• 剣機

【剣機】誰が為の刃

マスター:神宮寺飛鳥

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/09/24 19:00
完成日
2014/10/02 05:13

みんなの思い出? もっと見る

オープニング

「ヴィルヘルミナ暗殺は失敗に終わったか……これで何度目だ」
「計画を阻止された分も含めれば枚挙に暇がないよ。奴は飼い犬も多いからな」
 選挙活動の一環としてヴィルヘルミナが足を運んだ帝国領内の町村は八か所。実にその内の五か所で“彼ら”は暗殺を企てた。
 帝国を嘗ての貴族主義へ回帰させ、初代から連なる正統な血を持つ皇帝が再度国を治めるべきであると考える旧体勢過激派組織。その構成員の多くは元帝国軍であり、長く続いた潜伏期間を経た事もあり彼らの技術は暗殺に特化しつつあった。
「ハンターに邪魔をされた件もあるが、厄介なのは“絶火隊”だな」
「国としてではなく皇帝の私兵として戦う“友人達”。金でも名誉でも動かない分、懐柔も出来ん」
「やはり我々にも必要なのだ。象徴的な反帝国のカリスマである血と、それを守る英雄がな……」
 サルヴァトーレ・ロッソ出現以降、皇帝が独り歩きをする場面も増えた。以前に比べ格段に暗殺の好機は増したと言えよう。
 一度や二度……否、十度でも百度でも繰り返そう。いつか理想が成されるまで、支払われる犠牲に糸目はつけない。
「グスタフ殿もそうは思わんかね? 旧皇帝の近衛隊に所属した貴殿が組織に所属してくれれば心強いのだが」
 薄暗い小屋の中で卓を囲む男達と離れ、壁際に腕を組んで立つ鎧姿の剣士が居た。グスタフと呼ばれたボロ甲冑の男は僅かに顔をあげる。
「仕事の依頼だと言うので来てみれば……俺にテロ行為の片棒を担げと?」
「貴殿も正しき血に忠誠を誓ったお方であろう? 我らと志は同じ筈だ」
「ククク……俺が貴殿らと同じ? 冗談も休み休みにしてくれ。何が同じものか。いや、とっくに終わってしまった物語をまだ続けたくて彷徨っている辺り、無様さは同じと言ったところか」
 煽る様にこれ見よがしに肩を竦めるグスタフに黒装束の男達が表情を険しくさせたその時だ。部屋に一人の男が飛び込んできた。格好はごく普通の町人の物で、注釈すると彼はこの町の町長であった。
「た、大変です! 町の近くに歪虚が現れ、こちらに向かっています!」
「歪虚だと? いきなりか?」
「は、はい。なんでも空から落ちて来たと……。こ、これはもしや今噂になっている剣機という歪虚なのでは……」
 黒ずくめは顔を見合わせ立ち上がる。そそくさと退室の準備を進めて。
「ど、どちらへ!?」
「剣機ならば帝国軍が来よう。潮時だ、この拠点は放棄する」
「そんな! 我々はどうなるのです!? きちんと言われた通り、クリームヒルト様に投票したのですよ!?」
 町長が何を言っても男達は立ち止まらなかった。一人一人が優秀な戦士である反政府の剣士達は、しかし何の躊躇もなく隠れ蓑を切り捨てた。
 取り残された町長ががくりと膝を着くとグスタフは嘲笑を浮かべながら歩き出す。
「ククク……無法に頼ればこういう結末も迎えよう。運がなかったな、貴殿」
「我々は何のために……ヴィルヘルミナ様……申し訳ございません……」
「他人の力をアテにする前に金でも積んだらどうだ? 物好きなハンターならば、相手もしてくれよう」

 ……そう告げて数分後。グスタフは一人で町の端に立っていた。
 右手に盾、左手に剣。ボロ甲冑はもう何十年もそのままで、マントはどこかに引っかけて破いてしまった。
 暫くロクな食事もとっていない。無論金はない。宿もない。今回の仕事もポシャった。当分どうやって生活すればいいかもわからない。
 だがそれでも彼はまだ騎士であった。帝国民を守ると皇帝に忠誠を誓った騎士だ。
 もうきらきらとした理想等抱いていない。仲間が次々に革命の戦士に討たれ、自分だけおめおめと生き残って。
 だから無様でいい。これからもずっと不格好でいい。救いなど不要。それでもただ一つ、誓いだけは守り通す。
「金にもならないのに物好きだな、あんた」
 頭上からの声に顔を上げると屋根の上に一人の青年が立っていた。銀色の髪を靡かせ、紫煙を吐き出し笑う。
「……絶火隊か?」
「へぇ。なんでそう思う?」
「ここの反政府勢力を潰しに来たのだろう? 貴殿、只者ではないと見える」
 男は口元を緩ませ煙草を握り潰すとグスタフの隣に降り立った。
「残念だが真逆だよ。俺は反政府勢力側でね。ま……だからといってあんなチンケな連中と一緒にされても困るが」
「フン……ならば俺達は似た者同士と言う事か。日陰者め」
「あんたほどじゃないよ。あんたそんなお人好しならハンターにでもなったらどうだ? 腕はいいんだからよ」
「……俺の剣は“陛下”の為に“あった”。その為だけにあったのだ。他の誰の為にも振るうつもりはない」
「そーかい」
 遠くから歪虚の集団が近づいてくる。進行速度が速い。やはりハンターは間に合わないだろう。
「あのデカいの見覚えがねぇな。新型って奴か」
「ククク……何だろうと関係ないな。帝国の流儀をたっぷりと教育してやろう」
 歩き出すグスタフに苦笑を一つ。青年も背にした銀色の槍を抜き、隣に並ぶ。
「手ぇ貸すぜ」
「どういう風の吹き回しだ?」
「俺だって誰かを守りたくて覚醒者になったんだ。力も持たない一般市民を見殺しにしちゃ寝ざめが悪ぃ」
「フン……お人好しめ」
「心配すんな、ハンターが来るまでだ。あいつらには会いたくない理由があってね」
 そうしている間に接近する大型の狼は機械強化を受け、背中に機銃を搭載していた。小型の狼を率いて猛スピードで突っ込んでくる爪をグスタフは盾で受け流し、二人は背中合わせに構える。
「言っておくが、貴殿が死にそうになっても俺は助けんぞ」
「だから心配すんなって。俺もちゃんと、あんたを見捨てるからよ――」

リプレイ本文

 逃げ惑う人々の流れに逆らい敵の姿を求めて走るハンター達。カグラ・シュヴァルツ(ka0105)は周囲を眺め呟く。
「本来動くべき正規軍が動いていない……随分と不安定な政治状況ですね」
「帝国軍と言えども万能ではないもの。そうした穴を埋める為に私達ハンターがいるのでしょう?」
 フェリア(ka2870)の言うようにこの初期段階で駆けつけられるのがハンターの強み。今ならばまだ被害を出す前に事態を収拾させられる可能性も高い。
「町まで入られると厄介、です。そうなる前に片づける、です」
 走りながら八城雪(ka0146)が言うとほぼ同時、町の入口での戦いを視界に捉える。どうやら自分達以外の何者かが敵を足止めしているらしい。
「囲まれてるみてー、です。二人で足止めとは、そーとーの実力者……ん?」
 褒めようとした矢先、片方の男が槍を背に戻し大きく跳躍した。壁を蹴って建物の屋根に昇るとハンター達を一瞥し、直ぐに向こうの通りに姿を消す。
「あの銀髪の野郎、撤退するつもりか? この緊急事態だってのに」
「援軍が到着してやっと優勢になったのに……何がしたかったのかしら?」
 パープル(ka1067)の隣で首を傾げる橘 遥(ka1390)。ともあれ、まだ一人残っている。そちらと合流する事を考えるべきだろう。
 カグラが銃を、パープルが弓を構え、フェリアが魔法の矢を放つ。ハンターの奇襲を受けた狼達は一度退き、その間に騎士との合流に成功する。
「その装備と立ち振る舞い、帝国騎士の魂を持つ者と見ました。私はフェリア=シュベールト=アウレオス、よろしくお願いするわね」
「グスタフだ。残念ながら騎士ではないがな」
 そんなグスタフはユルゲンス・クリューガー(ka2335)へ目を向ける。二人は暫し無言で視線を合わせたが、何事も無かったように剣を構え直した。
「グスタフは逃げずに手を貸してくれるのか。この状況じゃありがたい」
 パープルの声にグスタフはそっぽを向く。アーシェ・ネイラス(ka1066)口元に手をやり、敵を観察し。
「これが剣機系の新型かー。おっきいねー、びっくりびっくり」
「何ていうかホラー映画も真っ青なのだな。まあぶっ飛ばす、それだけだ」
 春日 啓一(ka1621)は肩からかけていた上着を投げ捨てごきりと首を鳴らす。
「奴の相手は俺とアーシェでする。その間に周りのザコを頼む」
 啓一の声に親指を立てるアーシェ。パープルは頷き、グスタフに声をかけた。
「グスタフ、二人と一緒に大型の相手を頼めるか? 俺達が合流するまで時間を稼いでくれればいい」
「フン、元よりそのつもりだ。小娘小僧だけで奴を抑えられるとは思えんからな」
「ちょっと、今見た目で判断したでしょ!?」
 びしりと指さすアーシェに苦笑するパープル。遥は溜息を零しつつ。
「お喋りはそこまで……来るわよ」

 プラッツェンが吼えると同時、六体の狼ゾンビが向ってくる。その前に躍り出たのはユルゲンスだ。
「正面からゆくぞ、掛かってくるがいい……犬共!」
 とびかかる敵の攻撃を物ともせず全力で振るった大剣が風と共に犬を蹴散らす。傷も負ったが、それ以上に敵の布陣を崩す事に成功した。
「……無茶をしますね」
 後方、カグラは道端にあった木箱の背後に腹這いに銃を構える。ユルゲンスが散らした隙に狙撃、敵の足を止める。
「取り巻きは片づけといてやる、です」
「3人とも、ちょいとタフな仕事だが宜しく頼む!」
 大斧で犬を蹴散らす雪。パープルは矢でプラッツェンへ向かう三人を支援する。
 啓一、アーシェ、グスタフは敵集団後方に待つプラッツェンへ駆ける。敵は背のガトリングを浴びせにかかるが、啓一はこれを回避。距離を詰めドリルナックルを振るうが、敵は大きく跳躍し回避する。
「うわっ、跳んだ!?」
 煉瓦造りの屋根に飛び乗った敵は威嚇するように咆哮する。慌てるアーシェ、そこへ再び銃撃が降る。
「すばしっこいなぁ! でもこっちを狙ってるなら、狼ゾンビと引き離せるかも!」
「分断するわけか……悪くない」
 味方のいない村の外側を目指して走り出すアーシェと啓一。プラッツェンは再び跳躍、上空から背中目がけて爪を繰り出してくる。
 アーシェを横から片腕で抱くようにグスタフが盾で受けると、そのままアーシェを持ったまま走り出した。
「ちょっと!? おじさんどこ触ってるの!?」
「小娘の尻には興味ないのだが……」
「今小さいって言ったぁ!?」
「いいから走れ!」
 啓一の声に大人しくなるアーシェ。三人がプラッツェンと追いかけっこをする間、残りのメンバーは狼ゾンビの殲滅にあたる。
 狼ゾンビはプラッツェンと離れた事に気付いたのか、後を追うような仕草を見せた。遥はその先に素早く回り込み鞭で打ち払う。
「あなた達の相手はこっちよ」
 鞭で大地を打つ乾いた音に狼達がわずかに怯む。すかさず雪とユルゲンスが大型の武器で攻撃するが、狼は蜘蛛の子散らすように周囲へ跳んだ。
「……っち。逃げんじゃねぇ、です……!」
 しかし逃げた先にはパープルとカグラによる追撃が待っている。矢と銃弾で怯んだ敵、そこへフェリアが魔法を放つ。
「帝国にこのような者共が徘徊すること自体耐えられないわ。迅速に片付けましょう」
 炎の矢はゾンビに効果的なのか、爆発は敵を大きく吹き飛ばす。そうと分かれば火による攻撃に切り替えて行こう。
「やはりあの大型がリーダー格のようですね。分断された事で敵の動きに混乱が見えます」
 カグラの言う通り、離れたプラッツェンを気にする様子が見える。合流を許さなければ、優位に戦闘を進められるだろう。
「強敵を止めていてくれている仲間の事を考えると雑魚殲滅はスピードが重要。ストライダーの速さを見せてやりましょう」
「敵は素早いが、お互いの行動をフォローすれば倒せない相手じゃない。味方の攻撃に合わせて対応するんだ」
 鞭を振るう遥、そしてパープルの声に頷く一行。狼が飛びかかるのを見るや、ユルゲンスは敢えて右腕に噛みつかせ、それを腕ごと振るう。
「ばっちこーい、です」
 斧を構える雪、そこへユルゲンスが力任せに投げ飛ばした犬が飛んでくると、まるで野球のように斧を食い込ませ打ち返す。
 悲鳴を上げ大地を転がる狼。ユルゲンスは両手で引きずる大剣を体を斜めに回転させるようにして振り下ろし、敵を一刀両断にした。
「脳みそが腐ってる割には頑張ってるが、人間様程じゃねー、です」
 遥は鞭で相手の足を正確に打つ。そのまま絡めて大地に叩き付けると、パープルの放った矢が頭に突き刺さり消滅していく。
 ユルゲンスを襲う三体の狼。飛びかかる内の一体をカグラが狙撃で転がすと、雪は軽く跳躍し思い切り斧で叩き潰す。フェリアが炎の矢で横槍を入れるとユルゲンスはその間に狼の首根っこを掴み、大地に押し付けると剣を突き立てた。
「逃がさないわ」
 離れようとする狼だが、遥の鞭が蛇のように襲い掛かる。遥の攻撃はハンターの中でも図抜けた正確さで敵を牽制し逃がさない。その間に仲間が攻撃すれば、攻撃を当てるのはそう難しくなかった。
「いい調子だ。残り二体!」

 優勢な状況下、パープルが弓を放った頃、敬一とフェリアはプラッツェンの素早さに翻弄されていた。
 狼の長は巨体でありながら異常な機動力で近接タイプの三人を翻弄する。ヒット&アウェイを繰り返す敵の銃撃に傷は増える一方だ。
「あの巨体であんなに動けるなんて……流石は新型って事かな……!」
「動きを止めない事にはどうにもならねえな……」
 咆哮と共に上より襲い掛かる獣、その爪をアーシェとグスタフが同時に受け止める。しかしそのガードの上から二人を押し潰すように跳躍、空中で回転すると再び爪を叩き込んだ。
「あうっ!?」
「無茶な動きしがやる! アーシェ!」
 吹っ飛んできたアーシェを受け止める啓一。グスタフは駆け寄り剣を振るうが、あっさりかわされてしまう。
「二人で受けてこれかぁ……いたた」
「次が来るぞ!」
 グスタフの声ではっとしながら左右に飛ぶ二人。追尾する銃撃から身をかわす。
「機動力さえ奪えれば、インファイトに持ち込めるんだが……」
 悔しげに呟く啓一。と、そこへフェリアの放った炎の矢が飛来した。プラッツェンの側面を打つと、続いてカグラが駆け寄りながら拳銃を連射する。
「どうやら向こうのカタはついたみたいだな」
 パープルが放った矢が足に刺さるも、ゾンビの頑強さからか怯む気配はない。跳躍した敵をライフルの銃口で追うカグラ。その間に遥、ユルゲンス、雪が合流する。
「おっさんぼろぼろ、ですね。死なれても困るし、ヤバイ時は、そー言う、です」
「苦戦しているようだな。手を貸そう」
 雪とユルゲンスの声に立ち上がるグスタフ。遥はプラッツェンの銃撃をひきつけ、走りながら回避している。
「それで、どうするの!?」
「奴の足と背中のガトリングを潰す! こちらへ追い込めるか!?」
 啓一の声に頷く遥。ガトリングを避けながら走る遥を追いかけようとするプラッツェンを左右からパープル、カグラ、フェリアが遠距離攻撃で追い立てる。
「帝国にてこのような所業、断じて許さないわ。この私の力が続く限り!」
 遠距離攻撃から身をかわすように屋根の上から落下するプラッツェン。咆哮と共に遥を追うが、その間に雪とグスタフが割り込み攻撃を受け止める。
「打ち返すぞ!」
「おらぁ……、です!」
 二人は同時に踏み込み、プラッツェンを怯ませる。二人が左右に開けると続いてユルゲンスが飛び込み、大剣を狼の口の中へ突き刺した。
「このまま動きを止める! 手を貸してくれ!」
 剣を口に突っ込んだまま踏ん張るユルゲンス。グスタフと雪は前足をそれぞれ抑え、封じ込めようとする。その間にアーシェと啓一が距離を詰めた。
「アーシェ、足を狙え!」
「わかってる! こっのぉー!」
 側面から飛び込み、グスタフと入れ違いに前足にチェーンソーをねじ込む。たまらず悲鳴を上げるプラッツェンだが、抑え込まれて動けない。
「これまでの……お返しだよ!」
 火花を散らし肉に食い込むチェーンソー。その間に啓一は大地を蹴ってプラッツェンの背中に取り付く。
「俺は拳で戦うのが信条だ。だが自惚れて使える物を使わないほど馬鹿じゃねえんだよ」
 両手で構えた仕込み杖をアームの根元に突き入れる。その時プラッツェンの前足がアーシェによって切断されると、狼は必死にハンターを振り払い跳躍する。そう、啓一を乗せて。
 空に舞い上がった啓一は驚きながらも機銃をつかみ、落下の衝撃に備える。屋根の上を飛び回るが、機銃に足を引っかけ逆手に持った刃に力を込めた。
「この野郎……! ぶっ壊れやがれえっ!」
 駄目押しにドリルナックルを叩き込み機銃を破壊すると、プラッツェンは悲鳴を上げ、足を失ったがゆえに着地に失敗し転倒する。その背から投げ出された啓一が受身を取りつつ転がるのとすれ違い、仲間達が一気に駆け寄る。
「いくら装甲追加したっつっても、そろそろ限界来てんだろ、です」
「一気に決めましょう!」
 斧を繰り出す雪。遥も鞭で滅多打ちにする。グスタフとユルゲンスが剣を振るい、フェリアの炎が爆ぜ、パープルとカグラの弾が突き刺さる。
「楽しかったけど、そろそろおしまいっ!」
 チェーンソーを頭に振り下ろすアーシェ。入れ替わりに啓一が滑り込みドリルを唸らせる。
「この拳で――そのまま逝きやがれ!」
 顎に減り込んだドリルが貫通し血飛沫を上げ頭部を貫く。プラッツェンは悲鳴を上げ、よたよたと僅かにもがいたのち、力なく倒れるのであった。
「デュラハン刈りは伊達じゃない……なんてね!」
 肩にチェーンソーを乗せ笑うフェリアの言葉にグスタフは安堵するように息を吐いた。


「大丈夫、もう歪虚はいなくなったわ。安心して」
 町の入口での戦いは僅かな建造物の損壊だけで幕を閉じた。様子を見に来た人々にフェリアが説明するのを横目にカグラはグスタフに歩み寄る。
「助かりました。感謝を」
「フン、勝手にした事だ。謂れはないな」
 目を瞑り僅かに笑うカグラ。それから表情を変えて。
「しかし、良くない兆候です。軍人でもないグスタフさんが一人で戦うような状況は、本来あってはならない」
 フェリアが住民に説明している今なら、帝国を批判するような発言でもモメごとにはならないだろう。
「正直、私はこの世界の政治に興味はありません。ですが、今私たちはこの世界に居る。グスタフさんも帝国の思惑を感じたからこそ、ここに残ったのではありませんか?」
「俺に今の世を問うのは筋違いだろうよ。尤も、帝国がこの町を救いたくない理由には心当たりもあるがな」
 腕を組み視線を投げた先、フェリアに泣きつく町長の姿があった。状況が呑み込めず困惑するフェリアに何度も謝罪を繰り返している。
「あんたは帝国を守る為に残ったんだろ? あんたみたいのを主君に忠義篤い騎士って言うんだろうな」
「……戦いはまあまあだが、見る目はないな、小僧。忠義なんて言葉は、羽よりも軽く落ち葉よりも価値のないものだよ。貴殿もそう思わないか?」
 啓一の言葉に失笑しつつユルゲンスを見るグスタフ。二人の姿はよく似ていた。纏う雰囲気さえも。
「ともあれ、一緒に戦ってくれて、助かった、です。そーとーボコられてたし、ちゃんと休んどけ、です」
 軽く手を振り立ち去ろうとするグスタフ。雪と並んでアーシェはその背中を見送る。
「色々ありがとね、おじさん!」
「……貴殿はあれだ。もう少しこう、肉体の成長をがんばれ……ちび」
 笑顔のまま固まったアーシェはそのまま猛然と駆け寄るとグスタフの背に跳び蹴りを入れた。
「三回目だよね!? 三回目はさすがに怒っていいよね!?」
「俺としても、貴殿の尻に接触したくらいで触った事にカウントされるのは不服……ぐほぅ!?」
「……あー、止め、です」
 倒れたグスタフを踏みつけるアーシェ。パープルはフードを上げながらそんな様子に苦笑を浮かべる。そろそろ助け舟を出してやるかと、遥はあきれた様子で歩き出した。

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MVP一覧

  • 破れず破り
    春日 啓一ka1621
  • ケンプファー
    ユルゲンス・クリューガーka2335

重体一覧

参加者一覧


  • カグラ・シュヴァルツ(ka0105
    人間(蒼)|23才|男性|猟撃士
  • バトル・トライブ
    八城雪(ka0146
    人間(蒼)|18才|女性|闘狩人
  • デュラハン刈りの乙女
    アーシェ・ネイラス(ka1066
    ドワーフ|20才|女性|闘狩人
  • 紫色の狩人
    パープル(ka1067
    人間(蒼)|30才|男性|闘狩人

  • 橘 遥(ka1390
    人間(蒼)|21才|女性|疾影士
  • 破れず破り
    春日 啓一(ka1621
    人間(蒼)|18才|男性|闘狩人
  • ケンプファー
    ユルゲンス・クリューガー(ka2335
    人間(紅)|40才|男性|闘狩人
  • 【Ⅲ】命と愛の重みを知る
    フェリア(ka2870
    人間(紅)|21才|女性|魔術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
パープル(ka1067
人間(リアルブルー)|30才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2014/09/24 18:14:50
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/09/20 07:02:07