• 月機

【月機】幻月の矛

マスター:鷹羽柊架

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/09/27 22:00
完成日
2016/10/03 21:18

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 歪虚忍び寄る『おばけクルミの里』。
 ついにコーリアスが包囲の輪を縮め、決戦に向けて動き出す。
 ユキウサギ達は月天神法で結界を形成。里への侵入を阻む。
 月天神法の消滅は、コーリアスが目的とするツキウサギの危機に繋がる。コーリアスの好きにさせれば、人類の敗北はまた一歩近づく。それは決して許してはならない。
 ハンター達の死力を尽くした防衛戦が――今、開始される。


一度戻ったアクベンスがコーリアスと面会することになった。
 コーリアスに凹んだ兵器を見せたアクベンスは帽子を胸に当てて、申し訳なさそうに謝る。
「申し訳ございません、殿下」
「いいよ、実験だしね。けれど――」
 当のコーリアスはあまり気にしていない様子。兵器の状態を確認していると、ある点に気づいてアクベンスの方へ視線を向ける。
「あれ……ああそうか。……ごめんごめん。この点を説明しなかったのは、僕のミスだね?」
「は?」
 キョトンと紫の瞳を瞬かせるアクベンスにコーリアスが説明を加えると、アクベンスはコーリアスの近くに寄り説明を聞く。
 説明を聞き終えたアクベンスは楽しそうな笑顔を浮かべる。
「それは面白いものですね」
 アクベンスの感想にコーリアスは「そうだろう」と言いたいように口元を笑みにかたどる。

 ハンター達の尽力で歪虚を討伐し、アクベンスを撤退させることに成功したテトは再びファリフと会っていた。
「テト、大丈夫?」
 自分の持ち場より戻ってきたファリフはテトの姿を見つけて駆け寄ってくる。
「ファリフ! みんにゃが守ってくれたにゃ」
「よかったね」
 赤き大地の戦士、シバの愛弟子であるテトだが、現状いまだに腕はからっきしのようである。
「また、アクベンスがテトを狙うかもしれない……」
 ぐっと、手を握り締めたファリフは唇を噛む。
「大丈夫にゃって、言いたいにゃ。にゃけど、テトにも、ファリフにも、ハンターのみんにゃがいるにゃ! また、力を合わせて撃退するにゃっ」
 テトは強く握りしめるファリフの手をそっと握ると、ファリフははっとしたように俯いていた顔を上げた。
「うん、ボクも信じてる。ハンター達はきっと、テトもこのおばけクルミの里も守ってくれると」
 怒りの表情を顕わにしていたファリフだったが、ハンターの名を聞いて、怒りの表情が和らいでいく。
 彼らはいつでも支えてくれていた、守ってくれていた。
 自分だけじゃないと、手を差し伸べてくれる。

 再び、ファリフとテトの呼びかけでハンター達がおばけクルミの里へと集められた。
 月天神法発動の様子はどこか和やかな雰囲気がある。
「ファリフ、テトは?」
 ハンターの一人がファリフの姿を見つけて声をかけた。
「あっち」
 ファリフが指をさした方向は歪虚の方。
 現在、テトは歪虚の動きを調査しに行っているとファリフは告げた。
「テト、大丈夫かな」
 ハンターの一人が呟く。
「まぁ、本人やる気だし」
「しょんぼりするより良い事だと思う」
 他のハンター達が心配するハンター達を宥めている。
「一応、超聴覚でテトの動きは確認してるけどね」
 ファリフがテトが向かっている方向をみていると、テトの悲鳴が聞こえる。
「テト!?」
 途端にファリフの表情が強張る。
「にゃぁああああ、やばいにゃぁあああああ」
 超聴覚から聞こえるのは、ビビりモードのテトの絶叫。
 歪虚の方から轟音が聞こえる。
 暫くもしないうちに発射されるような音がハンター達の耳に届く。
 リアルブルーでいうところのミサイルのようなものだろうか、どこか不安定に蛇行するようにこちらへと向かってきているが、その速さは瞬く暇すらない。
「テト、避けろーーー!」
 誰かが叫ぶと、テトは持ち前の素早さで横に飛び、発射されたものは近くの木に激突して爆発した。
 爆発の規模は広くはないが、音が随分と大きい。
「なんにゃ……」
 テトが爆発物の方を気にするように猫背の背筋を伸ばすテトの眼前に落とされたのは黒焦げになった鹿の首。
 ハンターの一人が発射された方向を見ると、そこにはアクベンスがいた。
「奴が……」
 アクベンスは酷薄で楽しそうな表情を見せており、先日持ち込んでいた兵器を再び装備していた。
 手近にいた狼型歪虚に向けると、砲口がぱかりと開けられ、触手かコードか判別がつかないものが狼型歪虚を取り込んでいく。
 歪虚を取り込んで倍に膨らんだ兵器の砲口をこちらへと向け、発射させる。
「にゃぁああああああああ!?」
 叫ぶテトが逃げ出すと、アクベンスより発射された弾丸はテトを狙うように追尾する。
「ええええええ!?」
 テトが絶叫すると、ファリフとトリシュヴァーナが前に出て、トリシュヴァーナが受け止め、ファリフが大斧でその弾丸を叩き落とした。
 割れた弾丸から、内臓のようなものや足が見えた。
「アクベンス……」
 歪虚は倒すべき存在。
 しかし、このような姿を見たファリフはアクベンスが持っている兵器が人間も同じように扱えるのではないかと考えつく。
「怒りはとても美しいですね……内包するあなたのマテリアルが顕わとなるようで……」
 くつくつ笑うアクベンスはファリフより視線をずらすと、トリシュヴァーナが「ファリフ」と呼んだ。
「……テトはハンター達が守る」
 怒りの感情を押し殺したようなファリフの声にアクベンスは優雅に一礼する。
「またお会いしましょう。私の愛しいファリフ姫」
 ファリフは即座にトリシュヴァーナと共に低級歪虚が大群となって押し寄せる方向へと向かっていった。
 テトがハンター達と何とか合流すると、手に入れた情報をハンター達に伝えた。

 コーリアスがツキウサギに触れた瞬間、人類の敗北がまた増えてしまう。
 それだけは阻止せねばならない。

リプレイ本文

 コーリアスがアクベンスへと渡された兵器のもう一つの機能というべきか、特性というべきものが目の前で行われた。
「歪虚を取り込んで固有の特性を持った砲弾に変える腕部接続型の砲……ってところかな」
 冷静に分析しているのはシェルミア・クリスティア(ka5955)だ。
「なんて悪趣味な兵器なんだ」
 それを目の当たりにした時音 ざくろ(ka1250)はぎりっと、歯噛みする。
「歪虚砲……といいますのでしょうか」
 ざくろの隣にいたアデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)が首を傾げた。
 ふぅ、と息を吐いたアデリシアは瞳をゆっくり閉じていく。
 今は歪虚を弾丸にしているが、いつ、人類がその対象となりえるのかわからない。
 存在を、命を……なによりも、戦いを愚弄している。
「そんな存在を遺すわけにはいかぬ」
 蒼の瞳が見開かれると、アデリシアの艶やかな黒い髪が銀のグラデーションを帯びていき覚醒していった。
 まず、彼女が駆けたのはテトの方。
 アクベンスは再び手近な歪虚を再び狼型歪虚を装填していた。
「くるぞ!」
 オウガ(ka2124)が叫ぶと、距離を見て移動し始めたのはシェルミアだ。
 放たれた砲弾と距離の感覚を測るシェルミアは一枚の符を中空に浮かばせる。
 符より紫電が走ると、標的と定められた砲弾へ稲妻が落とされた。
「こっち」
「にゃ」
 玉兎 小夜(ka6009)がテトへ声をかけると、アデリシアの方へ誘導する。
「まぁ、ケモノ仲間だから、ユキウサギと一緒に守る」
 どこか呑気さを纏う小夜であった。
 しかし、淡雪の如く白いロップイヤーのような兎耳を垂らし、斬魔刀を既に構えているところをみると、彼女は臨戦態勢に入っていた。
「取り巻きはお願いね」
 アイラ(ka3941)の言葉にオウガは頷く。
 アクベンスは今回も後方から動く気はなさそうだったが、早く取り巻きを片付けないと、アクベンスがどんどん兵器に取り込んでいき、砲弾と化していく。
 先ほどからの砲撃を見る限り、今はテトを狙っているので何とか里や結界への直撃はないが、いつ砲口を変更するかわからない状態だ。
「早く、取り巻きをやっつけないとね」
 ざくろが前に出て、魔導機械が取り付けられた魔導符剣「インストーラー」を抜き放つと、彼の前に光の三角形が現れた。
 その頂点が光り、デルタレイが発動される。
 先陣を駆ける狼や鹿型歪虚がハンター達へと向かっていき、ざくろはそれら目掛けて光線を向けた。
 一匹が転げると、後続が巻き込まれて倒れて行く。
 光線をかすった歪虚や逃れた歪虚がハンターの間合いに入ると、待ち構えていたのはオウガだ。
「ユキウサギ。頼んだ」
 友達を、仲間を守りたいオウガの思いを受け取ったユキウサギは喋れないがその思いを返すべく、杵を構えている。
 ユキウサギとしては、ご飯を奢るよりも、好物のおばけクルミの殻を壊す手伝いをしてほしいようだったが、それは後でお願いすればいい事だ。
 オウガは左手に装着していた鉤爪「タランテラ」へ砂紋を発動させる。
 周囲の砂が展開された鉤爪へ纏っていく。
「テトを頼む」
「分かってる」
 ざくろに声をかけたオウガはユキウサギと共に歪虚達の群れへと身を躍らせた。
 テトはこちらに向かってくる歪虚に気づき、ざくろとアデリシアに伝えていた。
「行くよ。アデリシア」
 ざくろの声にアデリシアが頷く。
 デルタレイで対抗しても、その辺の雑魚歪虚よりも強いとざくろは分析する。
 どんどん歪虚の進軍が進んでいき、遠距離戦から近距離戦へと変化しようとしており、ざくろは接近戦に立ち向かうため、剣を構えた。
 先にざくろの間に入ったのは鹿型歪虚だ。
 鹿は頭を下げて長く、歪な角をざくろの白皙の顔を目がけてスピードを上げる。
「くっ」
 ざくろはギリギリまで引き付けて剣で角を払い、身体を横にずらして、そのまま剣で胴体を切り裂いていく。
 胴体を切り裂かれようとも、歪虚は止まることなくざくろを狙う。
 回避の際に生まれる隙を機動力をもって鹿は突き進もうとすると、銀の髪がざくろと鹿の間に入った。
 ざくろを守る為に割り入ったのはアデリシア。
 彼女の細い腕が動くと、歪虚の首が地へと引っ張られてしまい、歪虚はそのままの勢いで崩れ落ちる。
 鹿型歪虚の首には光輝くワイヤーウィップが絡んでおり、ゆっくりと鹿の首を絞めていた。そのワイヤーウィップの元はアデリシアの手の中だ。
「たぁっ」
 ざくろが勢いをつけて一撃で鹿の首を切り落とす。
「ありがとう、アデリシア」
「これからです」
 礼を言われたアデリシアは戦闘時の凛々しさをそのままであったが、どこか柔らかい声音で返した。
「にゃ! ざくろ、アデリシア!」
 テトが叫ぶと、三人へ目掛けて駆けてくる歪虚の姿が見える。

 狼や鹿型歪虚の対処はざくろ達に任せたオウガは、自身に襲い掛かる歪虚は鉤爪に纏わせた砂を目に振りまいては動きを反らせた。
 オウガの背後を狙おうとする歪虚もいて、そこはユキウサギ二体が背後を守ってくれていた。
 もう一体は誰と組んでるユキウサギか思案したオウガだが、歪虚を攪乱しているユキウサギを守るように風雷神が落ちたところでとシェルミアと組んでいるユキウサギと理解した。
 オウガが狙うのは、その後続で動いているオーガの群れ。
 背中を守ってくれるユキウサギと一緒にオーガの意識をこちらへと向かわせる。
「ユキウサギ、巻き込まれないようにな」
 十分と認識したオウガがユキウサギへと声をかけると、ユキウサギは後方へ跳躍した。
 ユキウサギの後退を確認したオウガは両手で雷鎚「ミョルニル」を構える。
「こっちこいよ。歓迎してやるぜ!」
 不敵に笑ったオウガは体重をかけて思いっきり雷鎚を振るった。
 空気を切る低い振動音を感じた後に衝撃がオーガ達へぶつかり、巨体が浮いては地へと落ちる。
 衝撃の激しさは地に落ちた時に襲い、オーガ達の動きを鈍らせた。
 一回転し終える時にオウガと目を合わせたのは、後ろにいたはずのアクベンスが兵器を構えていた。
「……アクベンス!」
 ぎゅっと眉間に皺をよせ、オウガは仇敵を睨みつける。
 アクベンスの砲口より汚い色のオーラが煙のようにでており、歪虚が装填されていることに気づいた。
 本能で危険を察知したオウガは自分の次の攻撃が間に合わないことを察知し、腕をクロスした。
「させないよ」
 そう言って符を出したシェルミアが中空へと符を放り投げて風雷陣をアクベンスへと発動させる。
 砲撃と風雷陣のタイミングほぼ一緒であり、しかし、アクベンスの砲撃は放たれていた。
「むー」
 心月を発動させてアクベンスの動きを見ていた小夜が少し不満げな唸り声を上げてから動き出す。
 弾丸の動きを見ていた小夜は斬魔刀の鯉口を切り、刀身を弾丸へ当てて軌道を逸らせる。
 小夜に軌道を逸らされた弾丸は近くの木に激突し、そのまま爆発した。
 爆発した際の爆風が強く、シェルミアは自身の顔に手を翳しつつも、弾丸の中身がオーガであることを察する。
「そのメカ、邪魔!」
 刀を突きつけた小夜にアクベンスは「おや」と首を傾げる。
「邪魔とはひどいですね。これはコーリアス殿下よりお貸しいただいたものですのに。面白いでしょう? これにツキウサギを食らわせ、ファリフ姫へのおくりものとして撃ちたいのですが」
 くつくつと笑うアクベンスはとても無邪気だ。
「そんな贈り物、吐き気がするよ!」
 テトを守りつつ、狼型歪虚と戦うざくろが吐き捨てる。
「戦いを愚弄するどころか、命までも」
 ワイヤーウィップを振るって狼の首をあらぬ方向へ捻じ曲げたアデリシアが目を眇めてアクベンスを睨む。
「野郎の挑発だ!」
 今にも思いのまま殴りに行きたいオウガは気持ちを抑え、起き上がるオーガの腰へ雷鎚を撃ち込む。
 アクベンスは再び、オーガを兵器へ取り込もうとしていた。
「そんなこと、させないよ」
 気の強い声を発したのはアイラだった。
 一気に前へ出て、アクベンスの方へと駆けるアイラの姿を見て、アクベンスは目を丸くする。
「おや」
 楽しそうな声音のアクベンスにアイラは苛立ちを隠せないが、アイラはファリフを守りたい一心で自身を囮とした。
 アクベンスはファリフに執着しており、他の誰かがファリフに扮し、気分を害し、集中力を削ぐ作戦をとったのだ。
 スチームアックスを振り被ったアイラは素早く振り降ろすも、アクベンスは軽やかにステップを踏んでかわし、アイラの腕を取って振り飛ばす。
 悲鳴を上げる暇もなく、アイラは地へ落ちた。
「……痛……」
 蹲るように上体を上げたアイラへアクベンスは彼女を興味深げに見下ろしている。
「蛇の戦士を『見送った者』ですね」
「え……」
 アクベンスはちらりと、オウガの方を盗み見る。
「戦士として生き、死ぬ。昔ながらの戦士。その弔いに参加できることは幸福とも聞いてます。私としては、あの『蛇』をくらいたくはありませんけどね?」
 微笑みを浮かべるアクベンスにアイラとオウガが様子を変える。
「知ってる……のか?」
 呆然と呟くオウガの死角に回ったオーガが持っていた棍棒でオウガの背中を攻撃する。
「ぐっ」
 短く呻くオウガはすぐに身体を反転し、オーガの顎目がけて雷鎚で殴りとばす。
「にゃんで……にゃんで知ってるにゃ!」
 テトが叫ぶと、アクベンスは嘲け笑う。
「知ると視るは別物ですよ」
 アクベンスの言葉にシェルミアはぱっちりとした青の目を細める。
「さっき触ったから?」
 動き出しているオーガへ風雷神を落としてから、シェルミアはアクベンスの方へ視線をよこすと、彼はよく出来ましたと言わんばかりに笑いながらオウガの攻撃でまだ動けないオーガを兵器へ取り込んでいた。
「貴女もまた、誇り高き戦士ですね。目的のため、生きるために戦う」
「あんたに誉められても何も嬉しくない!」
 きっぱり言い切ったアイラにアクベンスはやはり楽しそうだ。
「わかる」
 再びアクベンスの方へと向かおうとするアイラの言葉に同意するように小夜がアクベンスへの間合いを詰めていき、納刀状態から一気に長い刀身を抜き放ち、アクベンスの兵器へ斬りつける。
 話している間も油断はしてなかったアクベンスだが、小夜の速い剣撃にアクベンスの余裕顔が一瞬消える。
 更に小夜がねじりを入れた二撃目は兵器を構えるアクベンスの腕から肩へ切りつけた。
「おしい」
 間合いを取って後退した小夜は流麗な動作で刀を鞘 へ納め、アクベンスは傍に控えていた狼歪虚を取り込みはじめる。
 シェルミアが風雷陣でアクベンスの動きを止めようとする。
「一度取り込み始めると止まらないんだね」
 愛らしい顔を不満そうに歪めたシェルミアが呟く。
「輝けインストーラー……」
 魔導符剣を構え、ざくろが光の三角形を中空に浮かばせる。
「くらえ! 必殺デルタエンド!」
 ざくろのデルタレイはアクベンスの髪をかすり、兵器を貫くも兵器は壊れてはいない。
 しかし、ざくろの狙いはアクベンスの足止め。
「負けるか!」
 そう叫んだのはオウガだ。
 間合いの距離を整えたアイラは背でその声を受け、スチームアックスを構え、アクベンスへ向かって駆けだした。
「そろそろ決めるわ」
 特攻をかけようとするアイラの様子は分かりやすく、アクベンスは彼女の様子をじっと見つめる。
 アイラもまた、アクベンスの動きが止まったことに気づき、彼女は身体を横に反らせた。
 ギリギリまで引きつけていた身体に感じた風圧は真っすぐアクベンスの方へと向かわせる。
「にゃぁああああ!?」
 アデリシアとざくろに守られつつ、歪虚から逃げるテトは驚きの声を上げた。
 アイラが隠していたのはオウガが飛ばした雷鎚「ミョルニル」だ。
「なっ」
 反射的にアクベンスは兵器を構えると、鎚は兵器の砲口を抉り、主の元へ戻っていく。
「たぁ!」
 一気に間合いを詰めたアイラはワイルドラッシュを発動させて大斧を振り上げ、兵器を破壊せんがために振り下ろす。
 兵器はぐしゃりと湾曲してしまい、砲撃は不可能状態となった。
 今のアクベンスならば、攻撃に気づかれかねないので、アイラとオウガは連携して危険な賭けに出た。
 即座に兵器を手放したアクベンスは空いた手を素早く振るう。
 息をつく間もなく、アイラの右の腕と足に血が滴る。
「……!」
 もう一度アクベンスが腕を振るうと、アイラの首に紫色に輝く紐状のものが巻かれていた。
 アクベンスが手にしていたのは赤い血が滴る縄ひょう。
 ぺろりと、アクベンスが刃を濡らす赤い血を舐めようとすると、アクベンスの視界に光の弾丸が飛んできた。
 光弾はアクベンスの手を弾き、縄ひょうが手から落ちると、アイラの首の締め付けが緩む。
「手を放せ」
 鋭いアデリシアの声がアクベンスへ突き刺す。
 アクベンスが弾みをつけるように一気に駆け出すと、結界が作られていたことに気づく。
「悪いけどさ、君の楽しみとかには興味無いんだ」
 シェルミアが淡々とした声でアクベンスを睨み付けると、アクベンスの視界を焼き尽くす光が差し込む。
「その首、よこせ」
 月が満ちる如く、刀の切っ先を円の形になるように振りあげた小夜は大上段に構え、強く一歩を踏んだ。
「首狩り兎が刻み、刈り獲らん!」
 張り上げる小夜はアクベンスの腕から胸を抉る様に斬りつけ、次の太刀で首を狙おうとするが、それはかなわなかった。
「う……」
 攻撃の前に放たれたアクベンスの縄ひょうの切っ先が小夜の腹を刺していたからだ。
 アクベンスが縄を引っ張ると、乱暴に小夜の腹に刺さった縄ひょうを引き抜き、小夜の腹から血が噴き出て、小夜は地に膝をつける。
 屈んだ小夜を見たシェルミアは彼女が巻き込まれないように火炎符をアクベンスへと放ち、その向こうからざくろのデルタレイが火炎符を追うように放たれた。
 更なる追撃にを目を見開いたアクベンスは後退して避けようとしても逃れられずに直撃してしまう。
「逃がすか!」
 ざくろが叫ぶとアクベンスは「退散いたします」と黒焦げの帽子を指でつまんで振る。
「猫狩りは失敗しましたが、中々に楽しかったですよ」
 シェルミアの炎に撫でられたアクベンスの皮膚は焼けただれていたが、彼は様子を乱すことなく、一礼して逃走した。

 アクベンスと共に進軍していた歪虚達はハンターとユキウサギの手によって倒された。
 一部、森が壊されてはいるものの、里や結界には影響はない。
「みんにゃ……!」
 テトが指さした方向より大幻獣トリシュヴァーナに乗ったファリフがこちらの方へ向かって来ていた。

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MVP一覧

  • 援励の竜
    オウガka2124
  • 符術剣士
    シェルミア・クリスティアka5955

重体一覧

参加者一覧

  • 戦神の加護
    アデリシア・R・時音(ka0746
    人間(紅)|26才|女性|聖導士
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 援励の竜
    オウガ(ka2124
    人間(紅)|14才|男性|霊闘士
  • 太陽猫の矛
    アイラ(ka3941
    エルフ|20才|女性|霊闘士
  • 符術剣士
    シェルミア・クリスティア(ka5955
    人間(蒼)|18才|女性|符術師
  • 兎は今日も首を狩る
    玉兎 小夜(ka6009
    人間(蒼)|17才|女性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/09/23 15:51:55
アイコン テト護衛・アクベンス撃退(相談
シェルミア・クリスティア(ka5955
人間(リアルブルー)|18才|女性|符術師(カードマスター)
最終発言
2016/09/26 20:40:08