• 初心

【初心】大ヤドカリと宿借り

マスター:深夜真世

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
LV1~LV20
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2016/10/11 19:00
完成日
2016/10/25 00:31

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

「いいか! 漁師町になぜテニスが似合うのかと言うと……」
 突然だが、クリムゾン・ウエストのとある漁師町でそんな声が上がった。
 周りには結構な人が集まっている。

 テニス、とは、リアルブルーのテニスのことで、こちらの世界にもあるようだ。
 声の主は大柄な男。
 名を、タケゾーという。暑苦しい男だが爽やかなテニスウエアに身を包んでいる。
 周りには彼の仲間の男性三人と小さな女の子が一人。いずれもテニスウエア。テニス用品やスポーツ用品を販売する商会「テラボ」の面々もいる。
 どうやら「テニヌ五虎将軍」、きょうはここでの販売促進に駆り出されているようで。

 それはそれとして、紅一点のフラ・キャンディ(kz0121)は、こっそりとタケゾー以外の一人、ヘルマに聞いてみた。
「テニスに似合う町とかあるの?」
「テニスはどの町にも似合う!」
 ヘルマ、腕組みしたまま熱血口調でこたえる。
「……これがあるからだぁ!」
 そんな二人をよそにタケゾー、ばさー、とその辺に丸めてあった網を広げた。
「これを二本の支柱に渡したロープにかければあっという間にコートの完成。ご覧のようにすぐにテニスをエンジョイできる。……素晴らしい。まったく素晴らしいぞ、この町は。ほかの町ではこうはいかん。これがこの町の真の力だ、漁師の勝利だ!」
 タケゾーの造ったネット越しに早速駆け出したセッサクとピューマがすぱんすぱんとラリーを始める。
 その熱血ぶりとタケゾー煽り文句に、集まった住民たちは「おおっ!」とすっかりのせられていたり。
 商人も早速たくさんのお買い上げでホクホクしている時だった。
「な、なんだ、あれはッ!」
「巨大やどかりじゃぁ~」
「砂浜から上がってこっちに来おる!」
 体高約三メートルはあろうかという巨大ヤドカリの上陸である。
「ぬうッ! 我らのテニスを邪魔するかッ!」
 タケゾー、私憤……もとい、義憤に吠える。
「行くぞ、ヘルマ、セッサク」
 ピューマの指示に「おお」と二人。逆三角編成で突っ込む。
 全員、トゲ付きの打撃専用ラケット(非売品)の装備だ。
「超マテリアルヌンチャク!」
「Zスクランダー!」
「超マテリアルスピン!」
 囲むと早速、既存スキルをオリジナル化した技で巨体の突進を止める。
 そしてッ!
「大吹雪山颪!」
 遅れて突っ込んだタケゾーが打撃専用ラケットを頭上でぶん回してヤドカリの殻割りに挑む。
 ――がきぃ。
 ヤドカリ、ぶくぶくっと泡を吹くと慌てて逆走。海に逃げていった。
 これにタケゾー、肩を怒らし振り返る。
「こら、フラッ! なぜ回り込んでないのだ!」
 フラ、びくっと小さくなる。
「え、だって集まった人たちを守るこの位置に一人は絶対必要だし……」
「ええい、正論を吐きおって~!」
 歯噛みするタケゾー。
 とにかく街は守った。恩人だからとテニス用品なども大量に売れた。

「というわけで、漁師町から大ヤドカリの警戒と退治の緊急依頼が入りました。敵の正体もはっきりしてますし、新人専用の依頼にします。だからまたバックアップ、よろしくお願いしますね」
 ハンターオフィスにテキパキした少年風係員の声。目の前に座るイマイチぱっとしないハンター、南那初華(kz0135)に言って聞かせる。
「ほへ? なんで私?」
 これは初華の言い分が正しい。ハンターは仕事を選ぶことができる。
 少年風係員は静かに書類の束をとん、と机で揃えてから整然と言った。
「過去の新人依頼でとても評判がよく、初華さん自身もとてもステキな笑顔をしてたからです。『やっぱり先輩は違う』ともっぱらの評判です」
 にこりと嬉しそうな笑み。ちなみに少年、美形である。
「そ、そんなことないよう……」
 いやんと頬に手をあて身をくねらせる初華。別に美少年好きとかショタコンとかではない。喜ばれているのが嬉しいのだ。
「ですから初華さん、またステキな笑顔を見せたくださいね」
「う……笑顔は知らないけど、頑張っちゃおうかな」
 少年風係員、「これで仕事が片付いた」とこっそり。なかなかやり手である。

リプレイ本文


 ハンターたちはそれぞれの初期配置へと移動しようとしていた。 
「しかし、大サソリの次は大ヤドカリか……この世界は大なんとかばかりなのか?」
 そうぼやくのは、久延毘 羽々姫(ka6474)。
「それはどうなんだろ?」
 汗たら~、しながら答えたのは、狐中・小鳥(ka5484)。
「いや、最近何かと甲殻類に縁があるなと……それより、それは?」
「だって小鳥さん逃げるんだもん!」
 羽々姫がけげんな視線を向けたのは、小鳥の腕に自分の腕を絡ませてぴとっと寄り添っている南那初華(kz0135)だった。
「ハンターオフィスの係員に調子よく乗せられたな、と初華さんを見てたら逃げるの遅れて巻き込まれちゃったんだよ。まあ変な依頼じゃないからいいけど」
 答える小鳥。そんなこんなで参加のようで。
「……巻き込まれか」
 これを聞いた東條 奏多(ka6425)、遠い目をする。
 リアルブルーの日本にいたころは、ちゃんと目標があり常にまい進していた。
 それが、いつの間にやら転移とか巻き込まれ人生に。
「どうしたの?」
 そんな奏多をアリア・セリウス(ka6424)が横から心配そうにのぞく。
 奏多、そんな彼女の瞳を見て落ち着いた。
「いや……」
 巻き込まれ人生からの出会いだったが、転機となる出会いだった。
 周りも見えてきた。
 奏多以外はみな女性である。
「まあ、しっかり仕事させてもらいますか」
 だらしないところは見せられない、との思いもある。

 それはそれとして、何だか不安そうに眉をハの字にしている人が。
「大ヤドカリ……硬い殻……私も、怪我しないように、重い鎧とかを着込んだ方がいいでしょうか……」
 ロゼッタ・ラプタイル(ka6434)である。
「あぁ、ロゼッタ。大丈夫大丈夫」
 くるっと回って法衣をひらめかせ、冷泉 雅緋(ka5949)がロゼッタの横に付く。
「あたしが支援してやるから、思いっきりやっちゃいな。これで思いっきりぶっ叩くんだろ?」
 なれなれしい感じにロゼッタの持つ武器を指先でなでり。
 ロゼッタの武器は、丸まったユグディラをかたどった鎚――つまり、大ネコハンマーである。
「んあっ! 何それ可愛い!」
「あっ……初華さん、触ったら重いです……」
「初華さん、引っ張っちゃダメなんだよ」
 初華が反応して寄って来てべたべた。小鳥の腕は放してないので小鳥も巻き込まれー。ついでにロゼッタは重さに負けてがくりな感じ。
 でもって羽々姫も寄って来てしげしげと重そうな武器を見る。
「相手は大ヤドカリか……中々硬そうだね。よし、今のあたしの拳がどこまで通用するか試させてもらおうじゃないか」
 戦籠手「炎獄」をはめた右拳を固めて豪快に言い放つ。黒い瞳がまだ見ぬ戦いに燃えている。
 わいわいやった後、持ち場へ散っていく。



 そして、配置後しばらくして。
「ん?」
 砂浜近くの樽置き場に隠れていた奏多、波音の変化に気付いた。
 顔を出して確認すると、丸い大きな巻貝を背負った大ヤドカリが波打ち際から上陸しているところだった。結構な早さである。
 その先に、砂浜を監視していた小鳥とアリアが左右から詰めてきている。
 小鳥、デリンジャーを撃った。
 これに反応し小鳥を追う大ヤドカリ。
 うまく町から離れる北方面へ頭を向けることに成功する。
「よし」
 ヤドカリが上陸し視界に入らないと見るや、潜伏場所から出る奏多だった。

 一方の小鳥。
「鬼さんこちら、手のなる方へ、という感じかな?」
 一発撃っては砂浜に足跡を残しながら華麗にステップ。チャイナ服の裾をひらめかせくるっと回って走ったと思えば振り向き射撃。なかなか煽情的かもしれない。
「私も踊りましょう……少しは素敵な所を見せて、カナタを安心させたいしね」
 アリアも一礼するようにうつむいた後、大きく弾む。投げるは投符「ショウダウン」。海に帰らないよう、しっかり小鳥を追うよう微調整するように攻撃する。
 が、大ヤドカリ。直線的な攻撃に対しまっすぐ追うようなことをしない。
 二人だけでは大回りする動きを抑えきれない。
「……そっちに行かれちゃ困るんだ」
 おっと。
 ひっそりと雅緋が大ヤドカリを付けていた。
 気楽にいきたい、という信念の下に機杖「エレクトロン」を構えジャッジメント。光の杭が敵に刺さり陸側から大きく回り込もうとする動きを止めた。
 構えた雅緋の横を、ランアウトで誰かが駆け上がる!
「誘導には従ってもらわないとな」
 奏多だ。
 しゃりりり、と指先で回していたチャクラムを光の杭で止められた敵に放つ。
 そのまま小鳥の方へと走る。
「さあ、舞踏会はもうすぐ。……風切り、風抜け、風のように走りましょう?」
 その横に、中央に絞って来たアリアがピタリ。涼しい微笑を向けて来る。
「ああ」
「でも、意外とこれ難しいね」
 頷く奏多の後ろで射撃する小鳥が微妙に困っていた。
「どうして?」
「回り込むのか逃げるのかはっきりしないよね。まっすぐこっちを狙ってくればいいのに」
 アリアが聞いて小鳥が答えた時、敵が後ろ向きになって――突起の付いた巨大巻貝を盾にものすごい勢いで一直線に突撃してきたのだ!
「うわっ!」
 どしん、とぶつかったところで敵は止まる。三人は進行方向に吹っ飛ばされた。
 で、ぎょろりと正面を向く大ヤドカリ。
 いたた、と起き上がる三人と目が合う。
 くるっと再び振り向く大ヤドカリ。
「ヤバい。逃げろ!」
 奏多、起き上がると一目散。アリアと小鳥も習う。
「これなら止めなくても作戦通り……かねぇ?」
 最後方で見ている雅緋、一直線に誘導先の拠点に逃げる三人を素直に追う大ヤドカリに再びのジャッジメントは控えるのだった。



「来たな」
 想定戦場となる草原で、羽々姫がぱしんと拳を手の平に打ち鳴らして敵の到着を喜んでいた。
「け、結構大ヤドカリって、速いですね……」
 隣にいるロゼッタはほっとしていた。
「どうした?」
「その……足が遅いから……」
 聞かれて応え赤くなるロゼッタ。
「気にすんな」
 羽々姫、動いた。
 小鳥、アリア、奏多が近寄って来る。敵ももう目の前だ。
「……あんたの代わりに、あたしが動くからさ!」
 羽々姫、大ヤドカリとのすれ違いざまにジャンプ。殻のトゲを足場にして……。
「その殻、割らせてもらう!」
 体に大きく力をため、抉るような正拳突きを放つ!
 ――がきぃ……。
「ち、堅い……おわっ!」
 ヤドカリが超信地旋回のような動きで回転したことで吹き飛ばされる羽々姫。
 これが草原での戦闘の幕開けとなった。

「ターンはお見事。でも……」
 旋回が終わったところでアリアが舞いながら敵の左にステップ・イン。雪色の光宿す神楽刀、大太刀「破幻」が演舞の動きから鋭く縦一直線に斬り下ろされる。
 がきっ、と敵の左の鋏に入るが、これは敵が受けた形か。白銀のマテリアルの光を舞い散るが、敵に動揺はなし。
「ゲームの世界と一緒だな」
 反対側では奏多。
 一直線に敵の右横に入ると、竜尾刀「ディモルダクス」を水平に薙ぐ。
 これもがきっ、と弾かれる。脚を狙ったが、さすがに堅い。
「硬い相手だし出来るだけ固くない所狙ったほうがいいよね」
 小鳥はダンサーズショートソードで顔狙い。アリアが鋏を狙ったおかげで空いていた。ばしんと入るが、食らって慌てて繰り出されるもう一つの鋏に吹っ飛ばされた。
「海に向かわせないためには……あっ、皆さん!」
 この奮闘を見て、おどおどしていたロゼッタの様子が変わった。胸元に置いた手には緑のうろこが浮いている。きっ、と改めて顔を上げる。
 一歩目と同時に巨大な猫鎚が振り上げられた!
「殻さえ壊してしまえば、内部はそれほど硬くないはず……!」
 両手持ちの鎚とともに吶喊。
 ざっ、ざっ、ざっと決して速くはないが……。
 構える猫鎚に勇気を。
 胸を張り逸らす背に力を。
 そして見据える瞳に決意を宿したッ!
「お願いっ!」
 ぶうん、と振り下ろされる猫鎚。にゃーん、と風が鳴いたか空耳か。
 ――どがっ! ばきっ!
 重い一撃が入ったが、ヤドカリも止まってはいない。旋回しつつ出した鋏に飛ばされるロゼッタ。彼女の一撃も反転する動きで若干いなされていた。
「あっ!」
 これらを遠くで見ていた初華、敵の予想外の動きに驚きの声を上げた!



「え?」
 吹っ飛ばされたロゼッタは、てっきり追撃があるのかと思った。
 が、何もなく抜かれた。
「海の方に逃げてるんだよっ!」
「結構ダメージはあるってことだよな?」
 小鳥の叫びに奏多の観察。
 そう。
 敵は来たとき同様、今度は一直線に海に向かって突進していた。
 大きな殻を前面に前も見ず、ひたすら走ることに特化した最大戦速だ。


自分が、私が、ダレカの為に
危険を斬り払い、走り抜ける
私が初めて知った……


 歌声とともにアリアが追う。
 瞳の色は追い付けるかどうかを考えているのではない。
「よし」
「追うんだよ」
 その思いは奏多にも、小鳥にも伝わった。
「わ、私も頑張る……」
 ロゼッタも走る。

 そして、一斉攻撃の間隙を突かれ逆走された大ヤドカリは――。
「この時計が刻むのは「光ある未来」。盤面の一部から覗く歯車は「運命の輪」……」
 激走の前に人影が立つ!
「そして穿つのは「光の杭」だ!」
 雅緋だ。
 雅緋が凛々しく叫んで機杖をかざす。
 どしっ、と光の十字架が杭となり大ヤドカリを貫いた。
 ダメージはないが、突進は止まる。
 ジャッジメントで足止めだ。
 そしてそこにひらりと飛び乗る姿。
「何度でも!」
 羽々姫だ。
 戦着流「炎姫」の衣装を鳳凰の翼のようにひらめかせて殻に着地するや否や、またも鉄拳制裁!
『ブクブクッ』
 敵、泡を口から吹いて旋回。
「うわっ」
 振り落とされる羽々姫。
 その間に後続が追い付いた。
「踊りましょう、カナタ。誰そ、誰そ彼そに刀を閃かせ、斬風を詠わせて」
 アリア、鋏狙い。がつっ、と右鋏は弾くが左鋏に引っかかれる。
「脚狙いだったよね? 今度は関節の裏から行くよ!」
 この隙に右に小鳥が上体を沈ませ潜り込む。
「ああ。悪いがもらっていくぜ、その脚全部」
 左に潜り込むは、奏多。
 ――ばきっ。
 外側に刃を振り切る二人。見事に狙った脚を浮かせることに成功。そのまま返す刃で外から叩きつけ、切断に成功した。
「……一気呵成、烈風斬迅ね」
 この時アリア、踊るように回避せずその場に残り心の刃で威圧。次の斬撃で鋏を斬り落とした。
 が、反対の鋏で今度は手ひどくぶっ飛ばされた。
 しかしアリア、満足そう
「大丈夫?」
「無茶するね、アリア」
 小鳥が防御に、そして雅緋が回復に駆け寄った。
「少しは素敵な所を見せて、安心させたい」
 小さく微笑するアリア。
 その視線は……。
「よし、ここを行け」
「ありがとうございま……すっ!」
 身を引いた奏多。そのスペースから二列目のロゼッタが突っ込み、猫鎚。
 ――どすん……。
 が、まだ殻は割れない。泡は吹き旋回する大ヤドカリ。吹っ飛ばされる二人。
 そこへ、また誰かがジャンプ。
「間に合え!」
 雅緋のジャッジメント、みたび。
 がくっ、と止まったところにまたも羽々姫だ。
「何度でも……例えべらぼうに硬い殻でも何回も何回も殴り続けりゃ、いつかはヒビが入って割れるのさ!」
 ――バキッ!
 いい音、響いた!
 ヒビが入ったのだ。
「羽々姫……さん」
 目を見開くロゼッタ。再び猫鎚を担ぐ。
「今なんだよ! 脚を狙うんだよ」
 小鳥は踊るように敵の脚を削ぎに行く。
「見つけた理想の欠片の詩を……もう少し」
 アリアもまだ踊るように攻撃を。
「よし!」
 奏多も再び敵の脚を狙う。
 そして――。
「ああ、完全に砕けた音だね」
 再び海側に回り込んだ雅緋が、にやり。
「……やった」
「雨垂れ石を穿つって奴だな」
 ほっとするロゼッタに、すとんと着地する羽々姫。
 後は奏多、アリア、小鳥で殻から脱出した敵の胴体部分を攻撃している。もう時間の問題だ。
「……あ、雨」
 大ヤドカリが呼んだのではないのだろうが、断末魔とともに雨が降り出した。



 戦いの後、住民の好意で小さな宿一軒を貸し切りにしてくれた。
「まさかこんな大雨になるなんてね~」
 初華、窓の外を覗いてため息。
「そうだね~。……あ、ヤドカリ料理が食べたいかな?」
 小鳥、初華と同じく横でぼんやり外を眺めていたがひらめいたようで。
 ほかの仲間はどこにいるのかというと。

「これならもう、脚を落とす必要はないわ」
 アリアが町の店頭でジャガイモを手にしていた。
「散歩のはずだろ、なぜそうなる! もしかしてジャガイモ料理を強請っているのか?」
「いやね。いつもと同じよ」
 実は家事全般が大丈夫な奏多、少し抵抗するがあっさりとアリアに押し切られる。
 これが日常のようで。

 が、これは正解だった。
「あの、小鳥さん?」
 宿の厨房で初華が立ちつくしていた。
「き、気合入れたらちょっと作り過ぎちゃったんだよ……あ、初華さん、ご飯食べないかな? 他の人達も一緒にっ」
 あはは、と小鳥。目の前には焼き魚にムニエル。さらに刺身をこしらえていた。漁師町ということで魚のフルコースだ。
「魚が良かった?」
「いや、これでいい」
 ちょうど戻って来たアリアと奏多。ジャガイモを抱えてホッとする。
「じゃ、みんなに今晩のメニュー、伝えて来るね」
 ぱたぱたと出て行く初華。
 ほかの人が何をしているのかというと……。

「こんな天気じゃあ、星なんざ見えっこないねぇ、残念……」
 割り当てられた個室で、雅緋がのんびりと雨雲を見上げていた。
 ふと懐中時計を取り出す。
 未来はもちろん見えない。針は同じ巡りだが、未来はどうだろう。
「……まぁ、ともあれ事は成したさ。終わりよければそれでよし、と」
 敵を倒した味方の歓喜が瞼に蘇る。
「そうだろう? とーさん?」
 んん、とソファに崩れる。むにゃりと寝言交じりに。
 やがて初華に起こされごちそうにありけるだろう。

「無事だった、ファリン? ……いい子にしていた、エキドナ?」
 別の個室では、ロゼッタのそんな声。
「荷物に詰め込んでて、ごめんね。もう大丈夫だからこの部屋でのんびりして」
 背中越しで見えないが、何と話しているのだろう。
 そこへ、ノックして初華がやって来る。
「ロゼッタさ……きゃああぁ!」
「あ……びっくり……した?」
 まさか蛇二匹がいるとは思わなかった初華、その場にぺたんと座り込んだり。
 蛇の方はペットで、ロゼッタに絡まって満足そう。

 そして、羽々姫。
「おう、安心してくれ。……それよりここ、名所や名産とかあるのか? え? 小鳥が料理してる? いやそうじゃなくて、ほかに珍しい……」
 宿にやって来た住民と楽しく話していた。
 これにより、町からのハンターに対する好感度も大アップだ。
 それはそれとして住民。ラケットとテニスボールを取り出した。
「いやそれ、勧められたばかりだろ」
 突っ込む羽々姫である。

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  • 静かに過ごす星の夜
    冷泉 雅緋ka5949
  • 雨垂れ石の理
    久延毘 羽々姫ka6474

重体一覧

参加者一覧

  • 笑顔で元気に前向きに
    狐中・小鳥(ka5484
    人間(紅)|12才|女性|舞刀士
  • 静かに過ごす星の夜
    冷泉 雅緋(ka5949
    人間(蒼)|28才|女性|聖導士
  • 紅の月を慈しむ乙女
    アリア・セリウス(ka6424
    人間(紅)|18才|女性|闘狩人
  • 背負う全てを未来へ
    東條 奏多(ka6425
    人間(蒼)|18才|男性|疾影士
  • 覚醒したらすごいんです
    ロゼッタ・ラプタイル(ka6434
    人間(蒼)|17才|女性|霊闘士
  • 雨垂れ石の理
    久延毘 羽々姫(ka6474
    人間(蒼)|19才|女性|格闘士

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依頼相談掲示板
アイコン ヤドカリ退治(相談卓)
ロゼッタ・ラプタイル(ka6434
人間(リアルブルー)|17才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2016/10/11 12:56:42
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/10/10 17:39:38