ブリの大いなる野望!

マスター:朝臣あむ

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/07/13 12:00
完成日
2016/07/21 23:42

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 ズダダダダダダダッ!
 勢い良く錬魔院の通路を駆け抜ける少女がいる。
「こ、こんどこそ逃がさないのよさ……っ、あんの、すっとこ海産ぶつーーッ!!!」
 息を切らせ、凄まじい剣幕で走る彼女を止める者はいない。
 彼女の名はブリジッタ・ビットマン(kz0119)。今をかろうじてときめく機動兵器開発室所属の魔導アーマー部門所属の少女だ。
 彼女は院長室と書かれた扉を見つけると、更に加速して突っ込んで行った。
「わぁかぁめぇえええええ!!!!」
 ドガーンッ。
 半ば壊れるんじゃないかと言う勢いで開かれた扉。その向こうには呑気にマーブルチョコを食べるナサニエル・カロッサ(kz0028)の姿が……。
「ここであったが百年目ェ! じんじょーにおなわにつくのよさっ!!!」
 そう叫んで飛び掛かったのはナサニエルの膝の上だ。
 ブリジッタは目を丸くするナサニエルを前に「ようやく捕まえたのよ」と息を切らせている。
 そんな彼女に無碍の一言が。
「重いんで~退いてくれませんかぁ~?」
「だまれげしゅにんっ!」
 ビシッと突き付けた指にナサニエルの眉が上がる。
 どうやらブリジッタのマイブームは時代劇のようだ。彼女は大きく息を吸い込むと、懐にしまっていた紙を突き付けた。
「ひとぉ~つ、あたしをロッソに乗せるのよさ! ふたぉ~つ、うちゅー用装備開発に参加させるのよさ! みぃ~っつ、予算をもう少し魔導アーマー開発に回して欲しいのよさ!」
 毛筆らしき筆跡は直談判書のつもりらしい。かなり汚い字だが、書いてある事は辛うじて読める。
 それらをブリジッタが落ちないように踵を上げて読みつつチョコを口に運ぶ。
 そうして僅かに思案すると、汚れた指を舐めて彼女の顔を見た。
「最後の1つは大丈夫ですよぉ~、貴女のお陰でヘイムダルも次の段階に進めそうですし~。それとロッソに乗せるのは追々ですねぇ~。貴女にはもう少しやってもらいたことがあるので~。で、宇宙開発の件ですけどぉ~こちらからもお願いしたいことがあるんですよぉ~」
「ほあ? お願いなのよ?」
「そうですよぉ~」
 ナサニエルはそう言うと何処か楽し気に話始めた。


「ブリジッタさん。ナサニエル院長から教えられた場所はこの辺りの筈ですよ」
「了解なのよ。イカリを下ろして例のモノを下す準備をするのよさ」
 そう指示を飛ばすブリジッタは海の上にいる。
 なぜ海の上なのか。それはナサニエルのお願い事が関係してくる。
「それにしても院長の考えることは凄いですね。万が一失敗したらヘイムダルだけじゃなくて搭乗者もただじゃすまないってのに」
「ワカメの言ってることは正しいのよさ。これはだいじな実験なのよ……」
 ブリジッタはそう言うと出発前に雇用したハンターとその傍にあるヘイムダルを見た。
 彼女が今いるのはゾンネンシュトラール帝国が所有する軍用船。その上には乗船しているハンターの数だけヘイムダルが用意されている。
 彼らの任務はこの海底にあるであろう歪虚の基地を探すこと。
 以前よりこの海域で歪虚の目撃情報があがっていおり、ナサニエルはこの海の底に歪虚の基地――もしくはそれに準ずるものがあると推測している。
「目的は基地の発見なのよ。でも錬魔院からすれば一番欲しいのは海底に降りたヘイムダルの性能なのよさ」
 ブリジッタはヘイムダルへ乗り込む前の最終確認を行いながらハンターに説明してゆく。
 その顔は強張ったような、寂しそうな、どこか複雑な表情をしている。
「宇宙空間でヘイムダルが無事動けるか……ワカメはもうそこまで行ってたのよ……あたしがプラヴァーを作っている間に……」
 宇宙開発に携わりたい。そう申し出たものの自分には足りない知識が多すぎる。
 それを補うための努力と柔軟性は持っているはずだ。それでもあの男には敵わない。
「……万能ワカメめッ」
 小さく零しヘイムダルを見上げた。
「気密性はワカメが密に練ってるからたぶん大丈夫なのよ。万が一の武器も用意してあるから大丈夫だとは思うよのさ……くれぐれも言うけども、無茶はしたらダメなのよ。海でも宇宙でも、どこかにキレツができたら命とりなのよ……ダメだと思ったら、帰ってくるのよさ」
 良い? そう視線を送りハンター達を送り出そうとした時だ。
 同乗し、先程まで最終メンテナンスに尽力していた職員が声を上げた。
「な、何ですかアレ!!」
「貸すのよっ!」
 職員から奪った双眼鏡を覗いてギョッとする。
 イカダに乗った絶世の美青年。なびく金色の髪はまるで太陽の光のように輝き――
「ってぇ、あの顔……バカでアホな歪虚ッ」
 ぷるぷる震えるブリジッタの脳裏に蘇ったCAMすら言えないアホ歪虚。
 確か名前はタムレッド・マリアーディ、通称タマだ。確かタマには相棒がいたはずだが……。
 双眼鏡を動かしてでかい図体の歪虚を探す。タマの相棒はコートを着たタイランド型ゾンビで名前はタイランド・キヨモリだったか。
「あ、海の中に……っげぇ、なんか歪虚がいっぱいいるのよ……」
 流石に気持ち悪かったのか双眼鏡を下げたブリジッタがだ見てしまった。
 海の中でタマを手招くキヨモリと、その周囲に追従する無数の歪虚を。
「タマ。中ニ、来テ。仲間、集マレナイ」
 水中で手を振るキヨモリに手を振り返すタマ。どうやら意思疎通ができていないらしい。
 ならば好都合。
「あの歪虚目ざわりなのよ。あとは、わかるのよさ?」
 くいっと指差した先にはタマがいる。
 つまり海に入って歪虚を追い払ってから探査をしろと言うことらしい。
「新しいデータも手に入るし一石二鳥なのよさ! さあ、みなのものであえーー!!」
 そう叫ぶと、ブリジッタはいそいそとヘイムダル投下の準備を再開させた。

リプレイ本文

「これが魔導アーマー……あなたに乗らせて貰います、沙織です。一生懸命やるからよろしくね♪」
 そう勢い良く頭を下げた沙織(ka5977)は、自身が搭乗する機体「ヘイムダル改」に目を輝かせた。
「基本操作はCAMと同じなのかな……ん?」
 ふと隣を見た沙織の表情が明らむ。そこに居たのは持ち込んだ武器を機体に装備する瀬崎・統夜(ka5046)だ。
「それ、ウィップ「カラミティバイパー」とパイルバンカーですね! すごく意外な組み合わせです!!」
「あぁ。鞭についてはワイヤーのが良かったんだが……まあ、代用品ってとこだな」
 使用方法に関しては使わなければそれに越したことはない。そう言葉を添える統夜に目を瞬く。
「使わない方が良い武器、ですか? あ、私は綺導・沙織です。よろしくお願いしますね」
「ん。瀬崎・統夜だ。よろしく頼む」
「そこな平民2人ー! そろそろコックピットに入るのよさー!」
 大きく手を振り準備を訴えるブリジッタに顔を見合わせる。先ほどから時代劇風の口調で話しているが、この世界にも時代劇はあるのだろうか、と沙織は思ってしまう。
「早くするのよさー!」
「お、おー」
 拳を振り上げた沙織に小さく笑い、統夜はヘイムダル改に手を掛けた。
「お前の武器は実用的だな。あとは水中戦にどう動くか、か……頑張れよ」
 そう告げた彼の言うように沙織が持ち込んだ武器は実践向きなものだ。
 アックス「クラッベ」は見た目の大きな斧。その性能は地上なら折り紙付きだが水中では如何なるか現段階では不明だ。
 ブリジッタは統夜のコックピットハッチが下りるのを確認すると、ウェットスーツに身を包み機体に乗り込むマリィア・バルデス(ka5848)を振り返った。
「水中拳銃なんて何に使うのよさ?」
「ここから脱出しなきゃいけない状況になったら、水圧で普通に死ぬと思うけど。まぁ掛けられる保険は掛けたいだけよ」
 操縦席にトランシーバーを備えるマリィアの機体には彼女が持ち込んだスナイパーライフルがある。
 一応魔導アーマーにも装備可能な武器だが水中での性能は期待できないだろう。それでも彼女は装備した。
「何度も言うけど近接系の装備がオススメなのよ。変なの持ち込んで使えなくても文句は」
「わかってるわ。でも使うこと自体は可能なのよね?」
 イェーガーとしては実際の性能を見るまで諦めがつかないのだろうか。一応支給したバトルラムも装備しているのでこれ以上は言わないが、心配なのは確かだ。
「大丈夫だよ、ブリちゃん!」
 そうテンション高く声を上げる天竜寺 詩(ka0396)は、コックピットから顔を覗かせて手を振った。
 その彼女の機体に装備されているのは魔導鋸槍「ドレーウング」だ。
 今回の実験は武器の持ち込みが可能となっている。彼らなりに考えて用意してくれたのだろうし、より多くのデータが取れるのは単純に嬉しい。
「まあいいのよ……さ、詩のハッチも閉めるのよさ」
 久しぶりのブリジッタとの仕事に気合いが入る詩は「絶対に成功させようね!」と手を振ってハッチの向こうに消えてゆく。それに少しだけ笑顔を見せると、今度は別の個所から声が飛んできた。
「ブリ、次は俺な!」
 声の主はレオーネ・インヴェトーレ(ka1441)だ。
 彼はコックピットに座った状態でブリジッタの到着を待つと、ニコニコと何かを待つように身を乗り出した。
「なんだか気持ち悪いのよさ……ほら、頭を下げないとミソがミンチになるのよ」
「そうかそうか! ブリが『無事帰ってこい』なんて心配してくれるって……いや、ちょっとかわいいな、って」
「……はぁ? 言った覚えないのよさ」
「コラコラ、ブリジッタ。そこは空気を読んで言ってやるのがイイ女って奴じゃないのか?」
 何なのよさ。そうジト目を飛ばすブリジッタに守原 有希遥(ka4729)が何かを振って見せる。
 それを見た瞬間、ブリジッタの表情が変わった。
「ご褒美……っ、レオーネ、無事帰ってくるのよ。てか、帰ってこないと一生恨むのよ!」
「お、おう? なんかちょっと違う……けど行ってくる。愛してるぜー!」
「行ってこい、あたしのご褒美ッ!!」
 ハッチを閉めて海に落とす準備万端なブリジッタを見ていた時音 ざくろ(ka1250)がゲーム機を振っていた有希遥を見る。
「良いのかな、あれ……」
「本人たちが良いならいいんじゃないか? ああ、ブリジッタ。不調時の調整を頼みたいんだが連絡手段はどうする?」
「それなら短電話とトランシーバーを預かっているのよさ。ま、何かあったら戻ってくると良いのよ。むしろあんたは戻ってくるのよ。そのゲーム機……ぜったいに壊すんじゃないのよ」
 良いわね? そう念押しするブリジッタに有希遥は小さく肩を竦める。
 そうしてざくろに目配せすると双方ほぼ同時にコックピットに乗り込んだ。
「宇宙で使える様に実験って、ワクワクする! それに、海底で敵の基地を探すなんて、立派冒険だよね!」
 目を輝かせるざくろの機体にはワイヤードクローとグレートソード「エッケザックス」が装備されている。どちらも彼の自前だ。
「さあ、海の冒険に出発だ!」
 そう意気込むざくろだったが急に周囲がざわめき始めた。これにザレム・アズール(ka0878)の眉が寄る。
「敵……か?」
 ブリジッタが何かを叫んで海上を指しているのが見える。あの様子では敵を掃えと言っているのだろうか。
「水中戦起動の初テストが戦闘とか、相変わらず無茶をする嬢ちゃんだな」
 思わず苦笑する統夜だったが、彼の機体も他の機体同様に海へ落されてゆく。その最後となったザレムは海に浮かぶイカダを見詰めながら視界を沈ませた。
「擬似的な宇宙空間の仮想実験にもなるとはいえ、のっけから敵と出会うとはついてないな。しかし、相手に付け入る隙があればなんとかならなくもない……か」
 敵の位置は大体記憶した。きっと向こうにもこちらの存在が知れているだろう。となれば――
「――早々に追い払うべきだな」
 海中投下と同時に点灯させたヘッド部分の魔道ライト。その灯りに照らし出された魚群へ向けてハンターたちは動き出した。

●はじめての水中戦!
「プラヴァー重装改、よろしく頼むな」
 そう囁くレオーネが乗るのは自前のヘイムダルだ。
『あの残念イケメンと水中に見える大きいの。ちょっと牛若丸と弁慶っぽいかも』
 詩がそう零すのはタマとキヨモリの事だ。
 2人はハンターの存在に気付いたのか集めた魚の群れをハンターに向けている。その仕草に海中に落とされたヘイムダル達が動き出す。
『オレと詩さんはキヨモリに向かうな。まあ、すぐに追っ払って合流するから安心しててくれ』
 タマが魚の群れへゾンビ強化を掛けたかはわからない。ただイカダの上にいる彼は丘の上の鯉状態。このまま退場願うには好都合だ。
『皆目を瞑って!』
 まずは目晦ましを。そう思い声を上げた詩にブリジッタの制止する声が響く。だが遅かった。
『っ、お、おい、大丈夫か!?』
 ヘイムダル自体から漏れる光で大体の事は理解した。
 どうやら機体に持たせた武器からシャインを放とうとしたらしい。だが彼女の紡いだ光はコックピットの中で弾けてしまった。
 その結果、動きが止まってしまうのだが同行していたレオーネが彼女の前に立ち塞がった。
「目が戻ったら援護頼むな」
 スクリューでタマの元へ急ぐキヨモリへ接近を目指す。徐々に近付くその時、唐突に魚の群れが突っ込んできた。
 サメに大型魚。見るからに地の利があるのは間違いないが、こちらとて生身な訳ではない。
『狙撃を試させてもらうわ。失敗した時の援護をお願い』
『失敗前提ってのもアレだが、まあ比較するにはちょうど良いか』
 スナイパーライフルを構えたマリィアの機体が狙うのはレオーネに直進する敵だ。それを視界に納めながら統夜がフォローの為の準備を開始する。
 CAMでの宇宙戦闘は経験済みだが、やはり海中とは勝手が違う。
 手や脚の感覚、速度など、今の内に確認できるものはしておくつもりなのだろう。各所を器用に動かしながらシールドを構えた彼にマリィアの銃が吠えた。
「わかってたけど悔しいわね! 猟撃士の運用も考えるなら、ヘイムダル用の水中銃も開発してほしかった、わっ!」
 何処かからだから言ったのよ。と聞こえてきそうだが、彼女の放った弾は水圧によって威力を低減させると、サメの肌を掠めるようにして軌道を逸らして消えた。つまり敵はほぼ無傷。
『こっちも無傷でいきたいが……っ、攻撃するなら今だぞ』
 機体全体に衝撃が走る。
 斜めに突っ込んだ盾に衝突するサメに統夜の口から舌打ちが漏れるが、この好機を逃す気はない。
『わかっているわ。まったく、トラックに積めるんだからヘイムダルに積めるくらい簡単だと思うのに……ったく、もう!』
 通信の状態からマリィアが渡されたバトルラムを使ったのがわかる。
 だがそれを確認している余裕はない。
「ここが、こう……えっと、これをこうして……えいっ!」
 持ち込んだ大斧を薙ぐ沙織は未だに魔導アーマーの操縦に苦戦しているようだ。
 思うように武器を振れないだけでなく、海中での動きにも乱れが伺える。その証拠に彼女が倒した敵は僅か。
『きっと泳ごうとするから難しいんだよ。脚をしっかり海底に付けて――テイルスタビライザーオン……斬り返せヘイムダル!』
 ざくろは尾部スタビライザーを地面に固定し、三本脚の射撃体勢を取ると向かい来る敵にグレートソードを振り薙いだ。
 自身の速度とぶれることのない刃の動きに両断された敵を見て、沙織の口から「わぁ!」と歓声が上がる。
「私も元軍人。あまり動かず、敵の動きを見、焦ることなく……」
 シールドを構え、もう片方の手に大斧を構えた機体にブレは見えない。
 彼女は周囲を囲むように展開する敵に目を向けると、踏み込む足に力を込めて敵の攻撃を受け止めた。
「次はこちらです!」
 鈍い揺れが機体全体に響く中、大斧に付いた蟹爪状の刃でサメの口元を挟む。これで2体の動きは封じた。
『そのまま抑えててくれよ』
 唐突に回線に乱入してきた声に顔を動かす。そこに在ったのはザレムと有希遥の機体だ。
 ザレムは手にしていた巨大魚の亡骸を1体の敵にぶつけると、すぐさまその胴をバトルラムで引き裂いた。
 これに有希遥も続く。
 基本に忠実に、機体のバランスを取りながら薙ぎ入れた刃で敵を払う。そして次の敵に視線を飛ばした時、目の前に黒い影が飛び込んできた。
『――ッ?!』
「動作は一歩早く……迎え撃つ!」
 咄嗟に盾を構えた有希遥のお陰で混乱は免れた。
 ザレムはバトルラムを構えると敵が体勢を整えきる前に動いた。これに相手も急いで身を返すが許せるはずもない。
『行かせない』
 盾で敵を牽制したまま有希遥が立ち塞がる。これにザレムの斬撃が振ると敵は苦しむ間もなく息絶えた。

 各所で上る水撃音。それを船から見守っていたブリジッタはイカダの上にいるタマの異変に気付いた。
「な、な……何が……」
 大きく揺れるイカダにしがみつき、海中を覗き込むタマの前に巨大な影が飛び上がる。
『ブリちゃんの邪魔はさせないんだから!』
 飛沫を上げてイルカのように舞い上がったキヨモリ。その下には彼を突き上げるべくバトルラムを掲げたヘイムダルの姿がある。
「キキキキ、キヨモリ……っ、なんで飛んで……」
「タマ、ココ危険。撤退、スル」
 詩の機体は顔を覗かせることなく海中に落ち、代わりにレオーネがキヨモリを迎撃する。
『もう終わりか? けど折角間合いに入れたんだからこれも受け取っていけよ!』
 海に落ちたキヨモリ打ち込まれる巨大な太刀。こをキヨモリは正面から受け止めた。
『なっ?!』
 振りかかる太刀を掴んで引き寄せるその動きは想像以上のものだ。きっと浮力の関係もあるのだろうがそれでも恐ろしい。
「キヨモリ何をしている?」
 タマの声に、一瞬上を見たキヨモリの手が離される。そして何事もなかったかのようにレオーネや詩の機体に背を向けると、彼はイカダを押して泳ぎ去っていった。
『ぶわっはっはー! あんたたちよくやったのよさ! あとはそいつらを蹴散らすのよー!!』
 ブリジッタは上機嫌に笑いながら魚ゾンビを倒せと指示してくる。
 これに一部のハンターが苦笑いしたが仕方がない。彼らは改めて魚群に向き直ると残り僅かの敵を倒すために動きを再開させた。

●海底探査
『そろそろ海産物の言ってた限界が来るのよさ』
 暗い海の底を歩く一行にブリジッタの通信が飛んでくる。
 今回の事前情報ではこの海底に歪虚の基地があるはずなのだ。しかし――
『ブリちゃん、ごめんね……』
『敵の撤退位置も確認したが見当たらないな』
 詩の声に続きザレムも申し訳なさそうに呟く。
 タマやキヨモリが撤退して魚型ゾンビも撃破した後、ハンターたちはあらゆる可能性を見て調査してくれた。
 マリィアは機体のヘッドを動かすと、見落としがないか海底に目を凝らす。そうして何もないことを確認すると、緩やかに機体の動きを止めた。
『あれだけの敵が居たのだから、どこかにあってもおかしくないのだけど……』
『そうですね。でもブリジッタさんの言うことは聞いた方が良いと思います』
『ああ。目的はデータを持ち帰る。つまり無理せず生きて帰るのが最優先だ』
 沙織の言葉に頷き、統夜が息を吐く。
 今回は起動データだけでなく、戦闘データも取れたことを考えれば充分すぎるほどに成果が出ている。
『順番に引き上げるのよ。閉所恐怖症、暗所恐怖症がいれば一番に上げるのよさ!』
 聞こえる声に「相変わらずだな」と苦笑しながらも有希遥は地上に戻った時のことを考える。
 ブリジッタに持参したご褒美は彼女の研究開発に役立つであろうロボット物のゲームだ。装備も豊富で分かり易く楽しいと言うかなり良い代物なのだが、果たして遊ぶ時間はあるのかが疑問だ。
「まあ、大丈夫だろ」
『次、ざくろ行くのよ!』
『はーい』
 元気に返事をしながら落とされた碇付きのワイヤーに手を伸ばすしたざくろは、未だにワクワクと周囲を見回している。と、そんな彼の目が海底の一角で止まった。
「あれって……?」
 薄っすらと見えた黒い影。何かの建物のような、岩場のような……。

「引き上げの途中で、変なものを見たんだけどさ……」
「あ、僕も見たよ」
 レオーネの声に、ざくろは勿論、他の面々も声を上げ始める。
 引き上げられる瞬間に見えた不思議な影。それが何だったのか定かではないが、確かに何かがある気がした。
 そう語る彼らにブリジッタの視線が落ちる。
「海産物に報告するのよ。あんたたち、見えた場所の詳しい情報を教えるのよさ」
 彼女はそう言うと、周辺の地図を取り出してハンター達の前に差し出した。

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  • 【魔装】希望への手紙
    瀬崎・統夜ka5046

重体一覧

参加者一覧

  • 征夷大将軍の正室
    天竜寺 詩(ka0396
    人間(蒼)|18才|女性|聖導士
  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 魔導アーマー共同開発者
    レオーネ・インヴェトーレ(ka1441
    人間(紅)|15才|男性|機導師
  • 紅蓮の鬼刃
    守原 有希遥(ka4729
    人間(蒼)|19才|男性|舞刀士
  • 【魔装】希望への手紙
    瀬崎・統夜(ka5046
    人間(蒼)|28才|男性|猟撃士
  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデス(ka5848
    人間(蒼)|24才|女性|猟撃士
  • 戦場に咲く白い花
    沙織(ka5977
    人間(蒼)|15才|女性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/07/10 23:18:02
アイコン 質問卓だよ
天竜寺 詩(ka0396
人間(リアルブルー)|18才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2016/07/12 20:37:31
アイコン 相談卓だよ
天竜寺 詩(ka0396
人間(リアルブルー)|18才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2016/07/12 20:53:45