ゲスト
(ka0000)
【夜煌】威風堂々
マスター:近藤豊
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
- 1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/09/24 15:00
- 完成日
- 2014/09/26 23:23
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
夜煌祭前日――要塞『ノアーラ・クンタウ』。
「危険過ぎますっ!」
要塞管理者執務室に、若き武官の声が響き渡る。
その原因は、要塞管理者のヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)にあった。
先日、オイマト族の集落へハンターと共に赴いたヴェルナーは、夜煌祭へ帝国の招待を打診。夜煌祭の会場にて部族懐柔をすべく、裏で画策を開始していた。
そして、明日。
帝国の者が夜煌祭へ参加する手筈となっているのだが、突如ヴェルナーは護衛の軍人も付けずに自ら夜煌祭へ赴くと言い出したのだ。
「声が大きすぎます。そのように怒鳴らなくても十分聞こえています」
「声も大きくなります! 夜煌祭に参加する部族の中には、帝国を快く思わぬ者もおります。下手をすればヴェルナー様が襲われるかもしれません」
冷静なヴェルナーに対して、武官は一層声を荒げた。
部族会議の中には帝国に対して慎重な態度を取る部族もあれば、強い警戒を持って敵視する部族もある。要塞の管理者が夜煌祭へ足を運んだとすれば、腹を立てる者もいるだろう。万が一、ヴェルナーが傷付くような事があれば帝国と部族が戦争になる恐れもある。
ヴェルナーが暴走していると考える武官は、体を震わせる。
それに対してヴェルナーは、武官の前でカップに紅茶を注ぎ入れる。
「まずは紅茶を飲んで少し落ち着きなさい。その状態では私の話を理解できないでしょう」
「は、はい」
武官はヴェルナーからカップを受け取った。
紅茶の心地よい香りが鼻腔をくすぐる。
焦りと不安がいっぱいだった心に、優しい風が吹き込む。
「私自ら夜煌祭へ赴きます。
ですが、警戒心を煽るように帝国軍人を引き連れていく訳にはいきません」
「しかし……」
「ですが、誰も一人で行くとは言っていません。
護衛は付けます。軍人ではなく、ハンターを」
「ハンター?」
「彼らを単なる傭兵と見るのは誤りです。
先程も言ったように、夜煌祭で無骨な帝国軍人を連れて行けば部族側も身構えます。
しかし、ハンターが護衛であればその心配はありません」
部族が神聖とする夜煌祭へ帝国が軍人を連れて赴けば、間違いなく嫌な顔をされる。それは帝国との関係を見定めようとしている部族を敵に回す行為だ。
相手を警戒させる事無く、部族を説得して帰順させる。
その上でヴェルナーの身を護る為には、部族側とも交流を持つハンターに護衛をさせるのが一番だ。
「なるほど。帰順を促すと同時に部族の警戒を解く為には、ハンターが護衛するのが良いという事ですか。しかし、護衛のハンターが部族側を擁護すれば説得は難しくなるのではありませんか?」
「私も夜煌祭で部族がすべて帰順するとは思っていません。ハンターが反対意見を述べれば、ハンターが帝国を嫌う部族に同調する事を意味します。それは同調したハンターを部族が信頼するでしょうし、その信頼がある限り説得のチャンスは今後も続くでしょう。
ですから、今回は『有力な部族との顔合わせ』を第一に考えています」
部族の面々も帝国に帰順するという事は、帝国臣民となって部族の伝統や文化を捨てる事だと知っている。だからこそ、誇り高い部族の戦士達は帝国を敵視している。それを懐柔させるのは、そう簡単な事ではない。
ヴェルナーは夜煌祭で有力部族と会い、交渉相手の人間性を見極めようとしているようだ。
「礼は尽くしますよ――未来の帝国人となる彼らには、ね」
ヴェルナーは自分の用に注いだ紅茶をそっと口へ運ぶ。
面識の無い部族の者達が、どのような態度を取るのかを楽しみにしながら……。
●
そして――夜煌祭当日。
星明かりの下で行われる儀式は、神聖で厳かなものだ。
部族の者達は会場に詰めかけ、大精霊に願いを捧げる。
そんな最中、ヴェルナーはハンターと共に会場近くまで赴いていた。
「それでは、行きましょう。
急な客人をどのように迎え入れてくれるか……楽しみですね」
「危険過ぎますっ!」
要塞管理者執務室に、若き武官の声が響き渡る。
その原因は、要塞管理者のヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)にあった。
先日、オイマト族の集落へハンターと共に赴いたヴェルナーは、夜煌祭へ帝国の招待を打診。夜煌祭の会場にて部族懐柔をすべく、裏で画策を開始していた。
そして、明日。
帝国の者が夜煌祭へ参加する手筈となっているのだが、突如ヴェルナーは護衛の軍人も付けずに自ら夜煌祭へ赴くと言い出したのだ。
「声が大きすぎます。そのように怒鳴らなくても十分聞こえています」
「声も大きくなります! 夜煌祭に参加する部族の中には、帝国を快く思わぬ者もおります。下手をすればヴェルナー様が襲われるかもしれません」
冷静なヴェルナーに対して、武官は一層声を荒げた。
部族会議の中には帝国に対して慎重な態度を取る部族もあれば、強い警戒を持って敵視する部族もある。要塞の管理者が夜煌祭へ足を運んだとすれば、腹を立てる者もいるだろう。万が一、ヴェルナーが傷付くような事があれば帝国と部族が戦争になる恐れもある。
ヴェルナーが暴走していると考える武官は、体を震わせる。
それに対してヴェルナーは、武官の前でカップに紅茶を注ぎ入れる。
「まずは紅茶を飲んで少し落ち着きなさい。その状態では私の話を理解できないでしょう」
「は、はい」
武官はヴェルナーからカップを受け取った。
紅茶の心地よい香りが鼻腔をくすぐる。
焦りと不安がいっぱいだった心に、優しい風が吹き込む。
「私自ら夜煌祭へ赴きます。
ですが、警戒心を煽るように帝国軍人を引き連れていく訳にはいきません」
「しかし……」
「ですが、誰も一人で行くとは言っていません。
護衛は付けます。軍人ではなく、ハンターを」
「ハンター?」
「彼らを単なる傭兵と見るのは誤りです。
先程も言ったように、夜煌祭で無骨な帝国軍人を連れて行けば部族側も身構えます。
しかし、ハンターが護衛であればその心配はありません」
部族が神聖とする夜煌祭へ帝国が軍人を連れて赴けば、間違いなく嫌な顔をされる。それは帝国との関係を見定めようとしている部族を敵に回す行為だ。
相手を警戒させる事無く、部族を説得して帰順させる。
その上でヴェルナーの身を護る為には、部族側とも交流を持つハンターに護衛をさせるのが一番だ。
「なるほど。帰順を促すと同時に部族の警戒を解く為には、ハンターが護衛するのが良いという事ですか。しかし、護衛のハンターが部族側を擁護すれば説得は難しくなるのではありませんか?」
「私も夜煌祭で部族がすべて帰順するとは思っていません。ハンターが反対意見を述べれば、ハンターが帝国を嫌う部族に同調する事を意味します。それは同調したハンターを部族が信頼するでしょうし、その信頼がある限り説得のチャンスは今後も続くでしょう。
ですから、今回は『有力な部族との顔合わせ』を第一に考えています」
部族の面々も帝国に帰順するという事は、帝国臣民となって部族の伝統や文化を捨てる事だと知っている。だからこそ、誇り高い部族の戦士達は帝国を敵視している。それを懐柔させるのは、そう簡単な事ではない。
ヴェルナーは夜煌祭で有力部族と会い、交渉相手の人間性を見極めようとしているようだ。
「礼は尽くしますよ――未来の帝国人となる彼らには、ね」
ヴェルナーは自分の用に注いだ紅茶をそっと口へ運ぶ。
面識の無い部族の者達が、どのような態度を取るのかを楽しみにしながら……。
●
そして――夜煌祭当日。
星明かりの下で行われる儀式は、神聖で厳かなものだ。
部族の者達は会場に詰めかけ、大精霊に願いを捧げる。
そんな最中、ヴェルナーはハンターと共に会場近くまで赴いていた。
「それでは、行きましょう。
急な客人をどのように迎え入れてくれるか……楽しみですね」
リプレイ本文
「ファリフ君、お久しぶり~。すっごいね~、夜煌祭」
炎番の役目を終えたばかりのファリフ・スコール(kz0009)を、オキクルミ(ka1947)は飲み物を持参して出迎える。
「オキクルミ! 夜煌祭に来てくれたんだ。今日は遊びに来てくれたの?」
オキクルミから渡された飲み物を口へと運ぶファリフ。
「それがさー、今日はお仕事でさ。めんどうくさい人の案内役なんだ」
「へぇー、誰なんだろう?」
面倒くさそうな顔を浮かべるオキクルミの前で、ファリフは首を傾げる。
ハンターを連れて夜煌祭へ来るなんて、部族の人なのかな?
それとも、よその人?
ファリフは脳裏で様々な想像を巡らせる中、オキクルミは表情を笑顔に変えてファリフへ声をかける。
「ファリフ君、一緒にきてもらえる?」
●
ヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)は、ハンターと共に夜煌祭の会場を訪れていた。
「ヴェルナーさん、周囲にお気を付けください」
「そうです。ここで襲われるとは考えたくありませんが、気を付けてください」
ベアトリス・ド・アヴェーヌ(ka0458)とユキヤ・S・ディールス(ka0382)が、ヴェルナーの傍らを固める。
今回の依頼はヴェルナーを護衛となっている。辺境部族の中には帝国を忌み嫌う者もいる。そこでヴェルナーはハンターへ護衛を依頼したのだ。
「ありがとうございます」
「あれ? あいつ、帝国の奴じゃねぇか?」
雑踏の中から、太い男の声が聞こえてくる。
ベアトリスが顔を上げれば、そこには部族の戦士らしき男が三人。
行く手を阻むように立ち塞がっている。
「何か御用でしょうか?」
ベアトリスは部族の者が酔っている事が、すぐに分かった。
だが、こちらから手を出せば被害は甚大になる。あくまでも冷静に、かつ礼儀をもって事態の沈静化にあたる。
「帝国の者はお引き取り願いたい」
部族の戦士は、明らかに挑発的な態度だ。
ベアトリスはヴェルナーの姿を戦士達から隠すように前へ出る。
――しかし。
「『ノアーラ・クンタウ』も辺境地域の一部です。私も辺境の者に違いありません」
突如、背後からヴェルナーの声。
戦士達は、一気に機嫌を悪くする。
「なんだと?」
「おやおや。気分を害されたのであればお詫び致します」
素直に頭を下げるヴェルナー。
しかし、戦士達の怒りは収まらない。
「てめぇ、いい加減に……」
「そこまでにしていただこう」
怒り狂う戦士に向かってアウレール・V・ブラオラント(ka2531)が歩みを阻む。
さらにその背後には辺境部族出身の陽炎(ka0142)が立っている。
「やれやれ、釘を刺す前に騒ぎが起こってしまいましたか。
それも護衛対象がわざわざ相手を挑発するとは……」
「挑発をした覚えはありません。間違いを訂正して差し上げたのです」
陽炎は、思わずため息をついた。
「我等に敵意はない。武器を持たず、敢えて丸腰でこの夜煌祭へと赴いた。
まさか、辺境の誇りある部族の戦士が丸腰の者を相手に大勢で組み敷く事など……あるまいな?」
陽炎とヴェルナーの会話をよそに、アウレールは戦士達へ強い視線を送る。
これ以上の騒動は、ハンターとして絶対に許さない。
その想いはベアトリスとユキヤも同じであった。
「僕も武器は持っていません。話し合いに来たんです。
お互いが何を考えているのか。それは分かり合う事に必要じゃありませんか」
「そもそも、このようなところで喧嘩を起こせば部族の顔に泥を塗ることになるわ。
三人とも、相応の覚悟はあるのかしら?」
何ともいい知れない感覚に襲われる戦士達だが、ここで更なる追い打ちを受ける。
「……どうした?」
姿を現したのは、オイマト族族長のバタルトゥ・オイマト(kz0023)であった。
騒ぎに気付いてここへ赴いたようだ。
バタルトゥは、戦士達の方へ向き直って一瞥する。
「この者達は、オイマト族が夜煌祭へ招待した者達だ。
異論があるのであれば、俺が聞く」
「運がいい奴め!」
バタルトゥの言葉を受け、戦士達は早々に退散。
慌てて人混みへ消えていく戦士達の姿を、ハンター達は黙って見送った。
「……こっちへ来い」
バタルトゥは、静かな場所へと一行を誘導する。
●
「想像以上の忙しさです」
静架(ka0387)は、料理や酒を運びながらため息をついた。
予定であれば宴会手伝いとして潜入し、酒癖の悪い常習犯に酒を飲ませて酔いつぶすはずだった。
しかし、今回は普通の宴会とは訳が違う。
辺境中の部族が集まるのだから、酒を嗜む部族が次々と登場。静架は給仕として働き続けていた。
「料理です」
「……ありがとう」
静架が届けたテーブルの先には、バタルトゥとヴェルナー、さらには一緒に依頼を受けたハンター達が同席していた。
静架はテーブルにいる面々の顔色を窺いながら、運んだ料理を次々とテーブルに並べていく。
その最中、バタルトゥに対して陽炎が切り出した。
「スコール族がこちらへ危害を加えようとしても、オイマト族が同調したりしないでもらえないかな? 夜煌祭の場で流血騒ぎを起こしたくない……どうか、この通りだ」
陽炎はバタルトゥへ頼み込んだ。
バタルトゥへオイマト族が騒乱に加わらないように願い出たのだ。
「……招待した客人に無礼を働くような者は、オイマト族にはいない」
どうやらバタルトゥは既に自分の部族内へ注意喚起してくれていたようだ。
陽炎の心配が杞憂に終わり、そっと胸を撫で下ろす。
「僕はヴェルナーさんが部族の方とどのような話をされるのかが気になります。
何をお話したいのか。その辺りを聞いておきたいのです。単に部族を懐柔させたいのだけなら、協力はしかねます」
ユキヤは、帝国と部族が手を取り合える関係を最良としていた。
今回の話し合いは、お互いを知る為の大切な場。
今夜この場所からすべてが始まる――そう考えているようだ。
「単に部族を懐柔するだけなら武力で制圧すれば良いだけです。
しかし、最大の目的である歪虚を倒す事は叶わないでしょう。それだけ歪虚は強大です。帝国としては皆さんが生き残る術を指し示しているのですがねぇ」
そう言いながら、ヴェルナーはため息をついた。
帝国は部族を対歪虚として有力な戦力と見ている。単なる懐柔で帝国へ引き入れても、その後戦力として役に立たないのであれば意味が無い。今の士気と戦力を維持しながら歪虚と戦う方法を模索しているようだ。
帝国と辺境の行く末を思案するユキヤ。
そこへヴェルナーが、再び口を開く。
「ベスタハの悲劇」
「!」
その言葉に反応したのはバタルトゥだった。
「先日お会いした際、あなたはこの言葉を聞いた途端に私をこの祭りへの招待を決意されました。何故でしょう?」
「…………」
「あなたは『部族の進むべき道は、変革の中にある』と仰った。
では、部族が変わらなければならない理由は何なのか。鍵は『ベスタハの悲劇』です。変わらなければ、あの悲劇を繰り返す。それだけは部族として絶対に避けなければならない。
――違いますか?」
「…………」
「私の推理では、『ベスタハの悲劇』を引き起こした内通者は……」
「やめろっ!」
ここで初めてバタルトゥが声を荒げた。
周囲に響く怒声は、空気を張り詰めさせて緊張感を漂わせる。
このままでは交渉の場が決裂する。
しかし、ここで思わぬ事件が起こる。
――がちゃんっ!
静架が、運んでいた酒を派手に周囲へぶちまけてしまう。
「すいません、すぐに片付けます」
ヴェルナーの前で、薄ら瞳に涙を浮かべて平謝りする静架。
懸命に皿を重ねて掃除する静架だが、そのお陰で一触即発の空気は何処かへ消え失せてしまった。
「お待たせ!」
そこへオキクルミがファリフを連れてやってきた。
「こんばんわ! 今日は楽しんでいってよ」
「はい」
ファリフの言葉にヴェルナーが答える。
次の瞬間、ファリフの体は固まった。
「あ、帝国!? なんでここにいるんだ?
オキクルミ、案内する人って……」
オキクルミから事情を聞かされるファリフ。
しばらくは不満そうな顔を浮かべていた。
●
「色々な事が絡み合っているけど、辺境も変わらないといけない時が来ていると思うんだ」
立ち尽くすファリフに対して、オキクルミは優しく諭すように話掛ける。
オキクルミは辺境が帝国同様変わらなければならない事を強調する。
そして、変わる為には耳を塞いで文句を言っているだけではダメ。帝国の話も聞かなければ、本当の意味で変わる事はできない。
「……うん」
その言葉を聞いていたファリフは、テーブルの空席に腰掛ける。
目の前にはヴェルナー。
握り拳を作って、沸き上がる怒りを必死に堪えているようだ。
「ファリフ君。見て、聞いて、相談して、その後思ったようにすればいいんだよ」
「では」
アウレールは、テーブルの上に資料を並べた。
聞き取り調査を中心に、『辺境部族が滅亡していった状況』と『帝国へ帰順した部族がどの程度生き残っているか』が記載されている。あくまでもアウレールが集めた情報である為に精度に疑問はつくが、推移だけは合っているはずだ。
「ここまでとは……」
陽炎も眉間に皺を寄せる内容だ。
特にここ数年で滅亡した部族は爆発的に増加している。
「この資料にある通り、生き残る事を優先するのであれば帝国へ身を寄せる事が最善だ。自主独立路線を掲げて部族会議で叫ぶのも結構。だが、歪虚と部族のみで戦い続ける事が如何に困難か、理解されているのであろう?」
「でも、ボク達には先祖代々から受け継がれた者を捨てないといけないんだよ?」
そう言いながら、ファリフはヴェルナーに視線を送る。
「ええ、帝国臣民となっていただきます」
「ほら! ボク達が部族で居続けるなら、帝国に入っちゃダメなんだよ!」
ヴェルナーの言葉でファリフが声高に叫ぶ。
文化や伝統の維持は部族が存続していれば継承されていく。
しかし、ヴェルナーは帝国臣民として彼らを扱うと断言している。つまり、帝国へ下った時点で部族は解散。辺境出身の帝国臣民となる。
「誇りを守る事、命を守る事……どっちも大切な事で、簡単じゃない。
けどさ。大昔から今まで、他所からの干渉をされようが、多くの仲間を失おうが、僕達は辺境の民としてここにいる」
陽炎は、辺境に生きてきた民として話し始めた。
「ハッキリした像はまだ見えない。けど……帝国の力で折れていないから、まだ部族は帝国に吸収されていない。きっと絶対に折れないものが、部族のみんなの中にあるんじゃないか。
僕は、ハンターになってそれを垣間見ることができた。
だから、一部族の族長として、それを掴んで戦わなくちゃいけないんだ」
陽炎は、ハンターとなった日々を振り返っていた。
辺境部族には芯がある。
それが折れない限り、まだ戦う事ができる。
「そうだよね! ボクもそう思う! 辺境は帝国に頼らなくっても戦えるよね!」
陽炎の励ましで、ファリフは再び元気を取り戻す。
その傍らで、ベアトリスは帝国寄りの意見を述べる。
「帝国は奪うのではなく選択肢を与えているのではなくて?
部族を捨てて帝国へ帰属された方々も、己の意志で選択した結果ですわ。
ところで、ファリフさん。星の友とはどういうものなんですの?」
「うん。一緒に歪虚をやっつけて、辺境を守ってくれる友達だよ」
「では、そのヴェルナーさんと星の友になっていただければ?」
「だめ! 帝国に頼らず星の友と一緒に歪虚を倒すんだ!」
「そう、残念ですわ」
ベアトリスからすれば、帝国に頼らず星の友を集めて部族と一緒に歪虚と戦おうとするのであれば都合の良いお友達でしかない。そして、そのような関係であればベアトリスは星の友になる気はまったくない。
しかし、そこへヴェルナーが空気を読まずに口を挟む
「ところで、あなたが部族の者を惹き付ける魅力は何でしょう? ファリフ・スコールの持つカリスマ性と表現すれば良いのでしょうか」
「……それなら明確だ」
バタルトゥが口を開いた。
「どういう事でしょう?」
「スコール族の言い伝えでは『体に赤き狼の印を持つ者、部族を未来へ導く者となる』とされている。ファリフには、その赤き狼の印がある」
バタルトゥによれば、ファリフは生まれた時から族長の座を約束されていたらしい。
幼い頃はスコール族の長老衆がバックアップ。今日までスコール族の族長として頑張ってきた。部族会議でも大きな勢力を率いているのは、そのような理由があったようだ。
「どうするんだ、ヴェルナー?
ボクと辺境部族を力づくで帝国に引き入れるのかい?」
臨戦態勢とまでは行かないまでも、やや高圧的に出るファリフ。
それに対してヴェルナーは徐に椅子を立った。
「帰ります」
「え?」
「『ノアーラ・クンタウ』へ戻ります」
帰り支度を始めるヴェルナー。
それに対して呆気に取られるファリフ。
「帰るの?」
「ええ、そう申し上げたはずです。
……あ、最後に一つだけ。あなたは部族会議を一つにまとめ、本当に部族だけで歪虚を倒すおつもりですか?」
人差し指を立てて質問を投げかけるヴェルナーに対して、ファリフは力強く頷いた。
「もちろん! 辺境は、ボクと星の友と部族のみんなで守るんだ!」
●
「あなたもハンターでしたか。
少々強引でしたが、あなたの配慮に感謝致します」
ヴェルナーの傍らには護衛として静架が居た。
静架は任務終了となる前に、聞いてみたい事があった。
「今日は収穫があった?」
ファリフへ直接質問を投げかけると思いきや、退席を決意したヴェルナー。
何かしらの理由があると考えた静架は、ずっと脳裏に引っかかっていたのだ。
「ええ、ありましたよ。
辺境は、私が思う以上に危機的状況という事実が」
「…………」
「ファリフ・スコールは霊闘士として優秀。言い伝えの印を持ち、カリスマ性も併せ持つ。しかし、族長としては――いただけません。
論理的思考を持たず感情論で物事を判断する。つまり、彼女は幼すぎます」
ファリフは、まだ子供だ。
あどけなさも残る少女で、好奇心も旺盛。きっと恋も知らない年齢だろう。
「いずれは周囲の支援を得て大部族の族長になるに違いありません。しかし、歪虚は待ってくれないでしょう」
辺境に残された時間は短い。
歪虚が動き出す事に備えて、準備をしなければならない。
「では、どうされるおつもりですか?」
静架は、敢えて核心に触れる質問をする。
ヴェルナーは一呼吸置いた後、しっかりと答える。
「戦力を分散して勝てる相手ではありません。誰かが辺境部族をまとめる必要があります。
バタルトゥさんが部族会議をまとめるならそれも良いでしょう。
ですが、それが叶わないのなら……辺境部族は、すべて帝国へ帰順していただきます」
炎番の役目を終えたばかりのファリフ・スコール(kz0009)を、オキクルミ(ka1947)は飲み物を持参して出迎える。
「オキクルミ! 夜煌祭に来てくれたんだ。今日は遊びに来てくれたの?」
オキクルミから渡された飲み物を口へと運ぶファリフ。
「それがさー、今日はお仕事でさ。めんどうくさい人の案内役なんだ」
「へぇー、誰なんだろう?」
面倒くさそうな顔を浮かべるオキクルミの前で、ファリフは首を傾げる。
ハンターを連れて夜煌祭へ来るなんて、部族の人なのかな?
それとも、よその人?
ファリフは脳裏で様々な想像を巡らせる中、オキクルミは表情を笑顔に変えてファリフへ声をかける。
「ファリフ君、一緒にきてもらえる?」
●
ヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)は、ハンターと共に夜煌祭の会場を訪れていた。
「ヴェルナーさん、周囲にお気を付けください」
「そうです。ここで襲われるとは考えたくありませんが、気を付けてください」
ベアトリス・ド・アヴェーヌ(ka0458)とユキヤ・S・ディールス(ka0382)が、ヴェルナーの傍らを固める。
今回の依頼はヴェルナーを護衛となっている。辺境部族の中には帝国を忌み嫌う者もいる。そこでヴェルナーはハンターへ護衛を依頼したのだ。
「ありがとうございます」
「あれ? あいつ、帝国の奴じゃねぇか?」
雑踏の中から、太い男の声が聞こえてくる。
ベアトリスが顔を上げれば、そこには部族の戦士らしき男が三人。
行く手を阻むように立ち塞がっている。
「何か御用でしょうか?」
ベアトリスは部族の者が酔っている事が、すぐに分かった。
だが、こちらから手を出せば被害は甚大になる。あくまでも冷静に、かつ礼儀をもって事態の沈静化にあたる。
「帝国の者はお引き取り願いたい」
部族の戦士は、明らかに挑発的な態度だ。
ベアトリスはヴェルナーの姿を戦士達から隠すように前へ出る。
――しかし。
「『ノアーラ・クンタウ』も辺境地域の一部です。私も辺境の者に違いありません」
突如、背後からヴェルナーの声。
戦士達は、一気に機嫌を悪くする。
「なんだと?」
「おやおや。気分を害されたのであればお詫び致します」
素直に頭を下げるヴェルナー。
しかし、戦士達の怒りは収まらない。
「てめぇ、いい加減に……」
「そこまでにしていただこう」
怒り狂う戦士に向かってアウレール・V・ブラオラント(ka2531)が歩みを阻む。
さらにその背後には辺境部族出身の陽炎(ka0142)が立っている。
「やれやれ、釘を刺す前に騒ぎが起こってしまいましたか。
それも護衛対象がわざわざ相手を挑発するとは……」
「挑発をした覚えはありません。間違いを訂正して差し上げたのです」
陽炎は、思わずため息をついた。
「我等に敵意はない。武器を持たず、敢えて丸腰でこの夜煌祭へと赴いた。
まさか、辺境の誇りある部族の戦士が丸腰の者を相手に大勢で組み敷く事など……あるまいな?」
陽炎とヴェルナーの会話をよそに、アウレールは戦士達へ強い視線を送る。
これ以上の騒動は、ハンターとして絶対に許さない。
その想いはベアトリスとユキヤも同じであった。
「僕も武器は持っていません。話し合いに来たんです。
お互いが何を考えているのか。それは分かり合う事に必要じゃありませんか」
「そもそも、このようなところで喧嘩を起こせば部族の顔に泥を塗ることになるわ。
三人とも、相応の覚悟はあるのかしら?」
何ともいい知れない感覚に襲われる戦士達だが、ここで更なる追い打ちを受ける。
「……どうした?」
姿を現したのは、オイマト族族長のバタルトゥ・オイマト(kz0023)であった。
騒ぎに気付いてここへ赴いたようだ。
バタルトゥは、戦士達の方へ向き直って一瞥する。
「この者達は、オイマト族が夜煌祭へ招待した者達だ。
異論があるのであれば、俺が聞く」
「運がいい奴め!」
バタルトゥの言葉を受け、戦士達は早々に退散。
慌てて人混みへ消えていく戦士達の姿を、ハンター達は黙って見送った。
「……こっちへ来い」
バタルトゥは、静かな場所へと一行を誘導する。
●
「想像以上の忙しさです」
静架(ka0387)は、料理や酒を運びながらため息をついた。
予定であれば宴会手伝いとして潜入し、酒癖の悪い常習犯に酒を飲ませて酔いつぶすはずだった。
しかし、今回は普通の宴会とは訳が違う。
辺境中の部族が集まるのだから、酒を嗜む部族が次々と登場。静架は給仕として働き続けていた。
「料理です」
「……ありがとう」
静架が届けたテーブルの先には、バタルトゥとヴェルナー、さらには一緒に依頼を受けたハンター達が同席していた。
静架はテーブルにいる面々の顔色を窺いながら、運んだ料理を次々とテーブルに並べていく。
その最中、バタルトゥに対して陽炎が切り出した。
「スコール族がこちらへ危害を加えようとしても、オイマト族が同調したりしないでもらえないかな? 夜煌祭の場で流血騒ぎを起こしたくない……どうか、この通りだ」
陽炎はバタルトゥへ頼み込んだ。
バタルトゥへオイマト族が騒乱に加わらないように願い出たのだ。
「……招待した客人に無礼を働くような者は、オイマト族にはいない」
どうやらバタルトゥは既に自分の部族内へ注意喚起してくれていたようだ。
陽炎の心配が杞憂に終わり、そっと胸を撫で下ろす。
「僕はヴェルナーさんが部族の方とどのような話をされるのかが気になります。
何をお話したいのか。その辺りを聞いておきたいのです。単に部族を懐柔させたいのだけなら、協力はしかねます」
ユキヤは、帝国と部族が手を取り合える関係を最良としていた。
今回の話し合いは、お互いを知る為の大切な場。
今夜この場所からすべてが始まる――そう考えているようだ。
「単に部族を懐柔するだけなら武力で制圧すれば良いだけです。
しかし、最大の目的である歪虚を倒す事は叶わないでしょう。それだけ歪虚は強大です。帝国としては皆さんが生き残る術を指し示しているのですがねぇ」
そう言いながら、ヴェルナーはため息をついた。
帝国は部族を対歪虚として有力な戦力と見ている。単なる懐柔で帝国へ引き入れても、その後戦力として役に立たないのであれば意味が無い。今の士気と戦力を維持しながら歪虚と戦う方法を模索しているようだ。
帝国と辺境の行く末を思案するユキヤ。
そこへヴェルナーが、再び口を開く。
「ベスタハの悲劇」
「!」
その言葉に反応したのはバタルトゥだった。
「先日お会いした際、あなたはこの言葉を聞いた途端に私をこの祭りへの招待を決意されました。何故でしょう?」
「…………」
「あなたは『部族の進むべき道は、変革の中にある』と仰った。
では、部族が変わらなければならない理由は何なのか。鍵は『ベスタハの悲劇』です。変わらなければ、あの悲劇を繰り返す。それだけは部族として絶対に避けなければならない。
――違いますか?」
「…………」
「私の推理では、『ベスタハの悲劇』を引き起こした内通者は……」
「やめろっ!」
ここで初めてバタルトゥが声を荒げた。
周囲に響く怒声は、空気を張り詰めさせて緊張感を漂わせる。
このままでは交渉の場が決裂する。
しかし、ここで思わぬ事件が起こる。
――がちゃんっ!
静架が、運んでいた酒を派手に周囲へぶちまけてしまう。
「すいません、すぐに片付けます」
ヴェルナーの前で、薄ら瞳に涙を浮かべて平謝りする静架。
懸命に皿を重ねて掃除する静架だが、そのお陰で一触即発の空気は何処かへ消え失せてしまった。
「お待たせ!」
そこへオキクルミがファリフを連れてやってきた。
「こんばんわ! 今日は楽しんでいってよ」
「はい」
ファリフの言葉にヴェルナーが答える。
次の瞬間、ファリフの体は固まった。
「あ、帝国!? なんでここにいるんだ?
オキクルミ、案内する人って……」
オキクルミから事情を聞かされるファリフ。
しばらくは不満そうな顔を浮かべていた。
●
「色々な事が絡み合っているけど、辺境も変わらないといけない時が来ていると思うんだ」
立ち尽くすファリフに対して、オキクルミは優しく諭すように話掛ける。
オキクルミは辺境が帝国同様変わらなければならない事を強調する。
そして、変わる為には耳を塞いで文句を言っているだけではダメ。帝国の話も聞かなければ、本当の意味で変わる事はできない。
「……うん」
その言葉を聞いていたファリフは、テーブルの空席に腰掛ける。
目の前にはヴェルナー。
握り拳を作って、沸き上がる怒りを必死に堪えているようだ。
「ファリフ君。見て、聞いて、相談して、その後思ったようにすればいいんだよ」
「では」
アウレールは、テーブルの上に資料を並べた。
聞き取り調査を中心に、『辺境部族が滅亡していった状況』と『帝国へ帰順した部族がどの程度生き残っているか』が記載されている。あくまでもアウレールが集めた情報である為に精度に疑問はつくが、推移だけは合っているはずだ。
「ここまでとは……」
陽炎も眉間に皺を寄せる内容だ。
特にここ数年で滅亡した部族は爆発的に増加している。
「この資料にある通り、生き残る事を優先するのであれば帝国へ身を寄せる事が最善だ。自主独立路線を掲げて部族会議で叫ぶのも結構。だが、歪虚と部族のみで戦い続ける事が如何に困難か、理解されているのであろう?」
「でも、ボク達には先祖代々から受け継がれた者を捨てないといけないんだよ?」
そう言いながら、ファリフはヴェルナーに視線を送る。
「ええ、帝国臣民となっていただきます」
「ほら! ボク達が部族で居続けるなら、帝国に入っちゃダメなんだよ!」
ヴェルナーの言葉でファリフが声高に叫ぶ。
文化や伝統の維持は部族が存続していれば継承されていく。
しかし、ヴェルナーは帝国臣民として彼らを扱うと断言している。つまり、帝国へ下った時点で部族は解散。辺境出身の帝国臣民となる。
「誇りを守る事、命を守る事……どっちも大切な事で、簡単じゃない。
けどさ。大昔から今まで、他所からの干渉をされようが、多くの仲間を失おうが、僕達は辺境の民としてここにいる」
陽炎は、辺境に生きてきた民として話し始めた。
「ハッキリした像はまだ見えない。けど……帝国の力で折れていないから、まだ部族は帝国に吸収されていない。きっと絶対に折れないものが、部族のみんなの中にあるんじゃないか。
僕は、ハンターになってそれを垣間見ることができた。
だから、一部族の族長として、それを掴んで戦わなくちゃいけないんだ」
陽炎は、ハンターとなった日々を振り返っていた。
辺境部族には芯がある。
それが折れない限り、まだ戦う事ができる。
「そうだよね! ボクもそう思う! 辺境は帝国に頼らなくっても戦えるよね!」
陽炎の励ましで、ファリフは再び元気を取り戻す。
その傍らで、ベアトリスは帝国寄りの意見を述べる。
「帝国は奪うのではなく選択肢を与えているのではなくて?
部族を捨てて帝国へ帰属された方々も、己の意志で選択した結果ですわ。
ところで、ファリフさん。星の友とはどういうものなんですの?」
「うん。一緒に歪虚をやっつけて、辺境を守ってくれる友達だよ」
「では、そのヴェルナーさんと星の友になっていただければ?」
「だめ! 帝国に頼らず星の友と一緒に歪虚を倒すんだ!」
「そう、残念ですわ」
ベアトリスからすれば、帝国に頼らず星の友を集めて部族と一緒に歪虚と戦おうとするのであれば都合の良いお友達でしかない。そして、そのような関係であればベアトリスは星の友になる気はまったくない。
しかし、そこへヴェルナーが空気を読まずに口を挟む
「ところで、あなたが部族の者を惹き付ける魅力は何でしょう? ファリフ・スコールの持つカリスマ性と表現すれば良いのでしょうか」
「……それなら明確だ」
バタルトゥが口を開いた。
「どういう事でしょう?」
「スコール族の言い伝えでは『体に赤き狼の印を持つ者、部族を未来へ導く者となる』とされている。ファリフには、その赤き狼の印がある」
バタルトゥによれば、ファリフは生まれた時から族長の座を約束されていたらしい。
幼い頃はスコール族の長老衆がバックアップ。今日までスコール族の族長として頑張ってきた。部族会議でも大きな勢力を率いているのは、そのような理由があったようだ。
「どうするんだ、ヴェルナー?
ボクと辺境部族を力づくで帝国に引き入れるのかい?」
臨戦態勢とまでは行かないまでも、やや高圧的に出るファリフ。
それに対してヴェルナーは徐に椅子を立った。
「帰ります」
「え?」
「『ノアーラ・クンタウ』へ戻ります」
帰り支度を始めるヴェルナー。
それに対して呆気に取られるファリフ。
「帰るの?」
「ええ、そう申し上げたはずです。
……あ、最後に一つだけ。あなたは部族会議を一つにまとめ、本当に部族だけで歪虚を倒すおつもりですか?」
人差し指を立てて質問を投げかけるヴェルナーに対して、ファリフは力強く頷いた。
「もちろん! 辺境は、ボクと星の友と部族のみんなで守るんだ!」
●
「あなたもハンターでしたか。
少々強引でしたが、あなたの配慮に感謝致します」
ヴェルナーの傍らには護衛として静架が居た。
静架は任務終了となる前に、聞いてみたい事があった。
「今日は収穫があった?」
ファリフへ直接質問を投げかけると思いきや、退席を決意したヴェルナー。
何かしらの理由があると考えた静架は、ずっと脳裏に引っかかっていたのだ。
「ええ、ありましたよ。
辺境は、私が思う以上に危機的状況という事実が」
「…………」
「ファリフ・スコールは霊闘士として優秀。言い伝えの印を持ち、カリスマ性も併せ持つ。しかし、族長としては――いただけません。
論理的思考を持たず感情論で物事を判断する。つまり、彼女は幼すぎます」
ファリフは、まだ子供だ。
あどけなさも残る少女で、好奇心も旺盛。きっと恋も知らない年齢だろう。
「いずれは周囲の支援を得て大部族の族長になるに違いありません。しかし、歪虚は待ってくれないでしょう」
辺境に残された時間は短い。
歪虚が動き出す事に備えて、準備をしなければならない。
「では、どうされるおつもりですか?」
静架は、敢えて核心に触れる質問をする。
ヴェルナーは一呼吸置いた後、しっかりと答える。
「戦力を分散して勝てる相手ではありません。誰かが辺境部族をまとめる必要があります。
バタルトゥさんが部族会議をまとめるならそれも良いでしょう。
ですが、それが叶わないのなら……辺境部族は、すべて帝国へ帰順していただきます」
依頼結果
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MVP一覧
- ツィスカの星
アウレール・V・ブラオラント(ka2531)
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 静架(ka0387) 人間(リアルブルー)|19才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2014/09/23 23:23:58 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/09/20 22:22:00 |