ヴォイドになった人魚像を破壊せよ!

マスター:星群彩佳

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
8日
締切
2016/06/07 12:00
完成日
2016/06/20 05:30

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 ウィクトーリア家の領地内には、かつて女性に人気の名所があった。
 森の中にある湧き水は美容に良く、飲んだり肌につけると良い効果が出たのだ。
 その事を知ったウィクトーリア家の数代前の当主が泉の守り神になるようにと、湧き水が出る場所に水瓶を肩に担いだ人魚像を設置する。
 人魚像の両目には、『美しい若さ』と言う石言葉があるアクアマリンが二つ埋め込まれた。
 そして湧き水が出る場所は『美容の泉』と呼ばれるようになり、多くの女性が水を求めてやって来たのだが……。


「湧き水は永遠に出続かないものよ。人間の美しさと若さも同様に、ね」 
 ルサリィ・ウィクトーリア(kz0133)は屋敷の仕事部屋の窓越しに、人魚像がある場所へ視線を向ける。
 しかし屋敷から人魚像までは遠く、思いを馳せることしかできない。
 しかも今日は昼間だというのに今にも雨が降り出しそうな曇天であり、森自体もぼんやりとしか見えなかった。
「確か湧き水はミナーヴァ奥様がウィクトーリア家に嫁いできた頃には既に、涸れていたと聞きましたが……」
 温かいローズヒップティーを淹れながら、フェイト・アルテミス(kz0134)は思い出す。
「ええ。わたしのひいお祖母様が生きている頃から既に水の量は減っていて、お祖母様が産まれる頃にはもう涸れていたらしいわ。それと同時に泉に来る人もいなくなり、人魚像もほったらかしにされていたみたいね」
 ルサリィは重いため息を吐いた後、椅子に座ってローズヒップティーを飲んだ。
「人魚像の両目には高価な宝石が使われていたにも関わらず、その後、手入れもされていなければ、盗まれることもなかったようね。……中途半端な扱いをされていては、ヴォイドになるわよね」
 とルサリィは言うものの、実はつい最近まで人魚像が泉にあることを知らずにいた。


 一時間ほど前に、領地内で起きている異変について、住人達と話し合いをしていたのだ。
 実はここ数日の間で、泉に近付いた人々の年齢が変わってしまうという事件が続いていた。
 泉は涸れてしまったものの、森には数多くの薬草や果物があり、住人達はよく足を運んでいた。
 ――ところが、だ。
 涸れたはずの泉があった場所から水音がした為に、不思議に思った人々が見に行ったところ、水が湧いていたのを発見する。
 驚いた人々が泉に近付くと、突然人魚が持つ水瓶から水が噴出してきて、浴びてしまった。
 すると十七歳の少女は十二歳ぐらいになり、十歳だった少年は二十歳ぐらいに成長した。他にも五十代の女性が三歳ぐらいになったり、三十代の男性が六十歳ぐらいになったりと、人によっては異なるものの、若返ったり老けたりする人が続出したのだ。


「水を浴びた人達の話では、人魚像の両目はアクアマリンを使われているから本来は水色なのに、何故か血のように真っ赤に染まっていたそうね」
「……恐らくですが、長年負のマテリアルを溜めてしまったのでしょう。アクアマリンはパワーストーンの一つですし、美容に効果があった水が出たのも、ある程度はマテリアルが関係していたのではないかと」
 フェイトの言う通り、あの泉はマテリアルが濃く溜まる土地だったのだろう。
 それゆえに人を美しくさせる水を出すことができたのだろうが、そこへパワーストーンを両目に持つ人魚像が泉の効果を象徴する物として設置された。
 更に効果は上がり、水が出ている間は平和な場所になっていたものの、それでも時が経つにつれて事情が変わってきた。 
 水が出なくなったことにより、人々は泉に来なくなったのだ。
 人々が絶望して放置されたことで、負のマテリアルは徐々に溜まっていったのだろう。
「ウィクトーリア家の歴史書には、泉と人魚像のことは書かれていたけれど……。てっきり水が涸れた時点で、人魚像は撤去されたのだと思い込んでいたわ」
 住人達から話を聞いた後、ルサリィは小さい頃に読んだウィクトーリア家の歴史書を書斎から持ち出した。
 だが歴史書には水が涸れた後の人魚像のことは書かれておらず、ルサリィは両目に宝石が使われていると書かれていたことから、ウィクトーリア家が撤去したのだろうと今日まで思っていたのだ。
「人魚像は大きさと重さが人間の女性以上ありますから、移動させることが大変だったのでしょう」
「まさか水が涸れて五十年以上経ってから人魚像がヴォイド化するなんて、当時は誰も思わなかったでしょうしね」
 しかし今現在、人魚像はヴォイドになってしまった。
 しかも以前出ていた湧き水とは、効果が全く違った水を出すようになってしまったのだ。
「とりあえず、人魚像をこのままにはしておけないわね」
「ええ。早速ハンターの方達に、依頼をしに行きましょう」

リプレイ本文

●哀しき人魚像の破壊

 ヴォイドになった人魚姫の石像は体の至る所に苔があり、長い年月が経過していることが窺えた。
 泉には溢れんばかりの水が溜まっており、遠くから見れば安全・平和な場所だ。
 しかし人魚像からは負のマテリアルが強く感じ取れる為に、ハンター達の表情には緊張が浮かんでいる。
 真剣になる仲間達をよそに、何故かロス・バーミリオン(ka4718)は張り切りながら人魚像へ向かっていた。
「ウフフ♪ 今日の為に、水に濡れても落ちない化粧をしてきたのよ! 私が囮役になってあげるんだから、あなた達、ありがたく思いなさいよ! ちゃんと後ろから護ってね!」
 そんなロスの後ろから、ブツブツと文句を言いながらも鵤(ka3319)はゆっくりと人魚像へ近付いて行く。
「アクティブスキルの射程内まで、歩いて近付こうかねぇ。しかし若返るだの老けるだの、せわしねぇ水だな。女の欲望の醜さが、そのまんま現れ出ているようじゃねぇか。あー、ヤダヤダ。……でもまあロス君が老けたら面白そうだねぇ」
 ロスが人魚像の水瓶から放出される水の射程距離内に入った時、異変は起きる。
 人魚像の両目が怪しく光輝き、空だった水瓶に水が溜まっていく。
 配置についたロニ・カルディス(ka0551)は、攻撃態勢になった人魚像を見て重いため息を吐く。
「古い物には魂が宿ると言うが、女性の夢と希望の残骸として今回の場合はヴォイドになってしまったか……。人々に害を及ぼすのならば、きちんと破壊して終わらせてやらねばな」
 クロノスサイズを握り締めて、ロニは精神統一する為に眼を閉じる。アクティブスキルのレジストで抵抗力を上げて、水瓶の攻撃に備えた。
 遠距離攻撃を担当するミグ・ロマイヤー(ka0665)は魔導ガントレット・シザーハンズを調整しながら、遠くにある人魚像を見て複雑な表情を浮かべる。
「……『美容の泉』の噂は聞いておったが、まさかこんな形でミグと関わろうとはな。ミグのようなドワーフやエルフは長命ゆえに、老いることはかなり遅いのである。他の者達同様に歳を重ねた分だけ外見も変わりたかったと思っていた時があったものだが……、流石にヴォイドの力を借りるわけにはいかぬ。何より人々に絶望を与えるモノと化してしまった人魚像は、哀れで見ていられぬからの。早々に、あの両目を破壊しなければである」
 決意を固めると、ミグはアクティブスキルの防性強化で防御力を上げた。
 ルーン・ルン(ka6243)と交友関係があるマーオ・ラルカイム(ka5475)は、泉から離れた場所から人魚像を痛々しく見つめている。
「本音を言うと、麗しい人魚像を破壊するのは忍びないことなんだけどね。どうせなら両目のアクアマリンのみを破壊して、何とか石像だけでも助けてあげられないもんかね?」
「ルーンさんの気持ちも分からないことはないですけど、あの人魚像は最早、負のマテリアルで形を保っているようなものでしょう。恐らく両目を破壊した時点で、石像は壊れる可能性があります。ヴォイドになってしまった以上、破壊することが救いになると思いますよ」
「……やっぱりマーオちゃんもそう思うんだね。まあオレもその可能性は考えているし、とりあえず全力で戦うことにするよ」
 様々な思惑がある中、戦いははじまった――。


 水瓶に溜まった水は、水鉄砲のようにロス目がけて噴出される。
「ロスさん、動かないでください!」
 声を上げたマーオは聖槍・ロンゴミニアドを握り締めて、防御力を強化するアクティブスキルのプロテクションをロスにかけた。
 水はロスにかかったものの、どこも濡れずに外見年齢も変わっていない。
「ありがと♪ ……でも水を浴びて若返りたいとは思うんだけど、老けるのはイヤなのよねぇ。乙女心は複雑だわ」
「でも水龍の攻撃は受けねぇ方が良いんじゃねぇの?」
 ロスの後ろを歩いていた鵤は、泉の異変に気付いた。
 水が盛り上がり、九匹の水龍が形作っていくのだ。
 鵤はディファレンスエンジン・アンティキティラを用いて、アクティブスキルの防性強化を発動する。
「あの水龍自体にも、睡眠効果はあると思っていいだろうな。多分、近付くと眠くなるんじゃねぇか?」
「水龍の攻撃プラス、水瓶の水攻撃にも注意ってことね。ルカちゃんが寝ちゃったら、このウィップ・ブルーローズで叩き起こしてあげるから安心して良いわよ♪」
「眠りの世界からどこの世界へ誘おとしているんだよ? ちなみに俺はロス君が寝ちまったら、その横っ面を蹴っ飛ばして起こしてやる」
 作り笑みを浮かべるロスと鵤の間で青白い火花が飛び散っている間に、九匹の水龍が完全に形を成した。
 そのうちの一匹が二人目がけて向かって行くと、ロニがアクティブスキルのレクイエムを発動して、水龍の攻撃を阻止する。
「二人とも水龍の攻撃に注意しろっ! かなりのスピードがあるぞ!」
 その間にロニによって体勢を崩した水龍へ向けて、ミグがアクティブスキルの機導砲を放った。
 攻撃を受けた水龍は弾けて形を崩していくものの、同時に睡眠効果がある水をまき散らす。
「流石は睡眠効果がある泉の水を凝縮して作られた水龍だけはあるのぅ。一匹だけを倒しても水はまき散らされるようであるし、元凶を絶たなければならないようである」
 ミグは次にアクティブスキルのデルタレイで、人魚像の両目と水瓶を狙って攻撃してみる。
 しかし一匹の水龍が間に割り込み、身をもって人魚像を護った。
 その光景を見たミグは、顔をしかめながら肩を竦める。
「……ヤレヤレ。本当は両目と水瓶をすぐに破壊できれば良いのじゃがな。その前に護衛役である水龍を全滅させなければ、話にならぬようだ」
 一方でロスは太刀・鬼斬丸に持ち直して、襲ってきた水龍をアクティブスキルの受け流しにて回避した。
「鋭い牙ねぇ。かすりでもしたら、お肌もお洋服もボロボロになりそうだわ」
 そう言いながらもロスはウィップに持ち替えようとしたが、一瞬眩暈を感じてふらつく。
 その隙に水龍が改めてロスに噛み付こうとしたものの、鵤が発動したアクティブスキルの防御障壁が邪魔をする。
 ロスは太刀を握り直すと、アクティブスキルの疾風剣にて水龍を斬った。
「危なかったなぁ、ロス君。感謝しなさいよ」
「……ムカつくけど、助かったわ。水龍の睡眠効果は、近付くほど効くみたいよ」
「みたいだな。ならまとめて攻撃してみるか」
 鵤は三匹の水龍に狙いを定めて、デルタレイで攻撃してみる。
 しかし水龍達はヒョイッ・ヒラリ・サッと避けてしまう。
「……なかなか身軽な水龍だねぇ」
 鵤が水龍達の回避能力に呆れながらも感心している中、ロニは素早く三匹の水龍の後ろに回り、アクティブスキルのセイクリッドフラッシュを発動させた。
 鵤の攻撃に気を取られていた三匹の水龍は、ロニの奇襲で敗れる。
「鵤さん、ナイスだ! 水龍達の気をそらしてくれたおかげで、一気に三匹も倒せた!」
「うわぁ、爽やかイケメンの笑顔が眩しっ……! まあロニ君が喜んでくれたのなら、おっさんは嬉しいよ。うん」
 しかし鵤は自身もまた、睡眠効果が徐々に効き始めていることに気付いていた。先程の攻撃を避けられたのも、意識が集中できていなかったからだ。
 ロスと鵤の変化に、マーオが気付いた。
「ロスさんと鵤さん、睡眠効果が出ているようですね。このままでは眠ってしまいそうですし、私のアクティブスキルのキュアで不調を癒してきます」
「それじゃあオレも一緒に行くよ。オレのアクティブスキルの結界術の中にいれば、抵抗力が上がるからね」
 マーオとルーンは一斉に走り出すと、二人の所へ向かおうとする。
 ――ところが今までの戦いの間にも、水瓶の中の水は溜まっていた。
 四人が合流する寸前で突如、水瓶から三十センチほどの水の球が連射される。
「イヤぁん!」
「ゲッ!」
「うわわ!」
「あっはん!」
 コレには流石に避け切れず、ロス・鵤・マーオ・ルーンは水を浴びてしまった。
「四人とも、大丈夫か?」
「水球を連射となると、かなりの数が出てきたのう。水が溜まるまで時間がかかるようじゃが、厄介であるな」
 水を浴びなかったロニとミグは人魚像から距離を取りながらも、四人に視線を向ける。
 そして変わり果てた仲間達の姿を見て、二人は絶句してしまう。
「ったく……。外見が変わることには興味ねぇが、これじゃあ戦い辛いな」
 鵤は持ってきたシールドのセラフィム・メイムの表面を鏡代わりに、自分の今の姿を見てうんざりした。
「きゃはははっ☆ ルカちゃん、あなた三歳児になっているわよ! 小さい方が可愛げがあって良いんじゃないの?」
「……そう言うロス君は十七歳ぐらいか」
「うふふ♪ 普段の行いの差がでちゃったわねぇ。もうこの美少女時代で時が止まっちゃえば良いのに」
 三歳になった鵤と、十七歳になったロス、そしてマーオは六十代になり、ルーンは四十代ほどになった。
「私は六十代ほどになると、髭が生えるんですねぇ。この年齢でも紳士的でありたいものです」
「おやおや、オレの四十代はこんな感じなのかい? なかなかイケているんじゃないかな」
 三人は鵤のシールドを鏡代わりにして、各々自分の今の姿の感想を言っている。
 しかしその間に水瓶の水が溜まったのを見たロニとミグは、慌てて声を上げた。
「遊んでいる場合ではないぞっ!」
「再び水が放出されそうじゃから、避けるのだ!」
 四人はハッとして急いでその場から離れるも、水鉄砲のように出てきた水をロスのみ浴びてしまう。
「ヤダぁ、また水を浴びちゃった……って、アレ? 何だか声がかすれているような……」
「アハハッ! ざまぁねぇな!」
 鵤は涙目になるほど大笑いをしながら、シールドをロスに見えるように上げた。
 七十代ほどに成長してしまった自分の姿を見て、ロスは顔を引きつらせる。
「ふざけんなよっ、このぉっ……ゲホッゴホッグホッ!」
「ぶははははっ、むせてやんの! じーさん、興奮すると体に悪いぞ?」
 傍から見ればほのぼのする孫と祖父の言い合いだが、その間に水龍の一匹が二人へ向かっていた。
「おっと、危ないわね」
 ルーンは呪符を一枚手に取ると、アクティブスキルの瑞鳥符を水龍へ向けて放つ。そして水龍が怯んだ隙に、アクティブスキルの胡蝶符を続けて放って倒す。
「とりあえず、今の状況を何とかしなきゃいけないね。マーオちゃんっ!」
「はいっ! ロニさん、ミグさん、援護をお願いします!」
「分かった!」
「急ぐのじゃよ!」
 ルーンは鵤を脇に抱えて、マーオはロスの肩に手を回す。この場から移動して、人魚像の攻撃範囲から出ようと考えたのだ。
 敵の気をそらす為にロニはレクイエムを、ミグは機導砲を再び発動させる。
 そして人魚像から充分な距離を取ったルーンは呪符を用いて、結界術を発動させた。
 鵤とロスは睡眠効果のせいか、あるいは騒ぎ疲れたのか、既にウトウトしている。
「お二人とも、すぐに治しますからね」
 マーオはまずロスにキュアをかけて、元の姿に戻す。
「ありがとう、マーオちゃん。……しかしこの私を老人にするなんて許せない! 覚悟おし!」
 怒り心頭のロスは睡眠効果を自ら破ると太刀を握り直して、水龍へ向かって走り出した。
 殺気に気付いた一匹の水龍がロスへ襲いかかっていくも、アクティブスキルの電光石火にて斬られる。
 だがすぐに残りの一匹が向かってきたが、ロスは受け流しで避けた。
「ルカちゃん、最後の一匹は譲ってあげるわ!」
「そりゃどーも」
 元の年齢と通常状態に戻った鵤は、絶対に逃さないようにデルタレイにて水龍を攻撃する。
「コレでようやく、水瓶が破壊できるのである」
 すかさずミグは水が溜まりつつあった水瓶を、デルタレイで破壊した。
「――最期は美しい蝶を、その眼に映すと良いよ」
 そしてルーンは人魚像の両目へ向けて、胡蝶符を放つ。
 
 バリンッ……!

 悲しげな破壊音が、ハンター達の耳に届く。
 すると徐々に人魚像にヒビが入り、全身が砕けて散った――。


○夢が終わった跡

 泉の水は全て無くなり、まるで大きな穴が空いたように見える。
 その中心には砕け散った人魚像の破片が残っているが、顔の半分が空を見上げていた。
 すると突然、小雨が降り出す。
 ロニは泉の縁まで来ると、人魚像の残骸を見て辛そうに眼を細める。
「……あの人魚像は寂しかったのかもしれない。だからこそこんな騒ぎを起こした……と言うのは、流石に感傷的過ぎるか」
「『外見年齢を変えたい』と願う欲深き生きモノに比べれば、純粋と言える存在だったのである。分かりやすくて、ミグとしては悪くはない存在であったのだ」
 ミグはわざと明るく言うものの、どこか物悲しさが表情に浮かんでいた。
 戦闘後、森に生えている花を摘んできたマーオとルーンは、人魚像へ向けて花を手向ける。
「五十年以上も放っとかれて、悲しかったでしょうね……」
「今までお疲れさま。あとはゆっくり休むと良いよ」
 四人が人魚像を想ってしんみりしていると、ロスと鵤は別の意味で気落ちしていた。
「はあ……。せっかくルカちゃんが無防備に眠っていたというのに、私まで眠っちゃうなんて不覚だったわぁ。せっかくウィップでビシバシやれる、絶好のチャンスだったのに……」
「俺も七十代のジジイになって眠ったロス君を、蹴られなかったのは悔やむところだ。こんな機会、滅多になかっただろうに……」
 再び二人の間で火花が飛び散る中、マーオはオロオロしながら声をかける。
「あの、そろそろ私のアクティブスキルのヒールで、皆さんの治療を行いたいと思うんですけど……」
 二人は「フンッ!」と鼻を鳴らすとお互い顔を見ないように視線をそらしながらも、一緒にマーオのもとへ行った。


 ――後日。
 負のマテリアルが完全に消え去った後、ルサリィは使用人達に命じて、涸れた泉を人魚像と共に埋めさせた。
 そして新たに森の妖精を模した複数の石像がその場に置かれて、木のテーブルやイスも設置された。
 『美容の泉』の跡には『森の休憩所』ができて、訪れる人々の癒しの場となった。


<終わり>

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MVP一覧

  • 支援巧者
    ロニ・カルディスka0551

重体一覧

参加者一覧

  • 支援巧者
    ロニ・カルディス(ka0551
    ドワーフ|20才|男性|聖導士
  • 伝説の砲撃機乗り
    ミグ・ロマイヤー(ka0665
    ドワーフ|13才|女性|機導師
  • は た ら け
    鵤(ka3319
    人間(蒼)|44才|男性|機導師
  • Lady Rose
    ロス・バーミリオン(ka4718
    人間(蒼)|32才|男性|舞刀士
  • 慈愛の聖導士
    マーオ・ラルカイム(ka5475
    人間(紅)|18才|男性|聖導士

  • ルーン・ルン(ka6243
    エルフ|26才|女性|符術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/06/04 09:53:46
アイコン 人魚像ぶっ壊しましょ☆
ロス・バーミリオン(ka4718
人間(リアルブルー)|32才|男性|舞刀士(ソードダンサー)
最終発言
2016/06/06 23:03:59