剣機の鼓動

マスター:神宮寺飛鳥

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/08/17 09:00
完成日
2014/08/25 04:40

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●剣機
 ――紅く燃える大地の上、その怪物は立っていた。
 二本脚の巨人。その全身に鋼の鎧を纏った死人。両腕に装備したチェーンソーでいともたやすく人間を切断し、肩に積んだガトリングで蜂の巣にする。
「……あれが不壊の剣機最新版! 強い! ほしぃいいいいっ!!」
 目を爛々と輝かせながらふらふらと歩き出すナサニエル・カロッサ(kz0028)。その前にオズワルド(kz0027)が立ちはだかる。
「よせ! 研究者が迂闊に前に出てどうする!」
「あの黒い輝きは負のマテリアルの輝き! なんて醜悪で機能的なデザインなんだ……! オズワルドさん、あれは芸術品ですよ!」
 次の瞬間、怪物の口が黒く瞬いた。放出された閃光は大地を薙ぎ払い、巨大な爆炎を幾つも空へ巻き上げる。兵士がまるでゴミの様に吹き飛び、その熱気は遠く離れたナサニエルの髪を揺らした。
「すっげ! ビィイイム! 口からビィム出たッ!! イイッ!! 僕も欲しいッ!!」
「エイゼンシュテイン、このバカを下がらせろ! 俺も前に出る! 一般兵じゃ相手にならねェ!」
「離せ! 僕のだ! あれは僕のだぁっ!! お前達軍人なんかにやらせたら壊しちゃうだろぉ! 分解して精査して検証して再現したいんだよぉ!!」
 暴れるナサニエルの頬にめり込んだのは黄金の拳であった。全身を鎧で包んだヴィルヘルミナ・ウランゲル(kz0021)の一撃でナサニエルは鼻血をぶちまけながら空を舞う。
「ぎょへぇっ!? へ、へい……か……」
「連れて行け。私が頭を押さえる。オズワルド、続け」
「馬鹿野郎! お前を前に出せるか! 相手は四霊剣だぞ!」
「他に奴を止められる者がいない。これ以上無駄な血を流す事は出来ない」
 歯軋りし、苛立たしそうに舌打ちするオズワルド。ヴィルヘルミナは黄金の兜をかぶり、バイザーを降ろして剣を抜く。
「ま、まずい……陛下にやらせたらマジでぶっ壊される! や、やめろおおお! 貴重な僕のサンプルがーーーーッ!?」
 遠ざかっていく黒い影とそこへ駆けていくヴィルヘルミナとオズワルド。ナサニエルは泣きながらその背を見送っていた……。


●野望
「……んぐ」
 椅子から半ばずり落ちた姿勢でナサニエルは目覚めた。そこはあの日の戦場ではなく、忌々しい記憶に思わず息を吐いた。
 ワルプルギス錬魔院の最上階、そこがナサニエルの研究室だ。男はそこに閉じこもったまま滅多に外に出ない。彼の人生はこの塔の中で完結している。
 しかしそれだけでは物足りなくなった時、外の世界に刺激を求めたくなる事もある。白衣のポケットに手を突っ込んだままふらふらと歩いた先には貼り付けにされた嘗ての剣機の残骸が眠っていた。
「剣機トウルスト……。僕が解体していれば、もっと完全な形で回収出来たのに……」
 剣機系のゾンビは倒されればその肉は溶けて消えるが、機械部品は殆どそのまま残る。だが過去に出現した剣機トウルストは敗北直前に自爆。残されたパーツも損傷が激しく、回収しても分かった事は殆どなかった。
「大事な研究成果が敵に奪われそうになれば自爆させる……僕だってそうする。陛下はそんな事もわからないなんて……」
 あの掛け値なしの怪物を前に勇敢に立ち向かい勝利する実力は高く評価するが、あれではただ目の前の壁をぶっ壊し続けているだけだ。お世辞にも美しい戦いとは言えない、そう思っていた。
「まだまだ塔の中には研究すべきサンプルが山ほどある。全てを骨子までしゃぶりつくしたとは言い難い……が、そろそろ新しい刺激も欲しい……」
 剣機は改造されたゾンビの中で強力な個体に授けられる称号で、破壊されてもしばらくすれば代替わりした新たな剣機が前線に送られてくる。
 前回の剣機を撃破して数年。剣機系の動きが活発になりつつあるのは予想の範囲内であった。
「イルリヒト生が遭遇した剣機型……第十師団も遭遇していましたね。剣機型の目撃情報は少しずつ増え出している……」
 だがまだ情報が足りない。どんな剣機が現れるのか。それはいつで、どこなのか。出来るだけ予想を立て、あの怪物と最初に遭遇するのは自分でなければならない。そうでなければ、観察する暇さえない。
 地図を広げ、出現情報を纏めていく。個体の装備はどうか。何ベースのゾンビか。相手の狙いは何か――。
「同盟領に出現した歪虚の事件で国内は手薄になっている。ならば今こそ好機。いつもより深くこちらの手を探りたいはず。だったら……この辺かな?」
 そんな予想を立てている間に机の上の短伝がなった。受話器を取るってしばらくすると男は楽しそうに笑い。
「わかりました。早速調査に向かいます。ええ……では」
 受話器を置いたその目は輝いていた。これもまた予想通り。
「そうですよねぇ。わかりやすく置いといたんだから……食いつきますよねぇ。となると、次に来るのは……」
 地図にペンで丸を付ける。楽しそうにステップを踏むと、部屋の隅に積んであったトランクを手に駆けし部屋を後にした。

リプレイ本文

 崖下へと続く唯一の道を降りるハンター達の頭上、いよいよ雨が降り出すのを見上げサーティカ・ソウディアム(ka0032)は小さくため息を零した。
「雨が降る中の調査依頼なんてついてないな~……」
「もうここいらで遭遇する可能性もある。視界も悪いからな……気ィ抜くんじゃねェぞ」
 シガレット=ウナギパイ(ka2884)の声に頷くハンター達。南條 真水(ka2377)はトランシーバーを耳に当て、小さく首を振る。
「今の所、上の方に異常はないようだね」
 既に道半ばにある彼らだが、万が一背後から奇襲を受ける事がないよう真水はトランシーバーに細工を施し、入り口付近に設置してきていた。
「中々考えましたねぇ。凡人の創意工夫というのも中々良い物です」
「お褒めに預かりましてどうも。それよりナサニエルさん、あの装置ってもしかしなくても最初から餌のつもりだったね……?」
 真水はこの下にある装置を設置しに来たハンターの一人だった。肩を竦め苦笑を浮かべる。
「まったく……苦労して設置したってのに酷い話だよ、もう」
 ナサニエルは笑うだけで応じなかったが、恐らくその推測は外れていない。
「考えがあるならきちんと教えて欲しい物だわね。女の子を騙してダンマリっていうのは、あんまりスマートじゃなくってよ」
 前髪を指先で弄りながら呆れたように呟くアルバート・P・グリーヴ(ka1310)。特に今回は不安定な戦場だ。ナサニエルに対しても警戒は必要だろう。
 そうして前進する一行に通信が入ったのは間もなくの事だ。ハンター達は二人の疾影士を斥候として先行させ、行く先の状況を確認させていた。連絡をしてきたのはヒース・R・ウォーカー(ka0145)で、内容は敵を発見したという物だった。

 道中にある小さな岩に何とか身を隠し、ヒースは敵の背中を遠巻きに見つめていた。同行するロイ・I・グリーヴ(ka1819)と二人でギリギリの大きさなので、三人は隠れられなかっただろう。
「あれが例の……真っ直ぐ下に向かっているようですね」
 ロイの言う通り、敵は真っ直ぐ最下層を目指している。それ以外に目を配る気配すらなく、追跡は容易だ。
「あくまで観測装置狙い、かぁ。何者かの命令に従っている、かなぁ?」
「あの足取り、まるで最初から装置を目指しているかのように見えますね」
 ヒースの言葉に同意するロイ。二人は顔を見合わせる。
「それなら都合がいい。こっちはこのまま奴が目指している装置付近まで追跡するよ。そこでなら、安心して戦えるスペースがあるからねぇ」
『了解したよ。こっちも急いで追いつくから。ウォーカーさん達も気を付けて』
『ロイ~、怪我をするなとは言わないけれど、治療できる範囲でお願いね~』
 通信担当の真水以外に兄の声も聞こえロイは眉間に皺を寄せた。
「心配は無用です、アル兄さん。もう幼い俺ではないと成長を見せましょう」
『あら? 勿論、頼りにしているわよ……頑張ってね』
 アルバートの声が途切れ、ロイは何とも言えない様子でヒースに頭を下げたが、別にヒースは気にしなかった。
「心配してくれる身内がいるのは良い事さぁ」
「お恥ずかしい。兄さんも仕事はしっかりこなす方ですので」
 最下層にも雨は入り込んでいたが、入り組んだ地形のお蔭で幾分か穏やかだ。敵は壁沿いの小さな窪みにある装置を前に鷲掴みにすると引きはがしにかかる。
「破壊せずに奪おうとしている……?」
「結果的に壊してしまったのかもしれないねぇ」
 何度も引っこ抜こうとしてみたり、叩いてみたり。勿論そんな乱暴に耐えられる装置ではない。
 装置と格闘するゾンビを見守っていると、やがて背後から仲間達が追いついてきた。シュタール・フラム(ka0024)は頬を掻き、目を丸くしながら呟く。
「なるほど。あれが今回のお目当てか」
 タイラントと呼ばれる敵個体は体の彼方此方を機械化されたゾンビだ。巨漢という事もあり、迫力は十二分。
「仕込みチェーンソーとか、これ作った奴は通だな。こりゃ確かに厄介だ」
「あの敵カッコイイね! あの金属パーツとか分解したいよ!」
 瞳を輝かせるサーティカ・ソウディアム(ka0032)。ナサニエルは既に見慣れているのかさほど興奮した様子はなかったが、やはり楽しそうだ。
「あの個体は所詮小間使いですからねぇ」
「まぁ、ああいうのをとっ捕まえて調べたいってのは判らんでもない」
 同意を示すシュタール。だがウィンス・デイランダール(ka0039)は腰に手を当て不機嫌そうに首を横に振った。
「……それにしたって悪趣味が過ぎるぜ。あの木偶の坊だって元は生きてた人間だろーに」
「歪虚というのは死の象徴。特に暴食の眷属は悍ましい外見である事が普通ですよ。文字通り既に死んでいるわけですからねぇ」
 ナサニエルの言葉はウィンスの言わんとする事とはズレた答えだった。逆に言えば、二人の認識にはそれだけの相違がある。
「私だったらもう少し外見にも気を使うんですけどねぇ」
「無駄話はそのくらいにしておきなさい。このままじゃあの装置、壊されるんじゃないの?」
 手を叩くアルバートの声で会話は中断された。ウィンスは納得いかない目でナサニエルを見つめていたが、それ以上口を出す事はなかった。
「装置は別に壊れても構わないですからぁ」
「やっぱりそういうつもりだったんだね」
 真水の横槍に肩を竦めるナサニエル。シガレットはそんな仲間たちを諌め。
「オイ、奴さん装置を引っこ抜いたぜ。折角斥候が作ってくれた先手のチャンスなんだ、じっとしてる手はねェだろ?」
 敵が装置を担ぎ上げようとしている今が好機だ。ハンター達は話を終え、それぞれの得物を手に構えた。



「まずは俺から行かせてもらうぜェ……」
 手にした杖に光を収束させるシガレット。その輝きは通常の光とは異なる物だ。
 彼が纏った祈りの力が威力を跳ね上げる。放たれたホーリーライトは無防備なタイラントの背中に直撃し、まばゆい光の炸裂と共に巨体を吹き飛ばした。
「あの巨体を吹き飛ばすとは……陛下が言っていた絆の力という奴ですか」
 興味深そうなナサニエルの呟きにシガレットは口角を上げるようにして笑う。シュタールとサーティカはそれぞれヒースとロイに運動強化を施し、支援を受けた二人が走り出す。
「気休めだが、幾らかマシになるだろう。頼むぜ」
「気を付けて!」
 更に真水がシガレットに防性強化を施す。その上に自分でプロテクションをかけ、防御態勢を整えていく。
「よろしく、ウナギパイさん」
「任せときなァ」
 その間、ヒース、ロイ、ウィンスの三人がダウンしているタイラントに駆け寄る。起き上がろうとしている所に代わる代わる攻撃を叩き込むが、無防備な背中だというのに攻撃の通りは鈍い。
「何という頑強さだ……!」
 振り返ると同時にチェーンソーで薙ぎ払いを仕掛ける怪物だが、そこへアルバートの火の矢が直撃する。よろけた隙に距離を取る三人。
「ロイ、油断は禁物よ?」
「流石は兄さんです」
 タイラントは雄叫びを上げチェーンソーを振り回す。その行動には最早人間的な理性は感じられない。
「どんな気分なんだ。異形の手先になるってのは」
 答えは野蛮な唸り声。ウィンスは小さく首を振る。
「……聞くまでもねーか」
 攻撃で注意を引いてしまったのか、タイラントは銃を抜いてアルバートを狙う。放たれた弾丸はしかし盾を構えて直進するシガレットに防がれた。
「っとォ、あぶねェあぶねェ」
「兄さんに手出しはさせん!」
 ロイはタイラントの構える拳銃に素早く斬りかかる。しかし破壊には至らない。
 続いてヒースが懐に滑り込み、防具の隙間を縫って刃を通した。正確な一撃ならば厄介な防具の影響を受けずに済む。
「久々の酒だ、どっぷり酔いな……ッ!」
 ヒースに注意が向いた隙にお手製の火炎瓶を投げつけるウィンス。上体に炎を受けたタイラントは特に怯む事もなかったが、ゾンビは燃え易いのか炎が広がっていく。
 燃え上がりながらもチェーンソーをウィンスへと振るう。ウィンスは二刀を並べて構え斬撃を受け止めるが、高速回転するチェーンソーの威力は凄まじい。
「攻撃で怯まないとしても、足を奪えばどうかね?」
 アサルトライフルを構え、タイラントの右足を撃ち抜くシュタール。真水もそれに倣い足に機導砲を放った。
 二人の攻撃を受け、僅かに踏み込みが緩むとウィンスは一瞬攻撃を押し返し距離を取る事に成功する。
「なんつー馬鹿力だ……」
 ロイとヒースは再び接近。銃そのものの破壊は難しいとみて、銃を持っている手首を狙う。そこは丁度装甲もなく、二人の技量なら連続して攻撃を当てる事は可能だったからだ。
 続けざまに手首を斬りつけるとタイラントは銃を落とした。ロイはすかさず銃を蹴り、タイラントから距離を離す。
「これで遠距離攻撃は使えんな」
「人の話を理解する頭があるなら聞け。ボクが相手をしてやるよぉ」
 ヒースは声をかけ挑発するが、言葉が通じる気配はない。顔は向けてくるが、ただ先の攻撃に反応しただけに見える。
 銃を失いチェーンソーだけを振り回し暴れるタイラント。そこへシガレットが駆け寄り至近距離からホーリーライトを撃ち込む。
「俺が相手になってやんぜェ……遠慮なく撃ちこんで来いよォ」
 お望み通りにとチェーンソーを叩き付けるタイラント。だが防御スキルを重ね盾を構えたシガレットは頑丈で、衝撃で地面を滑るだけに終わる。
「今がチャンス!」
 大ぶりな攻撃を待っていたサーティカ。背後からタイラントに駆け寄るとそのマントを掴み、思い切り引っ張ってみる。
「ふぬぬ……あ、あれ? 取れない……っ」
 頑丈なのか布が剥がれない。焦るサーティカへ振り返りつつタイラントが拳を振るうが、すかさずウィンスがガード。続けロイが伸び切ったマントに駆け寄り刃を通して引き裂いた。
「お怪我はありませんか?」
「あたた……な、何とかね」
 だがこれで防御が薄くなった。サーティカに掴みかかろうと腕を伸ばすタイラント、その顔に真水の放った機導砲が命中。更にシュタールが足を再び狙撃する。
「……まだ倒れないのか!」
「だったらこれで!」
 ウォーハンマーを足に叩き付けるサーティカ。その衝撃に流石に膝を着いたが、更にアルバートが魔法を放つ。
「全く煩わしい……おいたはせず、大人しく座って泥遊びでもしてらっしゃい」
 火炎が顔面に炸裂し、仰け反った巨体が後ろに倒れる。ヒースとウィンスが同時に胸に刃を突き立てるが、タイラントはまだ倒れない。
「えぇっ!? まだ立ち上がるの!?」
 慌てて距離を取りながら機導砲を撃ち込むサーティカ。再び繰り出される全力のチェーンソーはシガレットが盾で防ぎにかかる。
 正面から力比べをする二人。そこへ横から駆け寄ったウィンスが刃を光らせる。その時、どこからか攻性強化が飛んできた。
 それはここまで遠巻きに眺めていただけのナサニエルの支援だった。ウィンスは一瞬だけそちらに目くばせし、チェーンソーへ刃を繰り出す。
「上ッ、等だああああああああああッ!!」
 チェーンソーの駆動装置へナイフを突き立てる。暴力的な機械装置の動きは火花を散らしながらウィンスにも衝撃を返すが、怯まずに刃を押し込んでいく。
 やがてチェーンソーの動きが弱まるとシガレットが盾で押し返し、至近距離からホーリーライトでチェーンソーを撃つ。構造を破壊された得物はチェーンをまき散らしながら沈黙した。
「武器も防具も壊れたぜェ。そろそろ年貢の納め時じゃねェのか?」
 笑うシガレット。真水は右腕を破壊されよろけるタイラントの背後から駆け寄り、傷ついた右足の膝を裏から機導剣で串刺しにする。
「人間と同じ構造である以上、ここは固められないからね」
 剣を引き抜くと同時背後に跳ぶとタイラントはまた膝をついた。すかさずロイとヒースが駆け寄り斬撃を加える。
「そろそろ終わりにさせてもらう!」
 二人の斬撃が十字を作り、更にアルバート、サーティカ、シュタール、そしてナサニエルの集中砲火が浴びせられた。銃撃と炎と機導の光に滅多打ちにされたタイラントは断末魔の悲鳴を上げ、ゆっくりとその巨体を大地に投げ出すのであった。



「自爆するかと思ったが、んな事もなかったなァ」
「こいつは結構見かけるタイプですからね」
 タイラントは機械部品だけを残し消滅した。シガレットは我慢していた煙草を咥え一息。ナサニエルと肩を並べる。
「しかし、なんだこいつは? 機導の部品にしか見えないぞ?」
「ほんとだね。これ持ち帰ってもいい?」
「ええ、構いませんよぉ」
 怪訝な表情を浮かべるシュタール。サーティカはナサニエルの答えに大喜びでいそいそと部品を拾い集めている。
「鉄屑に興味なんかねーよ。俺が知りたいのはこれを作った奴の事だ」
 ウィンスは消えた亡骸の前に膝を着いていたが、立ち上がりながら呟く。
「気に入らねえ。無性に気に入らねえ。そいつは死してなお誇りを辱め、命を踏みにじってやがる」
「前から疑問だったんだけど、歪虚って機導を扱えるのかい? 機導、というかマテリアルを使うのって、暴食の性質とは真逆な気がするんだけど」
 真水の言う通り、これは誰が見ても人為的な手の加わった装備だ。暴食は特にこういった小細工と無縁の性質を持つ。
「質問がひとつ……歪虚に与した人間は、いるのかなぁ?」
 ヒースの問いにナサニエルは頷く。
「沢山いますよぉ? 天才の私には理解できませんが、凡人は歪虚の力に惹かれる者もいるそうですからね」
「なら少し質問を変えよう。歪虚に組した人間の中で、こいつを作った奴に心当たりはないのかぁ?」
「ナサニエルは何か知ってるんじゃないかしら? だからこそここに赴いたのではなくて?」
 アルバートの言葉にきょとんとした後、ナサニエルは首を横に振る。
「いえ、全然わかりません。確かに身内にこれを作った者がいる可能性はありますが、あまり考えたくはありませんし。同門からこんなセンスのない作品を作る者が出たなんてイヤですよぉ」
 溜息を零すアルバート。ウィンスは舌打ちし。
「……ったく、どいつもこいつも。どういう狙いでいるのか知らねーが……上等だ。纏めて全部叩き潰してやる」
 じろりとナサニエルを睨むウィンスだが、ナサニエルはニコニコ手を振っていた。シガレットはそんなナサニエルの肩を組み、顔を近づける。
「ともあれ、こいつらに一番詳しいのはナサニエルなんだろ? 俺ァこいつらの情報が欲しいんだ。是非お友達になろうぜェ」
「構いませんよ。きみが見せた絆の力……私も前々から興味がありましたしね」
 こうしてハンター達は歪虚の殲滅を完了。ナサニエルは暫く一人で装置近辺を調査していたが、やがて何事もなかったかのように装置を元に戻すと、ぶつぶつ言いながら帰路につくのであった。

依頼結果

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MVP一覧

  • ヒースの黒猫
    南條 真水ka2377
  • 紫煙の守護翼
    シガレット=ウナギパイka2884

重体一覧

参加者一覧

  • 護りの弾丸
    シュタール・フラム(ka0024
    ドワーフ|29才|男性|機導師

  • サーティカ・ソウディアム(ka0032
    ドワーフ|14才|女性|機導師
  • 魂の反逆
    ウィンス・デイランダール(ka0039
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • 真水の蝙蝠
    ヒース・R・ウォーカー(ka0145
    人間(蒼)|23才|男性|疾影士
  • 全てを見渡す翠眼
    アルバート・P・グリーヴ(ka1310
    人間(紅)|25才|男性|魔術師
  • 名誉騎士
    ロイ・I・グリーヴ(ka1819
    人間(紅)|18才|男性|疾影士
  • ヒースの黒猫
    南條 真水(ka2377
    人間(蒼)|22才|女性|機導師
  • 紫煙の守護翼
    シガレット=ウナギパイ(ka2884
    人間(紅)|32才|男性|聖導士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
シュタール・フラム(ka0024
ドワーフ|29才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2014/08/17 05:23:50
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/08/13 00:16:25
アイコン 質問卓
ヒース・R・ウォーカー(ka0145
人間(リアルブルー)|23才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2014/08/15 21:33:26