黒衣の妖魔騎士

マスター:草なぎ

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~20人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/02/14 19:00
完成日
2016/02/16 02:51

みんなの思い出

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オープニング

 パチッ!
 暖炉の薪が弾けた。窓ガラスから日が差し込んでいる。テーブルに向かって、村長のジルダンは日記帳に向かってペンを走らせていた。

 ……神よ。あなたが光だとすれば歪虚はまさに闇。光あれば闇あり。それは人の心にも住まうもの。神よ。あなたが光であれば、あのような異形の邪悪な闇はどこから生まれ出でたのでしょうか? 造物主がいるならば、等しく光と闇を生み出したのかもしれない。ですが、我々のようななす術の無い人間にとって、闇の存在はあまりにも強大で、畏怖するしかない。抗う術を持たない無力な人間にとって、歪虚は余りも過酷な現実です。神よ。光を信じるしかない私たちをお救い下さい。この余りにも非情な現実に立ち向かう勇気と希望を与えて下さい。私たちは救いを求めるしかないのです。神よ……。

「お父様」
 ジルダンの娘、サラが入って来た。ジルダンはペンを止めた。
「歪虚は」
「去っていきました。騎士と兵士の方たちが、倒して下さいました。みなさんをご案内しました」
「そうか」
 ジルダンは立ち上がった。サラが脇に引いて道を開けると、甲冑を身に付けた騎士と数人の武装した兵士達が姿を見せた。騎士は兜を小脇に抱えていた。金髪の巡回騎士の名をダレン卿と言った。エンフォーサーである。兵士達は訓練された一般人である。サー・ダレンは事情を説明し、村を襲っていた歪虚の群れは排除したと伝えた。
「安心なさい。下級雑魔の群れであった」
「ありがとうございます」
 ここ王国西方リベルタースは歪虚との最前線である。雑魔の出現にはいとまがない。
「すまぬな。民には苦労を掛ける」
 ダレンはジルダンの肩に手を置き、兵を伴って踵を返した。サラは深々とお辞儀した。騎士たちを見送ったサラは、父に言った。
「いつの日か、きっとこの地にも光が戻ります……」

 騎乗したダレン卿は村を出て行くところだった。と、前方から、黒い異形が近づいて来るのを確認した。その歪虚は、青白いオーラを纏っていて、黒い馬に乗って黒い外套と甲冑を身に付けていた。ダレン卿は兵士達に合図を送った。
「撃て!」
 十数発の矢弾が黒衣の歪虚を撃った。しかし、矢は弾かれて地面に落ちた。兵士達の顔に恐怖が走る。
「妖魔か」
 ダレン卿は抜刀すると、面甲を下ろして突進した。加速するダレン卿は剣をフルスイングした。黒衣の妖魔騎士は、軽く腕を持ち上げると、腰の円筒状の柄から光剣を出してダレン卿の剣の刀身を真っ二つに切り落とした。
「諦めろ。貴様とは力が違うのだ人間。死ね。恐れとともに神のもとへ行け」
「ふざけるな!」
 ダレン卿に逃げる選択は無かった。もう一本のショートソードを抜いた。ダレン卿はショートソードを突き出した。妖魔はその腕を掴んだ。ダレン卿が万力を込めても、妖魔の手はピクリともしなかった。直後、妖魔の光剣が跳ね上がり、ダレン卿の右腕を切り落とした。ダレン卿は鞍上から転げ落ちた。兵士達の悲鳴が交錯する。だが兵士達は勇敢だった。何人かが妖魔に突進し、残りでダレン卿との間に隊列を組んで壁を作った。妖魔は煩わしげに人語ではない言葉で馬に命じた。すると、黒い馬は口から黒い炎を吹き出した。兵士達は焼き尽くされた。断末魔の声が響き渡る。

 その頃、村の四方から異変を知らせる声がジルダンのもとへもたらされていた。黒衣の妖魔騎士。そして、四方向から向かってくる四体の黒い鎧姿の歪虚騎兵。ジルダンは守りを固めるように指示を飛ばした。
「お父様!」
 サラが飛び込んで来る。
「ダレン卿が!」
「分かっておる」
「サラ!」
 そこへ、武器を手にした若者が飛び込んで来た。サラの幼馴染御、チェスターである。チェスターはサラの無事を確認して、ジルダンにハンターへの依頼を提案する。
「分かっている。それしかないようだ」
「ウィニッグに行かせましょう。あいつは足が速い。体力もある。俺は門を守ります! サラ! 女や子供たちを避難させてくれ!」
「はい!」
 村中がパニックになる中、自警団の男達は防備体制を敷いて村の門を閉ざした。

 黒い鎧に外衣をまっとた歪虚騎兵は、無言で閉ざされた門を見ていた。門の向こうには自警団の男たちが守りを固めていた。歪虚はただ馬を前進させた。木製の丸太門が軋むような悲鳴を上げる。
「来るぞ!」
 チェスターは門を押さえた。
 ばりばりばりばり……と、門が裂けて行く。

 サラは、村の女子供老人などを教会に集めて男達の無事を祈っていた。
「サラさん!」
 駆け寄ってきたのは、村の女性。
「シャリーがいないんです! 目を離したすきに姿が見えなくなって。あの子もしかして……人形を取りに家に戻ったのかも。泣いていたから。どうしよう!」
 サラは呼吸を整えた。
「私が行きます」
 サラは駆け出した。

 ウィニッグは全力で最短のハンターズソサエティに向かっていた。
「みんな……何とか、持ち堪えてくれ!」
 脱出に成功したウィニッグは、走り続けた。ハンターズソサエティに辿り着く頃には、意識を失ってしまった。
「歪虚が……歪虚が……」
 ハンターたちは、うなされるベッドの上のウィニッグを見やり、彼の意識の回復を待つのだった。

リプレイ本文

 大ガラスの羽飾りが風になびく。オウカ・レンヴォルト(ka0301)が被っているレイヴンクラウン。魔導バイク法輪「精霊馬」を走らせるオウカ。無粋な歪虚もいたものだな! マッシュ・アクラシス(ka0771)が走らせているのは王国では赤の隊の騎馬にも採用されている騎乗馬ゴースロン。禍々しきはマッシュがまとう異形の甲冑。魔獣装甲「タイラント」。戦馬を走らせる巨人はバルバロス(ka2119)だ。当世具足「悪鬼羅刹」をの鬼面を纏い、ギガースアックスを装備して戦馬を走らせるその姿は見まごうことなきクリムゾンウェストの狂戦士。白雪のスノーホワイトメイルの上に赤いクルセイダーローブを身につけて馬上の人となっているのはクローディア(ka3392)。銀瞳橙髪の十六歳の美少女だ。黒いハンチング帽から流れる橙のロングヘアが美しい。その横を走り抜けるは魔導バイクの美少女シュメルツ(ka4367)。シュテルプリヒの少女。戦士の少女はトゥシューズ「パシオン」やグレートマスカレードやフェザーイヤリングなど、女性らしい細やかなファッションも戦場で着こなしている。馬を走らせる緑瞳茶髪の女性はセツナ・ウリヤノヴァ(ka5645)。ソードダンサーだ。東方の剣士であるセツナがまとうは天儀戦装束。侍がまとう上衣と袴から為る。そして、腰には刀と小太刀を帯刀している。まさにリアルブルーの侍が蘇ったようである。符術師の黒耀 (ka5677)は外見年齢二十五歳の女性である。黒髪黒瞳。チャイナドレスに身を包んだ妖艶な姿であり、顔には神獣白狐を模した面を付けている。ゴースロンを走らせ村への道を急いでいる。そしてまた魔導バイクを走らせる青年がいる。輝羽・零次(ka5974)。リアルブルーからやって来た格闘士である。黒髪黒瞳の活発な印象を与える青年はまだ己の行く先を探し求めていた。クリムゾンウェストに来て間もないハンターである。天儀戦装束に風衣「天元」を身に付けた姿は、リアルブルーの活劇コミック舵天照に登場する主人公の一人、蒼空の天元征四郎に影響されたのかもしれない。
 八人のハンターたちは意識を取り戻したウィニッグから情報を聞き出し、一刻の猶予もないことを確認すると、王国西方リベルタースのハンターズソサエティに飛んだ。
 こうしているうちにも村は妖魔たちに壊滅させられているかもしれないのだ。

 見えた。村が。黒炎が立ち上り、火の手が上がっている。すでに歪虚は村の中へ一部侵入を開始しているのか。激しい喧騒が聞こえてくる。見えてくるのは、村を取り囲む壁の一部が無残に破壊され、燃え盛る炎の様子。
 逃げ出てきた村人は、手を伸ばしていたが、その手は落ちた。ハンターたちは散開した。

 オウカはバイクを停車させて破壊された防壁から村の中へ入った。すでに村の中は惨状である。死体が転がっている。
 オウカは村人の息を確認すると、首を振って立ち上がった。歩き出す。
 そこで、オウカはまだ息のある村人を発見した。若者だった。
「おい、大丈夫……かっ、と」
 オウカは傷だらけの若者の上体を起こした。
「サラを……女子供を助けてくれ……歪虚が教会に……」
「教会はどこにある」
「村の……中心だ」
「お前、名は?」
「チェスター……、頼……む……サラを……」
 チェスターは息絶えた。オウカはチェスターを寝かせると、周囲を見渡し、生き残りがいないか確認する。村人が一人姿を見せた。男だ。男はオウカに駆け寄ってきた。
 オウカは自身がハンターであること、すでに自分を含めて八人のハンターが到着していることを告げる。
「そうか……て、おい、チェスター! 畜生! サラさんに何て言えばいいんだよ!」
 男が絶叫するのに、オウカは村人にサラとは何者かを問うた。
「こいつの幼馴染で……村長の娘さんだ。馬鹿野郎……サラさんを置いて行きやがって……」
「お前の名前は」
「俺はバロマ。自警団だ」
「バロマ、お前にトランシーバーを渡しておく。これは無線で通信が出来る道具だ。ハンターと話が出来る。村の中の状況を知らせてくれ。無理のない程度で良い」
「分かった。協力はする」
 バロマは無線機を手に取ると、オウカを見返した。
「あんたはどうするんだハンター」
「俺は教会へ向かったという歪虚を止める。頼むぞ」
 オウカはバロマの肩を叩くと、バイクに乗って教会へ向かった。

 マッシュと黒耀は手綱を引いて馬を止めた。目的の妖魔騎士は村の外にいた。光剣を手に、防壁の前に停止して、沈黙を保っていた。
「こちらマッシュ。村の外で妖魔騎士を発見した。これから黒耀さんと足止めに入る」
 仲間たちから「了解」の返事が来る。
「……神などと、とうにくたばっていると思ったのですが、禿鷹の如くが神を語るなど滑稽ですね。骸でも摘んでその気になりましたか?」
 マッシュが妖魔騎士に侮蔑の言葉をぶつけると、歪虚は微かに身を震わせ笑ったように見えた。歪虚はマッシュの方に軍馬の向きを変えた。
「恐れているのか人間。己の中の骸に。お前の中にも骸が見えるぞ」
「禿鷹が戯言を。誰が骸だ。その言葉、お前には到底理解出来まいが。歪虚」
「骸は骸だ」
 そこで黒耀がマッシュに言った。
「マッシュ様、地縛符を今からマッシュ様の前に設置します。踏み込まぬように気を付けて下さい。妖魔の引き付けをお願いします」
「了解しました」
「トラップカード!」
 黒耀は地面に符を解き放った。
「来い! 骸が! 歪虚! 私が怖いか! 私はマッシュ・アクラシス! これから貴様を無に帰す者だ! 無から生まれ出た者は無に還るがいい」
 マッシュは妖魔を挑発した。これは妖魔に幾ばくかの効果を示した。
「言うものだな人間が。言葉で言うほど容易くはあるまい。私を殺すのなは!」
 妖魔騎士は突進して来た。そして見事に地縛符にはまった。泥が絡みついて歪虚軍馬の動きを減じた。
「ふん、甘いな。そこは既にデュエルフィールドだ!」
 黒耀は続いて風雷陣を解き放つ。
「マジックカード風雷陣発動!」
 三本の稲妻が妖魔を射抜く。妖魔と軍馬を同時攻撃。妖魔は青白いオーラを体にまとった。稲妻の衝撃で妖魔は苛立たしげなうめき声を上げた。
 マッシュは突進した。ゴースロンを加速させそのまま妖魔に激突。サーベル「ナイトメア」が妖魔騎士の甲冑を貫いた。妖魔騎士は罵り声を上げて態勢を立て直すと、光剣を閃かせ、四連撃でマッシュを切り裂いた。マッシュは後退し、傷の深さを確認する。
「強い……」
「言ったはずだ! おのれ! 何だこの泥は!」
 妖魔は軍馬に命じ、泥を振り払う。
 黒耀がマジックカード風雷陣を連打して牽制しつつ、マッシュは妖魔騎士の側面に回り込んで行く。

 クローディアは妖魔騎士をマッシュらに任せ、まずダレン卿のもとへ向かった。卿のことが心に引っ掛かっていた。
「妖魔騎士が卿のもとを離れて……兵士達はどうなったの?」
 そして彼女は発見した。ダレン卿たちの成れの果てを。ダレン卿らしき騎士は地面に転がり、兵士達も地面に転がっていた。
「みんな! ダレン卿!」
 クローディアは戦馬から飛び降り兵士に駆け寄った。ほとんどが息絶えていた。何人かが生きている。ダレン卿は……。
 クローディアは、ダレン卿の姿を見下ろした。右腕を失い、甲冑は焼け焦げていた。そして沢山の刺し傷や切り傷があった。クローディアはそっとダレン卿の面甲を開けた。卿は既に事切れていて、そのまぶたが開くことは無かった。
「…………」
 クローディアは立ち上がると、ダレン卿の亡骸に敬礼した。
「仇は取る。卿。安心されよ。民は守り抜く」
 クローディアは生き残った兵士達に言葉を掛けると、トランシーバーで連絡を取り、歪虚のもとへ向かう。

 シュメルツと零次は激戦の末に歪虚騎兵を片付けていた。シュメルツがワイヤーウィップで歪虚騎馬を拘束し、零次が歪虚兵士を飛翔撃で吹き飛ばした。騎馬はそのまま寸断して止めを刺したが、兵隊雑魔とは激戦だった。激しい近接戦闘は出血をもたらす。どうにかシュメルツが雑魔の腕を切断すると、暴れる歪虚を零次は投げ飛ばした。シュメルツが歪虚をワイヤーで拘束し、零次が何度も拳を撃ち込む。歪虚兵士の激しい抵抗で二人は切られ、打たれ、刺された。シュメルツは歪虚の腕を切り落とし、零次は遂に敵兵の肉体に風穴を開けた。歪虚は遂に倒れる。
「わたしは、ハンター。みんな、大丈夫、だから。立ち上がって」
 自警団の男達は、歪虚騎兵をずたずたにした血まみれのシュメルツと零次を畏敬の眼差しで見ていた。男達は立ち上がった。
「零次だ。こっちは片付けた。他はどうなってる?」
 トランシーバーで連絡を取る。オウカが教会に向かったこと、マッシュと黒耀が妖魔騎士と交戦中。そしてクローディアからダレン卿の訃報を聞かされた。まだ破られていない門もあることを確認したシュメルツと零次は自警団とともに走りだした。
 その外ではセツナが戦っているという。連絡を受けたシュメルツは、門の内側で自警団の男たちを鼓舞した。
「止めれ、なくて、いい。動きを、制限、できれば。騎兵、なんて、怖くない」
 シュメルツは付いてきた自警団の男達にバリケードを築くように告げる。零次は門の隙間からセツナの様子を確認した。
 セツナは馬から降りていた。零次はセツナが何をしようとしているのか分からなかった。セツナは納刀状態の刀を目の前に横一文字にして構え、歪虚騎兵との間合いを開けていた。鞘から上の視界を馬の上の騎兵部分だけにして集中していたのだ。歪虚騎兵は、この新たな敵の出現に、向きを変え、セツナに向かって馬を走らせた。
「参りましょうか。来い! 歪虚!」
 セツナは突進してくる歪虚騎兵に対し、居合の構えで半身態勢を取った。歪虚騎兵が咆哮して突撃してくる。それを半身で回避すると、反転を試みる歪虚騎兵の騎馬に抜刀術を放った。騎馬はよろめき崩れ、歪虚兵士は地面に投げ出される。
「剣術の真価は馬上戦ではなく地上戦だと思っております。これで対等ですね?」
 歪虚兵士は人語ではない言葉で罵ると、ソニックブームを放ってきた。セツナは切り裂かれた。しかし、直後に反撃。疾風剣を打ち込んだ。刀身が歪虚兵士を貫く。そして反撃のスマッシュを受ける。セツナの足が崩れた。歪虚兵はセツナを蹴り飛ばした。セツナは転がって逃げると、呼吸を整え裂帛の気合とともに加速して紅蓮斬を繰り出した。歪虚兵は受けようとしたが、その剣を持った腕が宙を舞った。肉体も紅蓮の炎で切り裂かれ、歪虚は転がった。緑色の瞳が冷ややかに歪虚を見下ろすセツナ。
「苦しまぬように無に帰す。武士の情けです」
 セツナは歪虚兵の首を刎ねた。歪虚は崩れ落ちて動かなくなった。
 態勢を立て直した騎馬歪虚が暴走し、門へ突進していく。門を押さえていた男達は門ごと吹き飛ばされた。シュメルツは瞬脚とドッジダッシュで突撃を回避する。零次も吹っ飛んだ。騎馬歪虚はそのまま作成途中のバリケードへと自警団へ向かって突進する。男達は逃げ出した。騎馬歪虚は突っ込んだ。暴れる歪虚。
 シュメルツのワイヤーが騎馬歪虚に絡みつく。きりきりとワイヤーが暴れる騎馬歪虚に悲鳴を上げる。シュメルツはモーターのスイッチを入れた。やがて、ワイヤーが歪虚を締め付け、ばらばらに切り裂いた。
 トランシーバーで状況を確認するハンターたち。何でも女性と子供が門の近くで見つかったという。バロマからの連絡だった。セツナと零次は子供を助けに。シュメルツは妖魔騎士の方へ向かう。

「死亡扱いが解除されてから強敵との戦闘がなくてな。存分に打ち合える相手なら嬉しいのだがのう」
 狂戦士は冷静だった。バルバロス。狂戦士の心には、静寂がある。歪虚騎兵を確認すると、バルバロスは戦闘モードに入った。雄叫びを上げると、ギガースアックスを両手で振り回して戦馬を走らせた。
 門はすでに歪虚に破壊されている。バロマが連絡して来たのはここだった。零次とセツナがハンターであることを告げると、バロマは二人を女性と子供のところへ案内した。
「サラさん。ハンターが来てくれました」
 零次はサラのもとへ歩み寄った。
「なぜこんなところへ?」
「話している時間はありません。私たちを教会へ連れて行って下さい」
「教会は危ない。歪虚が門を破って向かったと連絡が。仲間が助けに行ってます」
 セツナは泣きじゃくる子供を抱き上げると、よしよしとなだめた。
「外の様子を見てくる」
 零次はバルバロスの様子を見に行った。
 相対する歪虚騎兵は加速した。激突する狂戦士と歪虚。打たれようが切りつけられようが、バルバロスはリジェネレーションで回復させつつお構いなしに歪虚騎兵を全力全壊で粉砕した。
「ぶるうううあああ!」
 バルバロスは勝ち鬨を上げて咆哮した。そしてクールダウンするとトランシーバーで連絡を取り合う。どうやら自分が倒したのは最後の歪虚騎兵らしい。バルバロスは破壊された門からこちらを見てくる村人たちに「もう大丈夫だ!」と斧を掲げると、妖魔騎士のもとへ向かった。

 時をしばし遡る。教会に到着したオウカは、歪虚騎兵を何とか止めた。オウカの機導術は歪虚雑魔兵を撃破するには十分だったが、オウカも相応の反撃を受けた。右肩を切り裂かれ、激しく出血していた。サラと言う女性がシャリーと言う子供を助けに出て行ったことを知ったのだが、二人は零次とセツナが保護したことを確認することになる。オウカは状況を確認し、妖魔騎士のもとへバイクを走らせた。

 八人のハンターが妖魔騎士のもとへ終結した。オーラバリアー、連続攻撃を確認していたマッシュと黒耀。黒耀はすでに風雷陣と五色光符陣を使っており、妖魔騎士も少なからず打撃を受けている。
「仇、討たせてもらう」
 クローディアは加速。マッシュと挟撃した。妖魔騎士はクローディアに衝撃波をぶつけた。しかしクローディアは構わず突進した。黒耀が五色光符陣で動きを減じる。スマッシュを叩き込むクローディア。オウカは旋回して機導砲を叩き込み、マッシュは妖魔騎士を刺し貫いた。零次とシュメルツは牽制に回った。周囲に展開して妖魔騎士の注意を引く。セツナとバルバロスが第二波の突撃を敢行する。妖魔と激突する二人。激しく打ち合う妖魔とハンターだが、これだけの集中攻撃を浴びてはたまらない。クローディアが連続攻撃を受け、マッシュも打撃を受けた。マッシュはここ一番で取っていたカウンターで妖魔の喉を突き刺した。オーラバリアーを展開する妖魔だったが、最後にはバルバロスとセツナ、オウカも加わっての集中攻撃で沈んだ。妖魔の絶叫は鋼鉄が軋むような咆哮。崩壊していく歪虚。
 激戦であった。だが村人たちにとっても、ハンターたちにとっても、回復が必要だった。今は、時間が必要だ。

(了)

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参加者一覧

  • 和なる剣舞
    オウカ・レンヴォルト(ka0301
    人間(蒼)|26才|男性|機導師
  • 無明に咲きし熾火
    マッシュ・アクラシス(ka0771
    人間(紅)|26才|男性|闘狩人
  • 狂戦士
    バルバロス(ka2119
    ドワーフ|75才|男性|霊闘士
  • 角折の銀瞳
    クローディア(ka3392
    人間(紅)|16才|女性|闘狩人
  • 無情なる拳
    シュメルツ(ka4367
    人間(蒼)|17才|女性|疾影士
  • 洗斬の閃き
    セツナ・ウリヤノヴァ(ka5645
    人間(紅)|24才|女性|舞刀士
  • 千の符を散らして
    黒耀 (ka5677
    鬼|25才|女性|符術師
  • 拳で語る男
    輝羽・零次(ka5974
    人間(蒼)|17才|男性|格闘士

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アイコン 相談卓
マッシュ・アクラシス(ka0771
人間(クリムゾンウェスト)|26才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2016/02/14 17:33:51
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/02/13 21:03:27