希望の種を蒔け

マスター:四月朔日さくら

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~10人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
8日
締切
2016/05/09 19:00
完成日
2016/05/16 06:21

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 辺境における戦況が少しずつ姿を変えつつある、今日この頃。
 ゲルタ・シュヴァイツァーは今、ノアーラ・クンタウにいた。
「一応軍属だから、この要塞都市にいなくちゃいけないのも分かるんだけど、ねぇ」
 気になるのはずっと手伝ってきた開拓地――ホープ。
 希望という名を持つその場所は、今も大丈夫だろうか。
 そういえば先日からの幻獣の一件で、ホープの近くにも「魂の道」なる洞窟があったような報告は聞いていたが、彼女自身はその場を訪れたわけでもないので、詳しいことは分からない。
 ただ、その降りにホープに立ち寄ったハンターの言葉によれば、ホープは現状としては比較的落ち着いているらしいとのことではあった。
 ノアーラ・クンタウも落ち着きを取り戻しつつある。
 それならば、この場を離れてホープに赴いても、問題はないのではなかろうか。
 ゲルタにとって、ホープという場所は本当に希望に満ちた場所だ。まだまだ発展途上な部分は多いが、ホープやその周辺に住む辺境の民達は、確実に成長をしている。まるで、水を吸ってぐんぐん伸びる草木のごとく。
(あたしも、その手伝いをもっとしたい)
 ゲルタは思い込んだら止まらないタイプだ。そして思い込んだら即実行のタイプでもある。
 さっそくホープに向かう仕度をはじめた。
 このまま要塞都市にいても腐ってしまうだけだ。
 それなら、ハンターや辺境の民と協力して、希望をもっと強く生みだしていきたい――そう思ったのだ。
 彼女はさっそくハンターオフィスに連絡を入れた。
 開拓地ホープを、更に発展させる為の人員を募集する為に。

リプレイ本文


 開拓地『ホープ』――
 ハンターオフィスの依頼に並んだその名を見て、懐かしく思う者もいた。レイス(ka1541)とエイル・メヌエット(ka2807)などは何度もその地に訪れているし、ノーマン・コモンズ(ka0251)もホープ再興などの時に手伝いとして訪れている。
 また、依頼人がノアーラ・クンタウの軍属医であるゲルタ・シュヴァイツァーだと言うことに反応した者もいた。以前彼女の見合い騒動で一席ぶって見せたミノル・ユスティース(ka5633)等はそれにあたるだろう。
(こういう依頼ならば領主の嗜みとして学んだことも役に立てそうですし、軍属という立場ゆえに大胆に動くのが難しいであろうゲルタさんのお力にもなってあげたいですしね)
 今回の依頼は、そう言う意味では見知った顔もそれなりにいる依頼と相成った。全くの初対面同士での依頼よりも多少は気心の知れた相手のいる方が色々とありがたいのは事実であるし、それはホープで待ち構えているであろうゲルタや、辺境の住人たちにも言えることであった。
「今回はよろしく頼む。いや……今回も、か?」
 挨拶の折、ホープの順調な発展を感じ取ることの出来る依頼に純粋に嬉しさを覚えたレイスが、普段はポーカーフェイスなその表情を少しばかり和らげて見せた。
 むろん、初めての人もいる。
 ハンターになってそう経験を積んでいない月影 葵(ka6275)は、妹分でもあるHonor=Unschuld(ka6274)とともに、胸を高鳴らせていた。
(ホープ……希望ですか。その名の通り、良き場所になるといいですね)


 春――いや、初夏にさしかかるホープは、なかなかに気温が上がる。乾燥した風はやや熱っぽいが、しかしよく晴れた日が続くのは今回の仕事には適していると言えた。
 何しろ今回は農業改革とも言える開墾作業に着手するのだ。
 万が一雨が降ってきたりなどしたら、それだけで作業は滞ってしまう。そう言う意味でも晴れが続くのはありがたい話だった。
 一方、先にホープで待ち構えていたのはゲルタである。もともと帝国軍属の医者として派遣されてはいるが、辺境地域への関心やこれまでの【不動】作戦での救助活動などといった経験などから、ホープに集まる周辺部族の民からもその気さくな人柄もあって受け入れられている。
 加えて、最近は王国や帝国といった垣根を越えた人々、すなわちハンターたちの活動も活発であり、出身地を根拠にした偏見なども減りつつある。
 ホープの存在そのものもいい例だった。もとはリアルブルーのCAM実験場であり、そこに帝国や王国、同盟などの手を借りつつの開拓活動が進められているのだから。
 そして、ハンターたちの到着に気づいたゲルタは手を振って歓迎した。
 八人のハンターたちも、そしてハンターが来ると聞かされていた周辺部族の民達も、笑顔を浮かべる。
 特にエイルやカールは医療の心得もあることから、ゲルタと嬉しそうに挨拶を交わす。
「久しぶりね、ゲルタさん」
「エイルさんも、変わりないみたいね。……今回は、ハンターの皆さんには感謝の言葉しかないわ」
 もともと辺境の民にとって、開墾事業というのは嬉しい申し出だった。部族にもよるが、辺境には狩猟と採集で毎日の食をまかなうものもいまだに一定数存在する。ホープの開拓事業は、それまでの辺境の良さを活かしつつ西方諸国の『良いところ』を吸収して辺境の発展に繋げようという目的も確かにあり、そのための技術や知識を手に入れようとする若くて柔軟な考え方の出来る部族に受け入れられている。
 むろん、CAMの実験場としての機能も、いまだ続いている。
 しかし、それだけにとどまらぬ開拓地『ホープ』は、まさしく辺境に変化をもたらすだろう希望の地なのだ。
(この大事な時期に、大事な依頼……意味のあることになるようにしなくちゃ……)
 ホープの未来に直結するだろう今回の事業に参加できることに、アシェ-ル(ka2983)は胸をときめかせていた。横でそれを見ていたカール・フォルシアン(ka3702)は、そんなアシェールの表情を見て、自分も嬉しくなってくる。
 今回、開拓の為に用意されたのは、同盟で品種改良された『まめし』、通称おにぎり草である。しかし、それ以外にもさまざまな作物の育つ肥沃な土地になれば――と彼は考えていた。その方が物資の交流地点として発展する為の特産物に出来る可能性もある。
「楽しみですね」
 少年はそう言うと、顔をほころばせた。


 ――とはいえ、まずは辺境の民に今回の説明を改めてする必要があるだろう。
「だって、なんで今行なうのかと言うことを全員で確実に認識してもらったほうが、きっと意味があると思うのです」
 そのためにもプレゼンテーションをと、アシェールをはじめとするハンターたちは事前に要望していた。むろん、それに異議を唱えるものはいなかった。皆で頑張ったこともあって、事前の準備はばっちりだ。
「そういえば、この場所の代表っているのですか?」
 葵が尋ねると、ゲルタはわずかに唸った。
 現時点において、ホープに定住している人はまだ少なく、ホープで見かける人の多くは基本的に定期的に開催される市、あるいはこの場所を経由して更に別の地へ赴く人たちの中継所、そして西方諸国式の医療施設など――つまり住人よりも来訪者がの方が多いくらいの、人の出入りの激しい場所なのだという。祭りや市などの開催地ともあって辺境からの認知はされているが、定住なるとまだまだそこに至るまでの道は長いらしい。西方の商人達も出入りする場所であるし、結果として厳密な『ホープのリーダー』はまだはっきりと決まっていないと言うことだった。また、この地に長く住むのは行き場をなくした元部族の者や要塞都市から派遣された医療スタッフなどがほとんどだという。
「あえてリーダーというなら、ガーディナのリムネラさんや部族会議の幹部クラスになるかも知れないわね」
 ゲルタがそう言ってくすりと笑う。とはいえ彼女もこのホープではそれなり以上の発言力を持っているのであるが。
 しかし、開墾事業が本格化すれば定住する民も増えるだろう、と言うのがゲルタの意見でもあった。
「なるほど。じゃあまずは、宣伝したりするのが大事だね!」
 愛らしいペットたちを連れたボクっ娘・アナがそう言って愛嬌たっぷりに微笑むと、あらかじめ作っていたビラをもって宣伝へと駆けだしていく。いまはハンターたちとの開墾計画が事前に知らされていたこともあって興味を持った辺境の若い面々も集まっているから、彼らへのアピールだ。
「これから、ホープの農業のメインになるって言う、まめしって食べものの試食会があるよ~! まずは自分で確かめてみてね~!」
 そう言いながら、ペットたちと可愛らしくアピール。
 興味津々な辺境の若者達もその言葉に惹かれたのだろう、顔を一瞬見合わせつつも会場となっている集会所に少しずつ向かっている。
 『まめし』なる植物がいったいどんなものか、そんな興味もあるのだろう。原産は同盟の一地方なうえ、本格的な栽培が活発になったのもここ最近の話と言うことだから、辺境に暮らす者たちが知らないのも無理はない。
 そして、それをわかりやすく説明してくれるのは、料理人でもあるノーマンだ。これまた事前にまめしの特徴や代表的な調理法、更にホープ周辺の今後の開墾計画を想定した資料――編集はアシェールである――を配って渡し、どのように開拓事業を進めていく予定なのかをアピールする。
 と、ふわっと香るのは、丁寧に調理されたまめしの美味しそうな匂いだ。プレゼンテーション、つまり説明会での試食の為にと事前に用意したまめしの量はかなりのものだが、百聞は一見にしかずという言葉もあるとおり、どんなものかを知るにはやはり食べるのが一番の近道だろう。
「開墾をするにしても肝心の作物のことをしっかりと知ってもらうほうが皆さんの協力も得やすいと思いましてねー」
 ノーマンはにこにこと笑いながら、まめしを手持ちの食品や調味料で味付け、食べるようにすすめてみる。酒類との食べ合わせは以前に余りよくないと言うこともあったのでその点にも注意しながら、彼は説明しながらどんどん調理を進めていく。
 実際、まめしを口にした辺境の民達は目を丸くした。たしかに穀類に酷似した味わいで、しかもさまざまな調味料との相性もいい。これで栄養価も高いとなれば、採集主体の部族とても安全かつ確実に確保できるであろう主食となり得る植物なわけで、是非ともうちでも、と目を輝かせている。
 また、他にも持ち込んだ野菜や果物を使った簡単な料理もこしらえ、このなかで作りたい植物があるかどうかなども確認している。その一方で、葵もジャムやドライフルーツなどの保存の利く植物を紹介し、更に商いの心得がある若者たちを捕まえて、流通の可能性も説いていく。
 また、折角こういう機会に若い人手も集まっているのなら、試食だけでなく開墾作業のイロハも教えるべきだろう。
 結果、ハンターたちの事前準備と丁寧な説明は、辺境の民にとっての変革を招く一因としては十分すぎるくらいのものだった。


 翌朝。
 昨日のうちにホープ周辺での開墾に適した場所や、こういった事業に明るい人材捜しなどの作業ををざっくりとすすめていたらしいレイスは、連れてきていた馬の首元を軽く撫でて若者達に示した。
「農耕に限らず、作業に使えると思ってな。……それから、こっちの羊は俺たちからのちょっとした贈り物だ」
 見れば、馬のすぐ近くにつがいだろうか、二頭の羊がメエメエと鳴いている。
「農業が軌道に乗れば、畜産や更なる周辺の開拓も可能だろう。この羊たちはその足がかりとして使って貰えると嬉しい」
 畜産と一言に言っても、乳を使った乳製品や羊などの毛を使った織物産業、もちろん食用肉としての用途など多岐にわたる。
「そういえば、以前も薬草の手配で困ったりしたことがあったし、薬草園も作りたいわね」
 こちらはエイルとカール、そしてゲルタらで相談していたことだった。ホープの医療施設は辺境の民にとって随分ありがたいものなのは確実だった。過去にも負傷者をホープで救護することが何度となくあり、結果、ホープはしっかりとした医療設備が優先され、医療福祉に強い場所としての認識も強くなっているらしい。
「高さや距離を決めるには、固定された点がまず大事なんです」
 アシェールの説明に耳を傾ける辺境の若者達。
「だからその一点を決めるのも大事な作業だし、それにこれからもその場所を使うのであればいっそ開墾記念の像としちゃいましょう!」
 記念碑、記念像――開拓の一つの節目となるだろう開墾事業にはうってつけのモニュメントとなるに違いない。そして、ホープのランドマークにもなれば、それは随分と有難いことだ。ちなみにマテリアルの汚染の問題も、今のところはないらしい。これもホープにとっては重要な安堵材料となる。
「土地のほうは痩せすぎず、という感じみたいですけれど、農作業しやすい環境作りも大事です。例えば用水路や農道と言ったものですね。図面も作ろうと思うので、皆さんにも協力頂けると嬉しいです。むろんハンターとしての能力が必要な場所ではお手伝いしますよ」
 カールも、小さく笑って頷く。
 ハンターたちも今日は汚れても構わない作業着などに身を包み、準備は万全といった感じなのである。アナと葵のふたりも、邪魔にならないよう、そして少しでも役立てるよう、周囲を見渡して何から着手すればいいかを見当していく。
 例えばリラクゼーション効果や、慰霊碑に供える為の、花。
 あるいは畜産もはじまれば自然と発生する排泄物などを堆肥として扱う為の一括で管理・生産する為の施設。
 農業という産業は他にもさまざまな可能性を秘めていることを、彼女は歌うように説明した。実際そうだろう、と辺境の若者達も頷いてみせる。
 アナはそんな「お姉ちゃん」――もっとも血のつながりはないが――の話を楽しそうに聞いている。まだどこか幼さの垣間見える少女だが、
(ボクにはまだよくわかんないけど、みんなが笑顔になれるといいな!)
 気持ちは葵と同じ。このホープという希望を冠した土地が、もっと豊かで幸せな場所になりますように、と祈っている。
 ホープに逗留している子どもたちともなじんで、農業という新しい動きに彼らもついてこられるよう、わかりやすい説明をしてくれたりもしている。
「お野菜やまめしを作って育てて、それをとって食べれば、たべものがなくてひもじい思いをすることも減るんだよ!」
 食べ盛りの子どもたちにはその言葉が一番良く効く。アナの言葉で、彼らも『農業』に興味津々だ。


 ここに道を作って、ここは畑にして。
 辺境の若者達と計画を練っていくうちに、徐々に、だが確実に、青写真が現実味を帯びてくる。
 測量は主にミノルが担当していた。自分の持つ知識をフル稼動させて、事前にある程度用意できていた測量機器を使ってのものだ。
 また、彼は同時に養蜂も提案する。
「養蜂では蜜を吸える花が必要になりますが、慰霊碑への手向けにもなり得るのであれば、花を育てるのも悪くないでしょう? それに、ミツバチは作物の受粉の役にも立ちますし、蜂蜜を採取すれば蜂蜜漬けなどの保存食を作るときにも使えます。養蜂というのは、そう言う意味でも良いかも知れませんね」
 家は帝国の一地方で領主をしているというミノルである、こういう知識は幼い頃から教え込まれてもいたことだ。
 その『後継者』としてのプレッシャーが、逆に彼をハンターたらしめたのだから、何とも皮肉な話でもある。
 けれど、辺境の住民達はそんなことも気にせず、貪欲なまでに知識を吸収してくれる。それは誰にとってもありがたいことだった。


 やがて、依頼の日程も終わりを迎える。
 辺境の若者達は、『まずはこのホープを農業のモデルエリアにして、いずれは自分たちの部族でも開拓を進めていきたい』と誰もが息巻いている。
 彼らの手の中には、ハンターたちから託された何種類もの植物の種子や苗木。どの部族でも均等に植物の種を得る為には、一度ここで育て、収穫したものを各自持ち帰るのがいいだろうという結論にも達していた。
「みんなのおかげで助かったわ。今回は本当にありがとう」
 ゲルタも嬉しそうに礼を言う。この地をもっと発展させるには、むろんもっと長い時間が必要だろう。だがその足がかりは少しずつ完成しつつある。
 ハンターたちもその実感を噛みしめつつ、ホープの地を後にする。最後に慰霊碑に手を合わせ、馬や羊と言った、みごとな置き土産をして。
 そして、次に来るときはどれくらい発展しているだろうかと、胸を高鳴らせながら。

依頼結果

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    ノーマン・コモンズka0251
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    カール・フォルシアンka3702

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参加者一覧

  • まめしの伝道者
    ノーマン・コモンズ(ka0251
    人間(紅)|24才|男性|疾影士
  • いつか、本当の親子に。
    ライナス・ブラッドリー(ka0360
    人間(蒼)|37才|男性|猟撃士
  • 愛しい女性と共に
    レイス(ka1541
    人間(紅)|21才|男性|疾影士
  • 愛にすべてを
    エイル・メヌエット(ka2807
    人間(紅)|23才|女性|聖導士
  • 東方帝の正室
    アシェ-ル(ka2983
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • はじめての友達
    カール・フォルシアン(ka3702
    人間(蒼)|13才|男性|機導師
  • ゲルタの彼氏?
    ミノル・ユスティース(ka5633
    人間(紅)|25才|男性|闘狩人
  • 動物愛は止まらない
    Honor=Unschuld(ka6274
    人間(紅)|12才|女性|疾影士
  • 新米聖導士を諫めし者
    月影 葵(ka6275
    人間(蒼)|19才|女性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/05/06 05:58:57
アイコン ホープ開墾計画立案本部(暫定)
レイス(ka1541
人間(クリムゾンウェスト)|21才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2016/05/09 06:57:42