• 剣機

【剣機】グライシュタット決戦

マスター:植田誠

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~10人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/10/07 22:00
完成日
2014/10/14 21:57

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 帝国第五師団の管理する都市……グライシュタットではところどこから煙や火の手が上がっていた。そしてその上空には、分離した剣機の姿があった。
「しかし、分離するというのは思いつきませんでしたな」
「あぁ。分離した分戦闘力は落ちていると見ていいはずだけど……」
「とはいえ剣機ですからな。こちらも結構な数を落とされています」
「そうか……この際地上はユウに任せて、こっちをなんとかしないといけないね」
 都市防衛についていたウェルナー・ブラウヒッチ兵長と、帝都からとんぼ返りしてきた師団長ロルフ・シュトライトは、空中で簡単に作戦を打ち合わせる。すでにいくつかのコンテナが落とされており、地上は混乱状態に陥っているだろう。だが、第九師団が援護に入ってくれたおかげで、数少ない戦力を剣機対応に回すことができる。これは僥倖だった。
「……じゃあ、そういうことで。とりあえず剣機は僕が抑えておくから、準備急いでくれ。指揮はウェルナーに一任するよ」
「了解しました」
 そう言ってウェルナーは上昇していく。
「上手くいくのか?」
「いかせるしかありません」
 そう言うと、ロルフは自分の後ろ、グリフォンに同乗してきていたオズワルドの方へ振り向いた。
「とりあえずオズワルドさんは降りてください」
「……ココで降りたら死ぬだろ」
「大丈夫ですよ……あ、来た来た」
 そう言ってロルフが指差した方向には別のグリフォンの姿が見える。どうにも飛び方が怪しいことから、良くて訓練兵だろうというのはすぐに分かった。
「あっちに移乗して、先に要塞の方へ向かってください。僕はこのまま剣機に接触します」
 そう言いながらロルフは双剣を抜く。
「おいおい、空戦が得意だからって単独じゃさすがに……」
「そこまで自惚れてはいませんよ。ただ主力を帝都に割いている以上、剣機とまともに戦えるのは僕とウェルナーの二人だけです。倒せるかと言われれば……残念ながら難しいでしょう」
「だから落とすってわけか……地上に」
 オズワルドに向かい、力強くロルフは頷く。
「地上ならオズワルドさんも全力で戦えますし、ハンターに協力してもらうこともできます。本当はユウにもこちらに回ってもらいたいところですが……まぁ彼には迷惑かけますが、都市の守りに集中してもらいましょう」
「そうだな、それがいいだろう……よっと」
 オズワルドは訓練兵のグリフォンに飛び移った。それを確認したロルフは剣機の方へ向き直る。
「それほど時間はかけないつもりだから、急いで送り届けてくれ」
 最後に訓練兵へそう声をかけると、ロルフの乗るグリフォンは加速。帝都からグライシュタットへ飛行していた時より更に速く、剣機へと向かっていった。


「あんなこと言ってたが、はたして……」
 それから数分後。オズワルドは訓練兵が危なっかしく操るグリフォンの背に揺られ、南部国境要塞に到着した。そして、すでに集められたハンターたちと共に要塞内部……広い中庭に立っている。
 グリフォンの運用を前提としたこの要塞は、周囲を高く強固な壁に覆われている。それは中庭も同様。ここならば、都市に落とすよりも被害は少ないだろう。
「後は信じて待ってやるしかないが……お?」
 呟き空を仰ぐオズワルド。ふと、空に黒い影が見える。それが周囲をグリフォンに囲まれた剣機だと気付いた次の瞬間、地面に強い衝撃とともに土煙が舞う。
「お待たせしました、上手くいきましたよ」
「ロルフか。よくやったな!」
 剣機に次いで、ふわりと降り立ったロルフとグリフォン。どちらも無事……とは言い難い傷を負ってはいたが、まだ戦闘は可能なようだ。
 オズワルドたちの頭上には大きな、鋼線で作られた網が広げられていた。ロルフの手というのは単純で、グリフォンに網を持たせ、広げた状態で急襲。そのまま網で剣機を捕え地面に叩きつけるというものだった。
「グリフォン達はすれすれで停止させますが、勢いが十分なら剣機は地面に激突して、あわよくばそのまま……という策だったんですが……」
 土煙が晴れてきた。その先には……剣機の姿が。
「剣機も飛行できますからね。僕に注意を引き付けたうえでの奇襲でしたから策にかかりはしたけれども……地面に落ちたダメージは皆無と見ていいでしょう」
 剣機の健全な様子を見て、ロルフは溜息を吐く。
「空でも結構ダメージを与えたつもりだったんですが……ゾンビだけあってかなりの耐久力ですね」
 だが、当初の目的通り空戦から地上戦に戦場を切り替えることには成功している。これならオズワルド、そしてハンターたちも全力で戦えるだろう。
「団員には網を広げた状態で空に待機してもらいます。これで空に逃がしはしません。さらに四方は壁。これで地上から逃げることもできません」
 ロルフは自らのグリフォンに空へ退避するよう指示を出しつつ双剣を構え直す。それを見たオズワルド、ハンターたちも武器を構えた。
「なるほどな……よし、後は地上でキッチリ倒してしまうだけってな! 頼むぞ、お前たち!」

リプレイ本文


「頼むぞ、お前たち!」
 オズワルドが声を上げるとともに、ハンターたちは行動を開始した。
「第五師団長殿はこっちだ!」
 地上に降りてきたばかりだったロルフに声をかけたのはヴォルフガング・エーヴァルト(ka0139)。その横にはシャルラッハ・グルート(ka0508)の姿があった。
「これは……?」
「こういう作戦なんだ。空にいたから伝えられなかったけどな!」
 今回ハンターたちは全体を5つの班に分けていた。まず、接近戦を行う班が4つ。この4つの班で剣機を取り囲み波状攻撃を行う。集団で一方向から攻撃すれば火力は集中しやすいだろうが、剣機の範囲攻撃で一網打尽にされる可能性もある。だが分散していれば、範囲攻撃の影響は少ない。班単位ならば最低限の連携を取ることも可能だし、これは有効な手だろう。
 それに加え、離れて援護を行う射撃班。
(後方に待機しているのが、その射撃班か……)
 ちらりと後ろを見ると、射撃班のカグラ・シュヴァルツ(ka0105)、結城 藤乃(ka1904)の二人が確認できた。ともに長射程の猟銃を構えている。あれなら剣機の射程外からでも攻撃が可能だろう。
「ちなみに俺達は便宜上4班ってことになる」
「なるほど、了解したよ」
「それじゃ、援護射撃頼んだぜ!」
「え? ……あぁ、まぁ任せてくれ」
 そうシャルラッハに言われて、一瞬戸惑った表情を見せた物の、すぐにそう返事をするロルフ。
(機導砲……あと何発撃てたかな……)
 左腕に装備した魔導ガントレットをさすりながら、ロルフは武器を構えた二人の後を追った。向かうは剣機の左手。包囲は始まっていた。


 各班が手筈通り剣機の周囲を囲むまでの間、剣機の意識を逸らさなければいけない。
 その為に、まず先手を打って仕掛けたのは1班。ガルシア・ペレイロ(ka0213)、メリエ・フリョーシカ(ka1991)のコンビだ。
「帝国の為に……いざ!」
 陽炎のような揺らぎを背に、メリエが突っ込んでいく。構えは上段。命中を無視し、威力のみを追求した型。
「満身の威を込めて……斬るっ!」
 突進しつつ繰り出される渾身撃。当たれば必殺の威力を持つその攻撃を、剣機は上体を逸らすように躱す。巨体ながら思いのほか素早い。
「ちっ……!」
 悔しそうに舌打ちするメリエ。だが無駄ではない。上体を逸らしたことで晒した腹部。そこへカグラの銃弾が突き刺さる。
「ガトリング砲を狙ったんですが……そう上手くは当たりませんか……」
「気にしなくていいわ。包囲が完了するまでは援護に集中しましょう」
 そう言って藤乃が追撃の一射。これを剣機は躱す。だが、躱したことで若干態勢が崩れたか。
「さて、いっちょやってやるか……」
 その隙を逃さず、ガルシアが一気に踏み込み間合いを詰める。
「教えてやるぜ、ドリルが漢の武器だってことをな」
 手に持つ魔導ドリルが唸りを上げる。ガルシアのマテリアルによって高速回転したドリルは、剣機の脚を貫き、肉を抉る。
 攻撃を受けた剣機。その腐肉でできた顔に痛みを始めなんらかの感情を読み取ることは出来ない。だが、ダメージは確実に与えているはずだ。
 剣機も黙って攻撃を受けるだけではない。体を横に向けながら、ガルシアをその射程に捉える。剣機の持つ攻撃の中で最大の威力を誇る……尾の剣の射程へと。
「来るわ!」
 藤乃が声を上げるのと、ガルシアが飛び退くのは同時だった。
 先程までガルシアが立っていた場所が剣によって薙ぎ払われる。そのスピード、威力とも凄まじい。恐らく、当たれば致命傷は免れないだろう。
 だがそれも、あくまで当たればの話だ。当たらなければどうということは無い。
「やっぱり、分離してもあの『クセ』は抜けてないんだね」
 フラヴィ・ボー(ka0698)が呟く。
 剣機は剣の尾を使用する際、その尾を曲げる癖があるという。これは剣機の姿が確認された当時、イルリヒトの学生やハンターたちによって確認された情報だ。それを藤乃も、フラヴィも把握していた。その情報が共有されている以上、尾の剣の脅威は半減どころではない。
 だが、無論剣機の武器はそれだけではない。
 剣機は次いで横に回り込んでいた2班、フラヴィ、橘 遥(ka1390)、そしてオズワルドの3人で構成された班に目を向け、そのままブレスを吐き出す。
「避けて!」
 フラヴィの叫び。元々初手は敵の様子を見るつもりだったため、遥やオズワルドから少し遅れた。だから敵の攻撃範囲から遠ざかることが出来ていた。
「っと、危ねぇ危ねぇ……そっちは大丈夫か!」
 慌てて飛び退くオズワルド。だが、遥は避けきれず直撃を受ける。周囲に充満する毒素は直接的なダメージだけでなく、遥の体を毒により蝕む。
「っ……ええ、大丈夫」
 もっとも、思ったより傷自体は浅かったが。友人たるセリアが遠くから祈ってくれたおかげかもしれない。その祈りに感謝しつつ、遥は敵に向き直る。
 なおも追撃しようとする剣機だったが、空中から多数の銃撃が剣機に降り注ぎ、その行動が阻害される。空中で網を広げたヒンメルリッターによる一斉射撃だ。
「いいタイミングね……ふぅ……」
 遥の抵抗力が勝ったのだろう。呟く遥の体から毒の影響が消える。
 このころには各班が剣機の周りを取り囲むように展開を完了しつつあり、戦闘はハンターたちの思惑通りに進んだと言ってもいい。
 だが、いくつかの誤算はあった。
「まぁ、いつまでもこっちに顔を向けているとは限らないわよね……」
 隙あらば口の中を狙い撃とうとしていた藤乃。それはカグラも同様だったが……剣機が今向いているのは直前にブレスを撃った2班の方。口を狙おうにも剣機がこちらを向いていなければどうにもならない。全力で移動しても顔を正面に捉えられる位置まで動くのは難しいだろう。
「腐ってもドラゴンだな……あのデカさに迫力。相手にとって不足無しだ。しかし……」
「あぁ。思ったより動き回るな」
 困ったのは剣機の後方へ回り込んでいた3班。レイオス・アクアウォーカー(ka1990)とエヴァンス・カルヴィ(ka0639)のコンビも同様だった。
 この二人の狙いは、剣機の尾を切断すること。だが、二人は未だに一太刀も尾に攻撃を加えられていなかった。攻撃の為剣機の向きが変わったからだ。今、尾はどちらかといえば4班の方が近い。無論そのまま尾を狙って切りかかることも出来なくはないが、そうなると急転換してからの範囲攻撃が怖い。
「このまま包囲態勢を維持しよう」
 二人はそのまま剣機側面へ位置しつつ武器を構えた。いずれ剣機はあの尾の剣を使うだろう。その時こそが、勝負どころだ。


 剣機は一か所を中心として、そこを回るように攻撃を続けた。状況が剣機にとって不利なのは間違いない。状況を打破するなら一点突破を図り包囲を抜けるのが正解なのだろうが、それを考えるだけの知恵が無いのか。あるいはこの間合い……包囲している誰にでも、剣の尾を使えるこの間合いにこそ勝機を見出しているのかもしれない。
「……これはチャンスか?」
 その剣の尾は今、4班の前にあった。
「だな。このままぶっ壊してやろうぜ!」
 ヴォルフガングに応答しつつシャルラッハが突っ込み、尾の根元へと両手剣を振り抜く。そこにロルフが機導砲を放つ。これはやや狙いがそれたが、胴体には命中。さらにヴォルフガングが追撃。傷口を広げるかのように強打を打ちこむ。
 一方、正面に位置することになった2班。オズワルドが先んじて槍を腹部に突き刺す。
「今だ、やってくれ!」
「了解よ!」
 それに続くように遥が鞭を構えスラッシュエッジを腹部に叩き込む。
 両者の攻撃で付けられた傷を狙い、やや間合いを広げていたフラヴィが機導砲を撃ちこむ。攻撃は傷を貫き深々と剣機にダメージを与えた……はずだ。
「タフだね……弱った様子が見えない」
 だが、それでも手を休めることは出来ない。フラヴィは盾を構え、いつでも味方を守れるようにしつつ、そう決意を固める。
 剣機が方向転換したことで、最初正面だった1班は剣機左側面に位置。
「もういっちょ行くぜ!」
「ええ……」
 ガルシアに応答しつつメリエは剣機を見据える。
(リンドヴルム型……こんなものが街に入ったらどれぐらいの被害が……)
 そうならないように。そうさせないように。その為に自分たちがいるのだと、メリエは気持ちを奮い立たせる。
「……これを街に行かせるわけにはいきません。ここで何としても仕留めます!」
「おう! 続いてくれ!」
 ガルシアは再度踏み込みながらドリルを剣機の横腹に突き刺し、続くメリエが渾身の力を込めて斬馬刀を振り下ろす。
「ガトリング……はちょっとこの位置からだと狙うのは難しいか……やっぱり頭を狙っていくしかないわね」
「……」
 藤乃が援護射撃を行う中、カグラは無言でタイミングを計っていた。攻撃のための狙撃……ではない。味方の支援、という名の敵行動妨害。そういう狙撃のタイミングを。
 剣機もやられてばかりではない。近接していたハンターたちを遠ざけるように尾を、四肢を振り回す。
 さらに、3班の二人に向かいブレスを吐き出す。
「っと、そんなのに当たってやれるか!」
 それを横っ飛びに躱すエヴァンス。そのまま攻撃に転じるために、攻めの構えを取り……
「避けろ、エヴァンス!」
「な……!」
 レイオスの声。エヴァンスの回避した先を狙い尾の剣が振り下ろされようとしていた。
(避けきれねぇ……!)
 守りを捨てた攻めの構えを取っているところだ。避けきる筈も無く、ダメージを覚悟するエヴァンス。
「……狙い通り、ですね」
 だが、その剣が振り下ろされることはなかった。射程ギリギリから放たれたカグラの狙撃が尾の剣を見事撃ちぬき軌道を大きく逸らしたのだ。剣はエヴァンスの頬を掠める程度ダメージは無い。
 ピンチが一転。今度はこちらのチャンスだ。
「冷や冷やさせやがって……今度はこっちの番だ!」
 態勢を立て直しながら大剣を構えるエヴァンス。同時に、レイオスが走り込む。狙いは二人とも同じだ。
「タイミングはこっちで合わせる。全力でやってくれ!」
「おう! その自慢の尻尾……俺がカットしてやる!」
 この二人、だけではない。シガレット、メイム、ミリア……作戦に参加していない幾人かのハンターの思いも込めて、振り下ろされた大剣。渾身の力を込めた二人の一撃が、剣をその尾ごと斬り飛ばした。
 この時、初めて剣機が叫びを上げた。それが苦痛によるものか、怒りによるものかは分からないが。
 剣機はエヴァンスの方へ向き直り、腹部を晒す。そこには備え付けられたガトリング砲。その銃身は回転を始めており、今にも多量の弾丸を吐き出そうと……
「やらせないわ!」
 不意に飛び出してきた遥。伸ばした鞭が銃身に巻き付きその動きを抑える。
 そこに放たれたフラヴィの機導砲。直撃を受けたガトリング砲は無残に砕け散る。
「よし、これでもうガトリング砲は使えないね!」
 尾の剣、ガトリング砲が破壊され、もはや剣機に残されたものはその巨大な体躯のみ。この機を逃すわけにはいかないと、ハンターたちは一斉攻撃に出ようとする。
 だが……剣機にはまだ使っていない能力があった。
「……何をする気だ?」
 ヴォルフガングは咄嗟に武器を構えるが……無駄だった。空を仰いだ剣機がその口を広げ、巨大な咆哮を発した。
 腐竜の咆哮。その叫びは防ぎようも無く、周りを取り囲むハンターたちのスキル発動を抑え込む。
「成程な……やっぱ戦いはこうじゃなくっちゃな!」
 耳を抑え苦しそうに……しかしどこか楽しげに、シャルラッハは笑いながらそう言った。


 戦闘は最終局面を迎えていた。
 武器をほとんど潰された剣機、スキルを封じられたハンターたち。
 ハンターたちが数の上で有利なのは明らか。しかし、剣機にはまだ毒のブレスが残されていた。
「クッ……」
 直前にブレスの直撃を受けたヴォルフガングが膝を着く。
「二人とも、一度下がるんだ。このままではまずい」
「……仕方ねぇか。こっちもそんなに余裕はねぇしな」
 ロルフがヴォルフガングに肩を貸し、シャルラッハと共に一度距離を取る。シャルラッハもブレスを受けており、体が毒に蝕まれていた。
 後退しマテリアルヒーリングによる回復を行う3人を援護するようにカグラが牽制射撃。
「仕掛けるわ」
「遥、あまり無理をしないようにね」
 さらに反対側、多少ダメージの嵩んだ遥をフラヴィ、オズワルドが援護しつつ攻撃。剣機の注意を逸らす。
 ここにきて、当初の分散案が効果を見せている。剣機が一方向の味方を攻撃しようとすれば、他方から攻撃し注意を逸らす。この間に攻撃の対象となった班が距離を取り、態勢を立て直す。
「ちっ……毒が結構きついな……」
「無理するな。回避を優先しろ」
 ブレスによるダメージが濃いエヴァンスを守りながら、レイオスが後退。
「どうした化物! ハンター1人食えもしないで何が暴食か! 笑わせる!」
「おいおいあんまり突出するなよ?」
 それを見たメリエがガルシアと共に前に出て、剣機へと攻撃していく。
「撃て!」
 さらにヒンメルリッターによる空中からの銃撃も、徐々に剣機の体力を削っていく。
 それでも諦めず、毒のブレスで攻撃しようとした剣機。だが、その向きが悪かった。
「これでお終い……その煩わしい口を閉じなさいな?」
 狙いを付けることに集中した藤乃の狙撃がその口に飛び込み、そのまま貫通。
「……それに、ここが崩れればあの子も危ないからね」
 脳裏に浮かぶリクの姿。向こうもきっと藤乃の事を思い浮かべていたであろう。
 藤乃の銃弾が貫いた直後、剣機はビクンと震え……そのままブレスを吐き出すことなく前のめりに倒れ込んだ。
「やったか?」
 マテリアルヒーリングでの回復を終えたシャルラッハは遠目で見ながらヴォルフガングに言った。
「あぁ、多分な……まぁまだ安心は出来ないが……」
 相手はゾンビ型。倒してもすぐに立ち上がってくる可能性がある。それに、前の剣機は自爆している。今回の剣機がそれに倣っていないとも限らない。
 ……だが、ハンターたちの予想に反し、剣機の体は溶けるように崩れていく。
「これは……皆、退いて!」
 藤乃の声に従いさらに距離を取る。見ると、溶けた剣機の体から、紫色の煙が広がっていく。それは、先ほどまで苦しめられてきた毒のブレスに酷似している。
「周囲に毒を拡散させる自爆……ですか」
 だが、その範囲と持続性はそこまで高くないようだ。すぐに煙は空へと舞いあがり、消えてしまった。
 慎重に近づくハンターたち。やはり、もう毒は存在しないようだ。そして……剣機の姿も。
「……やったみたいだな、ロルフ」
「ええ、そのようです」
 オズワルドの言葉に、ホッと息を吐くロルフ。街を守れたことに安心した……というだけではない。部下である兵長二人に大きなことを言った手前、ここで失敗するわけにはいかなかった。そういう重圧から、やっと解放された……そういう溜息だ。
「ありがとうございました、オズワルドさん」
「いや。礼なら……あいつらに言うべきだな」
「わたし達の勝利に!」
 不意に声が響く。見ると、騎士の如く刀を天に掲げたメリエの姿があった。
「わたし達の勝利に! ハイル! ゾンネンシュトラール!」
 メリエに続くように勝鬨が上がる。
 こうして、グライシュタットを襲撃した剣機は討伐された。
 終わってみれば、重篤な怪我人を出すことも無く終わったこの戦い。
 ただの勝利ではない。完全勝利と言っても、過言ではなかった。

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重体一覧

参加者一覧


  • カグラ・シュヴァルツ(ka0105
    人間(蒼)|23才|男性|猟撃士
  • Stray DOG
    ヴォルフガング・エーヴァルト(ka0139
    人間(紅)|28才|男性|闘狩人
  • 壮健なる偉丈夫
    ガルシア・ペレイロ(ka0213
    人間(蒼)|35才|男性|闘狩人
  • 威を放つ猛獣
    シャルラッハ・グルート(ka0508
    人間(紅)|25才|女性|闘狩人
  • 赤髪の勇士
    エヴァンス・カルヴィ(ka0639
    人間(紅)|29才|男性|闘狩人

  • フラヴィ・ボー(ka0698
    人間(蒼)|18才|女性|機導師

  • 橘 遥(ka1390
    人間(蒼)|21才|女性|疾影士
  • 生者の務め
    結城 藤乃(ka1904
    人間(蒼)|23才|女性|猟撃士
  • 王国騎士団“黒の騎士”
    レイオス・アクアウォーカー(ka1990
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人
  • 強者
    メリエ・フリョーシカ(ka1991
    人間(紅)|17才|女性|闘狩人

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談場所
フラヴィ・ボー(ka0698
人間(リアルブルー)|18才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2014/10/07 18:30:40
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/10/03 23:23:37