、始まった。


「土木作業に従事するんだ。なら、数を揃えられなくちゃ意味がねえ」
「そうだね。僕も作業に従事する人たちの分だけは必要だと思う」
 レオーネの言葉にリクも同意を示した。それを背にレオーネは続ける。
「刻令術の強みは『遠隔操作が出来て』、『プログラムによる精緻かつ迅速な動作が可能な所』だろ。これを活かすなら、大量生産が出来る価格が絶対だ」
「熟練が要らない、という点を活かすなら多数配備出来ることは必須ね」
 コントラルトがレオーネを支持する形。そこに、鵤がへらりと笑い。
「おっさんもそう思うよぉ。これ、ハンター以外にも売るんだよねぇ。なら、国家単位で2、30機は揃えられる価格が良いんじゃない?」
「国家、か」
「あれ、売らないのぉ?」
「いや……売れるのか、とな」
 リクは片手を挙げた。
「数が必要といっても僕らが使う時は戦場だから、最低限装甲は必要だと思う。その点で値段があがるのは仕方ないとは思うよ」
「おっかなすぎる機体には乗りたくないしねぇ」
「機能次第、にもなりそうだが――」
「……」
 値段は廉価か低価格として進む中、ウィンスは横目にジャックを見る。賛同する様子は全く見られなかったが、動きも見せず泰然と構えていた。

「刻令術の核は一つに依代一つしかダメなのかしら? 複数の核を使えば、複雑な動作をスムーズにすることは可能になるのかと思ったのだけど」
「その提案をかつて受けたことがある。結論を、より正確に言うと機導術を利用して可能になった。
 ――結果として、それだけ煩雑になったがね」
「……お察しするわ」
 技術者の苦悩として分かる所もあるのだろう。コントラルトは曖昧な表情でそう言った。
「今回のコンセプトとして私が重要だと思うのは『締固め用機』と『掘削機』よ」
 ロベリアも流れ弾を喰らったようで、苦笑しながらそう言った。
「鍵はサルヴァトーレ・ロッソだわ。今後、ロッソが離着陸出来る場所をつくる事が必要になるけどそれを準備するのが困難な状況だから」
「特に重要なのは整地、か」
 手元の資料に書き込みを加えるアダムに、ロベリアは頷く。
「ええ。元々宇宙用を想定していたCAMは、この手の作業が苦手なの」
「農具の延長で可能だろうな。掘削については魔導ドリルがあるが……ふむ」
 思索するアダムに、ロベリアは手応えを得た。用意した動画が奏功したのか、意思疎通が滑らかに言った。すると。
「必要なのは『自由』だ」
 ウィンスが、再び口を開いた。力強い赤眼でアダムを見据える。
「それは、刻令術からは縁遠い言葉に思うが」
 返った言葉に少年は不敵に笑う。叛逆心に火がついたか。
「こいつの場合、『収納』だ。用途は自由。場面に合わせて使えりゃいい。モノがあれば、俺たちで動かせる」
「ふむ……」
 紅薔薇がほう、と呟き紙に書き込む手を緩めた。思う所があったようだ。
「そういえば、支援が中心になるということなら、大型の通信機は積めるかの?」
「不可能ではないが……通信機自体が、な。海に強い同盟なら可能かも知れん。別途あたる必要があるが……」
「是が非でも」
 ハンター達は一様に頷いていた。通信距離はハンター達にとっては泣き所の一つらしい。その他にも検討は続いたが、特に多く触れられたのは『腕』――アタッチメントのことだった。
「パワー重視のショベルアームとか、高機動レッグとか取り換えるようなのを規格化して、換装することはできるの?」
「前者はコントラルトの件を合わせたら可能だろう。だが、後者については――難しいかもしれんな。大掛かりな換装は刻令術自体をかけ直す必要が出てくる」
「そっかぁ〜……」
 項垂れたレオーネにアダムはこう付け足した。
「ただ、腕の換装については作業内容ごとに独立して組めるから、大凡の事には対応できるだろう」
 その言葉に、リクは思いついたように目を挙げた。
「……なら、CAMや魔導アーマーの応急修理やメンテナンス、装甲張替えとかは可能なのかな」
「不可能ではないが……効果が限られるかも知れん。戦場でのメンテナンスについては恐らく専用の人間がついてくるだろうからな……いずれにせよ、導入は出来るが、優先順位は落ちるかもしれん」
「あ、出来そうなら、でいいんです」

 結果として挙げられたのは作業用アームに加え、整地用ローラー、ショベルアーム、ドリルなど。夫々に検討内容として加わった。


「うむ!」
 満足気に声をあげた紅薔薇は、一枚の絵をどどん、と差し出した。
「妾の趣味で考えてみたのじゃ」
「……」
「やはり買われるには見た目も重要。どうじゃ? 可愛いと思わんかのう」
 示された絵は、四足で、悠然と佇み、長い鼻を持つ――。
「何だ、こりゃ」
「象ね」「象だなぁ」
 怪訝な顔のジャックに、ロベリアとレオーネ。
「んむ。鼻で作業を、腹には収納用の箱がある。値段は張るかもしれんがのぅ」
「意外な趣味が……」
 聞こえないように小声でリク。歩く後には流れた血が残るものとばかり思っていたが、どうやら少女趣味も有ったらしい。
「箱は腹の中では口と繋がっておる。じゃから、のう。こうすれば」
 と可愛らしい口を大きく開けて、手を突っ込む素振りをしつつ。
「中の物が取り出せるのじゃ」
「悪くはないかも知れん、が……」
「あ、こういう形のも一応あるわよ。バックホーっていうんだけど」
「キャタピラが使えるなら、不整地にも使えていいよね。実際、戦場はそういう場所、多いし」
「前回は雪原、だったか……確かにこの形状は整地作業とも相性が良さそうだな」
 紅薔薇の絵を受け取りながら、ロベリア、リクの提言を手元の資料に書き込んでいく。
「材質についてだけど、木材、はどうかしら?」
「……それなら値段を下げる事は容易ではある」
「加工もしやすいし、輸送も楽よ。土木作業程度の強度なら数や大きさを揃えればいいし」
「装甲、という点に難が残るが――現実的な提案だ。私は気に入った」


 残るは名前を、という段になって、またひと悶着があった。

「そうだなゴーレム・ゼロ……通称ゴーゼr」
「次の機体はゴーレム・ワンちゃんってか」
「あァァァン!? グリーヴが付けたやつよりゃ100倍マシだ!」
「ンだと……チビガキが調子に乗りやがって……ッ!」
「……上等だ」
「あっはっは。飽きないねぇ~」
 ウィンスとジャックの騒動を『肴』に、鵤は盃をぐび、と呷る。
「あ。アダムくぅん、おっさんは『ささえる君』、良いと思うよぉ~」
「俺もそう思うぜ!」
「……そ、そうかね?」
 愉しげな鵤と快活なレオーネに支持され、アダムは満更でもなさそうだ。褐色の肌がほのかに赤く染まっていた。
「あらあら……」
 そんな様にロベリアは淡い苦笑を落とす。堅物と思いきや可愛らしい所もあるらしい。
「僕はGnome、とか、働き者っぽいこれらしくていいかな、って……」
 控えめにリクが言うと、三々五々に思う名前を挙げていく。
「土木君とかぁ?」へらり、と鵤が言えば、
「これが採用されたら頑張るゾウ君1号がいいのぅ!」と紅薔薇が応じ、
「リアルブルー風でいくなら『スケットマン』とかもいいかもな!」とレオーネが締めた。
「……こ、候補に加えておこう……」
 それら一つ一つをメモに残しながら――アダムの手は、震えていた。

 ――スケットマン……ガンバルゾウ……!
 どうやら、そのハイセンスな名前に、心を撃たれたらしかった。



 一通りの意見聴取も終わり、お開きとなった、その去り際。ジャックはアダムの肩に手を回すと。
「アダム。原価は落とせるだけ落とせばいいけどよ、基本は安く作って高く売るのが商売の基本だぜ。支援特化型の機体は今回が初だろ?」
「……売り手市場になる、と?」
「CAMはアレだが、魔導アーマーよりは高めでも俺ァ良いと思うぜ。なにせ、刻令術はこれからなんだろ? 金が要る。量産には刻令術を使えるヤツの教育が必要だし、開発だってただじゃねェだろ。なら、その金は此処で稼がなくちゃいけねえ」
「……成程、理にかなっている」
「で、だ」
 頬を赤らめたジャックは咳払いをすると、
「前に言ったあれ、覚えてるか」
「美少女がどうとか」
「美少女ゴーレム。あの話はどうなった?」
「直ぐに、とはいかんが……」
 その熱量に、自然とアダムの足が下がる。
「いや……ッ! 今はそれだけで十分だ。いざとなったら金はいくらでも出すぜ、サオリたんのためなら!」
「サオリたん?」
「頼りにしてるぜ、アダム!」
 ――待っててくれよ。
 まぶたをとじれば脳裏には黒髪ロングの大和撫子のサオリたんの姿。どこか平たい質感なのは、彼女が二次元の住人だからだ。だが、そこが、イイのだろう。彼にとっては。
 ――俺様がサオリたんの次元を引き上げてやっからな……!
「……ちっ」
 悦に浸るジャックを余所に、ウィンスは不満げに舌うちを零した。後半は兎も角、前半の意見はそう悪くはなかったから。かといって、負けを認めるつもりも更々なかったのだが。

 テンションがウナギ登りのジャックが去っていく最中、コントラルトはぽつとこう言った。
「……依代に死体を使ったらどうなるの?」
 微かな声だがアダムは小さな吐息と共に、こう言ったのだった。
「動くさ、勿論。だが、死体は硬直するからな。適切とはいえんさ」
「……そう。そうね」
 技術者らしい言葉に、コントラルトは短く応じる。あるいは、この男は既に試したのかもしれない、と。そう思いながら。
「じゃ、おっさんらはこれで。良いワイン、ありがとう。アプリちゃんだっけ? お礼言っといてねぇ~」
 メイドの名を覚えへらりと笑う鵤に、アダムは苦笑した。まともな技術者らしいものいれば、よくわからない男もいる。ハンターという人間は本当に一筋縄ではいかない。
「ああ。また、縁があれば頼む」
 それでも、満足げにアダムは応じた。得る物は多く、確実に次の一歩を踏み出せるものと、感じられたからだ。

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参加者一覧

  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • 魂の反逆
    ウィンス・デイランダール(ka0039
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • ノブレス・オブリージュ
    ジャック・J・グリーヴ(ka1305
    人間(紅)|24才|男性|闘狩人
  • 魔導アーマー共同開発者
    レオーネ・インヴェトーレ(ka1441
    人間(紅)|15才|男性|機導師
  • は た ら け
    鵤(ka3319
    人間(蒼)|44才|男性|機導師
  • 軌跡を辿った今に笑む
    ロベリア・李(ka4206
    人間(蒼)|38才|女性|機導師
  • 最強守護者の妹
    コントラルト(ka4753
    人間(紅)|21才|女性|機導師
  • 不破の剣聖
    紅薔薇(ka4766
    人間(紅)|14才|女性|舞刀士

サポート一覧

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依頼相談掲示板
アイコン ささえる君(仮)企画会議室
ロベリア・李(ka4206
人間(リアルブルー)|38才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2016/01/20 21:13:55
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/01/17 14:23:36