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  • 龍奏

【闇光】ダイヤモンドダスト・マーチ

マスター:のどか

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2016/02/01 19:00
完成日
2016/02/12 19:00

みんなの思い出

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オープニング


 ――それは奇跡であった。
 北伐作戦により大損害を受けた連合軍だが、暴食王ハヴァマールの撃退は歪虚の軍勢にも大きな打撃を与えていた。
 少なくともあの不死王と不死の軍勢は大きく北へ撤退した筈。でなければ“あり得ない”。
 帝国が辺境に対する誤った圧力を認めパシュパティ条約が結ばれる事になり、その調停役としてナディア・ドラゴネッティが辺境へ赴いたのも、全ては北伐戦があってこそ。
「命懸けの挑戦が偶然にも重なって作られる未来。いや……偶然ではないな。これも“宿業”という事かの」
 聖地リタ・ティト。嘗て白龍の座したその場所に立つナディアの足元には大きな魔法陣が描かれている。
「この作戦に二度目はない。一発限りの奥の手じゃ。おぬしらの双肩に、多くの仲間たちの運命がかかっておる」
 足元から立ち上る光に照らされるハンターたちへと振り返り、ナディアはその腕を振るう。
「征くのじゃ、勇者たちよ! 我が主たる青龍との契約を守るため、今こそ“北へ”――!」


「――北へもう一度攻めるんですか!?」
 オフィスに於いて、ナディアから依頼斡旋の指示を受けた受付嬢:ルミ・ヘヴンズドア(kz0060)は文字通り目を丸くして、彼女に食い掛かるように攻め寄って居た。
「若干語弊はあるが、その認識で相違無い。ただし、目指すのは先の戦いよりももっともっと北の方になるがのぅ」
「信じられませんよ。あんなにこっぴどくやられたって言うのに……」
 あれだけの犠牲を出し、損害を出し、ようやく終着した北伐作戦の矢先。
 休む間も無く発令されたその作戦案に、呆れた様子で吐き捨てたルミ。
 そんな彼女をナディアは「まぁよく聞け」と優しく宥める。
「危険は重々承知じゃ。じゃが、その危険の先に助けを待つ人々が……わらわの祖国がそこにある。そのためにわらわもその命を捧げる覚悟じゃ」
 強い意志を持って語るナディア。
 小さい背に背負った大きな責務。
 その胸に秘めた覚悟が、煌々と瞳の奥に宿って見えた。
「言っておきますけど……ハンターさんを送り出すのはルミちゃんの役目なんですからね。送り出した一人一人の顔を、声を、私は覚えているんです」
「……辛い役目を押し付けているのは分かっておる」
 ルミの言いたい事をナディア自身も良く分かっていた。
 すべて覚えている。
 だからこそ、その数が減って帰って来るなんてこと――いや、そもそも“誰も帰って来ない”という事すらも今回は覚悟しなければならないのだ。
「分かりました。他でもない総長の頼みですから……斡旋任務、お引き受けします」
「すまぬ、恩に着るぞ」
 そう返事をして、ルミは静かにその瞼を閉じた。
 脳裏に過るのは記憶に新しいあの熱く、激しい、フレーベルニンゲンの戦い。
 皆の心が一つになったステージでの歌舞と、それによって命を救われた存在。
「ルミちゃんだって……世界を救いたいんだから――」
 まるで自分に言い聞かせるように、ルミは静かにそう口走っていた。


 北方へ転移したハンター達の前に広がるのはどこまでも続く雪原だった。
 北伐よりは酷くない、うっすらと積もったそれであったが……代わりに汚染区域内で草木も生えぬだだっ広い荒野の雪景色に、まるで自分たちがこの世界で唯一の存在となってしまったかのような、そんな孤独感、そして疎外感を一心に味わっていた。
 そんな哀愁も束の間、空を切って飛来した物体にハンター達は咄嗟に飛び退いていた。
 足元の地面にその柄を撓らせて突き刺さる槍。
 同時にガサガサと、雪を踏みしめるような足音と共にその者たちは姿を現した。
 ヒトの身体にトカゲの頭、太く強靭な尻尾。
 口から真っ赤な舌を覗かせて全身を照り輝く鱗で覆われた異形の主。
 リザードマン――トカゲ人間とはまさしく、彼らの事であった。
 北方王国のものか、刀剣や盾で武装した彼らはにじり寄るようにハンター達との距離を詰めていく。
 否――迫る存在はそれだけではない。
 雲の切れ間から僅かに降り注ぐ日の光を遮り、空を飛び交う翼の主達。
 リザードマン達のそれとはまた違う、雪原を、遺跡の石畳を這うような重く、長い不快音。
 遺跡に巣くっていた者達か。
 たどり着いた先はまさしく、敵の真っただ中であった。
 同行したスメラギ達は既に転移門開通の準備に取り掛かっている。
 この地は北方侵攻の橋頭保。
 ここだけは何としても、死守しなければならない。
 意を決したかのようにその強靭な脚で雪原を蹴り上げ、ハンター達へと飛びかかるリザードマン達。
 覚悟を決める間も無く――いや、ナディアの術で転移したその時からとうに覚悟などできている。
 北の地への反撃は、ここから始まるのだ――

リプレイ本文


 雪上にきらめいた片刃の剣を大きな斧槍の穂が捉えていた。
 かち合った刃同士は鈍い金属音を立てて空中で噛み合い、拮抗する。
「威勢だけは買ってやる。威勢だけはなぁ!」
 鬱憤を晴らすように啖呵を切ったボルディア・コンフラムス(ka0796)はそのまま力任せにリザードマンの剣を眼下へと押さえ込む。
 そうしてがら空きとなった敵の胸板へとジャック・エルギン(ka1522)の放った矢が突き立っていた。
「出迎えごくろーさんってとこだな」
「ボルディアさん、開幕の消耗が一番の鍵になりますからあまり出過ぎないでくださいね」
「分かってるって! ただ、少しくらいは発散させてくれたって罰は当たらねぇだろう?」
 声を掛ける白神 霧華(ka0915)の言葉にボルディアはブンと斧槍を振り回すと愛馬の手綱を小さく振る。
「一先ず敵の少ない方へ! 目算では……東の方に!」
 周囲の状況を見渡してキヅカ・リク(ka0038)は大きな手振りで進むべき道を指差す。
 行く手を阻む蜥蜴人間や空を追おう翼の竜達の存在が気持ちを逸らせるも、今は押さえて、敵の第1陣の中を突っ切るのだ。
「んー、壮観だね。それ、全て倒してしまっていいんだろう?」
「んんー、ちょっとキツそうですけどそれが仕事ですしね。がんばりますか!」
 吟味するように数多の敵勢を見渡したHolmes(ka3813)に、ナナセ・ウルヴァナ(ka5497)が気合を入れなおすように答えていた。
 その答えを聞いてHolmesは含んだような笑みを浮かべると、背負う大鎌の柄を片手で軽くなでやる。
「楽しい楽しい片道切符の殲滅戦だ。なに、気負う事はないよ。『必要な物は揃っている』のだからね」
 言いながら大きく振りやった大鎌にずんばらりと切り捨てられたリザードマンの肉片が、純白の大地に降り注いだ。
「ふむ、我々への食いつきは良いようだな。既に汚染し尽くした場所で新鮮な血肉に飢えていたのか……いや、そもそも歪虚にとって我々は餌でも何でも無いのだがね」
 猛進するハンター達の後を一心不乱に追いかける敵勢を見やり、久延毘 大二郎(ka1771)は思案するように口元を押さえる。
「こちらの策に掛かっている内は良いでしょう。少なくともアレは雑魔の類。そう知恵が働くようにも見えません。本能のままに数多の生を脅かす、それだけの存在です」
 大二郎の疑念を払拭するかのように強い口調で語るメリエ・フリョーシカ(ka1991)。
「下手に知恵を持つものよりもある種、より歪虚の本質に近い。それだけにこうも数が多ければそれだけタチが悪い」
「それに関しては全く持って同意せざるを得ないな」
 答え、大二郎は辺りの遺跡を一周するように見渡していた。
「これだけ興味深い遺跡がありながら、『文化』を知らぬ奴らにはそれを尊ぶ意識もありはしない。たとえ危険を顧みても、そのような不届き者を許せるほど私も自分の知識に満足はしていない」
 口にしながら適度に牽制するように、後方へ向かって拳銃の引き金を絞る。
「メリエ君はどうだ。滅亡国家からのSOS――これだけの謎に包まれた大地を前にして」
「わたしは――」
 大二郎の問いに、自身の中に固まっていた想いが募るように胸の内へとこみ上がる。
「そろそろ撃って出ます! 後衛の皆は準備を!」
 戦場の推移を推し量っていたリクが叫ぶ。
 ハンター達は愛騎を一挙に反転させると、押し寄せる敵勢を前にして一拍、その気概を溜め込んだ。
「――わたしは、陛下の悲願を成し遂げるのみです。例えその戦場に陛下がいらっしゃらなかったとしても」
 騎兵達は薄く積もった雪を巻き上げながら、一斉に真正面から敵の軍勢へと突貫を仕掛けていた。
 地を駆けるリザードマンよりも速く、空を覆うワイバーンの群れがハンター達の間合いへと迫る。
 拳銃と入れ違いにワンドを引き抜いた大二郎がその行く手を覆うように紫雲を放出。
 空が青白い雲に覆われる。
 ワイバーン達はそれを物ともせずに、逆に大きな翼をはためかせてそれをかき消すようにして、雲の中からその巨体をぬらりと現していた。
「効けば儲けものだったが、やはり歪虚は歪虚か」
「問題ありません! 力ずくで降りてきて貰いましょうか!」
 引き絞ったナナセの弓が放射、はるか上空へと撃ち放たれ、爆ぜる。
 空を支配する自身よりもなお上空からの攻撃に、ワイバーンは僅かに怯みを見せた。
「アレで墜ちねぇか、かてぇヤツだな……!」
 追い撃つように弓を番え、放つジャック。
 リクのアサルトライフルの銃火もまた、同一の個体へと集中される。
「十三魔のガルドブルムも沢山のハンター達が強固な鱗に苦戦していた……これが《強欲》!」
 集中砲火を前に健在なその堅牢なその体躯を前に、思わず奥歯を噛み締めるリク。
 敵は空の支配者――壁となるべき前衛の頭上を軽々と飛び越えて、翼を広げたその大きな口元に赤い炎がチラついた。
「――散開ッ!」
 誰が叫んだのかも分からない。
 咄嗟に急旋回するハンター達の陣の真っ只中に、赤く燃え盛るワイバーンのブレスが吹き付けられていた。
「皆さん、無事ですか!?」
 己を守ってくれた盾を押しのけ霧華が叫ぶ。
 同時に周囲を見渡して、業火の晴れた雪原に全員の姿を認め一安心。
「火傷程度だ、問題ねぇ!」
 衣服に燃え移った炎を手のひらで叩き消しながら、ボルディアは上空の敵を見据える。
 ワイバーンは今の1体だけではない。
 既に数多の竜が空を埋め尽くすように上空を回遊し、ハンター達に狙いを定めていたのだ。
「舌なめずりたぁいい度胸してるじゃねぇか……纏めて相手になるぜ、掛かって来いやぁ!」
 啖呵を切るように、上空へ向かって雄叫びを上げるボルディア。
 応えるように飛び掛ったリザードマンを返しの刃で切り飛ばし、そのまま柄を滑るように石突の末端を握り直して空のワイバーンを捉える。
 遠心力で振り切られた一刀は集中砲火で剥げた鱗の隙間に吐き込まれ、力任せに翼を根元から斬り飛ばす。
 羽ばたく力を失って落下する巨体を背に、ボルディアの咆哮はなおも戦場に轟いていた。
「中々に絶望的――機知に富んだ状況じゃないか」
 眼前のリザードマンを斬り伏せながら、数多の敵に囲まれなお、Holmesはふふんと鼻を鳴らして笑っていた。
 不意に横っ面から飛来した黒色の炎が彼女の腕を包み込む。
 熱を持つことが無く痛みも感じない、不思議な炎を腕に宿した彼女は、不意にガクリと身体の力が大きく抜けてゆくのを感じる。
「ほほう……これはこれは」
 視線の先に捉えた存在――指先に黒炎をチラつかせる半人半蛇の怪物・ナーガ。
 重汚染区域の影響を直に身体に流し込まれているような感覚を前にして、一筋の汗がその頬を伝う。
「ホームズさん!」
「なに、心配はいらないよ。風邪を引いたようなものさ」
 眼前の敵の圧力を受け止めながら叫んだ霧華に、Holmesはあくまであっけらかんとして答える。
 押し返し、鉄糸で絡め取って八つ裂いた霧華は改めて新たに現れた敵の姿を視線の先に捉えた。
「風邪……汚染の影響ですか。それも局所的に――」
 言うが否や、伸ばした鉄糸の先がナーガの腕を弾くように放たれる。
 ナーガはその一撃をぬるりと交わすと、指先に灯した黒炎をゆったりとした動きで撃ち放った。
 受け止めた霧華の盾が黒炎に包まれ、同時にガクリと腕の力が抜けるのを感じる。
 そこに飛び掛ったリザードマン達を前にして一時、覚悟を決めた霧華であったが、不意に視界を覆うように広がった爆炎が彼等もろとも眼前の敵を撃ち滅ぼしていた。
「すまない、私の術は乱戦に少々不向きなものでね。余波に巻き込まれてはいないだろうか?」
「いえ、助かりました……!」
 言いながらも既に次弾を頭上に練り上げる大二郎の姿を背に、霧華は震える腕に文字通り鞭打って今一度敵勢の真正面へとその意識を突き動かすのであった。


 戦乱に惹かれて周辺の敵が集まるにつれ、乱戦の色はより濃く染まり始めていた。
 数のリザードマン、空のワイバーン、汚染のナーガと、己の力を行使して不慣れなハンターを容赦なく攻め立てる雑魔達。
 しかしながらハンター達も歴戦の猛者だ。
 多勢を相手に出来る者はナーガを巻き込みながらリザードマンを。
 それ以外は堅牢な鱗が相手であっても1体に的を絞って集中攻撃を浴びせる事で、確実に1体ずつその数を減らして行く。
「3・7・9・10時の方向にそれぞれナーガ! あと、後方からリザードマンの援軍が来てます! ワイバーンは周辺に居るので全部みたいだ!」
 ブーツからマテリアル光を靡かせて、上空に舞い上がったリクが地上の仲間達へ向かって叫ぶ。
 勢いを付けて足の鉤爪を振るったワイバーンの一撃をアクロバットにかわすと、そのまま至近距離で翼の付け根にライフルの銃弾を叩き込んでいた。
「了解! ナーガは任せるよ! 私の獲物はあくまで――」
 引き絞った矢が銀弧のように揺らめき、金切り音を発して寒気を斬り裂いた。
 流星のような一矢はワイバーンの翼を貫いて、矢傷を受けたそれは見る見るうちに凍り付いてゆく。
 そうして翼の異常により十分な浮力を得られなくなったワイバーンは、数体のリザードマンを巻き込んで大地に落下するのである。
「ひゅう、大した腕前だな」
 口笛ひと吹き、剣を手にしたジャックは眼前のリザードマン達を纏めてなぎ払った。
 飛来した投擲槍を剣で打ち弾き、代わりに番えた弓矢で返しの一撃を見舞う。
「強欲だか知らねぇけどよ、生きる欲にかけちゃ人間サマだって負けちゃいねーさ!」
 ――生きて帰る。
 出立の際に皆で1つに決めた事。
 退路の無い進軍……それでも犬死するつもりは毛頭無い。
 勝って、生きて、帰るのだ。
「そう言うこった! そんだけ頭数揃えて人間一人も倒せねぇのか? あぁん!?」
 大きく振るった一撃でナーガの首を切り落としたボルディア。
 血泡の混じった乾いた断末魔を上げて崩れて行くその先で、別の個体が黒炎を指先に灯す。
 放たれたそれを咄嗟に斧槍で受け止めるも、柄を伝って流れた汚染がボルディアの身体を蝕んでゆく。
 僅かに振り遅れた腕。
 その一瞬の隙に、数多のリザードマンの刃が彼女の身に翻っていた。
 弾ける鮮血。
 全身を伝う痛覚。
 それでも彼女は、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
「まったく…・・・人類の天敵が聞いて呆れるぜ」
 全身を駆け巡ったマテリアルが体中の傷口を覆う。
 止血し、自然治癒力を活性化させ、傷口がゆっくりと塞がり始める。
 与えたはずのダメージが目の前で回復し始め、群がったリザードマン達は思わず後ずさっていた。
 その引け腰を、ボルディアの斧槍が容赦なく叩き潰す。
「ビビッってンなら帰ってボスに伝えろよ。人間は強すぎてボク達じゃ勝てませんでしたってなぁ!」
 何度目か分からない彼女の雄叫びが戦場に轟く。
「あの回復力、まったく敵には回したく無いものだな」
 その圧倒的治癒力に任せた敵陣内での単騎乱舞を尻目に、大二郎は思わず引きつった笑みを浮かべる。
 同時に放った紫電がボルディアの上空に迫るワイバーンの四肢を貫き、肉の焼け焦げた臭いを発しながら戦場へと落下する。
 すぐさま戦馬で駆けたメリエが苦痛に悶えるその長い首を断ち切って息の根を止めていた。
 そんな彼女を狙いナーガの黒炎がチラつくも、彼女はそれを太刀の刀身で受け止めて、蝕む汚染の中、それでも勢い任せに返しの刃を閃かせる。
 真っ二つになって地面に転がった敵を蹄が踏みつけ、メリエは声を張り上げた。
「どうした強欲! 執念が足りんぞ!」
 彼女が今ここに立っているのはそう――彼女自身の執念だ。
 忠誠を誓いし者が床に伏せた今、次に『目を覚ました』時、胸を張って傅けるように……彼女自身の意地が、そこにはあった。
「我は帝国の剣、陛下の剣、駆ける走狗。噛み千切られたい奴から来るがいい!」
 だからこそ彼女は吼える。
 自分が生きている証を、ここに立てるために。
(そうだ……僕は約束をしたんだ。生きて必ず帰るって)
 戦場に渦巻く意志に当てられて、リクは今一度大事な記憶を呼び起こしていた。
 直前に別れた、大事な人……その人が、最後に送ってくれた1つの言葉。
「今ここには約束が、祈りが、ある……だからこの瞬間…乗り越えて見せる!」
 放つマテリアル光が上空のワイバーンを纏めて貫き、ぼとぼとと戦場に大きな影が落下してゆく。
 祈りに、約束に答えることが覚悟。
 ならば自分の覚悟は――
 

「――戦域に敵影無し。どうやら全部、倒しきったみたいです」
 上空から見下ろすリクの言葉に、ハンター達は大きな息を吐いていた。
 思ったより手間取ったせいか、遺跡周辺の殆どの雑魔が乱戦のこの戦場に合流。
 残りも遺跡内のハンター達の存在に気づき、そちらに向かってしまったのだろう。
 念のため周囲を回って哨戒する必要はあるが、こちらはこの人数だ。
 数体単位の歪虚相手であれば苦戦する事もあるまい。
「『正面から猪突猛進するのが、最善の策ということもある』……んー、やはり良い言葉だ」
 結果として正面突破だけであらかたの敵を片付ける事になった状況を前に、Holmesが吟味するような笑みを浮かべていた。
「随分と、古びたものですね……手入れはされているみたいですが」
 既に雑魔が霧散した先、残された刀剣類を手に取り、霧華はぽつりと呟いていた。
 おそらく北方王国の盗遺品を使ったものであろうそれらの武器は、ところどころがさび付き、また傷んでいるように見える。
「何百年も前に滅んだとされた遺品にしては状態が良いな。歪虚も最低限の手入れができる脳はあるのか、それとも比較的近年に作られたものなのか……」
 覗きこむようにして見た限りの情報で仮説を立てる大二郎。
 少なくとも今回のSOS信号を送って来た人物がこの地には居るハズだ。
 そうであれば、刀剣1つにしても様々な可能性が生まれるというもの。
「ふと思ったんだけどよ……ハンターズソサエティの設立と、北方王国の滅亡は同時期なんだよな?」
 不意に、ジャックがそんな事を呟いていた。
 厳密に言えば300年前の大戦を受けて設立されたとされているハンターズソサエティ。
「故郷を追われた青龍の血族がいつか故郷に帰る望みを繋ぐために組織を作り上げた……なんてロマンに過ぎるかね」
 自問するように首を捻って口にしたジャックの言葉に、ナナセは静かに頷き返していた。
「そういうの、素敵だと思います。真実はどうあれ、こうして今、北の世界と再び繋がろうとしているんですから」
 ジャックの推測は勿論、推測の域を出るものではない。
 それでも北への架け橋が出来た今、クリムゾンウェストの新たな歴史が紐解かれてゆく事もまた、確かな事実としてそこにあることだろう。

依頼結果

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MVP一覧

  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムスka0796

重体一覧

参加者一覧

  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • 不屈の鬼神
    白神 霧華(ka0915
    人間(蒼)|17才|女性|闘狩人
  • 未来を示す羅針儀
    ジャック・エルギン(ka1522
    人間(紅)|20才|男性|闘狩人
  • 飽くなき探求者
    久延毘 大二郎(ka1771
    人間(蒼)|22才|男性|魔術師
  • 強者
    メリエ・フリョーシカ(ka1991
    人間(紅)|17才|女性|闘狩人
  • 唯一つ、その名を
    Holmes(ka3813
    ドワーフ|8才|女性|霊闘士
  • Sagittarius
    ナナセ・ウルヴァナ(ka5497
    人間(紅)|22才|女性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
鬼塚 陸(ka0038
人間(リアルブルー)|22才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2016/01/31 23:06:42
アイコン ルミちゃんに質問!
ボルディア・コンフラムス(ka0796
人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2016/02/01 17:11:16
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/01/27 17:43:49