• 深棲

【深棲】海より来たる狂喜

マスター:樹シロカ

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
7~7人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/09/14 07:30
完成日
2014/09/22 11:49

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 その知らせは当初、同盟軍司令部を震撼させた。
 港湾都市ポルトワール近郊の漁村に現れた、異形の存在。
 狂気の歪虚の生き残りか、あるいはその動きに触発された別の敵なのか。
 だが話の詳細が知れるに従い、まるで報告を受けた広報担当士官メリンダ・ドナーティ(kz0041)に責任があるかのような、何とも微妙な空気が流れる。
「……という訳なのですが。歪虚が絡む以上、念のために部隊を派遣すべきかと思われます」
 メリンダとて困惑しているのだ。
 上司は軽く首を振ると、報告書をメリンダに差し戻した。
「良く判った。だが現状、こちらも手一杯だ。ハンターへの依頼を許可しよう。詳細はドナーティ中尉、君に一任する」
 またかよ。
 メリンダは内心、ハイヒールの踵で目の前の上司の足の甲を踏みにじりたい衝動に駆られたが、こんなことは日常茶飯事だ。落ちつけ、と自分に言い聞かせる。
「了解しました。ではそのように手配を」
「ああ、念のために君も同行したまえ。万が一危険な歪虚ということであれば、本格的な出動を検討する」
 営業スマイルのメリンダのこめかみに、僅かに緊張が走る。
「お言葉ですが、私は覚醒者では……」
「そうそう、一応方面陸軍への連絡だけは済ませておくように。以上」
 それで指示は完了した。


「お忙しい中、お集まりいただきましてどうも有難うございます」
 ハンターたちの前で、メリンダが笑顔で説明を始めた。
 完璧な営業スマイルに、野戦服姿が何処か凄みを与えている。
「今回の敵についてなのですが……」

 狂気の歪虚の出現による、同盟内での漁村のダメージは深刻なものだった。
 歪虚の討伐が先か、飢えて死ぬのが先かというところまで来て、ようやく大型歪虚が倒れたとの報が届く。
 そしてやっとの思いで漁に出た船が、不幸にも今日の未明、歪虚に襲われたのだ。
 ある程度覚悟の上の出漁である。必死に応戦したが、1人の若い漁師が歪虚に攫われてしまった。
 漁師たちは仲間を救おうと、それこそ死に物狂いで歪虚に立ち向かう。
 やがて歪虚は不利を悟ったのか、朝焼けの海へと消えていった。
 若者の身体に巻きつけた、1本の太い触手を残して……。

「その触手がこちらだそうです」
 メリンダが困惑を隠そうともせずに簡易テーブルの上を指さした。
 そこにはまるで今から宴会を始めようかというように、酒瓶や皿が沢山置いてあった。
 真ん中の大皿には、こんがり焼かれタレをかけられた何やらいい匂いのする物まで乗っている。
 いや、何やらというのは正しくない。どう見ても、ぶっといタコの足なのだから。
 日に焼けた中年の漁師が笑った。
「いや~死んだ親父が言ってたんだが、歪虚の消えねえ残骸は旨いってんで。ちょっと試してみたんだけど」
「……美味しかったんですか」
「びっくりしたねえ。えらく旨いんだこれが!」
 にこにこ笑う漁師。
 その背後には穏やかな海が広がっている。

 が、その時。
 突然海面の一部が小山のように盛り上がり、想像を絶する生き物が姿を現した。

リプレイ本文


 現場に到着後、メリンダ・ドナーティ(kz0041)の説明を聞きながら、守原 有希弥(ka0562)は周囲の状況を確認する。
 広い砂浜は遠くまで見渡すことができ、視界を遮るものも碌にない。
「平和な光景ですが、少し面倒ですね」
 状況から見て、歪虚の関わる事件である。戦いやすいのは良いが、身を隠す場もないのである。
 同じく説明を聞きながら、無限 馨(ka0544)がテーブルの上を疑わしそうに眺める。
 これまでの経験上、歪虚を目の当たりにして食糧と考えること自体があり得ない。
「VOIDを食うなんて、漁師の人達は逞しいっすねえ……」
 半ば呆れ、半ば感心しつつ、ふと海に目をやる。すると異様な形に盛り上がった波が迫り来るのが見えた。
 ハンターたちが身構える。
 件(ka2442)の表情は面に隠れて見えないが、弓を手にした全身に敵を迎えんと力が籠る。
「おっと、まァた歪虚かい? 全く元気な奴らだな。まぁ獲物は大きい方が、釣り甲斐があるってもんだな」
 波が割れ、歪虚が姿を表す。その姿に一瞬、ハンターたちは毒気を抜かれた。
 ヴォルフガング・エーヴァルト(ka0139)が、咥えていた煙草をもみ消しながら嘆息する。
「今回はまた、海産物総集合みてぇな歪虚だな……」
「……高級食材キメラですね」
 有希弥は水中から現れた歪虚をしげしげと眺めた。
 2m程の高さの蟹がハサミを振り立てながら横歩きで浜に接近しつつある。その背にはびっしりと貝が貼りつき、エビの尾部が海面を叩く。そして腹の下には、タコの触手が幾本も蠢いていた。
「あれがそうですか?」
 メリンダの短い確認に、漁師が大きく頷いた。
「間違いねえ。後何本かタコ足がありゃ、宴会も盛り上がるってもんだ!」
「危険ですから! ここはハンターの皆さんに任せて、すぐに避難してください!!」
 戦闘、否、漁に参加する気満々の漁師を、メリンダが押しとどめる。
「倒した後、分けてもらえんなら、まあ……」
 ちらりとこちらを見た漁師に、月影 夕姫(ka0102)が「任せておいて」というように、帽子のつばを軽くあげた。
「なんか目的が討伐から違う方向へ向かいそうよね」
「野戦料理なら任せろ。蜘蛛だの蠍だのと比べれば、立派な食材だ」
 既にシャルラハ(ka3116)の意識の中で、討伐は経過に過ぎないものとなっている。
「マジデスカ……」
 同じリアルブルーの軍人でも、馨はまだそこまで割り切れないようだ。それでもすぐに状況を見て、一般人に危害が及ばない方法を考える。
「……っと、カルチャーショック受けてる場合じゃないっすね。とりあえず奴は俺が引きつけるんで! 後は頼んだ!」
 咄嗟にテーブルに駆け寄ると、タコ足の刺さった串を掴んだ。
 ヴォルフガングが馨の意図を察して、彼我の距離を測る。
「取り敢えず、面倒なことになる前に始末するか。後の処理はそれから考えるとしよう」
 燃えるような赤い髪を風に靡かせ、フラメディア・イリジア(ka2604)は漁師達を背中に、歪虚を見据えるように位置を変えた。
「さて、大きさは合格じゃな。後は、どれほど楽しませてくれる相手か。楽しみなことじゃ」
 少女の顔には似つかわしくない程に不敵な笑みが浮かんでいた。


 雫の滴る触手は、見れば見るほど立派なタコ足だった。だがよく見ると、そのうちの1本は根元で切れている。
 馨は手にした串を片手に、もう片方の手に銃を構え、足元に注意しながら移動を始めた。
 漁師たちが逃げた方向とは違う方向へ、そして可能な限り海から離れた場所へと敵を誘導するつもりなのだ。
「わざわざ陸に上がって来るなんて、そんなにこれを返して欲しいっすか?」
 串を振り上げ、馨が挑発を試みる。
「でも残念っした。お前に返す足は無いっすよ!」
 がぶり。
 タコ足にかじりつきながら、蟹の顔(?)目がけて銃弾をお見舞いする。
 それが当たったかどうかを確認するより先に、馨は再び走りだした。完全に引き離す程ではない速度で。
 言葉が通じた訳ではないだろう。だが攻撃を受け、敵意を察知する程度には知能のある歪虚は、目障りな馨を追いかける。
 それを確認し、件が脇へと回り込んだ。
「まんまと誘いに乗ってくれたかい? んじゃァ俺達の出番だなァ」
 件の肩の筋肉が盛り上がり、弓が満月のように引き絞られた。
 狙いは、太い蟹足の関節。動き回る相手に当てるのは容易ではないが、上手く行けば脚が折れて体勢を崩すことができるだろう。
「当たってくれよ!」
 空を切る鋭い音。放たれた矢が甲羅と蟹足の隙間目がけて飛んで行く。
 鏃は見事、右側の足の一本に突き立った。だが歪虚は一瞬バランスを崩したものの、転倒することなく脚を踏み締める。
「流石に1本では無理か?」
 予想の範疇だったか、然程残念そうな様子もなく、件が次の矢を番えた。その瞬間、歪虚が砂地に跡を引きながら、押し込まれる。
「ふむ……的が大きいと狙いやすくていいな」
 シャルラハが反対側から短銃身ライフルの銃弾を撃ち込んだのだ。
 確実に当たってはいるが、甲羅は固く、致命傷には程遠い様子である。
「成程な。では関節を狙って動きを止めるか」
 ライフルを構え直すと、再び狙いを定める。
 その目前で、歪虚は突然動きを変えた。早くも海へ向かって、逃げ出すつもりらしい。恐らくは損傷具合よりも、敵の多さを悟った為だろう。
「おっと、逃げようたってそうは行かないぜ」
 件が逃げる方向を塞ぐように回り込み、移動に使う蟹足を重ねて狙う。
 馨がその攻撃に合わせて発砲しながら、声を上げた。
「足元に気をつけてくださいっすよ!」
 踏み締める足元が頼りなく感じられる程に、砂地が柔らかいのだ。

 歪虚が海へと移動する先を塞ぐように、夕姫が一歩を踏み出した。
「逃がさないわよ! ……って、きゃあ!?」
 いきなり砂に足を取られて、躓く。
「大丈夫か」
 すぐにヴォルフガングが駆けつけた。
「だ、大丈夫よ! でもお陰で裏側がよく見えるわ」
 低い位置から見上げた歪虚の腹は、甲羅よりは弱そうに見えた。特に尾部は巻き込むように曲がる為に、殻も薄そうだ。
「エビと同じ動きなら、万一水に入られたら後ろへのバックもありそうね。潰しておきたいわ」
「それにバランスを崩せるかもしれないな」
 だが、動く脚に、幾本もある触手に遮られ、射線の確保が難しい。
 有希弥が接近戦に備え、愛用の刀を構えた。
「脚が二種類尻尾に鋏、大層な保険で!」
 秀麗な頬に浮かべた苦笑を押さえ、提案する。
「ひとまずは触手を減らしましょう。重心が片側に寄るかもしれない」
「分かった。攻撃を合わせよう」
 頷き合い、ヴォルフガングと有希弥が飛び出した。
 一気に距離を詰めるが、敢えて最後の一歩を踏みとどまる。尻尾、鋏は届かず、触手が届く距離だ。
 思った通り、有希弥の身体を弾き飛ばそうと、触手がうねりながら伸びて来る。
「熱くなると見失うものは多い、ですよ」
 気合一閃、1本の触手が中程から斬り落とされ、砂地にのたうった。
 ヴォルフガングはその根元に刃を突き立てる。
「行けるか?」
「任せて! 逃がさないわよ、吹き飛びなさい」
 ヴォルフガングを叩こうと振り上げた尻尾を、夕姫の魔導弾が貫く。それを確認し、ヴォルフガングは下がる。
「一度立て直すぞ。まぁ、何事に於いても無理は禁物ってことで」

 続いて飛び退ろうとした有希弥だったが、深い砂に足が滑る。
「な……?」
 細身の長身が、ぐらりと揺れる。伸びた触手が有希弥の足を絡め取っていたのだ。
 その時、鋭い声が響く。
「逃がさぬのじゃ! 喰らうが良いわ!」
 固い物が砕ける、鈍い音。
 フラメディアが自分の身の丈程もあるハンマーを振り下ろした。有希弥に気を取られていた歪虚は、その接近を感知できなかったのだ。
 鈍器の強打に蟹足の関節が砕け、あらぬ方向に折れ曲がる。刀傷や銃弾では切断するまで支えとなる脚が、こうなっては全く役に立たない。
「たわいないのう。ほれ、抗うてみよ!」
 容赦なく、別の足を叩き折るフラメディア。歪虚の身体が傾く。だが、まるで彼女の言葉に反応するように、巨大な鋏が襲いかかった。
「なんの!」
 ハンマーで鋏の強打を防ぐ。重い一撃に歯を食いしばり耐えるフラメディアだが、触手がその身体に巻きつこうと伸びてきた。
「うちの目の前で勝手は許せませんね」
 体勢を立て直した有希弥が触手に斬りつけ、その隙にフラメディアを抱えて離脱する。
「よし、後は任せろ」
 シャルラハが砂地に身体を伏せていた。触手が減ってむき出しになった腹側を狙って、ライフル弾を撃ち込む。
 浅い角度で飛び込んだ銃弾は固い背中の殻に当たり、柔らかな本体をズタズタに引き裂いた。
「後少しだな。さァて、お楽しみの時間だ! あんまり手こずらせてくれるなよ……っと!」
 折れた足を引きずり、必死の体で海へと向かう歪虚の甲羅に、件の矢が突き立つ。
 
「腹が弱点なのじゃ! ひっくり返せばすぐに終わるぞ!」
 威勢よく声を上げるフラメディアの傷を、有希弥が遠慮がちに癒していた。
「あの、すぐ済みますから少しじっとして……!」
「何の此れしき! 逃げられては元も子もないのじゃ!!」
 振り切るように突っ込んだフラメディアが、ハンマーの柄を蟹足に絡めて捻った。見事ひっくり返った歪虚は、じたばたと暴れていたが、もはや逃げる術はない。
 一斉攻撃を受けた歪虚の触手は、ついにだらりと砂地に伸びた。馨が靴の先で軽くつついてみるが、もうぴくりとも動かない。
「やったっすね。 ……しかしマジで美味いっすよ、この足」
 馨は串に残っていたタコ足を、全て頬張った。


 メリンダが退避していた場所から走って来た。
「お疲れ様でした。拝見していましたが、皆さんとても見事な連携でしたね!」
 戦闘で受けた傷はさほど深い物ではなく、マテリアルヒーリングを使える者が既に癒している。
「何より、皆さん全員が無事でよかったですわ」
 そう言ってメリンダは安堵の表情を浮かべた。

「さて、では『後始末』にかかるか」
 シャルラハが屈みこみ、巨大な甲羅から器用に貝をはがして行く。
「貝はそのまま網焼きが美味いだろう。ソイ・ソースがあれば尚いいな。蟹足も焼いて食うか」
 夕姫は剥がれた貝を、順に分けて行く。
「サザエや牡蠣はそのまま焼くとして、他の貝は出汁にも使えるわね。蟹足は蟹すきもいいんじゃないかしら」
「カニスキ、ですか?」
 メリンダは首をかしげつつも、夕姫の希望する通りに鍋や調味料をメモしていく。
 有希弥が野性の青紫蘇やバジルを摘んできた。
「結構ハーブが手に入りますね。魚介に合いますから栽培するのもいいと思いますよ」
 リアルブルーの料理に、漁師たちも興味深々の様子である。

 件は先に見つけていた岩場に腰を据えていた。釣り好きにとっては見過ごすことのできない絶好のポイントである。
「と、その前に」
 懐を探り取り出したのは、七夕という行事で手に入れた、願い事を書く紙片だ。
「もうあんまり厄介なのを寄こして、騒がせてくれるなよ。俺ものんびり過ごしたいからなァ……」
 海がいつまでも豊かで平和でありますように。祈りを籠めた短冊が流れていく。
「くぁ……」
 件は大きく欠伸をすると、満足そうに釣り糸を垂らした。

 やがて準備が整い、漁師やその家族たちが集まってきた。
 サザエの壷焼きや焼きガニなどに加えて、料理の得意な者が腕を振るったごちそうが並ぶ。
「さ、食べましょう!」
 有希弥が愛想よく勧める。タコ足はから揚げや蛸飯に、牡蠣は香草焼きや土手鍋に。
 メリンダは珍しい料理の数々に、目を見張る。
「すごいですね……!」
「さあ宴じゃ! カニみそもたっぷりじゃぞ! 飲んで食って、日ごろの憂さ晴らしじゃ」
 フラメディアが満面の笑みで酒瓶を抱えていた。飲む気満々である。一見少女のようだが、これでも立派に大人なのである。
「ほれ、メリンダ殿も座るのじゃ」
 目移りしているメリンダに、シャルラハが椀を手渡した。
「海老と蛸のスープだ。あれだけでかいと食いでがあるな」
「いただきます」
 出来立ての料理を囲めば、雰囲気も和む。
「おおーいい飲みっぷりだ! どんどん行こうかい」
 漁師が件のグラスに酒を注ぐ。
「おっ、こりゃどうも。また何かあったら声かけてくれ。美味い魚を安全に獲ってもらわねェとな」
「勿論だ。おかげさんで、また漁に出られるんだからなあ」

 夕姫は牡蠣を頬張り、満足そうに微笑んだ。
「歪虚って初めて食べたけど、噂通り美味しいわね……!」
 どういう理屈なのかは判らないが、独特の旨味があり、飽きさせない。
「うん、うまいっす!」
 どんどん平らげていく馨に、夕姫がクスッと笑う。
「さっきまでは嫌がってたみたいだけど?」
 馨は真面目な顔で、取り上げた蟹足をばきっと割った。
「VOIDだからってビビってたらハンターなんてやってられないっす。俺だっていつまでも新人じゃいられないっすから!」
 だが夕姫は改めて宴席を見回し、軽く眉をひそめた。
「でもこれで味を占めて、今後討伐じゃなくて狩り依頼が増えないといいんだけど……」
 楽しそうに酒を酌み交わす漁師達を見ていると、一抹の不安がよぎる。
 まあほとんどの歪虚は倒した時点で霧散するので、問題はないだろう。
 
 宴席の一角では、メリンダがシャルラハ相手に景気よくグラスを空けている。
「……ほんともう、おっさんども、いつかキャーン! て言わせたいです」
「ああ、軍隊ってのは男社会だからな。ドナーティ中尉もさぞやストレスが溜まっているだろう」
 シャルラハもしみじみと頷く。立派な女性であるにもかかわらず妙に男前なのは、戦場を渡り歩いてきたせいだけでもないらしい。
 どうやら宴席が大好きらしいフラメディアが、うんうんと頷きながら酒瓶を傾ける。
「何やら大変そうじゃのう。愚痴ならいつでも付き合うぞえ。ほれ、どんどん飲むがよいぞ!」
「有難うございます。そういうフラメディアさん、グラスが空いてないですね、あら~、瓶が重ーい」
「おっとと……うむ、肴が美味いと酒もすすむの!」
 女三人、既にここだけが異空間である。

 賑やかな席から少し離れて、ヴォルフガングはひとり宴席を眺めていた。
「ま、無事に歪虚を斃したんだからな」
 肴は皆の楽しそうな声。酒瓶を傾けて一口煽ると、軽く息を吐く。
 目の前に広がる海は穏やかで、平和そのものだった。
「と、俺の煙草……」
 慌ててポケットを探る。愛用の煙草は先の騒動で少し崩れていた。
「やれやれ……まあ濡れていなかっただけマシか」
 ヴォルフガングは折れ曲った煙草を咥え、慎重に火をつけた。

 次の出動も今回のように上手く行くと良い。その思いは、恐らく皆も同じだろう。


<了>

依頼結果

依頼成功度大成功
面白かった! 5
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

  • スピードスター
    無限 馨ka0544
  • 洞察せし燃える瞳
    フラメディア・イリジアka2604

重体一覧

参加者一覧

  • エアロダンサー
    月影 夕姫(ka0102
    人間(蒼)|20才|女性|機導師
  • Stray DOG
    ヴォルフガング・エーヴァルト(ka0139
    人間(紅)|28才|男性|闘狩人
  • スピードスター
    無限 馨(ka0544
    人間(蒼)|22才|男性|疾影士
  • 渾身一撃
    守原 有希弥(ka0562
    人間(蒼)|19才|男性|疾影士

  • 件(ka2442
    エルフ|42才|男性|猟撃士
  • 洞察せし燃える瞳
    フラメディア・イリジア(ka2604
    ドワーフ|14才|女性|闘狩人

  • シャルラハ(ka3116
    人間(蒼)|28才|女性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/09/09 00:46:00
アイコン 作戦相談卓
守原 有希弥(ka0562
人間(リアルブルー)|19才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2014/09/14 00:16:25
アイコン 質問卓
守原 有希弥(ka0562
人間(リアルブルー)|19才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2014/09/11 17:29:00