ルサリィ&フェイトの誕生パーティーへ!

マスター:星群彩佳

シナリオ形態
イベント
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
1~25人
サポート
0~0人
報酬
普通
相談期間
8日
締切
2016/05/05 19:00
完成日
2016/05/19 19:52

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 5月27日はルサリィ・ウィクトーリア(kz0133)、5月2日はフェイト・アルテミス(kz0134)の誕生日になります。
 ハンターの方達とは一年前からのお付き合いになりますが、数多くの依頼を通じてたくさんの方とお知り合いになりました。
 そこで今年はイベント会場屋敷の大ホールにハンターの方達を招き、二人の誕生パーティーを行いたいと思います。
 普段は仕事が忙しく、ハンターの方達に依頼をしてもなかなか出会うことがない二人ですが、ウィクトーリア家の使用人達の密かな誕生パーティー計画によって、会えることになりました。
 ルサリィとフェイトは会場に到着するまで、パーティーのことは秘密にしておきます。
 なので誕生パーティーに参加するハンターの方達は、準備をしてください。
 パーティーに出す料理や飲み物を作るのも良し、催し物をするのも良し、プレゼントを用意するのも良いでしょう。またペット同行も許可されていますので、連れてくるのもアリです。
 催し物は大ホールの中と中庭に舞台がありますので、そこでどうぞ。歌を歌ったり、楽器を演奏したり、踊って見せたり、武芸を披露するのも喜ばれます。
 あるいは簡単な手合わせもルサリィは喜びますので、腕に覚えがある方はやってみるのも良いかもしれません。
 今までルサリィの依頼に参加してくださった方も、はじめての方も、気楽に参加してください。
 このパーティーで、様々な方達と親交を深めてくださると嬉しいです。

リプレイ本文

☆誕生日パーティー開催!

 五月某日、イベント屋敷会場の大ホールに入ったルサリィとフェイトは、そこに見知ったウィクトーリア家の使用人達の他に、ハンター達の姿があることに驚いた。
「ルサリィ、フェイト、お誕生日おめでとう。コレは誕生日プレゼントだ」
 龍崎・カズマ(ka0178)はルサリィにはシロツメクサ柄の大きな紙袋を、フェイトにはスズラン柄の紙袋を渡す。
「まあ! ありがとう、カズマ。貴方にはいつも依頼でお世話になっているわね」
「ルサリィお嬢様と私のお誕生日パーティーをしていただき、ありがとうございます」
「いやいや、ルサリィとフェイトの依頼はなかなか愉快な内容が多いからな。ある意味、良い息抜きになっているんだ」
 カズマが「クククッ……」と思い出し笑いをするので、ルサリィは一瞬頬をぷくっとフグのように膨らました後、突然ニヤッと笑う。
「カズマからは女性の影があまり見えないのよねぇ。まああくまでもわたしの目から見たところは、だけど。だからそんなカズマがどんなプレゼントを選んでくれたのか、楽しみだわ」
「今見ても、よろしいでしょうか?」
「おっかねぇな。まあ貴族から見れば高級品には思えないだろうけど、これでも俺一人で一生懸命に選んだんだから、お手柔らかに頼むぜ?」
 弱く笑いながら肩を竦めるカズマにニコッと微笑みかけて、ルサリィとフェイトは近くのテーブルの上でプレゼントを紙袋から出して見る。
 ルサリィのシロツメクサ柄の紙袋に入っていたのは、桃のコンパクト・アーモンドブローチ・花柄のレジャーシートの三点だ。
「アラ、可愛らしい品々ね。なかなか良いセンスをしているじゃない♪」
 早速ルサリィは鼻歌を歌いながら、アーモンドブローチを胸元につける。
 フェイトのスズラン柄の紙袋に入っていたのは、ルサリィと同じ桃のコンパクトと、銀食器セットだった。
「私にまで、ありがとうございます。特にルサリィお嬢様と同じ品が嬉しいです」
「二人には揃いの品があれば喜ばれると思ってな。ルサリィに贈ったレジャーシートは今の季節、外で昼寝をしたりピクニックに使うのに良いと思ったんだ」
「うふふっ、そうね。外で過ごす時には、使わせてもらうわ」
「フェイトの銀食器セットは貴族が普段使っている良い品の物だから、メイドとして仕えているフェイトが持っていても良いだろう?」
「お心遣い、感謝いたします。ありがたく、使わせていただきますね」
 カズマは二人に軽く手を振り、飲み物を取りに別のテーブルへ向かう。
 そこへドレスを着たナーディル・K(ka5486)が、カズマに声をかける。
「カズマさんは紙袋を選ぶセンスも良いんですね」
「何のことだ?」
「お二人の誕生日プレゼントを入れた紙袋の柄のことです。ルサリィさんの紙袋の柄はシロツメクサ、お誕生日の五月二十七日の誕生花なんです。そしてフェイトさんの五月二日の誕生花は、スズランなんですよ。ご存知ありませんでした?」
「ああ、全く。俺は中身を持ってきただけで、包みはウィクトーリア家のメイド達に頼んだんだ。そもそもそんな細やかな心遣い、俺ができると思うか?」
「……とりあえず、ノーコメントにしておきます。さて、私もお二人に挨拶をしてきますね」
 竪琴を持ち直しながら、ナーディルはルサリィとフェイトの所へ行く。
「ルサリィさん、フェイトさん、お誕生日おめでとうございます。私は舞台の上で竪琴を演奏しますので、どうぞお聞きになってください」
「ナーディルの演奏、話には聞いていたけれど、聞くのははじめてだから楽しみだわ!」
「とても素晴らしい演奏をなさるそうで。楽しみにしています」
「ご期待にそえるように、頑張りますね。いつも音楽を通して依頼を楽しくこなせておりますので、今日はお祝いの気持ちと感謝を込めて演奏させていただきます」
 ナーディルは軽く頭を下げると、大ホールの舞台に上がる。
 そして中央に置かれた大きめの椅子に座ると、竪琴の演奏をはじめた。
「――流石、竪琴の名手と言われているだけはあるわね」
「ええ、美しい音色です。プロの演奏者として、コンサートを開いてもおかしくはないほどの腕前ですね」
 二人はうっとり……と聞き惚れていると、ふとかぐわしい花の香りが近付いて来るのを感じ取る。
「ルサリィ、フェイト、お誕生日おめでとう。五月の誕生花を集めたブーケをどうぞ」
 ザレム・アズール(ka0878)はブーケ【永遠の赤】を、二つに分けたブーケを二人に手渡す。
「綺麗なブーケね。ありがとう」
「後で私室に飾らせてもらいます」
「喜んでもらえて良かった。実は料理の方も、準備してあるんだ。運び終えたら、また声をかけさせてもらうよ」
「楽しみにしているわ」
「お待ちしております」
 ザレムはいそいそと大ホールを出て行くが、厨房に入って星野 ハナ(ka5852)の姿を見ると表情が強張った。
「うっふっふ~。ザレムくんと私の共同制作料理、良い感じに仕上がりましたぁ。今日はルサリィさんとフェイトさんのお誕生日パーティーですけど、幸せをお裾分け……いえ今日はお福分けと言った方が良いですねぇ。それをされている気分ですぅ」
 サプライズで誕生日パーティーを開かれた二人よりも、何故かハナの方が浮かれている。
 しかし扉の所で立ち竦んでいるザレムと眼が合うと、すぐにいつもの笑顔になった。
「ザレムくんったらぁ、戻って来たのなら声をかけてくださいよぉ。お二人にブーケを渡せましたかぁ?」
「あっああ……。喜んでくれたよ」
 なるべくハナと視線を合わせないようにしながら、ザレムは厨房に入るとエプロンを身に付ける。
「星野の方は、全て準備を終えたのか?」
「もちろんですよぉ。今日は朝早くからザレムくんとパーティー料理を作っていましたしぃ、人数分より多く作っちゃったぐらいですぅ」
 ザレムとハナはパーティーに出す料理を作る担当となったので、他のハンター達よりも先に来ていたのだ。
 ザレムは最初、自分一人が料理担当者だと思っていたので、厨房に先に来ていたハナを見て驚いた。
 しかし「一人で作るよりもぉ、二人の方が作業が進みますよぉ」とハナに言われて、ザレムは素直に納得したのだ。
「飲み物はルサリィがまだ未成年であるし、フルーツを使ったジュースが良いだろう。せっかくだからルサリィとフェイトの希望を聞いてから、オリジナルジュースを作るというのもアリだな」
「その方が喜ばれるかもしれませんねぇ。私の方はカクテルグラスに、茹でたエビとコンソメのジュレを入れたものを作りましたぁ。他のオードブルはウィクトーリア家の料理人の方達と、いろいろ作りましたねぇ。種類と量がたくさんになりましたぁ。どれから手をつけようか、きっと迷っちゃいますよぉ」
 流石に二人だけでは時間に間に合わないこともあり、一般的な貴族のパーティーに出されるオードブルは料理人達と共に作った。
 そして空いた時間に、二人は特製のスイーツを作っていたのだ。
「五月はバラが咲く季節だからな。俺は材料にも使ったが、バラのケーキを作った。ケーキの上のバラはクリームで作ってあって、食べられるブーケをイメージしたものだ。後はバラのゼリーも作ったが、こっちは形を作るのに少々苦労したな」
「うわぁ! とってもキレイなスイーツですねぇ♪ 食べちゃうのが、勿体無いぐらいですぅ」
 ハナはバラのケーキとゼリーを見て、眼を輝かせる。
 大きなホールケーキにはクリームで作られたバラが数多く咲いており、中心に置いてあるチョコレートのプレートには『HAPPY BIRTHDAY!』と書かれてあった。
 そしてワイングラスに入っている赤いバラの形のゼリーからも、花の香りがしてくる。
「ゼリーをバラの形にするのは難しかったから、二人分しか作れなかった」
「そうですかぁ……。ちょっと残念ですけどぉ、今日の主役はお二人ですものねぇ。でも大丈夫ですぅ! 私が他の皆さん用にデコレーションケーキを作りましたからぁ。それとこの前の依頼でザレムくんが作ったイチゴのプリザーブを使って、ブラマンジェも作ったんですぅ!」
 ハナは嬉しそうに、シナリオ名・『イチゴ祭りを盛り上げよう!』でザレムが作ったイチゴのプリザーブを使ったブラマンジェをのせた皿を差し出す。
「どうしてそこまで嬉しそうな表情をするのか分からないが……。とりあえず他の参加者用のスイーツも用意できたことだし、大ホールへそろそろ運ぶか。主役達用の飲み物と食べ物は、早めに出した方がパーティーの進行に良いからな」
「あっあの、ザレムくん……」
 ハナは背を向けたザレムの腕を軽く掴んで、引き留める。
「その……わっ私にも特製のケーキ、作ってくださいませんかぁ?」
 頬を赤く染めたハナに上目遣いで頼まれたザレムは、ふむ……と腕を組む。
「別に良いけど、まずは誕生日を教えてくれ。その日に依頼が入っていなければ、当日に届ける。できるだけ予定は空けておくつもりだが、もし急な依頼が入ったら遅れるけど、それでもいいか?」
「あうぅ……。あくまでも業務的ですけどぉ、それでも良いですぅ」
「そうか。分かった」
 ザレムとハナには過去の依頼で顔を合わせたことがある鳳凰院ひりょ(ka3744)はその時、少しだけ開いていた厨房の扉からその様子を見てしまう。
「――俺は何も見かけなかった。そして何も聞いてもいない」
「どうかしましたか? お兄様」
 ひりょの隣を歩いている妹の鳳凰院 流宇(ka1922)は、兄の様子がおかしくなったのを見て首を傾げた。
 二人の兄妹は控室にいたのだが、主役のルサリィとフェイトが大ホールに到着した知らせを使用人から聞かされて、これから向かうところだったのだ。
「ウィクトーリア家の依頼には何度か参加しているけれど、改めて依頼人の二人と顔を合わせるのは今回がはじめてだからね。少しだけ、緊張しているんだよ。ハハハッ……」
 遠い目をしながら空笑いをするひりょを見て、流宇はこれ以上、問い詰めてはいけないと判断する。
「そうですね。わたくしも少々緊張しておりますの」
「まあウィクトーリア家のご令嬢と言えば気さくな方で接しやすいと言われているし、面白い依頼をよく出しているから、そうかたくならずとも大丈夫だよ」
 今まで参加した依頼を思い出したひりょは、思わず自然な笑みを浮かべた。


「ルサリィさん、フェイトさん、はじめまして。そしてお誕生日、おめでとうございます♪」
 エステル・ソル(ka3983)は満面の笑顔を浮かべながら、バラのシロップを使った手作りのビスキュイをのせた皿を二人に差し出す。
「このスイーツは後ろにいる二人とわたくしの三人で、作りました。バラの形にするのはちょっと難しかったですけど、せっかくの五月の誕生花ですからね」
「うわぁ、美味しそう! フェイト、早速頂きましょう!」
「その前にルサリィお嬢様、お三人のお嬢様とご挨拶をなさってください」
 フェイトの冷静な一言で、慌ててルサリィは背筋を伸ばす。
「うふふ、可愛らしいお嬢様ですね。お二人とも、お誕生日おめでとうございます。ご挨拶が遅れましたが、私は雲雀(ka6084)と申します。ハンターでもありますが、メイドさんでもあるんですよ。以後、お見知りおきくださいませ」
 どこかフェイトと近しい雰囲気を持つ雲雀は穏やかに微笑みながら、頭を深々と下げた。
「私もはじめましてだな。二人とも、お誕生日おめでとう。私の名前は紅媛=アルザード(ka6122)だ。これからよろしくな」
「実はわたくしとこひめちゃんは従姉妹なんですよ♪」
 エステルは嬉しそうに、紅媛の腕に絡み付く。
「こら、エステル。人前ではしたないぞ?」
「こひめちゃんの髪は、とっても綺麗です♪ わたくしの自慢の従姉なんですよ」
「……私の話を頼むから聞いてくれ。雲雀、悪いが引き離して」
「しょうがありませんね。紅媛は雲雀がいないと、ダメなんですから」
 ため息を吐きながらも、雲雀は紅媛にベッタリくっついていたエステルを引っ張りはがす。
「見苦しいところを見せて、すまない。エステルはパッと見は私とあまり似ていないが、正真正銘従妹なんだ。まだまだ甘えっ子なところがあって、ルサリィの方がしっかりしているな」
 紅媛はアハハ……と軽く笑った後、改めて場の空気を変えるように咳を一つする。
「ごっほん。ちなみに雲雀は私の幼馴染みであり、昔は仕えてくれていたんだが、引っ越してからはエステルに仕えているんだ」
「元主人なのに、何故か睨まれておりませんか?」
 フェイトの言う通り、エステルを押さえながらも雲雀は紅媛を強く見つめていた。
「だって紅媛は雲雀よりも家事が全て得意で、雲雀のお仕事も奪っていく天敵さんですから! ……お胸も雲雀より大きいですし」
「どうやらお年頃の悩みを抱えているようね」
 ルサリィに同情の視線を向けられた紅媛は、何とも言えずに肩を落とす。
「まあ確かに私は家事が得意だが……いや、とりあえずエステルの世話をしてくれれば良い」
「ひばりちゃんはお歌が上手なんですよ! 一緒に歌うと、とても楽しいんです♪」
「エステル……! 紅媛より、可愛げがあります!」
 ぎゅうぎゅうと抱き締め合う二人を見ている紅媛は、大きなため息を吐いた。
「はあ……。とりあえず二人とも、今日の主役はルサリィとフェイトなんだ。二人に祝いの歌を、歌って聞かせるんだろう?」
「あっ! そうでした!」
「今、用意してきますね!」
 予定を思い出したエステルと雲雀は、慌てて舞台へ向かう。
 残った紅媛は、ルサリィとフェイトに深々と頭を下げた。
「騒がしくて申し訳ない! 二人とも、今日の誕生日パーティーをとても楽しみにしていて……」
「分かっているわ。はしゃいでくれた方が、楽しくて良いわよ」
「元気なのは良い事ではありませんか」
「ううっ……! 後でちゃんと言っておく。二人の歌が上手なのは保証するから、ぜひ聞いてくれ」
 エステルと雲雀の様子を見に紅媛が行くと、ルサリィとフェイトはバラのビスキュイを食べ始める。
「ん~♪ 美味しいわね。『可愛い女の子達の手作りスイーツ』ってだけで、何だか甘く感じられるわ」
「美味しい事は否定いたしませんが……。ルサリィお嬢様、コメントが中年男性のようですよ」
「何とっ!?」
 二人がビスキュイを食べ終えた頃、ひりょと流宇がやって来た。
「ルサリィ、フェイト、お誕生日おめでとう。直接会うのははじめてだけど、依頼で大変世話になっているよ」
「ルサリィ様、フェイト様、お誕生日おめでとうございます! お二人にはお兄様が依頼で何度かお世話になったようで、お礼を申し上げますわ。わたくしとは初対面ですわね。鳳凰院 流宇と申します。以後、お見知りおきください」
「うふふ、どうやらひりょより流宇の方がしっかり者のようね」
「ルサリィお嬢様、ひりょ様には何度もお世話になっているんですから……」
「いや、まあ俺も妹には敵わないと思う時があるから、あながち間違ってもいないよ」
 少しだけ苦しげに笑う兄の腹を肘で軽く突っついた流宇は「ゴッホン!」と大きな咳を一つした後、改めて微笑みを浮かべる。
「実はわたくし、ピアノを習っておりまして、これから舞台で演奏するつもりなんですの。よろしければルサリィ様、お兄様と踊っていただけませんか?」
「わたしと? 嬉しいお誘いだけど、ひりょとは二十センチの身長差があるんだけど、大丈夫かしら?」
 実はルサリィとひりょの身長差は、ちょうど二十センチだ。踊るとなると、いくらルサリィがヒールが高い靴をはいていても、ひりょは前かがみになってしまう。
「誕生日パーティーの主役に、恥はかかせないよ。それにルサリィの依頼で知り合えた仲間がいるし、いろいろなことを経験することができた。感謝の気持ちと、これからもよろしくという意味も込めて、しっかりとリードさせてもらうよ」
「お兄様相手ですので、いくらでもぶつかったり足を踏んだりしても構いませんわよ? お兄様はルサリィ様と踊ることを、ずっと夢見ておりましたものね」
「ははっ、流宇。発言には気を付けないと、殺伐とした誕生日パーティーになってしまうよ?」
 流宇は固まった笑顔の兄の言葉を聞いて首を傾げるも、フェイトの表情が強張っているのを見て、思わずビクッと体を震わす。
「もっもちろん依頼人とハンターとして、ですよ! お兄様はずっと挨拶ができなかったことを、残念がっておりましたから!」
 流宇が必死に言い直す姿を見て、ようやくフェイトの表情が緩む。
「こちらこそ、なかなか顔を出せずに申し訳ありませんでした。なかなかスケジュールが合わなかったもので、皆様とお会いできなかったことはこちらも心苦しく思っておりました。ひりょ様、ルサリィお嬢様のお相手をよろしくお願いします」
 深々と頭を下げるフェイトを見て、ルサリィは肩を竦める。
「何だかわたし抜きで話が進んでいるんだけど……。まっ、せっかくの機会だしね。流宇はピアノの演奏を、ひりょはわたしのダンスのお相手を、よろしくね」
 二人から許可を得て、兄と妹はホッと胸を撫で下ろす。
「ではわたくしは舞台に上がりますわね」
 流宇は先に舞台に上がっているナーディルとエステル、雲雀の三人と合流する。
 竪琴はナーディル、ピアノは流宇、そして歌はエステルと雲雀が担当することになっていた。
 四人は準備を済ませると、明るく楽しい曲を大ホールに響かせはじめる。
 そして大ホールの中心で、ルサリィとひりょが上手に踊り出す。
 しばしの間、二人のダンス姿にみんなの優しい視線が向いていた――。


 やがてダンスが終わると、ザレムとハナが参加者達に料理や飲み物、スイーツを勧めていく。
「ルサリィとフェイトは今日の主役だから、最初に飲み物のオーダーを聞こう。いろいろな種類のフルーツや花のシロップも用意してあるから、何でも言ってくれ」
 ザレムが二人の為にオリジナルジュースを作っている後姿を、ハナはボーっとしながら見つめていた。
「良いですねぇ……。ルサリィさんとフェイトさんが羨ましいですぅ」
 しかしあまりに集中して見つめていたせいで、ザレムが作り終えてこちらに近付いて来ていることに反応しない。
「おい、星野。手が止まっているぞ? こちらをずっと見ていたようだが、もしかして飲み物がほしいのか?」
「ほえっ!? あっああ、すみません。そうですねぇ。味見でお腹いっぱいだと思っていたんですけどぉ、みなさんに料理を配っている間にちょっと空いちゃいましたぁ」
 まさかザレムを見つめていたとは言えず、ハナは慌てて腹を両手で撫でて空腹だと言うように振る舞う。
「そう言うと思って、コレを作ってきた」
 ザレムは冷たい紅茶にイチゴのプリザーブを入れたグラスを、ハナへ差し出す。
「疲労回復にハチミツとレモンも入れてある。コレを飲んで、もう少し頑張れ」
「あっありがとう、ございますぅ……。あのぉ、ザレムくん。今日のこと、感謝していますぅ。またこういう機会がありましたら、よろしくお願いしますねぇ」
 心から嬉しそうに微笑むハナを見て、ザレムは一瞬胸が高鳴るのを感じた。
「あっああ……」
 だがハナに背を向けたザレムは、不思議そうに自分の胸を手でさすりながら呟く。
「料理のし過ぎで、胸やけを起こしたのか?」
 そんな二人の様子を、壁際に置かれたソファ椅子に座って見ていたカズマは肩を竦めた。
「季節が移ろうように、仲間との関係も少なからず変わっていくもんだな」
「けれど野暮なことをして、馬に蹴られないようにしないとね」
 そこへアイスティーを淹れたひりょが、グラスをカズマへ差し出す。
「どうぞ。お疲れのようだから、回復する紅茶を淹れてきたよ」
「ありがたい。でもまあ別に疲れて動けないワケじゃなくて、ここが一番居心地が良かったら動かなかっただけなんだ」
 そう言いながらもカズマはグラスを受け取り、アイスティーを一口飲むと舞台へ視線を向ける。
「こうやって明るく楽しい場所で、可愛らしい歌声と美しい演奏を聞いているだけで、大分癒されるんだ。……体に受けた傷は治せても、心に受けた傷はなかなか治らねーから厄介だな。――って、ダメだな。祝いの席で、暗い事を言うもんじゃねー。特に子供の誕生日パーティーなら、尚更だ」
 カズマは改めて体勢を正して、表情も引き締めた。
 そんなカズマの心中を察したひりょは、あえて笑顔を浮かべて明るい声を出す。
「カズマ、俺はこれからルサリィに、今まで受けた依頼のことについて話をしてこようと思っているんだ。彼女の依頼は本当に楽しいものばかりだからね。カズマも語って聞かせたいことが、山ほどあるんじゃないかな?」
 ひりょの言葉で、カズマは改めて今まで受けたルサリィの依頼のことを思い返す。すると自然に笑みが浮かぶ。
「――だな。ルサリィも聞きたいだろうし、いっちょ語ってやるか」
 アイスティーを飲み干したカズマはグラスをテーブルに置くと、ひりょと共にルサリィの所まで歩き出す。
 一方で、流宇はフェイトに話しかけていた。
「実はわたくし、お恥ずかしい話なのですが家事ができませんの。つい最近、鳳凰院家に来てくださったメイドさんからいろいろと教わってはいるのですが、なかなかコツというものが上手くつかめなくて……。今日のようなお誕生日パーティーの飾りつけとかでしたら、お兄様と一緒でしたけれどやれるんです。ですが生活面では本当に情けないことで……」
「家事は誰かと一緒に学ぶと、覚えやすいようですよ。身近に一緒に学べる方がいらっしゃるようでしたら、お声をかけてみてはいかがでしょうか?」
 フェイトの助言を聞いて、流宇の頭の中に兄と双子の姉の姿が浮かぶ。
「――そうですわね。一人で学ぶよりも、誰かと一緒の方が楽しく学べそうです♪」
 流宇とフェイトが盛り上がっている近くで、紅媛は白い皿にのったイチゴのブラマンジェを銀のトレーにのせて、皆に配って歩いていた。
「ふう……。残りは三皿か」
「あっ、こひめちゃん、見つけました! お手伝いを、お手伝いいたしますよ」
「ありがとう、エステル。でもコレを配り終えたら、とりあえず休もうかと思っているんだ」
「残り三皿なら、私達で食べてしまいましょう」
 歌い終えて舞台から下りた雲雀は皿の一つをエステルへ渡して、もう一皿は自分の分として手に取る。
「まあそれもアリかな? 配るのに夢中で、私も食べていなかったし」
 紅媛は最後の一皿を手に取ると、トレーは近くのテーブルに置いた。
 ブラマンジェを一口食べた雲雀は、目を丸くする。
「とっても美味しいです♪ 後でお二人から、作り方を教えてもらいましょう」
「本当に美味しいな! 私も作り方を教わろう」
「紅媛も……ですか?」
「……雲雀、何でそんな嫌そうな顔をするんだ?」
「うふふ♪ こひめちゃんとひばりちゃんが作ったスイーツ、とっても楽しみです♪ ぜひ特大サイズを作ってくださいね!」
 いち早く食べ終えたエステルは、無邪気な笑みを二人に向けた。
「アラ、良いわね。わたしも特大サイズのイチゴのブラマンジェを食べてみたいわ!」
 そこへ話に加わったのは、ルサリィだ。
 先程紅媛から皿を受け取り、ブラマンジェを食べてみたところ、とても気に入ったらしい。
 エステルとルサリィがブラマンジェの大きさで盛り上がっている中、紅媛・雲雀・フェイトは特大サイズを食べた後の二人のぷっくぷくになった姿を思い浮かべて、青い顔色になってしまう。
 愛らしい容姿をしている二人は、好きなものほど夢中になりやすいところがよく似ていた。
 だが好きなようにさせていると、いつかは三人が想像してしまった姿になってしまう可能性がある。
 三人は少しだけ、引きつった笑みを浮かべた。


<終わり>

依頼結果

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重体一覧

参加者一覧

  • 虹の橋へ
    龍崎・カズマ(ka0178
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師
  • 綺麗好き
    鳳凰院 流宇(ka1922
    人間(蒼)|17才|女性|聖導士
  • うら若き総帥の比翼
    ひりょ・ムーンリーフ(ka3744
    人間(蒼)|18才|男性|闘狩人
  • 部族なき部族
    エステル・ソル(ka3983
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • 美しき演奏者
    ナーディル・K(ka5486
    エルフ|27才|女性|疾影士
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • 笑顔を守る小鳥
    雲雀(ka6084
    エルフ|10才|女性|霊闘士
  • パティシエ
    紅媛=アルザード(ka6122
    人間(紅)|14才|女性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/05/05 18:37:52