• 月機

【月機】幻月の守り

マスター:鷹羽柊架

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/09/05 22:00
完成日
2016/09/11 22:22

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 春先の戦いより、大なダメージを受けたアクベンスは、傷を癒しつつ、だらけて過ごしていた。
 ファリフは北方へ行ってしまい、青木は東方へ姿をくらましており、構う存在がいなくて半年ほどだらけている。
 そんな折にかけられたコーリアスよりの招集命令。
「……コーリアス殿下からの招集命令ですか……」
 ぐったりと横になるアクベンスはやる気はない。
 内容だけでも聞くかとコーリアスの方へと赴いた。
「ユキウサギ?」
「そう、ツキウサギの眷属であるユキウサギの住処が分かってね。今、包囲をしている最中なんだ」
 どこか楽しそうなコーリアスの様子をアクベンスは注意深く見ている。
「ユキウサギの住処は『おばけクルミの里』にあってね、今、オイマト族とツキウサギがいるんだ」
「オイマト族ですか」
 アクベンスがつけ狙っているのは辺境でもスコール族の長、ファリフだ。
 オイマト族の長もまた、ファリフに劣らない気高き赤き大地の戦士。
「君の好みじゃないのかな?」
「今、この私の胸を焦がすのはファリフ姫です」
 苦しそうに胸を押さえるアクベンスは一途さをアピールする。
「ファリフ姫を堕とした際にはアプローチしてもよいかと思いますが、今は姫にこの想いを捧げてます」
 長い睫毛を揺らして片目を瞑るアクベンスはふと思い出す。
 ファリフとツキウサギは仲が良かったはず。
 ツキウサギの危機ならば、ファリフが来るのではないかと。
「アクベンス?」
 黙り込んだアクベンスへ呼びかけたコーリアスであったが、アクベンスはにんまりと笑みを浮かべ、一歩下がる。
「コーリアス殿下、私めも参加いたしましょう」
 大きく腕を振った右手を胸に当てたアクベンスが一礼した。


 おばけクルミの里では潜入成功していたテトであったが、見事に歪虚に包囲されていた。
 狼型歪虚と目が合い、ぎょっとなるテトは駆け出す。
「潜入成功したはずにゃなのにーーーー!?」
 歪虚に追い掛け回されているテトはにゃーにゃー叫びつつ、おろおろと逃げっぷりを発揮していた。
 遠方で見ていたアクベンスは呆れて眺めていた。
「何なんでしょうか。あのうるさいちゃんくしゃは」
 服装から見れば、辺境部族の服装を着込んでいるところから、辺境のものであるのはわかる。
 それにしても、にゃーにゃー叫んでは逃げ回るテトは全くもってアクベンスの好みではない。
「コーリアス殿下の言っていたことには抵触はしませんし、さっさと片付けましょう」
 やる気が消えたアクベンスは手下の歪虚を移動させて囲いこむ。
「死体をオイマト族の族長に投げつけてみましょうかね」
 テトに全くもって戦闘能力がないと判断したアクベンスはさっさと殺すように手下に命令する。
 主の許可をもらった狼型歪虚は細いテトの四肢を狙い、駆けていく。
「にゃぁあああああああ!!」
 地をかける動物霊の力を借り、逃げようとするも、狼型歪虚に回り込まれてしまう。
 むき出しにされた狼型歪虚の牙が剥かれ、テトはぎゅっと、目を瞑る。

「テトに触るな」

 静かな少女の声が響く。
 テトはその声に聞き覚えがあり、顔を上げた。
 燃えさかる金色の炎のような毛並みに三つ首の獣に乗った大斧を手にした少女がテトを守るように歪虚と対峙している。
 今は北方にいて、ここにはいないと聞いていたのに。
「ファリフ!」
 今にも泣きそうな声でテトが少女の名を叫ぶ。
「テト、シャレーヌのところに行ったんだって? 気づいてくれた?」
 トリシュヴァーナより降りたファリフが笑顔で尋ねると、テトは頷いた。
「ありがとうにゃ、ファリフ……」
「テト、ここはボクとトリシュで突破するから、ハンター達を呼んできて!」
「けど、ファリフ……」
 それではファリフとトリシュだけになってしまうことに心配したテトにファリフは優しく微笑みかける。
「ボクは大丈夫だよ。トリシュもいるしね」
 ファリフが言えば、トリシュヴァーナが「その通りだ」と歪虚を蹴散らかしている。
「どうか、この里を助けるために行ってほしい」
「わかったにゃ」
 真摯なファリフの願いにテトは承諾するしかなかった。

 ファリフとトリシュヴァーナの攻撃で歪虚を一掃し、テトを逃がす。
「ファリフ姫……!」
 歓喜に震えるアクベンスは恍惚な笑みを浮かべる。
 テンションが上がったアクベンスは即撤退し、コーリアスの方へと向かう。
「武器を? なにがいい? 何がしたいのかな?」
 そう尋ねるコーリアスにアクベンスは冷たくも美しい笑みを浮かべている。
「猫を捕まえたいのです。殿下」
 愛しのファリフ姫が駆け付けるほど大事な人間……テト。
 あの猫娘を自身の手で殺してファリフに捧げたい。
 フェンリルの時のように。

リプレイ本文

 テトの呼びかけに応じたハンター達の中に、テトとは既知となるハンターもいた。
「わ。テト君、お久しぶり!」
「あ、アイラ……オウガ……っ」
 アイラ(ka3941)とオウガ(ka2124)がテトの姿を見つけて駆け寄る。
「なんだか、大変なことに巻き込まれたみたいだね」
「そうなのにゃ……後ろにいた歪虚がファリフの事を知ってたみたいにゃ」
「指令クラスの歪虚か、どんな奴だ」
 テトの言葉に反応したのはグリムバルド・グリーンウッド(ka4409)だ。
「にゃ……えと、青っぽい銀髪で、兎の耳の帽子を被った奴だったにゃ」
 記憶にある姿の特徴を一つずつ上げていくテトにオウガとアイラが反応する。
「アクベンスの奴か!」
 怒気を含んだオウガの声にテトがびくりと驚く。
「知ってるにゃ?」
「トリシュヴァーナの眷属にあたるフェンリルを殺した歪虚なのよ。ファリフ君に執着していたの」
 オウガとは反対に静かに怒りに震えるアイラ。
「……つことは、次はテトちゃんが狙われるってわけか」
 鵤(ka3319)がテトを見下ろすと、テトが目を見開く。
「にゃんで……」
 ぽつりと呟くテトに心当たりはない。
「ファリフ様を挑発するため?」
「まぁ、あり得る」
 思案していた樋口 霰(ka6443)が自身の考えを口にすると、鵤が頷く。
「ファリフの足手まといににゃりたくないにゃっ」
 そう言ったテトは戦いへの恐怖に震えていたが、口にした言葉は心の中から思っている事だ。
 自身の立ち直りを急かすことなく待っていたファリフ。
 彼女に及ぶのは難しいが、それでも、足手まといにはなりたくない。
 ビビり顔でも目だけは真剣なテトを見たラジェンドラ(ka6353)はつい、口元を緩めてしまう。
「だったら、気合を入れろ。力が無いというのなら自分のできる事をやるんだ。力なんて俺たちが貸してやる」
 ラジェンドラが親指を立てて自身の胸を軽く叩く。
「ラジェンドラの言うとおりだ、テト。俺達が守るぜ」
 オウガとアイラも同じ気持ちだ。
 蛇の戦士が、部族なき部族が遺そうとしたテトを守り抜くと決めたのだから。

 一方、アクベンスはコーリアスより貰った武器を片手に持ち、オーガの肩に乗って、楽しそうに進軍をしていた。
 アクベンスの向こうに見える戦闘は、これから自身が向かう場所より遠く、戦っているのはファリフだとアクベンスは直感する。
「いやはや、想いゆえでしょうかね」
 待っててくださいね、ファリフ姫……というアクベンスの呟きは夏の暑さを名残惜しむ生ぬるい風が攫っていく。
 向こうのファリフへの手土産に持っていくのは、姫が大事にしているだろう黒猫。

 おばけクルミの里の一角を守るテトとハンター達は打ち合わせした通りの立ち位置に立つ。
「アクベンスへの対応、承りました」
 アイラと共に立つ霰がユナイテッド・ドライブ・ソードを手にして眼前の歪虚を見る。
 いざ戦闘となると、テトの様子はやはり気合より恐怖が勝っているようで震えていた。
「テト様、大丈夫ですから」
 霰が気遣いの声をかけると、テトはこっくりと頷く。
「とりあえず、オウガ達からはぐれるなよ。歪虚は倒して来るからな」
 ひらひら手をテトへ振りつつ、グリムバルドはラジェンドラと一緒に前衛につく。
「テトのお嬢ちゃんを頼む」
「おうよ」
「前は頼んだ」
 ラジェンドラが言えば、オウガが頷き、鵤がまったりと返す。
 次に見た鵤の視線はアクベンスの方向。
 彼の視線が捕らえたのはアクベンスが持っている武器だ。
 まさかの腕バズーガ砲。リアルブルー世界のゲームや映画内でしか見たことがないようなもの。
 それが次元越えた向こうでお目にかかれるとは思いもよらないし、敵が使うには煩わしい事この上ない。
「どうせなら反重力装置あたりでも転用しろってのよつまんねぇな」
 煽りを込めた鵤の独り言のあと、テトが短い悲鳴を上げる。
「オウガ、鵤!」
 テトが叫ぶと、アクベンスがバズーカ砲を構える。
 ハンター達が守るテトを見据えているのだろうか、砲口をそちらへ向けていた。
 バズーカ砲が青と紫のオーラが浮き立つ。
「聞こえてたか?」
 呑気な口調の鵤はどんな効力があるのか見極めようとしているのか、テトの前に立つ。
 砲口の奥から光が見えた瞬間、鵤がシールドを構える。
「来やがれ!」
 オウガの声と共に放たれた光はハンター達へ飛んでいく。
 扇状へと光が広がっていき、テト達から離れたグリムバルドとラジェンドラへも光弾に気づく。
 ハンター達が構えると、衝撃が包み込み、吹き飛ばされる者もいた。
「ふにゃっ」
 テトは吹き飛ばされそうになりながらも、鵤が肩を掴んでいたので、飛ばされずに済んだものの、衝撃は大きかった。
 鵤はテトを捕まえつつも、アクベンスの様子を伺っている。慣れていないのか、アクベンスは首を捻っている。
「何……」
 アイラもまた、アクベンスの様子に気づいており、目を細めて注視していた。
「ハンター諸氏、これは失礼した。コーリアス殿下曰く、こちらの武器はまだ、試作段階のようでして私の力と出力調整がまだ上手くいってないようでした」
 嘲るように口元を歪め、空いた手で帽子を取って礼の形をとる。
「もうちっと、練習しとけよ」
 毒づく鵤の声が聞こえたのだろうか、アクベンスは含みある笑みを浮かべたまま、ハンター達を見据える。
「興を削がれる前に、こちらでお楽しみください」
 にやりと笑んだアクベンスの前方を駆ける狼型歪虚がハンター達へと駆けていく。
「狩りの準備は万端というわけか」
 猛スピードで走ってくる狼を見据えるのはラジェンドラ。
「狩られるのはお前の方だぜ、変態野郎」

 待っていろと言わんばかりにグリムバルドが魔導符剣「インストーラー」を構える。
 狼型歪虚はもうすぐ射程距離内へ入るほどに接近していた。
「んじゃ、まずは猟犬もどきをやっちまおうか」
 鵤が前衛組に声をかける。
 狼型歪虚に比べて、オーガの移動速度は遅い。
 三人が発動させたのは光の三角形。その頂点が更に発光を増して、光が伸びる。
 風を切ってハンター達へと向かう歪虚へ九つの光が飛ばされた。
 光が先陣を切る狼を撃ち抜いていく。足を撃ち抜かれて地を転がる歪虚もいれば、よろけながらも進軍をやめない歪虚もいる。
「後ろにぴったりしてるやつがいるにゃ!」
「ん、了解」
 テトが見たのは、進軍してくる狼の一体の後ろに一回り小さい狼がぴったりと追走している姿。
 もう一度、デルタレイを発動させて前を走る歪虚の足を集中して狙う。
 足を撃ち抜かれた歪虚が前のめりに転がり、後ろの一体も巻き込ませる。
「やったにゃ」
「まだいるから、しっかり隠れてろよ」
 オウガが言えば、テトは更に走ってくる狼型歪虚に怯えながらも頷いた。

 難しい顔をしたのはグリムバルドだ。
 ラジェンドラと鵤とでデルタレイを発動して、狼型歪虚の半数を倒したものの、距離が相当近づいてきている。
 狼だけではない、オーガもまた、進軍している。
「接近戦は不可避か」
 そう呟いたラジェンドラもまた、同じ考えである。
 槍を構え、歪虚を見据えるラジェンドラへ狼型歪虚が飛びつく。
 ラジェンドラは槍を突きの構えで迎え撃つ。
 黒い闇の如くの槍の穂先がラジェンドラの白皙の顔を噛み付かんばかりに大きく開けられた狼の口の中へと飛び込んでいった。
 ぶつり、と、音を立てて突き抜けた槍の穂先を横に薙ぐと、並走していた狼へとぶつけ、刺された狼もろとも、横へ転がっていく。
 オーガの一体が前衛組に届く程に近づいており、グリムバルドはデルタレイで足元を狙う。
 光がオーガの足を貫いても、痛覚が鈍いのだろうか、歩調は遅くなっても動くことをやめずにオーガは槍を持っており、グリムバルドへと槍を投げた。
 マジかよと目を見張ったグリムバルドはシールドのモーターを発動させて構え、槍の穂先をシールドで受け流したグリムバルドはオーガの膝を斬りつけ、上体を地に倒す。
 更に起き上がろうとしたオーガにこれ以上の行動を許す気はなく、思いっきり剣をオーガの首に突き落とした。

 遅れて走っていた狼はテト目掛けて走る。
「にゃぁああああああ!!」
 怯えるテトに対して慌てることなく、鵤はへらりと笑う。
「獣の本能かねぇ」
 そう言った鵤は杖を狼へと向けると、杖へと一気にマテリアルを収束させた。
「上、気をつけろよ」
 オウガへ気楽な口調で注意を飛ばした鵤の杖はドワーフのオウガより高い所へ掲げる。
 こちらへと接近する狼に対し、ファイアスローワーを発動させた。
 扇状の炎はテトへと向かう狼と先陣切ったオーガの体毛を燃やされても更に歪虚は突進してくる。
「相手してやるよ!」
 オウガが火だるまになったオーガと対峙する。斧を持ったオーガが一歩速く動き、オウガの頭上目掛けて斧を落とすと、オウガも負けじと愛用している金鎚を振り上げて応戦する。
 火の粉舞う斧と紫電走る金鎚がぶつかり合い、赤と紫が飛び散り、瞬時に消える。
「珠のお肌に火傷しちゃったらどーすんだよ」
 茶化すような物言いの鵤の後ろでテトがオロオロしている。
「来るにゃ!」
 鵤の後ろで慌てるテトに「はいはい」と返した鵤は至近距離でデルタレイを発動させ、狼の頭、胸、足を撃ち抜いた。
「きっちり、移動を潰したら、そんな怖かねぇからな。火だるまになりたい奴はまだ来るんだなぁ」
 鵤が見据えるのはオーガの姿。

 アクベンスは前回のように突っ込んでくることはなかった。
 執着する対象であるファリフがいなかったからだろうかと思案するアイラに霰が視線を向ける。
「そっちはお願いね!」
 アイラがオウガ達の方を振り返って声をかけた。
「宜しくお願いしますわね」
 霰がラジェンドラとグリムバルドへ声をかけてアイラと共に前に出る。
 正直な所を思案すれば、現状、アクベンス自体強い。
 今回は守ることが優先し、あの兵器を易々と使わせないようにしなければならない。
 二人は狼型歪虚を仲間に託し、狙うべきはアクベンスだ。
「こっちだ!」
 アイラと霰を狙う狼型歪虚を誘導するようにラジェンドラがデルタレイを発動させ、狼の身体を狙う。
 狼型歪虚ぬ群れを抜けると、オーガ達がいた。
 オーガは狼より動きは鈍いが、その分目標を捕らえた時の衝撃は強い。
 槍を持ったオーガが手近な霰をめがけて振り下ろす。
 歪な形の穂先が霰の柔肌に突き刺そうとしたが、納刀状態の剣を抜き放ち、穂先を受け流した。
 跳躍して間合いを取った霰の死角を狙うようにアクベンスは砲口を向いている。回避が間に合うかは分からないが、霰はそのまま回避を試みようとしていた。
 虚を突こうとしているのはお互い様だから。
 霰を狙うアクベンスであったが、背後の小さな気配に気づき、アクベンスは空いた手を大きく中空を振った。
 紫の瞳が細められ、その視界が捕らえたのはマテリアルを纏った猫の姿。
 直接的なダメージには至ることはなかったが、それも考慮しているのはアイラだ。
 アクベンスの隙を見て間合いに飛び込んでいったアイラはスチームアックスをアクベンスへと向けて水蒸気を噴射させた。
「くっ」
 高熱の水蒸気に顔を顰めたアクベンスは砲口をアイラの方へと向け、一度発射させる。
 しかし、水蒸気で視界を奪われてしまい、標準が定まらずに、オーガの一体を攻撃してしまう。
 アイラが三日月型の斧をアクベンスへと振り下ろすも、腕で受けられた。
「残念ね! お得意を見破られて!」
 即座にアイラは再び斧をアクベンスが抱えている兵器へと叩くも思った以上に硬く、凹むだけに留まった。
「意外と固いですね」
 アクベンスはそのまま兵器を振り上げてアイラに殴りかかろうとする。
「わっ」
 慌ててアイラが飛びよけてしまうが、アクベンスはアイラを追いかけて間合いを一気に詰める。
 兵器で殴ろうとしたのはフェイントで、鋭く伸びたアクベンスの爪がアイラの腕を狙って彼が負った傷と同じところに爪痕をひっかける。
 アイラの嗅覚を刺激する甘い香りは傷つけられた腕から香ってくる。眩暈の感覚が襲いアイラは慌てて間合いを取る為に下がると、霰がアクベンスに対し、半身の姿勢となって斬りかかった。
 水平に構えて抜かれた剣が狙ったのはアクベンスの帽子。
 切り落とすことはできなかったが、つばに一筋の切れ込みが入る。
「やりますね」
 アクベンスが言えば、間合いを取る為に飛びずさる霰に砲口を向け、発射させる。
 光弾を至近距離で受けた霰が衝撃で吹き飛ばされてしまう。
「慣れないものはいけませんね。初めての兵器は楽しかったですが、コーリアス殿下にご報告せねばならない部分もありますね」
 つばに切れ込みが入った帽子を手に取ったアクベンスは周囲を見やる。
 連れてきた歪虚の大多数が倒れていた。
「残念ながら、猫狩りは失敗ですね」
「逃がすか!」
 グリムバルドがデルタレイをアクベンスへと発射させると、アクベンスもまた、兵器に充填させておりそれをグリムバルド目掛けて発射させる。
 デルタレイの光線と兵器から発射された光弾がぶつかり、光弾が凌駕してグリムバルドが真っ向から受け止めた。
 吹き飛ばされずには済んだが、グリムバルドを守っていた防御障壁が割れたガラスのように地に落ちる。
「ご機嫌よう」
 そう言ってアクベンスは姿を消した。
 最後のオーガ一体を倒したハンター達に暫しの安堵の空気が流れる。
「テトのお嬢ちゃん、お疲れ」
 ラジェンドラが最後に腰を抜かして尻もちをついていたテトに声をかけた。
「よく頑張ったな」
 尻もちをついたままのテトにグリムバルドの大きな手がテトの黒髪を撫でる。
「にゃっ」
 わしゃわしゃ撫でられたテトはなんだか気恥ずかしそうであり、早く立ち上がりたかった模様。微笑ましく見ていた霰がテトへ手を差し出す。
「……アイラ、オウガ……?」
 テトが遠慮がちに声をかけるのは、オウガとアイラは警戒を解いていなかったから。
 周囲の敵の死体を注視しているオウガはアクベンスを警戒していると返す。
 ファリフのかつての相棒であった大幻獣、フェンリルはアクベンスの策によって命を落とし、ファリフの祖霊となった。
「あんな想い、二度としたくないから……」
 悲しげな瞳でアイラが心配するのはテトの事。
「また来るだろうな」
 目を細めるグリムバルドに鵤が頷く。
「だろうな」
 空を見やれば、もう日が落ちている。
 もし、アクベンスが隠れていれば、この黄昏時を狙うだろう。
「もう少し、周囲を警戒してから戻るか」
 ラジェンドラの提案に全員が頷き、周囲を見回っていたが、アクベンスはやはり撤退していた。
 大丈夫と確信したハンター達が撤退する頃、ファリフとトリシュヴァーナと合流し、無事を喜んだ。

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重体一覧

参加者一覧

  • 援励の竜
    オウガ(ka2124
    人間(紅)|14才|男性|霊闘士
  • は た ら け
    鵤(ka3319
    人間(蒼)|44才|男性|機導師
  • 太陽猫の矛
    アイラ(ka3941
    エルフ|20才|女性|霊闘士
  • 友と、龍と、翔る
    グリムバルド・グリーンウッド(ka4409
    人間(蒼)|24才|男性|機導師
  • “我らに勝利を”
    ラジェンドラ(ka6353
    人間(蒼)|26才|男性|機導師

  • 二ノ宮 アザミ(ka6443
    人間(蒼)|23才|女性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
鵤(ka3319
人間(リアルブルー)|44才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2016/09/05 12:20:02
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/09/02 23:19:02