谷底の骨折りドワーフ

マスター:真太郎

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/09/11 09:00
完成日
2016/09/14 18:54

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 辺境のほぼ中央には全長100km以上に及ぶ大きな湖『アルナス湖』がある。
 そしてアルナス湖から南の暗黒海域までは『アルナス川』が流れている。
 そのアルナス川の河口の数km手前には海岸線に沿うように山が連なっていた。
 ドワーフの鉱山町『フールディン』はその山の中腹にある。
 山腹という立地故に町はそれほど広くなく、人口は3000人程で多くはない。
 主な産業は鉄鉱とマテリアル鉱石。
 町を治めているのは『フルディン』というドワーフ部族。
 族長の名は『ヴィブ・フルディン』。
 年は69歳。
 子供は長男『フェグル(27歳)』、次男『ヴィオル(23歳)』、長女『スズリ(14歳)』の3人。
 妻の『クズリ』はスズリが6歳の時に病死している。

 ヴィブは70歳になる事を機に族長の座を息子に譲ろうと考えていた。
 問題は2人の息子のどちらを族長とするかだ。

 長男のフェグルは生まれた時から病弱で、体を動かす事は得意ではない。
 そのため体ではなく頭脳で部族に役に立とうと考え、幼い頃から勉学に励んでいた。
 元々才能があったのか戦略眼や戦術眼も養われたため、今では部族一の智謀を持つに至っている。

 次男のヴィオルは頑強な体で生まれたためか兄とは真逆で頭を使う事が得意ではなく、武芸を得意としている脳筋である。
 ドワーフらしく裏表のないサッパリとした性格で親しみやすく、誰とでもすぐに打ち解ける事ができる。
 そのため町の住民からは兄よりも好かれていた。

 性格や性質もまったく違う2人である。
 フェグルならその卓越した頭脳で町をより良く治めてくれるだろう。
 だが、今辺境は歪虚の活動が激しく、争いの火種が絶えない状況だ。
 ヴォオルならばその卓越した武の力で軍を纏めて歪虚と渡り合い、住民を守ってくれる事だろう。
 どちらを族長に据え、どちらを補佐に充てるか。
 もう何年も迷い続けているが、未だに答えが出ない。
「こんな時にお前がいてくれたら……。なぁクズリ、どうすればいい?」
 ヴィブは天にいるだろう妻に問うた。
「父様~」
 ふと、長女のスズリがヴィブの部屋を訪ねてきた。
「今日の夕飯は何がいい?」
「そうだな……カレーにしてくれ」
「もう、またその冗談……。うちには香辛料がないから無理だって何度も言ってるじゃない」
「ははっ、昔食べたカレーの味が忘れれなくて、ついな」
 呆れ顔で怒るスズリにヴィブは苦笑いで誤魔化した。
「私カレーって食べた事ないけど、そんなに美味しいの?」
「あぁ、昔クズリと一緒に同盟へ旅行に行った時に奮発して食べたんだ。最高に美味しかった。また何時か食べたいものだよ」
「母様との思い出の味なんだ。いいなぁ~……」
 スズリは母との思い出が少ないためか羨ましそうな、そして少し寂しそうな顔をした。
「……そうだな。スズリとも何時か一緒にカレーを食べよう」
「本当!?」
 スズリの瞳が期待で輝く。
「あぁ、本当だ」
「嬉しい! 父様、約束よ」
 ヴィブは娘と固い約束をさせられた。
「ところでスズリ。お前はフェグルとヴィオル、どちらが次の族長に相応しいと思う?」
「フェグ兄様!」
「即答か……」
 娘も迷うと思っていたので意外だった。
「ヴィオル兄さんは腕っ節が強いだけじゃない。その点フェグ兄様は頭が良いし、温和だし、貴公子然とした容姿をされているし、王様にピッタリだわ」
「王ではなく族長なのだがな」
「似たようなものじゃない」
 スズリが不満そうに頬を膨らます。
 スズリはグラズヘイム王国のシスティーナ王女に憧れており、自分も王女のようになりたいと思っているのだ。
「それにヴィオル兄さんもフェグ兄様が族長になる事を望んでると思うわ。兄さんが剣の腕ばかり磨いているのは、自分は将軍になってフェグ兄様を支えるつもりだからだもの」
「ヴィオルがそう言ったのか?」
「ううん。でも兄さんはそういう人よ」
「そうか……。では、スズリ自身はどうなのだ? お前も族長になる権利はあるのだぞ」
「私はイヤ」
 キッパリ断られた。
「どうして?」
「だって大変そうだもの」
「ふむ……」
 簡潔明瞭な答えだったので二の句がつけない。
「それより父様、今日の夕飯は?」
「カ……」
「カレー以外でね」
 先に釘を刺されてしまった。


 翌日、ヴィブは2人の息子を呼んだ。
「実は2人に見せたい物がある」
 ヴィブは2人に1個の鉱石を見せた。
「これは……マテリアル鉱石ですね」
「父上、これが何だというのだ?」
 兄のフェグルは手にとって眺め、弟のヴィオルが不可解そうに尋ねる。
「それがワシの長年の研究成果じゃ。お前たちは龍鉱石を知っているか?」
「はい。石化した龍の鉱石で、歪虚の汚染を防いだり浄化したりする力を持っているらしいですね」
「その鉱石も同じ効果を持っておる」
「え! これが?」
「そんな物を作ったのか? 凄いぞ父上!」
「ハハハッ! もっと褒めてもいいぞ」
 驚く息子たちに様子にヴィブは満足そうな高笑いを上げる。
「どうやって作ったんですか?」
「それは秘密じゃ。このクズリ石は金を産む卵でもあり、歪虚から世界を救う糧でもある。おいそれと外部には漏らせん。それに実証実験がまだなのじゃ」
 ヴィブはフェグルが持っていた鉱石を取り上げた。
「クズリ石……母さんの名前をつけたんですね」
「あぁ、我らフルディン族に栄光をもたらしてくれる鉱石だからな」
「うむ、相応しい名だ」
 家族はしばし母の事を思って感慨にふけった。
「さてヴィオル、お前に頼みがある。このクズリ石を身に付けて龍園まで行って効果を試してきて欲しい。ついでに龍鉱石も取ってきてくれ。クズリ石と効果の比較をしたい」
「了知した!」

 そうしてヴィオルは2人のお供を連れて龍園に出立した。
 しかし帰還予定日に戻ってきたのは供が1人だけだった。
「すみません! ヴィオルさんは龍園の外れの谷に落ちて行方不明に……」
 供の者は族長一家の前でそう報告した。
「えぇーーー!! ヴィオル兄さん死んじゃったのっ!?」
「落ち着きなさいスズリ。まだ死んでない」
 目に涙を浮かべて叫んだスズリをフェグルが宥める。
「そ、そうだぞスズリ。ヴィオルは、だ、だだだだ大丈夫だ」
「父さんも落ち着いて。ヴィオルは身体だけは丈夫なヤツです。きっと無事ですよ」
 完全に狼狽えてしまっている父も窘めたフェグルは供から詳しい事情を聞いた。
 ヴィオルは龍鉱石の探索中に足を滑られて谷に落ち、お共の2人は探したが見つからず、供の1人はハンターオフィスに救援を頼み、もう1人はこうして報告に戻ってきたという事らしい。
「ハンターが見つけてくれるのを期待するしかありませんね……」
 周囲が先に取り乱してくれたせいで逆に冷静でいられたフェグルはそう結論づけた。
「クズリ……ヴィオルを守ってやってくれ。まだそっちに連れて行かないでくれ……」
 ヴィブは天にいて見守ってくれているだろう妻に願った

リプレイ本文

 アルマ・A・エインズワース(ka4901)は終始にやけていた。
 なぜなら行方不明で捜索するのは彼が愛してやまないドワーフなのだ。
(助けたお礼にもふもふできるに違いありません!)
 それに同行するハンターにもドワーフが2人いる。
 女性をもふるとセクハラになるため我慢するが、愛でているだけでも幸せな気分になれる。
(またアルマの性癖が……)
 アルマ・Aの妻であるミリア・エインズワース(ka1287)は夫のドワーフ愛が動物愛に近い事を知っているので、あまり気にしてはいない。
 ただし、もしやり過ぎな行為があればキツイ折檻を喰らわせるが。

(あ、エルフさんが居る……)
 ユウキ(ka5861)は自分を笑顔で見てくるアルマ・Aと目が合い、ドキリとした。
 なぜならユウキは心密かにエルフに憧れているからだ。
(やっぱりエルフさんって美形で素敵だなぁ……)
 ユウキはアルマ・Aをうっとりと見つめたが、変に思われるのも嫌なので、すぐ目を反らした。
 そして反らした視線の先で知り合いを見つける。
「あ、アルマちゃんも居るんだね」
「うむ。同じドワーフの仲間として放ってはおけんからな」
 アルマ(ka3330)は同郷のユウキを妹分のように思っている。
 しかしアルマは24歳にしては極端に背が低いため、周囲からはアルマの方が妹分に見えるだろう。
「うん。ボクも大変な事にならないように頑張るよ」

「ヴィオルさんはここから落ちたんですよね……」
 保・はじめ(ka5800)が落下地点の現場から谷へ顔を出して覗き込むと、谷底に川が見えた。
「あの川に落ちたらしいって話だし、それならまだ生きてる可能性があるわね」
 マリィア・バルデス(ka5848)も保の隣で谷底を覗き込む。
「さて救出依頼はスピードが命だ、最速で行くよ」
 ロープを皆で繋ぎあわせて谷底まで垂らし、最初に保が降りる。
 谷底まで降りた保は後の者が降りやすいようにロープを持って固定した。
「アルマちゃんのフリフリのスカートはパタパタしそうだから気をつけてね。それに下からだと見えちゃいそうだよ」
 ユウキが2番手のアルマを気遣う。
「フリフリは乙女の嗜みなのじゃ」
 いつ白馬の王子様が自分を射止めに来ても良いようにするためオシャレは必須なのだ。
「保よ、絶対に上を見るんじゃないぞ!」
(見てないと落ちた時に助けられないんですけどねぇ……)
 保はそう思いつつも下を向いてロープの保持に務めた。
 そうしてアルマがロープを降り始めて半分ほどまで来た頃、不意に上で待つ者達に矢が降りかかってきた。
「危ねぇ!」
 ユウキは咄嗟に夫を後ろに庇いながら斬魔刀「祢々切丸」を眼前に掲げる。
 幸い誰にも当たらなかったが、矢は続けて飛来してきた。
「アルマ、何処から撃ってきてるか分かるか?」
 ミリアは『ソウルトーチ』を発動させ、飛来する矢を幅広の刀身で防ぎつつ尋ねる。
「……たぶんあの辺りですね」
 アルマ・Aがミリアの肩越しに目を凝らし、60mほど崖上を指差す。
「そこなら届きそうね」
 マリィアは背負っていたマシンガン「プレートスNH3」の銃架を伸ばして地面に設置し、銃口を崖上に向けた。
「ファイヤ!」
 轟音を響かせながらばら撒かれた銃弾で敵の1人も血祭りになり、谷に落ちてゆく。
 崖上の敵は反撃されると思っていなかったのか慌て始めた。
「まだいますね。では」
 アルマ・Aは混乱の最中に『紺碧の流星』を放ち、青い光で敵を撃ちぬいてゆく。
 すると崖上は静かになった。
「全滅したかな?」
「たぶんね。でも一応ここで見張っておくから先に行って。私は後からバイクで追いかけるから」
 マリィアはミリアの疑問に答えながら崖上の警戒を続ける。
 そしてアルマ・Aとミリアが降りるのを見届けると魔導バイクに跨る。
「ねぇ、本当にこの谷をバイクで下るの?」
 重装馬に跨ったユウキが尋ねる。
 ここは整地などまったくされておらず急な坂も多い、馬ならともかくバイクでの走行は難しく思えたからだ。
「騎士は鹿が降りられる場所なら馬で降りるって言うじゃない? 猟撃士はね、鹿が降りられる場所ならバイクで降りるのよ」
 マリィアは真顔で答えた。
 ちなみにマリィアは『猟撃士は』という括りで語ったが、猟撃士はバイクの運転に精通している訳ではない。
「それじゃ足の速さが違うからボクはついて行く形になっちゃうけど、マリィアさんは先へ急いでね!」
「分かったわ」
 マリィアは何の躊躇いもなくバイクで谷を下り始めた。
 悪路なので車体が変に跳ねるしタイヤも滑る。
 それでもハンドルを巧みに操り、ギアを小刻みに変えつつエンジンブレーキを駆使して速度を調節し、シートから腰を浮かせて上体でバランスを取り、多少の高さなら飛び降り、何とか谷を下ってゆく。
 しかし派手にエンジン音を響かせているため敵は位置が容易に特定でき、四方八方から矢が射られてくる。
「えぇい! 鬱陶しいっ!」
 少しでも集中力を乱せば転倒しかねない状況で矢にも気を配るのはかなり辛い。
 マリィアはバイクを止めてギアをニュートラルに入れ、マシンガンをタンクの上に乗せると射ってくる敵に向けて銃弾をばら撒いた。
 右側の弓手を黙らせると前輪ブレーキを固くロックしながらエンジンを吹かし、その場でバイクの向きを左に変える。
 ギアをニュートラルに入れ直してすかさず射撃。これで左側も黙らせた。
 攻撃が止んだのでマシンガンを収納してまたバイクを走らせたが、今度は後ろから矢を射られる。
「くっ!」
 180度方向転換してマシンガンを取り出し、構えたが、既に敵の姿はない。
 その後も敵はバイクを走らせる度にヒットアンドアウェイを仕掛けてきた。
 どうやらバイクを止めてから撃つまでにタイムラグがある事を悟られたらしい。
「無視して進むしかないか……」
「邪魔なんだよ! いい加減にしやがれ!」
 マリィアが考え込んでいると、ユウキが隠れていた敵を馬で追いたて、槍で刺し貫いてくれた。
「邪魔する敵はボクに任せて行ってくださーい」
 ころっと声音の変わったユウキが手を振ってくる。
「ありがとう。助かるわ」
 マリィアはユウキに護衛されながら進み、2人揃って谷底に到着したのだった。


 その頃、ロープで谷底に降りた4人は川の下流を目指していたが、やがて川沿いに進める道が途切れてしまう。
 仕方なく川の中を進む事にしたのだが、身長129cmのアルマは首まで水に浸かってしまう。
「わっぷ! げほげほ!」
 少し高い波が立つと顔に水を浴び、水を飲んでしまってむせる。
「アルマさん。よければ私がだっこかおんぶしますよ」
 アルマ・Aは期待に満ちた表情で提案した。
「子供扱いするでない! 手助けは無用じゃ」
「そうですか……」
 子供扱いした気は毛頭ないのだが、断られたアルマ・Aは目に見えて落ち込んだ。
 一行の先頭では保がマイヤワンドで川底を探りつつ歩を進めていた。
 すると脳裏に以前の行った竜鉱石採取や筏の川下りでの重肉体労働の思い出がよぎる。
(人を探すか物を探すかの違いはありますが、あの時の苦労が思い起こされて気が重くなりますね。今回は何事もなく進んで欲しいですよ……)
 そんな事を考えていると杖に何かが当たり、次の瞬間、水面から槍が突き出てきた。
「!?」
 反射的に『瑞鳥符』を発動させ、光の鳥で槍の威力を殺し、更にディーラーシールドで受け止める。
 するとダメージ受ける事なく防ぎきる事ができた。
「敵か!」
 ミリアが保を援護しようと前に出た瞬間、足を何かに引っ張られた。
 バランスを崩したミリアが川に倒れこむと、何かに頭を捕まれ、更に深く沈められる。
(窒息させる気か? なるほど、全身甲冑のボクには有効な手だ)
 相手の意図は読んだミリアは斬魔刀で頭を掴んでいる腕を斬り落とす。
 自由になった身を川から起こし、血に染まった川面に刀を突き刺した。
 手応えを感じて引き上げると、リザードマンが釣れる。
「でも、ボクを押さえ込むパワーが足りなかったね」
 更に刀を深く突き入れるとリザードマンは息絶えて消滅した。
 一方、保は盾と『瑞鳥符』で身を守りつつ『地脈鳴動』で仲間の支援も行い、『風雷陣』で雷を放ってリザードマンを黒焦げにしていた。
 しかし川の中から更に4体のリザードマンが現れる。
「紺碧の流星!」
 3体はアルマ・Aの『紺碧の流星』の光に撃ち抜かれて息絶える。
 だが残り1体はアルマに迫った。
 アルマはバスタードソードを抜いて構えた。
「ぅぱっ! げほげほげほっ!」
 しかし戦闘で川面が荒れたため顔に水を浴びまくってむせまくる。
「おのれぇ~これでは満足に戦えんのじゃ……いやまてよ」
 ふと、顔だけ出ているから水を浴びるのだと気づく。
 なら最初から濡れていればいい。
 つまり潜った。
(逆転の発想じゃ!)
 まず『衝撃波』で牽制。
 威力が落ちるため致命傷にはならないが相手の体勢は崩した。
 水流はキツイが『踏込』を発動し、川底を蹴って一気に間合いを詰める。
 リザードマンは水中でのアルマの素早い動きに意表を突かれた。
 その隙を逃さず『刺突一閃』を発動。
 放たれた刺突が水の中を突き進み、敵をも貫く。
 リザードマンは自分がどういう攻撃を喰らったのか分からぬまま息絶え、消滅した。
 こうしてアルマは見事水中戦を制したのだった。


 一方、マリィアとユウキは川沿いから離れて大きく迂回するルートを走っていた。
 ここまで敵とは遭遇しなかったのだが、やがて前方に盾と槍を構えたリザードマンが6体現れた。
 更に後方にも6体のリザードマンが姿を現し、弓を引き絞る。
「また出た……。お呼びじゃねーんだよっ!」
 ユウキが苛立たしげに怒鳴る。
「谷を下りるのに意外と時間を喰ったわ。先を急ぐから強行突破するわよ」
 マリィアはマシンガンの準備を始めると、後ろから矢が飛来して次々と刺さる。
 体や手足にはもう何本も刺さっている。
 傷は深くないが、失血が酷くなってきていた。
 しかしマリィアは構わず前方のリザードマンに銃撃を浴びせかけた。
 リザードマン達は身を寄せ、ファランクスの様に盾を合わせて身を守る。
 無数とも言える銃弾を浴びた盾は歪んで何発も貫通したが、リザードマンが倒れる事はなかった。
 マリィアはそれでも構わずトリガーを引き続けた。
 確かに倒し切れてはいないが、銃撃の猛攻により敵は盾から顔を出す事すらできなくなっている。
 その間にユウキが接近。
「大サービスだ。これでも喰らいなっ!」
 『薙ぎ払い』で文字通り6体のリザードマンを一気に薙ぎ払った。
 命中率が下がるため2体外れたが、敵はファランクスを保っていられなくなる。
 その隙を逃さずマリィアはアクセルを全開にして突進。リザードマンを弾き飛ばしながら突き抜ける。
 しかし1体がバイクにしがみつき、ナイフをマリィアの太ももに突き刺した。
 マリィアはオートマティック拳銃を抜き、脳天に鉛弾をお見舞いする。
「無賃乗車は遠慮願うわ」
 リザードマンの手から力が抜け、転がり落ちていった。

 敵を振り切った2人が更に進むと、やがて。
「貴様らなんぞにやられるものかぁー!!」
 という声が聞こえてきた。
「今のはもしかして?」
「どうやら生きてたみたいね。急ぎましょ」
 速度を上げて声の方に向かうと2体のリザードマンに包囲されているドワーフの男性がいた。
 マリィアはバイクで突っ込みながら拳銃でリザードマンを撃ち、注意をこちらに向ける。
「うおりゃ!!」
 注意が反れた隙を突いてヴィオルが斧でリザードマンを真っ二つにする
 3対1になったため、もう1体のリザードマンは逃げ出した。
 マリィアは拳銃を撃ち、ユウキも追おうとしたが、不意にヴィオルがバタリと倒れる。
「ヴィオルさん! 大丈夫ですか?」
 ユウキが馬から降りて介抱する。
「す、すまない……。何か、食べる物を持ってないか? 腹が減りすぎて、死にそうだ……」
 どうやら空腹で倒れただけらしい。
「ほら」
 マリィアはヴィオルにブランデーを放り投げた。
「ドワーフなら、何をさておいてもまずこれかと思ったんだけど」
「うおぉぉー!!」
 ヴィオルは歓声を上げると蓋を開けて一気に飲み干した。
 するとげっそりしていた顔にツヤが戻って生き生きし始める。
「ありがたい! 生き返った! 感謝する!!」
 だが安堵したのも束の間、3人に大量の矢が降り注いできた。
「危ない!」
 ユウキはヴィオルの前に飛び出し、自ら矢を受ける。
 見ると、先程突破した敵が追いつき、矢をつがえていた。
「何があっても絶対護る!」
 ユウキは『ソウルトーチ』を発動させつつヴィオルの前で槍を構え、マリィアはマシンガンの準備を始める。
 だが敵の頭上に符が飛んで雷が落ち、青い光も走って敵を貫く。
「皆さん無事ですかー?」
「可愛いドワーフさんを襲うなんて、情状酌量の余地があっても死刑ですねェ? アハハハッ!」
 そして敵が混乱したところにミリアとアルマが突撃して蹂躙してゆく。
 川を下ってきた4人が到着したのだ。
 程なく敵は殲滅され、6人は合流を果たした。
「そっちが先に着いてたか。でもいいタイミングで来れたみたいだな」 
 ミリアが2人とヴィオルの無事な姿を見て笑みを浮かべる。
「ご無事でよかったですー……。あ、僕、アルマって言いますっ。もう一人アルマさんがいるので、僕の事はアルって呼んでくださいっ」
 アルマ・Aは満面の笑みでヴィオルの手を取り、握手した。
「ヴィオル・フルディンだ。助けてくれて本当にありがとう」
 握手を返すとヴィオルの腹が盛大に鳴る。
「わふ? お腹すいてるです? 僕、いい物持ってるですよー」
 アルマ・Aはまずパンを渡し、レトルトカレーを温めるため着火の指輪お湯を沸かし始めた。
「あの……これもどうぞ」
 保は迷った末、一瞬でパンを食べ終えたヴィオルに干し肉と干し魚も渡した。
「いいのか!?」
 ヴィオルの瞳が歓喜で輝く。
「……はい」
 保はその目を直視できず、反らして頷いた。
(猫さん用の干し肉なのは、黙っておくべきでしょうね……)
 腹を満たし、保のヒーリングポーションを飲んだヴィオルは動けるまで回復したが、足の骨折までは治らない。
「僕が肩を貸します! さぁどうぞ!」
 アルマ・Aが率先して申し出る。
「何から何まですまない。どんな礼でもするから言ってくれ」
「ハグさせてくれればそれで十分です!」
「……それでいいのか?」
 ハグさせてもらったアルマ・Aは至福の笑みだった。

 それから7人で地上を目指したのだが、道中マリィアのバイクで登れない場所がたくさんあった。
 下りは高低差があってもどうにかなるが、上りはそうはいかない。
 仕方なく登れない場所は皆でバイクを担いで登った。
 そんな問題もあったが帰りは敵の攻撃も少なく、7人で無事に生還したのだった。

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 英雄譚を終えし者
    ミリア・ラスティソード(ka1287
    人間(紅)|20才|女性|闘狩人
  • 祭りの小さな大食い王
    アルマ(ka3330
    ドワーフ|10才|女性|闘狩人
  • フリーデリーケの旦那様
    アルマ・A・エインズワース(ka4901
    エルフ|26才|男性|機導師
  • ユグディラの準王者の従者
    保・はじめ(ka5800
    鬼|23才|男性|符術師
  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデス(ka5848
    人間(蒼)|24才|女性|猟撃士
  • 守護ドワーフ
    ユウキ(ka5861
    ドワーフ|14才|女性|闘狩人

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依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/09/11 04:51:16
アイコン 相談卓
保・はじめ(ka5800
鬼|23才|男性|符術師(カードマスター)
最終発言
2016/09/11 05:08:30