• 龍奏

【龍奏】陽動作戦!ストーカーを打ち払え!

マスター:御影堂

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~10人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/04/20 09:00
完成日
2016/04/28 10:01

みんなの思い出

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オープニング

●デ・シェール遺跡 とある戦場にて
 龍園の南、デ・シェール遺跡。
 未だ歪虚に支配されたこの遺跡は、カム・ラディ遺跡と同等の機能を有するという。
 この遺跡奪還のために、人類軍本隊を含めた大規模な作戦が敢行された。

「ひぃえぇ」
 主戦場から少し離れた場所で、二人の少女が戦っていた。
 彼女たちは普段は遺跡探索を志す、ハンターの端くれだった。名前は、ハラミーとカルビー。ハラミーは機導師として魔導バイクを操りながら戦い、カルビーはハラミーを援護するようにライフルの銃口を向ける。
 二人とも、戦い慣れはしてない。それでも、遺跡を奪還するための戦いならばと前線に赴いたのだ。力は足らずとも、できることはあるはず。
「ハラミー、一旦退いて!」
「あいあい!」
 全力で敵中を駆け抜け、ハラミーはカルビーの傍へと戻る。一進一退の攻防、主戦場から敵戦力出来る限り引き離すことが目的だった。
 結果として、狂騒曲を奏でるような喧騒が巻き起こっている。

●ストーカーかくあるべし
 その渦中にあって、動かないリザードマンたちがいた。
 一際目立つ、推定身長4メートル強のリザードマンを中心とした一団だ。おそらくは一個小隊の長であろう巨大リザードマンは、戦場を舐めるように眺めていた。
『……』
 周りを取り囲むリザードマンたちは、隊長の沈黙に落ち着かない様子だ。
 副長らしき眼帯をしたリザードマンがおずおずと、声をかける。
『あの……動かないので……』
 数秒の沈黙、のち、巨大な口がにやりと歪んだ。
 長い舌で口の周囲を湿らすと、咆哮を上げる。眼帯は咆哮に顔を歪ませながら、ため息を吐いた。この咆哮は、何か狙っているタカラモノを見つけた時のものだ。
 戦場においても、この巨大リザードマンは自身の欲を優先させるらしい。
『あそこだ』
 背負っていた自身の身長と同じほどの大剣を、軽々と片手で持ち、切っ先を向ける。その先では、ハラミーとカルビーが合流したところだった。
 副長が小首をかしげて、尋ねる。
『あの人間どもが何か?』
『欲しい』
 巨大リザードマンの脳内では全てを置いて、この言葉が優先される。欲しいものを手に入れなければ、気がすまないのだ。そして、この巨体から発せられる命令は一個小隊の行動指針として機能する。
『行くぞ』
 二言目を発したと同時にリザードマンは地響きを鳴らして、駈け出した。目下、一個小隊の全員が動き出す。そして、この小隊の動きが戦場の流れを変え始めた。
 一処に向けて邁進する部隊を前に、そこに重要な何かがあると思わせたのだ。

●戦う決意
「……え?」
 戦況の変化に、カルビーは口が開いた。
 何かがおかしい、と思うと同時にこちらへ向かってくる砂煙が見えたのだ。目を凝らせば、どこかで見た姿のリザードマンがいた。
 以前、カム・ラディ遺跡で相対した巨大リザードマンだ。その瞳はカッと見開き、二人の姿だけを映していた。
 狂気を孕んだ執着的な視線に、二人の顔が青ざめる。
「私達、何かしたっけ?」
「わ、わかんない。けど、逃げなきゃっ!?」
 のんびりした言葉を発したハラミーをたきつけ、カルビーは戦場を離れようと試みる。だが、ストーカー的偏執者な巨大リザードマンが作り出した混乱が、逃亡を阻む。
「こうなったら、やるしかないねっ!」
「本気……なの?」
 ハラミーがブレーキをかけて、魔導バイクを止める。気丈にも笑っているものの、その口の端はピクピクと動いていた。
 逃げられないなら、やるしかない。
「やらねば、ならないときがある」
「それが、生きるためならば……戦おう」
「命あっての……」
「「物種だから!」」
 ハンターたちに合図を送り、二人はストーカーリザードマンと戦うことを決めるのだった。

リプレイ本文


 怒号と地鳴りの響く戦場で、葛音 水月(ka1895)は楽しげな表情を浮かべ、その中心地へと赴いた。中心地に辿り着いた水月は、周囲に展開するリザードマンの数に舌を巻く。
「あはっ、すごい数のトカゲさんたちですねー」
「素敵ね、これだけ叩き落とせればトカゲ皮で全身スーツが作れそうよ……まぁ、残らないでしょうけど」
 マシンガンに弾を込めながら、マリィア・バルデス(ka5848)が上空を見上げる。ワイバーンもリザードマン同様に、ココを目指していた。
 その場所にいる人物を見て、柊 真司(ka0705)は苦笑を浮かべた。
「こりない奴らだなぁ。二人には同情するぜ」
 隣では、ザレム・アズール(ka0878)が、近場の部隊へ連絡をつける。
「敵の狙いは……」と言葉を濁しつつ、銃で応戦する。横目で見れば、ハラミーたちの少し安堵した表情が見えた。
「散りなさいストーカー! こっち来るな!」
 マテリアルの奔流を放ちはがら、アルスレーテ・フュラー(ka6148)が飛び込む。一瞬二人を振り返って、にっと笑いを見せた。
「私自身はストーキングされるほどの魅力はないから気にしなくていいけど、あなたたちは助けてあげなきゃ」
「へぇ、もしかして前に現れた奴?」
 砂煙の中に見える巨体に、仁川 リア(ka3483)は目を細めた。
「それじゃあ懲りずに現れた執念を称えて、今度は確実に殺してあげるよ」
 マテリアルで一気に加速したリアに続くように、アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)も馬を走らせる。アルトの目には、敵影しか映っていない。
 二人に遅れながら、アリア(ka2394)はハラミーたちに振り返った。
「うあー……もてもてだね、お姉さんたち。あたしはアリアだよ。よろしくねー」
 そして、一度馬を止めてアリアは尋ねた。
「なにか言いたことある? 伝えておくよ」

 アリアたちが去り、続いて万歳丸(ka5665)が姿を現す。
「見かけどおりの歯ごたえがありゃァ良いンだがな!」
 戦いに滾る気持ちを抑えることなく、万歳丸は敵陣へととき進む。目の前を塞いでいたリザードマンが万歳丸の放ったマテリアルの奔流に飲み込まれて散っていった。
 ハラミーたちの周囲を、ザレム、真司、マリィアが取り囲む。そして、最後に不動シオン(ka5395)が戦列に加わった。シオンはやれやれと肩をすくめ、
「天下の歪虚様がストーカーとは格好つかんな」
 状況を把握し、残念な思考の持ち主に苦言を呈するのだった。


 ハラミーたちを取り囲むように、ザレム、シオン、真司、マリィアが陣形を作る。
「リザードストーカー野郎から離れるんだ」
 ザレムの言葉にハラミーたちは、迷いながら首を振った。できることをする、そう決めたばかりの彼女たちの目には戦闘意志が宿っていた。
「仕方がないな。自分の身は自分で守れよ」
「戦ってくれるなら」とマリィアは振り返り、二人に指示を飛ばす。
「ハラミー、みんなにステータスアップよろしく! カルビー、トカゲへの牽制と行動阻害任せるわ。私はワイバーンメインで行くから、そっちは二人にお任せするわ!」
 マリィアはハラミーたちが頷くのを見届けると、マシンガンの銃口を空へと向けた。
「先ずは空を飛んでいるのを全部撃ち落としていくとしようか」
 真司も続けてマシンガンを構え、銃弾をばらまく。
「上から連撃とか冗談じゃないわよっ。落ちなさい、トビトカゲ!」
 マリィアの弾丸はマテリアルを伴って、速度を増してワイバーンの翼を撃ちぬく。少し遅れて真司の弾丸が届き、根本から翼をもぎ取った。一体、また一体と地に落とす。
 地上ではリザードマンたちが炎に飲まれていた。炎の根本にいたのは、ザレムだ。巻き込まれたリザードマンは炎を振り払いながら、なおも前進を試みる。
「馬鹿な上司を持って、貴様らも哀れだな」
 シオンが淡々と告げ、リザードマンの行く手を阻む。槍の先、紫炎を纏った刃が十字を形作った。先頭を走っていたリザードマンが、シオンの一撃に足を止める。
「臆さぬならばかかってこい」
 降り注ぐ矢を槍で捌き、シオンはリザードマンどもに睨みを利かすのだった。


「君たち邪魔だよ、僕はそのデカいのに用があるんだ」
 リアは道を阻むように現れたリザードマンたちを打ち払いながら、一歩でもストーカーへ歩を進める。狙う巨体はハンターたちをひと睨みすると、若干進路を変更した。
「本当、邪魔だよね」
 アリアがリザードマンに鞭をふるいながら、辺りを見渡す。抜け道を探してみるが、詰まった戦場では動き回るのも難しそうだ。
 なければ作ればいいといわんばかりに、光の奔流が二つ戦場を駆け巡った。光に続けて飛び込んできたのは、アルスレーテと万歳丸だ。露払いをするように惜しげも無く青龍翔咬波を放って進む。
「よし、飛び込もう」
 アルトが馬を走らせ、隙間を縫うように進む。アリアとリアも転身して、アルトに続いた。一つの群れを抜けると、アリアたちは万歳丸たちと進路を違える。
「そちらは、頼みましたよー」
 殿を務めていた水月が、パイルバンカーを打ち込みながらアルトたちに声をかけるのだった。

 副長を担うリザードマンは、自分へと向かってくる二つの影を見た。一人は双角を持った大柄の男。もう一人は、銀髪を靡かせる女性だった。
 目で追う間に、男、万歳丸は練り上げた気を青い燐光を伴う巨龍に変えて放つ。片腕を掠めた龍の威力を実感し、万歳丸に焦点を合わせた。
「てめェで我慢してやらァ」
 豪気な言葉を吐き、万歳丸は再び龍を放つ。ブレスで牽制を試みるが、万歳丸は意に介さない。朱色の盾でブレスを防ぎ、笑いすら浮かべる。
「せっかくだからさ、その眼帯ちょうだい?」
 万歳丸に気を取られている間に、側面から拳が伸びていた。辛くも避けるが、続けて放たれた一撃をまともに食らう。
 吼えると同時に繰り出された剣撃を、アルスレーテは一発見舞う。だが、距離は詰めたまま次の一撃を狙っていた。
 加えて、もう一人。
「あはっ、その眼はどーしたんですか?」
 その声は、万歳丸ともアルスレーテとも違った。眼帯側の死角から、杭が撃ちこまれていた。咄嗟に剣で軌道をそらし、やや下がる。
 追いついた水月が、素早く立ちまわっていた。
 揃った布陣に隙はない。だが、相手の一撃も当たればデカい。
「さァ、打ちあおうぜェ!」
 戦いに心を奮わせ、万歳丸は告げるのであった。

 副長との戦いが始まって十秒後、アルトは巨体の前に姿を晒した。騎乗した自身より、頭一つ以上飛び抜けるストーカーに、
「さて、デカいの、遊ぼうか?」と告げる。
 ストーカーはアルトをひと睨みすると鼻を鳴らした。瞬間、口から炎が溢れ熱波がアルトを襲った。追いついたばかりのアリアとリアも余波を浴びることとなる。
 空気が冷めた途端、薙ぎ払われた大剣の一撃がリアとアルトを襲った。
「このデカさで結構早い動きするよね、やっぱり」
 剣圧にリアは汗を浮かべた。低くした姿勢から、ストーカーの一挙一投足を観察する。
 一方のアルトは回避の勢いを刃に乗せて、ストーカーに一太刀浴びせる。袈裟斬りに放たれた刀が、いくつかの鱗を剥がす。
 ストーカーが足を踏ん張った瞬間、
「次は逃げるなよ。僕は君を斬りたくて斬りたくて溜まらなくて、だから相手してやるんだからさ!」
 純然たる殺意がストーカーに迫る。リアの殺気にストーカーは足さばきを遅らせた。鋭い双撃が、ストーカーの腹部を裂く。
「……硬いな」
 薄い手応えにリアは呟きながら、打ち払われた刃を躱す。一撃でも喰らえば、体力の半分を持って行かれそうだ。
「デカいだけか?」
 リアと逆側から仕掛けるアルトは、挑発するようにストーカーにいう。
 ふぅ、と溜息混じりに、
「ウドの大木というやつか」と小馬鹿にしたような笑みを浮かべた。
 言葉の意味はわからなくとも、笑みが意味するところはストーカーにも知れた。視線が向いた瞬間、アルトは重ねて告げる。
「女の尻を追っているような変態が上司とは、部下も大変だな。敵ながら同情しよう」
 ストーカーの瞳孔が開き、興奮を示した。刹那、疾さに長けた連撃がストーカーの体から血の花びらを散らす。返された刃を避け、リアとともに次を狙う。
 アリアが見せた鞭の牽制がストーカーの回避行動を狂わせ、着実に体力を奪う。
 だが、される一方で終わりはしない。一際鋭く振りぬかれた一撃が、リアの腕部を裂き、アルトの胴部を穿った。苛烈な一撃に、一瞬息が詰まる。
 隙を見逃さず、前へと出ようとしたストーカーの首をアルトの鞭が絡めとった。
「行かせないからね!」
 自身の力と馬の体重を合わせて、アリアは一気に鞭を引いた。
 ストーカーの体が、前方へと揺らいだ。


 翼を穿たれ、地に落ちたワイバーンたちは恨みの視線を原因となった者へ向けていた。
「トカゲならさっさと地上を這いずり回りなさいよっ」
 射出された弾丸で翼をもぎ取りながら、マリィアは叫ぶ。
「落下ダメージでついでに首も折ればいいのにっ……多いわね、畜生っ」
「だいぶ減ったさ。さて、ついでに這いずり回れなくもしておくか」
 真司は接近を果たそうとしたワイバーンを雷撃を纏った障壁で弾くと、すかさず巨大化させた刃で潰す。二人は新たな墜落者を作り出しながら、地を駆けるワイバーンにも眼を光らせていた。
 ワイバーンの隙間からは、湧き出るようにリザードマンが現れる。ザレムは焼き払いながら、盾と障壁を駆使し、ハラミーたちを庇う。礼を言われると、静かに顔をそむけた。
「構わない。それよりも後ろを気にしてくれ」
 ここは戦場だ。どこから敵が現れるとも知れぬ。油断なく放たれたワイバーンを炎で飲み込み、ザレムはシオンに目配せした。焼け残った個体を直線で捉え、シオンは十字槍を大きく突き出した。
「つまらんな」
 刺突に沈んだリザードマンに一瞥くれ、シオンはいう。
「強敵だと聞いて期待してきたが、所詮は俗物か。貴様らは私を失望させた」
 興奮し過ぎないよう呼吸を整え、負傷を消す。後ろに感じた気配に、振り向きざま一閃。リザードマンの胸元を切り払う。
「失せろ」
 シオンの言葉通り、リザードマンは地に沈む。ハラミーたちの周囲は、大方片付き始めていた。だが、油断はできない。まだ、隊長格が残っている。
「前方は……」
 余力をストーカーに向けようとした刹那、ザレムの眼には宙を舞うアリアの姿が映った。


 目の前をちらつく銀髪に、眼帯のリザードマンは苛立ちを募らせていた。いなすような一撃に合わせ、鋭い突きが体の要所に突き刺さる。
 アルスレーテの攻撃に、眼帯は体勢を崩すこと三度。その度に、アルスレーテは余裕を見せたステップを踏むのだ。
「少しくらいは、いいわよね」
「覇亜亜亜亜ッ!」
 合わせるように半身を万歳丸が放った巨龍が飲み込んでいく。眼帯を援護しようと近寄ってくるリザードマンを巨龍は、同時に食い散らす。
 たった二人、いや――。
「ふふ、嫌そうですね。嫌そうな顔ですね―」
 実に楽しげな声を上げて、水月が立ちまわっている。万歳丸とアルスレーテの攻撃を躱せても、水月が見計らったように攻め気を見せるのだ。
 眼帯が持つ双剣が、いかに素早く振るわれても、三面から狙われてはひとたまりもない。おまけに水月にいたっては、振り下ろした剣をいなして真正面から杭を打ち込もうと画策しているのだ。
 苛立ちを押し出して突出すれば、
「攻め気を見せたなぁ、蜥蜴野郎ォ……!」
 天地がゆらぎ、万歳丸に投げ落とされる始末。すでに満身創痍の眼帯に万歳丸は、にっと笑みを浮かべるのだ。
 だが、その表情が切り替わった。万歳丸の姿が消え、代わりにシオンが十字槍の穂先を向ける。刃の先、万歳丸の向かった先でアリアがストーカーに投げ落とされていた。


 何が起こったのか。首をとらえた鞭を、ストーカーが逆に掴みあげたのだ。アリアは馬から引き剥がされ、宙を舞い、ストーカーに掴まれると地面に叩きつけられた。
 頭上ではまさに突き落とされようとする大剣があった。
 銃声――。
 弾丸を避け、ストーカーは後ろに下がる。銃声のした方向を見れば、ザレムがライフルを構えていた。後ろではカルビーが同じく、銃口を向けている。
「おねーさん達、あんたみたいなしつこいのはお断りだって」
 声に見下げれば、アリアが体勢を取り戻し、予備動作なく手裏剣を放っていた。
 ごめんね、と聞こえた瞬間、ストーカーの片目は潰されていた。怒りに身を任せ大剣を振り下ろし、アリアをなぎ払う。叩きつけられた衝撃で痛めたのか。アリアは回避が間に合わず、その一撃をまともに食らった。
 だが、二撃目は振り下ろされない。アルトとリアの放った殺気に、ストーカーの残された目が揺らいだ。身体を撫でるように刃が走り、鮮血が飛ぶ。
 戦況を見渡せば、劣勢が見て取れた。
「サポート頼むよ、こいつはここで終わらせる!」
 銃口を向けているカルビーにリアが告げる。その声をかき消すように、ストーカーが咆哮した。至近距離の叫びに合わせ、ストーカーの口から炎が零れた。
「手品は二度は通じない」
 アルトの声とともに、顎が打たれた。炎が口腔内で暴発し、ストーカーの肌を撫でる。だが、自身から生まれた炎だ。即座に身体をぶん回して、アルトを引き離す。
 そして、脱兎のごとく駆けようとした。
「逃げるなって言ったの聞こえなかったのかな?」
 背に浴びた殺気が、前へと回ってきた。大きく旋回したリアは、ストーカーの面前に立ちはだかると足を狙って刃を振るった。腱を断つべく放たれた刃は、空を切る。
 ストーカーが足を引いたのだ。そして、蹴りがリアの胸を打った。

「哀れさを通り越して、呆れすらでてくる」
 逃亡の兆しを見せたストーカーの姿に、シオンは軽蔑の目を向けた。視線はそのまま副長と思しき眼帯へと注がれる。哀れみを含んだ視線に、眼帯は慟哭した。
「どんな相手でも忠義を尽くす。あなたの義理堅さは、一流なのかもしれないけどね」
 アルスレーテが放つ牽制の打撃、刃でいなした眼帯に鉄扇が振り下ろされる。関節を狙った攻撃をまともに受け止め、だが、眼帯は痛みがないかのように双撃を繰り出した。
「意地、かしら」
 あえて、一撃を受けてアルスレーテは至近距離からマテリアルの龍を撃ちこむ。龍の顎が眼帯の肩を食い破る。
「目を失ったのも、その性格ゆえですかねー」
 側面から現れた水月が脇腹に、パイルバンカーを放つ。撃ちこまれた杭が、背骨を折る音が響いた。
 終わりだ、とシオンは短く告げた。最後に残っていた紫炎を刃に宿して大上段から振り下ろす。唐竹割りの如く、リザードマンの頭蓋が割れた。
「次は、仕える相手を考えるのだな」
 シオンの言葉が届くより前に、眼帯は地に崩れていった。

 背を向けていたストーカーは、眼帯のリザードマンが散ったことを知りはしない。自分を取り囲むハンターたちに、暴虐の限り大剣を振るうことに集中していたからだ。
「部下を見捨てて逃げる、か」
 血路を切り開かんとする刃を敢えて受け、万歳丸は血を散らし叫ぶ。刃の勢いが止まらないのを利用し、万歳丸はその巨体を投げ落とした。
「――因果応報、アンタの結びだ。有難く頂戴しなァ!!」
「やっと戦えるんです。逃げないでくださいね」
 起き上がったストーカーの足を縫い付けるように、水月が杭を撃ちこむ。全力疾走でこっちの戦場に水月はやって来たのだ。ストーカーが堪らず自身を中心に大剣を振るった。
 そして、振るわれた先で刃が折れた。
「変態と編隊を掛けているとは思わないけどっ……さっさと倒れて欲しいわね、変態には」
「同感だ」
 マリィアと真司による援護射撃である。気がつけば空を舞っていたワイバーンの数は僅かばかり。続けざまにザレムが弾丸を打ち込み、折れた剣を手放させる。
「相応しい結末ってやつだよ、裸の王様?」
 アルトが放った苛烈な一撃、そして、返す刀で二撃。すでに限界が近づいていたストーカーの身体に、重大な欠損を生じさせるには十分であった。
 上半身と下半身が、別の方向へ揺らぐ。だが、その眼に宿るは強欲たる執念。ハラミーたちをひと睨みに、地を掴んで跳ばんとする。
「同じようにさ」
 だが、その行く手を遮ったのはリアだった。眼の動きが怪しい。最後に浴びた蹴りが、リアに与えたダメージは想像以上に大きかったのであろう。
 だが、ストーカーの藻掻くように払われた打撃を受け止め、首筋に刃を突き立てる。
「獲物の好きなようにさせるのも、大嫌いなんだよね」
 ストーカーの慟哭は、首が切り飛ばされたことによって尻切れとなった。ワイバーンが慟哭に応じてストーカーの首を掴んだが、地に残された体は消滅を始めていた。


 真司は戦後処理の傍ら、ふと思った。
 一度ならず二度も襲われたのは、ハラミーたちにリザードマンを惹きつける何かがあるのか。それとも、ストーカーの嗜好なのかと。
 だが、ストーカーは消え去った。疑問に答えてくれそうな奴はいない。
 それに、と真司はハンターたちを振り返る。
 何かが向かってきたそのときは、また倒すだけだ。

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MVP一覧

  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズールka0878
  • 大地の救済者
    仁川 リアka3483
  • パティの相棒
    万歳丸ka5665

重体一覧

  • 愛おしき『母』
    アリアka2394
  • 大地の救済者
    仁川 リアka3483

参加者一覧

  • オールラウンドプレイヤー
    柊 真司(ka0705
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師
  • 黒猫とパイルバンカー
    葛音 水月(ka1895
    人間(蒼)|19才|男性|疾影士
  • 愛おしき『母』
    アリア(ka2394
    人間(紅)|14才|女性|疾影士
  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニ(ka3109
    人間(紅)|21才|女性|疾影士
  • 大地の救済者
    仁川 リア(ka3483
    人間(紅)|16才|男性|疾影士
  • 飢力
    不動 シオン(ka5395
    人間(蒼)|27才|女性|闘狩人
  • パティの相棒
    万歳丸(ka5665
    鬼|17才|男性|格闘士
  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデス(ka5848
    人間(蒼)|24才|女性|猟撃士
  • お約束のツナサンド
    アルスレーテ・フュラー(ka6148
    エルフ|27才|女性|格闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/04/19 16:04:36
アイコン 相談卓
仁川 リア(ka3483
人間(クリムゾンウェスト)|16才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2016/04/19 22:50:08