• 龍奏

【龍奏】転移門。強欲龍。ガルドブルム

マスター:馬車猪

シナリオ形態
イベント
難易度
難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
1~25人
サポート
0~0人
報酬
多め
相談期間
6日
締切
2016/04/20 09:00
完成日
2016/04/30 14:07

このシナリオは3日間納期が延長されています。

みんなの思い出? もっと見る

卯佐乃 心月

オープニング

 凍てついた高空から竜が見下ろしている。
 生命を許さぬ低温と、あらゆるものを叩き落とす烈風に襲われても小揺るぎすらしない。
 なのに器用に肩を落として大きな溜息をついていた。
『いねェ』
 CAMの姿がない。
 厳密には何機かカム・ラディ周辺で活動してはいるのだが、彼を打ち落とせるほどの数が揃っていない。
 今ならハンターを一方的に叩けると主張した竜がいた。
 是非襲撃に加わってくれと卑屈に懇願した竜がいた。
 どちらも放っておくと折角の楽しい戦いを邪魔しそうだったので消えてもらったが。
『いねェ……』
 人間や龍がしくじったのか、現地の歪虚がうまくやった結果かは分からないし興味もない。
 彼、災厄の十三魔ガルドブルムが望むのは戦いだ。
 地上戦、空中戦、人間の大軍勢あるいはCAM主体の機械化軍との大決戦。
 どれもしたいし全て味わってもまだ足りない。
 ガルドブルムは強欲の歪虚なのだから。
『フン』
 指を咥えて待つ趣味はない。
 彼は己の望む戦を生み出すために、地上の一点目がけて急降下を開始した。

●デ・シェール遺跡
 負のマテリアルがうずまく遺跡で、一際濃いマテリアルを持つ歪虚が混乱していた。
『報告します。南東接近中の人間多数を発見しました』
『お話中失礼します! 南西から大型兵器を含む集団が接近中です』
 知性持つ竜からの報告は、どれも似通っていて位置だけが大きく違っている。
『本当ダナ?』
 青黒い鱗の竜が長い首を伸ばして見下ろす。
 黒に近い瞳には隠しようもない苛立ちが浮かび、口からは破壊の力が今にもこぼれそうだ。
『は、はいっ』
『この目で確認しました!』
 全高16メートルに達する竜が体を震わせ上司を見上げる。
『本当カ……』
 竜が首をかしげる。
 無意識に長い尻尾を動かし、遺跡の床の一部を破壊した。
『コノ人間ドコカラ湧イタ?』
 返事はない。
 部下達は上司の力を恐れているし、人間が転移装置を使ってここまで跳んできたことに気づけていない。
 無音のまま時間が過ぎる。
 退出を許可されていないので部下達は動きがとれない。
 遠くから、CAMの駆動音と人間の声が微かに聞こえた。
『戦ウ。出テ倒ス。行ケ』
 長い首と尻尾を持つ竜が命令すると、部下達は安堵して頭を下げ南へ向かって飛ぼうとした。
 が、片方の竜の上半身が爆ぜた。
 血と肉のジュースが壊れた床を彩り、遠くで何かがめり込む重い音がした。
『ひぃっ』
 無事な16メートル級が飛ぼうとする。
 その背中を鉱石に似た何かが直撃し、背骨があった場所に埋まってそのまま地面を滑っていった。
『誰ダ』
 長首竜が空を見上げる。
 暖かさの欠けた薄暗い空に、地上の竜と比べると酷く小さく見える黒竜が浮かんでいる。
 ガルドブルムは無言だ。
 この時点で、彼はこの場の歪虚への興味を完全に無くしていた。
 殴られたら敵を判断して殴り返すのが当然。
 ハンターなら誰何と同時に鉛玉で歓迎してくれるのに竜共は判断も動きも鈍すぎる。
 ガルドブルムは両足で抱えていた超特大龍鉱石を離し、破壊しないぎりぎりの力加減で長首竜へ殴り飛ばした。
『敵カ』
 長首竜が汚れきった水を吐き出す。
 狙いは鋭く飛来する龍鉱石に命中する。しかし龍鉱石は壊れながら眩い光を放つ。
 真っ当な終わりを拒否してまでこの世に留まった龍の残滓が、歪虚必滅の意思を燃やして正マテリアルを爆発させた。
 長首竜が苦痛で悶えてその場に倒れる。
 ガルドブルムは全身に痛みを感じて心底嬉しげに目を細めた。
『活きがいいじゃねェか』
 浮力が失われる。
 自由落下が始まり結晶化した地面にぶつかる瞬間、器用に受け身をとって衝撃を分散させ立ち上がる。
 体が重い。
 正マテリアルが筋肉の動きを妨げている。
 翼は殆ど動かずブレスのチャージも遅遅として進まない。
 南から人間が近づいてくる。
 膨大な資源と試行錯誤を費やし作り上げた武器と共に、遺跡の転移装置を目指してやってくる。
『感謝するぜェ』
 ただの破片に成り下がった龍の亡骸を拾い上げ、完全にかみ砕いて嚥下する。
 消化されまいと抵抗するマテリアルが実にいい。
 抵抗されるほど一時的に力が落ちるのも、激戦への期待と消化後の強化を考えると気にもならない。
『久々に愉しくやれそうだ』
 苦しむ長首竜と歪虚に占拠されたままの遺跡を離れ、ガルドブルムは近づいてくる人類の前に立ちふさがった。

●人類軍
 デ・シェール遺跡へ移動中の人類軍が、歪虚の同士討ちに気づいた。
「CAMサイズの竜が暴れています」
「妙だな。大きさの割に強すぎる」
 歪虚の戦力は大きさに比例する。
 一部例外はあるがCAM並の体格で怪獣サイズの歪虚を圧倒するのは例外すぎる。
「データに該当一件。……ガルドブルムです!」
 驚く兵士がいる。
 覚悟を決め信じる神に祈る者もいる。
 そして、予想外の弱さに戸惑うハンターもいた。
「あの戦狂い、最近パワーアップしてアホみたいに強いブレス吐けるんじゃなかったか?」
「ファイアブレスだったな。……使用の痕跡なし。もう1匹は派手に汚いブレス吐いてる」
「画像をくれ。……あの野郎なーんか腕力落ちてる気がするぞ。動きは相変わらずキレッキレだけど」
 直接あるいはヘッドマウントディスプレイ越しに視線を交わす。
「つまり」
「舐めプしてるなら仕留めるチャンスってことだ」
「毎度上から目線で気に入らなかったんだ。首だけ切り取って飾ってやらぁ」
 安全装置が一斉に解除され、多数の大型火器が竜に狙いをつけた。

リプレイ本文

●龍。最後の光
 淡い光が降ってくる。
 どれも元は1つの龍鉱石だ。
 龍の残滓が力を振り絞り、自らの存在と引き替えに負のマテリアルを押さえ込む。
「ひゅう、デカイ竜だな! 怠惰の巨人が可愛く思えてきたぜ」
 戦馬の背で激しく揺られながら、ジャック・エルギン(ka1522)は舌を噛まず息も乱さず軽口を叩いた。
 北方にある遺跡から、巨大な歪虚がこちらに向かって来る。
 外見は恐竜の首長竜予想図に近い。禍々しい気配をまき散らしているので、恐竜と勘違いする生き物はこの世にいない。
「あれじゃねぇか?」
 白く平坦な雪原に意思を見つけて指し示す。
 メル・アイザックス(ka0520)が高速のバイクでその地へ向かう。
 そこにはジャックが見つけたクレーター風の穴があり、中心近くに数センチだけ飛び出した特大龍鉱石があった。
 飛び降りる。
 バイクが止まりきれずに滑っていくが今は時間が惜しい。
「力を借りるよ」
 胸元からペンダント型イニシャライザーを取り出し勢いをよくぶつけた。
 雪で氷かけの特大龍鉱石が脈打った。
 小さなペンダントから熱が移される。
 氷のように冷たい特大龍鉱石が脈打ち、移された熱の何万倍もの熱が光になり雪原全体へ放たれる。
 いつの間にか空から降る光は消えている。
 けれど地面からの光は戦場全体を照らし、ハンターとその相棒にだけ生きて戦うための熱を与えた。
「アサヒ君……」
 敵はもう1体いる。
 全長40メートル越えの首長竜よりさらに禍々しい竜に、彼女の思い人が一直線に向かっていた。
 彼がこの場にいたら、騒がしいけど最高のデートだと笑ってメルを元気づけてくれるはずだ。
「追いつくからっ」
 待たせるつもりなんて欠片も無い。
 メルは一呼吸で距離を0にしてバイクに飛び乗り、邪悪なドラゴンに向け最高速で駆けだした。

●災厄
 CAMと同サイズの巨体にもかかわらず、黒い竜は異様に速い。
 激しく脚が動いても上半身は揺れすらしない。
『おいおい、鉄人形が少ねェな……っとォ!』
 漆黒のCAMの操縦席で、瀬崎・統夜(ka5046)が軽く舌打ちする。
 一瞬にも満たない時間でガルドブルムの動きを予測し狙いを修正。
 引き金を引くと30ミリ口径のライフルから3つの弾が飛び出した。
 黒竜が斜め前へ跳ぶ。
 左の脚の爪から1メートル下を3つの弾が通過して、統夜の弾の2つが腰と右太ももに当たる。
『狙いは悪くねェが、威力はまだ甘ェな』
 感情が読みづらいはずの竜顔に、誤解しようのない歓喜が浮かんでいた。
「ハッ……ガルドか。相変わらずだな」
 紅のイェジドを走らせボルディア・コンフラムス(ka0796)が鼻を鳴らす。
『そうかい。そっちは美味そうなモン手に入れたようだな?』
 音も無く1対2つの竜爪が振り上げられ、しかしボルディアはガルドブルムを無視して横を通過した。
「こっちの仕留めてまだ生きてりゃ相手してやるよ」
 全く緊張なくひらひら手のひらをふる。
 紅焔の幻獣は主ほど剛胆では無く、無意識に小さく息を吐きつつ首長竜に向かって走る。
 そしてようやく、この戦場で初めての白兵戦が始まった。
 初手はヴァルナ=エリゴス(ka2651)。
 ゴースロン種の高速を活かし最も早く正面から竜へ近づき、紅白の刀身を繰り出しそのまま脇を駆け抜ける。
 鍛え抜いた技とマテリアルが鱗を貫き十数センチめり込み、馬の脚力と重量で横に数メートル傷を広げた。
 黄金で彩られた柄越しに、ヴァルナは非常に良い手応えを感じていた。
 巨大な竜爪が異常な速度で振り下ろされる。
 ヴァルナは紅白の刀身を引き抜き迎撃にまわす。
 切っ先と竜爪が秒に満たない間均衡。両者距離が離れ、しかし竜爪は即座に反転してヴァルナの背を狙う。
 銃声が連続する。
 柊 真司(ka0705)の機関銃による銃撃。竜の腹に小さな穴を複数開けはしたが竜爪の勢いは止められない。
 遠方から飛来した1弾が爪先に当たり、ヴァルナに当たるはずだった攻撃を逸らして宙を切らせた。
「悪いけど、思い通りには戦わせないわよ」
 射手である白金 綾瀬(ka0774)は、ガルドブルムの高速でも短時間では届かない距離を隔てて魔導銃を構えている。
 長大な射程と強力な威力を兼ね備えた武器だ。
 妨害射撃はそのうち威力を切り捨てる戦い方ではあるが、ガルドブルムにとってはとことんやっかいな邪魔者になる。
「ようでかいの! また会ったな」
 エヴァンス・カルヴィ(ka0639)はにやりと笑ってグレートソード「テンペスト」を真横に一閃した。
 竜が回避する半秒前、ワイヤーが脚爪に絡む。
 隙とも言えないわずかな隙がうまれ、テンペストの刀身が鱗に垂直にぶつかり切り裂いた。
「ようやっとお前にリベンジできる機会が巡ってきたわけだ!」
 イェジドも専用刀や爪で攻撃するが鱗を貫けない。即頭を切り換えエヴァンスと共に真横へ移動。無音で近づいていた竜爪をぎりぎりで回避した。
「あの時は名乗るのをすっかり忘れていたが」
 追撃の再度の横一閃。
 狙いは先ほど刻んだ横向きの裂傷だ。
 斜め左右から30ミリ弾が飛来し後ろからも刃を繰り出される状況で、ガルドブルムは微かに傾き無事な鱗でテンペストを受ける。
 竜とエヴァンスの視線が一瞬交差して、喜びというには獰猛すぎる色が両者の瞳に浮かぶ。
「今日はしっかりこの俺……傭兵エヴァンスの名を覚えてってもらおうかぁ!」
 3撃目。
 横と見せかけて下から上に振り抜かれた刃が、鱗を砕いて肉をえぐる。
『ハ、良ーい味だ傭兵エヴァンス!』
 左上と右真横から竜爪が迫る。
 左上は横にずれて回避。右は大剣で弾いて被害極限。
 だが続く左右からと、もう一度繰り返される2撃を防ぎきることはできず脇腹を割かれて幻獣の上に倒れる。
「俺1人がそんなに怖いかよ」
 苦痛に耐えて身を起こす。
『怖い? 怖い、ねェ……そいつも味わってみてェもんだ』
 ヴァルナに反対側の脇を、複数のハンターによって背中を裂かれているというに、竜はエヴァンスと共に笑った。
 前兆無く竜の翼が跳ね上がる。
 中程に複数の凹みがあり、30ミリ弾がごろりと地面に落ちた。
「あのサイズでここまで躱すのですか」
 ルーファス(ka5250)はヘッドマウントディスプレイ越しに竜を凝視しながら、歩行移動でCAMの位置を変えていく。
 先程の一撃が初めての命中弾だ。
 綾瀬の銃弾による援護と、リリティア・オルベール(ka3054)のワイヤによる援護によるようやくの命中だった。
 独力でないことに怒るほど子供ではないけれども、敵の回避能力の高さに驚かないですむほどすれてもいない。
 複数のCAMと複数の強豪ハンターによる猛攻を受けても、ガルドブルムは9割方防ぐか受けるかして直撃を避けていた。
 1割程度当たりはしているのでそろそろ悲鳴のひとつもあがってもいいのに、歪虚は焦った気配もなく生き生きと躱し、ハンターを1人ずつ殺すための4回攻撃を繰り出していく。
「真司、まだ行けるな?」
 紫月・海斗(ka0788)がバンカーナックルへ杭を再装填する。
 傷だらけで血が足りず、意識が途絶えそうになるが後1分程度なら耐えられる。
「ああ」
 真司は止めない。
 高威力の銃撃を継続しながらガルドブルムとの距離を測る。
「綾瀬嬢ちゃん! 援護頼むぜぇ! 真司、タイミング合わせろよ!」
 海斗がアクセルを踏み込む。
 バイクが揺れて視界が暗くなり、元に戻ったときには目の前に竜の爪があった。
「手を抜いてもいいんだぜガルドの旦那ぁ!」
 綾瀬の弾が当たり爪の向きがわずかに変わる。
 海斗と真司は2つの爪をぎりぎりでくぐり抜けた。バンカーと試作光斬刀を構えてバイクにマテリアルを叩き込む。
『ハハ、来たなふざけた野郎! お前の全てをぶつけてみせろ!』
「紫月・海斗だ」
『ふざけた紫月海斗!』
 巨大化した杭とMURASAMEブレイドが複数方向から竜の背を狙う。
 ガルドブルムはまだ動きが鈍い翼を上げて飛行力喪失だけは避けはしたが、代わりに背中に浅くない傷をまた負った。
『死に物狂いになってみせな、ふざけた紫月海斗! じゃなけりゃ――死ぬぞ』
 明確な殺意と2対2連撃が海斗を襲った。
 跳んで躱し、味方の援護で辛うじて回避を続け、しかし最後の1撃が胸に食い込み内臓を傷つける。
「へっ、まだ死んでないぜ旦那」
『……ハ、よく口の回る奴だ。早く俺の鱗に届いてみせろ』
 竜の喉が心底愉しげに鳴る。
 既に重傷の海斗を狙うと見せて、援護のため急接近してきた真司に連撃を見舞う。
 真司はわざと回避しなかった。
 マテリアルで強化した守りを最大限に活用し爪を盾で受ける。
 並の銃撃なら被害皆無なほど分厚い防御が抜かれ、しかし真司の頑強さはその一撃に耐え抜いた。
 ガルドブルムの巨体が慣性を無視したかのように横へ飛ぶ。
 真司による攻性防壁は完全に効果を発揮して、竜を吹き飛ばすだけでなく凶悪な麻痺効果を与えて回避も命中も半減させる。
「へい旦那! 俺に止めは刺さないのかい? 刺せないのかい?」
 半死半生の海斗が軽快に煽りに煽る。
『チ……いいぜ、一斉にやってこい!』
 クハッと笑い声がこぼれる。
 真司の追撃を片方の爪で弾いて止める。
 片方の爪が抜けた場所に、ヴァルナが数度目になる突撃を仕掛けた。
 鱗が砕けて宙に舞う。
 ヴァルナは確かな手応えを感じると同時に、強い既視感に襲われている。
 己を律し他者の為に身を削って戦い、一度道を誤ると深い所まで堕ちてしまう騎士は古今東西を問わず存在する。
 まるで龍と、目の前の戦闘狂のようだ。
 特別な技も術もなく、速くて重くて硬いだけの爪が馬の鼻先に現れる。
 ヴァルナは竜の腹を裂きながら刃を引き抜いて、爪1つを払いのけ、躱すまでもなく外れるもう1つを見送る。
『聖……何つったか……癒しの使い手抜きの殴り合いたァ悪くねェ、あァ悪くねェなァ!!』
 左右から30ミリを撃ち込まれ、上半身を覆う爆発を叩き込まれ、敢えて至近に迫るハンターもいるのにガルドブルムはヴァルナのみを執拗に狙う。
 躱して、そして受け流す。
 危険なほど体力を消耗しても、ヴァルナは真っ当な龍と同じく誇りを捨てず立ち向かい、もちろん無駄な危険はおかさず再突撃のため距離をとった。
「竜と同士打ちたぁ随分と余裕だな」
 岩井崎 旭(ka0234)のハルバードが竜の死角で旋回する。
 人間としては最高峰の速度と重さで黒い鱗に当たって凹ませる。
「しかも飛べねぇと来たら、ここで決めるしかねぇよな!」
 全身の力と向きを調節してハルバードに込める。
 凹みが2メートルを超え、脆い……他と比べると脆いだけで厚めの装甲板並の強度を持つ鱗を砕いた。
『……、ほォう。いいねェ』
 旭の力と守りの堅さが増している。
 このまま戦えば己の域まで迫れるかとわくわくした直後、旭に旭以外の気配を感じた。
『番いか?』
 負傷したハンターに追撃を加えつつすり足。
 4回目の攻撃がメルに向かうが、メルはバイクで全力更新して攻撃開始前に攻撃圏の外へ逃れていた。
「つつつがいって何ですか!?」
 予想外の口撃に動揺している。
 顔は赤く視線は定まらず、けれど旭に対する機導術支援は完璧だ。
「メルちゃんに触れるな!」
 それぞれ角度と呼吸の異なる一撃が複数回竜を襲う。
 十数度目のワイヤーが回避を邪魔して旭の連撃を導き、堅い物同士がうちあう異音が響いた。
『だったらどうすりゃいいか、分かってるだろうな?』
 数十の傷口から血が流れても竜の動きは鈍らない。爪の軌道はより嫌らしく避けづらくなる。
「テメェに言われるまでもねェよ竜野郎!」
 旭ほどの腕と力があっても、竜の鱗は抜けても大きなダメージは与えられない。回避だけでなく受けも巧みで防御も薄くは無いからだ。
「アサヒ君!」
 メルが声の抑揚のみで意図を伝えた。
 鋭く細く息を吐く。
 4回攻撃の範囲に自ら飛び込み、双方高速同方向に動いた結果の乱打戦が発生した。
 竜鱗が凹み鎧が凹む。
 自力の差で押し切り潰したと確信した竜が、傷は負っても致命傷では無い足取りで去る旭に気付いて目を見開く。
 メルの援護がガルドブルムの計算を狂わしていた。
 強敵を殺すつもりで意識と攻撃力を集中した分ほかの守りが薄くなり、頭の角すれすれで炸裂した爆発をまともに受けることになる。
 両肩と首の鱗がひび割れ血が数メートルも噴き出す。
 威力が桁外れだ。
『くく……ッハハ! ハハァ!! やァっと来たか、鉄人形!!』
 ガルドブルムは歓喜する。
 最初のCAMと遭遇したした際くらった刃……地球軍の対歪虚ミサイル並の威力だ。
 攻撃が飛んできた方向に振り返って凝視する。
 コクピットでアーサー・ホーガン(ka0471)の口角がつり上がる。
 利き腕の30ミリライフルをショートソードにしか見えない大剣に持ち替えて、美しい軌道で地面を示して挑発する。
 どちらも悪意も恨みも無く純粋な戦意があった。
 ガルドブルムが駆ける。
 CAMの倍以上の歩行速度を活かして斜め後ろをとる。
 アーサーの側も竜と同サイズなので死角まではとられない。
 音も無く左右の竜爪2連撃。
 デュミナスは左側の連撃を盾で止め、右は初撃グレートソード「エッケザックス」で受け最後の爪撃を一歩引いて躱す。
「実に、良い動きしてくるじゃねぇか」
 操縦席に警告音が響く。
 関節部が黄色く表示されてはいるがまだ十分動ける。
 踏み込みすぎた竜に対し反撃の一刺し。
 生身のハンターとは高度が違いすぎる刺突は避けづらかったらしく、ガルドブルムは打点をずらすこともできずにひび割れた肩を刺し貫かれた。
 だが敵もさるもの。
 回避の邪魔にならない動きで一歩下がって剣を抜き、己の爪で反撃してくる。
 内と外で哄笑が轟く。
 アーサーも竜もCAMの伸びしろを確信した。
 今は大きさと圧倒的な頑丈さしか近接戦闘の役に立っていない。
 しかしプログラムを改良し機体と装備を調節し覚醒者としての操縦技術を磨いていけば、今のガルドブルムに追いつくのも遠くない。
 少なくとも初心者ハンターが現在の最精鋭に追いつくよりはずっと早く追いつき、あるいは追い越せる。
『おいおい、どうしたどうした。攻めが温いぞ』
「良いな。乗り越えがいがあって実に良いぜ」
 竜爪と刃の応酬が短くも激しく続き、竜の上半身を襲った爆発で中断させられた。
「ダーリン連れないのな」
 黒毛金瞳のイェジドに、長身のエルフが乗っていた。
 言葉を紡ぐと濃密なマテリアルが球となり瞬きする間にガルドブルムへ飛び爆発する。
 竜が対ヴォイドミサイルと勘違いした爆発は、今回と同じ黒の夢(ka0187)の術だった。
「我輩のハジメテを奪った責任はとって欲しいのな!」
 真心からの愛を向けるエルフにしか見えないのにやってることはミサイル並の火力投射だ。
「それに」
 艶のある黒肌が熱を持つ。
「あの時出来た、汝の子であるー」
 雄大な胸の上に可愛らしい小ドラゴンが乗っていた。
 なお、初めてとは重体のこと、小さいのは手製の人形だ。
 ガルドブルムが大口を開け笑う。炎に包まれ口内が焼かれてもまだ笑う。糸1本に到るまで情念の籠もったそれは、同属よりもきっと彼に近い。
『求愛には応えねェとなァ』
 隙を見逃さず真司が巨大刃で突く。
 この場の最大火力と熟練ハンターとしては控え目な防御を兼ね添えた黒の夢を守るため、足止めを兼ねて猛烈に突く。
「何?」
 真司は驚愕する。
 あの災厄の十三魔の1つが、一瞬にも満たない間薄れて消えかかったのだ。
『ッガあァァああァ!! ってェなァおい……ハ、ハハ……そうだ……もっと俺に喰らいつけェ!!』
 すり足で動き真司との距離を保ち、歓喜と共に2連撃2回をただ1人に集中させる。
 左右に展開する統夜機とルーファス機から直撃弾を浴びても決して止めず、真司が重傷を止まりなのを手応えで確信しさらに高笑いをする。
『来いよ人間! 俺は殺せば滅ぶぞ!』
 無論勝つのは俺だ。
 真司に背を向け黒の夢目がけ疾駆する竜は、行動でそう宣言していた。
「予想以上の酷さね」
 竜の間合いのはるか外で、綾瀬が静かに引き金を引いた。
 当たって動きが鈍る。爆発が竜を飲み込み回避が低下した巨体に甚大な被害を与える。
 それでも竜は倒れず攻撃も止まらない。
 黒の夢に竜爪が届き、しかし彼女は背骨を断たれる前に逆に竜に飛び込んで致命傷を避け、竜の口に触れる距離で最後の火球を放った。
 爆発の残滓から姿を現し竜が戦場を見渡す。
 いつの間にか翼の感覚が戻って痛みを訴えている。1分もかからず飛翔可能になるはずだ。
「バレました」
「バレたわねー……」
 玉兎 小夜(ka6009)とリリティアが一斉に息を吐いた。
 どちらも騎乗していないので比較的目立たない。
 その点では同条件なのに小夜の方がダメージが大きい。唯一のエンタングル使いを守るため無理を重ねてきたからだ。
「じゃーお先に」
 大型の龍鉱石複数を、何の躊躇もなく投げる。
 投擲に向いた形でも無いので狙いは逸れる。逸れた結果回避中の竜に1つが当たる。
 首狩り兎が地を駆ける。
 鱗を滑って落ちてくる龍鉱石に狙いをつけて、構えた斬魔刀を上に尽きだした。
「ヴォーパルバニーが刻み刈り獲らん!」
 ただでさえ当てにくい龍鉱石に刃筋を立てて両断。
 強すぎる歪虚の気配に触れたことで龍の遺骸が目覚め、文字通り己の全てを力に変えて竜を襲う。
「龍からは命を」
 ガルドブルムは戦に対する強欲そのものだ。この程度では消えはしない。
 かつての龍がもたらしたのはほんの少しの装甲弱体化のみ。相手が上級歪虚で、しかも極端に弱っていたから通じたおそらく一度限りの奇跡だ。
「勇士へは首を!」
 それで必要かつ十分だった。
 小夜より倍は長い斬魔刀が龍の胸に届き、首近くまで切り裂いて宙に血を撒いた。
「何度でも!」
 片足で地面の龍鉱石を蹴る。
 リリティアが龍の背後から連続斬りを浴びせて翼の端を斬り飛ばす。
 ダメージはリリティアの方が大きくワイヤーを飛ばすことまでしてきたものの、ガルドブルムは龍鉱石の奇跡を警戒し小夜へ4回攻撃を集中させた。
 切られた龍鉱石が切られたまま転がり落ちただのゴミになる。
 斬魔刀は厚い鱗を断ち切れずに埋まって止まる。
「っ」
 鱗を蹴り刀を取り戻す。右からの爪を避け左からの爪は軌道を読みきり受け流し、しかし続く2撃を防ぎきれずに大地に叩き付けられた。
「こちらザレム、任務完了。この後は、ガルドブルム戦に加勢する!」
 トランシーバーを介して了解の返事が届く。
 北から巨大な悲鳴と振動が伝わってくる。
 ザレム・アズール(ka0878)はトランシーバーを動作させたまま大型ライフルを構えた。
 両手で狙いをつけているので運転に足しか使えないが構わない。
「正マテリアルを発し続ける弾……お前には猛毒みたいなものだ」
 龍鉱石を砕いて造った弾を1発だけ込める。
 手作りの品は銃と腕をまとめて吹き飛ばす暴発が怖いので、威力はかなり落としている。
「いくぞガルドブルム」
 引き金を引く。
 小型龍鉱石複数を費やし完成させた弱装弾が、数十の傷で覆われた竜に当たって砕けて散った。
 竜が喉を鳴らしてワイヤーを見る。
 龍鉱石弾の影響があるのかどうか不明だが、翼の調子が落ちて再飛翔までの時間が増える。
『なるほどねェ……ここまでいいようにされるたァな』
 強烈無比な火球も名剣による大切断も、ワイヤーによる行動阻害があったからよく当たった。
 リリティアがいないか途中で倒れていれば、ガルドブルムはとっくにブレス機能まで回復していたはずだ。
「久々に出てきたと思ったらいきなり弱体してるとか、ぼろぼろになったのに強そうな態度を取り繕うとか、恥ずかしくないんですか?」
 言葉の刃と現物の刃を連続で突き刺す。
 筋肉で大量出血は止めていても体力の消耗は避けられない。ガルドブルムの動きが、ハンター多数の戦闘不能を代償に鈍っていく。
『そいつァ悪かったな。だがまァ、これはこれで愉しめるだろ?』
 ガルドブルムの本質は強欲だ。
 理も情も分かった上で己の欲を優先させる、どうしようもない竜だ。
 リリティアが舞う。
 4連続攻撃1回目をいなして全力移動。爪の攻撃範囲外に出ることで残る3撃を無効化する。
 が、直撃など一撃も受けていないのに足がもつれた。
 受けて防御しても少なくないダメージが入る上に自己回復手段も回復支援も無しだ。さすがに限界が近く一度止まれば病院行き確定だ。
 複数種類の銃声が連続する。
「回避率7、8割か」
 ザレムが舌打ちする。
 ガルドブルムの動きは鈍っても戦えるハンターが減少し、複数方向から撃っても命中弾が少ない。
 どうやら竜はザレムに対する回避に集中しているようで、30ミリ弾の方は5割以上の確率で当たっていた。
「だがその程度で俺達に勝てると思うな!」
 最前列に立つ味方が少ないから出来ることがある。
 ザレムは竜と同じ速度で走り続け、常に距離を保って竜爪が届かない場所から銃弾を送り込む。
 当てるのも困難でダメージを与えるのはもっと困難な苦行だ。
 それでもザレムは常に冷静さを保って移動と回避を繰り返し続け、唐突に、ガルドブルムの巨体が数メートル浮き上がった。
『龍の肉もそろそろ俺の肉に変わる。急がねェと空から焼いちまうぞ』
 にやりと笑う。
 黒い竜が空に向かうのを、誰も止められないかと思われた。

●巨竜
 白色装甲に緑のラインが印象的なCAMが、大型の銃器で狙いをつけた。
「この距離で?」
 ミオレスカ(ka3496)は何度も瞬きして予想命中率を確かめる。
 200メートル以上離れているのに、HMDに70パーセントと表示されている。
 全長40メートル、全高14メートル、鈍足に加えて大型火器の存在を知らない雑な動きが組み合わされて、本来ならあり得ない高確率が実現していた。
「うん……。シルバーレードル、一緒に戦ってください」
 直感に従いわずかに狙いを微修正。
 エルフ耳をぴんと立て、迷い無く引き金を最後まで引いた。
 関節で吸収しても消しきれない衝撃がコクピットに届く。
 ミオレスカの優れた感覚はHMD越しに105ミリ弾を追い続け、弛んだ皮膚が3メートル強凹む瞬間を目撃した。
「これでバリスタが時代遅れになったか? この歳で戦場の変化を直接目にするとは」
 バリトン(ka5112)は巡り合わせに面白味を感じる。
 乗り手はエルフ、機体はリアルブルーとクリムゾンウェストの技術の融合。今後どう発展してどう戦場に影響を与えるのか誰も予測できない。
 そんなドワーフの頭上を1本の矢が飛び越えた。
 強弓から放たれたらしく長距離飛んでも速度が素晴らしい。
 首長竜に命中する。
 ガルドブルムを上回る厚さの鱗に当たって跳ね返されるかと思われたが、絶妙の角度で鱗と鱗の隙間を貫き矢羽根まで突き刺さる。
「ひゅう、デカイ龍だな! 怠惰の巨人が可愛く思えてきたぜ」
 ジャックは戦馬の上で陽気にはしゃいでいた。
 もちろん残心を忘れないだけでなく周囲の警戒も行っている。遠くの敵を狙ったときに奇襲をかけられたらたまらない。
 が、歪虚の気配は上級歪虚2体分しか見つけられない。
「んー」
 第2第3の矢を当てながら考える。
 首長竜の動きが酷く拙い。3、4体護衛がいればともかく、これではまるで随伴歩兵無しに動く大型低速戦車だ。
「はじめるかの」
 平坦な雪原と巨大過ぎる首長竜の組み合わせが距離感を狂わせようとする。
 歴戦のバリトンでも意識しないと狙いが甘くなりそうだ。
「ほれ、受けてみろ」
 間合いぎりぎりから斬龍刀を振るう。
 余りの身長差のため足の先しか狙えず、つまりバリトンの狙い通りに指の近くにめり込みんで切り裂く。
 首長竜の回避の動きはなく受け技術も精々並み程度。素の防御のみでは彼の一撃を防ぐことはできない。
『痛イ』
 首長竜が苛つき足を何度も上下させる。
 既にバリトンは間合いの外へ下がり、足の動きに合わせて巨大爪の生え際を一方的に抉る。
 竜の意識が足下に集中する。
 その脇で央崎 枢(ka5153)が跳び上がり、自由落下を始める前に竜の横腹を蹴ってもっと上に飛んだ。
「焼き爛れちまえよ……クソ竜!」
 太陽の気配を纏うバスタードソードを、長大な首の根元に叩き付けた。
 可動部分の薄い鱗が割れる。濃い色の体液が噴き出し冷たい空気を暖める。
 枢は落下の衝撃を受け身で耐えて、首長竜をちらりと見てから肩をすくめた。
「高速なバイクでも持ってくればよかったか」
 即断して横に向かって全力疾走。
 数秒遅れで怒り狂った長首が振り下ろされ大地が震えた。
「ハハッ、えらく動きが鈍いじゃないか長首さんよ」
 ヴァイス(ka0364)がオートMURAMASAで刺す。
 深紅のイェジドが壁の如き皮膚に飛びつき咥えた刃物で切り裂く。
 竜瞳が憤怒に赤く染まり巨体が一際大きく震えた。
「いいぞグレンその調子だ。くたばるまで切り刻んでやろう」
 不敵に笑うと竜の怒りが濃くなった。
 なお、ヴァイスもグレンも心の中では困り切っている。
 首長竜が複数の意味で鈍すぎるのだ。
 ヴァイス達全員、首長竜を遺跡から引き離すために戦いながら後退している。
 なのに敵は攻めるには遅く慎重というには早すぎる速度でしか動かず、特にヴァイスが狙っていたガルドブルムとの同士討ちは実現しそうにない。
「なら倒すだけだ」
 MURAMASAを牙、自身を顎、紅蓮を脚にして竜の右足を狙う。
 半秒遅れて鱗と皮膚が2つに割れて、体液と脂肪が混じったものがどろりとこぼれた。
「鬼さんこちらってな。そんなんじゃ当たりゃしねぇぜ」
 極太の足先に切れ目を入れ枢が南へ全力ダッシュ。
 首長竜の頭にますます血が上り、視野をとことん狭くしながら枢を追った。
「頭に血が上っているな。……臭い?」
 ジャックは矢をつがえたまま竜の変化に気付く。
 首の付け根が膨れてその膨らみが上がっているように見えるのは、高確率で範囲攻撃の予備動作だ。
「ブレスが来るぞ!」
 矢を放つ。
 首にあたり反対側の鱗まで届くが竜の動作は止まらない。
 幻獣や馬が全く同じタイミングで左右に走り、彼らの尻を掠めるように汚れた濁流が飛び南の地面にぶつかり大地を穢す。
 汚水ブレスはジャックに届かず手前で落ちていた。
 ここなら、特大イニシャライザーへの被害を気にせず戦える。
「よし」
 万歳丸(ka5665)が拳を握る。馬は主の意に従い竜の退路を遮る場所にすべりこむ。
「おいデカブツ! 俺ァ万歳丸だ! ブチのめされる前に名前くらいおいていきな!」
 利き腕が太さを増す。隆起した血管に流れるマテリアルがまぶしい。
 一度万歳丸を振り返り、一瞥だけくれて興味を失う。
「そうかい。 ならその汚ぇケツ、吹き飛ばしてやらァ……!」
 優れた体格と硬い拳を最大限活かして拳を突き出す。
 敵は巨大で拳は届かず、しかし拳から離れても威力を失わない光が首長竜の尻から背中へ抜けた。
 光は、竜とはかけ離れた巨龍の姿をしていた。
『オノレッ』
 山が動いた。
 4つ足が慌ただしく上下。一歩動くごとに大地を破壊し巨体を反転させる。
 上級歪虚の殺意を心地よく感じ、万歳丸は千載一遇の好機を巨体に見いだした。
「呵呵ッ!」
 右の巨足に組み付く。
 強引な方向転換で姿勢が崩れていたため、万歳丸の組み付きにより地面を滑って宙に浮かされる。
「てめェの天地は俺が決める!」
 限界の半分未満の力しか使っていない。巨竜の肉体を竜以上に把握し、竜自身より考えと癖を把握し、その体の先端を操ることで巨体全てのバランスを崩す。
『オヲッ』
 左の前脚後脚が浮かび、捻挫以上確実な方向で万歳丸の組み付いた足が地面に突き刺さる。
「吹ッ飛びなァ!」
 尻尾と後脚2つが空へとぶ。
 当然反対側の頭は地面に叩き付けられ、それでも止まらず一回転して尻が地面にぶつかりクレーターをつくる。
「万理一空たらんと磨いた業だ……! 有難く頂戴しなァ!」
 痙攣する脚を話して見得を切る万歳丸。
 首長竜は彼を殺そうと首を伸ばすが、脚が震えて動かないため手も足も出なかった。
「無茶しやがる」
 ボルディアは白い歯を見せて笑う。
 我慢した甲斐があった。実に良いものが見られた。
 それに、ここまで遺跡から離して足も封じた以上、本気で攻めても相手は逃げられない。
 紅のイェジドが斜めに跳んで、首長竜の至近をかすめるように進む。
 ボルディアが巨大な斧を軽々と振り回し至近距離から巨大な前足に叩き込む。
 刃が止まらない。
 躱しも受けもしない鱗では絶大な威力に耐えきれない。
 鱗と皮膚は最初の時点で機能を無くし、大量の極太筋肉を裂いて神経と血によるジュースを作り出し、巨大な柱じみた骨を半ばまで裂いて反対側に抜ける。
「ハッ」
 巨足が痙攣する。
 上半身にぶつかり一瞬意識が途絶える。
「温すぎる!」
 今度は縦に一閃。
 端から数メートルめり込んだ足は、骨を完全に砕かれ足としての機能を失った。
 北西から、騎乗したアウレール・V・ブラオラント(ka2531)が高速で近づいてくる。
 彼が来た方向には大きな龍鉱石がある。イニシャライザー化して強く光っていて、粘れば歪虚汚染で有利になるという首長竜の浅知恵を完全に否定した。
「私はアウレール・V・ブラオラント!」
 ランスを構えて加速する。
 敵は巨体であり近づけば反撃される。
 細身のアウレールの突撃は一見自滅覚悟の片道攻撃にしか見えない。
「世界に対する長年の狼藉を、今この場で償え歪虚よ!」
 尻尾の至近に当たる直前、鋭い切っ先を一定の速度で動かす。
 先端が鱗を貫き、衝撃で肉と脂をミックスジュースに変えながら奥に進み、それだけでなく下方向にも抉って柄近くまで埋まる。
 甲高い悲鳴が聞こえて首長竜の震えが激しくなる。
 アウレールは馬の力も利用しランスを引き抜き、再度の助走の後突撃を仕掛ける。
「ええい狙いにくい」
 今度は腹だ。
 仰向けになっているので狙いやすいのだが、一番狙いたい延髄が遠い。
「手数優先じゃ。首長竜が回復する前に」
 バリトンが愛馬から降り地面と竜の隙間に向かう。
「仕留めるんじゃ!」
 腰を捻って隙間から切り上げる。
 地面との摩擦で熱い刃が、巨大な半円を描いて竜の腹に傷をつける。
 だがアウレールの一撃に比べるとダメージが小さい。一撃の威力はあっても比較すれば攻撃範囲が狭いのだ。
「なら」
 アウレールの進路が変わる。
 腹ばいになった首長竜の、力なく地面に垂れた首に向かい速度を上げる。
『舐メル……』
「歪虚など舐めるか汚い!」
 一言で切り捨て巨大な氷に似た切っ先を喉元へ。
 竜が体と首を捻っても回避するには足りず、アウレールのランスが首の3分の1を切り裂いた。
「Koloss、反転してもう一度だ」
「危険です!」
 澄み切った声と一緒に稲妻が走る。
 アウレールを襲おうとした巨大な頭部をほぼ全ての力を破壊に振り向けた雷が貫く。
 雷は肉と骨を焼きつつ首の中を通り、首の中程を黒く焦がしてようやく止まる。
 雷の微量の発光は、輝く白い薔薇の花に似ていた。
「しかしっ」
「ここにクルセイダーはいません。無理をしすぎて倒れたら皆が」
 リンカ・エルネージュ(ka1840)の声が不自然に止まる。
 しゃっくりに似た音が微かに聞こえた。
「地の精霊よ私達に力を。もっと!」
 積もった雪が吹き飛び分厚い土の壁がリンカを隠す。
「そこの若いの! 汚水ブレスを躱しきるのは面倒じゃぞ!」
 バリトンだけでなく多くのハンターと、もちろんアウレールも壁の後ろに逃げ込んだ。
 直後に高圧汚水が壁に激突する。
 急増の壁では竜のブレスに耐えきれず消滅するが、その分勢いの弱まった汚水ではハンター達の回避を上回れない。
「せっかくの新品なのに……ごめんね。でも戻ったら磨いてあげるから、お願い」
 全高7メートルの盾が横に退けられ魔導型デュミナスが姿を現す。
 沙織(ka5977)の機体のずっと後ろにはイニシャライザーがある。
 首長竜が破壊するためにはデュミナスを突破するしかない。
「ここは通しません!」
 盾を地面に垂直に突き刺す。
  士官学校で習った通りに立射の姿勢をとらせ、仲間達がいない高度に向け射撃命令を出す。
 ドン、ドン、ドンと一定の感覚で竜の上半身に穴が開く。
 無事な3つの足を酷使し立ち上がり沙織機を押しのけようとしても、盾が邪魔でCAMの重さと大きさも邪魔で、イニシャライザーをブレスの射程におさめることすらできなかった。
 遠距離からの105ミリが竜の腹に当たって肉が抉られ血が流れる。
 体液が流れすぎ無駄な力が抜けたからだろうか、巨大な四肢の震えが急に止まった。
 首長竜は万歳丸の投げ技の衝撃から、巨大な歪虚がとうとう抜け出した。
『ヨクモ……ゴノッ』
 竜の怒りは制御されずに荒れ狂う。
 1000倍を超える体重差は当たるだけでも即死しかねない。
「おーしこっち斬るぞ」
 ボルディアが足の指を切断。
「そこを刺します」
 アウレールが腹に深いを開け。
「下がるぞ」
 ジャックがばっさり斬りつけブレスの射程外まで後退する。
『殺ス、殺シテ壊シテヤルゾォッ』
 首長竜は足を引きずり北へ向かうおうとした。
「気配からして高位の歪虚なのじゃが……図体の他は雑魚でも高位に登れるのかのう」
 紅薔薇(ka4766)は軽く首を振り無益な思考を脳裏から消した。
 艶のある黒髪が軽やかに揺れ元の位置に戻る。
「ガルドブルムに竜を喰わせるつもりは無いのでな」
 体の奥から高密度のマテリアルが溢れ、血管を一瞬で巡り骨肉神経を強化する。
 紫の瞳には首長竜など足下に及ばぬ気合いがある。
「ここで消えてもらう」
 護神刀『九尾切』を片手に跳んだ。
 速度は素晴らしく動きの切れはそれ以上。
 斬るタイミングと精度は並の達人では一生に一度できれば奇跡の域にある。
『ナ、ハァ?』
 竜が足を前に出したのにいつまでたっても足の裏に感触がない。
 否、右足首以下の感覚が届かない。
『ヒッ』
 見下ろすと足の下3分の1が完全に解体されていた。
 気づいても巨体の勢いは止まらず均衡を崩して前に倒れる。
 呆然と開いたままの大口に、研ぎ澄まされた雷の槍が突きたった。
「また臭い……ブレス注意! 10秒と少しでまた来ます!」
 リンカが文字通り壁をつくる。
 前のめりに倒れた竜が首だけをリンカに向ける。
 紅薔薇が体格の良いゴースロンを駆り、近くにいたハンターと共に壁の後ろに隠れて跳んだ。
 濁流が壁を消し飛ばす。
 大多数のハンターが壁が無くても回避には成功し、運悪く掠めたものも勢いが弱まっているのでたいしたダメージにはならない。
 身動きできない巨体に30ミリと105ミリが連続で命中し肉塊がいくつも飛んだ。
「どれだけ頑丈なんですか。そろそろ弾切れですよ」
 リンカによるお返しの稲妻が口から入って首を通って内臓に届く。
 巨大な瞳が白目を剥き、焼かれた内臓の臭いが口から溢れた。
「何度見てもでかい……たしかにでかいが、先日のグランドワームほどでは無いのじゃ。倒せる程度の強さじゃよ」
 紅薔薇は同じ事を考えた前衛と共に近づき、次のブレスの前に倒しきるつもりで刀を刺した。
「なぬ?」
「うお危ねぇ」
「半透明!?」
 刃が竜がいたはずの空間を抵抗なく抜け地面にぶつかる。
 竜の形が崩れ、歪み、汚水にしか見えない何かに変じて地面に広がりはじめた。
「負のマテリアル!?」
「退避ぃっ」
「その変に散らばってる龍鉱石をぶつけろ、早く!」
 ハンターが慌ただしく距離をとりあるいは対処する。
 そんな彼等を助けるために、2つの特大イニシャライザーから極太の光放たれ巨大スライムもどきをライトアップする。
 光と汚水が反応する。
 存在を否定する力と龍が残した力が食い合い中和しあい、両者とも最初から存在しなかったかのように姿を消した。
 特大龍鉱石2つに直しようのない亀裂が走る。
 それでも、龍の形を残す2つから、満足そうな気配が感じられた。

●空高く飛ぶ
 ルーファス機が射撃のたびに位置を変えていく。
 ガルドブルムが空へ羽ばたこうとしたとき、広がった翼を狙える絶好の位置に到達していた。
 頭が高速で計算している。
 斬龍刀を構えて突撃は? 現時点での魔導型デュミナスでは命中率5割。相手方回避能力を考慮に入れれば4割を切る。
 翼を狙った射撃は? 高精度狙撃スキルは現状の機体には載っていない。不可能ではないが分の悪い勝負になる。
「厭らしさも人間の強さですから……生き足掻きますよ」
 ルーファスは前進を選択した。
 距離10メートル。ガルドブルムなら一歩前に出て爪による4回攻撃ができる距離だ。
 3回当たれば大破以上確実なのを承知の上で、ルーファスは恐怖に耐えて銃撃する。
 竜翼が揺れる。
 1発は外れ1発は先端部を掠めて揺らすだけ。最後の1発が皮膜に当たり、しかし貫くことは出来ずに皮膜沿いに滑って地面に斜めに突き刺さる。皮膜に凹みは出来たがそれだけだ。
『ハッ、同じ相手に二度同じ手を喰ら……』
 言葉が止まる。無意識に瞬きする。
 休養中に翼を壊した相手と気配が酷似しているのにどこか違う。
 CAMに外部向けスピーカーがあれば、ルーファスがその息子であることに気づけたろうが今回知る機会は訪れない。
 竜の高度が2メートルから5メートルへ。
 高度に練られた負のマテリアルが翼を通じて上向きの力をもたらす。
 ガルドブルムは違和感を振り切り空とこれからの対地戦に思いを馳せ、真横からの衝撃をもろに喰らった。
「翼部分に歪みを確認。飛行能力保持」
 硬く少し盛り上がった土地で機体を安定させ、ルーファスとはほぼ逆方向から統夜機が射撃する。
「喉奥からの微弱な発光を確認。……早めに援護を頼む。2、3機では落としきれない」
 他のCAMと同様部位狙いは困難だ。
 なので数多く撃ち、ブレスを吐く口か、それが無理でも飛行能力に直結する翼を狙う。
 30ミリよりずっと小さな弾がガルドブルムの鼻先を掠める。
 統夜達の30ミリ命中率が跳ね上がる。が、竜の上昇速度は上がり続け、ついにはCAMの30ミリが届かない距離に達してしまった。
「その翼、落とさせて貰うぜ!」
 長弓から矢が放たれる。
 血を流しすぎ本来の半分程度の回避しか出来ない竜に当たり、当たるだけで無く鱗を穿って肉に埋まる。
 首長竜を倒したハンターが合流したのだ。
「何人倒れてんだ」
 ヴァイスはイェジドにだけ聞こえる小声でぼやいた。
 名高い強者が5人以上倒れている。そうでない者も決して浅くない傷を追い、ブレスが当たれば重体で済まず消し炭になりそうだ。
「どうした黒蜥蜴。動きが鈍いぞ!」
 ジャックが馬を走らせ竜の進路上へ。
 手持ちのマテリアルヒーリングを使い尽くし、少なくとも一撃で死なない程度には回復している。
 なので思い切りよく撃つ。
『ほゥ』
 ガルドブルムの片翼が一瞬止まって回避に失敗、巨体と比較すれば細い矢が胸の奥まで刺し貫いた。
「……速いな」
 2の矢を撃つ前にガルドブルムが北西に向かい、ジャックは矢を番えたまま舌打ちした。
 深紅のイェジドがひたすら駆ける。
 ヴァイスは表面上は落ち着き払ってロングボウを引いて、喉に炎をためつつある竜を狙い撃つ。
 北西にずらした矢が黒竜の腹を貫き空へ抜ける。竜退治の英雄譚そのものの光景なのにヴァイス本人は焦りを滲ませ叫ぶ。
「奴はイニシャライザーを狙っている。北西のは間に合わない。南東の守りを固めろ!」
 竜は満足そうに目を細め、高度を速度に変換し北西へ加速する。
 ひびの入った竜の亡骸が砕かれるまで、20秒もかからなかった。
『俺も逃げねェ、お前等も逃げねェ。イイ食い合いだなァ!!』
 竜がハンターと向かい合う。
 大きく息を吸い、喉から細く鋭く炎を放つ。
 直径十数センチの熱線が、ガルドブルムの喉から南東へ真っ直ぐ伸びた。
 バイクも馬も幻獣も間に合わない。
「この大きな身体は守る為に! 角度調節っ」
 沙織のデュミナスがCAMシールド地面に突き刺し大きく傾け、デュミナスの両手を使い押さえ込む。
 熱線が到達する。シールドに斜めに当たって熱して焦がし、貫く前に威力が弱まり進路が曲がり、デュミナスの装甲を掠めて遠くの地面にぶつかる。
 雪が突沸して爆発が生じ、最後に残った特大イニシャライザーを揺らした。
「参ったわね」
 綾瀬が弾倉を交換する。
 真司も海斗も、今無理すれば敵を叩く前に自滅確実だ。
「災厄の十三魔相手にチキンレース……趣味じゃ無いわね」
 竜の予想位置に置くつもりで発砲。ライフルの威力と長弓並の兼ね備えた銃は彼女の意図通りに弾を送り出し、ガルドブルムの顎を削るのに成功した。
『この弾はお前の牙か』
 ガルドブルムが口を開く。喉の奥には炎が集まっている。
 戦闘開始直後から今まで、前衛ハンターの援護に鱗削りに大活躍だった綾瀬に気付き、目を細め機嫌良く喉を鳴らす。
 竜の体から血が流れ出す。
 生命維持の力が炎に変換されている。
 わずかに漏れた力が赤い光になり、照らされた雪原は1秒ももたずに焼け焦げた黒い地面に変わる。99パーセント以上はまだ口の中にあるのにとんでもない威力だった。
『どちらが硬いか勝ッ』
 105ミリの弾丸が竜の喉にめり込んだ。
 全身の傷から炎が漏れ、肉が茹だり眼球が熱で半ば濁る。
 ハンターの歓声が爆発し、しかし大金星をあげたはずのCAMから逃げるようにミオレスカが出てくる。
「二度目は無理です……」
 CAMの肩に登り弓を構える。
 先ほどの一撃は、弓でも30ミリでも届かぬ距離から攻撃したから不意打ちになり成功したのだ。気付かれた以上当てるのは難しいし相手は移動し続けているので既に弓の間合いだ。
 矢に冷たいマテリアルを込めてデュミナス以上の精度で射る。
 黒竜は音と気配のみを頼りに軽く降下するだけで躱す。
 統夜達のデュミナスがイニシャライザーの前へ展開。30ミリアサルトライフルで弾幕を張る。
 ガルドブルムは強引な攻めでは己が滅ぶと判断。弧を描いて様子を伺いなら、焼けた喉を酷使しブレスのチャージを再開した。
「敵回避4割。行けるぞ。魔導型デュミナスで何百年ものの歪虚を討ちとるチャンスだ!」
 イニシャライザーをCAMで庇う。CAMはシールドの陰から30ミリをひたすら撃つ。
 当たっても鱗や皮膜が凹むだけだ。生身の熟練ハンターによる強烈な攻撃と比べればダメージはささやかなものでしかない。
 が、今この場でガルドブルムに攻撃が届くのはCAMと少数のハンターのみ。
 熱線が戦場を横切る。
 イニシャライザーの代わりに複数のシールドが焦げる。
「楽しんでるか? ガルドブルム」
 漆黒のCAMの割れた装甲から、統夜の声がガルドブルムに届いた。
『あァ、お前達に出会えたことを精霊にでも感謝したい気分だ』
 熱線が伸びる。
 イニシャライザーの先端が溶けて機能が低下する。
 血だらけの竜の動きが本来の切れをとりもどす。矢と弾丸の雨を潜り、先ほどと同レベルの炎を今度はハンターにぶつけようとした。
「調子戻ったなら再戦に備えてここはドローにしようぜ。俺らも万全なお前と戦う方が楽しいんでね」
 限界なんだろと言外に匂わせる。
 実際のところ、ガルドブルムはブレスと血止めを両立することができていない。このままではハンターの攻撃を全て回避しても自滅する可能性があった。
『ハ。今だから、面白ェんだろう』
「いやだからさ」
 ハンターが全滅する可能性も、両者共倒れになる可能性もある。
「そもそもお前なんでここにいんの?」
 銃声と砲声が止まないのに、天使が通り過ぎた。
 ガルドブルムがブレス発射の機会を逃すだけでなく速度調節にも失敗。
 矢も弾も引き離して南へ抜けてしまう。
「別の用件で来てふらふらー、と寄ってきただけとか?」
 ハンターを殺すつもりでも戦いを楽しむつもりでも、ここより条件の良い場はいくらでもあるのだ。
 そう勘ぐりたくもなる。
『……ハッ』
 誰でも気づけるほど、返事が来るまで間があった。
 ガルドブルムは旋回してハンター達に向き直る。
 戦闘開始前に感じた通りに鉄人形――CAMの数は少ない。
 より満足できる戦いのために、後10や20は欲しいと素直に思えた。
「で、どうするの? そっちがやるつもりなら最後までやるわよ?」
 綾瀬は問答の間も淡々と弾を当て続けている。ガルドブルムの体の各所が薄れては元に戻りを繰り返し、滅びがかなり近そうに見える。無論いざ死闘となればこの先にもう一つ、文字通り命を燃やした攻防が待っているであろうことも想像に難くないが。
『勝敗無し……あァ、遺跡解放戦はアレを殺した時点でお前達の勝ちか』
 竜の口から炎の気配が消えた。
 同時に傷口からの出血が止まる。
 存在が安定し体が薄れることもなくなる。
『体を治して鉄人形を揃えて来い。俺の全てで相手をしてやる』
 銃弾と矢を躱し、ガルドブルムが高度を落とさず北へと向かう。
 鱗は傷だらけ、筋にも重大な損傷を負っている。
 ハンターと回復速度が違い過ぎるため、ガルドブルムは手負いのまま戦うことになるだろう。
 もっとも、それが有利な戦いを意味するとは誰も思わなっていない。
 ガルドブルムは勝つために戦力を集め、勝つために戦術を練り上げ、最大級に危険な歪虚としてハンターの前に現れるはずだ。
 だが誰もが勝利を確信している。
 次に総力を結集をできるのは、こちらも同じなのだから。

 半日遅れで後続部隊が到着。
 重傷者の治療と遺跡の再起動は問題なく行われた。
 転移装置により大量の資材が運び込まれ、その中にはCAMや魔導アーマーも当然含まれていた。

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MVP一覧

  • 黒竜との冥契
    黒の夢ka0187
  • 《死》の未来を覆す奏者
    白金 綾瀬ka0774
  • 青炎と銀氷の魔術師
    リンカ・エルネージュka1840
  • The Fragarach
    リリティア・オルベールka3054
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカka3496
  • パティの相棒
    万歳丸ka5665
  • 兎は今日も首を狩る
    玉兎 小夜ka6009

重体一覧

  • 黒竜との冥契
    黒の夢ka0187
  • 赤髪の勇士
    エヴァンス・カルヴィka0639
  • オールラウンドプレイヤー
    柊 真司ka0705
  • 自爆王
    紫月・海斗ka0788
  • 誓槍の騎士
    ヴァルナ=エリゴスka2651
  • The Fragarach
    リリティア・オルベールka3054
  • 兎は今日も首を狩る
    玉兎 小夜ka6009

参加者一覧

  • 黒竜との冥契
    黒の夢(ka0187
    エルフ|26才|女性|魔術師
  • 戦地を駆ける鳥人間
    岩井崎 旭(ka0234
    人間(蒼)|20才|男性|霊闘士

  • ヴァイス・エリダヌス(ka0364
    人間(紅)|31才|男性|闘狩人
  • 蒼き世界の守護者
    アーサー・ホーガン(ka0471
    人間(蒼)|27才|男性|闘狩人
  • 「ししょー」
    岩井崎 メル(ka0520
    人間(蒼)|17才|女性|機導師
  • 赤髪の勇士
    エヴァンス・カルヴィ(ka0639
    人間(紅)|29才|男性|闘狩人
  • オールラウンドプレイヤー
    柊 真司(ka0705
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • 《死》の未来を覆す奏者
    白金 綾瀬(ka0774
    人間(蒼)|18才|女性|猟撃士
  • 自爆王
    紫月・海斗(ka0788
    人間(蒼)|30才|男性|機導師
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師
  • 未来を示す羅針儀
    ジャック・エルギン(ka1522
    人間(紅)|20才|男性|闘狩人
  • 青炎と銀氷の魔術師
    リンカ・エルネージュ(ka1840
    人間(紅)|17才|女性|魔術師
  • ツィスカの星
    アウレール・V・ブラオラント(ka2531
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • 誓槍の騎士
    ヴァルナ=エリゴス(ka2651
    人間(紅)|18才|女性|闘狩人
  • The Fragarach
    リリティア・オルベール(ka3054
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ミリア・クロスフィールド(kz0012
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2016/04/20 07:14:17