• 龍奏

【龍奏】狂える歪虚CAM

マスター:馬車猪

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/06/23 22:00
完成日
2016/06/29 19:16

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 肉色の虫が密集している様を想像して欲しい。
 それに眼球を混ぜて5割増しで気味悪くして壊れたCAMの隙間に詰め込むと、狂気の歪虚CAMになる。


「撃て!」
 魔導トラックの車載兵器が一斉に射撃を開始した。
 型は少し異なっても中身はCAM用30ミリアサルトライフルと同等だ。
 射程と威力のバランスのとれた銃弾が弾幕を形成し、狂気のCAMをただの残骸に変えるはずだった。
「目標がスラスターを使用」
 歪虚CAMの噴射口から長い火が伸びる。
 全高8メートルの大重量が真横へ跳ぶ。
 弾幕は踏み固められた雪を砕いて煙を発生させただけで、CAMに掠りもしなかった。
「あのパーツにあんな推力あったか?」
「VOIDに強化されたんだろ」
 指揮車両の中、畜生を意味する複数の言語の罵声が飛んだ。
「目標がライフルをこちらに向けています」
「魔導トラックは射撃を継続しろ。指揮車両は後退を」
 肉塊にも見える大型弾丸が指揮車両の端に当たる。
 車輪1つが吹き飛び装甲がひび割れる。
 中も激しく揺さ振られ、シートベルトがちぎれそうなほどきしんだ。
「被害は」
「走行可能」
「通信機の調子が、って拙い止まった」
「魔導短電話に切り替えます」
 指揮車両という名の重装甲魔導トラックと、予備弾薬を山ほど積んだ魔導トラックが移動と攻撃を繰り返す。
 半分以上撃ち尽くしてようやく、歪虚CAMに数発が着弾した。
 地球で見慣れたアサルトライフルが歪虚CAMの腕ごと脱落しかけ、しかしパーツの隙間から肉の触手が伸びて絡まり合い引っ張り合い元の位置に戻る。
「畜生が」
 絶妙な運転で180度ターン。
 アクセルを床まで踏み込み全速で後退。
 天井に設置されたライフルが真後ろを向き歪虚CAMを捉えた丁度そのとき、社内のディスプレイに射程外の警告が浮かんだ。
「よし、これで安全」
 歪虚CAMの銃が火を噴いた。
 浸食されて強化されたのか元から高性能の品だったかは分からない。
 どちらにせよ、射程外から指揮車両に当たったのは変えようのない事実だった。


『私が出よう』
『いや我が』
『拙者が』
 守護龍3体が一斉に立ち上がってうっかり天幕を突き破りそうになった。
 ここは大聖堂の近くに立てられた医療用テント。
 より正確に表現すると重傷者専用天幕である。
「いいから座ってろ馬鹿共」
「先生、傷口が開きました!」
「クルセイダー何人か呼んでこいっ」
 鱗の3割を失った龍に全身こんがり焦げた龍に狂気の悪影響が残った龍までいる。
『だが』
『狂気の鉄人形の排除に失敗したのだろう?』
『鉄人形を生む巨大狂気が戻ってくるかもしれぬ。ここは拙者が』
 私が、我が、拙者がと押し問答が延延繰り返されていた。


 歪虚CAM排除失敗の報告は1時間も経たずにハンターズソサエティー本部に届けられた。
 職員がオフィスに駆け込み依頼票が張り出される。
 よほど急いでいたらしく字は乱れて情報も極端に少ない。
「ユニットの経費と補修費用はオフィス持ち……ユニット依頼!?」
 1人が気付くとオフィスにいた全員の視線が依頼票へ向いた。
 敵は龍園防衛戦でハンターの前に立ちふさがった歪虚CAMだ。
 下手くそな遠隔操作を受けているかのような動きでも個々の武装は良好。
 プログラムも残っているのか命中も回避も悪くない。
 足を止めての接近戦ならともかくハンターが生身で戦うには厳しい相手だ。
「俺CAM持ってないんだよ」
「私は魔導アーマー持ってるけど白兵専用だし」
「儂と相棒なら生身でも……狂気に近づくと狙いと回避が甘くなるからなぁ。銃も弓も苦手な儂では……」
 悔しげに去って行くハンターもいれば闘志を燃やすハンターもいる。
 出発は2時間後だ。
 転移門を使ってヴリトラルカに向かい、生身であるいはユニットと共に歪虚CAM排除を目指すことになる。

リプレイ本文


「ここっ!」
 エリス・ブーリャ(ka3419)が元気よく足を踏み込む。
 尾部スタビライザーが大きく振られて勢いがつき、CAMに比べると数割増しで太く見える機体が軽々と跳んだ。
 30ミリ弾が飛来する。
 雪原が弾けて赤の機体を白く汚した。
「ここが頑張り時だよザウルス君、頑張って友達増やそうね」
 活躍すればするほど同型愛好者が増える確信。エリスは不敵な笑みを浮かべ逆側に向け踏み込んだ。
 CAM用アサルトライフルの銃声が届く。
 ほぼ同時にヘイムダル左腕部から衝撃が伝わった。
 エリスは視界を広く持ったまま機体状態を確かめる。関節部と速度に異常なし。つまり問題なしと魔導短伝へ現状を告げた。
『歪虚1が射程に入ったわ。火力支援は必要?』
 フィルメリア・クリスティア(ka3380)の声だ。
 彼女達が伏せている場所からの距離は約150メートル。
 かなりの距離だが彼女の機体にとっては有効射程らしい。
「予定位置まで引きつけ」
 エリスのエルフ耳がぴくりと動いた。
 全身が無意識に動く。
 ザウルスくんが尻尾を振って転がるように左へ移動。
 しかし2体目の歪虚CAMが着地し銃口を向けてくる。
「大丈夫、引きつけて退避するまで保つよ」
 左への移動は回避目的ではない。
 機体前部に装着したバンパーに当たったのを揺れで感じ取り、エリスは丘に向かって真っ直ぐ魔導アーマーを走らせた。
『歪虚2の噴射口に変化有り』
『了解』
「了解」
 マリィア・バルデス(ka5848)はそうエリスに応えると、魔導型デュミナスの走りを止めて60度向きを変える。
 エリス機から数十メートルの距離までCAM型歪虚が迫っている。
「回避プログラムは生きているか」
 マリィアは精密な狙いは諦め、腕部と腰部への命中確率が9割を越えた瞬間トリガーを引いた。
 手前のCAM型歪虚がよろめいた。
 二の腕が砕けて30ミリアサルトライフルごと中に舞い、しかし傷口から伸ばされた触手が結合し引きつけられ歪んだ形で元に戻る。
「囮頑張れってヤツよね……いいんじゃないかしら。狂気とやりあうのは大歓迎よ」
 LH044で戦った一人として胸を焦がす憎悪はある。
 もっとも五感と判断を鈍らせるほど甘くもないし未熟でもない。
「こちらマリィア。歪虚2のスラスター発光の消失を確認」
 雪の丘へ向き直りながらシールドとライフルを持ち替える。
 異形のCAM2体が発砲する。
 エリス機がアクティブスラスター抜きのCAMと同速度で移動を継続。
 30ミリ弾が斜め後ろからマリィア機へ迫り、1発は最初から外れ、もう1発は盾の端に当たって跳んで雪の中へ飛び込んだ。
『射程内だ。撃っていいかい』
 レオーネ・インヴェトーレ(ka1441)の声は戦意に溢れて存在感がある。
「ええ。お願いするわ」
 マリィア機が進路を30度変える。
 エリスのヘイムダルを追うかマリィアのデュミナスを追うか2体の歪虚CAMが迷い、その迷った時間が蜘蛛の糸1本分残っていた歪虚の勝ち目を消した。
「『反動制御用補助脚』展開、『テールスタビライザーB』モード!」
 プラヴァー重装改が優雅に腰を屈めた。
 原型の魔導アーマー「ヘイムダル」より細身でも機能に劣化はなく、完璧なタイミングで伸ばされた第3の足によりCAM以上の安定を得る。
「魔導アーマー開発チームの名にかけて!」
 長砲身対空砲の狙いを最後の微調整。
 今このときに限り、ヘイムダル型が動けぬかわりに高精度な砲と化す。
「勝負だ、歪虚CAM!」
 引き金を引く。
 砲口から炎が伸び、丘の上から音を置き去りにして砲弾が飛び出した。
 肉に覆われたシールドも変形したカタナも間に合わない。
 コクピットがあるはずの腹に命中し、装甲と装甲の間からみちゅりと触手が飛び出し戻らなくなった。
「残り7割!」
 直感だ。そして実際敵の残り生命力は7割を切っている。
 フィルメリア機が稜線越しに発砲。
 距離をものともせずに歪虚CAMの腕部に当たり、ライフルからは外れたが腕部に深刻な打撃を与える。
「これは……」
 フィルメリアの眉が無意識に動く。
『ちぃっ、砲でも負けたか』
 時間があればレオーネに反論するのもいいかもしれない。
 フィルメリアはCAM用の高性能アサルトライフルを使い、レオーネは帝国製の機体と砲を使ってほぼ同威力同精度同射程。
 クリムゾンウェストの兵器技術発展の速さがはっきりと現れていた。
「ザウルスくんから逃げられると思って」
 赤いヘイムダルが錨を投擲する。
 弾痕まみれの歪虚CAMにめり込み、錨にくくりつけられた紐がぴんと伸びる。
 錨が脇から太股までの装甲を裂き地面に落ち、歪虚からこぼれる体液が白い雪を汚す。
 その惨状のまま斜め上に向かい歪虚CAMが飛んだ。
『くそー、プラヴァーもあんな飛べたらなぁ!』
 レオーネ機の砲口が数ミリ上がる。
『だが落ちろ』
 対空砲が咆哮する。
 スナイパーライフルとは違いたった2発で弾切れ。
 しかしその威力は逃げる歪虚CAMを打ち抜くには十分だ。
 スラスターの向きが上に向き、真下に向かって落ちて砕けて散った。
「こちらハンター。聞こえる?」
 マリィアが30ミリ弾をばらまきながら呼びかける。
「付近の狂気の誘導を要請します」
 逃走に移った歪虚CAMの片足へ30ミリ弾が連続して着弾。見た目以上の頑丈さで耐えはしたが触手に余裕が完全に無くなる。
 遠くで魔導トラックのエンジン音が聞こえた。
 止めを刺そうと再装填して銃を向けると、ナッビ(ka6020)と前進したフォークス(ka0570)による銃撃で、2体目の歪虚CAMが完全に破壊されていた。


「目標が必中距離に入りました。攻撃を開始します」
 可愛らしい声が操縦席で機械的に響いた。
 操作スティック越しに発砲の衝撃が伝わる。
 HMDを介し、シールドを両手で構えることでなんとか105ミリ弾を防いだ歪虚CAMの姿が伝わってきた。
『ルーファス君』
 よく知っている声がルーファス(ka5250)の耳をくすぐった。
「はい」
 声に人間らしさが戻る。
『狂気が怯えているわ。おびき寄せるため弱いふりをお願い』
 ルーファスは無言で瞬いた。
 目の前の光景とセンサが集めた情報から創られた鳥瞰図を見比べて、いつの間にか歪虚CAMの速度が落ちていることに気付く。
「ありがとうございます」
 敵は残り4体。
 手前の2体は既に逃げ腰で、奥の2体は彼我の戦力差に気付かず全力で接近中だ。
 このまま漫然と戦っても勝てる確信はある。だが1体も逃さず勝つには一工夫が必要だ。
『る、ルー君! スタビライザー使う、から』
 急速に勢いが衰える声はナッビのもの。
 声だけなら戦場に向いていない小動物だけれども、3人で強欲王に挑んだ仲なので不安は無い。
「ナッビ君、後ろの敵を狙えるかな?」
『え、あのその、ふぇ?』
 予想外の提案に驚き慌てている。
 しかしナッビ機の動きに乱れは全くない。
 2本の足と1本のスタビライザーで機体を安定させて、高性能のスナイパーライフルによる支援射撃を開始した。
『当たった!』
「よろしく」
 ルーファスは必要以上の弾倉交換を行い、自分に任されたことに気付いたナッビが緊張する。
『うぅ、怖いけど……怖いけど、強欲王と戦った時も皆と一緒に戦ったもん。龍さん達も頑張ってた! ボクも頑張る!!』
 第二射。
 腹に大穴が開いた最後尾の歪虚がシールドを掲げて防御しようとする。
 風が吹く。
 105ミリ弾が斜め下に逸れて、右の足首から膝まで砕かれ横に倒れかかった。
『あっ……大破、した?』
 続く第三射が歪虚CAMの頭部を潰してその機能を完全に停止させた。
 帝国製魔導アーマー「ヘイムダル」。
 尾部スタビライザーによる三本脚射撃は非常に有効であり、短時間の足を止めての射撃であればCAMを上回る可能性があった。
『ルーファス君』
「はい」
 フィルメリアのGLACIALISがライフルから魔導鈎へ、ルーファスのフロッティがスナイパーライフルからアサルトライフルに持ち替えた。
 残る3機の歪虚CAMが全力を振り絞る。
 30メートルほど攻撃を放棄して走り続け、最後の1メートルでアクティブスラスターを酷使し実に20メールの距離を飛ぶ。
「“狂気”が勝手に人様の機体に悪趣味な改造してくれてるんじゃないわよ」
 フィルメリア機が得物を繰り出す。
 敵武装を破壊あるいは捕獲したい気持ちを抑え、着地直後で回避も盾防御も難しい歪虚CAMに鋭い鈎を突き立てた。
 異様な手応え。傷口からは生物の体液ではあり得ないものが得物を伝って雪の丘に落ちる。
『私達の大切なCAMをそんな形にしてくれたんだから、絶対にタダじゃおかない。ツケはキッチリと払ってもらうわ。ルーファス君!』
「はい!」
 GLACIALISに気を取られた歪虚CAMの横から猛烈な勢いで弾をばらまく。
 CAMは躱すし頑丈な盾で防ぎもする、見た目よりずっと強靱な兵器だ。
 ただしそれは、判断力と反射神経に優れた乗り手がいるとき限定だ。不用意な短距離飛行と視野の狭さが重なれば鉄の棺桶以下の存在に成り下がる。
 腰部が粉砕され支えを失った各部が雪の上に転がり、マニピュレーターから外れた30ミリアサルトライフルが雪の丘の坂を転がっていった。
『2人とも、ひゃっ』
 残る2体の歪虚CAMが全て撃つ尽くす勢いで引き金を引く。
 2機の魔導型デュミナスとヘイムダル1機の通信が、着弾と同時に途絶えた。


「やりやがったな!」
 フォークス機が弾痕まみれのシールドを蹴倒し飛び出した。
 発射直後の歪虚へスラスターを吹かし直進。不用意に構えられたライフルを真上から両断する。
 小さな爆発が起き、触手で形成された手首が回転しながら空に舞った。
「連中の生死を確かめるのは後だ。お前は死ね」
 首元に巻かれたマント状帆布が揺れて、現時点の魔導型CAMとしては異様な精度と威力の斬撃が無傷の歪虚をボロ雑巾に変えていく。
『3人とも無事だよ。……通信機が転がっただけ』
 レオーネが魔伝と無線で連絡を入れていたが残念ながら全体に伝わった訳では無く、最終的には機体の身振り手振りで伝えるしかなくなった。
「その程度で」
 フォークス機がスラスターを吹かす。
 機体が傾いたまま横へ飛び、斜め後ろからの銃撃を回避する。
「当たるものかよ」
 銃器を失った歪虚CAMがカタナを手に突進してくる。
 刃に絡みつく腐肉がぬらりと光って酸を滲ませた。
「free riderめ、汚い肉で運賃でも清算する気になったのかい」
 鼻で笑って盾を構え、肉剣の刺突を軽々躱して合図を送る。
 魔導バイクが加速する。
 艶のある黒髪は真後ろに伸び、手の指先から足の指先まで重く感じた。
 不動シオン(ka5395)がアクセルを踏む。
 加速度が増す。自身の体も魔導バイクも制御が極めて困難になって、だがシオンは体とバイクの隅から隅まで完璧に制御してみせた。
 オートMURAMASAが振動を始める。
 その動きは血に飢えた魔剣のそれに酷似していた。
 シオンがシールドの影から飛び出しす。歪虚CAMが視線を下に向け慌てて刃の軌道を変える。
「面白い。一度は生身で貴様を狩ってみたかったんだ!」
 シオンは止まらない。
 当たればバイクもろとも吹き飛ばれる重量のカタナを数センチの距離で……シオンにとっては間合いを読み切った安全な距離でやり過ごし、速度をMURAMASAの切っ先に乗せ脚部装甲へ振り下ろす。
 比率的にはわずかに溢れてマテリアルが爆炎のように刃の周囲を覆う。
 健在な装甲に刃筋を立てた形で当たり、実にあっさり中身ごと装甲を切り裂いた。
「生身の人間舐めるなよ屑鉄ども」
 雪を蹴散らしながら急旋回。
 真横に振られたカタナを1メートルの余裕をもって回避。
「任せたよ」
 その巨体と動きで牽制していたフォークス機が最後の歪虚CAMへ向かった。
「任せろ」
 シオンが漆黒のオーラをまとって力強く笑う。
 歪虚がカタナを構え直す。
 敵は全長8メートル。重さも固さも人間とは比較にならない。
 カタナが弧を描く。
 地球における膨大な試行錯誤からうまれた実践的な一閃だ。
 速度も精度も油断はできないけれど、CAMとCAM乗りに触れたことのあるシオンにとっては既知の一撃でしかない。
「銃がなければただの的だ!」
 魔導バイク「アレイオーン」が鋭角を描いた。
 速度が倍違うのでカタナの届かぬ背後にまわる実に容易い。
「私の手で狩り切れぬのが残念だ。砲弾を味わって消え去るがいい」
 足首を切り飛ばし、仰向けるに倒れる歪虚CAMから悠悠と離れていった。
 30ミリ弾と対空砲弾が命中し、コクピットから爆発する形で歪虚が砕けた。
「途中退場は無しだ」
 フォークスのためのデュミナスがCAM用ロングソードで突く。
 発光中のスラスターを押し潰し、先端が装甲を貫いて蠢く触手を串刺しにする。
「面倒だね」
 剣技で圧倒していてもフォークスの顔色は冴えない。生身で使える技が使えない。
 視界の隅で赤いヘイムダルが発砲する。
 後ずさっていた歪虚の足下に命中し、速度が鈍ってフォークス機が完全に追いついた。
 歪虚CAMが形だけは見事にカタナを振った。
「タマなし野郎にあたいは殺せないよ」
 切っ先も衝突も恐れず最適の速度を保つ。
 カタナが帆布の端を切り飛ばし、ロングソードが頭部センサーと歪虚の核を潰して反対側から突き出した。
 歪虚が薄れて装甲が落ちていく。
 中破以上の打撃を受けたユニットは無し。敵残存戦力0。
 完全勝利であった。


『記録をお願いします』
 マリィア機が、雪の中から歪虚CAMの残骸を回収する。
 性質も判明していないものに触れるのは極めて危険な行為だ。
 彼女は承知の上で、狂気を滅ぼすため行動している。
「中身がないよ……」
 ナッビが肩を落とした。
 CAMの装甲や武器の一部くらいしか見当たらない。
 これでは知覚共有や大型からの指令受信用器官を探せない。
 もっとも、倒せば歪虚部分が消えるらしいことが分かっただけでも成果といえる。
『データを中継するぞー』
 友軍の車両を介して戦闘時の歪虚CAMのデータが送られてくる。
 フィルメリアが計測しまとめたものだ。
「分からないことが分かった、ですね」
 ルーファスは操縦席でつぶやき、微かな違和感に気づき目を細めた。
 今回の歪虚CAM、足止めだとしても攻撃だとして動きが中途半端な気がする。
『特殊な兵装や歪虚化してない記憶回路は……』
 ザウルスくんから降りようとしたエリスをマリィアが遮り、CAMの指を器用に使って雪から取り出した。
『壊れてる?』
 極めて頑丈なはずの記憶装置が半分未満に圧縮され、歪んだ球の形になっている。
 結局、記憶装置を含む少数の部品だけが後方に送られ残りは爆破処理されることになった。

依頼結果

依頼成功度大成功
面白かった! 9
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデスka5848

重体一覧

参加者一覧

  • SUPERBIA
    フォークス(ka0570
    人間(蒼)|25才|女性|猟撃士
  • 魔導アーマー共同開発者
    レオーネ・インヴェトーレ(ka1441
    人間(紅)|15才|男性|機導師
  • 世界より大事なモノ
    フィルメリア・クリスティア(ka3380
    人間(蒼)|25才|女性|機導師
  • 混沌系アイドル
    エリス・ブーリャ(ka3419
    エルフ|17才|女性|機導師
  • 竜鱗穿つ
    ルーファス(ka5250
    人間(蒼)|10才|男性|猟撃士
  • 飢力
    不動 シオン(ka5395
    人間(蒼)|27才|女性|闘狩人
  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデス(ka5848
    人間(蒼)|24才|女性|猟撃士
  • ☆イチゴの妖精さん☆
    ナッビ(ka6020
    エルフ|10才|男性|魔術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 対歪虚CAM作戦卓
フィルメリア・クリスティア(ka3380
人間(リアルブルー)|25才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2016/06/23 00:05:17
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/06/20 22:52:41