その女、犯罪者につき

マスター:DoLLer

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/10/07 22:00
完成日
2016/10/12 23:05

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 月も細くなった頃の夜半過ぎ。
 カーテンなどせずとも小さな窓から差し込む弱弱しい星明かりだけではほぼ真っ暗に等しい。
 そんな部屋の扉が音もなく、そっと開かれた瞬間、裂くような光明が部屋を照らした。LEDライトだ。
 夜闇に目が慣れた侵入者はその白閃に目を焼かれて、たじろぎつつも素早く背中を壁につけたが、時すでに遅し。そのこめかみに鉄の冷たい筒先が押し付けられていた。
「あら、アミィじゃない」
「姫様ってさ、本当に鋭いよね……」
 侵入者は誰でもない、この館に一緒に寝起きするアミィであった。反帝国過激派組織のヴルツァライヒに手を貸していた女だ。頭はキレて、性格もキレている自由奔放を形にしたような人間だ。
 ただし頭は相当に良いようで、彼女がクリームヒルト傘下となってからは仲間は増え、自由にできる財産も手に入れ、かなり辺鄙な分野とはいえ最新技術の開発にも成功し、大型冷蔵庫や魔導列車などの開発に漕ぎつけるなど、地方復興を目指すクリームヒルトの願いを一気に形にしていく才媛なのは間違いなかった。
「何しに来たの? 暗殺?」
「違うって。ほら、これからは一段と人員が必要になるから、お姫様の為に働いてくれるファンが必要になるわけよ。そう、姫様の存在をもっと知らしめる! そして誰からも愛される存在になってもらう! その為のイメージアップ作戦を進めておかなければと思ってて……」
 クリームヒルトはため息をついて視線をちらりと彼女の手元に向けた。
 最近一般向けにも発売されるようになった魔導カメラだ。しかもご丁寧に照明用のライトまで持ってきている。
「こんな夜中に? そんなこと頼んだ覚えはないけれど」
「普通の顔は昼に撮ればいいじゃん。でもね、熱狂的な信者を生み出すためには、そんなノーマルなブロマイド以外にも、レアな食事光景とか、更にはスーパーレアな寝顔なんかも必要なわけよ」
「そういえばお風呂に入っていた時にも視線を感じたわね」
「あれは……ウルトラレア……ってーか、お姫様ってなんでそんなに勘いいワケ?」
「勘が悪くちゃ今頃生きていないからよ」
 クリームヒルトは革命で王座を奪われた一族の末梢だ。暴徒と化した人間達の残虐さは彼女は良く知っていたから夜も足音を聞き逃さないし、風呂でも湯につかるなどしたこともない。
 と、同時にクリームヒルトはアミィのポシェットから、彼女の言う『レア以上のブロマイド』の数々をひっぱり出して確認した。自分は元より、ベント伯やメルツェーデス、ボラ族の姿や、果てはハンターなどの顔も見られる。
「とりあえず、お仕置きね」
 一言そう言うと、クリームヒルトはアミィをふんじばった。


「いやはや、これは素晴らしいですな」
 次の日、クリームヒルトの元に訪れてきた見慣れぬ男は魔導列車を見上げて、子供のように興奮してはしゃいでいた。
「動力はどうなっているのでしょうか」
「マテリアルです。先頭車両でマテリアルを発動させると同時に、線路であるレールに導通し、車体・線路の両面から貨車を推進。最後尾の車両からマテリアルを回収して再利用します。線路はそのマテリアルの流れを補助するものですから、歪虚に襲われたり天災や時間経過によって多少破損してもそのまま利用できます」
「ほほう!」
 男はますます興味深く目を見開いて、魔導列車というものを見つめてはため息をついた。
「さすがはモンドシャッテの系譜ですな。錬金術の振興に努めた第8代オードルフ帝を思い出します」
 その言葉にクリームヒルトは眉ひとつ動かすことなく、スカートをつまんで丁寧に礼をした。偉大な先祖の名前を出されることに複雑な思いはあったが、目の前にしている男にそれを表すのは危険な気がした。
「これは地方内務課、いやいや帝国としても協力していきたいところです。クリームヒルト様の事業は完全バックアップして、帝国全土どこに行っても差異の無い豊かさを供給したいものです」
「それはどうも。帝国が本腰を入れて地方再建をしてくださるなら誰にとっても喜ばしい事でしょう」
 そんな言葉に男はニコニコとしていたが、やがて気落ちした顔をした。
「ですがね、あれはいけない」
「あれ、とは?」
「アミィですよ。貴女様が匿っていらっしゃり、そして責任をもって面倒をみてくださっているのは承知しております。
 ですが、あれは帝国とエトファリカの国交を破断させようと画策し、また詐欺や強盗致傷、さらには歪虚と情報をやりとりしているという噂もあります。いくらクリームヒルト様が面倒を見ているといいましてもね。ちゃーんと責任はとってもらうべきです」
 …… ……。
 クリームヒルトはしばらく押し黙った。
 アミィはここまでをこぎ着けてきたクリームヒルトの懐刀として活躍してくれた。それに首輪をつけられるということは自分の活動にも問題はでかねない。しかしこれを断れば魔導列車は地方全土を走らせることは難しくなるかもしれない。
 目を閉じて、クリームヒルトはゆっくりとアミィの姿を思い浮かべた。
 魔導カメラで盗撮しようとしている姿。
 それを若者に売りつけようとしている姿。
 興奮した若者に歪んだ願望を植え付ける姿。
 民の為に頑張るんでしょ、と無茶ぶりする姿。

「わかりました。しかし、時間は少々いただきたいと思います。アミィは天才ですので、すぐに捕まえられるとも思いません。ハンターに依頼しようと思います」
「いいですよ。くれぐれも逃したり、死なせることのありませんように。私たちが望むのは正しく罪を償ってもらうことですから」

リプレイ本文

「えー、これじゃ使い物にならないじゃないですか」
 ソフィア =リリィホルム(ka2383)は期待していた鉱山を目の前にして落胆の声を上げた。鍛冶屋として期待していた鉱山の入り口は崩落し瓦礫の山だった。
「この前、爆破されちゃったんだ……それにしてもあの町でこんなものが見られるなんて……冒険の匂いがする!」
 呆れるソフィアとは対照的に、時音 ざくろ(ka1250)はキラキラと目を輝かせていた。
 身の丈を何倍も超えた黒金の車体。車体を走るマテリアルパイプ。魔導列車はマテリアルの光を随所に光らせながら、ざくろの目の前にあるのだ。
「これが帝国の荒野を走るのかぁ。どんな仕組みなんだろう。これがどんな冒険を生むんだろう」
 ざくろは夢に胸躍らせながら、丹念に車体を調べていた。残念ながら細かい仕組みはよくわからないが、大掛かりな機構が複雑に並ぶ外観だけでも十分に胸を躍らせた。
「お気楽なこった」
 彼に聞こえないようソフィアはぼそりと呟いた。今回の捕物はめんどくさいアミィが相手だ。帝国と東方の交友を一計でこじらせようとした時はソフィアも随分と走らざるを得なかったことはまだ記憶に残っている。
「逃げるとしたらどこで飛び出すか、なんですよねぇ」
 それにしてもアミィはどうやって逃げるのだろう。ソフィアは首をひねった。鉱山は崩落して進めない。周囲は崖が多く、まともに移動しようと思えばどうしても入り口を通過しないといけない。逃げ場はないのだ。
 どうにも不可解なことが多い。今回の捕物劇は。相手がアミィだからこそなおそう思うのだ。
「ん?」
 不意にざくろの声のトーンが跳ね上がり、ソフィアが振り向いた。
「これ……何の模様だろう?」
 ざくろが指し示していたのは列車ではなく、線路だった。銀色のレールはよくよく見ると細かな文様が描かれている。
「うーん魔術っぽいですねぇ。でも辺境とかでみかける紋様にも見えますし。どうみてもリアルブルーや機導術とは縁遠そうな仕組みですけど?」
「だよね?」
 二人で顔を見合わせたが、答えはどうにも出てこない。
 考えてこむソフィアは町の建物にも同じ紋様がところどころ、刻まれていることに気が付いた。風化している様子もないということは……最近描いたものだ。
 気になって二人で探索してみればあちらこちら、隠れるようにしてそれは刻まれていた。まだ中途半端のようで目印だけのものもかなりある。
「……なんだろう?」
 顔を見合わせる二人の上にパルムが走り回っていた。一匹のパルムはアミィのだろう。それが残り二人のパルムを引き連れるような形になっている。
 思わず目が合った瞬間、パルムの胸に不思議な装置がついていることに気が付いた。が、瞬間的にソフィアはにっこり営業スマイルを浮かべて手を振った。
「……この紋様とは関係ないみたいだけど。多分、監視用かあるいは……」
 人形使い謹製の装置か。


「この度は、魔導列車への御乗車……うぷ……ありがどー ご、ざいます。列車はただいま鉱山、こーざにむか、胸がむかむかしてダメ、もうダメ」
 リアルブルーではお馴染みの駅員の制服を着こんだ南條 真水(ka2377)は顔を真っ青にしながらアナウンスをしたが早々にダウンし、ヒース・R・ウォーカー(ka0145) から渡された酔い止め薬をザラザラと流し込んでいる様子をハンター、そして国からの観覧ということで役人数名は見守ることしかできなかった。
「南條さん酔い止めだぁいすき……おえぷ」
「乗り物酔いもここまで来るとユーモアだな」
 アウレール・V・ブラオラント(ka2531)は至って冷静な目で、自作のパンフレットに書いた『快適な乗り心地』という一文を塗りつぶした。
「花があっていいっすね! より取り見取りな感じっす!」
 ダウンした南條のフォルムもそれはそれで。神楽(ka2032)は幸せそうに笑った。だぶだぶの服のクリームヒルト、胸の辺りが厳しそうなメルツェーデス、それから。
「ちょっと短すぎるんじゃないかしら」
 スカート丈を盛んに確認する音羽 美沙樹(ka4757)、そして完璧に着こなしているアミィ。雰囲気も違えば魅力も違う女性陣がリアルブルーでも魅力に取りつかれる人が後を絶たないという鉄道系制服を着込んでいるのだから。
「ハッハー。さあ遠慮なくシャッターを切るといいっすよ! パッションの赴くままに!! 魔導列車の良い所とこの俺の良い所もあますところなく表現するっす!!」
 そしてそんな彼女たちの真ん中で、オールバックにサングラスを決めた無限 馨(ka0544)がばっちり決め込んでいた。
「おっけーっす。それじゃあ、無限はもっと右っすね」
 神楽は特製三下魔導カメラを構えると、無限を右へと手で誘導する。
「こっち……え、もっと? こんなに離れて映るんすか?」
「はーい、OK。いくっす!」
 完全に被写体からフェードアウトした無限をよそに女性陣だけを撮影する神楽。
「ちょ……!」
 さすがに喧嘩になる二人をよそに、そっと南條がアミィの袖を引いた。
「そういえば、例のアレ……いけてる?」
「もっちろん! ナナクロちゃんにそっぽ向かれた時の表情とか。よだれ垂らして昼寝しているシーンはどう?」
「もはや変態だね……ふふ、でも、いいな、そういう気の抜けた顔が見られるの」
 虫の息の南條はそれでも口元をにやりとさせて指を一つ立てた。交渉成立だ。
 今は全員の眼が無限と神楽に向いている。この瞬間なら写真を授受しても気づかれまい。
 アミィは内ポケットから写真を取り出した瞬間。
「はっはっは、現行犯はさすがに捨て置けんな」
 アウレールがその腕をむんずと掴んだ。後ろを見れば神楽は無限に取り押さえられていた。
「アミィ……昨日の『打ち合わせ』がバレちまったっす」
「あーあ。下からの接写もおじゃんか、ご愁傷様」
 するり。制服の上着があっさりと脱げて、アウレールの腕から逃げ出したアミィはとても残念そうに神楽に言い放った。
「一人で逃亡なんて許さないっすよ! 道連れっす、一緒に捕まれっす!」
 神楽、無限、そしてアウレールが同時にアミィへと動いた瞬間。
 アミィは足元にある赤いボタンを足で蹴った。同時に慣性の働きによって、何もかもが右にずれる。
「こちらのボタンは急ブレーキ。線路が破断していたり、お客様の急病などの障害が発生した時に停止する仕組みでございます♪」
 全員がよろけて先頭車両への扉に押し込まれる最中、手すりにつかまったアミィは自分たちを見送るようにして愛嬌たっぷりの笑みを投げてよこした。
「そうは……させませんわ!」
 美沙樹はすばやくスカートの下に仕込んだローゼンメッサーを引き抜くと、慣性の働きとは真逆の方向、アミィへと投げつけた。
 アミィは軽く身をよじって回避したが、ベルトがメッサーの先に引っ掛けられはじけ飛ぶ。
「おおっ!?」
「傷つけないというのもまあ、大変なものですわ」
 この捕物劇は血を流してはならない。本気になったらアミィはそれこそ目の前の役人を盾にしてだって逃げ出すだろう。あくまでジョークとユーモアに富んだ世界で、油断と欺瞞に満ちた笑顔の世界で捉えなければならない。その為にはローゼンメッサーが彼女を傷つけてはならないことを美沙樹はよく知ったうえで狙っていた。
 美沙樹は小さく笑った次の瞬間、押し込められた人だかりの中に沈み込んだ。正確なる狙いをつけた分の代償だ。
「あ……ごめんなさいまし」
「大丈夫、幸せっす!」
 ほとんど体当たりするような勢いで壁と美沙樹の身体でサンドイッチにされた神楽は笑って親指を突き立てた。
「んもう、美沙樹ちゃんのえっちー。お着替えの時間くださーいな」
 切れたベルトを投げ捨てアミィは皆が態勢を立て直す前に反対方向へと逃げ始めた。
「そうはいかないねぇ」
 ヒースがぐっとかがんだ次の瞬間、美沙樹の肩を蹴り、そのまま貨車の壁を一気に走ってアミィに接近する。
「能力を使ってやろうってのは、ちょっといただけないなぁ。本気なんて見せるもんじゃないよ?」
「そうでもしないと逃げるだろ。薄々感づいていることは承知しているから、ねぇ」
 壁を走りながらワイヤーウィップを手動で引き抜くと、ヒースは大きく腕を振ってそれをしならせた。大きく伸びるワイヤーはアミィの行動範囲をせばめていた。
 これなら確実に捉えられる。
「あらん、気づいていたの? もー、ヒースくんってばまともに目も合わせられないくらい奥手のクセに、そういうとこだけ敏感なんだから」
「!?」
 腕が空を切る。ワイヤーにもひっかからない。
 目の前でアミィはにんまりと笑って、美沙樹の投げ放ったローゼンメッサーを持っていた。
「でも、あんまりお姉さんばかり見ていると、時計塔の番人様がお怒りになるんじゃない?」
 その言葉に一瞬だけ目が南條の方を向く。
 ほんの小さな隙間。その瞬間にローゼンメッサーがヒースの腹を切り裂いていた。
「ベルト、借りるね。いやー、なんていっても女の子だから、さすがに下丸出しは恥ずかしいからさー」
 切り裂いていたのは腹部ではなく、ベルトだ。それを引き抜いて、弧を描いて戻ってくるワイヤーを弾き飛ばすと、アミィは自分の腰に付け直した。
「こんなのでもいいかな? 網膜に焼き付けておくといいよ」
「なんていうか、ヒースさんって結局……格好いいな……ふふふ」
 ズボンがずり落ちそうになるヒースを見て、南條は疲れた笑いを浮かべた。ポーズはなんとも言えないが、それでも鋭い視線とアミィを捕縛しようとする鋭い瞳は南條の胸を軽く跳ねさせるのは、自分の主観がもう、歪んでしまっているからかもしれない。
「さって、危険を感じたのでアミィちゃんは逃げます!」
「アミィ! あんまり手荒なことはさせないでくれないっすか。みんな信頼してるんすよ。それなのにどうしてそんな茶化すように逃げ回るんすか」
 窓から脱出しようとするアミィに無限が叫ぶと、一瞬だけアミィの動きが止まった。
 その一瞬の間を逃すことなく、ざくろがジェットブーツの力で地面をけると、窓とアミィの間に滑り込む。
「ここは通せんぼだ」
「自分のしてきた事を考えるっす。どこかで罪を償わなけりゃいずれ一緒にいられなくなるっすよ」
 素早く間合いを取って最後尾への扉を背にしたアミィに今度は神楽も話しかける。
「どうせ捕まえて裁きを受けさせようっていうんでしょ? 役人が着た途端、カーテンしめて一人だけ特別者扱いされりゃわかるっつーの」
「なんだ気づいていたのか。流石なやつだな」
 アウレールは呆れた顔をして、拘束用のロープを取り出した。
「だったらさっさと観念するがいい。これまで見る限り愉快犯であり悪意はない。余計な『荷物』を抱え込むまでにさっさとラクになった方が幸せだぞ」
「だって……」
 言いよどむアミィ。初めて動きが鈍った瞬間、扉が軽く開いた瞬間。
 強烈な炸裂音が響いたかと思うとそのままアミィは体をのけぞらせて倒れ込んだ。
「おっと、ごっめーん」
 扉の後ろからひょいと顔を出したのはソフィアだった。何事かと戸惑う皆に魔導機械をちらりと見せて笑んだ後、そのままアミィを拾い上げた。
「年季がたんねーな」


「ヒルトちゃんにはアミィがまだ必要っす。だけど、犯罪者を匿っていることを問題にされたら互いの思いがすれ違って、残念な結果になるっすよ? 必要ならオレも一肌脱ぐっすから!」
 ぐるぐる巻きにされ、目隠しに猿ぐつわまでかまされたアミィの前、それはディートリヒや司法課の役人たちがいる前でもあったが、無限は堂々とそう言った。そんな言葉に役人たちは驚いていたのを見て、ヒースが彼らに言葉をかけた。
「確かにアミィは犯罪を犯したがな、その能力やコネクションは有効利用できる。監獄都市で『ボランティア』に従事させるより効率的な使い道があると思うけどねぇ?」
「いいんですか? そりゃあよりよい成果を出すなら国も助かりますし、それに応じてアミィも刑がどんどん減りますが」
 ディートリヒと司法課役人は顔を見合わせた。ハンターからそんな言葉が出るとは相当に驚きだったのだろう。
「はい、構いません。私が監督し、アミィには国の為にたくさんの活動をしてもらいます」
 クリームヒルトもしっかとそう言うと、役人たちも頷くしかできなかった。
「それではアミィには司法課長の判断が先に降りています。刑期370年。きっちり服するように」

「あれ、保釈金とかいらないんすか……? サイン入りプロマイド……作ったのに」
 いっぱいサインをして売り出そうとしていた無限は呆然としていた。
「まあ、買う奴いねーし、無駄っすね! プロマイドなんて可愛い女の子だけあば十分っすから!」
 けけけ、と笑いながら、神楽はアミィが隠し持っていたプロマイドの数々から、特に魅惑的な赤いスカートが半分はだけたバニーガールを見てにやにやと笑っていた。
 それをちらりと見て、わたわたしつつ神楽にぼそりと声をかけたのはざくろだった。
「あのさ……ごめん。それ、ざくろだよ」
「!!?」
「にしても、なんだったんだ。この茶番劇は……当然のこととはいえ、気持ち悪さだけが残るな」
 凍り付く神楽の横で、アウレールはぶつぶつと漏らしながら考えていた。
 アミィは早速首輪以外の拘束を解かれ、もういつもの通り振る舞っているではないか。
「何か裏があるな……」
「表も裏も何も、ここ裏ばっかりですよぉ? これ全部茶番だとしたら納得しません?」
 ソフィアはそう言いつつ、アミィが発表する魔導列車の帝国地方を進ませる計画を聞いていた。まだまだ時間のかかる話だが、少なくとも帝国の了解を得るという前準備は片がついていることをぼんやりと感じていた。
「首輪一つで、帝国の了解得ちゃいましたからね」
「最初からそれを狙っていたのか、しかしディートリヒとかいう役人が何故……あいつも関係者か?」
「地方内務課といえば先日ボラ族を無理やり兵士にしようとした係長もいましたわね。結局、ボラ族は姫様のお世話になって、係長は免職になったと聞いていますけれど」
「とんだタヌキばかりじゃないか……帝国の腐敗は一掃しきれていないというわけか。陛下が直接前線に出てきたくなる心中を察するに余りある話だ」
 美沙樹の言葉にアウレールは自分の親指の爪を噛み千切った。

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MVP一覧

  • スピードスター
    無限 馨ka0544
  • 大悪党
    神楽ka2032
  • 大工房
    ソフィア =リリィホルムka2383

重体一覧

参加者一覧

  • 真水の蝙蝠
    ヒース・R・ウォーカー(ka0145
    人間(蒼)|23才|男性|疾影士
  • スピードスター
    無限 馨(ka0544
    人間(蒼)|22才|男性|疾影士
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 大悪党
    神楽(ka2032
    人間(蒼)|15才|男性|霊闘士
  • ヒースの黒猫
    南條 真水(ka2377
    人間(蒼)|22才|女性|機導師
  • 大工房
    ソフィア =リリィホルム(ka2383
    ドワーフ|14才|女性|機導師
  • ツィスカの星
    アウレール・V・ブラオラント(ka2531
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • 清冽の剣士
    音羽 美沙樹(ka4757
    人間(紅)|18才|女性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン アミィへの質問卓
神楽(ka2032
人間(リアルブルー)|15才|男性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2016/10/06 23:34:55
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/10/03 09:05:14
アイコン 質問卓
無限 馨(ka0544
人間(リアルブルー)|22才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2016/10/06 13:40:33
アイコン 作戦相談所
ヒース・R・ウォーカー(ka0145
人間(リアルブルー)|23才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2016/10/07 19:58:58