勝利を掴むは唯一人

マスター:蒼かなた

シナリオ形態
ショート
難易度
不明
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
寸志
相談期間
5日
締切
2016/02/27 19:00
完成日
2016/03/02 06:24

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●示すべきは力のみ
 ハンターなった覚醒者はその力を振るい、日々襲い掛かってくる脅威と戦っている。
 その脅威とは歪虚という人類の敵であったり、人里を襲う山賊であったり、突如暴れだした原生生物であったりと様々だ。
 時には迷子探しだったり、とある祭りを盛り上げることが依頼となることもあるが、それは例外としておこう。
 とにかくハンターとはその力が求められている。圧倒的で、絶対的で、超人的なその力を。
 そして周囲がその力を求めているのと同じくらいに、いやそれ以上に本人もまた更なる力を求めている。
 その理由は様々で、きっかけも色々あるだろう。だが今はその後について回る御託や感情論、善悪なんてものを語る気は毛頭ない。
「今の俺は、どれくらい強くなったのかねぇ」
 そう、ただそれだけだ。今知りたいのは今の自分の実力である。
 馴染みの酒場の一角で、手にしたグラスを弄りながら厳つい顔をした男がそう零した。
「おや、ブレアさんが珍しく難しい顔をしていますね」
「こりゃ明日は雨が降るね」
 同じ席を囲んでいたエルフ耳の男性と、頭に兎耳アクセサリーを付けた少女が意外そうな声を上げた。
「失礼な奴らだな。ちょっと気になっただけだろうが」
 ブレアと呼ばれた男は仏頂面をしながらグラスに入っていた無色透明の液体を一気に喉の奥へと流し込んだ。
「だが、知ってないと駄目なことでもあるだろう。自分の実力っていうのはよ?」
「確かにその通りだけど。こう、何となく分かるでしょ? 今の私のパワーはこれくらいだーって」
「いや、それじゃアバウトすぎだろ」
 手を広げてジェスチャーしてくる兎耳少女をブレアは半目で見る。
「そうですね。私の得物は弓ですけど……その腕が上達してるのは実感していますけど、強さとなると計りようがないですね」
 エルフ青年の弓の腕がかなりなものなのはブレアも知っている。この前の依頼でも30メートル以上離れている3匹のゴブリンの頭に矢継ぎ早にヘッドショットを決めていた。
 それもまた強さであることに変わりはないのだが、ブレアが知りたいのはそういうものではない。
「やっぱりゴブリンやコボルト相手じゃ相手にならねぇしなぁ」
「それなら今度は強い歪虚でも狩りにいく? ハンターオフィスで依頼が出てればだけど」
 ブレアは少しばかり考えてから、やはり違うと首を横に振った。
「そうじゃねぇ。狩りって言えちまう時点でそれは別モンだ」
 自分より下だと見てしまえるモノが相手では意味がないのだ。
 ブレアは考える。しかしどうすれば今の自分の強さを知ることが出来るのか考えつかない。
「まあまあ、実力なんて目に見えるものではありませんし。ハンター同士で競い合うようなものでもないんですから」
「……ハンター同士?」
 そう言ってエルフの青年がブレアのグラスにボトルの酒を注ぎ込む。そこでブレアは何かが引っかかった。
「そもそも強さなんて誰かが計ってくれるようなものじゃないんだからさ。戦ってみるまで結局は分からないじゃん」
「戦ってみる……」
 酒のつまみのピーナッツをぽりぽり食べる兎耳少女の言葉に、ブレアはまた何かが引っかかった。
「ハンター同士で……戦ってみる……よしっ!」
 そしてブレアは何か思いついたのか突然立ち上がった。その拍子にテーブルの上のものがひっくり返る。
「おや、何か思いついたんですか?」
「また碌でもない事なんでしょっ。てかその前にボクに謝れ!」
 上手い事自分のグラスとスープ皿を持ち上げたエルフ青年と、ピーナッツを顔全体で受け止めることになった兎耳少女がブレアに視線を向ける。
「ちょっと行ってくるわ」
 ブレアはそれだけ言い残し酒場を後にした。そして日も暮れてそろそろ窓口を閉じようとしていたハンターオフィスに滑り込む。
「あれ、ブレアさん。こんな時間に珍しいですね」
「ああ、ちょっと依頼をしたくてな」
 そう言ってブレアはささっと依頼の申請書を書き上げた。それを渡されたオフィス職員は雑かつ端的過ぎるその内容に眉を潜めた。
「あの、これ本気なんですか?」
「ああ、本気だとも」
 オフィス職員の質問にブレアは即答した。
 そして不敵な笑みを浮かべながらオフィス内を見渡す。まだ数名だけ残っているハンター達を見て、ブレアは更に笑みを深くした。
「なあ、お前ら。ハンター相手に戦ってみたいと思ったことはあるか?」
 獣のような獰猛な笑みを浮かべて、ブレアは笑った。

リプレイ本文

●戦場は整った
「おい、誰かいるか!」
 時刻は正午。勝負の場となった島の最南端の浜辺でブレアが声を上げた。
 参加者全員が敵というバトルロイヤルの中で自分の居場所を示すのは愚かな行為だが、そんなことは関係ないとばかりにブレアは更に2度3度と声を上げる。
 しかし、周囲からは全く反応はない。特に障害物のない平原では隠れる場所もないので本当に誰もいないようだ。
「何だ、こっちを選んだのは俺だけか」
 ブレアは拍子抜けだといった様子でグレートソードを肩に担ぐ。
「そんじゃ、探しにいくとするか」
 腹を空かせた獣のようにぎらついた目をしたブレアはゆっくりと歩き出した。

 一方で、島の北部では早くも動きがあった。
 林に覆われた北部は隠れる場所も多く、風が吹けば木の葉が音を立て移動の音も誤魔化してくれる隠密には最高の立地だ。
 リュカ(ka3828)は耳に届いた音に反応した。それは森が立てる音ではなく、何かが木を削るような音だった。
 すぐに近くにあった藪の中に隠れたリュカは周囲を伺う。そして、もう1度その音がした時にその姿を捉えた。
 そこに居たのは黒髪の体格のいい男――龍崎・カズマ(ka0178)であった。木の幹にダガーで何か刻んでいるようだった。
 リュカは背負っていた弓に手に取りながら考える。ここで仕掛けるべきか? しかし、勝負が始まって間もない今、他の参加者の動きも気になるところだ。
 躊躇い。その僅かな時間の間に状況が動いた。突如何かに気づいたカズマが木の幹を削るのを止めて振り返ったのだ。
 気づかれたか? そう思い矢筒に手を伸ばすリュカであったが、その手が矢に振れる前に林の中で銃声が響いた。
「――ぐぅっ!?」
 想定外だ。カズマにとってはそうとしか言いようがない。勝負が始まってからまだ5分経ったかどうかだ。まさか仕掛けをしている最中に狙われるとは不運としか言いようがない。
 それに気づけたのも傭兵の勘としか言えない。ナニカに気づいて振り返ったところで、その肩に弾丸が食らいついてきた。続いてその耳に銃声が届く。
 振り返った視界に映らない敵影、そして銃弾よりほんの僅かに遅れた銃声。その事実から分かる現状は、狙撃手に狙われているということだ。
「ちっ!」
 カズマは舌打ちと共に印を刻んでいた木の裏へと飛び込んだ。その時脇腹当たりを何かが掠め、そして銃声がまた響き渡った。
「ヒュー! 今のに反応するのかよ」
 カズマを狙った狙撃手、lol U mad ?(ka3514)は正直な感想を零した。
 特に初弾は完全に後ろを取ってからの奇襲狙撃だったのにも関わらず、lolがトリガーに指をかけた瞬間に何かに気づいてカズマは振り返ったのだ。
 次弾も掠めただけで回避されたし、熟練レベルのハンターの戦闘センスが常識離れしているのをその肌で感じた。
「さて、こっちが見つかる前に移動移動っと。行くぜ、Yolo」
 lolは相棒の猟犬の背中を一撫でして、姿勢を低く保ったままゆっくりと移動を開始した。

「銃声……もう始まってるんだ」
 林の中で響いた銃声は樹導 鈴蘭(ka2851)のところにも届いていた。
 彼は今、丁度北部と西部の境目にいる。木々が減ってところどころに大き目の岩が転がっている地形は、林の中ほどではないがやはり死角が多い。
 鈴蘭は木陰からその先の様子を伺い、動くものがないことを確認してから小走りに次の岩陰へと向かう。
「どこにいるんだろう……」
 視界に敵影なし。聴覚でも怪しい音は拾えない。林の方で聞こえていた銃声も止んでいることもこの時に今気づいた。
 不気味な静けさに鈴蘭は一度深呼吸をする。普段の依頼ではこうやって1人で行動することはない。おまけに敵は自分より強者ばかりだ。
「ダメで元々……よしっ!」
 気合を入れた鈴蘭は手にした銃のグリップを握りなおして岩陰から出た。
「「――え?」」
 その時、2つの声がハモッた。10mほどの距離を開けて見つめ合うのは、鈴蘭と十色 エニア(ka0370)だ。思わぬ遭遇とは、戦場では得てしてよくあることである。
 そして同じような驚いた顔をしていた2人だったが、鈴蘭の表情はだんだんと強張っていき、エニアの表情は自然にニコリとした笑みを作る。
 次の瞬間、2人は覚醒。瞳の灯していた明かりを消したエニアが長杖を振るうと、浅葱色の光が走りその軌跡の後に魔術文字が形成される。その文字の意味は『氷嵐』だ。
「最、悪っ!」
 鈴蘭は咄嗟に後退った、広範囲に冷気の嵐を生み出すエニアの魔術から逃れることは出来なかった。
 身に着けている防具が音を立てて凍り付いていくのが分かる。このままでは不味いと判断した鈴蘭が次に取った行動は、全力で走ることだった。
「えっ、ここで逃げるの!?」
「まともに戦っても負けるからねー!」
 三十六計逃げるに如かず。それを実践するかの如く鈴蘭は見事な逃走っぷりを見せた。

●混戦模様
 勝負が始まって1時間が過ぎようとしていた頃、北の林で戦闘が発生していた。
「Hey! ちょっとしつこすぎないかい?」
 木の影に背を預けたlolは両手に持つハンドガンのリロードをする。そして少し顔を出して様子を確認しようとした時、赤く燃えるようなオーラを放つ刀身が目に入り、その場でとっさにしゃがみ込んだ。
 lolの頭上を通り過ぎた刃は木の幹へと向かい、僅かに削るような音を残しながらそのまま振り抜かれる。
 音を立てて倒れていく木を挟み、lolとアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)が対峙する。
「狙撃手は厄介だ。早めに潰すに限る」
「止めろよ照れちまう。けどそれ、過大評価しすぎだぜ♪」
 lolが少しふざけた口調で言ってみたものの、それに対するアルトの返事は振動刀を構えることだった。
 lolはそれに肩を竦め、銃を持つ両手をだらんと下げる。
「猟撃士だからって、接近戦が出来ないって誰が決めたんだ?」
「……私は疾影士。その接近戦のエキスパートだ」
 同時に鳴る2発の銃声、そして低い機械音と刃が風を切る音がする。その後に、何かが地面に倒れる音がした。

 最初の脱落者が出たところで、このバトルロイヤルの勝負は加速していく。
 鈴蘭とエニアは西部から北部の林まで鬼ごっこをしながら移動してきていた。
「不味いな。このままだとジリ貧って奴だよ」
 藪の中に逃げ込んだ鈴蘭は苦し気に息を吐く。視線を後ろに向ければ、エニアはこちらを見失ったのか周囲を見渡しているのが見えた。
 近くに隠れているってことはバレている。こうなったらせめて一撃。そう思った時、エニアの上から影が落ちてきた。
「ぐっ――!?」
 完全なる奇襲。その背中を襲った衝撃でエニアの体は吹き飛び近くにあった木に叩きつけられた。
 降り立った影――アイビス・グラス(ka2477)は翡翠の色に似た髪を跳ねさせ、そして鈴蘭の潜んでいる藪へと視線を向けた。
 瞬間、一条の光がアイビスへと迫るが彼女は身を捻りそれを避けると、脚部に集中させたマテリアルを開放して地面を蹴った。
 アイビスの瞳が相手の藍色の瞳を捉えた時、その拳が鈴蘭の腹部に突き刺さっていた。そして逆の拳を構え、一言だけ告げる。
「これが、生き残るってことなの」
 まるで自分に言い聞かせているような言葉と共に、振り抜いた拳が鈴蘭の顎を捉えた。

「あ、やばい。この先進みたくないかも」
 北部の林を前にして玉兎 小夜(ka6009)は足を止めていた。林の中からは剣戟や銃声、木々の倒れる音まで聞こえてくる。
 明らかに複数の場所で戦闘が発生している。そしてどこも音と気配だけだがかなりの激戦ってことだけは分かる。
 どうしたものかと小夜は腕を組んで考える。そんな彼女の後ろに迫る影があった。
「ほう、どうやら面白いことになってるみたいじゃねぇか」
 その影の主は小夜の首に腕を回すと、その肩口から林へ視線を向けつつそう口にする。
「ひゃわああぁぁっ!?」
 突然体を触られておまけに耳元で声をかけられ、小夜は大きな悲鳴を上げつつ首に回された腕を振りほどいた。
 距離を取って振り返ってみれば、そこにはニヤリと笑っているこの勝負の主催者ブレアの姿があった。
「かくれんぼ好きには困ったもんだぜ。なあ、お嬢ちゃん?」
「え、えーっと……うん、そうだねー」
 気軽に話しかけてくるブレアに、半ば頭が働いていない小夜は片言になりつつとりあえず話を合わせてみた。
 その返答で正しかったのか、ブレアはもう一度ニヤリと笑うとグレートソードを担ぎなおして林の中へ向かい歩いていく。
「さあ、お嬢ちゃん。強い奴と戦いに行くぞ」
「お、おう。行こうぜ、オッサン」
 自分がその強い奴にカウントされていないことに気づきつつも、小夜は流されるままにブレアの後に続くことにした。

●2つの三つ巴
「ちぃっ、思うようにはさせてくれないか」
 カズマが分厚い刀身を持つ斬龍刀を真横に構えると、ものすごい衝撃が刀を掴む両腕に伝わってきた。
「考えることは皆同じだった、ってことみたいね」
 アイビスは刀の腹を殴った拳を引き、カズマが刀を構えたのとは逆の脚を跳ね上げる。
 カズマはその蹴りが頭部を狙ったものだと察すると、刀を地面に刺し、そこを軸にして腕力で強引に体を動かしアイビスの脚を避けた。
 互いの戦闘能力は僅差。2人共それは既に察することが出来ていた。それ故に今この状況は非常に危うい事も分かっていた。
「2人共、そんな動きをしながら喋っていてよく舌を噛まないね」
 そこで聞こえてくる3人目の声。リュカがそう言葉を口にしながら槍を薙いだ。
 カズマとアイビスは打ち合うのを止めて地面を蹴り、距離を取りながらその攻撃を避ける。
「そっちも似たようなものだろ!」
「っ! そうかも、しれないね」
 カズマが刀から持ち替えた銃でリュカを撃つ。避けそこねたリュカの腕を弾丸が貫くが、その傷口は不自然なほどにすぐ血が止まり、そして見ていて分かるくらいに急速にその傷口が治っていく。
「ちぃっ、自己治癒出来る奴はやっぱり面倒――!」
「背中がお留守だよ!」
 カズマがリュカを攻撃する間に背後へ回ったアイビスが拳を振るう。右拳は何とか避けるが、続く左拳が脇腹を叩いた。
 カズマは咳き込みそうになるのを何とか耐える。だがそんなカズマの視界の端にマテリアルが収縮させた槍の矛先が映った。

 その頃、森の別の場所でも三つ巴の戦いが始まっていた。
「いや、どうしろって言うのさこれは……」
 ただ、その内の1人である小夜は目の前で行われている戦闘の様子をただ見ているだけしかできなかった。
 赤い刃の軌跡が複数走ると、白い重厚な一撃がそれを迎え撃つ。
 白い剣線が閃いたかと思えば、赤いオーラを纏う十字架がその一撃を受け止める。
 アルトとブレア。2人の戦いはまるで暴風のように周囲に余波を飛ばし、傍にある木々が倒れ時に地面が抉れる。
「強い。どれだけ鍛えてきた?」
「生憎と数えていない。そんな暇はなかった」
「そうかい。気に入ったぜ!」
 剣と刀を一度打ち合わせ、ブレアはその衝撃を利用しながら僅かながら距離を取る。
「おい、お嬢ちゃん。何を呆けてるんだ。お前さんも楽しめ」
「いや、幾ら何でもハードル高すぎない?」
 今のブレアとアルトの攻防は、小夜の目でも何とか捉えることができた。ただ、捉えたからと言って体がそれについていくかは別だ。
 小夜は垂れた兎耳を揺らしながら首を横に振る。
「何だ、仕方がねぇな。俺が援護してやるから、一発くらい打ち込んでみろ」
「そんな無茶苦茶なぁ……」
 しかしこの依頼に参加した以上は戦いは避けられないのだ。それに小夜にも強くなりたいという思いがある。その為ならば……。
 そして小夜は覚悟を決めて腰に差した刀に手を掛ける。それに対してアルトは小夜の方へ視線を向け、そして自然体のまま攻撃を待つ。
「……疾っ!」
 僅かな間を置き、小夜が地面を蹴った。アルトとの距離を詰め、刀の間合いに入った瞬間鞘から刃を滑らせる。
 それに対してアルトは十字架型の盾でそれを構えた、刀と盾が触れた瞬間、盾を外側に跳ねさせ刀と共に弾く。
「あっ……」
「良い一撃だ。だが、弱い」
 赤い剣線が閃く。小夜を袈裟斬りにしたその刀は、さらに返す刃となり振るわれる。
「悪いな。邪魔するぜっ」
 だがそれが届く前に小夜の前にブレアが割り込んだ。そして刀の刃を鎧を纏った腕で受け止める。
「援護、遅すぎぃ」
「悪態付けるなら問題ねぇな!」
 そのまま倒れる小夜にブレアは1つ笑い、そしてすぐにアルトに視線を向けて笑った。今度は獰猛に。
「それじゃあそろそろ本気でやろうぜ」
「望むところだ」
 赤い連撃と白い一閃がまたぶつかる。

●勝利を掴むのは誰だ
「酷くやられたようだな」
「その台詞、そっくりそのまま返すぜ」
 そろそろ太陽の光がオレンジ色に変わろうかと言う頃、北の森の一角で2人のハンターが互いの姿を見てそう言った。
「もう逃げないのか?」
「あんたが相手で、ここまで近づかれちゃ逃げられないだろ」
 そう言ってカズマはナイフと銃を構える。それに応えるようにアルトもまた刀と盾を構えた。
 2人共既に満身創痍に近い。持久戦は不可能、スキルの消費具合からも全力を出せる時間もあと僅かだ。
「勝っても負けても恨みっこなしってか」
「言うに及ばず、だな」
 2人の闘気が高まると同時に、周囲が突然静かになる。いや、それは2人がそう感じているだけで、それだけ集中力を高めている証であった。
 そして終わりが始まる。カズマの銃が火を噴き、アルトがそれを盾で防ぐ。次に盾の横から突き出された刀がカズマの脇腹を狙うが、地面を蹴ったカズマはそれを躱しそのままアルトが盾を手にしている側へと回り込んだ。
「ぐぅ!?」
 盾を遮蔽物にされ一瞬カズマの姿を見失ったアルトは、すぐに脇腹を斬られた熱さと痛みに気づく。
 そこでアルトは咄嗟に盾を前に押し出すようにして放り投げた。突然目前に迫った十字架型の盾をカズマは咄嗟に避けるが、それが判断ミスだったことに気づく。
 アルトは下段に刀を構えたまま突っ込みすぐさま斬り上げ、重力に引かれるままに返した刃を振り下ろす。
「……終わった、か」
 本当の意味で静寂が訪れた林の中で、アルトはその場で崩れ落ちるようにして座り込んだ。
 ここまで消耗する戦いをしたのは久しぶりかもしれない。人、それもハンターを敵に回すことの厄介さが再確認できる戦いであった。
 そんな勝利の余韻に耽っていたところで背後から近づいてくる者の気配に気づく。倒されたハンターの回収係が来てくれたのだろうとアルトがそちらに視線を向ける。
「あー、えっと、ごめんねぇ。降参してくれたりする?」
 そこに立っていたのは赤い目をしたヴォーパルバニー。牙持つ小さな兎が、巨大な火の鳥の喉元に食らいついた。

依頼結果

依頼成功度大成功
面白かった! 9
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニka3109
  • 不撓の森人
    リュカka3828
  • 兎は今日も首を狩る
    玉兎 小夜ka6009

重体一覧

参加者一覧

  • 虹の橋へ
    龍崎・カズマ(ka0178
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • 【ⅩⅧ】また"あした"へ
    十色・T・ エニア(ka0370
    人間(蒼)|15才|男性|魔術師
  • 戦いを選ぶ閃緑
    アイビス・グラス(ka2477
    人間(蒼)|17才|女性|疾影士
  • 世界の北方で愛を叫ぶ
    樹導 鈴蘭(ka2851
    人間(紅)|14才|男性|機導師
  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニ(ka3109
    人間(紅)|21才|女性|疾影士
  • Two Hand
    lol U mad ?(ka3514
    人間(蒼)|19才|男性|猟撃士
  • 不撓の森人
    リュカ(ka3828
    エルフ|27才|女性|霊闘士
  • 兎は今日も首を狩る
    玉兎 小夜(ka6009
    人間(蒼)|17才|女性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/02/22 09:16:28
アイコン 雑談【?】
龍崎・カズマ(ka0178
人間(リアルブルー)|20才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2016/02/27 10:57:54