俺たちゃ沿岸警備隊 リターンズ

マスター:秋風落葉

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/07/22 07:30
完成日
2016/07/26 18:49

みんなの思い出

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オープニング


「ボブ! ジョン! 今だ!」
「おうよ!」
 威勢のいい声と共に、ロープが引っ張られる。
 ロープを引くのは筋骨隆々の男達。男達が力強く引っ張るにつれて、巨大な貝殻に包まれた生物の体が傾いでいく。
 貝殻に覆われた生物――巨大なヤドカリ雑魔の足元には落とし穴がある。アリジゴクの巣に飲み込まれた蟻のように、雑魔は必死に足をばたつかせ、ロープにかかる力に負けまいとするが……叶わず、その巨体はすり鉢状の砂地に倒れ込み、貝殻の中に隠れているヤドカリの本体が男達の目前にさらけだされる。
「よし! ハイパーライフル! 撃て!」
「了解!」
 ここはグラズヘイム王国南西部、クオレマリナ地方のとある海岸地帯。
 熱い夏の日差しの中、砂浜の上で隊列を組んだ男達の銃が一斉に火を吹いた。彼らからハイパーライフルと呼称されている武器はここぞとばかりに巨大ヤドカリの本体を蹂躙する。
 ヤドカリ雑魔はしばらく暴れたものの、やがて動かなくなり、消滅した。
「やりましたね隊長!」
「ああ! あの時のハンターのおかげだ!」
 去年の夏、彼らは今回の敵と同じタイプの敵に遭遇し、敗北するという事件があった。その際、ハンターに討伐依頼を行い、ハンター達は見事にヤドカリ雑魔を撃破した。彼ら沿岸警備隊はその時にハンターのレクチャーを受け、同じような敵が現れた場合に対処できる方法を学んだのである。
 そして今、先の戦いから得た教訓を活かし、大した損害を出すこともなくヤドカリ雑魔を仕留めることができた。上々の戦果といえる。
「やはり俺達は最高だ!」
「ああ! もう何も怖くないぜ!」
 男達は銃を天に掲げ、勝利に酔いしれる。
 中天にある太陽は、そんな彼らに祝福の光を投げかけていた。


 ある日、クオレマリナ地方の一部の海岸で海霧が発生していた。そして霧の中にうごめく巨体がその地の住人によって目撃される。どうやら、巨大ヤドカリの雑魔がまたもや現れたらしい。連絡を受けた沿岸警備隊はハイパーライフルを手に砂浜へとやってきた。
 隊長の視線の先には山のような影が見える。
「霧のせいでシルエットしか見えないが……たしかにあれは巨大ヤドカリのようだな……よし! 落とし穴用意!」
「はっ!」
 メンバーの数人がシャベルを持って砂浜に穴を掘る。その間に隊長を含む他のメンバーはヤドカリのシルエットを囲む。
 ヤドカリ雑魔は見た目に似合わず素早いのが特徴だ。ある程度の距離を取る沿岸警備隊の面々。雑魔は彼らの存在に気付いたのか、沿岸警備隊の方へと歩を進めてくる。
 迫る黒いシルエットから目をそらさず、隊長は部下へと伝達する。
「落とし穴に誘導するぞ!」
「了解……うおっ!?」
「ぐわっ!?」
 霧につつまれた戦場で悲鳴があがる。まだ巨大な敵からは十分な距離を取っていたにもかかわらずだ。
 沿岸警備隊メンバーの二人が砂浜に片膝をついた。
「ボブ! ジョン! ……ぐっ!!」
 深い霧の中、風を切った何かが隊長の足を薙いだ。防具を切り裂かれはしたもののそれほど深い傷ではない。ほっとした隊長だったが、突然患部からすさまじい激痛が発した。隊長は歯を食いしばり、己の足を見た。そこに、うねうねと動くものが纏わりついている。
「何だこれは……!? 触手……!?」
 沿岸警備隊の面々を襲ったもの。それは、隊長がその正体を看破したように無数の触手であった。
「くそっ!! 敵はヤドカリじゃないのか!? 撃てっ!! 撃てっ!!」
 隊長の号令と共に、警備隊の銃が火を吹いた。濃霧を切り裂くかのように放たれた無数の銃弾は敵を蜂の巣にせんと襲い掛かる……しかし。
「隊長! ハイパーライフルが効きません!」
 返ってきたのは銃弾が弾かれる硬質な音だった。巨大な敵は動きを止めることもなく彼らへと近づいてくる。もちろん、先に彼らを襲った触手らしきものも休むことなく振るわれていた。このままでは全滅の危機である。
 それでも必死に抗戦する警備隊員。ようやく、海岸の霧が薄くなってきた。彼らは、ついに敵の正体を目の当たりにする。
 警備隊の面々の前にさらけだされた敵の姿は確かに巨大ヤドカリであった。しかし、その背を覆っていたのはただの貝殻ではなく……まるで貝殻のように硬質な体を持つ巨大なイソギンチャクであった。もちろん、遠距離から警備隊を襲撃したのはこの雑魔に生えている触手の仕業だ。
 巨大ヤドカリの上で、悪夢のように触手を振るい続ける巨大イソギンチャク。もちろん宿主であるヤドカリも黙っているわけではない。素早く警備隊員に近づき、大きな鋏で周囲をなぎ払って屈強な男達を軽々と吹き飛ばしている。
「……ハンターだ。ハンターに依頼するぞ」
 隊長は無念そうに言葉を吐き出し、隊員達に撤退の指示を出した。

リプレイ本文


「久しぶりだな。非覚醒者が倒せるかどうかは手応えを見ながらになるけれど、俺が考えている方法を話すから判断してくれ」
「おお、またお会い出来て嬉しいです! 去年はお世話になりましたザレムさん。あれから貴方がたの助言をもとに多数の雑魔を退けてきましたが、今回の相手もハイパーライフルが効かない強敵……どうかよろしくお願いします」
 以前、同じようなヤドカリ雑魔相手に落とし穴を掘り、彼ら沿岸警備隊に戦いのレクチャーを行ったザレム・アズール(ka0878)。
 警備隊の隊長は口元に笑みを浮かべ、ザレムをはじめとしたハンターの面々を迎えた。周りにはまだ動ける警備隊のメンバーも数人並んでいる。
「ヤツが、あのハイパーライフルすら弾くヤツがまた来たー。今度は頼もしい助っ人付きで」
 超級まりお(ka0824)もパワーアップして帰ってきた強敵の姿をじっと見据えている。
「むむ、生意気だよねー。ヤドカリ(とイソギンチャク)の分際で。今年も熱処理してやらないと」
 まりおは後ろを振り返る。彼女の視線の先には即席のかまどで海水が入った鍋を熱している警備隊がいた。以前のようにあつあつの熱湯を食らわせてやろうという考えなのだ。
 かつてはヒートソードで熱湯を作ったまりおだったが、今回はヒートソードを持ってくるのを忘れてしまったので警備隊の手を借りている。
 ザレムやまりおと同じく、一年前にこの地でヤドカリ雑魔と戦ったエルディラ(ka3982)も砂上を歩いて警備隊たちに近づく。
「ハイパーライフル……一年ぶりにその名を聞いたな。今年も沿岸警備隊の連中が活気づく時期というわけか。存分に頼れと言った以上、此度も手を貸すのが道理じゃのう」
「ありがとうございますエルディラさん!」
 エルディラは遠くにいる今回の敵を注意深く観察した。
「まずは触手が邪魔じゃな。エルバッハが焼き払う算段を立てておるらしい。我もファイアーボールを合わせておくとするか」
 その言葉に応えるように歩み寄る者が一人。
「初めまして、エルバッハ・リオンです。よろしければ、エルと呼んでください。よろしくお願いします」
 エルバッハ・リオン(ka2434)が警備隊の面々に自己紹介をすませた。
 続いて新たに魔導機械式エンジン音を響かせて登場したのは、神々しい白いエアロパーツが特徴の魔導バイク「ディアーナ」。
(俺はグロ、ホラー、絶叫系、生理的精神的にクるのはダメなんだ……そのサイズは看過できん。俺の心の平穏のために消えろ)
 と心の中で呟くのはHerrschaft=Archives(ヘルシャフト=アーカイブス)。
 魔導バイクに跨り、貴族のような衣装を纏い、仮面で顔を隠したその姿はまさにダークヒーロー。背後には後光のように六枚の光の翼が浮かんでいる。
 なお、その正体は咲月 春夜(ka6377)が覚醒している姿だ。
「まーちゃん、足場を頼みますぅ」
 自分の愛馬にそう語りかけながら符を構えるのは星野 ハナ(ka5852)だ。ローブのしたにはすでに水着を着込んでおり、雑魔を倒して海を満喫するつもりである。
「私はいつでも自分の幸せと依頼人さんの幸せを考えてますよぅ」
 というのが彼女のモットーらしい。
「……なるほど。大きいですね。では、斬りましょうか」
 巨大な雑魔を見やりながら、こともなげに言ってのけたのは連城 壮介(ka4765)。その手にはすでに日本刀「骨喰」が握られている。警備隊の一人は彼の言葉に驚いていた。
「……大丈夫です。何がくっついていようとも、実体があるなら大抵のものは斬れますし斬れば倒れます。問題ありません。……いってきます」
 壮介の言葉に応えるように、遠くにいたヤドカリ雑魔がハンター達へと向かって移動を開始した。


 警備隊の中で怪我の割合の少ないメンバーに長い綱が持たされている。
 ヤドカリ雑魔を穴にはめ、もがいている間に彼らが触手の射程外からピンと張ったロープを引っ掛け、横殴りにする感じで倒してしまおうという目論見である。
 去年やった落とし穴作戦をさらに強化した案だ。
 問題は敵の触手の射程距離が未知数ということだが……。
 ヤドカリ雑魔に覆いかぶさるイソギンチャク雑魔が全身をくねらせ、激しく触手を揺らした。
 それは瞬く間に伸び、雑魔の前に立つハンター達に襲い掛かる。
「おっと!」
 試作振動刀「オートMURAMASA」で触手を切り払うザレム。
 敵の射程距離はザレムの想定よりもはるかに長く、警備隊のメンバーも近づくのを躊躇している。
 ザレムが考えていた方法を実践するのは難しそうだ。
 それにヤドカリ雑魔は先ほど警備隊が掘った穴を明らかに回避しつつ近づいてくる。ザレムは手を振って警備隊に作戦の変更を伝えた。
 現状、非覚醒者である彼らに手伝いをさせるのは危険すぎる。ザレムはファイアスローワーで敵の触手を焼き尽くすことに決めた。

 雑魔にまず初撃を放ったのはエルバッハ。手に火球を生み出し、それをイソギンチャクへと投げつけた。マギステルのスキル、ファイアーボールだ。火球は空中で爆発し、イソギンチャクの触手をまとめてあぶる。
 エルディラも彼女と同じようにファイアーボールを放つ。狙いは触手の根元の、口の部分。
「あの口のようなところは比較的柔らかそうに見える。試してみる価値は十分にあろう」
 狙い通りにイソギンチャクの口にあたる場所の間近で火球が炸裂し、痛みのせいか雑魔は激しく蠢いた。
 ザレムも二人に続き、ファイアスローワーを扇状に放った。破壊的なエネルギーが雑魔を襲う。さすがにこの三連撃は、雑魔にとってもかなりのダメージとなったようだ。イソギンチャクの触手のいくつかが消滅し、無へと帰した。
 しかしふたたびイソギンチャク雑魔が身を震わせた。もちろん怒りによってである。伸びた触手がハンター達へと襲い掛かる。
 ザレムはムーバブルシールドにより盾でその攻撃を受け止め事なきを得るが、壮介をはじめとした他の数名は触手によって切り裂かれ、その毒によって身体を蝕まれた。
 しかし触手の痛みをものともせず、壮介は日本刀「骨喰」を手に突っ込んだ。
 迎撃するように再び向かってきた触手を今度は見事に斬り飛ばし、ヤドカリのふところに入った壮介は足を狙って二連之業を叩きこむ。しかしヤドカリ雑魔も体を転回し、鋏でその刃を受けた。とはいえ斬撃を無効化できるほどの強度はなく、鋏に大きな傷が二箇所穿たれる。
 お返しとばかりにヤドカリは鋏を壮介目掛けて振るい、壮介は胴をしたたかに打たれた。そこにもう一方の鋏がうなりをあげて迫るが、それは辛くも刀で受け流して直撃を回避する。
 さらなる追撃の素振りを見せるヤドカリ雑魔。
 ハナが壮介を援護しようと五色光符陣を放つ。複数の符が結界を作り出し、雑魔の体を光で焼いた。
 そこに春夜ことヘルシャフトが魔導バイクを走らせ、鋏を迂回するように近づきながら機導砲を放った。マテリアルが一条の光線となってヤドカリの足を撃ち抜き、その動きを鈍らせた。
 その間に壮介は一旦距離を取る。ヤドカリ雑魔の上に宿るイソギンチャク雑魔が、彼を逃すまいと壮介目掛けて触手を繰り出した。
 しかしまりおがその間に割って入り、試作光斬刀「MURASAMEブレイド」で迫る触手を切って捨てた。
 さらにとあるゲームのビーダッシュを彷彿とさせるような足さばきで距離をつめ、ヤドカリに一閃をくれてやることも忘れない。
 雑魔が反撃を試みる頃には、すでにまりおはその場を離れていた。他のハンター達もすでに完全に間合いを取っている。
 雑魔達は悔しそうに鋏や触手を広げ、威嚇した。
 まだまだ巨大な二対の雑魔は健在である。


 エルディラは視線を下へと落とした。
「ヤドカリの方を何とか出来れば、だいぶ戦いやすくなると思うのじゃが……つまりは足じゃ。ヤドカリの足に火線を集めれば、破壊すること叶うやもしれぬ」
 行動で示すように、エルディラの放った火球がヤドカリの足を巻き込むように爆ぜた。
「移動力が奪えれば、ある程度距離を取り続けながら交戦することが楽になるはず。ハイパーライフルならば引き撃ちができるのではないかのう」
 隊長も敵の様子を窺いつつ、エルディラの言葉に熱心に耳を傾けている。
(……まあ、我は銃なんぞサッパリわからぬが)
 というエルディラの心の声はもちろん隊長の耳には聞こえずにすんだ。
 まりおはもがくヤドカリの体を蹴って大きくジャンプし、イソギンチャクの胴体に「MURASAMEブレイド」を思い切り突き立てる。
 ハイパーライフルが全く効果をあげなかった頑丈な体もまりおの攻撃の前には役に立たず、切っ先は深くその肉を抉った。
 壮介もヤドカリに近づき、円舞で敵の攻撃をかいくぐると二連之業でヤドカリの体を切り裂いた。今度は狙い通り足に命中し、大きなダメージを与える。
 ヘルシャフトもその足を狙って機導砲を放った。ハンター達の連続攻撃に耐え切れず、ついにヤドカリの足が一本消滅する。
 ハナも戦馬のまーちゃんに跨りながらヤドカリの側を駆け、五色光符陣による結界で敵を焼いた。
 コンビの危機にイソギンチャク雑魔は触手を全方位に放ち、ヤドカリ雑魔も鋏を激しく振るう。
 その攻撃はハンターたちに決して軽くない傷を負わせたが、彼らの動きを止めるには至らない。むしろ、イソギンチャクの触手が逆にカウンターによってまた数本切断されてしまった。
 エルバッハはエクステンドレンジを併用し、アイスボルトにてイソギンチャク雑魔の弱点と思しき口のあたりを狙う。氷の矢が深く突き刺さり、イソギンチャクはヤドカリの上で大きくのけぞった。
 ザレムも触手の数が減ったことに気がつくとデルタレイによる攻撃に切り替える。光の三角形から光線が飛び出し、雑魔を襲う。
 ハンター達の猛攻の前に、ついにヤドカリを守るように覆いかぶさっていたイソギンチャク雑魔の命が尽きた。一部の残骸を除いて雑魔の体は消滅、ヤドカリ雑魔は無防備な体を晒すことになる。
 呆然とするかのように動きをとめ、やがてヤドカリの習性か警備隊が掘っていた穴に隠れるように逃げ込んだ雑魔だったが……。
「引き込もったら無敵だなんて勘違いだよって、去年も言ったよね?」
 駆けて来たまりおが無情にもその体に熱湯を浴びせた。
 もがくヤドカリ雑魔にたちまちハンター達が襲い掛かり……。
 やがて、ヤドカリ雑魔もイソギンチャク雑魔の後を追うかのように海辺から姿を消すのであった。


 悪のコンビは去った。しかし、綺麗な海は雑魔達の残骸によって随分と汚れてしまっている。自分たちの仕事とばかりに沿岸警備隊の面々が清掃活動を開始した。
 そんな中、率先して雑魔の残骸を片付けているのはハナ。
「だってこれの片付け、依頼人さんたちだけに任せちゃったら可哀想。大変すぎるじゃないですかぁ」
「ありがとうございます!」
 ハナの近くで作業を行っているのはボブとジョン。決して浅くない傷を負っていた二人だが、その表情は嬉しそうだ。
 ハナたちが海辺を綺麗にしている間、他のハンターたち、そして警備隊は今回の戦いについて言葉を交わしている。
「戦法を確立することは間違ってはいないと思いますが、今回はそれで対処できると思考停止に陥っていたと思います」
 エルバッハの周りにも数人の警備隊が集まり、耳を傾けていた。
「ですので、想定外の事態は起こりうるということを常に心して、様々なケースを想定した戦法などを試した方がいいのではないかと思います」
 今回の事態はヤドカリ雑魔相手に勝てる作戦を編み出したことが、逆に油断につながったと考えているエルバッハ。
 警備隊にとっては耳の痛い話であろうが、彼らも図星だと思っているのか頷いている。
 ザレムも新たな転倒作戦のレクチャーを行っていた。
 今回は残念ながら適用できなかったが、触手を伸ばしてこないタイプの敵ならば効果はあるはずだ。
 壮介も先ほどの戦いでイソギンチャク雑魔にファイアーボールが効果をあげていたことを例にあげ、また同系統の雑魔が出てきたら火と油で焼いてみてはどうかと提案している。
 そして警備隊長の前に立ったのは仮面のダークヒーロー、ヘルシャフト。
 戸惑う隊長をよそに彼は、
 ――この規模の敵は救援を待て
 ――毎回同じ敵と油断しない
 ――視界悪い時は特に注意
 ――安全な範囲で尽力せよ
 ――地形利用や網等で敵の足を止めて時間稼ぎという方法もある
 ――移動手段や攻撃手段を潰すことだけでもいい
 ――各種武器の属性攻撃を試して情報収集せよ
 ――彼我の戦力差を見極める事、自分達に出来る事だけをしろ
 ――守るための戦いで死者を出したら本末転倒だろう
 というようなことを言い聞かせ終わると、魔導バイク「ディアーナ」を走らせて颯爽と警備隊の下から去っていった。
 呆然としたまま、それを見送る警備隊長。
「ヘルシャフト……一体何者なんだ……」
 そうつぶやく隊長の側に、今度はエルディラが近づく。
「ううむ……別段、機嫌を損ねるようなことを言うつもりは無いのじゃがな?」
 と前置きし、少し言いづらそうに口を開いた。
「やはりハイパーライフルでは、単体火力が心許ない。こういうときこそ隊長殿の腕の見せ所であろうよ」
 隊長はエルディラの言葉によろめいた。実際ハンターたちの攻撃はイソギンチャクの体をやすやすと傷つけていたのだから、こう言われても仕方ないのであるが。
「そ、それは……たしかにちょっと火力不足かなと思うこともありますが……雑魔もだんだん手強くなってきていますし、考えておくべきかもしれません……」
 と難しそうな話をしているところに、片付けを終えていつの間にかバンドゥフリルビキニ姿になっているハナがパタパタと駆け寄ってきた。
 下から見上げる目線で可愛く笑い、
「ありがとうございますぅ。普段海の平和が保たれてるのは貴方達のおかげですぅ。観光客がたくさん来る海目指してこれからもどんどんご依頼下さいねぇ」
「は、はいっ!! これからも海の平和のために頑張ります!」
 と隊長を差し置いて答えたのはボブである。警備隊たちは全員嬉しそうにポーズを取る。
「あぁん、ザレムくん、泳いでから帰りましょうよ~」
 しかし警備隊たちを尻目に、ハナは片思いの相手らしいザレムの下に可愛く駆けていった。がっくりと肩を落とす警備隊の面々。
 そんな中、頭や肩にペットを乗せた男が飲み物が入った袋を手にやって来た。
 見知らぬ顔に首を傾げる警備隊長達に、男は口を開く。
「友人のヘルシャフトが世話になった。俺ともよろしく頼む」
 男は咲月 春夜。言うまでもないがヘルシャフトの正体である。

 やがて彼を含めたハンター達と警備隊の面々は、平和を取り戻した海で夏を満喫したのだった。

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重体一覧

参加者一覧


  •  (ka0824
    人間(蒼)|16才|女性|疾影士
  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 今を歌う
    エルディラ(ka3982
    ドワーフ|12才|女性|魔術師
  • 三千世界の鴉を殺し
    連城 壮介(ka4765
    人間(紅)|18才|男性|舞刀士
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師

  • 咲月 春夜(ka6377
    人間(蒼)|19才|男性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/07/21 07:26:13
アイコン 海生雑魔?との戦いリターンズ
星野 ハナ(ka5852
人間(リアルブルー)|24才|女性|符術師(カードマスター)
最終発言
2016/07/22 00:01:34