リーランの反攻 謎の敵の調査

マスター:鳴海惣流

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/09/15 15:00
完成日
2016/09/21 19:17

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●リーランにて

「反攻に出るだって!?」

 グラズヘイム王国ラスリド領リーラン。奥にある元は村長のだった家が揺れた。
 今は領主の息子のレイルが住んでいる。この地を代理で治めるように領主から命じられたためである。
 先ほどの大声を上げたのは、彼の隣に立っている女鬼のアオユキだ。驚愕の表情を浮かべている。

「レイルの旦那、本気かよ」

 信じられないとアオユキはかぶりを振る。

「本気だよ。何故か村は狙われる。最近ではコボルドを洞窟で増殖させるような黒衣の者も発見された。手を拱いていては後手を踏むだけだ」
「だからって、こっちから攻め込むなんて無謀だろ。あ、わかった。ラスリド領から兵が来るんだな?」
「いや。リーラン単独だ」

 レイルの返答を受けて、大げさなくらいにアオユキは頭を抱えた。

「何てこった。見かけは頭良さそうなのに」

 レイルは軽く肩をすくめる。

「勘違いしてるみたいだが、敵の本拠地を攻め込むわけじゃない。あくまでも黒衣の者の正体を確認し、狙いを知るところにある」
「ただの変質者じゃないのかい?」
「可能性の低すぎる推測だな。つい先日、領内で最も繁栄しているアクスウィルの街が何者かに襲われたのは知っているな」
「話だけならね」
「オークに似た化物だったらしい。それも元は人間だった可能性が高いそうだ。最終的に逃がしてしまったが、情報は得たらしい。それが黒衣の者と金色の瞳の二つだ」
「どっちもオークの化物に関係ないじゃないか」

 文句を言うアオユキに、レイルは呆れ気味にため息をつく。

「そいつが本当に元人間だとしたら、自らを異形に変えた奴の手がかりだろうな」
「なるほどね。けど単純に攻撃を仕掛けるわけじゃないと知って安心したよ」
「まあ戦闘にはなるだろうがな」
「それじゃ、やっぱり戦力が心許ないじゃないか。リーランでまともに戦えるのはアタシくらいなんだよ」
「その点は大丈夫だ。一人、スカウトをしておいた」

 レイルがそう言うのを待っていたかのように、二人のいる部屋のドアがノックされた。
 許可を与えて中に入らせると、まだ十代と思われる少女が姿を現した。

「何だい、この娘は」
「はい。私はミント・ユリガンです!」

 自己紹介した少女はミント・ユリガンと言う元ハンターだった。

「新人のハンターだったんだが仕事途中で迷ったりなどで上手くいかず、しょぼくれてたところをスカウトした」
「……何でだい」

 呆れ果てるアオユキに、座っている椅子の背もたれに上半身を預けたレイルが理由を説明する。

「リーランに住んで専属で雇われてくれるような優秀な人材がいるものか。未熟であろうが一から育てるしかあるまい」
「なるほど。まあ元ハンターなんだ。覚醒者だろうし、戦力にはなるね」
「残念ながら彼女は非覚醒者だ」
「……そうかい」
「そんな顔をするな。村の自警団に比べれば優秀だ。それに密偵というか、下見をする役目を主に担ってもらおうと思っているしな」

 今回もミントはレイルの命令で、村の外を調査していたのである。
 報告を求めたレイルに、ミントは明るく元気な声で返事をする。

「はいっ。ちゃんと見つけましたよ。手頃そうな洞窟!」
「洞窟?」

 ハテナマークが浮かんだ顔を、アオユキがレイルに向ける。

「そうだ。謎の存在は洞窟を見つけてはコボルドを放り込むのだろう? ならばまだ使われていない洞窟に網を張ればいい」

 ついでに近場の他の洞窟は封鎖してしまう。そうすれば誘導も容易い。ただし、敵にまだコボルドを使ってどうこうする意思があればだが。
 そこまで説明してから、レイルは新たな指示をミントに出す。

「ハンターズソサエティに依頼を出しておいてくれ。敵を罠にかける以上、どうしても戦闘になるだろうからな」

●洞窟にて

 レイルからの依頼を受領したあなたは、他のハンターと一緒に洞窟へ入った。
 壁には一列にランプが設置されており、火を入れればすぐに光源とできるようになっていた。
 明かりで敵に気取られてはならないので、今はつけていない。真っ暗な中で夜目をきかせるべく目を凝らす。

「改めて作戦を説明するよ」

 小声で言ったのはアオユキだ。彼女がレイルの代理として現場を任されていた。
 そばにはミントもいる。彼女は戦闘要員というより、敵発見時に明かりをつけてまわるなどのサポート役だ。

「洞窟の一画に隠れ、敵が現れるのを待つ。首尾よくやってきたら、最初に出入口を塞いで挟み撃ちする。倒すよりも情報収取が最優先。レイルの旦那はそいつ自身が黒幕なのか、後ろにまだ何者かがいるのかを特に気にしてたからね。けど命を犠牲にする必要はない。ヤバいと思ったら即座に逃げるよ」

 頷いたあなたは、再びアオユキやミントと一緒に声を潜めた。
 すると洞窟の入口付近で何者かが蠢く気配がした。
 場に緊張感が満ちる中、暗闇でギラリと凶悪そうな目が光る。それはどこからともなく現れたコボルドのものだった。

リプレイ本文

●洞窟待機中

 依頼を受けたハンターたちが、息を潜めて獲物が罠にかかるのを待つ。
 洞窟の奥には光源を準備するためにミントがいる。彼女を背後に置き、鞍馬 真(ka5819)と樋口 霰(ka6443)が出入口の方へ向けている目を凝らす。
 洞窟の出入口側。アオユキとともに隅へ隠れているのはザレム・アズール(ka0878)、エルバッハ・リオン(ka2434)、アメリア・フォーサイス(ka4111)、コントラルト(ka4753)の四人だ。

「黒衣の存在ですか。歪虚ではないかと思いますが、普通の人間である可能性もありますね」

 呟いたのはエルバッハ。顔を上げて、洞窟内を見渡す。さほど緊張はしていないようだ。

「まずは黒衣をはぎ取って、正体を確かめるとしましょうか」

 エルバッハの言葉にアオユキが頷いた直後、各ハンターの表情が変わる。洞窟内へ急に現れた異形の気配を感じ取ったためである。
 闇の中にぼんやりと浮かんだのは、次々と洞窟の中腹まで投げ込まれるコボルドの姿だった。
 その後、影が立ち上ったかのような闇がゆらりと蠢いた。それこそが黒衣の存在であるのは誰の目にも明らかだった。

「やれやれ、まだやってたのね、こいつ」

 コントラルトはため息をついて言葉を続ける。

「いい加減あの村も落ち着きたいでしょうし、さっさと黒幕を見つけてあげたいところね」
「これが俗に言う飛んで火に入る夏の虫ってやつかな。ただ地形的には私達も逃げ場を失っている訳ですが……細かい事は気にしないでおきましょう」
「ま、まあ、倒しちまえば関係ないさ。ヤバくなったら逃げるけどね」

 アメリアの絶妙な指摘に、アオユキは苦笑いを浮かべていた。

「色々聞く必要があるから殺しちゃいけないけどな」

 情報収集を忘れないようにともザレムは付け加えた。

「だね。忘れたらレイルの旦那にどやされる」
「けど、痛めつける分には問題無い。逃がさないためにもな」

 ハンターの存在に気づいていない黒衣の者がさらに一歩、前へ出る。

「俺は出入口前を固めるよ。合図で一斉に動こう」

 黒衣の存在から目を離さないようにザレムが言い、エルバッハが小さな顔を僅かに上下へ揺らす。

「異論はないです。私も全速力で脱出口を塞ぎます。黒衣の者の足止めや、コボルドへの対応は味方に任せます」

 行動開始前に、コントラルトが少し待ってと仲間に呼びかける。

「黒衣の存在があまりに強ければ、一旦全員が洞窟の外に出た後発煙手榴弾を投げ込んで、コボルドも含めて出てきた所をタコ殴りにしたらどうかしら?」
「それも一つの手だね」

 アオユキが同意する。

「それじゃあ、私も出入口の封鎖へ向かうわ。ただ、その前に一枚撮っておくわ。出来れば顔を収めたいわね」

 コントラルトが取り出したカメラに「何だい、それは」と驚くアオユキ。

「カメラなら私も持っていますが、基本的にはコントラルトさんにお任せします。手が空いたり、相手の隙が大きければ私も撮影しますが」

 アメリアもカメラを持っていると知り、アオユキはやや大げさなくらいに喜んでいた。
 軽く魔導カメラの機能を説明してあげたあと、アメリアは視線を出入口の方へと戻す。

「あれが黒衣の存在とやらですね。可能なら生かしたまま捕縛したいですが、不可能であれば抹殺するしかありませんね」

 作戦が決定し、弾かれたようにハンターたちは動き出す。

●洞窟奥

 コボルドと黒衣の存在が現れたのを受けて、洞窟の奥側に隠れていたミントも行動を開始していた。
 ともに飛び出した霰が並走する。

「ミントさん、支援しますわ。敵にこちらの存在が知られるのは時間の問題。遠慮は無用ですわ。光源作りを急ぎましょう」

 二人の背後を守るように、やや遅れて続く真が賛同した。

「それがいい。コボルドの相手は私が引き受けよう」

 ダッシュで壁のランプをつけて回るミントと霰。洞窟内の闇が徐々に灯った明かりによって払われていく。
 二人の背中を見送り、別行動を始めた真はコボルドの奥にいる黒衣の存在を見つける。

「……あいつ、前のコボルド退治の時の奴か」

 過去の依頼の記憶を思い出していた真だが、コボルドへの接近を優先して考え事を中断する。

「味方が奴との戦いへ集中できるように、コボルドをこちらへ引きつけておかなくてはな」

 向かってくる真に気づいた一体のコボルドが、腕をしならせてハンマーのように地面へ叩きつける。
 だが砕けた洞窟の床の近くに真の姿はない。軽やかにかわし、すかさず踏込からの反撃の刃がコボルドを襲う。
 肩から斜めに腕を切り裂き重大なダメージを与えるも、致命傷とはならない。

「通常のコボルドに比べると、ずいぶん生命力が高いな。仲間だけでなく、ミントの方へも行かせないようにしないと」

 敵の反撃を類稀な回避能力でやり過ごし、とどめを刺す。光源に照らされた洞窟内には、まだ複数のコボルドが存在する。
 一体を葬った真は用意していたバラエティーランチを取り出す。漂う香りがコボルドの注意をひく。
 一方でミントは自分の役目を終え、服の袖で額の汗を拭う。

「よっし。これで光源は全部――って、うひゃあ!?」

 近くにいたコボルドがミントへ迫っていた。絶体絶命かと思われたが、霰がその前に立つ。敵の一撃を受け流しを使って脚で受け止める。
 離れてるようにミントへ告げてから、霰はコボルドに刃を向ける。

「不幸な私でも他の命を奪えば、その命よりは幸せを見い出せるかしら」

 言ったあとに「……」と僅かな沈黙。

「なるべく多くの命をいただきますわね」

 居合を使い、霰は頭部の中でも敵の行動をより阻害できそうな目を狙っていく。外れた場合は続けざまに腕や脚へダメージを与えるつもりでいた。
 太刀は頭部へ命中。仕留めきれなかったが、おかげでミントはコボルドの標的から外れた。

「黒衣の方の正体を探る目的があるのに不真面目かとも思いますけれど、コボルドの斬り方を少々研究したく存じます」

 浴びる膨大な敵意の中でもクールさを崩さず、霰はコボルドを前に口角を微かに歪めた。

「やはり腕力だけではないと思うのです。コボルドの肉の付き方に対して、どの角度で刃を入れるとすんなり斬れるのか興味がありますね」

 同時に床を蹴る。コボルドの腕をかわし、懐に入り込んだ霰は疾風剣を敵の急所に直撃させる。
 倒れた一体が悲鳴を上げるが、それはすぐに他のコボルドの雄叫びで掻き消された。
 残っている三体のコボルドが、一斉に真へ襲い掛かろうとしているところだった。
 目や感覚で得た情報を足に伝え、事もなげに放たれるコボルドの攻撃をかわす。決して油断はしない。
 だが、こういう時に限って予想外の出来事が起きる。
 真の姿を負いきれず、力任せに振るったコボルドの一撃が真の腕へクリティカルヒットしたのである。
 決して軽いダメージではないが、よく見なければわからない一瞬だけ僅かに眉を動かしただけで、真は敵への突撃を続ける。
 負けじとコボルドたちも凶器のごとき腕を振り回すが、奇跡は二度も起きない。敵はもう真の影さえ掴めなかった。

●黒衣の存在戦

 己の不利を察しても逃げられないよう、アメリアは走りながら黒衣の存在に威嚇射撃を行う。命中し、敵は訝しげに彼女を見る。
 アメリアが黒衣の存在を足止めしている間にザレム、エルバッハ、コントラルトが配置につく。
 マテリアルアーマーの持続時間を減らして効果をより高めたザレム。四メートル五十センチもある巨大な槍を両手で持ち、横に構えて出入口を完全に封鎖する。
 そばにはエルバッハやコントラルトが陣取り、黒衣の存在が普通に脱出するには不可能な状況が完成した。

「封鎖の壁役だけど、防ぐだけじゃない。此処は通さないぜ」
「では試してみましょう」

 威嚇射撃から逃れた黒衣の存在が、挑発に乗るような形でザレムとの間合いを詰める。
 敵の突撃を、ザレムは槍を横にして鈍器的に使って防ぐ。ダメージはない。

「通さないって言ったろうが」

 マテリアルで形成された光の障壁に雷が走る。ザレムの攻性防壁が弾き飛ばした黒衣の存在の全身に強い痺れを発生させる。
 麻痺しながらも黒衣の存在は余裕を崩さない。

「ほう。なかなかやりますね。お見事です」

 直立姿勢に戻った黒衣の存在を、アメリアが観察する。

「立ち姿は人間みたいですけど、黒衣が邪魔ですね。ザレムさんへの攻撃を見ますに、無手での近接戦闘を得意としているのでしょうか」

 外見や使用武器、能力や戦闘スタイルをアメリアが見極めていく。

「私を調べているのですか。ならば少々サービスをしてあげましょう」

 フードの奥に金色の輝きが宿る。
 邪眼等の精神攻撃がくるのを念頭においていたザレムは、仲間全員へ叫ぶ。

「何らかの精神攻撃の可能性が高い。気をつけるんだ!」

 金色の瞳に見つめられたザレムは猛烈な眠気を覚える。しかし精神を強く保ち、眠りへの誘惑に抵抗する。
 その間に敵と目を合わせないようにしていたコントラルトが、エレクトリックショックを放つ。
 移動中に使用していたマテリアルチャージャーにより、威力の上昇した一撃が黒衣の存在をまともに吹き飛ばす。

「当たればラッキーの誘いの一種だったのだけど……。想定より手応えがないわね」
「奇妙な精神攻撃を使うかと思えば、能力はさほどでもない、ですか。人か歪虚か。そろそろはっきりさせてもらいましょうか」

 エルバッハのウィンドスラッシュが敵の黒衣を切り裂く。
 姿を現したのは鴉に似た顔。頭部の左右にナイフのごとき角を生やした異形。閉じていた蝙蝠のような唾憂さを広げると、先端の尖った尾がようやく解放されたとばかりに飛び出る。
 漆黒の肉体と相まって、マントをはぎ取られた敵は悪魔を連想させるような外見だった。

「どうやら歪虚と考えて間違いなさそうですね。コボルドを増やして何をするつもりなのですか?」

 エルバッハが問うた。

「ただの趣味です。意図的に交配させれば強いのが生まれるかもしれませんしね」
「……その趣味とやらは貴方単独のものですか? それともお仲間がいるのですか?」
「今も昔も私という存在はいつも孤高なのです」

 演技がかった態度と言動を繰り返す異形に頭を抱えるでもなく、エルバッハは目を鋭く細めた。

「話になりませんね。歪虚である以上、捕縛よりも始末を優先します」

 エルバッハのファイアアローを、麻痺から回復したばかりの異形が飛び退いてかわす。
 だがそこへ二丁拳銃のアメリアが追撃をかけ、クローズコンバットによる投打で押し込む。

「私の手足を重点的に狙い、身体能力を低下させるつもりですか。お見事な戦略です」
「褒めてくださったお礼に、キツイのをご馳走してあげます」

 近接攻撃を仕掛けるアメリアに続き、アオユキも肩に担いだ斧を使って死角から異形を狙う。
 二人のすぐ後ろからコントラルトも援護射撃を行い、遠距離からはエルバッハの強烈な魔法が飛ぶ。脱出口はザレムが強固に守っており、逃走は不可能。
 状況を打破するために異形が反撃を試みるも、狙われたコントラルトはそれを待っていた。

「これまでの攻撃は囮。比較的前衛に出たのも、本命の狙いを成功させるためよ」

 敵の攻撃に合わせた攻性防壁が炸裂し、またしても異形の全身が麻痺に見舞われる。
 そこへエルバッハの強力な魔法攻撃が炸裂すれば、勝敗はほぼ決したも同然だった。

「タコ殴りだ!」

 アオユキが叫び、手が空いている者たちがこぞって異形をボコボコにする。
 だが奇妙な点も残る。これだけ簡単に追い詰められているのに、敵の異形は絶命どころか生命力に余裕すら見られるのだ。
 それでもザレムが床に倒れた異形を取り押さえ、ハンターたちの優勢は揺るがなくなった。

「観念するんだな。この土地や森の秘密を、知っているのなら話してもらおうか」
「そんなものはありません。強いて言うなら、森に漂う瘴気といいますか、負の力が心地よいくらいですね」

 不敵に笑った異形が、強引にザレムの拘束を解いた。
 油断していたわけではなく、異形の全身の力が急激に増したのである。
 翼を広げ宙に舞った異形は出入口を背に悠然と両腕を広げる。

「今回は貴方たちに勝利を譲りましょう。たいしたものです。十分の一程度しか実力を出していなくとも、私を退けるのですからね。フフフ。次はこうはいきません。しっかりと準備をして、皆様を私主催の喜劇にご招待致しますよ。舞台を盛り上げるための役者としてね」
「待ちなさい! このまま逃しはしないわ」

 コントラルトがエレクトリックショックを撃つも、異形は素早く回避する。拘束に人員を割いたため、一時的に出入口の封鎖に隙が出来ていた。
 そこを逃さずに脱出する異形を止められないと判断するや、アメリアは持っていた魔導カメラを敵に向けた。

「せめて、その姿をカメラで撮影させてもらいます」

 嫌がるのでなく、笑みを顔に張りつけて応じた異形は役者のように芝居がかった礼をする。

「私はリアン。人間が歪虚と呼ぶ存在。どうぞお見知りおきを」

●掃討戦

 リアンが姿を消しても、コボルドはまだ残っている。仲間の邪魔をさせないようにしていた真と霰が今も奮闘中だった。

「真さん、これを使ってください。ヒーリングポーションですわ」

 感謝するの言葉とともに霰から受け取った真は、一気に中身を飲み干した。

「首尾良くコボルドが片付いたら奴の方に向かうつもりでいたんだけど、逃げられてしまったみたいだね」

 リアンの逃げた出入口を一度見たあと、真はコボルドとの戦闘に専念する。

「意外にタフではあるけど、固まってくれれば攻撃もし易い。せめてコボルドは片付けておかないとね」

 真の薙ぎ払いによって、二体のコボルドの胴と脚が離れる。

「ふむ。一体討ち漏らしてしまったみたいだね」
「どうするんですか?」

 慌てるミントに真は軽く微笑む。

「私には仲間がいる。何も問題はないよ」

 怪我を負い、一体だけになったコボルドは逃げようと足を動かす。しかし――。

「悪いがこっちは通行止めだ。こいつを官憲に引き渡しても仕方ないし、始末するとしよう」

 派手に吹き飛ばされたコボルドが、コントラルトの足元に転がる。

「いらっしゃい。何か言い残すことはあるかしら?」

 コボルドは戸惑うばかりだ。

「そう。普通の個体より強力ではあるけれど、人語を操ったりはできないみたいね。それがわかれば十分」

 最後のコボルドも絶命し、洞窟内には静けさが戻った。


 黒衣の存在の退治までは問われていなかったことから、情報を入手したハンターたちは心からのお礼をレイルから言われた。特に絶賛されたのは、魔導カメラによる撮影で印刷された写真だった。
 ハンターたちの活躍により、防戦一方だったリーランが逆襲の一手目を打てた。それが何よりの成果となったのである。

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MVP一覧

  • Ms.“Deadend”
    アメリア・フォーサイスka4111
  • 最強守護者の妹
    コントラルトka4753

重体一覧

参加者一覧

  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • Ms.“Deadend”
    アメリア・フォーサイス(ka4111
    人間(蒼)|22才|女性|猟撃士
  • 最強守護者の妹
    コントラルト(ka4753
    人間(紅)|21才|女性|機導師

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人

  • 二ノ宮 アザミ(ka6443
    人間(蒼)|23才|女性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
エルバッハ・リオン(ka2434
エルフ|12才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2016/09/15 13:36:47
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/09/14 15:01:00