フールディン籠城戦 <前哨戦>

マスター:真太郎

シナリオ形態
シリーズ(新規)
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,300
参加制限
-
参加人数
6~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/12/16 22:00
完成日
2016/12/23 21:42

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 アルナス湖から流れるアルナス川の河口付近の山間にあるドワーフの鉱山町『フールディン』を治めるフルディン族の新族長フェグルは堕落者であった。
 フェグルの弟であるヴィオルはハンターの手を借りて兄を討ったが、その心には深い悲しみが刻みこまれる。
 兄を失った悲しみ。
 兄に裏切られた悲しみ。
 兄を救えなかった悲しみ。
 それらが心を責め苛む。
 しかし悲しみに暮れてばかりもいられない。
 事の顛末を妹のスズリには話さなければならないからだ。
 気が重い。
 スズリはきっとヴィオル以上にショックを受ける事だろう。
 だが告げない訳にはいかなかった。
「嘘……」
 スズリは能面に絶望だけを貼り付けたような得も言われぬ表情になった。
「本当だ。フェグル兄は堕落者となっていた。だから……俺が討った」
「いやあぁぁーーー!!」
 スズリは絶叫を上げるとヴィオルから逃げるようにドアを閉ざし、部屋に引き篭もってしまった。
 ヴィオルの心はますます重くなる。
「ヴィオル様……」
「スズリを頼む」
 家政婦のマームが気遣わしげに声を掛けてくれたが、そう返すだけで精一杯だった。
(どうしてこんな事になったのだ……。どうしてこのような事をしたのだ兄上……。そして俺はこれからどうすればいい? 父上……俺は、どうすれば……)
 父のヴィブは行方不明で生死すらも分からない。
 フェグルが何を考えていたのかも分からない。
 スズリにどう接すればいいのかも分からない。
 この先どうすればいいのかも分からない。
 目の前も先の事も真っ暗で、何をどうすればいいのかまるで分からなかった。

 ヴィオルはふらふらと屋敷内を歩き回り、何時の間にか執務室にやってきていた。
 部屋に用事があった訳ではないが執務椅子に腰掛け、ぼんやりと室内を眺める。
 するとこの部屋でヴィブがフェグルを次期族長に選んだ時の事が思い出された。
 あの時は家族4人が皆笑顔でいられた。
 しかしそんな光景はもう2度とないのだ。
 なんとなく引き出しを開ける。
 空だ。
 しかしふと、この引き出しが2重仕掛けになっている事を思い出した。
 適当に弄ってみる。
 何か入っているかもと期待した訳ではない。ただ気を紛らわせたいだけだった。
 開いた。
 意外な事に何か入っている。
「これは?」
 手にとって見ると、手紙のようだった。
 開けてみると、フェグルの筆跡で何か書かれていた。

『本当はこんな物を残すべきではないのだろう。
 だがこれは僕の人としての最後の未練だ。許して欲しい。
 あの夜、クススに歪虚となる事を持ちかけられた時、僕に取れる選択肢は少なかった。
 僕を歪虚化したいという事は、この町で秘密裏に何か成したい事があるに違いない。
 断ればクススは僕を殺し、表立って町に攻め入ってくるだろう。
 そうなれば町の住人に被害が及ぶ。
 それは絶対に避けなければならない。
 マームが時間に正確な人で本当によかった。
 薬を持ってきてくれる時間は分かっていたから、僕とクススの会話を上手く聞かせる事ができる。
 だから僕は歪虚となる事を選んだ。
 予想通りクススは僕を傀儡にして町を牛耳り始めた。
 これで時間が稼げる。
 僕が歪虚となった事はマームの口から父やヴィオルに伝えられるだろう。
 いずれ僕は町から排斥される。
 それからは歪虚の中に潜り込んでチャクマーを動かせばヴィオルは町の住人を安全な場所まで避難させてくれるだろう。
 そして僕は歪虚が各個撃破されるように戦力小出しにさせて弱体化させる。
 そうしてフルディン族を守る。
 これがあの夜の僕に取れた唯一の選択肢だった。
 ただしこの計画も何時まで実行できるか分からない。
 健康な身体で産まれた者達への嫉妬の気持ちが日々心の中で増大してゆく。
 それと同時に人への嫌悪感や殺意が沸いてくるのを抑える事ができない。
 これが堕落者になるという事か。
 僕の心が何時完全に歪虚化するか分からない以上、この計画の事は家族には告げられない。
 話せば歪虚となった僕でもきっと受け入れてくれるだろう。
 でも受け入れられてはいけない。
 何時裏切るかもわからない僕は信用されてはいけないのだ。
 完全に歪虚化した僕は計画を逆利用してフルディン族を罠に嵌めるだろうから。
 だから誰にも真実は話せない。
 人も、歪虚も、欺かなければいけない。
 きっと僕は裏切り者と言われるだろう。
 大罪人として人々から嫌悪されるだろう。
 でも家族を守れるのなら、大罪人の裏切り者でも構わない。
 僕は大罪人の裏切り者としてヴィオルに討たれる。
 そうすればフルディン族の汚名を血筋の者が注いだ事になり、ヴィオルは族長として立つ事ができるだろう。
 だからこの手紙を読んだ者へお願いだ。
 この事は誰にも告げないで欲しい。
 君の心の中にだけそっとしまっておいてくれ。
 それが僕の最後の望みだ』

 ヴィオルは涙が溢れるのを抑える事ができなかった。
 涙はフェグルの死を目の当たりにした時に枯れ果てたと思っていたが、そんな事はなかった。
 しかしあの時の涙とは違う。
 これは感動と悔恨の涙だ。
(兄上は俺達を裏切ってなんていなかった。歪虚となってまでもフルディン族を救おうとしていたんだ! そんな兄上を俺は……俺は……)
 ヴィオルは頭を机に打ち据えた。
 額が避けて血が滲む。
 そんな事で兄を殺した罪悪感は消えはしない。
 だが意識はハッキリした。
 そしてこれから何をしなければいけないのかも。
 ヴィオルはフェグルの手紙を手に、スズリの部屋に走った。
「スズリ! これを読んでくれ。フェグル兄の手紙だ」
「兄様の……」
 スズリは手紙を読み始める。
 そしてヴィオルと同じように涙した。
「兄様ぁ~!」
 ヴィオルは泣き出したスズリを抱きしめて慰めた。
 そしてスズリの気が落ち着いた頃を見計らって話し始める。
「スズリ、兄上はこの事を誰にも言うなと書いていたが、俺は皆に伝えたいと思う。兄上がどれだけ部族の事を想っていたか知ってもらいたいんだ」
「うん。私もそれがいいと思う」

 ヴィオルとスズリはフェグルの手紙の内容をフルディン族の皆に伝えた。
 皆色々と思うところは色々あっただろうが、概ね受け入れてくれた。
 そして政務は一旦ヴィオルとスズリが族長代理として行う事となった。

 しかしその翌日、歪虚の大群がフールディンの町に押し寄せてきた。
 その数は1000以上。
 フェグルが危惧していた攻勢を歪虚が仕掛けてきたのだ。
「町の門を全て閉鎖しろ! 住人は町の中央に避難。早馬をヴェドルに送って援軍を要請しろ。兵士は完全武装で門と外壁を固めろ」
 ヴィオルは兵を集めて指示を飛ばし、スズリは住人に避難を呼びかけるために町に向かう。
 兵は怒号を上げて駆け回り、住人達は大慌てて走り回る。
 フールディンの町は騒然となり、物々しい雰囲気に包まれた。
 町の全てを巻き込む程の戦が始まるのだ。

リプレイ本文

 フールディンの町に立て篭もるため門を施行する直前、ラン・ヴィンダールヴ(ka0109)は単身で、アルマ・A・エインズワース(ka4901)は護衛のドワーフ兵4人と弓回収兵3人を連れて壁外に出た。
「本当にそんな少人数で大丈夫なのか?」
 ヴィオルが心配そうに声をかけてくる。
「籠城戦ってなんでしたっけ? って、僕が言っても説得力ないですー? それよりヴィオルさん、フェグルさんを殺したのは僕ですけど、どうします?」
 アルマは珍しく感情の読めない笑顔を浮かべて尋ねた。
「どうする、とは?」
「復讐とか、仇でも討ちたいならどうぞですよ。でも、少しは強くなってください。じゃないと、僕もやられてあげないです。抵抗はしますからね? いくらあなた……いえ。あなた達でも」
「俺は兄上を討つために君達を雇い、君達はそれを実行した。なのに君達を恨むなどお門違いもいいところだろう。そんな事をすれば俺は本当の大馬鹿者だ」
「でも殺したのは間違いなく僕ですよ?」
「幸か不幸か俺は兄上が討たれる瞬間を見ていないからな。実感は湧きにくいし、事の元凶は兄上を堕落者にしたクススとかいう歪虚だ。怒りも憎しみもそいつにぶつけるのが筋だろう。そのためにも今は町を守って生き残らなければな」
 ヴィオルはそう言ってアルマに背を向けた。



「随分な数を揃えてきたものですが、全て捨て石なんでしょうね」
 保・はじめ(ka5800)は正門の外壁の上から300体のゴブリンを双眼鏡で観察しつつ、敵の真の意図にも考えを巡らせていた。
 やがてゴブリン群は衝角を中心にした200体が前進を開始。残り100体は微速前進しながら矢を放つ。
「盾役は防御!」
 保がすぐに外壁上のドワーフ兵に指示を飛ばす。
 二人一組で攻守を担当しているドワーフ兵の盾役が盾を頭上に翳した。
 その直後、100本の矢が外壁と、門前のランに雨のように降り注ぐ。
 保も盾を翳したが、1本だけ受け止めきれず刺さってしまう。
 矢を受けきれなかった兵は何人かいたが傷の酷い者はおらず、こちらも弓や銃で反撃を開始。
 ランは龍槍「ヴィロー・ユ」を頭上で旋回させて矢を全て打ち落としていた。
「あはは、せっかくだから1番に終わらせたいねー?」
 ランを土煙を上げて迫ってくるゴブリン群を見据えると『霊呪奥義』を発動。その身が白銀の毛並みの白狐に近い姿に変貌してゆく。
 そしてゴブリン群に向かって駆け出しながら『現界せしもの』も発動。
 ランの祖霊である白狐の幻影が身を覆い、その体はどんどんと巨大化していった。
 巨大化したランは龍槍を大きく振りかぶり『ラウンドスウィング』を発動。
「そーーーれ!!」
 自らの体も回転させながら龍槍でゴブリン群の前衛を薙ぎ払う。
 爆発した。
 その光景を見ていたドワーフ兵達はそう思った。
 なぜならランを中心に50体以上ものゴブリンが1度にまとめて吹き飛んだのだから。
 体を両断された者、首が飛ぶ者、盾ごと腕を吹っ飛ばされる者。
 数多くのゴブリンが瞬く間に様々な躯を晒す事になった。
「うおぉーー!!」
「なんじゃありゃー!」
「まるで爆弾じゃ!」
「すげぇーー!!」
 ドワーフ兵達が沸き立って歓声を上げる。
 もちろん当たらなかったり避けたゴブリンもいるが、その数は多くない。
「残っている敵を撃って」
 保は沸き立つドワーフ兵に生き残りを撃たせ、自分も『風雷陣』で稲妻を放つ。
 ゴブリン群前衛の中央をほぼ壊滅させたランは左翼に向かい『ラウンドスウィング』を発動。
 突風を伴って薙ぎ払われた龍槍は再び50体近いゴブリンを吹っ飛ばした。
 残る前衛右翼は2度も驚異的な威力を目の当たりにして戦意を保っていられる訳もなく、逃走を始める。
「逃さないよー」
 ランは逃げる右翼のゴブリン群に追いすがると『ラウンドスウィング』で薙ぎ払う。
 しかし敵は散り散りに逃げていたため、巻き込めたのは30体程だった。
 そこでランに異変が起こる。
 巨大化していた幻影が消えて身体が縮むと同時に全身に痛みが走った。
「ぐっ! タイムリミットか……」
 『現界せしもの』と『霊呪奥義』の効果が切れ、奥義の副作用が跳ね返ってきたのだ。
 ランはすぐに『リジェネレーション』と同じ効果の『貴族の義務』を発動して身体を癒やし始める。
 ゴブリン群の後衛の弓隊はランの体が縮んだのを好機と見て一斉に矢を射った。
 100本の矢が降り注いできたが、ランは龍槍で全て打ち払う。
「甘い甘い。僕はまだまだ元気さー」
 ランは矢を打ち払いながらゴブリン後衛に向けて突進。間近まで迫ると再び『霊呪奥義』と『現界せしもの』で巨大化した。
 ランの巨体を前にしたゴブリン達はたちまち逃げ惑い始める。
「吹っ飛べー!」
 ランの『ラウンドスウィング』が炸裂する度にゴブリンが吹っ飛んでゆく。
「敵は完全に総崩れです。今のうちに出来るだけ数を減らして下さい」
「おぅ!」
「任せとけー!」
 保はランの攻撃から辛くも逃げのびたゴブリンを『風雷陣』で確実にトドメを刺し、ドワーフ兵達も容赦なく狙い撃ってゆく。
 そしてランの奥義が再び切れた時、ゴブリン群は既にまともに戦える状態になく、散り散りに敗走するしかなかった。
「いやー。ゴブリンって強いイメージなかったけど、束になってもやっぱり強くなかったねー。あははは」



 西の外壁のゴブリン群は梯子を持って外壁に迫りつつ、投石機の準備をしていた。
「ふむ……移動中に寄った町でまさかいきなり防衛線をする羽目になるとは……面倒なことになったな」
 キャリコ・ビューイ(ka5044)は外壁の上から30名のドワーフ兵と共に敵を待ち構えていた。
「手近な脅威の高い目標から攻撃するか……」
 キャルコは試作型魔導銃「狂乱せしアルコル」を構えると投石機の1つに狙いを定め、『フォールシュート』を発動してトリガーを引く。
 放たれた弾丸は込められたマテリアルの力によって弾道が曲がり、投石機の上から降り注ぐ。
 投石準備をしていた5体のゴブリンは纏めて銃弾を浴び、投石機にも銃痕が刻まれた。
「やったか?」
 しかしゴブリン達はまだ息があり、投石機もまだ使えそうだった。
「威力の落ちるフォールシュートでは仕留めきれなかったか」
 キャリコはすぐに空になった弾倉を抜いて銃をリロードする。
「そのオモチャは潰させてもらいますよー」
 外壁外に迎撃に出たアルマも投石機の1つに狙いを定めて『アイシクルコフィン』を発動。
 氷の柱が一直線に乱立し、その氷の刃が進路上のゴブリンを切り裂き、貫き、透明だった氷の柱列は瞬く間に赤い血柱に変わった。
 投石機も氷の柱に貫かれて基部が破損し、使用不可能となる。
「すっげぇ魔法だ!」
「いいぞー!」
「もっとやれぇー!」
 圧倒的な力を目にしたドワーフ兵達が喝采をあげる。
 しかし残り3機の投石機は発射準備が終わり、巨石が唸りをあげて投じられてきた。
「潰せるか」
 キャリコはリロードを終えた魔導銃で巨石を狙い撃った。
 着弾した部分は砕けたが、質量が大きすぎて完全破壊には至らない。
 3つの巨石は重力に従って壁に落下。
 2つは壁面にぶつかり、外壁を大きく損壊させる。
 残り1つは外壁の上に落ち、外壁上部を砕いて大きくへこませた。
 その場にいたドワーフ兵の1人を巻き込んで。
「チクショー!」
「やりやがったなぁー!」
 ドワーフ兵達も向かい来るゴブリン群に攻撃を開始。
 猟銃を持つ10人は二人一組で交互に撃ち、弓兵は密集地点を狙って矢を射る。
 対するゴブリンも後衛の60体程が矢を放ってくる。
 両陣営の間で球と矢が交錯。双方に被害が出たが物量差でドワーフ兵の被害の方が多い。
 壁外のアルマは護衛と自身の盾で防いだので無傷だ。
「もう石は撃たせませんよー」
 アルマは再び『アイシクルコフィン』を発動。
 多くのゴブリンを巻き込みながら投石機を1つ潰す。
 キャリコも再び『フォールシュート』を放って先程潰しそこねた投石機を完全に破壊した。
 アルマは『アイシクルコフィン』で更にもう1機潰したが、その頃にはゴブリン群の前衛がすぐ近くまで迫っていた。
「ちょっとだけ時間稼いでください」
「任された。ここは通さんぞー!」
 アルマの護衛のドワーフ兵が敵を押しとどめるため前に出る。
 その間にアルマは梯子持ちのゴブリンと投石機が射線上に入る位置まで移動して『アイシクルコフィン』を放ち、纏めて葬った。
 しかしその間に残り2つの梯子が壁に取り付いた。
 アルマは最後の投石機も『アイシクルコフィン』で潰すと、片方の梯子の周囲を『暁の呼び声』で薙ぎ払う。
「うーん。たくさんいるんでまとめてじゅってしたら楽しいかと思ったんですけど、いまいちですー」
 すると梯子を失った中央と左翼の残兵がアルマ達に群がってくる。
「守れー!」
「耐えろー!」
 護衛と弓回収のドワーフ兵はアルマを囲むように集まり、アルマは兵の合間から『暁の呼び声』を放ってゴブリンの屍を積み上げてゆく。
「登らせるな!」
 キャリコは魔導拳銃「ベンティスカ」を抜くと、梯子を登っているゴブリンに弾丸を撃ち込んだ。
 だが1発では倒しきれず、登ってくる。
「これならどうだ」
 『シャープシューティング』で感覚に集中させて放つ。今度は1発で絶命させた。
 周りのドワーフ兵も登ってくるゴブリンを集中的に撃ってゆく。
 その間にドワーフ兵の1人が梯子を潰そうと近寄った。
 すると梯子の頭頂部付近に矢が集中的に射られ、そのドワーフ兵は全身に矢が刺さって壁から落ちていった。
「くそっ、指揮官はどこだ」
 キャリコは弓兵群の中から指揮官らしいゴブリンを見つけると『シャープシューティング』と『高加速射撃』で長距離狙撃。1発で頭を射抜く。
 指揮官ゴブリンは自分に何が起こったのかも分からぬまま絶命した。
「よし、梯子を破壊する。援護してくれ」
「任せろ」
 ドワーフ兵はキャリコが狙い撃たれないようゴブリン弓兵に苛烈な攻撃を行い、キャリコは壁から身を乗り出して梯子が潰れるまで魔導銃を連射した。
 そうして梯子を全て失ったゴブリン群は退却を開始。
「逃がすな! 撃てー!」
 キャリコは逃げるゴブリンに追い撃ちを指示した。
「逃げる奴はゴブリンだ、逃げ無い奴はよく訓練されたゴブリンだ。ホント、戦場は地獄だぜ……」
 その際、リアルブルーのネタが口から漏れてしまったが、幸い誰にも聞かれなかった。



「厄介だな、数が多すぎる。僕の住んでいた所がゴブリン共に滅茶苦茶にされたのも、こんな状況だったな」
 町を迫るゴブリン群を目にしたカイン・マッコール(ka5336)の脳裏に故郷の村が滅びた時の光景がよぎる。
(一つ違うと言えば、この場所は見捨てられていない。なら、やるべきことは一つ)
「何時も通りゴブリンを殺すだけだ。何も変わらない」
 カインは静かな決意と殺意を抱いて馬に跨った。
「ボクは良いコなのでちゃんとお留守番してますよ……楽しみだねぇ」
 レオナルド・テイナー(ka4157)は外壁上に立ち、ドワーフ兵に盾で守ってもらいながらゴブリン群を双眼鏡で観察して距離を測る。
 やがてゴブリン群の後衛100体が放った矢が外壁上に降り注ぎ、
 ドワーフ兵とレオナルドは盾を頭上に掲げたが、数が多いため全てを防ぎ切る事ができず、何本かは矢を受けてしまう。
 その間にゴブリン前衛の200体は更に前進。
「今よ!」
 レオナルドは敵をある程度引きつけると『ファイアーボール』を放った。
 火球は敵前衛のど真ん中で爆発し、その衝撃波がゴブリンを纏めて薙ぎ倒してゆく。
 しかし直撃を受けてもゴブリン達は辛うじて生きており、フラフラと立ち上がり始めた。
「あら、火力が足りなかったかしら? ドワーフちゃん、トドメを刺してあげて」
「おぅ!」
 外壁上のドワーフ兵がファイヤーボール跡にいるゴブリンに矢や弾を撃ち込んでゆく。
「行くぞー!」
「うぉぉおおおおーー!!」
 ファイヤーボールを合図に門が開かれ、騎乗したカインが30名のドワーフ兵と共に敵群に突進した。
 『ソウルトーチ』で敵の気を引きつつ馬の『チャージ』でゴブリンを吹き飛ばしながら衝角に接近。
 『薙ぎ払い』で衝角を左側を持つゴブリン6体の首を一気に切り飛ばした。
 片側の持ち手が少なくなった衝角は支えきれなくなり、地面に転がり落ちる。
 すると衝角持ちも剣を抜き、カイン達に斬りかかってきた。
 カインは盾で剣を弾いて体勢を崩させると剣で一突きにする。
 左右からも斬りかかられるが、馬を巧みに操って避け、『薙ぎ払い』で一気に倒す。
 だが倒しても倒してもゴブリンは次々と襲いかかってきた。
「無駄に数が多いと本当に嫌になる、下手に逃げられたらこちらの技術も学習されかねない、だからこそゴブリンは殺す」
 カインは剣で斬り、突き、盾で殴り、馬を当て、蹄で踏み潰し、あらゆる手を使ってゴブリンを殺し続けた。
 レオナルドも『ファイアーボール』を撃ち続けて多くのゴブリンにダメージを与えていた。
 しかし1発では致命傷にならず数も多いため、壁上のドワーフ兵と協力しても倒しきれず、門や壁にまで到達するゴブリンも出始めてきた。
「よく辿り着いたわね。ご褒美よ」
 レオナルドはオリジナル魔法『【夢】』を発動。門前が青白い雲に包まれ、ゴブリン達がパタパタと倒れてゆく。
「ささ、無駄の無い様に頭を狙って狙って」
 そして眠ったゴブリンの頭をドワーフ兵に撃たせてゆく。
 一方、30名のドワーフ兵は当初は善戦していたが、時間が経ち混戦になるに連れて数の差で圧倒され始めていた。
 ドワーフ達は互いの死角を庇い合いながら奮戦したが、常に多人数から攻撃を受けたため、徐々に傷つき、疲弊してゆく。
「くそっ! 倒しても倒してもキリがねぇ!」 
「数は確実に減ってるわ。このまま耐え凌げば勝てる! 頑張れー!」
 レオナルドは声援を送って鼓舞しながら魔法援護を行うが、味方を巻きこないように撃つと大人数には当てられなかった。
「こっちだゴブリン!」
 カインはゴブリンを引きつけるために再度『ソウルトーチ』を発動。
 するとゴブリン群後衛から大量の矢が射られてきた。
 盾と武者甲冑で防いだが、馬には矢が突き刺さった。
 馬が倒れる前に跳ぶ。
 そこにゴブリンが殺到してきたが空中で『薙ぎ払い』を放って倒し、着地する。
 カインが多くのゴブリンを引きつけたため、ドワーフ兵に若干の余裕が生まれた。
 それからも奮戦は続いたが、やがて敵前衛がほぼ壊滅し、ゴブリン群は撤退。
「やったぁ!!」
「勝ったぞー!」
 ドワーフ達は歓声を上げたが、味方にも少なくない被害が出ており、すぐに負傷者の救護も開始される。
「止血じゃ、早く!」
「おい! 目を開けろ」
「頑張れ、死ぬな!」
 それに敵はまたすぐに仕掛けてくるだろう事も明らかだった。

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重体一覧

参加者一覧

  • 皇帝を口説いた男
    ラン・ヴィンダールヴ(ka0109
    人間(紅)|20才|男性|霊闘士
  • 狭間へ誘う灯火
    レオナルド・テイナー(ka4157
    人間(紅)|35才|男性|魔術師
  • フリーデリーケの旦那様
    アルマ・A・エインズワース(ka4901
    エルフ|26才|男性|機導師
  • 自在の弾丸
    キャリコ・ビューイ(ka5044
    人間(紅)|18才|男性|猟撃士
  • イコニアの夫
    カイン・A・A・カーナボン(ka5336
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • ユグディラの準王者の従者
    保・はじめ(ka5800
    鬼|23才|男性|符術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
カイン・A・A・カーナボン(ka5336
人間(クリムゾンウェスト)|18才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2016/12/16 07:43:14
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/12/13 01:53:52
アイコン 質問卓
保・はじめ(ka5800
鬼|23才|男性|符術師(カードマスター)
最終発言
2016/12/15 10:12:07