• 幻魂

【幻魂】泥中の星

マスター:鷹羽柊架

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/04/06 12:00
完成日
2016/04/12 06:16

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 魂の道から戻ってきたファリフは一人外を眺めていた。
 外の景色は雪が融け、今は春先の冷えが赤き大地を冷やしている。
 そして、同時に多数の歪虚もまた、体勢を整えて再び幻獣を襲おうとしているという。

 ファリフは一人、赤き大地を見つめていた。
 彼女の心中にあるのは、前回、魂の道で言われたハンターの台詞。
 
「いつか同じ状況に直面する日が来るかもしれへん。血で頭を逆上せてしもたら、大事なもん何も守られんで」

 ハンターの言うとおりだとファリフは思う。
 フェンリルが見た夢とよく似たシチュエーションだったから、感情が高ぶってしまったが、それだけでは全滅となる事もありえる。
 いかなる時も最善を考え、動かなければならない。
 これから来るだろう歪虚を退くことが出来なければ、赤き大地に生きる人々……そして、幻獣たちが生命の危機に晒されるだろう。
 ぎゅっと、拳を握ったファリフの手をさらさらとした毛並みが被せてきた。
「フェンリル……」
「ここにいたのか、お嬢ちゃん」
 ファリフを包み込むようにフェンリルが回り込む。
「奥義の事ですか? ファリフ」
 フェンリルと共に現れたのはスコール族長補佐であるカオンであった。
「うん……それもあるけど……もっと、しっかりしなくちゃって」
 顔を伏せるファリフにフェンリルが身を寄せる。
「……戦いの場において、自身を見失うのは危険な行為です。しかし、戦わなければ、それを制御する事は難しいでしょう」
 カオンの言葉にファリフは一つ小さく頷く。
「安心しろ、お嬢ちゃん。お嬢ちゃんにはナイトであるこの俺様がいるのだからな」
 片目を瞑るフェンリルはまるで気障な人間のような仕草をする。
 出会ってからまだ一年も経ってないのに、一緒にいた密度はとても濃く、何年も一緒にいたような気持ちになってしまう。
 ふと、ファリフはナーランギの言葉を思い出した。

「これから、お前は多くの出会いを経験する。
 しかし、出会いと同じ数だけ……別れを経験するだろう。
 大きな出会いがあれば、大きな別れがある。
 その事を覚えておくがいい」

「お嬢ちゃん?」
 フェンリルがファリフの顔を覗き込み、様子をうかがうと、ファリフはフェンリルの首に自身の腕を巻き付ける。
「……ナーランギの言葉を思い出したんだ……多くの出会いとその分だけの別れを経験するだろうって……」
 大幻獣、ナーランギがファリフにかけた言葉は最初は理解できなかった。
 しかし、魂の道での事を経て、ファリフは彼が言いたかったことの一部分が理解してしまった。
 別れとは、幾通りもある。
 赤き大地の戦士としての資質を持つファリフにとって、死はすぐ近くにあるものとして認識している。
 生きるものはいつか死ぬ。
 当たり前のことだ。
 それが自分のせいで……という考えにファリフは恐れてしまった。
「お嬢ちゃん、心配するな」
 優しいフェンリルの声にファリフは顔を上げる。
「ありがとう、フェンリル。皆を守れるように、ボクも頑張るよ」
 やっと笑ったファリフにフェンリルは少し安堵したようであった。
 そんなファリフとフェンリルと微笑ましくカオンは見守る。


 怠惰の軍勢が揃う頃、アクベンスは春先に吹く強風を受けつつも、帽子が吹き飛ばされないように抑えていた。
 鈍色の髪は光をはじくようにちらちらと輝いている。
 その表情はどこか浮かない。
 どこか不機嫌そうな表情にも見える。
「折角、ファリフ姫にご挨拶が出来るのに、雪が融け汚くなっているところを進むのですからね。ファリフ姫が汚れるのは本意ではありません」
 人間じみた事を言うアクベンスであるが、ファリフが汚れるのはもっと嫌なようだ。
「泥中でも輝くことができる魂と信じてますよ……ファリフ姫」
 ファリフの事を考えて、不機嫌そうな表情が一転し、楽しそうな表情を見せた。
 目を細めたアクベンスは自身の手駒を率いるべく、踵を返した。

リプレイ本文

 歪虚達が無数の群れとなり、幻獣の森を襲う頃までそれほど時間がかからないくらいになったとき、アカーシャ・ヘルメース(ka0473)がファリフに声をかけた。
「どうかしたの?」
「ファリフはん、前にウチが言うたことやけど」
「確かに、アカーシャさんの言ったことは大事なことだと思う。これから歪虚がこの幻獣の森を襲おうとしている」
 アカーシャの言葉にファリフは後ろの幻獣の森を振り返る。
「前回、失敗した事を引きずるわけにはいかない。戦いでそんなことは危険だ。切り替えていくよ」
 ファリフの表情、声、言葉からしてとても落ち着いており、頭の切り替えはきちんとなっているとアカーシャは判断した。
「あまり、気張らんと、足ぃ取られんで」
「大丈夫。だって、アカーシャさん達がいるんだし! ね!」
 振り向いたファリフは元気いっぱいの笑顔だ。
「そうだな」
「一緒に守ろうね」
 アカーシャの後ろにいたオウガ(ka2124)とアイラ(ka3941)が応えた。
 ふぅっと、アカーシャがため息をつき、自身もファリフに倣って切り替える。
 そんな様子を見守っていたセツナ・ウリヤノヴァ(ka5645)がそっと微笑む。
「気持ちの切り替えが出来てよかったですね」
 彼女が声をかけたのはカオン。
 カオンはファリフの方を見つめつつ、セツナの言葉に同意する。
「ファリフは転んでもちゃんと立ち上がる。また強くなっていくから」
 八島 陽(ka1442)が幻獣の森がある方向の逆の方向を見つつ呟いた。
 何度も一緒に戦っているから素直に感じることだ。
「皆様に何度も手伝ってもらってますが」
 カオンが少し手厳しく返すと、ルスティロ・イストワール(ka0252)がくすくすと笑う。
「今回も手伝うよ」
 ルスティロが豊かな緑髪を風に遊ばせつつカオンへ向ける。
「ファリフとフェンリルをよろしくお願いします」
 カオンはセツナ達へ願いを伝えた。
 ふと、アイラは向こうへと聴覚を向ける。
 聞こえてくるのは不協和音のような獣の叫び声。
「アイラ様には聞こえてますか」
 カオンが尋ねると、こくりと、アイラが頷く。
 確実に近づいてきているのだ。
 無数の歪虚達が。


 歪虚は幻獣の森の四方を囲い込むように攻めてきている。
 赤き大地の部族とハンター達は東西南北をそれぞれ手分けして守る形としていた。
 人類の数と歪虚の数は違う。
 生きて帰れるかも保証できないが、生きて帰らないとこの幻獣の森は守ることができない。
 全員が生きる覚悟を決めてこの場にいる。
「……大勢できたもんだね」
 ぽつりと感想を呟くルスティロが戦闘態勢をとっていた。
 少しずつ、近づいてくる歪虚の姿が見えて来た。
 まず見えたのは大きなオーガの頭、そして狒々が伸ばした長い手が見えてくる。
「なんだ?」
 前衛のオウガが異変に気付いた。
 歪虚にしては細っこい影。
「人型の……歪虚……?」
 セツナが目視したことを気づいているかのようにその細い影が前線に出る。
「これはこれは。我々に盾突き、あがく人類の皆々様、ごきげんよう!」
 よく通る声はまだ少年の声。
 兎耳がついた帽子をとり、胸へと当てて大仰に一礼する。
 腰を追ったまま、少年は顔を上げて、ハンター達を見やった。
「ファリフ・スコール姫はいずこか」
 一瞬にしてハンター達に警戒が走り、臨戦態勢を取る。
「おやおや、随分と物騒ですねぇ。私はファリフ姫に会いに来ただけですよ」
「ファリフくんに何の用かしら」
 アイラは赤黒い刀身のレイピアを少年に向ける。腰を屈めて構えた為、左の髪が隠れて右の緑の瞳が歪虚を厳しく見据える。
「名乗りもしねぇ奴に言うかよっ」
 更にオウガが雷鎚を振るい、紫電を走らせつつ、先を向ける。
 オウガの言葉に確かにとアクベンスは体勢を整えて納得していた。
「私はアクベンス。この大地のすみっこにいるしがない怠惰の歪虚です。青木燕太郎閣下の呼びかけに応え、ファリフ姫の美しさを見定めるべく、参りました」
 にっこり笑むアクベンスはファリフを見つけていた。
 蒼銀の毛並みの狼に守られながら、自身も武器を構え、戦闘体勢をとる褐色の姫……ファリフ・スコールを。
「楽しませていただきますよ。姫」
 酷薄な笑みを浮かべたアクベンスは軽やかに跳躍して後退する。
 アクベンスが後方へ跳ぶなり、狼型歪虚が飛び出してきた。
「品定めってところだろう」
「ファリフはんはまだ研磨中の上玉や! 失礼な奴やな!」
 陽の推察にアカーシャも賛同して威勢よく叫ぶ。
「ファリフさんとフェンリルさんは下がってて、あっちの大将が下がったんだから、こっちもね」
 ルスティロが言えば、ファリフは頷いた。
 陽がフェンリルへファリフの警護と、何か異変があったら教えてくれと頼む。
「分かったが……お嬢ちゃんは俺が守る。お前達は存分にこの結界を守れ」
 フェンリルの言葉に陽はハンターを信用してくれていることに目を見張ったが、すぐに頷いて戦闘態勢を取る。
「皆、お願いするよ!」
 ファリフの言葉を背に受け、セツナが駆けだした。

 セツナが狼と交戦する前に陽が光の三角形を形成させる。
 その頂点の一つ一つが更に輝きを増していき、陽が狼の射程内に入る間合いを注意深く確認していく。
 見極めた陽がデルタレイを発動させて先頭を走る狼三体へと向ける。
 狼達の動きを鈍らせるには十分な威力。
 一瞬の緩みを逃さなかったセツナが低く構え、下から薙ぎ払って狼の前足から鼻先を斬りおとした。
 他の先頭を走っていた狼達がセツナを通り抜け、次の獲物……ルスティロの方へと牙を向ける。
「悪いけど」
 ルスティロが構えているのはナイフだった。
 右の目が緑からガーネットへと輝きを変えて覚醒状態へとなり、全身からナイフの先までマテリアルが循環し、光が周囲へ散っている。
「森には行かせないからね!」
 狼がルスティロの懐に飛び込んで、獲物を喰らえると首の付け根から一気に横にナイフで喉元を引き裂く。
 前衛にいたアイラは気付いてぬかるんだ地を蹴った。
「オウガくん!」
「分ってる!」
 警戒するアイラが何故叫んだかをオウガは理解している。
 こちらに向かってきている後衛のオーガが槍をこちらに投げようとしているのにアイラが気付いていた。
 雷鎚を持ったオウガが思いっきり腕を振って雷鎚を目的のオーガへと投げつける。
 空を割いて飛んでいく雷鎚は轟音を上げて稲光のようにオーガの方へと飛んで行った。槍を投げようとしていたオーガの肩に当たり、肩の骨が砕ける音がした。
 当たった角度と遮蔽物がなかったため、オウガの手の中に雷鎚が戻る。
「さぁ! このオウガ様が相手だぜ!!」
 ナックルを纏った自身の両拳をあてて威勢よく響くオウガの声はオーガ達の意識を向けるには十分なもの。
 先にハンター達との交戦する間合いまで詰めた剣を持ったオーガとアイラは剣を合わせた。
 重いオーガの一撃にアイラは顔をしかめてしまうが、すぐに引き間合いを詰めなおしをするが、ぬかるんだ地に足を取られそうになる。
 負けるわけにはいかない。
 これ以上、おじいちゃんが魂をかけて守ろうとしていた赤き大地を歪虚の好きにはさせられない。
 再びアイラは泥を蹴ってオーガの腹を切り裂いた。

 歪虚の群れは思った以上に動きが速く、知能が低くて秩序がない。
 ぬかるんだ地を蹴り、敵が跳ねた泥を被りつつもハンター達は敵を倒していた。
「ファリフ姫……我々の挨拶はいかが?」
 果敢に戦うファリフを見ていたアクベンスの声がアカーシャへと飛び出す狒々後ろより聞こえる。
「くっ……!」
 ファリフを守ろうにも狒々が邪魔な陽は仕方なく狒々と対する。
 一気に間合を詰めたアクベンスがファリフ腕を取り、その指先はファリフの指先へ滑り、絡めていく。
 くらりと眩暈のような感覚にファリフは本能的に危険を感じる。
 瞬間、光の障壁がアクベンスとファリフを分け隔てた。
「くっ」
 電撃にアクベンスは倒された歪虚の方へ後退していった。
 狒々と狼をそれぞれ倒していた陽とフェンリルがファリフを守るように立つ。
「今、攻撃があった」
「そういう仕掛けか」
 フェンリルがファリフの方を向くと、頭を振ってアクベンスを見据えていた。
「ファリフはん!」
 ファリフの様子に気づいたアカーシャは操竜術で狒々を襲わせ、自身もまた、自身の間合を取って棍を構え、突竜撃で狒々の腹を突き飛ばす。
「大丈夫か!」
 カオンの後ろまで下がったファリフにアカーシャが尋ねる。
「……あいつに触られたらぞわっとした途端、頭の中がぼうっとなったんだ」
「何らかの攻撃やな……いけるか?」
 顔を顰めつつ、アカーシャが尋ねると、「勿論!」とファリフはしっかりと返した。

 オーガ二体と対峙していたオウガは体力の消耗を感じざるを得なく、顔を顰めてしまう。
 悪態の一つでもとりたかったがそんな暇すらなく、オーガは泥に足をとられてしまった。
 崩れる全身に「やばい」と思考が真っ白になったが、視界がぶれる。
「しっかり」
 アイラがオウガの腕をとって、支えていたのだ。
「ありがとな!」
 体制を整えたオウガはコンバートソウルを発動させて俊敏にオーガとの間合いを詰める。
 右から拳を突き出すオウガの攻撃を避けるオーガに対し、反対から白猫のようなものが襲い掛かり、オーガは怯んでしまう。
「この森は……」
 左右の攻撃に気をとられたオーガは正面から来たアイラの攻撃には気付かず、揺らめくような赤黒い剣が自身の懐に飛びこむことを許してしまった。
「森も……友人もあなた達には渡さない!」
 アイラの気合はオーガの片目にレイピアが突き刺さり、そのまま横へと薙ぎ、両目を抉り切る。
 視界が奪われた事により、オーガの動きが鈍った。
「とどめだ!」
 オウガの大きな声が響き、見事な突きがオーガの腹に決まり、防具が砕け散る。
「これ以上、赤き大地を好きにはさせねぇよ」
 その言葉はアクベンスへと向けられていた。
 まだ痺れでも残っているのだろうか、アクベンスはゆっくりと立ち上がる。
 倒されて横たわる歪虚の身体に片足を乗せた。
「ハンターたちの勇敢さに今一度去りましょう」
 そう言うなり、手近な木に昇り、枝を伝い、姿を消した。
「……くそ」
 悪態をついたオウガだが、まだ敵は残っている。
 少しでもこの場の歪虚を倒し、結界を守らなければならない。

 ルスティロが狒々とオーガに挟まれており、苦戦していた。
「他にもいるのになぁ……歪虚にモテてもうれしくはないよ」
 背後にいた狒々の腕が高く振り上げられてルスティロの背へと叩き落とす。
「……ぐっ!」
 衝撃で声を上げることもままならず、ルスティロは滑らないように足を踏ん張る。
 獲物の動きが鈍ったところで歪虚達が腕を振り上げてルスティロを殴打していくが、一体の動きが止まった。
 動きが止まった狒々はゆっくり倒れて行き、その後ろには剣を振り下ろしているセツナがいる。
「助か……ゴホッ」
 ルスティロが礼を言おうにも背中に受けた衝撃でまだうまく声が出ない。
「アクベンスは去りました」
「この歪虚達を何とかしないとね……」
 セツナの報告にルスティロはため息をついた。
「……仲間がいます……大丈夫です」
 疲弊していたが、力強いセツナの言葉にルスティロは「いいフレーズだね」と返して笑む。
 再び、オーガへと向かったルスティロはレイピアを向ける。
「……やられる気はないんだ……」
 体力は半分以上は持っていかれただろう。
 地形の悪さや敵の強さはハンター全員の体力を奪っていった。
 自己治癒の術を発動させて、皆、諦めずに戦っている。
 目の前にいる歪虚を倒すために。
「……お返しさせてもらうよ……!」
 見届け、紡ぎたいのだ。
 その為には生きるしか術はない。

 戦いの喧騒が静まり、アカーシャは周囲のハンター、敵を確認していた。
 敵と認識していたものは立っていない。
 逃走したアクベンス以外はもう倒されたのだろうか。
 他の結界の方向がどうなっているか知る術はなく、各々の体力の限界は感じ取っていた。
 限界の中、アイラは一人、超聴力を使っている。
「……アイラさん……?」
 セツナはアイラの様子に気づいて声をかけた。
 アイラの隣に居たオウガが周囲を見回す。
 音に気づいたアイラが声を上げる。
 倒された歪虚の中に兎型歪虚が一体飛び出してきた。
 向かう方向はファリフ。
 陽がデルタレイで兎を撃ち抜き、動きを抑える。セツナが先手必勝で兎の前に飛び出して動いて兎の首をはねる。
 一瞬にして、全員がファリフを守るために動いた。
 いつの間にかに兎が潜んでいたのだろうかセツナが振り向いてファリフの無事を確認しようとした時、彼女は叫び声をあげた。
 頭の中が真っ白になり、思うのはファリフのこと。
 その場にいる誰もがそう思っただろう。
 ファリフはフェンリルを大切なパートナーとして共にいる。
 フェンリルもまた、ファリフを支えている。
 
 あなたは倒れてはいけない。

「フェンリル!!!」

 誰の叫びか分らない。
 誰の叫びでも変わらない。
 フェンリルの腹を先の尖った錘の先端で引き裂き腕を突っ込んで何かを抉り、掴もうとするアクベンスがいた。
 背後から腹を切られ、中を蹂躙されるフェンリルは苦しさで劈くような叫び声をあげる。
「離れなや!」
 アカーシャと陽がアクベンスへ武器を振り上げると、アクベンスはフェンリルの生き血をハンター達に掛けて素早い動きでアカーシャを吹き飛ばす。
 アカーシャの細く白い腕が鋭い爪跡が残されている。
 フェンリルの腹から溢れ出る血液が流れ落ち、ぬかるんだ泥と交じり合っていく。
「フェンリル……」
 蒼い白銀の艶やかな美しい毛並みから艶がなくなり、生気をなくしたように輝きが鈍っていた。
 つい、先ほどまではあんなにも輝いていたのに。
 逞しいはずの身体が数十秒で細くなっている。
 ハンター達から距離を取ったアクベンスはフェンリルより取り出したものからとめどなく流れる血液を嘗めてにやりと笑う。
「あれ……あんな髪の色だっけ……」
 呆然とつぶやいたのはルスティロ。
「あの色は……」
 アイラがアクベンスの髪の色に気付いた。
「マテリアルを吸収したのか!!」
 陽の叫び声にアクベンスは愉しそうに戦利品を嘗めては血を啜っている。
「……好い顔をしておりますよ。姫……」
「返せ、フェンリルのものを!」
「厭です。この者は貴女に心を許している。貴女もまた、心を許している。
 恋敵は潰すものですよ」
 そう言うとアクベンスは戦利品……フェンリルの心臓を噛みちぎり、素早く姿を消した。
「……結界へ下がろう」
 ファリフはフェンリルの腕をとって立ち上がらせようとすると、皆が手伝ってフェンリルを運んだ。
 ルスティロはファリフを見て強く歯をかみ締める。

 ……ハッピーエンドに……したいよね。

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MVP一覧

  • 援励の竜
    オウガka2124
  • 洗斬の閃き
    セツナ・ウリヤノヴァka5645

重体一覧

参加者一覧

  • 英雄を語り継ぐもの
    ルスティロ・イストワール(ka0252
    エルフ|20才|男性|霊闘士
  • 星の慧守
    アカーシャ・ヘルメース(ka0473
    人間(紅)|16才|女性|霊闘士
  • 真実を見通す瞳
    八島 陽(ka1442
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • 援励の竜
    オウガ(ka2124
    人間(紅)|14才|男性|霊闘士
  • 太陽猫の矛
    アイラ(ka3941
    エルフ|20才|女性|霊闘士
  • 洗斬の閃き
    セツナ・ウリヤノヴァ(ka5645
    人間(紅)|24才|女性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
アカーシャ・ヘルメース(ka0473
人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2016/04/06 01:37:27
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/04/05 17:08:20