【節V】友チョコ作ろう!

マスター:四月朔日さくら

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~10人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/02/20 07:30
完成日
2016/02/26 06:17

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング



『突然だけど、今年のヴァレンタインデーを再開する!』
『『『な、なんだってー!!!』』』


 カカオ減産、そして高騰に伴うチョコレートの供給危機を前に、ハンターズソサエティのショップ店員シルキー・アークライトが敗北し、ソサエティショップ史上初のチョコレート販売停止がなされた事は記憶に新しい。
 アカシラが偶さかカカオ豆の原生地を知っていた事から、突如として執り行われることとなった【長江】への進撃は、破竹の勢いを見せた。実に百名を超えるハンター達による怒涛の侵攻に、現地の歪虚達は手も足も出なかった。結果として、ハンター達は東方の支配地域に食い込み、西方へのカカオの供給を回復させしめたのである。

 東方での争乱は、西方へも確かな影響を与えていた。西方に溜めこまれていたたカカオ豆は値下がりを免れず、爆発的な勢いで在庫が掃きだされることとなったのだ。カカオ豆は徐々に適正価格に近付いて行き――ついに、チョコレートの流通が、回復したのである。

 バレンタインデーというハートウォーミングでキャッチ―なイベントを前にして届いた朗報に、市井には喜びの声が溢れたという。
 尤も、裏方は血の涙を流しているかもしれないのだが。


 ――まあそんな大人の事情も、子どもには分からない。
 リゼリオの中心街から少し外れたところにある『ヤマシナ学院』は、文字通り子どもたちのための学舎だ。
 そこに通う生徒達は純粋にチョコレートの販売再開を喜んでいる。
 何しろ子どもだ。
 お八つにチョコレートなんて、なんて幸せなのだろう!

「そういえばバレンタインって、何かプレゼントするの?」
 とあるクラスの一人がそんなことを言い出した。むろんそんなことを言うのは女子である。
「うーん、決めてないけど」
「あたしは隣のクラスの――」
「あ、私だって彼にはチョコあげたいのに」
 女子の会話。バレンタイン。
 なんだかふわふわして、それでいて心地よい。
「それもいいけど、友チョコとかも作りたいよね」
「ともちょこ?」
 尋ねたのはファナ(kz176)である。性別不詳、記憶喪失、十代前半のファナにとっては興味のある単語である。
「あ、ファナちゃんは友チョコ知らないのかぁ」
「フツーは女の子同士であげるチョコのことを指すかな? 本命でも義理でもなくて、友達にあげるチョコだから」
 なるほど。バレンタインという行事については知っていたけれど、教わって妙に納得した。
「じゃあ、みんなでチョコ作りしない?」
 ファナは思わずそう言っていた。
「あ、いいなあ! それなら先生に調理室借りれるか聞いてくる!」
「あと折角だし、今までお世話になったハンターさんも誘いたいよね? ハンターさんも友チョコ作りたいかも知れないし!」
 子どもの考えそうなことだ。
 だけれど、その純粋さは確かにみんなを動かすのである。

 その結果――数日後、友チョコ作り大会が開催されることに相成った。

リプレイ本文


 春の足音も聞こえてきそうなうららかな日の午後。
 ヤマシナ学院には、生徒たちとハンターたちがニコニコ笑って挨拶を交わしてしていた。
(友チョコですか……子どもたちの発想はかわいらしいですね)
 そう、少し緊張気味の子どもたちを目の前にして微笑んでいるのは真田 天斗(ka0014)、見た目はイケメンな上にもともとはCAM乗りだったという天斗の趣味は意外にも料理である。一人暮らしが長かったこともあって自然と身についたものだが、それだけに我流ではあるが満足のいく味わいを出せる、なかなかの料理人であったりもする。
 しかし今日の天斗には、内密のミッションもあった。それは――知人で微妙な腐れ縁、鵤(ka3319)の行動を確認することだった。
 何しろ、鵤はまったくと言っていいほど料理に興味が無い。ハンターオフィスで依頼を受ける際、『料理とかちっとも作れないが構わないか』と確認してから依頼を受けたという、まあそこそこのダメ人間である。
 そもそも鵤が依頼に入ったきっかけ自体、『知り合いの真田君に無理やり作ってもらいます』ときたもんだ。正直ここまで自分に素直だと、もうぐうの音も出ない、というかなんというか。
 まあ、横に天斗が付き添っていればそうそう悲劇は起きないだろうし、チョコレートの湯煎とテンパリングはきちんと指導をすれば子どもでもできる芸当だ。鵤にはそれを任せておけばおそらく問題はないだろう。
「ほんじゃ、おっさんはガキのお守りするんで、オタクはおっさんのぶんもお願いねー? ん? え、なに? 喜んでやらせていただきますぅ? やーん太っ腹ぁ~!」
 ケラケラと笑う鵤だが、面倒見が悪いわけではない。それを知っているからこそ、こんなことも言えるのだろうが。
「不思議な人、ですね」
 ファナ(kz0176)は鵤の様子を見て、にこにこと笑顔を見せる。はじめてハンターと接触した頃――その頃はこの学校ではなく開拓地ホープにいたのだが――に比べて、笑顔が格段に増えたファナ。
 生徒たちは全員が揃いのエプロンをして、そして嬉しそうに笑っている。
(ああ、でも子どもの頃のことを思い出すな……台所に入り込んで叱られたっけ)
 ザレム・アズール(ka0878)はそんなことを思いながら懐かしさに浸る。でもそれはそれ、これはこれ。
「難しくないものじゃないけれど、手が込んでたり本格的に見えたりするレシピをいくつか持ってきた。作りたい物を選んでくれると嬉しい」
 そう言ってあらかじめ準備してきたレシピブックをぱらりと見せる。
「ちなみにどんな菓子が作りたい? 友チョコって言うけど誰にあげたい? あと、自分でも食べてみたい? その辺りを考えて選んでくれると嬉しい」
 矢継ぎ早に尋ねているが、なるほど、ザレムの言い分は一理ある。チョコと一言で言っても種類は山のよう。どういう用途かによって、作る物も異なってくるだろう。
 レシピにはガトーショコラやチョコクッキー、マシュマロナッツチョコバーなんてものもある。天斗が持ってきていたレシピはクランチ系のチョコだから、ずいぶんと雰囲気が異なっていて、これはこれで嬉しい。
「でも……寺子屋で、友チョコ……なんて、素敵、ですね……。私も……微力ながら、お手伝いさせて……いただきますね」
 ぽつり、ぽつり、雨音のようなじんわりと染みいる声でそう言うのは自他共に認める雨女の外待雨 時雨(ka0227)。それでも今日は流石に雨は降っていないようで、こういう日もいいものだと微笑んでいる。
 そして女性である、というのは大きな利点だ。
 男性と女性、料理が得意でも、どうしても男性よりも女性のほうが繊細さを求める料理が得手であることが多い。それもあってか、女子達は時雨やティア・ユスティース(ka5635)、ディーナ・フェルミ(ka5843)と言った女性陣になんとなく懐いているような気がする。
「学校側で準備されているものは……これならひととおりのお菓子作りに必要な機材も揃っているし、買い足す必要のある材料も必要はなさそうですわね。有難いことですわ」
 一応万が一のために材料の補填くらいは出来るようにしておきましたけれど、そう言いつつも集められている材料や、会場となっている調理室の機材を確認しながら、ティアは満足げに頷く。彼女は幼い頃になかなか同年代の友人を持つことが出来なかったこともあり、学院の子どもたちをまぶしそうに見つめていた。
 子どもの頃の思い出というのは大きくなってからも綺羅星のように輝くものだからこそ、手伝いたいと思えるのだ。
「私も、お友達に友チョコをプレゼントしたかったの……みんなといっしょに頑張るの」
 あどけない口ぶりのディーナは、嬉しそうに頬を緩ませていた。かんたんな菓子類のレシピは良く作ることもあって頭にたたき込まれているし、手間のかかる作業をメインで行ない、みんなで楽しく菓子作りが出来るように、と言うのを目標にしている。
 ふわふわした笑顔を浮かべたディーナは、ほんとうに楽しそうだ。
「贈り物なら日持ちがするように、クッキーやマフィンがいいかもしれないの。あと、折角だからあとでみんなで食べられるように、果物やマシュマロにチョコをかけたりするのも美味しいの」
 いかにも若い女性らしい発想で、誰かが思わずじゅる、とつばを飲み込んだのも仕方のない話だろう。
「それじゃ、チョコレート作りをはじめましょうか。時間は待ってくれないからね」
 天斗の号令で、子どもたちは個くっと頷いた。


 と言っても、子どもたちだってつくってみたい料理も一杯あるし食べてみたいものだって一杯ある。
 やれ何が作りたいとか、自分も作ってみたいとか、いろいろもめた挙げ句にじゃんけんで班分けが決まった。
 ガトーショコラに三人、クッキーに三人、クランチに二人(+鵤と言ってもいいかもしれないが)、それに生チョコに二人。それぞれ得意なレシピを担当すると言うことで、ハンター側もおおよそ組み分けがきまった感じである。
「それじゃあ、作り方を順に説明していきますの」
 ディーナはクッキーの担当だ。
「でも、その前に――」
 チョコレート菓子で一番たいへんなのは、チョコレートを湯煎するための下準備。
 つまり、チョコレートを細かく細かくひたすら砕いて削っていく作業だ。
 子どもたちでは手も疲れるし、かなりの重労働だろうが、しかしハンター、それも成人済ハンターの膂力ならばこれらの作業もそれほどの苦労ではない。
 と言うことで、ハンターたちは手分けしながらチョコレートを細かく砕き、削り、湯煎しやすいようにしていく。流石に六人のハンターがいればその作業もそれほど時間はかからない。ちなみに鵤も、これくらいなら出来るだろうと半ば無理矢理参加させられている。むしろ貴重な男手なので、期待されているという感じだ。それに、鵤のほうもまんざらでもないらしい。手伝うと行ってきた子どもたちには
「おいおい、気をつけろよぉ? 手元を見ないで作業するとズパァってやっちまうぜぇ?」
 と彼なりの指導を与える。お世辞にも料理が得意とは言えない鵤の言葉だけあって、逆に真実味が強い。子どもたちも言われて、包丁をおっかなびっくり触っている。
 いっぽう、刻んだチョコレートは大きなボウルに入れられ、湯煎にかけられる。丁寧に、誤って水分が入り込まないように、ボウルと鍋のサイズも考慮した上だ。
 このあたり、なんだかんだ言ってもハンターは自立していることを痛感させられる。

「手作りチョコというのも、思ったより簡単なんです。基本的には湯煎したチョコレートを型に流せば完成ですからね」
 流石クレープ店での労働経験もある天斗は説明もわかりやすい。
 クランチに使うのはグラノラやナッツ、フレークなど。口当たりのさっくりしたものをチョイスしている。
「クランチなら、ここにある物を混ぜて、型に流せば完成です。ね、思っているよりも簡単でしょう?」
 子どもたちもこっくりと頷いた。反応は上々のようだ。
「お、上手そうに出来そうだなぁ。ひとつ味見を――」
 鵤が手を出そうとするけれど、それはあえて阻止。
「湯煎のお湯で熱燗を造っていたおっさんは、チョコに柿ピーでも混ぜてすみっこで飲んだくれていてください」
 子どもたちに見せるのとは真逆の、氷の微笑。まあ、今回は全面的に鵤のほうに非があるのだから仕方ないが。
 なお、そのあとで天斗の作っているチョコにブランデーを入れようとしてしっかりお縄になったりと、なかなか忙しいことになっている鵤である。

「生チョコは……砕いたチョコと温めた生クリームを混ぜ合わせて……しばらく冷やし、それにココアパウダーをかければ、完成です……」
 時雨の説明は簡素ながら要点をしっかりと押さえている。
 しかも、時雨が用意していたのはチョコレートの材料だけでは鳴く、ひとに快く受け取ってもらうためのラッピングの材料なども含まれていた。友チョコといえど、親しきなかにも礼儀ありなんて言葉もあるわけで、こういう小さな心遣いは誰もが喜ぶものとなる。
 子どもたちも生クリームとチョコレートの撹拌に四苦八苦しながらも、楽しそうに生チョコ作りに挑んでいた。
 案外、こういう子たちは本命チョコもこっそり作っているのかも知れない。子どもというのはおませさんも多いものである。
「ドライフルーツなどを盛りつけたり……丸めて、トリュフにするのもいいですね……形も自由がききますので……ハートや動物など、いろいろ作って、楽しんでみましょう……?」
 そう時雨が微笑むと、子どもたちも頬をわずかに赤らめて、こっくりと頷くのであった。

「ガトーショコラはフライパンで作るんだ。難しそうに見えるけれど、言うほどではない。子どもでも十分作れると思うよ。ただ、日や包丁には気をつけないとだけど」
 ザレムの説明をまっすぐ聞いている子どもたち。ガトーショコラはチョコレートケーキの一種だが、そうやって考えると確かにオーブンなどを使うケーキよりも難易度は低そうだ。
 途中までの工程は生チョコにも近いが、そこに小麦粉とココアパウダーを入れて混ぜ、フライパンで焼く。冷めたところに仕上げにパウダーシュガーをかけてあげれば立派なガトーショコラの完成だ。
 焼き方はホットケーキなどにも近いものがあるので、子どもたちも大喜びだ。
「あとで、残った材料でパンケーキでも作るか」
 そうザレムが呟くと、子どもだけではなく大人達も喜んだのは言うまでもない。

「ああ、そうそう。上手に出来てますわ」
 クッキーの担当はティアとディーナだ。厳密に言うと、ティアは他のメンバーの手の足りないところにフォローに回ったりすることも多かったのだが、ディーナに頼まれてクッキーのサポートメインになった、という感じでもある。
 子どもたちだって「作りたいもの」と「実際に作れるもの」には差がある。
 その格差が生まれにくいのが恐らくチョコクッキーな訳で、子どもたちにとっても馴染みのある菓子であろう。
 クッキー生地にココアパウダーを混ぜ、チョコレートチップをアクセントにいくらか入れ、そしてオーブンで焼き上げる。
 アクセントになるように細かく刻んだナッツやドライフルーツも用意し、口触りも味わいも、どちらも楽しめるようにしたのだ。
「ほんとうは、テンパリングは照りを出すためだけなの、だからぴっかぴかな外見が必要なチョコ本体ならまだしも、こうやって材料に混ぜ込んだり、凸凹したものに使うぶんにはやらなくても全然大丈夫なの、味には全然関係ないの」
 テンパリングが上手くいかなかったとしょぼくれている子どもたちに、ディーナはそう言って明るく励ます。
「さ、そろそろクッキーも焼き上がるの、そしたらみんなで試食タイムなの」
 子どもたちの目がいっそう輝いたのは言うまでもない。


 できたチョコレート菓子は、時雨の用意してくれていたラッピング道具で綺麗に包まれ、今はプレゼントされるだけー―と言う状態になっている。
 それでも、材料はなんだかんだ言って結構余っていた。
 特に、チョコレートは想定外の量が残っていると言ってもいいだろう。と、天斗やディーナが、ザレムと言った面々がにっこり微笑んで、マシュマロやいちごなどのフルーツ類を取り出す。
 余ったチョコをこれらに絡めて、みんなで食べてしまおう、と言うわけだ。幸い、ここには十人以上のお腹をすかせた面々が揃っている。甘い甘いチョコレートの香りは確かにもうお腹いっぱいになりそうだけれど、香りと味はまた別物だ。
 それに、甘酸っぱい苺に絡めたチョコレートという組み合わせの、なんと美味しいこと!
「こういうのは、出来てすぐだから余計に美味しいんですね」
 クッキー作りに先ほどまで奮闘していたファナが、そう言ってにこにことチョコレートのかかったいちごを口に放り込む。
 その表情がいかにも幸せそうで、ハンターたちも、子どもたちも、自然と心からの笑顔が溢れてくる。


 子どもたちはきっとこれらを、生徒同士、あるいは教師、家族、友人――あげたいと思った人にあげるのだろう。
 そしてハンターたちも。
 自分が大切に想う人。
 あるいは、腐れ縁。
 あるいは、仲間。
 そんな誰かに、きっとあげるのだ。
 幸せを、分かち合うために。
 幸せを、お互いに感じるために。

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • Pクレープ店員
    真田 天斗(ka0014
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • 雨降り婦人の夢物語
    外待雨 時雨(ka0227
    人間(蒼)|17才|女性|聖導士
  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師
  • は た ら け
    鵤(ka3319
    人間(蒼)|44才|男性|機導師
  • 過去の教訓
    ティア・ユスティース(ka5635
    人間(紅)|30才|女性|聖導士
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士

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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/02/19 19:06:50