ゲスト
(ka0000)
シモフリバーガー ~廃墟の集落~
マスター:天田洋介
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
- 1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/07/26 19:00
- 完成日
- 2016/08/01 16:44
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
グラズヘイム王国・古都【アークエルス】東方の森に、かつてナガケと呼ばれる集落が存在した。
集落で行われていた畜産は幻獣の獅子鷹『メニュヨール』によって崩壊させられる。家畜の仔攫いが激増したからだ。
集落解散の憂き目に遭い、青年ガローア・ラグアは父親のマガンタと共に放浪の身となる。父が亡くなってからも根無し草な生き方をしてきたガローアだが、覚悟を決めた。ハンターの力を借りてメニュヨール退治に成功する。
その後、ガローアは古都でドワーフの青年『ベッタ』と出会う。意気投合した二人は集落の復興に動きだす。
二人はベッタの故郷に棲息していた幻獣『幻の青』を家畜として育てることにした。その味がリアルブルーの高級和牛霜降り肉を彷彿させたところから、『シモフリ』と呼称することとなる。
シモフリ六頭はオークの樹木が並ぶ放牧場へと放たれた。樹木の上で暮らす生態と思われたが、危険がなければ地表で暮らすことがわかる。好物は木の実だが玉蜀黍の粒にも旺盛な食欲をみせた。
他に乳牛一頭と鶏の雌鳥六羽も飼うことで、毎日新鮮な牛乳と鶏卵が手に入るようになった。
荒れ地を畑として開墾しだした頃、紅の兎のような幻獣二体が出没。柵を壊されてしまう。それが過ぎ去ると雑魔の巨大蜂が飛来。雑魔蜂はハンターによって巣ごと退治された。
森が紅葉に染まる秋、ある商人一家が集落に泊まった。シモフリ料理を味わった商人一家はいたく気に入ってくれる。シモフリ肉を市場へだす際には是非に声をかけてくれと約束を交わした。
シモフリの仔が産まれ、やがて日が経つ。ある寒い日の早朝、以前に柵を壊して姿を消した赤い兎二羽が放牧場の片隅に倒れていた。放ってはおけずに看病すると、二羽は元気を取り戻して二人に懐く。
賊が森で迷った一団を装って集落を奪おうとしたときもある。滞在中のハンターの機転で正体を看破して事なきを得た。
仔シモフリは順調に育つ。仔が乳離れをした頃にガローアとベッタは気づく。甘くてクセの少ないシモフリの乳を使えば素晴らしい乳製品が作れるのではないかと。
ハンターの協力もあってシモフリ乳を使ったチーズ、バター、ヨーグルトが完成。しかし売り捌くには古都での商売が不可欠だった。
春が到来。一部玉蜀黍の粒が熊に食べられてしまったものの、ハンターが退治。開墾した畑での粒蒔きは無事に行われる。
シモフリ乳を使った乳製品の販売路にも光明が差す。商人タリアナの協力によって古都で『パン屋シモフリ堂』が開店することとなった。
店は新たに雇った女性三人に任せられる。
マリーシュは店長兼事務会計。セリナとチナサはパン焼き職人兼売り子として働いてもらう。ハンターの協力のおかげで、シモフリ堂は好スタートを切った。
夏に合わせて機導術式冷蔵庫が馬車と厨房に設置される。売りだされたシモフリ乳のアイスクリームは大好評。飛ぶように売れるのだった。
ここは森深いナガケ集落。
「こりゃ大変なことや」
「当分は一店舗でやっていくしかなさそうだね」
畜産の仕事が一段落したベッタとガローアは木陰で休む。話題にしていたのは古都で営業中の『パン屋シモフリ堂』についてだ。
シモフリ乳のアイスクリーム需要は凄まじかった。
現在はできるかぎりの頻度でシモフリ乳を含めた食材を運んでいる。乗り込むのは機導術式冷蔵庫付きの馬車。集落と古都間を一日で往復するのは難しい。日中をかけて相手側に辿り着くのがやっとの状況だ。品切れの際には牛乳使用のアイスクリーム販売も致し方ないところである。
それはそれとして、ついに念願のシモフリ肉出荷日が迫っていた。外部には流通させず、しばらくはシモフリ堂でのハンバーガーやホットドッグ用ソーセージの食材として使われる。
「さてお味は……」
「どないなもんか。野生肉と違うんやろか」
ある日の夕食。ガローアとベッタは畜産シモフリ肉のステーキを頂いた。口にした途端、二人は目を丸くする。豊かな味は野生のシモフリ肉と同じ。それでいて肉質は柔らかかった。
集落での畜産は何かと忙しい。新たに人員を増やす予定だが、すぐに整えられるはずもない。ガローアが古都のハンターズソサエティー支部へと立ち寄った。受付嬢に頼みたい仕事の内容を話す。
「シモフリ堂での調理や販売の手伝いをしてもらいたいんです。それと馬車で古都と集落の往復してシモフリの乳や肉を運ぶ仕事をお願いしたいんですが――」
熱心に説明するガローアの瞳は輝きで満ちていた。
集落で行われていた畜産は幻獣の獅子鷹『メニュヨール』によって崩壊させられる。家畜の仔攫いが激増したからだ。
集落解散の憂き目に遭い、青年ガローア・ラグアは父親のマガンタと共に放浪の身となる。父が亡くなってからも根無し草な生き方をしてきたガローアだが、覚悟を決めた。ハンターの力を借りてメニュヨール退治に成功する。
その後、ガローアは古都でドワーフの青年『ベッタ』と出会う。意気投合した二人は集落の復興に動きだす。
二人はベッタの故郷に棲息していた幻獣『幻の青』を家畜として育てることにした。その味がリアルブルーの高級和牛霜降り肉を彷彿させたところから、『シモフリ』と呼称することとなる。
シモフリ六頭はオークの樹木が並ぶ放牧場へと放たれた。樹木の上で暮らす生態と思われたが、危険がなければ地表で暮らすことがわかる。好物は木の実だが玉蜀黍の粒にも旺盛な食欲をみせた。
他に乳牛一頭と鶏の雌鳥六羽も飼うことで、毎日新鮮な牛乳と鶏卵が手に入るようになった。
荒れ地を畑として開墾しだした頃、紅の兎のような幻獣二体が出没。柵を壊されてしまう。それが過ぎ去ると雑魔の巨大蜂が飛来。雑魔蜂はハンターによって巣ごと退治された。
森が紅葉に染まる秋、ある商人一家が集落に泊まった。シモフリ料理を味わった商人一家はいたく気に入ってくれる。シモフリ肉を市場へだす際には是非に声をかけてくれと約束を交わした。
シモフリの仔が産まれ、やがて日が経つ。ある寒い日の早朝、以前に柵を壊して姿を消した赤い兎二羽が放牧場の片隅に倒れていた。放ってはおけずに看病すると、二羽は元気を取り戻して二人に懐く。
賊が森で迷った一団を装って集落を奪おうとしたときもある。滞在中のハンターの機転で正体を看破して事なきを得た。
仔シモフリは順調に育つ。仔が乳離れをした頃にガローアとベッタは気づく。甘くてクセの少ないシモフリの乳を使えば素晴らしい乳製品が作れるのではないかと。
ハンターの協力もあってシモフリ乳を使ったチーズ、バター、ヨーグルトが完成。しかし売り捌くには古都での商売が不可欠だった。
春が到来。一部玉蜀黍の粒が熊に食べられてしまったものの、ハンターが退治。開墾した畑での粒蒔きは無事に行われる。
シモフリ乳を使った乳製品の販売路にも光明が差す。商人タリアナの協力によって古都で『パン屋シモフリ堂』が開店することとなった。
店は新たに雇った女性三人に任せられる。
マリーシュは店長兼事務会計。セリナとチナサはパン焼き職人兼売り子として働いてもらう。ハンターの協力のおかげで、シモフリ堂は好スタートを切った。
夏に合わせて機導術式冷蔵庫が馬車と厨房に設置される。売りだされたシモフリ乳のアイスクリームは大好評。飛ぶように売れるのだった。
ここは森深いナガケ集落。
「こりゃ大変なことや」
「当分は一店舗でやっていくしかなさそうだね」
畜産の仕事が一段落したベッタとガローアは木陰で休む。話題にしていたのは古都で営業中の『パン屋シモフリ堂』についてだ。
シモフリ乳のアイスクリーム需要は凄まじかった。
現在はできるかぎりの頻度でシモフリ乳を含めた食材を運んでいる。乗り込むのは機導術式冷蔵庫付きの馬車。集落と古都間を一日で往復するのは難しい。日中をかけて相手側に辿り着くのがやっとの状況だ。品切れの際には牛乳使用のアイスクリーム販売も致し方ないところである。
それはそれとして、ついに念願のシモフリ肉出荷日が迫っていた。外部には流通させず、しばらくはシモフリ堂でのハンバーガーやホットドッグ用ソーセージの食材として使われる。
「さてお味は……」
「どないなもんか。野生肉と違うんやろか」
ある日の夕食。ガローアとベッタは畜産シモフリ肉のステーキを頂いた。口にした途端、二人は目を丸くする。豊かな味は野生のシモフリ肉と同じ。それでいて肉質は柔らかかった。
集落での畜産は何かと忙しい。新たに人員を増やす予定だが、すぐに整えられるはずもない。ガローアが古都のハンターズソサエティー支部へと立ち寄った。受付嬢に頼みたい仕事の内容を話す。
「シモフリ堂での調理や販売の手伝いをしてもらいたいんです。それと馬車で古都と集落の往復してシモフリの乳や肉を運ぶ仕事をお願いしたいんですが――」
熱心に説明するガローアの瞳は輝きで満ちていた。
リプレイ本文
●
早朝、ハンター一行は転移門を通過して古都のシモフリ堂を訪れる。
「あ、ハンターのみなさん! おはようございます」
店舗の前に停まっていた馬車にはガローアの姿があった。
簡単に挨拶を交わし、一行は馬車へ荷を積み込むのを手伝う。玄間 北斗(ka5640)とレーヴェ・W・マルバス(ka0276)は輸送担当として一緒に集落へ向かうこととなる。
馬車を見送った全員はさっそく開店準備を始めるのだった。
●
夕方、三人を乗せた冷蔵庫付き馬車は集落へと到着。玄間北斗とレーヴェは水浴びをして汗を流す。そしてベッタ特製のシモフリ肉料理で空腹を満たしてから就寝した。
そして翌朝。
「力仕事は任せろー。ドワーフの腕っぷしみせてやらー」
レーヴェが重い木箱を軽々と担いで車内の冷蔵庫へと運んでいく。ガローア、ベッタ、玄間北斗も同じ作業をこなして早くに終わる。
「野営用の食料や水を忘れないようにするのだ~」
玄間北斗は忘れ物がないか再点検。御者台へ座り、昨晩のうちに検討した地図を広げてレーヴェと眺める。二人で輸送経路や休憩地点を確かめておく。
「玉蜀黍、頼んだで。シモフリの食欲が旺盛でな。畑のはもうちょいなんや」
「忘れずに買ってくるのだぁ~」
出立の前にベッタが玄間北斗に買い物メモを手渡した。
「急がば回れ。焦らないあせらないで行くのじゃ」
最初の御者役はレーヴェが務める。手綱が撓って動きだす。木漏れ日の森道をゆっくりと走った。
馬達に無理をさせないよう、二時間に一度は休憩をとる。
「冷蔵庫はちゃんと動いておるのじゃ」
「お昼にするのだぁ~」
ベッタ特製のシモフリドックが二人の昼弁当だ。冷めていても、とてもおいしかった。
二日目の夕方に古都へと辿り着く。
シモフリ堂の裏口で食材の荷を下ろす。手が空いていた仲間達も手伝ってくれる。
荷の中には当分使わない食材もある。下処理済みのシモフリ・モツが詰まった木箱も店舗内の大きな冷凍・冷蔵庫へと運び込まれるのだった。
●
時は遡って初日早朝。
「えと。あの……制服はあるのです? エプロンでもいいのですが、はい」
「私、だいぶ大きいサイズじゃないと入らないかも……」
カティス・ノート(ka2486)とマルグリット・ピサン(ka4332)に訊ねられたマリーシュが「もちろんよ」とウインクする。控え室には制服一式が用意されていた。
全員が白地に赤黒を交えたフリル付きのスカートに着替える。被るキャップにはシモフリ堂の店名が目立つ。
「制服きましたよぉ! 新たなアピールポイントがぁ! ……アピール相手が来てませんけどぉ」
星野 ハナ(ka5852)はくるりと回り、ひらりとスカートの裾を広げてみせた。
ミオレスカ(ka3496)はキャップの鍔をあげつつ氷菓用の設備を点検していく。
「後は乳の入荷量次第ですね」
機材横の木箱にはアイス用ワッフルコーンがどっさり。セリナとチナサがパン作りの合間に作ってくれたようだ。
調理場の火艶 静 (ka5731)は手にしたナイフでパンズを半分に切っていく。
(レーヴェさんの次に私が輸送に付き合いましょう。それまでは裏方に徹してみなさんのお手伝いを)
開店後もそのまま調理を担当する。
早朝第一弾のパンが店内の棚に並べられた。来客者達が次々と買い求める。
「子供の頃ね、近所のおじさんがパン屋さんだったの。朝は三時前からパンを焼く準備を始めて夜も十時近くまで次の日のパンの準備をして。大変そうだなぁって子供心に思ってたのよ」
「こ、ここでもそんな感じです……」
マリィア・バルデス(ka5848)とチナサが粉袋を担いで調理場へと運び込む。それを使って昼食販売用のパンを捏ねた。
「いらっしゃいませぇ。本日は入荷したばかりのシモフリ肉を使用したシモフリ肉バーガーとシモフリ肉ドッグがお勧めですぅ」
専用カウンターに立った星野ハナが客から注文を受ける。
注文はすぐさま調理場へ。
「ステーキバーガー用のお肉は柔らかくなるよう下ごしらえしておいた方がよさそうですね。よく包丁で叩いて、スジや繊維は切って、おろした玉ねぎに漬けたり――」
マルグリットが熱した鉄板の上にバーガー用パテを並べていく。焼き時間は専用の砂時計で計る。その間にも他の作業が進められた。
火艶静によってオーブンで軽く温められたパンズにバターが塗られる。すべてが揃い、バーガーが完成した。
持ち帰りの客にはカウンターで手渡される。店内飲食の場合は給仕が卓まで運ぶ。
「ご、ご注文のシモフリ肉を贅沢に使ったシモフリバーガーとシモフリドッグなのです」
ぎこちなさは残ったものの、カティスは男性客の前で笑顔を絶やさずに接する。カウンターへ戻る途中、思わずつんのめってしまう。振り向くと女の子にスカートの裾を引っ張られていた。
「シモフリアイス、ちょうだい」
女の子が硬貨を差しだす。屈んだカティスは女の子と目の高さを合わせてから「少々お待ちを」と微笑んだ。
カウンター内のミオレスカが注文を受けてアイスを用意する。
(アイスはやっぱり大人気ですね。まだ涼しいうちから注文が引っ切りなしですし)
ミオレスカが作ったアイスはカティスを介して女の子の手へ。ベリージャムのトッピング付きである。ジャムを事前に用意したのはマルグリットであった。
大忙しで、誰もが気がつくと夕方になっていた。パンが売り切れたところで店仕舞い。さっきまで混んでいた店内が打って変わって静かになる。
「昼間は忙しくて簡単な賄いしか出せなくてゴメンね」
「運送のお二人には後で食べてもらいますから」
セリナとチナサが人数分のバーガーとドッグを大きなトレイで運んできた。ランタンの下、飲食コーナーの卓で晩食が始まる。
「えっと、珈琲と紅茶、冷たい飲み物もあります」
カティスが用意した飲み物も並べられた。
「はぅぅ、おいひぃれすぅ!」
星野ハナは仕事中に何度も沸きあがる食欲を我慢してきた。そのバーガーを目の前にしてここぞとばかりに頬張る。口一杯に広がる肉汁が素晴らしくて、止まらない。
「人気なのがわかりますね」
「これだけ美味しいんだもの、みんなに食べて貰いたくなっちゃうわよね……」
火艶静とマリィアはシモフリ料理の美味さをあらためて味わう。肉と脂のハーモニーが口蓋で躍っていた。
「うーん……。決めました。ドッグは明日にするとして、バーガーを食べましょう」
マルグリットは悩んだ末に大きめのバーガーをがぶりと頬張った。デザートとしてアイスも頂く。濃厚で甘いシモフリ乳のアイスはふわふわな舌触りだ。
ミオレスカもバーガーを食して満足げな笑みを浮かべる。
「見目の悪くなったものとかを試食させてもらえればと思っていたのですが、せっかくですし。この味なら集落の牧場拡大のための出資をお願いできるかもしれませんね」
ミオレスカが脳裏に思い浮かべていたのは、シモフリ堂の出資者でもある商人タリアナであった。
「柔らかくてジューシーなお肉にシャキシャキなレタスの歯応えは、一口食べると堪らないのですよ♪」
カティスは最後の欠片を名残惜しそうに口の中へ。そして躍るような足取りでアイスを取りにいくのだった。
二日目の夕方には馬車が戻ってくる。
「とても繁盛しているのう」
「これは眼福なのだぁ~」
荷の運び込みが一段落した玄間北斗とレーヴェは控え室の小窓から店内を眺めた。華やかな制服姿のおかげで店内は雰囲気はとてもよい。客足の伸びはあきらかだ。
「お腹空いたでしょう。どうぞ召し上がれ」
ミオレスカが二人のためにバーガーセットを運んできてくれる。
「シモフリ料理を待っていたのだぁ~」
「やはり違うのじゃ」
作りたてのバーガーは格別の味。その美味さに溜まっていた疲れが吹き飛ぶのであった。
●
馬車での輸送は玄間北斗が固定で相棒が入れ替わる。
「それでは行って参ります」
二度目の往復は火艶静が担当した。索敵や警戒は玄間北斗が得意なので彼女は御者役を務める。
草原地帯を抜けてやがて森の中へ。青々とした夏の植物に囲まれながら森道を進む。昼食は火艶静が腕を振るう。
「ドッグ用のソーセージを炙ってみました。どうでしょう?」
「すっごく美味しいのだぁ~♪」
適度に休憩を取りつつ集落へと向かう。獣がよく出没する一帯では緊張したものの、何事もなく通り過ぎた。
やがて集落が見えてくると、火艶静は手に掛けていた鞘から手を離す。
集落でも食事係を務めた火艶静であった。
三度目の同行はマリィアが務める。
「α、γ、私は明日の夜帰ってくるからそれまで待っていてもいいけど……」
マリィアの言葉に愛犬二頭は悲しそうに小さく吠えた。
「ついてくるのね? それじゃ馬車を見失わないように。途中で兎や鳥を狩ったら持ってらっしゃい」
こうして二頭も同行することとなった。早めに到着したので日暮れまで牧畜を手伝う。以前に命名したシモフリのδを見つけてほっと胸をなで下ろす。人見知りする仔がすっかり大人の体格になっていた。
「マリィアさん、ため息なんてついちゃって」
「だって出荷が始まったって聞いたから。もう精肉にされちゃったかと思ったんだもの。それなら名付け親の私が全部買わなきゃって思って、慌てて来たのよ……」
「名前のあるシモフリは繁殖用だから、勝手にどうこうするつもりはないよ。安心して」
「ねぇガローア、シモフリ一頭からどれくらい精肉が取れるのかしら。豚だと五〇kgくらい、牛だと三五〇kgくらいとかいうじゃない?」
「シモフリは毛が長いので大きく見えるけど、その中間ぐらいかな」
「一頭買いするなら、いくらぐらい?」
マリィアの問いにガローアは一頭まるごとの値段は未定だと答える。シモフリ堂用の卸値だが、利益はとっているものの宣伝費用として割り切っている部分もあるようだ。
マリィアはミオレスカのアオタロウの様子も確かめる。日中はδや他の仲間達と一緒にオークの根元でのんびりと過ごしていた。
集落での晩食は愛犬二頭が獲った鴨肉鍋と相成った。
「本日は事故無しとでましたぁ~。特に危険はなさそうですけど気を引き締めて参りましょぉ~」
四度目の馬車出立時、玄間北斗に同行する星野ハナが旅路を占う。それは当たり、何事もなく集落へと辿り着いた。
宵の口、彼女は出荷の手伝いとしてシモフリの乳搾りを手伝った。
「動かないでくださいねぇ~」
青いまん丸の牝達はたくさんの乳をだしてくれる。それ以前に絞られた乳はチーズやバター、またはヨーグルトに加工されていた。
翌日には古都へ。街並みが見えるまでもうすぐの暮れなずむ頃、物盗り集団に襲われる。
「ふふん、私が居るのに積荷を狙うなんて百万年早いですぅ」
星野ハナが打った符によって物盗り等は五色光符陣の結界に囲まれて目が眩んだ。馬車は安全と積み荷を優先して先を急ぐ。
シモフリ堂での晩食時、星野ハナは武勇伝を語るのだった。
●
レーヴェは三日目から主に調理場を手伝う。
「ここに置いておけば大丈夫じゃろ」
冷蔵庫の片隅に私物を隠す。それから研いだ包丁でシモフリ肉を切っていったのだが、そのときに確かな手応えを感じ取った。
「間違いない。これは売れるのじゃ」
とても柔らかい肉質に触った体温だけでほんのりと溶けていく脂身。この肉が美味くないはずがないと。
やり甲斐を感じつつ、レシピ通りに肉の各部位を挽いていく。混ぜ合わせた挽肉に他の食材や香辛料を加えて、当日に使う分のパテを完成させた。
「うむ。バーガーの在庫は足りそうであるな。熟成も充分じゃ。ソーセージの数は揃っておるが、アイスの乳は心持たないのう。これを最後に残りは明日の分じゃ」
定期的に食材の残量を確認して売り子に報告する。
「そういうわけじゃ」
「これの次は牛乳ですね」
レーヴェはアイスを作るミオレスカに本日分最後のシモフリ乳を手渡す。カウンターのカティスにも伝えた。
「わ、わかりました。次のアイスが終わったら牛乳にチェンジですね」
カティスは事前に売り切れの札を用意。予定分が売り切れたところで告知板に貼り付ける。
「ほう、これが噂の高級バーガーか」
「はい! すごいんですよ、ここの部分のお肉。唇でかみ切れるぐらい柔らかいから、少しの工夫でバーガーにそのまま使えるんです」
空いた時間、レーヴェはマルグリットがシモフリステーキバーガーを作る過程を見学した。
「これはうまそうじゃ……」
脳髄を刺激する暴力的な肉の焼けるにおいに、思わず唾を飲み込むレーヴェであった。
●
最終日の店仕舞い後。店内で晩食の席が設けられた。
「ガローアさんとベッタさんが持たせてくれたお肉なのだぁ~♪」
玄間北斗がシモフリ肉の中で一番美味しい部位を預かってくる。
「これは青世界でも簡単に味わえる肉ではないわね……」
マリィアがナイフとフォークでシモフリ肉のステーキを味わう。愛犬二頭にも軽く炙った生肉が用意されていた。
「よいお肉ですね。明日への活力に繋がります」
火艶静は一口食べる度に微笑みを浮かべる。
「バーガーもうまひぃですけどぉ、このおにぃくぅはうますひぃれすぅ~♪」
星野ハナの感想は興奮しすぎて意味が伝わらない。
「このお肉のお店、だせたら大繁盛ですね」
ミオレスカには二日前に現れた来店者を話題にした。商人タリアナが繁盛の様子に満足していたのである。
「夢は広がるのですよ。美味しいのです♪」
カティスはほっぺたが落ちそうな気がして、食べる度についつい頬を押さえてしまう。
「量は違いますが、ステーキバーガーはこのステーキと同等の味ですね。高いですけど少しずつ口コミが広がると思います」
マルグリットを含めて全員がステーキバーガー用の余った肉片を味見したことがある。将来を見据えたガローアの商売的戦略だと誰もが気づく。
「かなりの贅沢なのだぁ~♪」
玄間北斗はステーキを味わいながら、集落でガローアとベッタが試行錯誤していたことを思いだす。それはシモフリのモツを使った冬用の鍋だ。くさみを消し去り、美味さだけを引きだすのに苦労していた。
「この日、この時のために用意したものがあるのじゃ!」
レーヴェは自ら焼いたステーキを卓へと運んで席につく。
傍らに置いてあったのは冷蔵庫でキンキンに冷やしたエール。塩気を強めにして焼いたステーキを豪快に噛み千切る。口の中で弾ける肉汁に頬を振るわせつつ、それをエールで流し込んだ。
「プハー。うむ! 至高の味! ただ只管に美味ければそれでよし!」
レーヴェの満足げな様子に仲間達が微笑んだ。
マリーシュ、セリナとチナサも充分にステーキ肉を味わう。
ハンター一行の帰りに合わせて新しい従業員が増える。ナガケ集落、そしてシモフリ堂の拡大はまだまだこれからであった。
早朝、ハンター一行は転移門を通過して古都のシモフリ堂を訪れる。
「あ、ハンターのみなさん! おはようございます」
店舗の前に停まっていた馬車にはガローアの姿があった。
簡単に挨拶を交わし、一行は馬車へ荷を積み込むのを手伝う。玄間 北斗(ka5640)とレーヴェ・W・マルバス(ka0276)は輸送担当として一緒に集落へ向かうこととなる。
馬車を見送った全員はさっそく開店準備を始めるのだった。
●
夕方、三人を乗せた冷蔵庫付き馬車は集落へと到着。玄間北斗とレーヴェは水浴びをして汗を流す。そしてベッタ特製のシモフリ肉料理で空腹を満たしてから就寝した。
そして翌朝。
「力仕事は任せろー。ドワーフの腕っぷしみせてやらー」
レーヴェが重い木箱を軽々と担いで車内の冷蔵庫へと運んでいく。ガローア、ベッタ、玄間北斗も同じ作業をこなして早くに終わる。
「野営用の食料や水を忘れないようにするのだ~」
玄間北斗は忘れ物がないか再点検。御者台へ座り、昨晩のうちに検討した地図を広げてレーヴェと眺める。二人で輸送経路や休憩地点を確かめておく。
「玉蜀黍、頼んだで。シモフリの食欲が旺盛でな。畑のはもうちょいなんや」
「忘れずに買ってくるのだぁ~」
出立の前にベッタが玄間北斗に買い物メモを手渡した。
「急がば回れ。焦らないあせらないで行くのじゃ」
最初の御者役はレーヴェが務める。手綱が撓って動きだす。木漏れ日の森道をゆっくりと走った。
馬達に無理をさせないよう、二時間に一度は休憩をとる。
「冷蔵庫はちゃんと動いておるのじゃ」
「お昼にするのだぁ~」
ベッタ特製のシモフリドックが二人の昼弁当だ。冷めていても、とてもおいしかった。
二日目の夕方に古都へと辿り着く。
シモフリ堂の裏口で食材の荷を下ろす。手が空いていた仲間達も手伝ってくれる。
荷の中には当分使わない食材もある。下処理済みのシモフリ・モツが詰まった木箱も店舗内の大きな冷凍・冷蔵庫へと運び込まれるのだった。
●
時は遡って初日早朝。
「えと。あの……制服はあるのです? エプロンでもいいのですが、はい」
「私、だいぶ大きいサイズじゃないと入らないかも……」
カティス・ノート(ka2486)とマルグリット・ピサン(ka4332)に訊ねられたマリーシュが「もちろんよ」とウインクする。控え室には制服一式が用意されていた。
全員が白地に赤黒を交えたフリル付きのスカートに着替える。被るキャップにはシモフリ堂の店名が目立つ。
「制服きましたよぉ! 新たなアピールポイントがぁ! ……アピール相手が来てませんけどぉ」
星野 ハナ(ka5852)はくるりと回り、ひらりとスカートの裾を広げてみせた。
ミオレスカ(ka3496)はキャップの鍔をあげつつ氷菓用の設備を点検していく。
「後は乳の入荷量次第ですね」
機材横の木箱にはアイス用ワッフルコーンがどっさり。セリナとチナサがパン作りの合間に作ってくれたようだ。
調理場の火艶 静 (ka5731)は手にしたナイフでパンズを半分に切っていく。
(レーヴェさんの次に私が輸送に付き合いましょう。それまでは裏方に徹してみなさんのお手伝いを)
開店後もそのまま調理を担当する。
早朝第一弾のパンが店内の棚に並べられた。来客者達が次々と買い求める。
「子供の頃ね、近所のおじさんがパン屋さんだったの。朝は三時前からパンを焼く準備を始めて夜も十時近くまで次の日のパンの準備をして。大変そうだなぁって子供心に思ってたのよ」
「こ、ここでもそんな感じです……」
マリィア・バルデス(ka5848)とチナサが粉袋を担いで調理場へと運び込む。それを使って昼食販売用のパンを捏ねた。
「いらっしゃいませぇ。本日は入荷したばかりのシモフリ肉を使用したシモフリ肉バーガーとシモフリ肉ドッグがお勧めですぅ」
専用カウンターに立った星野ハナが客から注文を受ける。
注文はすぐさま調理場へ。
「ステーキバーガー用のお肉は柔らかくなるよう下ごしらえしておいた方がよさそうですね。よく包丁で叩いて、スジや繊維は切って、おろした玉ねぎに漬けたり――」
マルグリットが熱した鉄板の上にバーガー用パテを並べていく。焼き時間は専用の砂時計で計る。その間にも他の作業が進められた。
火艶静によってオーブンで軽く温められたパンズにバターが塗られる。すべてが揃い、バーガーが完成した。
持ち帰りの客にはカウンターで手渡される。店内飲食の場合は給仕が卓まで運ぶ。
「ご、ご注文のシモフリ肉を贅沢に使ったシモフリバーガーとシモフリドッグなのです」
ぎこちなさは残ったものの、カティスは男性客の前で笑顔を絶やさずに接する。カウンターへ戻る途中、思わずつんのめってしまう。振り向くと女の子にスカートの裾を引っ張られていた。
「シモフリアイス、ちょうだい」
女の子が硬貨を差しだす。屈んだカティスは女の子と目の高さを合わせてから「少々お待ちを」と微笑んだ。
カウンター内のミオレスカが注文を受けてアイスを用意する。
(アイスはやっぱり大人気ですね。まだ涼しいうちから注文が引っ切りなしですし)
ミオレスカが作ったアイスはカティスを介して女の子の手へ。ベリージャムのトッピング付きである。ジャムを事前に用意したのはマルグリットであった。
大忙しで、誰もが気がつくと夕方になっていた。パンが売り切れたところで店仕舞い。さっきまで混んでいた店内が打って変わって静かになる。
「昼間は忙しくて簡単な賄いしか出せなくてゴメンね」
「運送のお二人には後で食べてもらいますから」
セリナとチナサが人数分のバーガーとドッグを大きなトレイで運んできた。ランタンの下、飲食コーナーの卓で晩食が始まる。
「えっと、珈琲と紅茶、冷たい飲み物もあります」
カティスが用意した飲み物も並べられた。
「はぅぅ、おいひぃれすぅ!」
星野ハナは仕事中に何度も沸きあがる食欲を我慢してきた。そのバーガーを目の前にしてここぞとばかりに頬張る。口一杯に広がる肉汁が素晴らしくて、止まらない。
「人気なのがわかりますね」
「これだけ美味しいんだもの、みんなに食べて貰いたくなっちゃうわよね……」
火艶静とマリィアはシモフリ料理の美味さをあらためて味わう。肉と脂のハーモニーが口蓋で躍っていた。
「うーん……。決めました。ドッグは明日にするとして、バーガーを食べましょう」
マルグリットは悩んだ末に大きめのバーガーをがぶりと頬張った。デザートとしてアイスも頂く。濃厚で甘いシモフリ乳のアイスはふわふわな舌触りだ。
ミオレスカもバーガーを食して満足げな笑みを浮かべる。
「見目の悪くなったものとかを試食させてもらえればと思っていたのですが、せっかくですし。この味なら集落の牧場拡大のための出資をお願いできるかもしれませんね」
ミオレスカが脳裏に思い浮かべていたのは、シモフリ堂の出資者でもある商人タリアナであった。
「柔らかくてジューシーなお肉にシャキシャキなレタスの歯応えは、一口食べると堪らないのですよ♪」
カティスは最後の欠片を名残惜しそうに口の中へ。そして躍るような足取りでアイスを取りにいくのだった。
二日目の夕方には馬車が戻ってくる。
「とても繁盛しているのう」
「これは眼福なのだぁ~」
荷の運び込みが一段落した玄間北斗とレーヴェは控え室の小窓から店内を眺めた。華やかな制服姿のおかげで店内は雰囲気はとてもよい。客足の伸びはあきらかだ。
「お腹空いたでしょう。どうぞ召し上がれ」
ミオレスカが二人のためにバーガーセットを運んできてくれる。
「シモフリ料理を待っていたのだぁ~」
「やはり違うのじゃ」
作りたてのバーガーは格別の味。その美味さに溜まっていた疲れが吹き飛ぶのであった。
●
馬車での輸送は玄間北斗が固定で相棒が入れ替わる。
「それでは行って参ります」
二度目の往復は火艶静が担当した。索敵や警戒は玄間北斗が得意なので彼女は御者役を務める。
草原地帯を抜けてやがて森の中へ。青々とした夏の植物に囲まれながら森道を進む。昼食は火艶静が腕を振るう。
「ドッグ用のソーセージを炙ってみました。どうでしょう?」
「すっごく美味しいのだぁ~♪」
適度に休憩を取りつつ集落へと向かう。獣がよく出没する一帯では緊張したものの、何事もなく通り過ぎた。
やがて集落が見えてくると、火艶静は手に掛けていた鞘から手を離す。
集落でも食事係を務めた火艶静であった。
三度目の同行はマリィアが務める。
「α、γ、私は明日の夜帰ってくるからそれまで待っていてもいいけど……」
マリィアの言葉に愛犬二頭は悲しそうに小さく吠えた。
「ついてくるのね? それじゃ馬車を見失わないように。途中で兎や鳥を狩ったら持ってらっしゃい」
こうして二頭も同行することとなった。早めに到着したので日暮れまで牧畜を手伝う。以前に命名したシモフリのδを見つけてほっと胸をなで下ろす。人見知りする仔がすっかり大人の体格になっていた。
「マリィアさん、ため息なんてついちゃって」
「だって出荷が始まったって聞いたから。もう精肉にされちゃったかと思ったんだもの。それなら名付け親の私が全部買わなきゃって思って、慌てて来たのよ……」
「名前のあるシモフリは繁殖用だから、勝手にどうこうするつもりはないよ。安心して」
「ねぇガローア、シモフリ一頭からどれくらい精肉が取れるのかしら。豚だと五〇kgくらい、牛だと三五〇kgくらいとかいうじゃない?」
「シモフリは毛が長いので大きく見えるけど、その中間ぐらいかな」
「一頭買いするなら、いくらぐらい?」
マリィアの問いにガローアは一頭まるごとの値段は未定だと答える。シモフリ堂用の卸値だが、利益はとっているものの宣伝費用として割り切っている部分もあるようだ。
マリィアはミオレスカのアオタロウの様子も確かめる。日中はδや他の仲間達と一緒にオークの根元でのんびりと過ごしていた。
集落での晩食は愛犬二頭が獲った鴨肉鍋と相成った。
「本日は事故無しとでましたぁ~。特に危険はなさそうですけど気を引き締めて参りましょぉ~」
四度目の馬車出立時、玄間北斗に同行する星野ハナが旅路を占う。それは当たり、何事もなく集落へと辿り着いた。
宵の口、彼女は出荷の手伝いとしてシモフリの乳搾りを手伝った。
「動かないでくださいねぇ~」
青いまん丸の牝達はたくさんの乳をだしてくれる。それ以前に絞られた乳はチーズやバター、またはヨーグルトに加工されていた。
翌日には古都へ。街並みが見えるまでもうすぐの暮れなずむ頃、物盗り集団に襲われる。
「ふふん、私が居るのに積荷を狙うなんて百万年早いですぅ」
星野ハナが打った符によって物盗り等は五色光符陣の結界に囲まれて目が眩んだ。馬車は安全と積み荷を優先して先を急ぐ。
シモフリ堂での晩食時、星野ハナは武勇伝を語るのだった。
●
レーヴェは三日目から主に調理場を手伝う。
「ここに置いておけば大丈夫じゃろ」
冷蔵庫の片隅に私物を隠す。それから研いだ包丁でシモフリ肉を切っていったのだが、そのときに確かな手応えを感じ取った。
「間違いない。これは売れるのじゃ」
とても柔らかい肉質に触った体温だけでほんのりと溶けていく脂身。この肉が美味くないはずがないと。
やり甲斐を感じつつ、レシピ通りに肉の各部位を挽いていく。混ぜ合わせた挽肉に他の食材や香辛料を加えて、当日に使う分のパテを完成させた。
「うむ。バーガーの在庫は足りそうであるな。熟成も充分じゃ。ソーセージの数は揃っておるが、アイスの乳は心持たないのう。これを最後に残りは明日の分じゃ」
定期的に食材の残量を確認して売り子に報告する。
「そういうわけじゃ」
「これの次は牛乳ですね」
レーヴェはアイスを作るミオレスカに本日分最後のシモフリ乳を手渡す。カウンターのカティスにも伝えた。
「わ、わかりました。次のアイスが終わったら牛乳にチェンジですね」
カティスは事前に売り切れの札を用意。予定分が売り切れたところで告知板に貼り付ける。
「ほう、これが噂の高級バーガーか」
「はい! すごいんですよ、ここの部分のお肉。唇でかみ切れるぐらい柔らかいから、少しの工夫でバーガーにそのまま使えるんです」
空いた時間、レーヴェはマルグリットがシモフリステーキバーガーを作る過程を見学した。
「これはうまそうじゃ……」
脳髄を刺激する暴力的な肉の焼けるにおいに、思わず唾を飲み込むレーヴェであった。
●
最終日の店仕舞い後。店内で晩食の席が設けられた。
「ガローアさんとベッタさんが持たせてくれたお肉なのだぁ~♪」
玄間北斗がシモフリ肉の中で一番美味しい部位を預かってくる。
「これは青世界でも簡単に味わえる肉ではないわね……」
マリィアがナイフとフォークでシモフリ肉のステーキを味わう。愛犬二頭にも軽く炙った生肉が用意されていた。
「よいお肉ですね。明日への活力に繋がります」
火艶静は一口食べる度に微笑みを浮かべる。
「バーガーもうまひぃですけどぉ、このおにぃくぅはうますひぃれすぅ~♪」
星野ハナの感想は興奮しすぎて意味が伝わらない。
「このお肉のお店、だせたら大繁盛ですね」
ミオレスカには二日前に現れた来店者を話題にした。商人タリアナが繁盛の様子に満足していたのである。
「夢は広がるのですよ。美味しいのです♪」
カティスはほっぺたが落ちそうな気がして、食べる度についつい頬を押さえてしまう。
「量は違いますが、ステーキバーガーはこのステーキと同等の味ですね。高いですけど少しずつ口コミが広がると思います」
マルグリットを含めて全員がステーキバーガー用の余った肉片を味見したことがある。将来を見据えたガローアの商売的戦略だと誰もが気づく。
「かなりの贅沢なのだぁ~♪」
玄間北斗はステーキを味わいながら、集落でガローアとベッタが試行錯誤していたことを思いだす。それはシモフリのモツを使った冬用の鍋だ。くさみを消し去り、美味さだけを引きだすのに苦労していた。
「この日、この時のために用意したものがあるのじゃ!」
レーヴェは自ら焼いたステーキを卓へと運んで席につく。
傍らに置いてあったのは冷蔵庫でキンキンに冷やしたエール。塩気を強めにして焼いたステーキを豪快に噛み千切る。口の中で弾ける肉汁に頬を振るわせつつ、それをエールで流し込んだ。
「プハー。うむ! 至高の味! ただ只管に美味ければそれでよし!」
レーヴェの満足げな様子に仲間達が微笑んだ。
マリーシュ、セリナとチナサも充分にステーキ肉を味わう。
ハンター一行の帰りに合わせて新しい従業員が増える。ナガケ集落、そしてシモフリ堂の拡大はまだまだこれからであった。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/07/26 07:58:56 |
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質問スレッド 星野 ハナ(ka5852) 人間(リアルブルー)|24才|女性|符術師(カードマスター) |
最終発言 2016/07/24 12:39:49 |
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シモフリ堂危機一髪!? 星野 ハナ(ka5852) 人間(リアルブルー)|24才|女性|符術師(カードマスター) |
最終発言 2016/07/26 19:05:10 |