• 初心

【初心】設計図を奪還せよ

マスター:奈華里

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
LV1~LV20
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2016/12/02 12:00
完成日
2016/12/10 22:25

このシナリオは2日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

「おい、確かにあの店でいいんだな?」
 男が路地裏からある店を観察し仲間に問う。
「ええ、間違いないでさぁ…だってほら」
 それに答えて、もう一人の男が視線を周囲に走らせ、ある場所で止める。
「ほう、あいつか。まあいい、で手筈は?」
「今晩襲撃します。後は適当で」
「は、なんだそりゃ」
 男達の視線の先には一軒の靴屋があった。そこの店主は気のいい性格で近隣の評判もすこぶるいい。
「店長さん、遅くなりましたが中敷きの細工が完成しました。こちらになりますので、合わせて宜しくお願いします」
 青年はそう言って紙包みを手渡し暫く世間話をすると、丁寧なお辞儀をして帰っていく。
(腕は良くても不用心過ぎんだよ…)
 闇に身を潜めた男が心中で呟く。
(まあみてろ。世間の厳しさってのを教えてやるぜ)
 男の口元がつり上がる。そして、夜が更けるのを待って彼らは事を起こす。
「どっ、どろぼー―!!」
 月明かりの下に響いたのはそんな靴屋の悲鳴。店内は荒らされ、金目のものが奪われた。
 それに加えて、青年が託した紙包みも――その中には発売間近の新作武器の設計図までもが入っていて…。
「どうしよう…あれがなければ、私も彼も…」
 愕然とする靴屋の店主。それが今から一週間前の事で――途方に暮れる彼であったが事は進展する。

「ギアさん! やりました! 見つかりそうですよ!」
 青年・ギアの下に息を切らして、靴屋の店主がやって来る。
 ここはフマーレの職人街。工場の方がよく知られてはいるが、機械で出来る事には限りがある。
 いつまで経っても手作業の方がいいものに仕上がる事もあって、この一角では自分の腕のみで生計を立てている者も多い。ギアもその中の一人であった。武器全般に修理から開発までを担当し、新人ながら工房を借りて日夜より良いモノ作りに励んでいる。
「えっと、落ち着いて下さい。何が見つかりそうなんですか?」
 ギアはそんな彼を宥めつつ、状況整理に努める。
「もう駄目かと思っていたんですが、あの設計図取り戻せるかもしれません!」
 その言葉にギアも思わず立ち上がり、握っていたペンを取り落とす。
 あの設計図というのは勿論一週間前に盗まれたもの事だ。
「あの時の強盗の一人が見つかりまして、今拘束されてるらしいんです。そいつがやっとアジトの場所を吐いたらしくて」
「成程…それは良かった。しかし、あれは残っているでしょうか?」
 相手はただの盗人だ。だとすればあんな紙切れ捨てられていてもおかしくない。
「そうですね……でも、残ってないとも言い切れませんしいい方に考えましょうよ」
 靴屋がその希望を信じ、叶う様手を合わせ祈る。
 あの時靴屋に渡した設計図、それはバトルヒールとバトルブーツの二つの図面だった。
 どちらもハンター達から直の声を聞いて、必要と判断し作り始めたものだ。本来なら剣や槍を扱うギアであるが、市場に出回っているものを考慮して手薄な所を今回は攻めてみたらしい。武器と言えど手持ちするものだけが全てじゃない。不意打ちにも対応出来る靴という媒体は彼にとっても新鮮なものであった。が未知の分野だけに共同開発という形とって、今に至る。
「まあ、同業者に行かなくてよかったですね…下手したら企画を奪われる事にもなりましたし」
 ひとまずその事に安心して、ギアは今後の動きを靴屋の店主から教わる。
「明日、ハンターさん達がアジトに向かうそうです。なので、うまくいけば明後日から制作を再開できるかと」
「そうですか。では、吉報を待っています」
 時間をかけて靴の踵に仕込んだからくり――そのからくりの構造があの設計図には書かれているのだ。
 それほど複雑ではないにしても全てを頭に置いている訳にもいかないから、あれがないとかなり困るので取り戻す事が出来れば万々歳なのだが…何か腑に落ちないギアである。
(そもそも靴屋に強盗というのをおかしく感じるのは僕だけでしょうか?)
 事件発生時から抱いている違和感。しかしその正体を得るにはまだ至ってはいなかった。

リプレイ本文

●推察
「たったこれっぽっちで捕まるなんて御免だぜ」
 戦利品と言うにはちっぽけな貴金属と盗んだ売り上げを袋に詰め一人が言う。
「まぁ、これを売ればちったぁいい値になるぜ。何たって今注目株の職人のもんだからな」
 もう一人がぴらぴらとギアの設計図を揺らす。
「折角だ、難癖つけて当初の話より高く売りつけちまおうぜ」
 下っ端達がそれぞれ盛り上がる。しかし、リーダーはそんな彼等を良しとしない律義さの持ち主で…。
「おい、馬鹿言ってんじゃねぇって。もう買い手も額もが決まってるんだっ! つべこべ言わずにさっさとしろ!」
 リーダーの一喝にたじろぐ下っ端。
 リーダーの男は他の誰とも違う雰囲気の持ち主だった。身長も体躯も一般人とは明らかに違って見える。
(これは正義だ…あいつが悪いとそう言っていたじゃないか)
 男が自分に言い聞かせる。だが、彼はハンターを辞めて、勘が鈍っている事に気付いていなかった。

 港にほど近い倉庫の前を花(ka6246)が歩く。
 時はまだ太陽が幅を利かせている時間。彼の隣りにはペットの柴犬が小さな足でちょこちょこと歩き辺りに視線を飛ばしている。彼は今、仲間より一足早く例のアジトと思しき場所に来ていた。と言って仲間の了解済み。所謂偵察というやつだ。
「どれも同じような造りだね」
 辺りは既に物流の取引は終わっているのか人も疎らで寒空には鳥の姿だけ。そんな場所であるから見張りを立てていればすぐに判ってしまうからか、問題の場所に来ても人の姿はない。
「うーん、ここかな」
 数を数えてきたものの同じ形では傍からは判断がつかない。壁歩きしてみたいが、今やれば確実に悪目立ちしてしまう。柴犬に靴屋の匂いを嗅がせているから、辿りついたここで間違いはない筈だ。
(まあ、堂々と看板を立ててはいないよね)
 散歩ついでにやってきた人を装いそれとなく周囲を確認する。窓は両側高い位置に三つずつ。それぞれには鉄格子がはめられている。そして、出入り口は二つあるようだ。正面は大きく開く引き戸で、裏口は普通サイズの内開き扉が見て取れる。
(さて、これはどうするかな?)
 突入手引きの際は窓からの侵入を考えていたが、これでは無理そうだ。
 かと言って鍵を持っている者を探すのも骨が折れるだろう。
「ん~…」
 倉庫を見上げながら彼が唸る。
「おい、何をしている?」
 そこで突然スマートな体躯の男に声を掛けられて…花はハッとした。
「え、えーと…散歩に来たのだけど道に迷ってしまって」
 柴犬を抱きかかえて困り顔で言う。
「なら、案内しよう」
 男はそう言うとすたすたと歩き出す。だが、花は見逃さなかった。
(この人…もしかして同業者か?)
 自分が気配に気付けなかったという事はつまりそう言う事ではないか。案内されながら花は男を観察する。
 その男は左腕に怪我を負っているようだった。

「ところでギアさんとやら。あんたと靴屋に商売敵はいるかい?」
 椅子に逆から座って背もたれに顎を乗せた状態でトリプルJ(ka6653)が問う。
 所変わってここはハンターオフィス。下見を花に任せて、残りの五名は会議中だ。
「わたしもそこが気になっていたんだよね。評判のいい新人なんて老舗やベテランから見たら気分のいいもんじゃないだろうし…やっかまれる心当たりはないのかな?」
 設計図等解る者にしか解らない。
 従って、リュンルース・アウイン(ka1694)他ほぼ全員がこの一件は同業者の仕業ではと推理している。
「うちは特には…」
「僕も余り気にしてませんでしたね…そういうのどうでもよくて」
 困り顔の店主と冷静なギア。しかし店主のそれはさておき、ギアのその態度は少し鼻につく。
「んー、その態度は危ないかもね。向こうにとっては小馬鹿にされてるようにも取れるし、反感を買ってしまうかもしれない」
 様子を見ていたエリオ・アスコリ(ka5928)が気付いた事を進言する。
「そうですね。そう考えると納得がいきますし」
「何にしても人のものを取る事はすなわち悪だねー。そんな悪い人たちはお仕置きと反省会が必要ですなーっ」
 大き目のキャスケットを被ったレム・フィバート(ka6552)が張り切った様子で宣言する。
「では、早く事を起こすのがよいのじゃ。そしてその設計図とやらを取り返す…主にこやつらが」
 貴族の出身なのだろう古風な喋り方でアーデルハイト(ka3133)が続く。
「おいおい、最後のは何だ? あんたも協力するんだろぅ?」
「くっ」
 トリプルJのツッコミに奥歯を噛む彼。
 彼自身戦闘には余り関わりたくなく、専らの目的はギアの設計図だったりする。
(作り手が精魂込めたものを盗んだという事実は気に食わんが…だが、しかし)
 自信がなかった。無理もない、少し前までは家に引き籠っていたのだ。
「ま、まぁそうだな。取り返す努力はしてやろう。ただ期待はしてくれるなよ」
 彼はそう言ってぷいっとそっぽを向く。
「おいおい、あんたこれが初依頼じゃねーんだろ? だったらもっと頑張ってくれねぇと」
 実は初依頼のトリプルJが言う。
「そうそう、やるからには全力全開でいかないと! って事で後ろ宜しく~。エリオくんは私と前から突入でOK?」
「問題ないよ」
 こうして、突入の際の配置が決まってゆくのだった。

●突入
 夜。人気が減ったのを確認し、ハンターらは倉庫への突入を決行する。
 正面からはエリオ、レム、アーデルハイトが、後方からはトリプルJとリュンルースが待ち構える。
「私が注意を誘うから扉が開いたら行ってほしい」
 花の言葉――少しの危険は覚悟の上だ。彼はそう仲間に言い残し、柴犬と共に倉庫正面へと歩を進める。
 そうして、ある程度の距離に来た時柴犬お気に入りの骨を扉の方向に投げて、
「ああ、駄目だよって…わぁ!?」
 それは演技。外が騒がしくなれば誰かが出てくると踏んだらしい。
 案の定、花の声は倉庫の中にも届いたようで中の連中から声が上がる。
 そこで様子を見に扉に手をかけた者がいて、ギギッと音がすると同時に踏み込むのは格闘家二名。
「全員動くな! 逃げたり抵抗しなければ痛い目見なくて済むよ」
 エリオが刑事ドラマさながらの言動で中の奴らを威圧する。
「抵抗したらガンガン行くよっ♪」
 そう言うのはレムだ。倉庫内には在り来たりな程に荷物の入った木箱が積まれ、一部死角となっている。
「ちっ、敵かよ」
「やるしかねぇ」
 強盗達はそんな二人を見つけて、得物を手にとる。
 だが、一般人とハンターとの差は明らかで、下っ端がいくらかかって行こうとも話にならない。
 接近してくる敵を見極めてエリオはそれぞれに華麗な足払いを決めてゆく。
 一方レムは覚醒者を狙い周囲に視線を走らせて、目に留まったのは一人の男――屈強な体の持ち主だった。彼女よりも頭一つ分以上高い。その男が敵襲を知ってまず手をかけたのは近くの木箱…。
「危ないっ!」
 後方にいたアーデルハイトから声が飛ぶ。
「応戦すんな! 弱い奴は逃げてかまわん!」
 とこれは男。そして、彼はハンター目掛けて掴んだ木箱を投げつけてくる。
「全く何てことするんだっ!」
 その攻撃にエリオは呆れ顔。だが、レムはそんなとを言っている暇など無くて…。
(蹴り飛ばすか否か…ええぃ、侭よぉ!)
 飛び来る木箱に進撃を放つ。すると木箱は無残に破壊されたが、その木片が彼女を襲う。
「あぁ、もうこれだからっ」
 しかし、避ける余裕はなかったから仕方ない。
 必死で視界を確保するが、気付いた時には男がすぐそこまで迫っていて…だが、男は動かない。
「レム、今のうちだ。早く下がって」
 耳に入ったのはエリオの声…しかし、彼は彼女の傍にはいない。ならば誰が彼を止めたのか。
 答えは更に後ろにいた彼である。
「おおっ、当たった…ははっ、吾輩もやればできるではないかっ!」
 自分のスキルの成功に震える彼。彼の雷撃がどうやら男を捕らえ、麻痺させていたようである。
「その調子でよろしくだよ」
「ああ、任せたまえ」
 エリオの冷静な励ましに自信をつけ、彼はとっておきの一発をお見舞いする。
「そらっ、喰らうがいい!」
 手にしていた魔導拳銃から一筋の光が放たれる。その光は周囲の敵や木箱を吹き飛ばして、
「うわぁぁと」
 威力が凄いのは明らかだった。裏口の開錠に向かっていた花の横をすり抜け、
「チッ」
 裏口の前には花を案内したあの男がいた。が、その攻撃に堪らず舌打ちするとその場から身を引く。

 ドゴォォォン

 そして凄まじい爆音と共に裏口は破壊され、外にいた二人は何が何だか。
 それでも瞬時に状況を察してお決まりのセリフ。
「あー、もうここは完全に包囲されてんだぜ。おとなしくしなっ」
 くいっとレザーハットを押し上げて、トリプルJが忠告する。
「はぁ、まさかハンターが出てくるとはな」
 扉前の左腕を庇っている男が言う。
「あなたは覚醒者…なのかな? だったら手加減は不要だね」
 トリプルJの後方でそれを何となく察知して、リュンルースがスタッフを掲げる。
「はっ、簡単にはやられんよ」
 男の許に氷の矢が突き進む。だが、男はそれを軽々と跳躍して避けてみせる。
(どうやら、覚醒者は二人のようだね)
 全体を見ていた花がそう判断した。現に動きを見れば一目瞭然だ。
「なぁ、あんた…何でこんな仕事を?」
 トリプルJが対峙している男に尋ねる。
「さあな。見ての通りだっ、魔が差したのかもなぁ」
 男はそう言いつつも二人からの攻撃を紙一重で交わし続ける。
「魔がねぇ…」
 トリプルJの呟き…自分よりもずっと経験値が高いと思われる彼がこんな仕事に手を染めているというのは、実に勿体ない。
「これでは埒があかない…でもこれなら」
 話している隙にリュンルースが仕掛ける。集中で気持ちを高めて解き放つのは風の刃。
「これでどうかなっ!」
 少し死角からまだ残っていた木箱を巻き込みつつ、彼が敵の覚醒者に攻撃する。
 またもひらりとかわして見せたが、声で仕掛ける事を察知していたトリプルJがそれを逃さない。
「ちぃと痛いかもだが、覚悟しなっ」
 地を駆けるもので男に迫って、筋力補充していた腕でダガーを握ったままボディーブローを叩き込む。
 男は打たれたまま壁へと飛ばさせ、意識を手放す。一方正面組もそろそろ決着が着きそうだった。

●解決
「ちっ、ちょこまかと」
 格闘士二人を相手に体躯に似合わず素早い動きを見せている事から相手は多分霊闘士と推測された。
 パワー系の霊呪を憑依しているのかなかなかに手強い。近付きたい二人と近付けさせない敵との攻防が続く。
「ああ、もう的がデカいというのになぜ当たらん!」
 後方支援をしたくても動かれては狙いが定め辛い。アーデルハイトがイライラする。
「それはこっちも同じだよっ」
 そう言うのはレムだ。地味にダメージを食らいつつも、隙が出来るのを辛抱強く待つ。
 だが、待っているばかりでは始まらない。既に手下らはやられてしまっているにも関わらず、男は攻撃をやめようとはしない。
「全く往生際が悪いよね」
 はあと息を吐きながらエリオが言う。その言葉が男を刺激したようだった。
「やるからには最後まで…だろ? あぁん」
 男が鋭い眼光でエリオを捉える。その瞳に彼は委縮した。身体が自分のものでないように固くなる。
「エリオ君!」
 レイが叫ぶ。けれど、男のブロウビートに囚われた彼は動けない。
 それを知ってちらりとアーデルハイトの方を見る。だが、あちらもその様子の変化についていけていない。残るは花だった。彼の侵入後の動きを目で辿る。すると彼は気絶させた下っ端達の捕縛に動いていたようだった。視線に気付いて、彼女ににこりと笑顔を返す。
(あっ、あー…と)
 その笑顔に悪気はない。しかし、その場では些か今の状態を読み切れていない。
(しゃーない。私がやるか!)
 援護が欲しかったが仕方がない。レムが意識を集中する。
 そして突構えからの螺旋突をくり出そうと距離を詰める。
 そこで仲間も気付いたか。
「さっきは呆気にとられたが、吾輩の稲妻を食らうがいい!」
「少しだけじっとするのが得策だよ」
 アーデルハイトがスキルで花はロープで男の動きを止めにかかる。そこへレイが突っ込んで、
「とぉりぁあああ!!」
「ぐっはっ…」
 彼女のみぞおちを抉る一撃に男は堪らず体をくの字に曲げその場に沈んでゆくのだった。

 かくて強盗団から設計図を取り返したハンターらは依頼人の元へ。
 捕縛した者達は役所に届けられ事情を聞けば、彼等は前科持ちやら職場と折り合いがつかずあぶれていた者達が多かったらしい。リーダはあの霊闘士であり、彼もまた意見の食い違いから仲間達と別れてしまいその日暮らしをしていた所に今回の依頼が舞い込んだという。
「あれは自分らが開発したモノだって聞いていたんだが違ったようだな。俺とした事が下調べするべきだった」
 霊闘士が自嘲気味に言う。そして彼から聞かされた黒幕はと言えば…。
「チッ、あ奴しくじりおったか。あぁそうさっ、お前がうちを選ばないからいけないんだっ!」
 店構えからしていかにも高級思考の靴屋だった。職人は僅か数名で、靴底に関しては機械化を導入している店である。そんな店であるから、どうしても質よりもコストや見栄えを重視する傾向とギアは捉えて、提携先を今の店に選んだのだが、それがどうも気に食わなかったようだ。
「いいかっ。どんなにいいものでも数が確保できなきゃすぐに忘れ去られるさ」
 逮捕際に高級靴屋の店主が吐き捨てる。
「ですが、適当なものは出したくありませんし、この手の靴はそれぞれに調整が必要ですから」
 量産は好ましくない。これがギアの意見である。
 そんな平行線の議論が始まっておろおろするのはギア側の靴屋さん。
 そこで見兼ねた花が提案する。
「あの、もしギア君が構わないのであれば靴屋全体にこの設計図を公開してはどうだろうか?」
 と。つまりは靴屋全体の共同開発とし、もう少し話し合って分業作業を実現すれば流通も利益も上がるのではという事だ。
「地域の活性化にもなるし、職人の技術向上にもなるがいかがだろうか?」
 花が笑顔で言う。そんな顔を見せられてはノーとは言い辛い所もあるだろう。
「僕は構いませんよ。沢山出回って使って頂ければ嬉しい限りですし」
 ギアが言う。
「ですね。私も正直うちの店だけでまかなうのは難しいと思っていましたから助かります」
 と靴屋の店主もそれに同意し、設計図は靴屋の組合での広くに公開される事となる。
「はぁ、全く欲がないやつじゃ」
 じっくりその設計図を堪能したアーデルハイトが呟く。
「販売、楽しみにしているよ」
 エリオが二人に正直な言葉を送る。
 かくて、盗まれたものは全て返された事から罪も軽くなり、塀の中でも職業訓練の一環として彼の靴作りが行われるかもしれないのだった。

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MVP一覧

  • 緑青の波濤
    エリオ・アスコリka5928

重体一覧

参加者一覧

  • 道行きに、幸あれ
    リュンルース・アウイン(ka1694
    エルフ|21才|男性|魔術師
  • 努力の対価を
    アーデルハイト(ka3133
    人間(紅)|14才|男性|機導師
  • 緑青の波濤
    エリオ・アスコリ(ka5928
    人間(紅)|17才|男性|格闘士
  • 仕事が丁寧
    花(ka6246
    鬼|42才|男性|疾影士
  • キャスケット姐さん
    レム・フィバート(ka6552
    人間(紅)|17才|女性|格闘士
  • Mr.Die-Hard
    トリプルJ(ka6653
    人間(蒼)|26才|男性|霊闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/11/27 22:52:37
アイコン 相談卓
エリオ・アスコリ(ka5928
人間(クリムゾンウェスト)|17才|男性|格闘士(マスターアームズ)
最終発言
2016/12/02 06:37:01