Mappa di Venezia

マスター:龍河流

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
少なめ
相談期間
5日
締切
2016/01/27 22:00
完成日
2016/02/07 19:01

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 宝探しを手伝って。

 こんなお願いしてきたのが十八歳の人間女性、手には確かに古い地図。
 別に依頼人が若い女性だからとか、宝があったら報酬アップの条件が心に響いたからとか、単に現在金欠が極まっていたとか、そういうことでは全然なくて。
 そう。
 宝探しって言葉が魅力的だったのだ。
 夢があるでしょ、宝探し!


「って、思ったんだけど」


 よく考えてみると、宝が何かは全然聞いていなかった。
 目的地がとんでもなく山の中だとは、縮尺が適当過ぎる地図からは見て取れなかった。
 しかも依頼人が、スカートのままでその山道を付いて来た。
 更には、お付きのばあやまで。
 この『ばあや』が二十代の女性なのは、一体どういう訳なのか。
 当然、この二人を山の中腹まで連れて来るのに、大変な苦労をした。


「その上で、これか」


 宝の地図の『一枚目』にある洞窟の入口は、ものの見事に落石で埋もれていた。


「除けてくださいな」
「よろしくお願いしますね」


 大量の宝の地図を綴った地図帳を大事に抱えて、皆の背後から依頼人とばあやがそうおっしゃっている。

リプレイ本文

 それは間違いなく、ディーナ・フェルミ(ka5843)の屈託のない笑顔がいけなかった。
 加えて、ザレム・アズール(ka0878)がためらいを見せなかったことも、原因の一つだろう。
「ローマ様、一度口に入れたものは」
 ばあやのヴェローナが言い募る中、ローマはひたすらに口にしたモノを咀嚼していた。なんとか飲み下したところで、こちらもやや顔をひきつらせたパトリシア=K=ポラリス(ka5996)が差し出した白湯を煽る。
「ちょっと、好みの味とは違ったわ」
「ううん、無理させちゃったみたいでごめんね」
「こういうのでは、酸味が少なくて食べやすい方だが、料理は見た目も重要だしな」
 ローマと同じものを、すでに二串ぺろりと平らげたディーナとザレムは平然としているが、パティや時音 ざくろ(ka1250)、ヴェローナは相当に、アデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)は少々、顔を引きつらせている。まるまるとしていても、何かの幼虫を食べるのは精神的にきついと思っているのがよく分かる。
 彼ら、彼女らは食料の持ち込みがあるのに、わざわざ洞窟内で見付けた虫を食べなくてもと思っているに違いない。挑戦したローマも、表情から後悔がありありと見て取れる。
 一行は現在、洞窟の入り口前で夕食中だった。ここまで来た時には昼過ぎ、落石を除けていて夕方となり、休養を取って明日早朝からの探検を目指している。
 その英気を養うための夕飯なのだが、また、ぽんと爆弾発言が飛び出した。
「これはこれで、悪くはありません」
 出されたものは残さず食べるのも礼儀とばかりに上品な仕草で、いつの間にやらエルバッハ・リオン(ka2434)がいらなくなった串を焚き火に放り込んでいた。
「食えそうにないなら、置いとけばいいんだ。あ、塩をちょっとくれ」
 たいそう冷静に味の評価も述べつつ、柊 真司(ka0705)も串焼きを食べていた。何だかと比べるたらと言い出すのは、相当色々なものを食べつけているからか。ザレムと会話が弾んでいるのを横目に、アデリシアはざくろに甲斐甲斐しく別の料理を取り分けてやっている。作ったのはヴェローナとローマだが、こちらは蕎麦粉の生地にハムとチーズをくるりと巻いた料理で食べやすい。
 あと、たいそう普通だ。
「こういう時には、手掴みでも食べられる料理はいいものですね」
「これ、ガレットだよね。こちらでは、違う名前かな」
「ガレットは、確かフランスの料理だったよネ? 前に食べたのは、もうちょっと塩気が強かったヨ」
 四角くたたんで作るのを見たことがあると、パティも会話に加わった。この中では彼女とざくろ、柊がリアルブルー人だ。恋人との会話に介入されたアデリシアがちょっぴり唇を尖らせたが、食事中は会話を楽しむものと思い直したらしい。そういうものなのかと、ざくろに尋ねている。
 尋ねられても、ざくろも詳しい訳ではない。はてと首を傾げたところで、ローマがパティの質問に返事を寄越した。
「うちの領内では、ピッツァかカルツォーネって呼ぶわ。本式は小麦粉で作るの」
 そういう名前のリアルブルーの料理を聞いた事があると、ディーナが今度はそば粉ピッツァを口に入れた。美味しいと微笑む顔は、先程ローマにすまなそうにしていた時とはうって変わって嬉しそうだ。
 そんな彼女でも、ここまで登ってくる中でザレムと採取した野草のスープには、少し塩を追加している。こちらもローマ達が作ったが、二人の郷里は相当薄味なのか、全体に味が物足りないのだ。
 しかし、幾ら岩を退けるのは見ていただけでも、二人も登山と呼んでよい道のりを歩いて来たのだから、塩分を取らないと体に障る。そう思い出したアデリシアが、二人の椀に塩を少しだけ追加してあげたら、悲鳴をあげられた。
「もしかして、信仰で何か食事に決まりがあるのかしら?」
「そんな高尚な事情ではなくて」
 言葉を濁したローマに、ザレムは『宝探しをするなんて、やはり金に困っているのだろうか』との考えを、それならハンターを頼むのも難しいはずだとせっせと打ち消す。他の者も大半は似たようなことを思ったが、一人エルは違った。
「もしかして、宝が出ないと経済的に困るのですか?」
 サクッと切り込んでいく。それにローマは盛大に溜息をついた後、
「塩も小麦も外から買うから高い」
 遠回しに、自領の貧乏を告白した。


 洞窟の入口の落石は、デルタレイだ、ファイアーボールだ、ドリルだ、つるはしだと、除ける方法が多々検討されたが、まずは中に入れればいい。加えて、内部の探検中にまた落石で塞がるようなことがなければ安心だ。
 この前提で、皆がよくよく積み上がり具合を確かめたところ、アデリシア発案のてこの原理で十分と分かったので、作業は地味に進んだ。とはいえ、地味に進められるのは覚醒者たるハンター達だからで、作業はお任せ状態のローマ達は、装備が簡素に見えるディーナやパティでも一抱えある石を持ち上げるのに驚いていた。
 二人を驚かせたパティをびっくりさせたのは、蝙蝠だ。落石で中に閉じ込められていたものらしく、まだ明るい時間だったのに上の方が少し開いた段階で群れが飛び出してきた。
「あ~、驚いたヨ」
 リアルブルーではあまり見たことがなかったのと、いきなり出てくると思わなかったと、パティは心臓のところを押さえていたが、群れの飛ぶルートに立ち塞がる形になってしまった柊は羽根で顔を打たれて憮然としている。
 宝探しというからは、予想外のものに出会ってわくわくしたいと言うのが柊の正直な気分だ。ざくろなど、『宝の地図』と聞いただけで、目がきらきらしていた。ザレムはこの二人の中間くらいの反応ながら、やはり宝の正体を楽しみにしているらしい。
 こうした男性陣に対して、女性陣にはもう少し具体的な反応があった。
 アデリシアは自分の信仰が戦神とあって、言い伝えのある武具の類がいいと明朗だ。故に夕飯後に、地図を見せてくれとローマに要求して、地図帳ごと借り受けた。
 もちろん、誰もが読みたい訳だが、
「ざくろも見たい! 貸して!」
「わ、私は最後でいいので、回してくださいね」
「下に広げますから、各自で覗きなさい。その前に、何か敷かないといけませんね」
 最初に持ったアデリシアと、その横にいたエルが地面に布を敷いてから、地図帳を広げた。誰かがランタンを増やして、明るくする。
 車座になったハンター達が、子供の様に頭を突き合わせて覗き込んだ地図は、しかし簡素なものだ。おそらくローマ達の住む地域からの方角と距離の他は、何を示すのか分かりにくい記号が散りばめられている。端に解説が書かれているものの、あいにくと読める者がおらず、ローマ達を振り返ると書き付けをくれた。多分、こう書かれているというものだ。
『おそらく将来、ここにある物を必要とする日が来る。云々』
 宝の正体を示す事柄は、書かれていない。他の地図を見ても、似たような感じだ。地図帳の表紙だけはクリムゾンウェストの言葉で、それを見たザレムが、見慣れない名前だとローマ達を振り返った。
「このヴェネチアさんって、ご先祖さまかい?」
「ヴェネチアンは、転移者よ」
 彼が現われたのは、二百年ほど前になる。時々放浪癖が出る以外はたいそう優秀な人物で、当時は分裂していたローマの領地を、岩塩鉱床を見付けたことで纏め上げ、同盟評議会にも加えてくれた功労者だ。生憎と現在はその岩塩鉱床が枯渇してしまい、評議会に人をやる余裕もないが、今も地元では崇拝の対象だそうだ。
「それで、ローマとヴェローナなのね」
 パティが気になっていた名前の出所が思い出せたと、すっきりした顔になっている。良く分からないこちらの世界の出身者には、ざくろと柊がイタリアという国の地名だと簡単に説明していた。つまりは、
「ヴェネチアン殿は、おそらくそのイタリアのご出身なのですね」
 エルのまとめに、誰も異論はない。
 イタリア人を連れてくるか、イタリア語の辞書を手に入れたら、もっと地図の中身が分かるぞと興奮したざくろが考えを巡らせていたが、他の者は翌日に備えて早々に寝支度に入った。ディーナに足を揉んでもらったローマが寝入ったので、これ以上は話を聞けそうにないのもある。
 コウモリがいない洞窟の中は、静かなものだった。

 探検本番の洞窟内には、ローマとヴェローナの悲鳴が響いていた。
 嫌な予感がするとのアデリシアの言葉に始まり、そこから怒涛の展開に陥ったのだから仕方がない。
 ちなみに洞窟内では、依頼人二人が真ん中で、それぞれにディーナとエルが付き添った。
 前方十メートルくらいを先行するのはランタンを持ったパティと、警戒役のざくろとアデリシアで、内部の地図を描くザレムは依頼人達のすぐ後ろ。更に殿では柊が分岐の度に、来た道が分かる印を刻んでついてくる。
 ここは遺跡ではないから罠の可能性は低いと、ザレムが常識的なことをローマ達に説明したのに……

 なぜか突然に陥没する地面! 転げ落ちたのはざくろだった。

 更には後方から、どこから現われたのか分からない巨大な岩が全員を追ってくる!

 これまた、どういう仕掛けか吊り天井が落ちてくる! 今度はアデリシアが危なかった。

 負けじと進めば、今度は流砂。流されるなと叫ぶザレムはどうなったものか。

 続く苦難は、立ち塞がる断崖絶壁に底の見えない裂け目、幅広の地底川には点在する浮石、いずれもが一歩間違えば死んでおかしくない驚異の数々!

 洞窟内に木霊する悲鳴は途切れることを知らず、ローマもヴェローナも失神寸前だ。
「まだ二時間も歩いていませんよ。お水でも飲んで、気を落ち着けてください」
 この中でもっとも冷静だったと思われるエルが、地面にへたり込んで声も出ないヴェローナにミネラルウォーターを分けている。
 ローマに合わせたゆっくりペースなので、二時間といったところで歩いた距離はたいしてないだろう。足場が予想外に良いし、下り坂なのを考慮しても、四キロ程度だ。と、そこまで冷静に説明も加えていた。
 が、説明は肝心のローマの耳を素通りしている。
「こんなひどい目にあったのは、生れて初めてだわーっ」
「ローマちゃん、落ち着いてなの。もう皆に悪戯はさせないの」
 ディーナにしがみ付いて、絶叫しているので仕方がない。
 最初に言い出したのが誰だったか。もうそこはうやむやだが、誰かが『昨日こんな夢を見た』と落とし穴の話を始めたのだ。そうしたら、ローマとヴェローナが『そんな怖いところがあるなんて』とおののいたので、これまた誰かの悪戯心に火が点いた。
 落し穴に始まり、岩だの吊り天井だの断崖絶壁だの底知れぬ谷間だの朽ちる寸前の吊り橋だの地底川の浮き石橋だの、『あったら面白そう』というハンターにはある意味お約束の『洞窟探検の危機』オンパレードを語り出したのだ。誰がとは言わないが、半分以上が参加した。
 そして、現在のローマのヒステリーとヴェローナの虚脱状態に至る。流石に悪戯組もやり過ぎたかなと反省して謝ろうとしたら、騒ぎの間に少し先の分岐点を覗きに行ったパティがすごい勢いで駆け戻ってきた。
 まさか敵かと身構えた皆に、パティはランタンが消えない程度にぶんぶんと振り回し、皆に訴えた。
「向こう側に、何か光ってるヨ! 変な気配はないけど、とにかく光ってる!」
「今度こそ、本物の光るキノコが見られるかもしれないぞ」
 ザレムが最初にした話を持ち出して二人に睨まれたが、仕草でなだめて様子を見に行く。パティが案内に立ち、アデリシアとざくろも警戒しつつ、ついていく。
 エルとディーナ、柊は万が一に備えてローマ達の側に残っていると、前方から聞こえてきたのは歓声だ。
「皆、早くおいでよ、すごい綺麗な景色だよ!」
 ざくろが分岐から半身だけ見せて、大声で知らせて寄越すから、声が反響する。楽しげな声にもヴェローナはまだ疑心暗鬼の様子だが、ローマがディーナと手を繋いで歩き出したので立ち上がる。結局はエルに手を借りて、柊にも支えられつつ、よろよろと坂道になっている洞窟の中を下っていき……
「へえ、これはすごい」
 柊が感嘆の声を上げたように、そこに見えたのはほのかに煌めく水面が見えていた。湖と呼ぶには小さそうだが、ともかく水面が広がって、それを囲む壁には苔がぼんやりと光っている。
 つまり。
 ハンター的『洞窟あるある』または『洞窟であったらいいな』のうちの二つ、地底湖と光る苔が同時に出現していた。
 水面に至る直前は急坂になっていたが、アデリシアとざくろが早くも水の中を覗いている。パティとザレムは苔の観察に忙しそうだ。
 柊が急坂を先に立ち、地底湖の傍らにどんと鎮座している大岩に手を掛けた。足元を確かめながら、残る四人を振り返ると……彼女達の目は真ん丸に見開かれている。
「どうした?」
 返事より先に、大岩が動いた。どうやら、ぎりぎりの均衡を保っていたのが、柊の軽い一押しで動き出したのだろう。
 転がっていく先にはざくろとアデリシアがいて、皆の悲鳴や岩の音に、ざくろがアデリシアを抱えて横跳びに逃げたはいいが、水の中へ。その飛沫を派手に浴びたエルと柊、それからザレムがものすごい勢いで咳き込み出した。
「え、えぇ、まさか毒とか?!」
 ローマとヴェローナの前に出て、でも慌てふためくディーナに対して、運よくザレムの陰にいて、ほとんど水飛沫は浴びていないパティが身振り手振りも含めて訴える。
「ここの水、すごいしょっぱいのネ!」
 ざくろはアデリシアを水から先にあげようと努力していたが、目が開かなくて妙なところを押している。アデリシアも咳き込んでいて、よろけたりしている。結局、水を浴びていない四人が手を貸して、全員が人心地着くまでに十分ほどは掛かったろう。
 それから、いきなり濡れた服をエルが脱ぎだすのでまたひと騒動あったが、これは柊が外套を貸してやることで落ち着いた。
 さて。
「ほら、ローマちゃん。この白いの、塩の固まりよ」
「塩……これ、全部塩水?」
 間違いないと請け負ったのは、この水をしこたま飲む羽目になったアデリシアだ。パティとディーナ以外が、これに力強く頷いている。
「将来必要とする日が来る、でしたか。岩塩の鉱床が遠からず枯渇することを、見越していたのかもしれませんね」
 来ていた服をぎゅうぎゅうと絞りながら、エルは地図の一文を思い出していた。素直に書かないあたり、へそ曲がりの気もするが、
「こういう財宝も悪くないな」
 ザレムが言う通りであろう。
 それに、宝の地図帳にはまだまだ地図がたくさん綴じられている。次の冒険にもお誘いがあるように、今のうちにローマに念押ししなくては思う者は少なくない。
 だがまずは、皆で塩の固まりを拾ってローマ達を喜ばせてやるのが、大事な仕事であろう。

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 支援巧者
    ロニ・カルディス(ka0551
    ドワーフ|20才|男性|聖導士
  • オールラウンドプレイヤー
    柊 真司(ka0705
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • 戦神の加護
    アデリシア・R・時音(ka0746
    人間(紅)|26才|女性|聖導士
  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
  • 金色のもふもふ
    パトリシア=K=ポラリス(ka5996
    人間(蒼)|19才|女性|符術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/01/25 19:58:08
アイコン 宝探し
ロニ・カルディス(ka0551
ドワーフ|20才|男性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2016/01/27 21:05:38