冷たい錬金術師

マスター:神宮寺飛鳥

シナリオ形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
寸志
相談期間
5日
締切
2014/08/14 12:00
完成日
2014/08/19 05:53

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

「ぬおあああああああ――――ッ!?」
 帝国ユニオンAPVにユニオンリーダータングラム (kz0016) の雄叫びが響き渡る。
「ど、どうなさったのですか、タングラム様!?」
 慌てて駆けつけたフクカン(kz0035)が見たのは魔導冷蔵庫の前で固まるタングラムの姿であった。恐る恐る近づいて確認してみると、どうやら魔導冷蔵庫が故障してしまったらしかった。
「あ、止まってますね。最近調子悪かったからなあ」
「今すぐリーゼロッテを呼べ」
「な、なんで初手組合長なんですか!? その辺のアルケミストじゃだめなんですか!?」
「冷蔵庫が壊れたら死活問題です……これではキンキンに冷えた犯罪的なビールも麦茶も飲めないじゃねぇか……」
「何が犯罪的なのかわかりませんけど、確かに困ってしまいますね……」
 魔導冷蔵庫は帝国では割と見かける道具だが、まだまだ高価なものだ。それに定期的なメンテナンスが必須で、不調故障はしょっちゅうである。
「第一これ維持費がすげぇかかるですよ。なんかもっと帝国ユニオンなんだからハイテクな装置はねぇのですか?」
「リアルブルー式の冷蔵庫は電気というエネルギーで動いているそうですよ。こちらの冷蔵庫より遥かに安定かつ高性能だそうです」
「それを一台フクカンがかっぱらってくるという手は?」
「そ、そんな手はないですし、私が逮捕されてしまいますよ……。タングラム様のためならえんやこらと言いたい所ですが、私が捕まってしまうと回りまわってタングラム様にご迷惑をかける事になってしまいそうな気が……ああっ、私はどうすれば……っ」

 ~数時間後~

「というわけでハイデマリー。お前なんとかできないですかね?」
「久しぶりに呼びつけられたと思ったらこの仕打ち」
 フクカンに出されたぬるめのお茶を飲みながらタングラムを見つめる女。名をハイデマリー・アルムホルムと言う機導師で、タングラムとはちょっとワケアリの知り合いである。
「つまり、冷蔵庫を修理しろって事? それくらいなら別に構わないけど」
「タングラム様、この方は……?」
「ハイデマリーは一応錬金術師組合の一員ですよ。ま、ろくすっぽ研究成果も上げられていないエセ博士ですがね」
 けらけら笑うタングラム。一方ハイデマリーは別段気にする気配もなく、無表情に茶を啜っている。多分こういう間柄なのだろう。
「冷蔵庫を修理するだけならその辺の奴に頼むですが、ハイデマリーは確か自然環境再現の研究をしていたですよね?」
「そうだけど」
「リアルブルーにはエアコンという装置があるのを知っているですか?」
「聞いた事はあるけど」
「作れるですか?」
「やってみないとわからないけど」
「やってみて?」
 無言で見つめ合う二人。カップを置くと、ハイデマリーはAPVの建屋をぐるりと眺める。
「環境再現装置を使ってこの部屋の中を涼しくしろって事? まあ、小さい部屋なら出来なくはないと思うけど、この大部屋は無理よ?」
「私の部屋だけでいいです」
「あっ!? タングラム様ずるいです!?」
「うっせぇ! ユニオンリーダーの特権ですね!」
 縋り付くフクカンを蹴りまくるタングラム。ハイデマリーは既に冷蔵庫のチェックに入っていた。
「随分古い型を使ってるのね。新しいの買った方が安くつくんじゃない?」
「APVの懐事情はカッテのせいで常に火の車なのですね」
「その割には変なガラクタとかお酒が毎日増えているような……ああっ、タングラム様いたいですっ!」
「なんでその人ちょっと嬉しそうなの?」
「こまけぇことはいいんだよ。なんかコストを抑えて改造する手段はないですか?」
「……まあ、考えてはみるけど……」

 ~数日後~

「考えた結果こんな感じになりました」
 ハイデマリーが持ってきたのはリアルブルーの自転車の様な装置と、拷問危惧の電気椅子のような装置であった。
「……なんですかこれ」
「環境再現装置の試作品なら余ってるからタダであげる。だけど動力源になる鉱物性マテリアルは凄く高価で、維持費がべらぼうにかかる」
「それは困るですね?」
「で、考えたんだけど、ここって屈強なハンター達が毎日大量に出入りするのよね?」
「それはもう元気の有り余ってる奴らが沢山いるですが」
「この人力発電機という装置は、このペダルを必死に漕ぎまくる事でわずかながらの電力を発生させるそうよ。これを複数連結させれば……」
「ちょっと待て」
「それと、こっちの椅子は覚醒者のマテリアルエネルギーを変換する為の物で、覚醒した状態で座り続けている限り冷蔵庫や環境再現装置が動き続けると言う……」
「だからちょっと待て。それ本当に大丈夫なのですか?」
「多分、覚醒しっぱなしの人はかなり疲労すると思うけど、他の人はみんな涼しくなると思う」
 口元に手をあて思案するタングラム。おもむろにフクカンを呼びつけると、機械椅子に座らせベルトで固定する。
「え、覚醒? 覚醒すればいいんですか? タングラム様、これはどういうプレイで……ああっ!? なんですかこれ、凄く疲れます!! なんだか全身の力が抜けていくような……アッ――!?」
「これヤバくね? 泡吹いてるですけど」
「命に別状はないと思う……多分。調整は必要かも……多分」
「まあ、ちょっと実用試験してみるですか」
 エネルギーを吸い取られ白目を剝いているフクカンをほったらかし、二人は冷蔵庫を漁り始めるのであった。

リプレイ本文

「本日はお集まりいただきありがとうございます。こちらが例の装置一式でございます」
 無表情に装置を案内するハイデマリー。APVの談話室の隅に置かれた装置は中々どうしてデカい。
「冷たいの出るのかっ? りあるぶるーの奴かっ?」
 大きな箱のような環境再現装置に駆け寄るリズリエル・ュリウス(ka0233)。その前に屈んでみるが、まだ動いていない。
「動いてないぞこれ? 冷たいの出てないぞ?」
「まだ取り付けも稼働もしてないから」
 執拗に冷蔵庫を開け閉めしてしょんぼりしているリズリエルにハイデマリーが説明する。エメラダ・Y・エレメンツ(ka2605)は環境再現装置に触れ、興味深そうに息を吐いた。
「環境再現装置と言ったです? どんな造りになっているのか楽しみですね」
「全くだぜ。ハンターでよかった、って思うのはこういう時だよなぁ、ホント……。新型の装置なんて中々お目にかかれねぇしな」
 ツィーウッド・フェールアイゼン(ka2773)もエメラダに並んで子供の様に無邪気に装置に触れている。
「ハンターは変わり者が多いわね。少なくとも私の知ってるエルフとは少し違うみたい」
「私の本分からすると錬金術は畑違いですが、新しい技術には惹かれる物があるですよ」
「ま、エルフにも色々な奴がいるってこった。閉鎖的な奴が多いってのも、否定はしねぇがな」
 僅かに笑みを浮かべるエメラダ。ツィーウッドは肩を竦め苦笑する。
「新型の魔導機械に興味津々なのも良いが、当たり前のように倒れているフクカンを放置するのは感心しないね」
 床の上に転がっているフクカンを抱き上げて移動させるアルメイダ(ka2440)。そっと毛布を掛け、メンバー唯一の優しさを見せる。
「んぁ? なんでそいつ床で寝てやがるんだ? さては酔い潰れたか……運動し放題、酒飲み放題って話だったからな!」
 ニっと笑みを浮かべるキール・スケルツォ(ka1798)。エメラダとツィーウッドは顔を見合わせ。
「んっ? 何かいたですか?」
「すまん、機械の事で頭が一杯で全く目に入らなかった」
「なーなー、そんな事より冷たいのまだかっ?」
 地団太踏むリズリエル。アルメイダは冷や汗を流しつつ。
「とりあえず、気絶してる奴の手当てをするのが先だろう……」
「そいつ割と不死身な所あるから、ほっといても平気ですけどね」
 タングラムの冷酷な追撃にため息を零すアルメイダであった。
「また今回は面白そうなコトを始められるのですわね? ふふふ……タングラムは相当新しモノ好きとお見受けしましたわっ」
 平然としたタングラムに声をかけるロジー・ビィ(ka0296)。笑顔のままずいっと距離を詰め。
「アレ以来、偽物は出ておりませんくて?」
「そ、その話はもうやめるですよ……エルフには黒歴史が多い物なのです……」
 わなわなと震えるタングラム。ともあれ、今日はこんな面子で実験を行う事になったわけで。
「よぉ。俺にはよくわからねぇんだが、こいつこのままじゃ動かねぇんだろ?」
「うん。まず設置作業からね。だいぶ重たいから男性陣宜しく」
「男性陣って俺とツィーウッドしかいねーじゃねぇか……俺らに持てって事か」
 ハイデマリーに頼まれ苦い表情のキール。ツィーウッドはその肩を叩き、装置の反対側に回る。
「ま、女子供に運ばせるのも格好つかねぇだろ。キール、そっち持ってくれ」
「やっと冷たいの出るな! 早く持ってってくれ!」
「わーったから周りチョロチョロすんじゃねぇ、あぶねーだろ!?」
 走り回るリズリエルに吼えるキール。こうして装置は目的地であるタングラムの部屋に運び込まれた。


「……んだこの部屋。きったねー部屋だなオイ」
 というのはキールのストレートな感想であった。タングラムの私室は妙なガラクタや山積みになった報告書で埋め尽くされていたのだ。
「こんなデカい箱、どこに下ろせばいいんだ……」
「この辺に場所を作ってですね……」
 適当に指示に従って設置を終えるキールとツィーウッド。その間ロジーは自然な動きで部屋の中を物色していた。
「書類の束に……これは地方名産の雑貨ですわね?」
「わかるですか? ガラクタに見えて結構価値のある物なのですよ」
「旅をしていると色々と珍しい物を拝見する機会もありますから。とはいえ、飲みかけのお酒が放置されているのはフォローできませんわね」
 酒瓶をつまみ上げ苦笑を浮かべるロジー。部屋はそこそこ広い筈なのに、乱雑に物が置いてあるせいで狭く感じる。
「これでも一応ざっと片付けたのですがね。どうせ寝るだけの場所ですから」
「タングラム、実はルーズなのですね……こんな所に下着も放置されて……」
「そんなわけねーだろどっから引っ張り出してきたですか!?」
「そのベッドの下に……」
「あるわけねーだろ! 片付けたって言ったろ今!」
「タングラムったら、意外と大胆な下着を……っ!」
「落ちてたって言い張るつもりだなこいつ……良いから返しやがれです!」
 部屋の外周を追いかけっこする二人。アルメイダはそれを横目に装置に近づく。
「さてさて、早速稼働させてみたい所だけど……問題は誰が動かすか、だね」
「その他人事のような言い方……自分は動かす気ゼロなんだな」
「まずはジテンシャ……だっけか? こっちで一肌脱がせてもらうじゃねぇの。こいつを漕ぎまくればいいんだな?」
 部屋を狭くしている原因でもある自転車に跨るツィーウッド。キールは腕を組みその様子を眺めている。
「私も自転車を漕いでみるです。こういうのは実体験を蓄積する事に意味があるですからね」
 エメラダも並んで自転車に跨る。リズリエルはその間に冷蔵庫を開き、そこに飲み物を詰め込んでいた。
「準備オッケーだぞ! どしたっ、涼しいのまだかっ?」
 催促に苦笑しつつ自転車をこぎ出すツィーウッド。しばらくすると電源が入り、冷蔵庫と環境装置が動き出した。
「あら、涼しい風が出てきましたわ! こんなモノでお部屋が涼しくなるなんて驚きですわね」
「へぇへぇ……。あー、でもよ? なんか風が出たり止まったりしてねーか?」
 ロジーとキールの反応にハイデマリーは頷き。
「連続稼働には安定した発電が必要だから、もっと勢いよくこぎ続けないと」
「そう言われてもですね、予想以上にペダルが重くて力が必要なのです。これが動力源になる秘訣なのでしょうが……」
「俺はまだまだいけるぜ。こちとらドワーフ連中と肩並べて働いてんだ、そこらのエルフよりは多少頑丈だっての」
「私だって……決して、研究ばかりしていて運動不足な訳ではないです。たぶん、おそらく……です」
 必死で自転車を漕ぐツィーウッドとエメラダ。額に汗した甲斐もあり、徐々に部屋が涼しくなってくる。
「まあ……不思議ですわね~」
「だなぁ。あー、ところでさっきから気になってたんだが……エメラダ、パンツ見えてっぞ」
 必死に自転車を漕ぐエメラダだが、スカートが短いので当然そうなる。正面に立っているのがキールなので、見えるのは仕方ない。仕方ないが、ちょっと冷ややかな女性陣の視線がキールに注いだ。
「……クソッタレ、おかしくねーか? 俺は善意で注意してやっただけだっつーのによ……」
 ふてくされて移動するキール。その視界に大きな椅子が飛び込んできた。
「へぇ、座り心地はあんま良さそうじゃぁねぇが気が利いたトコに椅子があんだな。知ってるぜこれ、マッサージチェアって奴だろ? 流石ユニオンリーダーの部屋だな」
 椅子に腰掛け足を組む。謎のベルトは気になるが、意外と座り心地は悪くない。
「えーっと……肩揉み機能はこのボタ……ほぁあああああっっ!?」
「キール……エメラダのパンツを見た後に一人で何をハイになっているのですか?」
「ちっげーよ! 誤解を招くような言い方するんじゃねぇ! これだよこれ!」
 タングラムの冷たい視線に飛び上るキール。ロジーは椅子に歩み寄り。
「これが座っているだけで良いという装置ですわね?」
「こいつがフクカンをダメにした椅子です」
「そんな物騒なモンその辺に置いとくんじゃねーよ……」
「その辺に置いといたらマズいから先に私の部屋に運び込んでおいたのですよ」
 三人がそんな話をしている間、アルメイダはハイデマリーと並んで自転車を眺めていた。
「ずっと漕ぎ続けるのでは大変だろう? 回転させる事でエネルギーを発生させているのなら、風車や水車を使う事は出来ないのか?」
「出来ると思う。いずれはこういった発電装置が復旧する日も来るでしょうね」
「リアルブルーの方ならきっとそんな技術もあるだろうから、聞いてみたら以外に進むかもしれないねえ」
「そうね。ただ、二つの世界の技術交流はまだ殆ど進んでいないの。個人単位でのやり取りはあっても、一般化には程遠いわね」
「どうせ回転させるのなら、魔導ドリルの回転機構でも使えばもう少しマシにならないか?」
「魔導ドリルの回転機構はやっぱり覚醒者の力や鉱物性マテリアルの消費で駆動するものだから、それなら椅子の装置が近いと思う。これはエコ用だから、こんなものね」
 そんな真面目な話を横目に冷蔵庫からジュースを取り出すリズリエル。もう完全に寛いでいるだけだ。キールも冷蔵庫からビールを取り出しいつの間にか一杯やり始めている。
「くっ、流石に限界です……膝が笑っているですね」
「どうだ、ちょっとは冷えてるか……?」
 汗だくで尻餅をついているエメラダ。ツィーウッドは冷蔵庫から水を受け取りながら声をかける。
「なぁ、お前あの椅子使ったんだろ? どうだった?」
「どうって……にーさん、気になるなら座ってみ? マジ意識吹っ飛びそうなぐらいやべぇから。な?」
「そいつは興味深いな……って、あっ、お前ちょ……今俺疲れてっから……!」
「いーからいーから……!」
 無理矢理椅子に座らせようとするキールと拒むツィーウッド、二人は揉みあいながら椅子に近づき……何故か二人同時に椅子に座った。
「ほぁああああっ!? なんで俺まで!?」
「死なば諸共だ馬鹿野郎!」
 座らされたツィーウッドがキールを抱えるようにして座り、二人纏めてエネルギーを吸収される様子をタングラムはジト目で見つめている。
「男同士でなにやってるですか、お前ら……」
「あらあら~? まあ~?」
「貴い犠牲だなっ。お前らの事は忘れんぞっ」
 頬に手を当て微笑むロジー。リズリエルは握り拳で語った後、ベッドの上で転がっていた。
 男二人が重なり合うようにして倒れた後、楽しげに椅子に座ったのはロジーだ。
「では、あたしも試してみましょう」
「確か、座って覚醒状態になるだけで良いのですよね? 中々面白いです」
 汗を拭きながら近づいてきたエメラダ。ロジーは椅子で覚醒し暫く持ち堪えていたが、だんだん気の抜けた表情に変わってくる。
「自分の力を他に流用するとは興味深いですよ。ハイデマリー、これはどういった原理で動いているのですか?」
「別にありふれた技術よ。機導師がデバイスなんかを覚醒して起動させるのと同じね。まあ、純エネルギーとして活用する例はあまりないと思うけど」
「じゃあ、別に人間の生命力を消費しているわけじゃないんだね?」
「じゃないけど、要はマテリアルの消費だから肉体的、精神的な疲労を感じるみたい。要調整ね」
 エメラダとアルメイダに挟まれて説明するハイデマリー。そこで我慢できなくなったと言わんばかりにロジーが声を上げた。
「………はふん……もうダメですわ~! どなたか、あたしにエネルギーを……っ! いえ、ハッキリ言いますわ。お酒を下さいなっ!」
 自分が飲んでいた酒瓶を見せるキール。しかし、ロジーは首を横に振り。
「出来れば美味しいお酒が良いですわ……具体的にはそこの棚の右から二番目にあるエルフハイム産のシードルとか……」
「それ俺が狙ってたやつじゃねーか……」
「っていうか私の秘蔵酒じゃねぇか」
 高級酒をラッパ飲みするロジー。目の前で獲物を奪われたキールはやるせない様子だったが、ロジーはすっかり上機嫌だ。
「はぁぁぁぁー……生き返るーぅ! あ、タングラムもご一緒に如何です? このお酒とっても美味しいですわ!」
「それ元々私のだからな?」
 面白くない様子で舌打ちしつつ冷蔵庫を開けるキール。そこへ涼しい部屋でゴロゴロウトウトしていたリズリエルが近づき、ジュースを取るとまだ冷蔵庫に上体を突っ込んでいたキールに構わず蓋を閉じた。
「れいぞうこもなー。キャラバンに欲しいけど高いし売ってないんだぞっ。あくちびちーで交換してほしいくらいだなー……ふわぁ~」
『……んっ!? 誰だ閉めたの……せ、せめぇーッ! 寒ぃ! 棚から頭が抜けねぇえええ!』
「……何やってんだあいつは」
 遠巻きにその様子を眺めるツィーウッド。エメラダは空席になった椅子の前で気合を入れ直し。
「次は私が試してみるです。ん……意外と座り心地はいいですね」
「じゃあスイッチを入れるよ」
 アルメイダがスイッチを入れるとエメラダの全身を脱力感が襲う。いつの間にかロジーは酒瓶を空にし、タングラムがその瓶を手にわなわなと震えていた。
「むぅ、これは確かに、つ、疲れるですね……力が抜けて、意識が遠のいていく感じです……」
「もう少し加減を調整出来ないのか?」
「大きい装置をマテリアルで動かそうとしたら相応の消費量になるから……椅子を併設して負荷を分担するとかかな」
『おーい! 誰か出してくれー! 痛ぇ! ちょ……どんどん寒くなってきてんぞ!? 発電してる奴いるだろ、止めてくれぇ!』
 冷蔵庫から男の声が聞こえるが女性陣は皆気にもしていなかった。頬を掻き、ツィーウッドが蓋を開けると、無理矢理冷蔵庫に押し込まれた男の尻が見えていた。
「お前……なんか、楽しそうだな」
「ぜんっぜん楽しくねーよっ! 出せ! 出してください! ここにハマってんだよ!」
 怪訝な表情で引っ張り出そうとするツィーウッド。くたくたな様子で椅子から転げ落ちるエメラダ。そしてリズリエルは涼しい部屋のベッドで横になり、すやすやと寝息を立てていた。
「なんだこの収拾のつかない感じ」
 困惑した様子で呟くタングラム。結局涼しくなった部屋を全員で満喫できたのは僅かな時間だけであったが、装置の稼働は無事に検証する事が出来た。
「でもこれ私の部屋を涼しくするには人柱が必要って事がわかっただけで、暑さは何も解決してないし……」
 依頼は大成功である。勿論大成功である。腕を組み、何かに悩むタングラムを差し置き、依頼は幕を閉じるのであった……。

依頼結果

依頼成功度大成功
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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • うさぎのどうけし
    リズリエル・ュリウス(ka0233
    人間(紅)|16才|女性|疾影士
  • もふもふ もふもふ!
    ロジー・ビィ(ka0296
    エルフ|25才|女性|闘狩人
  • 《律》するは己が中の獣
    キール・スケルツォ(ka1798
    人間(蒼)|37才|男性|疾影士
  • 『機』に惹かれし森の民
    アルメイダ(ka2440
    エルフ|12才|女性|機導師
  • 風と炎の使い手
    エメラダ・Y・エレメンツ(ka2605
    エルフ|14才|女性|魔術師
  • 誇り高きアルティフェクス
    ツィーウッド・フェールアイゼン(ka2773
    エルフ|35才|男性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼相談用
アルメイダ(ka2440
エルフ|12才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/08/11 08:44:37